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2026年6月刊蜜猫文庫著者:花菱ななみ(敬称略)辺境伯長女で、血の繋がった両親や妹に冷遇されていたロクサンヌ。公爵エリアンに嫁いだ初夜に「君を愛することはない」と言われて失望するも妻の義務を果たせば好きに過ごしていいと言われ気を取り直す。御者の技術を覚え馬車を乗り回し楽しむ彼女にいつしかエリアンも興味を引かれるようになる。「君を愛さずにいることはできなかった」心と体を重ね幸せを覚えるが、ロクサンヌが冷遇されたのが呪いのせいだとわかり…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ロクサンヌ=辺境伯家の長女だが、家族から冷遇されていた。 エリアン=国王の最側近の公爵家当主。ロクサンヌを妻に迎える。レモウィケス辺境伯の長女・ロクサンヌは、理由も判らないまま家族から疎まれ冷遇されていた。使用人のようにこき使われながらこの理不尽な扱いについて考える。もしかして私は実の子ではないのだろうか。いっそ、本当にそうだったなら諦めもつくと言うのに、彼女は両親どころか兄と妹にもしっかり似ていた。ならどうして私はあの人達から愛されないんだろう。こんなことバカげていると兄のアレクサンドルはロクサンヌを庇ってくれたが、そんな優しい兄は現在宮廷に出仕しているため屋敷にいない。跡取りの目が無い現在、結局ロクサンヌの辛い日々は続いていた。そんなある日のこと。オーベルティーブ公爵家当主・エリアンが屋敷を訪れた。シュゼットによれば、彼はこの辺境伯家との姻戚関係を望んでいるらしい。両親は大喜びでシュゼットの飾り立てに余念がない。辺境伯領の金山は近年採掘量が乏しい。裕福なオーベルティーブ公爵家からの援助を当てにしているのだろう。にしても随分と見栄を張ったものだ。まぁでも、もう結婚自体は決まったようなものだし、浮かれるのも仕方ないのかもしれない。だが、まさかエリアンがロクサンヌを妻にしたいと言い出すとは。応接間の空気が凍り付き、この子は当てつけがましくわざとこんなみすぼらしい恰好をしている聊か困った娘でして!苦しい言い訳をしている両親と、姉より私の方が相応しいですわ、とめげずに自分を売り込むシュゼット。やかましい彼らの言い分を涼しい顔で受け流したエリアンは茫然としているロクサンヌの手を取ると片膝をついてプロポーズ。私は彼女がいいのです。そう言って父に向って笑みを見せるとくれぐれも妹さんと交換なんて真似はなされぬように。有無を言わせぬ態度に背に腹は代えられぬと父は渋々承諾。文句が止まらぬ母と妹にもう決まったことだと言い含めた。その日からロクサンヌには家庭教師が付けられ、食事も家族と同じものが提供されるように。そして数か月後、王都の教会で二人は式を挙げたのだった。あの家から出られたことも嬉しいけれど、エリアンさまの妻になれたことが何より嬉しい。一目見て彼に心奪われた彼女は今最高に幸せだ。この人に精一杯尽くそう、私に出来ることならなんでもして彼を支えるのだ。そう決意したロクサンヌだったが、初夜の際、彼女は非情な宣告を受けた。「君を愛することはない。とにかくこちらが望むのは男の子二人を産んでくれることのみ」冷たい表情で告げられて、まるで冷水を浴びせられた気分だ。政略結婚なのだから、望むのは家の結びつきと跡継ぎを設けることだけ。彼の言わんとすることは実のところ尤もな意見である。なのにバカな夢を見てしまった。白い結婚を望まれるよりマシだと思わなければ。あんなことを言いながらもエリアンはロクサンヌを尊重してくれていた。不貞行為でなければ好きなことをしていいとも言われたので、今まで縁の無かった貴族らしい趣味に挑戦してみることにした。その中で唯一貴族らしからぬ趣味が馭者の真似事だった。家令も驚いていたが、馬も可愛いし馬車の扱いは難しいながらも楽しく、上手くなるとなんとエリアンがロクサンヌが操る馬車に乗ってくれた。意外に楽しいと思ってくれていたのか、以降も彼のリクエストを元にあちこち出掛けて、先日は川の上流で釣りを楽しんだ。その上、ロクサンヌは社交も手を抜かず、お茶会で仕入れた情報をエリアンに報告。使えるネタの場合は良く教えてくれたと褒められ彼女も上機嫌。今日は彼女の希望でオペラの観劇にやって来た。娯楽に全く興味を示さなかったエリアンがオペラに!?その日、たまたま観に来ていた国王も心底驚き、これも奥方のおかげだなとロクサンヌをべた褒め。国王は彼女が馭者仕事に嵌っていると知るや、自分も乗りたいと言い出し、エリアンの胸は何故かざわついていた。女性の扱いが上手い国王は妻帯者だが、女癖が悪い。彼女に興味を持ち、手を出されたらと思うと気が気でない。結局、王は単に朴念仁なエリアンに発破をかけるだけのつもりだっただけらしく、それが判って彼は胸を撫で下ろした。そして、あんなことロクサンヌに言わなければ良かった・・・。と激しく公開初夜の時に心無い言葉を告げた自分を殴ってやりたい。当時の自分は厳しい父の教えに従い、誰も信じず生きて来た。結婚も国防を担う辺境伯家と繋がりを持ちたかっただけで誰でも良かった。ただ化粧と香水臭い次女は性に合わずで、何故召使扱いされていたのか不明だが、素朴なロクサンヌならとその手を取った。一度、二人で話そう。そう決意した矢先のこと、ロクサンヌが体調不良で寝込んだ。まさか懐妊ではと沸き立つ屋敷の者たちの期待に反して医師から告げられたのはただの胃腸炎。エリアンも期待していたのではと思うとロクサンヌもガッカリ。心配かけたこと含めてきちんと報告しよう。書斎の扉をノックしかけた彼女は漏れ聞こえて来る話し声とその内容が気になりいけないと思いつつ耳をそばだてた。家令が報告していたのはレモウィケス家の実情とロクサンヌがなぜあんな扱いを受けていたのか、について。確かにずっと謎だった。一体どんな理由が。家令がレモウィケス家に長く務めたという元侍従から直に聞いたと言う話は衝撃的なものだった。百年以上前、辺境伯家の領地近くの山に魔女の集落があり、そこで金が取れると知るや欲にくらんだ当時の領主が魔女たちを襲撃、山を奪ったのだそう。多くの犠牲を出て魔女は怒り狂い、その時指揮をしていた領主の娘・エレオノーラに呪いをかけた。それが長女の呪い。レモウィケス家の長女に生まれた者は、子を成せぬというもので、実際に長女は不妊ないし出産にこぎつけないものばかり。政略結婚が主流の貴族社会でこれは由々しき事態。子を生めぬ娘は嫁に出せない厄介者になり、いつしか長女を「いない者」扱いするようになったのだと。ということはつまり、ロクサンヌは子供を産めないということか?エリアンの問いに家令は長女の呪いの通りならばと肯定。エリアンは男の子を二人産んで欲しいと強く希望していた。流行り病や事故死に備えてなのだろうが、それ以前に自分は不妊症と判ってロクサンヌは愕然。彼が家令に明日レモウィケス家当主に会うと言っているのに冷や汗が流れた。おそらく契約違反だと抗議しに行くのだろう。それも当然だ。妹はともかく、両親は呪いのことを知っていたはず。だから私を冷遇してたんだもの。なのに、シュゼットをお気に召さなかった彼がロクサンヌを希望した際、不妊という瑕疵があることを言わなかったのも問題だ。もしかしなくても離縁されるのよね、私。愕然としながらも心にはフツフツと怒りが湧いた。欲深い先祖のせいで呪いをかけられ、その弊害で私はいない者扱いを受けていた。そうよ、一言あの人達に恨み言言ってやるくらい!それと、あの人に迷惑がかかるから、私は死ぬの。とは言っても本当に死ぬわけじゃない。自殺に見せかけてどこか他の地でひっそり生活すれば、エリアンも再婚しやすくなるはず。決意した彼女は遺書に見せかけた手紙を置いて屋敷から姿を消して・・・。ザマァ系です、が意外な理由でヒロインが虐げられていたのが判ってちょっとびっくり。先祖がクズだったおかげで愛する人の側にいられないのが確定してしまったロクサンヌはついにブチギレ。そもそも、そんな重要なこと、彼に前もって言わないのは我慢ならないと実家に乗り込みますが、久しぶりの屋敷は何故か半壊していて唖然。玄関前に居た女性に気付いて一体何が?と尋ねれば、女性は兄と瓜二つ???あなたがロクサンヌ?問われて頷くと、彼女は父の庶子であると明かします。だから、この家の本当の長女は私なの、アレクサンドルの一つ上。卑怯者の当主は長女の呪いを回避するため、下町の女に手を出して娘を産ませ自分はちゃっかり貴族の女と結婚したってわけ。なのに奥さんが怖いから他所にもう長女がいるのを言い出せず、結局あんたをいない者扱いしてたのよ。呪いが解けたのを機に復讐しに来たと言うい女性は屋敷を壊しながら高笑い。クズ過ぎる父のやり口を知ってロクサンヌは異母姉・シモンに同調。この家潰すなら協力すると申し出ます。魔女に弟子入りして自力で解呪したという異母姉は頼もしく、そういえば、私は次女だから呪いにはかかってないのよね?とホッと胸を撫で下ろすのでした。とはいえ、涙を飲んで公爵家を出て来たと言うのに段々アホらしくなり、そのうち父に対しての激しい怒りが。その後、シモンの魔法で両親はいいように操られ、爵位と財産はシモンに譲ると言う証書にサインさせることに成功。ロクサンヌは例え不妊でも妻は君がいいとエリアンに説得されて無事公爵家に戻るのでした。エリアンもロクサンヌが不妊だと伝えなかった当主夫妻に怒ってたんですが、それ以前に呪いを理由に彼女を虐げたことに対しての怒りの方が強かったと言う。もうすっかり奥さんにメロメロになっていた彼は、子など産まれずとも養子を取ればいいときっぱり。あの時の最低の言葉はどこへやら、今やすっかり愛妻家になった彼が妻への想いを噛み締めている所で物語は幕。理不尽な扱いの理由があれで色々吹っ切れたヒロインの底力が凄かったお話でした。あと、終盤出て来た腹違いのお姉ちゃんとも仲良くやってけそうで何より。評価:★★★★★
2026.07.27
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2026年6月刊マカロン文庫著者:田崎くるみ(敬称略)久我リゾートの御曹司・誠吾は、初恋の相手・木乃香を長年探し続けていた。再会を果たした誠吾は燃え上がる独占欲で木乃香を囲い落とそうとして…! 蕩けるような一夜を共にするが、翌朝木乃香は姿を消してしまうーー。身分差に悩み身を引いた木乃香は、誠吾との子を身ごもっていて…。叔父夫婦から嫌がらせを受けながらも息子の海を育てていた木乃香を、誠吾は愛を絶やさず見つけ出す! 「ママを守って」「もう二度と離さない」ーー離れていた時間を取り戻すように、誠吾は木乃香と海をありったけの溺愛で守り抜き…! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 奥林木乃香=老舗旅館の跡取り。初恋の人との子どもを女手一つで育てている。 久我誠吾=リゾート開発企業の御曹司。 奥林海=木乃香と誠吾の息子。 奥林千里=木乃香の従姉妹。入退院を繰り返す父に代わって、旅館を切り盛りしている木乃香は四歳の息子を育てるシングルマザー。厨房の手伝いや雑用までこなす彼女を古くからの従業員たちは心配している。数年前、木乃香の母がひき逃げで亡くなってから、父は気落ちしそのせいか体調を崩しがちになっている。叔父夫婦の助けが無ければこの旅館は潰れていただろう。だから、叔父たちの横暴な振る舞いも目を瞑らなければ・・・。誰の子とも知れぬ子を生んだと当初は相当責められたが、息子の海ももう四歳。随分と利発に育って、これもあの人の血を引いているからと感心する。今日もめまぐるしい一日だった。急いで海のお迎えに行かなければ、と帰宅の支度をしていると、事務室から叔父夫婦の話声が。何の気なしに聞いているとこの旅館を売りに出すと言うとんでもない内容にギョッとした。確かに、亡き母が女将をしていた頃ほどに賑わってはいないけれど売却しなければならない程ではないはずだ。それに父に内緒でそんなことできるはずがない。きっといつもの愚痴の類よ。不安を押し隠しつつ、海には笑顔を見せていた木乃香は、帰宅途中に初恋相手の久我誠吾とバッタリ。硬直している彼女が手を引いている子供が自分の幼少期にそっくりなのに気付いて誠吾は、もしかしてこの子は・・・、と問いかけるのを「違います!」と否定してその場を駆け出した。まさか、こんなところに遭うなんて。五年前、久我リゾートの系列ホテルのバーで偶然出会った彼は、彼女にとってヒーローであり王子様のような存在だった。思わぬ再会に双方盛り上がり、誘われるまま一夜を明かした。しかし、翌朝とんでもないことをしてしまったと木乃香は逃げ出し、暫くして妊娠に気付いた。それが海だ。一度見つかってしまったことで彼に居場所がバレ、その後話し合いを重ねて正式に交際が始まった。海が誠吾に懐いたのが大きい。何度か三人で出かけているうちに結婚をほのめかされ、父とも先日顔合わせしたばかり。数日後、退院した父を迎えに行き旅館に戻ると叔父たちから書類を見せられた。なんとそれはこの旅館の譲渡契約書。日付は五年前、母の死のショックから父は大病を患った。かなりの額の治療費がかかり叔父たちが援助をしてくれていたからその担保として交わしたのだろう。五年経っても父が復帰できない場合は旅館を譲るとあって、木乃香は茫然。あの時の借金はまだ全額返せていない。利子を含めて代わりにここを貰うというのが叔父たちの言い分だった。父も言われるまで忘れていたらしい。自分の署名を見てブルブル震えていて今にも倒れそうなのを慌てて支えた。どうしてよいかわからず誠吾に相談すると弁護士を交えての話し合いに。だが、書類に不備はなく勝てる見込みはゼロ。ならば、いっそのこと旅館は譲渡し、久我リゾートが手掛けるリノベーションホテルで働かないかと誠吾に提案され、心機一転その話に乗ることになった。料理長を始め、多くの従業員たちが付いて来てくれたおかげでここをあの旅館に負けないものにしようと皆一丸で頑張った。それから暫く経って誠吾との結婚も間近に迫ったある日のこと、彼の前に現れた木乃香の従姉妹・千里は一枚の写真を差し出した。あの子、浮気してるわよ。その写真には三十代と思われる男性と親しげに話す木乃香が写っていて・・・。シークレットベビーものです。初恋相手との再会に舞い上がるのも判るんですが、そのワンナイトで授かって、という安易な経緯は短めなお話の弊害でしょうね。相手の誠吾も五年も何やってたんだ感はあるものの、早々に見つかってちゃお話になりませんから。誰かが(もしくはどちらも)バカにならなければ成り立たないのがこのジャンルなのであります。まぁ、突っ込みに関してはそのくらいにして、でたよお邪魔虫が。あの叔父夫婦の娘だから従姉妹も性悪。息子の仲良し・小夜ちゃんの父親と歓談してる部分を隠し撮りして浮気してるとでっち上げ。しかし、当の海が「あ、小夜ちゃんパパだ!」と指摘し、この時は二人の足元に自分達も居たと証言したので、ふかしてんじゃねぇぞ的に誠吾に睨まれて千里もしどろもどろ。この話は木乃香にも伝えられ、まったくと呆れられてましたが、後日、今度は叔父夫婦が現れてこれまでの迷惑料を払えと要求してきます。彼らへの借金は誠吾が立て替え清算済みだというのにこの面の皮の厚さよ。かなり早く木乃香と誠吾がくっついたのもあって、旅館関係と叔父たちの醜悪さにスポットがあたりちょっと辟易。でも、意外にこういう常識外れの人って現実にもいるから侮れないんですよね。とはいえ、黙っている木乃香ではなく、先日の千里の暴挙について言及し二人を撃退。数か月後、木乃香たちは入籍し、数年後の久我家の様子が描かれて物語は幕。ここ最近のベリーズとマカロンは表紙にヒロインの顔を描かない表紙が増えて来たような。評価:★★★★
2026.07.26
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8月中旬 ノーチェブックス 絶倫すぎるんです、公爵様っ! 不吉令嬢だったのに、聖女として溺愛されています rara 一夜限りの夜伽のはずが、傷物令嬢は王弟殿下に淫らに翻弄される 柚月ウリ坊 アルファポリス文庫 やすらぎ古民家カフェのしあわせ時間 あやかしさんと、ほっと一息 家野ね子9月9日 ティアラ文庫 塩対応の美形魔術師の溺愛が本気すぎる 嘘告なのに囲い込まれて逃げられません!? イチニ9月15日 講談社タイガ 後宮を欺くは、愛され下手な奴婢 壁井ユカコ 傷モノの花嫁 4 友麻碧9月17日 カラフルハピネスコミックス 悪女は楽で最高ですか? 210月9日 ツギクルブックス 先に仕掛けて来たのはそちらですよね? ~絶対に被害者面で私を冷遇したい婚約者とその本命VS 絶対に被害者面で制す私 ファイっ~ 星羽芽(敬称略)傷モノの花嫁、9月か~~。そっちが出てから3巻を読むか、先に読んでおくべきか悩みます。
2026.07.25
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昨日(7月22日)までに購入した本です。ヴァニラ文庫6月刊 蜜猫文庫6月刊2点。オパール文庫7月刊そう言えば、この作家さんの5月刊を未だに買えてない(^_^;) ベリーズファンタジー7月刊2点。7月のこのレーベルはまだあと1,2点買うはずのものがあったような。レジーナ文庫7月刊マーマレード文庫7月刊 ベリーズ文庫&ベリーズ文庫with7月刊3点。講談社タイガ 7月刊購入だけはしてるんですが、積読消化してたのもあって溜まってます。傷モノの花嫁は、なるべく早めにとは思っているもののいつになるやら。
2026.07.24
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2024年8月刊角川ビーンズ文庫著者:花宵(敬称略)魔力がないため虐げられてきた伯爵令嬢リフィアは、父の命で呪われた仮面公爵オルフェンに嫁ぐ。王国一の魔術師ながら忌避される彼と心を通わせるうち、少しずつ呪いが解けていきー「大好きな君を、この手でずっと抱き締めたかった」甘く幸せな新婚生活の陰で、『聖女』の資質に目覚めたリフィアに迫る魔の手。そこには衝撃の真実が隠されていて…!?愛を知った薄幸令嬢が残酷な運命を断ち切り、本当の幸せを掴む物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 リフィア=魔力を持たないからと家族から虐げられていた伯爵令嬢。オルフェン=呪いを受け隠遁生活を送っていた公爵。リフィアの夫。 アスター=ヴィスタリア王国王太子。 セピア=リフィアの妹。 ラウルス=オルフェンの元部下の魔導騎士。ファルザン=人気のヴァイオリン奏者。火属性魔法の家系・エヴァン伯爵家の長女・リフィァは、魔力を一切持たずに産まれた。魔力無しの証拠であるその白い髪を両親、特に母は忌み嫌い彼女を遠ざけた。お前のせいで不倫を疑われたと酷い暴力を受け、死にかけたこともあるけれどいくら理不尽な目に遭ってもリフィアに恨みも怒りの気持ちも無かった。屋敷の奥深く、亡き祖父の私物置き場になっている物置部屋に閉じ込められても、エヴァン家の守護女神ヘスティアに今日も恙無く過ごせたと感謝の祈りを捧げる。数年後、リフィアが十七歳になったある日のこと。珍しく父の書斎に呼び出された彼女はオルフェン・クロノス公爵との結婚を命じられた。黒の賢者の称号を持つ優秀な魔術師だが、五年ほど前、バジリスクからの攻撃から王太子を庇い呪詛を受けて以来、あまり表には出て来ていない人物だ。呪詛の影響で顔と腕に鱗が浮き出ているらしい。それを隠すため仮面をしていることから仮面公爵とも呼ばれている。私の結婚相手がクロノス公爵様・・・。十五歳の誕生日、本来なら社交界デビューするはずがリフィアには人前に姿を見せることすら許されなかった。しかし、世間体を気にしてお披露目をしないわけにもいかず、当日は本人の体調不良を言い訳に両親は舞踏会だけを開催。華やかな世界に多少なりとも憧れのあったリフィアはこっそり部屋を抜け出し、寒空の下、外から会場内を盗み見ていた。そんな彼女に自らの上着をかけてくれたのがクロノス公爵で、その上着は今でも大事に取ってある。あの時のお礼も言えることがただ嬉しかった。呪われた仮面公爵に嫁ぐのに何をへらへら笑っているの!?妹のセピアは信じられないと言う表情。父の説明では近年、公爵は呪詛の影響で体調を崩し魔術師団長の座も辞して領地に引き籠っていると言う。前公爵夫人が不憫な息子のため嫁探しをしていたそうで、うちの娘で良ければと父はその話に乗ったのだそう。多額の支度金を貰っているから戻って来ることは許さん。父の言葉に母も頷き、厳しい顔でリフィアを見据える。唯々諾々と従う娘に早々に興味を失くし、その金で新しいドレスを買ってくれと母が父に強請るのを横目に、セピアだけは何か言いたげな目で姉を見ていた。二週間後、迎えの馬車に乗り込んだリフィアはクロノス公爵邸にやって来た。実家とは違い、無能の象徴たる白髪を見ても公爵邸の人達は誰も軽んじる様子はなかった。姑のイレーヌからも歓迎されて自分のような娘を迎え入れてくれた旦那様とお義母さまのためにも精一杯尽くそうと心に誓った。が、肝心のオルフェンは姿を見せない。不思議に思っていると最近は起き上がれない日が続いているのだとイレーヌが顔を曇らせた。せっかく来てくださったのに申し訳ないと謝罪する義母に気にしないで欲しいと笑顔を見せたリフィアは、せめて自分に旦那様の看病をさせてもらえないかと頼んだ。案内されたオルフェンの私室では具合の悪そうな彼がベッドに横たわっていた。間違いない、やはりあの時の方だ。呪詛は徐々に彼の身体を蝕んでいるらしい。その苦しそうな姿に胸を痛めたリフィアはオルフェンの手を握るとどうか少しでも良くなるよう祈った。すると、苦しそうだった呼吸が落ち着き彼が目を覚まし自分の手を握る少女を見てギョッとしていた。オルフェン自身もどうして急に楽になったのか見当もつかないながら名を聞かれリフィアと名乗ると、そうか君が・・・。こんな死にかけの男に嫁がされて迷惑だったろう?と自嘲する彼の言葉に食い気味で否定する。あの舞踏会の夜でのことを話すと彼も覚えていたらしい。以降、リフィアは献身的にオルフェンの世話を焼き、彼が良くなるよう女神に祈りをささげた。暫くするとオルフェンの身体を蝕んでいた鱗が段々と薄れていき、そのうち起き上がれるように。それでもまだ右手と額には残っていたが、歩けるようになるとリフィアを伴い庭園を散歩するのが日課になっている。その仲睦まじい姿にイレーヌは涙を流して喜び、息子にちゃんと彼女を籍に入れようと提案。これまで三度ほど妻を迎え入れたが、皆数日持たず屋敷を立って行った。最後の希望がリフィアであり、その彼女のおかげでオルフェンは持ち直した。当時は彼の体調からもう長くはないかもと入籍を先延ばしにしていたけれど、きっともう大丈夫。数日後、無事署名を済ませたリフィアはクロノス公爵夫人になった。半年後、見舞いを兼ねて夫人を紹介してくれと王都から王太子・アスターが屋敷を訪れた。迷惑そうなオルフェンを他所に、アスターは奥ゆかしいリフィアを気に入り上機嫌。そんなアスターにオルフェンは前以て依頼していた鑑定をしてくれるよう促すと、はいはい、と彼が取り出したのは大きな石のついたペンダント。それをリフィアの首に下げさせると鑑定魔法の呪文を唱える。すると石が金色に輝き、これは間違いないねとオルフェンに向けてニヤリと笑った。大方予想は付いていたのか、オルフェンはやはりと言った表情でリフィアに向き直ると、君には聖女の資質があると告げた。フィアは魔力が無いよね?それは元々聖力を持っているからなんだよ。いきなり勝手な愛称で呼び始めた王太子を睨みつつ、オルフェンもその説明に頷く。何故自分が持ち直したのか、しかも彼女が手を取り祈りを捧げてくれる度に回復していくのでこれは聖力なのではと思い当たったそう。鑑定してみた結果、大聖女に匹敵するほどの聖力の持ち主だと判り、アスターからこの世界を支えている世界樹に定期的に聖力を注いでほしいと頼まれた。ここ数百年、世界樹の老化が進み、各貴族家が奉納する魔晶核の力で延命していた。しかし、聖力とは比べるべくもない。これで世界樹も生気を取り戻すはず。だが、世界樹は魔物を脅かす。聖女に出て来られては困るとリフィアは狙われる危険性がある。お前も復調したなら奥さんを死ぬ気で守れよ。そう言ってアスターはオルフェンに発破をかけた。そうこうしているうちに国王との拝謁も済ませた彼女は定期的に世界樹に力を注ぐという、忙しい日々を過ごしている。オルフェンとの関係も一層深まる中、娘の噂を聞きつけたエヴァン伯爵がそうと判っていればと歯噛みしていた。そしてやがて明らかになる伯爵家の過去と聖女誕生に纏わる秘匿事項。父の罪の巻き添えを食ったリフィアは危機に陥り・・・。王道のシンデレラストーリーです。実はヒロインは聖女でした、と判明してから話は意外な方向に進んでいきます。ただ、旦那様と静かに暮らしていきたいだけなのに周りは許してくれず、その上、実父のやらかしのせいで彼女は父に恨みを持つある人物に攫われ命の危機に。加えて明らかになる聖女に纏わる闇の話。この一連の内容は読んでて正直ゾッとしました。まさに一人の犠牲で皆が助かるなら、とか言う胸糞理論で概要を知るアスターの苦悩も。でもそんなのくそくらえ、なのがオルフェンで愛しい妻のため、彼は決められた運命すらも覆して見せるのでした。エヴァン伯爵は過去の罪で裁かれ、夫人はとんずら。結局伯爵家はセピアが相続すこととなり、姉妹は和解。というかそもそも悪いのはあの毒親たちだったのであいつらがいなくなれば仲良くなるのは当たり前。セピアも想い人のラウルスに想いが通じて良かった。色々予想外な展開もあって面白かったです。評価:★★★★☆
2026.07.23
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2026年5月刊ベリーズファンタジー著者:十夜(敬称略)「君は尖った氷柱のようだ」ーー王太子の婚約者となった名門公爵家の末娘・ルルシャ。十五年間、陰の役目を完璧にこなしてきたが、その献身は誤解され一方的に婚約破棄されてしまう。仕方ないと受け入れたルルシャだったが、愛娘を軽んじられ大激怒した家族は爵位も国も捨て新天地へ。自由な平民生活がスタート!…と思いきや、ひょんなことで出会った隣国の皇弟と契約結婚、妻の務めを果たすだけのはずが貧しい領地を大改革してしまい!? 一方、魔物が溢れ出し、綻びが生じ始めた祖国は次第に思い知らされる。あの名門公爵家、またの名を“陰の王家”、さらには大精霊に愛されているひとりの令嬢の力を失った大きさに…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ルルシャ=王太子との婚約破談を機に家族ともども出奔した公爵令嬢。 クラウス=バシュラ魔導帝国皇帝の弟。ルルシャに契約婚を申し込む。エグバート=ゼイロット王国王太子。ルルシャの元婚約者。 ローラ=エグバートの浮気相手の子爵令嬢。精霊の加護を受けるゼイロット王国王家を裏から支えるヴィステッカ公爵家。影の王家とも呼ばれているこの公爵家の一人娘・ルルシャは才媛として名高く、正義感は強いもののイマイチぱっとしない王太子エクバートを良き王にするため努力していた。上に立つ者は時に非情な決断をしなければならない。あなたが躊躇うのならば悪人の首は私が斬りましょう。頼もしい彼女の言葉にエクバートは心から感謝した。だって、自分は汚れ仕事に手を染める必要が無いのだから。しかし、彼はルルシャからの好意と献身に甘えすぎていた。彼女の方が年上だったのもある。月日が経経って、エクバートも年頃になると次第に口煩い婚約者の存在を疎ましく思うように。彼がローラという子爵令嬢に入れ込んでいることは気付いていた。やがてエグバートはルルシャの言葉に耳を傾けることはなくなり、あまつさえ、いつも厳しい処罰を下す彼女を氷のように冷たい女だと謗った。そしてついにエグバートはルルシャとの婚約破棄を決断。でもいいのかしら、こんなに簡単に私との婚約を無しにして。代々公爵家を守護する・愛と復讐の大精霊は二人に婚約が結ばれた際、この国に永遠の平和と繁栄を与えると宣言していた。なのに、相手側の浮気が原因での婚約破棄。これは大精霊も黙っていないだろう。彼は真実の愛を見つけたとかほざいていたけれど、果たしてその言い分が大精霊にも通じるだろうか。まぁ、もう私には関係ないことだ。どこにでも口さがない者はいる。どう考えても悪いのはバカ王子なのは明らかだったが、ルルシャが悪く言われるのは忍びない。家族の絆が強い彼らはどうせなら皆で心機一転始めようと公爵位を返上し、大国・バシュラ魔導帝国に移り済んだ。宰相を務めていた父、その補佐をしていた長兄、騎士団長の次兄に王妃の相談役として貴婦人たちを纏めていた母。加えて王太子妃になるはずだった才女。優秀な逸材がごっそりと王宮から姿を消して、ゼイロット王国上層部は慌てふためくこととなる。数か月後、バシュラの王都で最近話題の理髪店では若い女性店員が客の洗髪に励んでいた。彼女に髪を洗ってもらうと体が軽くなるともっぱらの評判で、常連客のジンは施術の後上機嫌で帰って行った。二人の兄はカット担当で、あいつは絶対ルルを狙ってると渋い顔。まぁそれでも通ってくれるのはありがたいわ。そう言って笑顔を見せたルルシャの手は水仕事のせいで随分荒れてしまった。彼女の洗髪が素晴らしいのは洗い方が上手いのもあるけれど、半分は精霊たちの手伝いのおかげだ。精霊たちの浄化の力が穢れを払うから体が軽くなった様に感じる。正直、精霊界に通じる扉があるゼイロット王国以外では精霊を見ることは無いと思っていた。なのに、以前大精霊から貰ったペンダントに小さな扉ができて小精霊ならばそこから自由に出入りできるように。国を出て縁が切れてしまったと覚悟していただけに嬉しい。店の方は兄たちに任せ、ルルシャは孤児院へ。そこで十数人の子供たちの頭を洗ってやり、程よい疲れをいやすため市場で買い食いしていた。そこで彼女は一匹の猫に目を留めた。姿は猫でもこれは精霊?しかし、見た目はいかにも貴族が飼っていそうな高級種のせいか質の悪い連中に見つかり、袋に入れられてしまった。拙い、と前に飛び出したルルシャは三人は護身術でのしたものの、最後に現れた一人には手古摺り万事休す。危機一髪のところに現れたのは息を乱した一人の青年。細身ながらあっという間に男を倒して、うちの猫を救ってくれてありがとうと礼を述べた。途中、パニくったネコが暴れ川に落ちたのをルルシャが飛び込んで助けると言うハプニングもあったが、クラウスと名乗った青年はこいつを救ってくれた礼を改めてしたいと自宅に彼女を招いた。クラウス・バシュラはこの国の皇帝リュディガーの異母弟なのだそう。皇帝に子供は無く、彼が皇位継承権一位だったが、皇帝の母である皇太后はクラウスが皇位を継ぐのを嫌がっているらしい。そう心配せずとも彼は皇帝になるつもりはなく継承権放棄を考えている。何故か、着替えを貸してもらい席に着いたルルシャにいきなり皇家のお家事情を聞かされてルルシャの目は点。あの?とクラウスの意図を尋ねないわけにはいかなくなり先を促すと、彼から契約婚を申し込まれた。君を見込んで、話をした。頭を下げる彼に先を促せば伯爵家以下の貴族令嬢か、平民の女性と結婚して皇位を継ぐ気はないと皇太后に示さなけれなならないのだと。君は見るからに聡明だし、興味を惹かれれば協力してくれるかと・・・。なるほど、人を見る目はあるようね。確かに面白そうだと少し思い始めている自分がいる。報酬も魅力的だし、彼が賜る予定だと言う辺境の地・クラナッハ領はもしかして私たちの安住の地になり得るかも。家族と相談したいと、その後自宅に招くと皆面白そうだと大喜び。長兄なんて寂れてれば寂れてるほどやりがいがあると燥いでいるし、その失礼な物言いを慌てて諫めた。情報ではエグバートの手の者が私たちを呼び戻そうとしているらしい。平民に身をやつしているので早々見つからないとは思うが、王都に居続けるのは危険かもと皆で話していた所だった。そこに来てのこの話。渡りに船とはまさにこのこと。皇帝への挨拶に向かうとやはり平民との結婚はと若干渋られた。クラウスは優秀な魔術師でもあるから、このまま子が生まれなければ後を継がせたかったに違いない。しかし、最後の頼みですと弟から頼まれて皇帝は折れた。臣籍降下したクラウスが与えられたのは彼の亡き母の故郷・クラナッハ領。辺鄙で作物の実りも良くないぞ?皇帝は本当にあそこでいいのかと意思確認したが、クラウスの気持ちは変わらずで溜息を吐いた。そしてこの時を持ってクラウスはクラナッハ公爵領の領主になったのだった。一方、自分の浮気でルルシャとの婚約破棄を強行したエグバートであったが、早くも後悔し始めていた。大精霊は当然の如く彼を責め、与えていた加護を取り上げると扉も閉じると宣言。慌てたのは上層部の者たちだ。加護の力によって魔物の侵入を防いでいたというのに、これからは各地に騎士団を派遣せねばならない。エグバートが妃に望んだローラは知識も教養も無く遊び惚けてばかり。こんな時ルルシャならば見事な采配をしたことだろう。というより、ルルシャが王妃になっていれば大精霊はいつまでも加護を施してどくれていたしこの国は安泰だった。なんて愚かなことをしてくれたんだ、皆からの軽蔑の眼差しにエグバートは耐えきれなくなり、どうやってルルシャを取り戻すか考え始めた。まさか家族総出で国を出て行くなんて!宰相がいなくなり代理では限界があると陳情がでているし、騎士団も団長がおらず統率が取れていない。国王は頭を抱え、エグバートを恨みの籠った眼で睨みつけている。なんとかしないとこの国は。知恵を出し合い領地民たちとクラナッハ領を発展させ始めているルルシャたちとゼイロット王国との明暗がきっちりと別れ・・・。ザマァ系です。展開としては王道中の王道で、ルルシャという得難い存在を軽んじた結果、バカ王子側が自戒していくと言うお決まりのパターン。まぁ、ルルシャ側も向こうで結構苦労はしているんですが、ゼイロット王国を見限った精霊たちがバシュラ側、というかクラナッハのとある地に流れてきたことで一気に好転。契約婚で、と言っておきながらクラウスはルルシャに惚れるんですが、彼女の方は思い切りスルー。この手の話には珍しく男の方だけ盛り上がってもヒロインにその気が無いので恋愛要素はかなり少な目です。なので、その辺りを期待するとガッカリするかも。でもまぁ、その先は判らないよね、とご想像にお任せします的な希望を持たせるラストだったので、何だかんだルルシャがクラウスに絆されそうな気も。イラストが「聖女の魔力は万能です」のコミカライズを担当する藤小豆さんが描かれているのもあり、本文イラストも含め一見の価値ありです。評価:★★★★☆
2026.07.22
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2026年5月刊ムーンドロップス文庫著者:このはなさくや(敬称略)突然獣人の国に迷い込んだ小百合は、自分を助けてくれた男と衝動的に一夜を共にし、やり捨てられてしまう。その後小百合の妊娠が発覚、白虎の子どもを出産する。三年後、リリーと名を改めた小百合は、隣人たちの助けを借りながら、一人で息子のブランを育てていた。そんなある日、ブランの父親であるムスタが再びリリーの前に現れて…。孤独なふたりがすれ違いを乗り越え本当の家族になるまで。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 水瀬小百合=突然異世界転移してしまった社畜OL。 リリーの名で宿屋の食堂で働きながら息子を育てている。 ムスターファ=金色級の冒険者で白虎獣人。ブランの父親。 ブラン=ムスタとリリーの息子。ダリ&カミーラ=宿屋「クマル亭」を営む熊獣人の夫婦。 イスハーク=ムスタの二番目の兄。 ルウルウ=ムスタの従姉妹。獣人国エゴンの辺境にあるグランノットにある宿屋「クマル亭」の食堂で働くリリーは女手一つで息子を育てるシングルマザーだ。獣人国で数少ない人間の彼女は目立つ。素性の知れないリリーに職を与えてくれたのはこの宿屋の経営者夫婦のダリとカミーラであった。今日は朝から忙しく少々残業になってしまったと詫びられ、ブランに食べさせてやんなとミートボールを持たせてくれた。いつもありがとうと礼を言い、急いで向かった先はアパートのオーナー・フランソワの家。ただいま、ブラン、と声をかけると元気いっぱいの息子が元気に駆け寄ってくるのを抱きしめ、いい子にしてた?と微笑む。ご機嫌のブランは舌足らずながら今日あったことを話し、ご機嫌なのか頭部にちょこんと虎耳が現れる。いつ見ても可愛い。ブランの頭を撫で、フランソワに礼を言って近くに建つアパートへ。この世界に突然飛ばされて来て四年になる。ブラック企業に勤めていた水瀬小百合が珍しく早く帰れた日、横断歩道を渡っていたら信号無視の車が突っ込んで来た。咄嗟に横を歩いていた塾帰りらしい小学生を突き飛ばすとそのまま意識はブラックアウト。気付くとそこは森の中。見渡しても人っ子一人おらず、茫然としていると野生の獣に襲われ逃げ惑った。そこを救ってくれたのは通りがかりの獣人の冒険者・ムスタ。状況が理解できず、小百合はムスタを頼り誘われるがまま宿屋へ。抵抗したものの妙な感覚を覚えて初めてだと言うのにそのまま彼を受け入れてしまった。その際、やたらと名前を聞かれた気がする。しかし、水瀬小百合だと何回か教えたのに段々彼の機嫌が悪くなっていき、腹いせなのか項をきつく噛まれた。目覚めるとムスタは既にチェックアウトしており、自分はやり捨てられたのだと茫然。この宿こそ「クマル亭」で事情を話すとダリとカミーラはムスタに対して最低だと激怒していた。そして行く宛てが無いのならとうちで住み込みで働かないかい?と誘ってくれたのだ。妊娠に気付いたのはそれから暫く経ってからのこと。幼い頃に両親を亡くし、孤独だった自分に出来た初めての血を分けた家族。人間が獣人の血を引く子を生むのは命がけではあったが実際ブランを産んだ時、難産で彼女は死にかけた。それでも我が子は可愛い。銀髪に青い目を見る度にムスタの面影が蘇るけれど、自分一人ででも立派に育ててみせる。幸いにもカミーラたちやフランソワのおかげで何とか食べていけている。心配なのはブランが希少な白虎だということ。白もちと言われる獣人は金になると誘拐の危険があるそう。絶対に一人で歩かせるなと口を酸っぱくして注意され、働いている間はフランソワの好意で預かってもらえて助かっている。それに、まだ三歳だというのに流石は虎。走り出したらもう小百合の足では追い付けないし、暴れられたら抑えることも難しい。先行きの不安が彼女の頭を悩ませていた。そんなある日、王都からイスハークと名乗る騎士がやって来た。なんでも人間の女性への聞き取り調査に来たらしい。獣人同士は子供が出来にくく、跡継ぎ問題が深刻化しているそう。だが、人間の女性ならば獣人の子を妊娠しやすいのだと言う。そこに目を付けた人身売買組織が各国から若い女性を攫っているらしい。被害者ならば保護するから、リリーにも話を聞きたいんだってさ。カミーラの言葉に眉を潜めるも、正直に事情を話せばいいよと励まされ彼女は頷いた。翌日宿屋に訪れたイスハークを見てあの人に似てる、漠然に思った。彼も虎獣人だからだろうか。聞き取り調査は簡単なものだった。自分は攫われて来たのではない、ここから遠いニホンという国から来たと話せば事件性は無いと判断したらしい。日暮れだったから送ってくれるというので戸惑いつつお願いする。途中、息子を引き取ると道中彼はブランと遊んでくれた。甥っ子たちの世話で慣れていると微笑む姿はやっぱりあの人に似ていた。イスハークはブランを見つめて、白持ちは本当に珍しいとしみじみ語った。聞けば彼の弟も白持ちなのだと言う。それで放っておけなくなったのか、失礼ですが、と前置きこの子の父親は?と尋ねた。躊躇いつつも余計な疑念は抱かせない方が良いと判断してこの子を授かった経緯を話すとイスハークは激怒していた。虎獣人は家族と恋人を大事にするそうで、ムスタの行いは一族の恥だと息巻いている。もしよければ王都に来ませんか?意外な言葉に驚いていると、いずれこの子はあなたの手に負えなくなる。虎族は群れの習性から他人の子どもも自分の子のように接し教育するのだと言う。あなたのことも一族で保護するとも。王都は遠い、カミーラたちと離れてこの人達の所へ赴くのは決心がつかない。お気持ちはありがたいのですが・・・。断った彼女にイスハークはいつでも頼って欲しい。そう言って帰って行った。一週間後、フードを被った冒険者らしき出で立ちの男が来店。席に案内しようとしてリリーは息を飲んだ。慌てて厨房に駆け込み、あの人が現れたと報告するとカミーラはどの面下げてと眉を吊り上げいつのまにやら入り口に立っていた彼に猛抗議。間の悪いことにフランソワに連れられたブランまで顔を見せ、正に万事休す。その子が、感慨深そうな彼に一層怒りが湧いたが、ここで騒ぐのは拙い。カミーラが臨時休業にしてくれて店の奥まったテーブルに腰かけ今更現れた言い分を聞くことに。兄から聞いて・・・。やっぱり、似てると思ったのよね。どうやらイスハークはムスタの兄らしい。訳あって家を出ている彼は騎士団から管轄外の仕事も請け負っていると言う。いつものように御用聞きに向かうとイスハークから烈火のごとく怒られた。何事かと問えば、お前が求婚印を付けたクセにポイ捨てした女性がその時授かった子供を一人で育てていた、最低な事をした自覚はあるかと責められ愕然としたのだそう。決め手はブランの容姿と父親も白持ちということ。そして求婚印から漏れ出る魔力。その時は言及されなかったが、イスハークは確信があったのだろう。それ以前に自分が求婚印とやらを付けられていたとは。その印は所謂マーキングで、白持ちの魔力はすさまじい。後からカミーラに聞いたらあれがあったら番のいる獣人以外は怖くて近寄れないらしい。何故かやたらと若い男性客から遠巻きにされていた理由が判ってガックリ。まぁ、恋人が欲しいわけじゃなかったからいいけど、勝手にそんなものつけておいて放っておくとか酷くない?どうやら彼なりに事情があったみたいだが、それならそれで何か一言位あってもいいはず。彼女の怒りは尤もで、平謝りのムスタはどうか俺の実家に来て欲しいと頼んだ。ブランは白持ちだけでなく虎の姿にも変われる更に希少種らしく、相応の教育が必要なのだとか。虎のことは虎族が担う。彼の両親も責任を取らせてほしいと懇願しているようで、困り果てた彼女はカミーラたちを見た。彼らも私らは熊獣人だから確かに虎の習性は判らないからねぇと肩をすくめる。一先ず、あちらで暫く暮らしてみたらどうだい?とアドバイスされ渋々頷いた。数日後、リリー親子とムスタは王都へ旅立った。兄から彼女の状況を聞いてからというものムスタはひたすら後悔している。侯爵家の息子で白持ちの彼との結婚を望む一族の女性のせいでエライ目に遭った彼は他人を信用できなくなり、心配する家族に迷惑をかけたくなくて家を出た。そして冒険者になって十年、彼は運命の番である小百合と遭遇。見たことのない服装にかかとの高い靴。まさか自分の番が娼婦だなんて、どこか静かな所で休みたいのだと誘われ、浮かれていた気持ちが見る見る萎んでいく。それでも大事な番、こうなったらすぐにでも印をとその儀式に必要な名を尋ねれば水瀬小百合なんて偽名を名乗る始末。腹が立って印だけ強引に付けて翌朝彼女を置いて来てからモヤモヤしていた。兄からどうして印をつけて置いて行ったのだと責められ娼婦だと思ったのだと答えれば兄は天を仰いで、お前がこれほど愚かだとはと心底呆れている。彼女は別の国から来たばかりでただ戸惑っていただけだと聞かされムスタは茫然。勘違いを含めて彼女と息子をこの家に置いて欲しいと頼んだら父はもっと怒っていた。とにかく、リリーさんに許しを貰ってからよ、母にも厳しく言われなんとか王都に来ることだけは承諾してもらった。後は自分の過ちを何度でも詫びて誠意を見せるしかない。数日の旅を経て実家に着くと家族総出で二人は出迎えられ、手厚い歓迎を受けるとリリーは戸惑っていた。長兄の子供たちとすぐさまブランは仲良くなったので虎族の習性については遊びながら学んでいくことだろう。反省しているのが伝わったのか暫く経つとリリーの態度も軟化してきたように思う。しかしそんな最中、噂を聞きつけて屋敷を訪れた従姉妹のルウルウがリリーに敵意を向けて・・・。異世界転移してすぐに危機に陥った小百合を救ったのは銀髪の獣人・ムスタ。しかし、やり捨てられた上に後に妊娠が判明し、周囲の人々の助けを借りて女手一つで息子を育てていました。時は流れ、とある偶然から一人の騎士と知り合いそれがなんとムスタの兄。イスハークの話で自分はとんでもないことをしてしまったと猛省した彼は番になった彼女との結婚を望むも小百合はムスタを許すことが出来ずにいました。まぁ、状況からしてこれは当然。ぶっちゃけムスタのあの時の行動は人でなしすぎますもん、なので親子を見守っていたカミーラたちや、ムスタの家族もおいおい何てことしてくれたの、と彼を厳しく叱責。小百合の方にも誤解される要素があるにしても依然として悪いのは99%ムスタの方です。なのでもうひたすら謝るしかないわけです。そんな中現れたのは昔からムスタに惚れていた彼の従兄弟のルウルウ。皆の留守中、白持ちの母ならもっと体力つけないとだめよ、と訓練に誘いハプニングを装って小百合に大けがを負わせてしまいます。ルウルウはポーションがあるから死にやしない、治ったら怖くなって逃げだしてくれれば御の字と目論んでいましたが、小百合は異世界人の弊害かポーションが効かない体質でした。出血多量でぐったりする彼女を見てムスタは暴走し、という展開です。番ならではの効果で小百合も生還しムスタの暴走もおさまるんですが、何してくれてんのこの娘。騒動が落ち着いた頃、ルウルウは厳しい罰を受ける羽目に。意識が無い間、小百合は夢を見ていました。両親が存命中、熱を出した彼女に二人が看病してくれた。その時、母が呼んだ名前は・・・。実は水瀬小百合というのは遠縁に引き取られてから付けられた名で、それも自分の娘がユリというからという理不尽な理由。四歳までの名は白石ゆり。それこそが彼女の本当の名。それを思い出した彼女はだからあの時ムスタが釈然としていなかった理由に思い当たり、彼に本当の名を告げるのでした。この名前への言及が作中何度かあったので、おそらく何かあるんだろうなと思ってたらなるほど~~。誤解が解けたのもあり、ゆりも結婚に承諾して〆。おまけの番外編ではユリはか弱いからとやたらと過保護に接するウルド家の人々にゆりが辟易するというエピソードでした。そりゃ、虎の獣人に比べれば人間の女性はか弱く見えるよね。微笑ましいお話で最後の最後で漸く仲の良い二人の様子が読めて良かったです。評価:★★★★★
2026.07.21
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2025年4月刊ティアラ文庫著者:真波トウカ(敬称略)転生先で皇帝ラーシュから突然求婚されたシルヴィア。娘に『悪女教育』をしろと言われ戸惑うけれど、彼女が前世に読んだ小説の悪役令嬢だとわかり!?断罪の未来を阻止すべく、奮闘していたら「愛するつもりはない」と冷徹だった夫に変化が…?「お前の蕩けた顔もかわいい」優しく気遣われながらの愛撫。奥深くまで繋がれば、幸せに満たされー。孤独な氷の皇帝の雪解け愛! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 シルヴィア=王子を誑し込んだ悪女として国外追放になった男爵令嬢。 ラーシュ=ローガイル帝国皇帝。シルヴィアを妃に迎える。 アリス=ラーシュの義娘。アンジェリカ=ラーシュの妹。公爵家に降嫁した。 カミラ=アリスの教育係。第一王子の誕生日祝いのパーティーの夜、ルースト男爵令嬢・シルヴィアは国外追放を言い渡された。どうやら私は第一王子を誑し込み、かなりの額を貢がせていたらしい。そんな姉を快く思っていないシルヴィアの弟・スチュアートの告発によって彼女の罪は詳らかにされ、大ピンチ。国外追放なんて、当然家からも勘当されるのよね。それは拙いわ、だって私、ここがどこかも判らないんだもの。中世ヨーロッパ風の装いの人達、シルヴィアと呼ばれた自分も豪華なドレスを身に着けている。もしかしてこれも王子に強請って買ってもらったのかしら。しかも、手玉に取っていたのは王子だけではないらしい。弟の証言によれば他数名からも貢がせその見返りにただならぬ関係を続けていたのだと。森野舞子だった頃は奥手で初めて出来た彼氏も深い関係になる前にフラれていた。そんな自分が恋多き悪女とは。とにかく、私は異世界転生とやらをしてしまったらしい。見覚えのない罪で裁かれるのは悲しいけれど、国外追放で済んだだけマシだと思わなければ。この断罪劇で初めて自分が騙されていたと知った王子はさめざめ泣いていて、足元には彼が用意していたらしい大粒のダイヤモンドの指輪が転がりシャンデリアの明かりを受けてきらめいていた。なんか、ほんとごめんなさい。兵士の一人がシルヴィアの手を引き連れ出そうとしていると、それを止める声が。彼女は我が国へ連れ帰る。そう宣言したのは大国ローガイル帝国皇帝ラーシュだった。しかも、なんと彼はシルヴィアを自分の妃にするつもりらしい。必死に止める宰相の言葉に効く耳持たず、なんと彼は王子がショックを受けて落としたあの指輪を拾い上げ、シルヴィアの左手薬指に嵌めるとニヤリと笑んだ。数日後、シルヴィアはローガイル帝国皇宮にいた。あの指輪の件と言い、どう考えてもシルヴィアに惚れて求婚したとかでないのは判る。一体何のつもりでこんな悪女を迎え入れたのか。初夜なのでこの部屋で待つよう言われたがあの調子じゃ来ないかもね。それならのれで気楽でいいとベッドに寝転がっているとドアが開いてギョッとする。ガウン姿の彼を見て、まぁ一応するつもりはあるのね。内心がっくりしながら身体を固くしていると。その前に話があると言う。ラーシュが告げたのは娘の教育をシルヴィアに任せたいのだそう。しかし、皇女ならば専門の教育係がいるはず。一介の男爵令嬢に教えられることがあるとは思えない。疑問に思っていると、お前に教えて欲しいのは悪女のたしなみだととんでもないことを言い出した。とにかく娘には図太く強かになってもらいたい。その内容にシルヴィアはポカン。この人正気?だが、その顔は至って本気モードで本心で言っているのが判ってシルヴィアは怒りに震えた。おまけに報酬としてお前に世継ぎを産ませてやる。あのバカ王子を篭絡したんだ、それが目的だったんだろ?と押し倒され、ついに彼女はプッツン。シルヴィアの正拳がラーシュの頬に炸裂していた。しまったと思っても後の祭り、あの夜以来ラーシュとは顔を合わせていない。そんなある日、彼女は庭園で皇女・アリスと遭遇。その容姿と名前で、漸くここが前世で愛読していた「恋と情熱のセレナーデ」の世界だと把握。でもこの子が。年齢を聞いたらまだ十歳だと言う。物語のアリスは十七歳だったから、物語の始まる前の世界か。でもこの子、こんなに大人しいのに七年後にはヒロインを虐めその恋を邪魔する悪役キャラになるのよね。しかも色々やり過ぎて処刑されてしまう。もしや、シルヴィアの悪女教育のせい!?ラーシュの依頼でそのまま悪女たらんと教え込まれた結果があの最後なら可哀想すぎる。全く何考えてんのよ、あの男。可愛い娘が死んでもいいわけ?一層怒りを募らせたシルヴィアはアリスの手をガッシリと握ると先日輿入れして来た皇妃よ、仲良くしてねと微笑んだ。中庭から聞こえる笑い声に目線を向けるとシルヴィアとアリスが楽しそうにおしゃべりしている。仲良くなったのはいいが悪女教育しているようには見えない。男爵令嬢風情が多くの高位貴族達と関係を結び、第一王子まで篭絡していたと聞いて正直驚いたが、その強かさは大したものだと思う。その図太さがアリスにも備わればあの子もビクビクすることはなくなるだろう。シルヴィアを皇妃に迎えたのはそれだけの理由だ。まぁ、見返りとして国母に位はしてやってもいい。そう提案したら最低だと拳で殴られた。全く何が気に入らないんだ。アリスを懐柔してどうするつもりだかしらないが、警戒するに越したことはない。幼少時に毒殺されかかってからというもの、ラーシュは他人を一切信じられなくなっていた。少し厳し過ぎやしないかしら。教育係のカミラは皇女と言えど容赦しなかった。皇族は強大な魔力を持つ者が多く、ラーシュとアリスは氷魔法を使う。自在に使いこなせるよう習うのは当然の授業だが、問題は教え方だ。口出ししないと言う約束で見学しているシルヴィアはイライラ。同じ授業を受けているアリスの従兄弟イクセルばかり褒められて彼女は落ち込んでいる。そのあとお茶の時間にアリスが自主練したいというので付き合い、なら自分もとわずかに使える土魔法の練習を始めた。おかげで簡単なアレンジ法も覚えてご満悦。数日後、今日も二人で自主練に向かうと訓練場が妙に暑い。不思議に思いつつ、足を踏み入れると火柱が上がり二人を包み込んだ。何とか土魔法でドームを作りその中に逃げ込んだものの、アリスを庇いシルヴィアはあちこちにやけどを負った。ドームを維持するため魔力を使い過ぎ眩暈を起こしたシルヴィアは倒れ込む寸前誰かに抱き留められていた。目を覚ますと自室のベッドでラーシュが付き添っていた。なんと自分は数日間眠っていたらしい。ラーシュの話によれば酷い火傷を負ったが治癒魔法が効いて暫くすれば完治するそう。失神したのは魔力が枯渇したから。どうやら火柱を発見した彼が氷魔法で火を鎮圧。アリスとシルヴィアを救出したのもラーシュだった。素直に礼を言えば、その前に謝らせてほしいと彼は立ち上がるといきなり土下座した。呆気に取られていると、君のおかげで兄の大事な忘れ形見を守ることが出来たのだと、自らが産まれてからと言うもの、この皇室で起きた事件を語った。元々、この皇族は暗殺が多かったのだそう。かくいう自分も毒殺されかけ、毒見後以外の食事は受付なくなり家族にも気を配った。だが、ラーシュの兄である先帝とその妃が毒殺された。犯人は料理人夫婦ですぐに逮捕され処刑になった。一人になったアリスを養子にし、迂闊に他人を信じるなと教え込んだ。図太くしたたかに生きろと。彼に話を聞いてなるほど、悪女になれってそういう意味だったのねとシルヴィアも納得。でも、それじゃダメなのよ、ラーシュ。確かに強さも必要だろう、でもまずはアリスを信じ愛してあげなきゃ。素直に意見を述べれば彼は理解不能と言った表情。だが、君のことなら信じられる。そう言って俺はこれから君を心から愛そうと思う。またなんか変なこと言い出したよ、この人。信用してくれるのはありがいが、何か極端なのよねこの人。今もおかゆを手ずから食べさせようとシルヴィアに口を開けるよう促している。仕方なく口を開け受け入れ、犯人に心当たりはあるのかと尋ねれば、渋い表情で降嫁した妹かもしれないとポツリ。ああ、イクセルを王位に就けるため?教育係のカミラの態度からして、秘密裏にそう言い含められているのかも。氷の大地を炎の力で切り開いたと言う建国神話があるこの国には炎魔法使いの皇族が皇位を継ぐべきと主張する赤のイニティウム教団がある。そこがラーシュの妹・アンジェリカを焚き付けていたとしたら?アリスの為にも、シルヴィアは自分も調査に協力すると申し出て・・・。悪女に転生した主人公と他人を信用できない皇帝のお話です。子育てものでもあるので、人気ジャンルのいいとこどりの内容になってます。そんなヒーローとヒロインが、とある教団の調査に乗り出します。果たして本当にラーシュの妹は教団と結託してアリスを狙い、実の兄をも殺そうとしているのか?しかし、調べが進むうちに意外な事実が判明して、という展開です。結果的に、ラーシュの身内は全員シロだったわけですが、モブかと思ってたキャラが内通者で先帝夫妻の殺害にも関与していたのが判ってビックリ。正直、このキャラは数ページの出番かと(^_^;)色々ハプニングに見舞われながらラーシュを意識し始めるシルヴィアは最後は彼を受け入れ、エピローグではすっかりラブラブ夫婦に。子どもも授かり、アリスを交えた皇帝一家の日常が描かれて物語は幕。大筋は結構シリアスなんですけど、コミカルなやり取りも多く面白かったです。評価:★★★★☆
2026.07.20
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9月1日 TOブックス 代筆令嬢リゼットはくじけない ~あなたの代筆はもうやめにします~ 糸四季9月2日 講談社単行本 捨てられ聖女は契約結婚を満喫中。後悔してる?だから何? miniko9月15日 富士見L文庫 一途な若頭は孤独な蝶に愛を誓う 美月りん 捨てられ聖女は働かない! 追放されたので念願のスローライフはじめます イチカ 神さま屋敷の見習い花嫁 引きこもりの婚約者と神域を守ります 雨傘ヒョウゴ 英国紳士と大和乙女 旦那さまは異国の言葉で愛をささやく 七沢ゆきの9月24日 メディアワークス文庫 婚約者の王子に毒を盛られたので愛が冷めました 3 あさづきゆう 月見荘にただいま ~ワケあり三世代女子、ご縁に感謝の幸せな旅路~ 星奏なつめ9月25日 角川文庫 陽性令嬢のふたつめの恋 東堂燈10月15日 サーガフォレスト 未亡人エレンの幸せな人生 2 今さら愛してると言われましても マチバリ10月22日 アース・スター文庫 虐げられた聖嫁は、政敵の当主に愛される 江東マシメサ 悪女は帝都に咲き誇る ~最凶の悪魔と結ぶかりそめの番契約~ 編乃肌(敬称略)
2026.07.19
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2026年6月刊スターツ出版文庫著者:蓮水涼(敬称略)国の災いを占ってきた名家の分家・桜木家に生まれた志乃は忌み嫌われる能力を持ち、「化け物」と虐げられていた。17歳になったある日、妖魔が住む森に捨てられてしまい襲われているところを、星を閉じ込めたような瞳が美しい最強の軍神・篝に救われる。「俺がお前を拾ってやる」と屋敷に連れ帰られた志乃は居場所を見つけていく中で隠れた能力を引き出される。能力を利用されるだけと思っていたのに「一生離すつもりはないから、覚悟しておけよ?」と、なぜか篝に愛を注がれーー⁉ 契約から始まる和風シンデレラ物語! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 桜木志乃=人々から忌み嫌われる力を持つことで家族から虐げられていた。 夜ノ宮篝=退魔十隊零番隊隊長。志乃を助け、保護する。 桜木澪=志乃の異母妹。神楽木誠一郎=桜木家の本家に当たる神楽木家の先代当主。産まれた時から両親に疎まれているように感じていた。しかし、それは志乃の勘違いなどではなく、自分は家族扱いさえされていなかったと知ったのは十歳になるやならずだった頃のこと。妹の澪と二人出掛けた先であやかしに襲われた際、なんと志乃は襲い掛かって来るあやかしをその身に吸収してしまったのだ。「妖喰」と呼ばれるその能力は、不吉であり吸収したあやかしから発せられる瘴気を垂れ流す。その日を境に両親は志乃を切り捨て、以降地獄のような日々が始まった。時は流れ、志乃は十七歳になった。今日は女中頭に難癖を付けられた挙句、箒で強かに殴られた。志乃が妖喰と発覚したことでそんな人間を輩出したことが世間にバレてこの家は本家・神楽木ヶ当主から出禁を言い渡されたと聞く。お前のせいだと両親から責められ、一層扱いは酷くなっている。それでも我慢しなければ、妖喰はどこでも嫌われる存在。結局ここしか志乃の居場所はないのだから。日給代わりの握り飯と沢庵数切れを持って寝床にしている土蔵に戻るとドッと疲労感が押し寄せた。何とか握り飯を食べ終えうとうとしていると突然口をふさがれ引き起こされた志乃は訳が分からぬまま夜の山中へ。ふと気づくと周囲は瘴気で満ちていて、一人のあやかしが佇んでいるのが見えた。人の気配に気が付けば両親と澪の姿。そして数人の男たちが事の成り行きを見守っている。動けずにいるとあやかしは一歩一歩近づいて来て「雨蓮」と名乗るとあなたに殺されに来たと告げた。すると、雨蓮はあの時のあやかしのように志乃の身体に吸い込まれて行く。その様子にその場にいた者たちは唖然。厄介者を始末するはずが堕ち神すら役に立たないのでは自分たちの手には負えない。このまま殺してしまうには惜しい能力。本家なら上手く使えるだろう、だがどういう扱いを受けるかは判らないけど。そう提案したのは継母だった。泣いて許しを請う志乃の言葉は無視され絶望していると、一人の青年が現れ志乃を取り押さえる男の手を引き剥がした。その制服は志乃も知っている。この国をあやかしの脅威から守る退魔十隊。青年と父の間で少々悶着はあったものの、あの場面を退魔十隊の者に見られたのは非常に拙い。なにせ娘をあやかしに食わせようとしていたのだ。父は御三家の者でもないくせに、と口出し無用を決め込んだが結局、志乃は青年が保護することが決まった。目を覚ますと上等な布団に寝かされており、胸の上には子犬よりも小さい灰色の獣がすやすや眠っている。起きたか?そう言って入って来たのは昨夜の青年。彼は夜ノ宮篝と名乗り、この屋敷は彼の受け持つ零番隊の寮代わりだと説明を受けた。その後、他の隊員たちの紹介を受けたが、まったく志乃のことを忌み嫌っている様子はない。不思議に思っていると、ここはワケありな奴らばかりなんだ。と不知火と名乗った強面の隊員が疑問に答えた。聞けば、あやかしとの混血もいると言う。隊長はそう言うのばかり拾って来るんだ。そう笑いながら皆を見回し笑みを浮かべる。志乃のこともいつもの悪い癖が出たと思っているらしい。一先ず志乃はこの屋敷で暮らすのが決まり、篝が護衛に就けた式神とも随分仲良くなった。あいつらが俺以外に懐くなんて・・・。驚きつつも志乃はあやかしに好かれやすいのかもなと彼女の頭を撫でた。そんなある日、屋敷でちょっとしたハプニングが起こり、知らせを受けて篝が志乃を心配して飛んで帰って来た。大したことが無くて良かったが、篝は素手で志乃の背中に触れてしまったのに気付いて狼狽。気になって彼の部屋を訪ねるといつものように手袋をはめていた。篝は志乃の体調に変化が無いと判るとあからさまにほっとして済まなかったと頭を下げた。俺は他人の霊力を吸ってしまう体質なんだ。観念したように告げられたのは彼の特異体質のこと。この力のおかげで弟を殺しかけ家族に疎まれていたとも。そうか、この人も家族に受け入れてもらえなかったのね。一応、手袋をしてれば力は抑制できるらしいが、確かに素手の彼に背中を触れられた時は何か吸い上げられる感覚があった。でも物凄く身体が軽い。そう告げると、本当か?と彼は驚き、もしかしてお前の身体の中にいるあやかしの瘴気を吸っているのかもしれないと仮説を立てた。なら、俺が定期的に瘴気を吸い取ってやると言われ、結果お願いすることに。その頃、桜木家では志乃が篝の屋敷で悠々暮らしているようだと苦々し気に告げる当主に後妻と澪が噛みついていた。あんな化け物が夜ノ宮篝さまの庇護下にいるなんて!爪を噛みながら、母親に耳打ちされたある作戦に乗ってみようかと思い出してた。母に告げると互いに協力して欲しいものを手に入れようと意気投合。やがて彼女はある呪物を黙って持ち出し・・・。澪の罠に嵌り身体を乗っ取られてしまった志乃。深層世界で彼女が出会ったのは先日取り込んだ堕ち神・雨蓮。彼は自らが堕ち神になったのかその経緯を語り、志乃の真の力についても教えます。全てを知った彼女は絶対に篝を妹には渡すまいと本来の力を使い、という展開です。まぁ当然志乃の圧勝なんですけど、この実家の面々の愚かな行動によって未だ権力を持つ本家の先代当主の怒りが爆発。そして当主が語る十八年前の真実は驚くべきものでした。この辺りの顛末を読むに、本家に出禁になったのは志乃のせいだけでなく、あのクソ親たちの自業自得なのが判って。娘のせいにするんじゃねぇ!と💢内容としては、王道のシンデレラストーリーになっています。評価:★★★★☆
2026.07.18
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2026年6月刊マーマレード文庫著者:田崎くるみ(敬称略)七年ぶりに再会したエリート御曹司・正真から契約結婚を持ちかけられた桃音。過去の恋を忘れられない桃音と、見合い話を断りたい正真の利害が一致したかりそめの婚約のはずが、彼の甘い過保護さに、まるで本当に愛されているみたいで…。戸惑う桃音を、正真は「世界で一番幸せな花嫁にする」と溺愛で包み込み、昔から秘めていた独占欲を覗かせてー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 松下桃音=高嶺の花と呼ばれる美人社員。 数年前に事故死した恋人を忘れられないでいる。八重野正真=大企業の御曹司。源治と桃音の共通の友人。 有竹源治=桃音の恋人。故人。 奥西皐=桃音の友人。上出亜里沙=正真に想いを寄せている社長令嬢。大手飲料メーカーのマーケティング部に勤める桃音はその外見と誰のアプローチにも靡かない事から「高嶺の花」と呼ばれている。取り立てて自分が美人だとは思っていないけれど、誰にも靡かないのは好きな人がいるからだ。相変わらず凄い人気ね、苦笑する友人の皐は、そろそろ次の恋をしてもいいんじゃない?と最近よく口にするようになった。もう七年、有竹君も許してくれるよ。その言葉に頷けないでいる自分でも判っている、源治はそういう人だった。七年前、二人で憧れのこの会社に入社して二月経たないうちに恋人の源治は酒気帯び運転の車に惹かれて亡くなった。あまりの突然の死に当時の桃音は現実を受け入れられず、両親は娘が後追い自殺をするのではないかと気が気でなかったと言う。それでもなんとか源治の両親や皐からの励ましもあって彼女は立ち直った。が、心は今も源治を思い続けている。もう七年、皆はそう言うけれど桃音にしてみればまだ七年しか経ってないのだ。多分、彼を忘れることは生涯無いだろう。だから一生独り身でも構わない。そんな娘の決意を察してか最近両親がやたらと見合いを勧めて来ている。大分心配をかけてしまっていたし、どうしたって彼らの方が早く死ぬ。一人娘の行く末を案じるのは仕方ない事なのかもしれない。今日も残業中に今度の休みに帰ってこないかと母からの電話が。そう言ってまたお見合いさせる気でしょ?とツッコめばあなたがその気になるまでしつこく言い続けるから、と向こうも一歩も引かない様子。取り敢えず、帰るだけならいいけどお見合なら絶対嫌。強制的に会話を終わらせ嘆息した桃音は、誰か契約結婚でもしてくれないかしらとポツリと呟いた。なら、俺としよう。契約結婚。まさかレスポンスがあると思わず、びっくりして振り向けばそこには大学時代からの友人・八重野正真が立っていた。元々彼は源治の親友で、それが縁で桃音とも親しくなった。この会社の親会社・ヤエノホールディングスの会長の一人息子でもあり数年間の海外勤務を経てここの常務に就任。源治の死を知ったのは帰国してからだそうで、正真は心底悔やんでいた。部署が違うため同じ社内でもあまり顔を合わせたことはなかったが、それにしても彼の発言にどう答えれば良いやら。両親に心配をかけるのは本意ではない、だから結婚する方が良いのだろう。でも、夫を愛せるとは思えない。だから愛情を求められない契約結婚してくれないかと呟いたにすぎないのだが・・・。すると、実は俺も困ってるんだ。正真が言うには、実は系列会社社長の令嬢にしつこく結婚を迫られているそう。彼の両親も息子にそろそろ実を固めて欲しいと思っているようで、下手すると縁談を纏められかねない。そこで、こちらも両親を安心させられるし、見知った桃音なら大歓迎だろう、と。私、一生源治のこと忘れないよ?そう問いかけると彼は構わないと言う。だからこその契約婚なんだろ?ああ、格差婚どうこう悩んでるなら、うちはそういの気にしない親だから。ニカっと笑う彼に懸念事項を払拭され、桃音は少し考えさせてほしいと返事を保留にして貰った。翌日、正真に許可を貰い皐に事情を包み隠さず話すと驚かれはしたものの、心配はあるけれどと前置きそういうのもいいんじゃないと微笑んだ。寧ろいいきっかけになるかもしれないよ、とも。ただし、後悔しないって前提よ。ばっちり釘を刺されおずおずと頷いた。有竹君に悪いと思っちゃダメよ、寧ろ絶対喜んでる。だって彼の親友だったんでしょ?八重野常務って。皐の問いかけにそれは勿論と肯定し、数日後正真に返事をした。結婚報告に互いの両親は大喜び。寧ろ、見合いや縁談を断っていたのは桃音ちゃんがいたからか、父はあのお嬢さんなら大歓迎だと母と手を取り合い踊り出しそうなほど。親友の恋人に想いを寄せているのは申し訳ない。入社したら初めての給料で指輪を買ってプロポーズするんだと源治から聞いて、つい逃げ出してしまった正真はアメリカでがむしゃらに働いた。漸くいっぱしになって二人にもおめでとうと言える心境になったのに、自分が旅立ってから少しして親友は事故死していた。共通の友人から話を聞いて墓参りに行った正真は、その足で源治の家に行き、彼の母から源治からの手紙を預かった。住所も知らせなかったので結局投函されなかった正真宛の手紙には黙っていなくなった正真への恨み言が少しと、桃音へのプロポーズのことでの相談。そして、正真が桃音を好きなことに彼も気付いていたことも綴られていた。俺に遠慮なんかするな、もしかして気持ちを伝えたらお前が選ばれるかもしれないだろ。え、もしかして俺フラれる?段々弱気になっていく文面に泣き笑いしつつ、最後には、もし俺が不慮の事故や病気で死ぬようなことが合あったら桃音を頼むと〆られていた。桃音のことは源治の両親も心配しており、息子を偲んでまだ独り身でいるのを気にかけ、会うたびにどうか新しい人を見つけて幸せになって欲しいと話していたそうだ。彼女も源治を忘れないときっぱり言っていた。なら、彼ごと桃音を愛するだけ。二人の婚約は社内でも持ち切りだった。やはり高嶺の花は常務くらいのスペックでないと落とせないと口さがない事を言うものもいたが、おおむね好意的に受け止められているようだ。皐は式での友人代表スピーチをやるのだと今から張り切っている。式場も決まり、両家族の顔合わせも済んで後は諸々の準備に追われている。正真とはあれから何度かデートをし、手料理を振舞った。そう言えば、源治に食べさせたいと手作りクッキーの試作品をしこたま正真に味見させたことがあったっけ。生焼けや固すぎるのもあったりで今思えば申し訳ない事をしたものだ。今度はあの頃より上達したクッキーを食べて貰おう。上機嫌でそれ以外のおもてなしメニューを考えているといつのまにやら最近正真のことばかり考えているのに気付く。源治の写真立てを撫でながら、自身の心境の変化に一抹の寂しさを感じていた。正真との婚約発表から暫く経った頃、自社ビルから出た桃音は一人の若い女性に呼び止められた。あなたが松下桃音さん?問いかけられて肯定すれば、この泥棒猫っと怒鳴りつけられた。唖然とする彼女に女性はあなたが横から正真君を取ったせいで私フラれたのよ、しかもこんな一般家庭生まれの女をなんで!呆気に取られて一言も返せないうちに女性は言いたいだけ言うとさっさと立ち去っていく。どうやらあの人が正真君が言ってた社長令嬢のようだが、まだ向こうは諦められないらしい。正真への想いを自覚し始めた途端にこれか、何やら大荒れしそうな予感にため息が出た。数日後、社内に桃音に関する根も葉もない悪評が広まり・・・。契約婚ものです。亡くなった恋人が忘れられず恋から遠ざかっていた桃音の恋人込みで愛する正真が一つの形として契約婚に踏み切りますが、いつしか桃音も彼の愛情に触れ想いを寄せるように。これなら問題なくゴールインできるじゃない。そう思っていた頃にお邪魔虫登場ですよ。亜里沙はずっと正真にアタックし続けていたものの、桃音を思い続けていた彼が靡くはずもなく。そうこうしているうちに桃音との婚約発表で亜里沙は激怒。彼女に喧嘩を売りに行ったわけです。このお嬢様もまぁ本気で彼が好きだったんでしょうけど、さすがに家柄で文句つけるのは見苦しい。しかもあの悪評を流したのもこのお嬢様。謂れの無いことに一時桃音も皆から白い目を向けられるも、皐を始め、彼女の人となりを知る同僚たちはそんなわけないだろ、と真に受けませんでした。しかし、自分のことはいいけれど、正真まで悪く言われるようになっていたので桃音は胸を痛めます。そんな彼女を他所に、彼もまた父である会長は噂の出所について調査を進め、それが亜里沙の仕業だと突き止めるのでした。そして創立記念パーティーで正真は正式に桃音との婚約を発表。亡き親友との約束と自らの長年の想いを込めて婚約に至った経緯を語ります。桃音の悪評についても事実無根ときっぱり否定した彼の堂々とした姿に出席者は大きな拍手を送ると、亜里沙と上出社長はぐぬぬ。まだ家柄がどうこう言い出す社長にそんなことよりあなたの娘はどういう了見であんなことしでかしたんで?と問えば、はて?亜里沙が桃音の悪評をバラまいた張本人だと知って社長はビックリした後、平謝り。好きならどんなことをしてもいいわけじゃないと滾々と会長にも説教され、漸く娘の愚かさを知った社長は二度と関わらないと約束し問題は解決するのでした。本当にこのお嬢様はただの世間知らずだったので、さすがに相当絞られたらしくもう反省した後、家事手伝いを止め、働きに出ることを決めたそう。諸々の問題が片付き、源治の写真が見守る中二人の挙式の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編はその後日談で約一年半後、長男を授かった桃音の妊娠判明から出産までの日々のエピソードでした。読んでて何回泣いたか知れないお話です。もう、正真の覚悟もだけどやっぱり源治がいい人過ぎて・・・。聊か重いテーマでしたが、だからこそ番外編での幸せな家庭の一コマが効いて来ると言う内容でした。名作。評価:★★★★★
2026.07.17
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8月27日 フェアリーキス 包帯殿下の呪いを愛でていたら、左遷侍女なのに溺愛されています 小桜けい9月3日 ヴァニラ文庫 冷徹騎士侯爵様は日陰者の薬師令嬢をとことん愛して幸せにしたい(仮) 佐倉紫9月4日 集英社 無能魔女の甘すぎる誤算 成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが 三沢ケイ9月8日 ブシロードワークス 召喚されたぽっちゃり聖女は、異世界をたくましく生きる 星名こころ9月18日 一迅社文庫アイリス 雇われ聖女と恋する魔王(仮) まなほし央9月25日 チュールキス文庫more エリート弁護士との秘密の婚姻関係 ~愛する旦那様でしたが、契約結婚解消します!~ 佐木ささめ9月28日 フェアリーキスピュア 王立図書館司書の侯爵夫人は離縁を望む 忘れ去られた王女の日記が紡ぐ運命の糸 東原ミヤコ10月2日 IRIS NEO 私、モブのはずでは? ~嫌われ悪女なのに推しが溺愛してくる~(仮) 皿うどん10月22日 蜜猫文庫 氷血と恐れられる国王陛下と死に戻り王女の政略結婚(仮) 御厨翠(敬称略)もう10月の予定が・・・。
2026.07.16
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2026年6月期スターツ出版文庫著者:時岡継美(敬称略)玉蘭は元平民で、後宮入りした最下位の妃候補。後宮内で虐げられていたが、何故か美麗の皇帝・皓月のお渡りがあり、子を身籠ってしまう。唯一の味方である妃候補・揚揚に相談すると、身の安全のため、しばらく懐妊したことは黙っているよう勧められ、その通りにしていたが…。揚揚は玉蘭を裏切り、偽装懐妊で皓月の気を引こうとして!? さらには、揚揚に殺人未遂の濡れ衣まで着せられてしまう玉蘭。絶体絶命のピンチの中、皓月だけは一途に玉蘭を愛し、全てをかけて守ってくれてーー。後宮大逆転シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 玉蘭=辺境の村で機織りをしていた平民の娘。 巫女の資質を認められ後宮入りする。 皓月=耀華国の新皇帝。玉蘭を気に入る。 楊楊=玉蘭の友人。 芳夫人=巫女たちの教育係。先代皇帝の巫女。 皇太后=皓月の母親。先代皇帝の后。 秋香=玉蘭付きの女官。耀華国皇帝は竜神の末裔と言われている。故に、その伴侶となる者も巫女としての資質を持つ者から選ばれる。半年ほど前に先代皇帝が身罷り新皇帝が即位した。それに合わせて、新たな巫女たちが後宮に召喚されているらしいが、玉蘭は平民の自分には関係のない話だと思っていた。が、数日後、皇宮から巫女選定の役目を担った使者たちが訪れ、住民達は騒然。皇帝を支える巫女は皆何かしらの力を持っているらしい。村長の家に集められた独身の女たちは使者が持参した水晶に手を当てるよう指示され、いよいよ玉蘭の番。恐る恐る掌を当てると淡く光った。その弱弱しい光に使者たちは皆困惑していたが、協議の末に玉蘭は後宮に連れて行かれることが決まった。翌日、両親と村の衆に見送られ彼女は王都へ旅立った。巫女に貴賤は無い。確かに後宮には平民生まれの巫女も何人かいた。しかし、やはりここにもカーストはある。宰相の娘だという麗凛がその頂点ならば、玉蘭は底辺に当たる。とは言え、後宮の外れに建つこの宮は他の宮に比べるとみすぼらしいけれど、故郷で両親と住んでいたボロ屋よりよっぽど広いし快適だ。それに世話係の女官・秋香は出来た女官で随分と助けられている。その秋香から、もうすぐ陛下がいらっしゃいますよ。と報告を受け生返事をする。今日は月が綺麗ね。皇帝・皓月はどうしてだか、初のお渡りの日以来、玉蘭を気に入り週に何度も通って来る。多分、ただの気まぐれだ。私が滅多に見ない田舎娘だから・・・。聞こえよがしな陰口には傷つくが、そんなこと言われずとも本人が一番判っている。最下位の巫女が陛下の寵愛を戴いている。目を吊り上げているのは巫女たちだけではなく、先帝の巫女を務めていた芳夫人も玉蘭を虫のように毛嫌いしていた。やはり平民は学が無いと嘲笑い、巫女たち全員の務めである清めの儀も全て丸投げされて、早朝に神代を抜け出し出て行く玉蘭を見送って皓月はため息を吐いた。竜神さまはいると思います。最初の渡りの日、目を輝かせて彼女は言った。飾らないその言葉や話に知らず笑みがこぼれ、足繁く通っていたが、少々多すぎたか。他の巫女にも気を配って下さいと宦官長に苦言を呈され思案していた所、玉蘭が芳夫人にいびられているのを知った。皓月の母である皇太后のライバルだったという芳夫人はプライドが高い。皓月が玉蘭に目をかけているのが気に食わないのだろう。しかし、全員の持ち回りである清めの儀を彼女一人に押し付けるとは。流石に見過ごせず、それはいかがなものかと夫人に言えば、渋々全員にやらせると言う形で落ち着いた。最近の玉蘭は体調が悪いのか、あまり食欲もないそうだから清めの儀がひと月に一度に変わって休めるようになるはず。後で桃でも届けよう。皓月がそう考えていると、玉蘭と仲の良い巫女・楊楊の懐妊が報告され固まった。どういうことだ、皓月は玉蘭としか夜を共にしていない。聊か潔癖な性格の皓月は、他の巫女たちとはただ会話し少し酒を飲んだら宮を出ていた。だから楊楊の懐妊はあり得ないのだ。真偽を問い質すと、これが自分の力なのですと楊楊は微笑んだ。陛下と私の竜気が合わさり処女受胎したのだと。侍医に診察させると妊娠はしていないようだが、竜気がどうこう言われると迂闊な事は言えないと言う。結局、産まれてみないとと困り顔。この発表に玉蘭はショックを受けているだろう、嘆息しつつ宦官長からの言葉もあって、皓月は暫く彼女の宮に出向くのを控えたのだが、これが後に要らぬ誤解を生むことに。まさか楊楊が私と同時期に懐妊するなんて・・・。秋香も気付いていそうだが、自分から尋ねてこないのをいいことに玉蘭は自分が妊娠していると確信していた。ここ最近体調不良なのは十中八九そのせいだ。先に楊楊に指摘され、多分と答えたら危険だから暫く陛下にも言わない方が良いよ釘を刺されていた。なのに、その楊楊が先に公表するなんて。その意図は測りかねるが、彼女が皓月のお気に入りなのは判っていた。だって、陛下から貰ったという簪を大事にしてたもの。私だけじゃない、後宮にいる巫女たち全てが陛下のものなんだから。現にあれ以来陛下の渡りがない。それから暫く経った頃、久しぶりに玉蘭の元を訪れた皓月はお守りだと自らが狩った牡鹿の角を加工した佩玉を手渡した。皓月は明日から各地を回る巡行の旅に出る。ひと月はかかるそうなのでまた会えなくなるのが寂しい。だが、彼もまたお揃いの佩玉を持っていくのが判り、胸が熱くなった。数日後、楊楊が食欲がないならと薄荷水を土産に携えやって来た。悪阻は大丈夫なの?と尋ねると私は軽い方だからと微笑み、あなたの方こそと逆に心配された。陛下が戻られたら私も報告するつもり、そう話すと、その方がいいと同意してもらえた。楊楊の邪魔をするつもりはない。ただあの人に知ってもらいたいから。最近暑いからよく眠れる香を差し入れするわね、そう言って楊楊は自分の宮に帰って行った。届けられた香は確かに良い香り。秋香に頼んで香炉に火を入れてもらい横になった彼女は奇妙な夢を見た。無意識に起きようとするも金縛りにあったみたいに動けない。必死にもがく玉蘭の耳に子供の声がこっちだよと呼ぶのが聞こえて彼女は目を覚ました。秋香も同じように金縛りに逢っていたようで、起きるや否や激しい咳をした。その背をさすっていた玉蘭は、慌ただしく入って来た兵たちに拘束され大混乱。彼らが言うには、なんと楊楊が呪詛を掛けられケガをしたのだと言う。呪術師に調べによりそれが玉蘭の宮から発されたものだと判り容疑が晴れるまで拘束されると話した。独房に入れられた玉蘭はまだ膨らんでいないお腹に手を当て礼を言った。ありがとう、あなたが助けてくれたのね。目を覚ます直前、導くように声をかけてくれらのは絶対にこの子だ。問題はこれからのこと。身に覚えのない事だと幾度も言ったが疑いは晴れず、更には芳夫人による証言で益々拙い事態に。楊楊だけでなく陛下の御子殺害は重罪として皓月の留守中だと言うのに、玉蘭の処刑が決まり・・・。この事件は楊楊と芳夫人が手を組んで仕掛けた罠でして、玉蘭は嵌められただけでした。当然、楊楊は妊娠していません。よくもまぁ竜気が交わったおかげとかいう嘘つけるよなぁ、皇帝相手に。それと呪詛の痕跡は単にお腹の子によって呪い返しされたからです。でもおかげでそれが証拠になってしまい彼女は大ピンチ。しかし、玉蘭は咄嗟に、呼び出した竜に真偽を問うという竜卜占を希望。胸騒ぎを覚えて急ぎ帰ってきた皓月の承認を受けて後日竜卜占が執り行われることに。当然、無罪なので竜が出てくれば無実は証明されるけれど、竜が出てこないときは罪が確定してしまう。あまりにも危険な賭けに気を揉む皓月に絶対に竜を呼んでみせるときっぱりと言い放つ玉蘭。儀式当日、彼女の呼びかけに姿を見せた竜は、この事件の犯人達に襲い掛かり、という展開です。その際、玉蘭の秘められた力も明かされ正にその性質から、正に二人は会うべくして会ったのだと判明。そうと判ればあいつらに勝ち目などあるはずもなく。ホント、最後まで反省しない胸糞女たちだったので、この一連の流れはスッキリしました。こんなんだから選ばれないんですよ、あなた達。騒動後、皓月がどれだけ玉蘭に惚れているか皇太后にバラされてしまい何とも気の毒。諸々全てお見通しだった皇太后さまが作中一番怒らせてはいけない人だったのかも。評価:★★★★☆
2026.07.15
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2026年5月刊ベリーズファンタジー著者:池中織奈(敬称略)溺愛される妹とは対照的に「見苦しい」と虐げられる王女オルテンス。ある日、妹の代わりに大国の冷酷王・デュドナの元へ花嫁候補として送られてしまう。彼はこれまで多くの令嬢を殺めたと噂されていた…。死を覚悟したオルテンスは「一思いに殺してください」と頼むが、なぜか断られーーおいしい食事にお昼寝と、予想外の生活が待っていた! そんな中、自ら仕事を買ってでる頑張りやなオルテンスを城中の人が慕い、次第にデュドナの優しさも溢れ距離が縮まってゆく。その頃、彼女を厄介払いした小国の家族は窮地に陥り、大国にいるオルテンスの利用を企むが…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 オルテンス=王族扱いされていなかった王女。 妹の身代わりでメスタトワ王国へ送られる。 デュドナ=メスタトワ王国国王。 ミオラ=オルテンス付きの侍女。ローサリティ=オルテンスの異母妹。小国・サーフェーズ王国第一王女オルテンスは、家族に疎まれ幽閉同然の暮らしを送っていた。薄暗い部屋に押し込まれ、異母妹のローサリティからの暴力に耐える日々。そんな毎日に耐え忍んでいたオルテンスは久々に外出を許可された。数年ぶりに顔を合わせた父は、娘の顔を見るやメスタトワ王国に行けと命じた。若き国王が妃を探しているそうで、各国王女を花嫁候補として寄越すよう伝達があったらしい。メスタトワ王国は大陸一の大国、妃に選ばれればその国は強大な後ろ盾が得られると言う。ならば、性格はともかく美しいローサリティを送った方が勝機はありそうに思う。忘れられた存在の自分を送る意味は一体?数日後、オルテンスはメスタトワ王宮の謁見の間にいた。ベールを外した彼女は開口一番、ごめんなさいと謝罪の言葉を述べると「痛いのは嫌なのでどうか一思いに殺してください」と叫んだ。本人は至極真剣であったが、国王デュドナと側近達は皆呆気に取られており、いち早く正気に戻ったデュドナはその予定はないが、とキッパリ。だって、メスタトワ国王と言えば、冷酷王と名高く気に入らない者たちの首を撥ねまくる悪魔だって・・・。出発日の前日に「可哀想なお姉さまぁ、きっと美しいローサリティじゃないって到着早々に殺されちゃうわね」くすくすと笑う異母妹に散々脅されていたオルテンスは、すっかり自分が死ぬものと思い込んでいた。王女はお疲れのようだから、とデュドナが近くに控えていた侍女に世話を任せると部屋から出て行った。湯あみを済ませ、ふかふかのベッドに寝転がっていたオルテンスは、この状況が信じられなかった。これは夢?ムニっと頬をつねると普通に痛い。あー、でもお腹空いたなぁ。そんなことをぼんやり考えているとミオラという侍女がお食事の時間ですと呼びに来た。なんとデュドナと二人っきりでの晩餐らしい。え、王様とお食事!?驚く彼女にミオラが言うにはある程度親睦を深めなければ人となりは判りませんから、とのこと。どうやら、オルテンスの前にやって来た王女たちは皆デュドナのお眼鏡に叶わなかったらしい。とは言え、自分などもっと無理だろう。晩餐で供されたメニューはどれも絶品だった。温かくて誰かと一緒に食べる食事の何と美味しいことか。必死に食べているその姿に随分美味そうに食うな、とデュドナに感心され、はしたなかったかなと我に返る。そんな彼女に褒めているんだ。そう言って彼は笑った。オルテンスがこの国にやって来て一週間ほど経った。どういう事情か、サーフェーズ王国は自慢の王女ではなく今まで全く表に出て来なかった第一王女を寄越して来た。差し詰め、冷酷王の評判を聞いてローサリティが殺されては困ると死んでも惜しくない方の娘を送って来たのだろう。王女とは思えない程ガリガリで小柄、手入れもされていない髪を見てミオラは憤慨し、サーフェーズ王家について調べてくれと頼まれた。ミオラに言われるまでもなく調べるつもりだったので、早急に影を放ったが読んでて腹が立つほどの酷い調査結果に眉を潜めた。王妃が先に王の子を産んだ側妃を疎み、側妃亡き後はその娘を虐待、か。ほとんど幽閉状態で庭に出ることすら禁じ、異母妹は召使に命じて彼女を鞭打たせていたとは。食事も何度も抜かれることが多かったようだしあの痩せ細りように納得した。ミオラに事情を話せば、私たちが王女様をしっかり管理しますので、と王女付きの侍女達がチーム一丸となって彼女の世話を焼いている。調理場の者も王女様のためにと腕を振るっているそうだし、どうやらあの娘は大人の庇護欲をそそる存在らしい。王宮ではオルテンスの可愛らしさを称える話で持ち切りだ。デュドナの側付のセールイまで彼女にぞっこんで、あの方を妃にすべきですと毎日煩い。まぁ確かに可愛らしいし性格も良い。プライドだけは高い姫たちばかりだった花嫁候補の中でオルテンスはかなり異質だった。もの知らずだがバカではなく、ミオラがそれとなく行っている教育にもすぐ追い付き、今ではこの国の施政についても学んでいると言う。季節が変わった頃、デュドナの命で魔法使いのクシャ卿に引き合わされたオルテンスは自分に掛けられている魔法誓約が悪質なものだと知らされた。父からは「単に自死できなくするものだ」と聞いていたが、それだけでなく誓約はオルテンスの心臓に絡みつき、一言命じるだけで彼女を死に至らしめる魔法。クシャ卿の顔が怒りで何とも言えない表情をしている。きっと良い人なんだな。他人事ながらぼんやりと考えていた彼女に、ミオラは解除は可能ですか?と彼に詰め寄っている。解除用の術式を組むのに少々時間はかかりますが、と言いつつ可能ですとクシャは余裕の笑みを見せた。私なんかの為に、そう呟けば王女様が死んだら私が悲しいです!泣きそうなミオラの顔を見て、思わず私が生きていたら嬉しい?と尋ねていた。勿論です!!侍女たちの声に胸が熱くなる。結果、自分も大変な目に遭ったがクシャの努力の賜物で魔法誓約は解かれ、それからなんだか身体も軽い。先日はデュドナとお忍びデートに連れて行ってもらい有意義な時を過ごした。無邪気に喜ぶ彼女を見続けるうち、デュドナの気持ちも決まった。俺の妻になる気はないか?そう問われてオルテンスは頷き、二人の結婚が大陸中に公表された。結婚式の準備が迫る中、ドレスの仮縫い中だった彼女はデュドナからサーフェーズ王が招待もされていないのに式に出席するつもりらしいこと、追い返すために手荒なことになっても構わないかと意思確認をされた。許可なく越境するのだから咎められても文句は言えない、それが後に戦争になろうともだ。構いません、オルテンスは彼に告げすべての采配を任せた。数か月後、二人の挙式当日。サーフェーズ国王とその家族は国境で止められ・・・。日陰の王女と大国の若き国王との恋物語です。追い出されるか殺されるか、どこか諦めていたオルテンスは何故か花嫁候補として訪れた先でその愛らしい性格と容姿で皆をメロメロに。多くの味方を得て、やがて王妃にと望まれます。しかし、デュドナは彼女を虐げ続けたサーフェーズ王家には彼女との結婚だけ報告するも挙式には呼びませんでした。そもそも呼ばれると思ってんの?どの面下げて?と言わんばかりに大陸中に、彼らが妃になるオルテンスをどう扱っていたかを大々的に公表。あいつらに出席する資格はないよ、と先制していました。なのに、メスタトワ国王の妃はうちの王女だとサーフェーズ王は強硬に式への出席と国への援助を要請するため、無理矢理国境を押し通ろうとしてメスタトワ国軍に捕縛されます。マジでバカなの?こいつら。しかもローサリティがデュドナに擦り寄り、余計に怒りを買って投獄の憂き目に。あまつさえ、生意気なのよとオルテンスの面会を望んだ妹は誓約を発動させようとしますが、残念、とっくにその魔法誓約は解除されていました、という。この出来事はデュドナを激怒させ、サーフェーズ王家の運命はもはや風前の灯火。ザマァというにはかなり厳しい顛末に読んでてちょっとびっくり。冷酷王は伊達じゃなかったです。おまけの番外編は二つ。王妃になったオルテンスのとある一日と、そんな彼女に心酔しているミオラ目線の日常の一コマでした。ヒロイン・オルテンスが本当に可愛くてそりゃ皆メロメロになるわ、と納得。評価:★★★★☆
2026.07.14
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2026年4月刊マーマレード文庫著者:桜井響華(敬称略)パイロットの優羽青と恋に落ち、いつか彼の操縦する飛行機に乗ることを夢見ていた碧玲。けれど優羽青の幼なじみの嘘のせいで別れを決意し、彼との連絡を絶った直後に妊娠が発覚!優羽青への想いを胸に秘め、一人で娘を産み育てていたある日、運命の再会を果たす。ずっと碧玲を想い続けていたという彼から、変わらぬ深い愛情で娘ごと包み込まれ…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 花村碧玲=元カレの裏切りで失恋し、恋から遠ざかっていたOL 英優羽青=副操縦士。マッチングアプリで碧玲と知り合う。 麻由奈=優羽青の幼馴染み。 夕愛=碧玲の親友。バレンタインが間近に迫った二月のある日のこと、親友の夕愛と出掛けていた碧玲は彼女から新しい恋を勧められていた。結婚を前提に交際していた恋人と別れて以来、元気がない碧玲が気になっていたのだろう。確かに恋人の浮気が原因だったのだし、いつまでも引き摺ってるのは生産的ではない。どうせならイケメンで高収入な人を捕まえようと夕愛と共にマッチングアプリに登録した。すると、めぼしい男性はいないかとスクロールしていた夕愛が声を上げた。パイロットがいる、そう言われて見せられた画面をのぞき込めば、確かに職業欄にパイロットとある。顔写真もハンサムだし、思わず詐欺を疑った。実際、マッチングアプリでその手の詐欺は多いらしい。訝しんでいると、まぁ会ってみようよ。怪しい感じがするならお付き合いを断ればいいんだから。夕愛の言葉にそれもそうかと頷き、メッセージを送ってみると意外にも返信は早く、後日会うことになった。登録者名「そら」を名乗る人物は、その日先輩パイロットの佐川を連れて待ち合わせ場所に現れた。佐川は少々チャラい感じだが「そら」は優しそうな人だった。同席した夕愛は佐川を気に入ったようだが、そのチャラさが少々引っ掛かっているらしい。連絡先を交換したいと言われても珍しく渋っているのを横目に、碧玲は「そら」もとい英優羽青といい雰囲気に。現在国際線の副操縦士だという彼は現在機長を目指して猛勉強中なのだそうだ。元々パイロットは彼の父が憧れていた職業だったが、喘息持ちのため夢を断念しており、それを引き継ぐ形でパイロットになったと言う。機長になったら父の体調が良い時期に自分が操縦する飛行機で旅行に連れて行くのが目標だと語る優羽青はなんて素敵なんだろう。実はこのマッチングアプリはあまりにも女っ気のない優羽青を見かねた佐川が自分と一緒にと勝手に登録したものらしい。それでも、今日はあなたに遭えてよかったと思います。まっすぐ目を見て言われて、私もですと頷く。優羽青とは、その日連絡先を交換して別れた。奇跡的に初のマッチングで相手を見つけてしまった碧玲と優羽青は早々にアプリを退会。あれ以来、トークアプリで連絡を取り合い、何度かデートを重ねた。夕愛は結局佐川と連絡交換はせず、地道に婚活を続けている。どうやら一目惚れだったらしい佐川は夕愛を諦めきれないようだがこればっかりは自分達にもどうしようもない。その日は優羽青のマンションでおうちデート。するとインターホンが。応対していた優羽青が珍しく厳しい声で「帰ってくれ」と追い出そうとしているので、気になって見に行くと同年代か少し下に見える女性が。あなたが優羽青の彼女?と女性に問われ、肯定すると観念したのか、優羽青が女性を紹介してくれた。麻由奈と名乗った女性は彼の幼馴染みでかなり長い付き合いだと言う。優羽青の彼女なら私とも仲良くしてくれる?グイグイくる麻由奈と連絡先を交換すると、しょっちゅうメッセージが届く。優羽青がフライトで留守の間は買い物に行ったりとそれなりに仲良くしていたのだが、いつしか彼女はデートにまで付いて来るように。追い返そうとする彼を私なら気にしてないからと宥め、同行を許しながら、麻由奈の優羽青への想いを察して複雑な気持ちになる。それから暫く経った頃、大事な話があると麻由奈にカフェまで呼び出された碧玲が耳にしたのは衝撃の事実。なんと麻由奈は優羽青の子を妊娠していると言うのだ。母子手帳とエコー写真も日付からしてどう見ても本物。ごめんなさい、でもこの子の父親を撮らないで、涙交じりの麻由奈の言葉に私はまた二股かけられていたの?と茫然。しかし、こうして麻由奈が来たってことは事実なのだろう。碧玲は潔く身を引く決意をした。スマホのキャリアを変え、完全に連絡を絶ったある日。体調を崩した彼女は一つの可能性に気付き検査薬を使ってみると陽性反応が出た。事情を話して夕愛に相談すると辛かったね、そう言って抱きしめてくれた。やはり碧玲は妊娠していた。まさか、麻由奈と同じ頃の妊娠だなんて、もう笑うしかない。それでも産むと決めていた。実家の両親、特に父には物凄く怒られたが、結局許してくれてその翌年に産まれた娘・碧羽にメロメロだ。そんな娘もそろそろ八ヶ月になる。碧玲が優羽青の前から姿を消して二年近くが経っていた。ほぼ実家に居候状態なのが申し訳なくて、家事代行サービスの会社で働き始めた碧玲は、作家のはなさき青一の家事代行依頼を受けた。本名が英とあってギョッとしたが珍しい名字でもいないわけではないので、どうか優羽青とは無関係の家のように、と戦々恐々。奥さんが自転車事故で入院中とのことで掃除と昼食&夕食作りを頼まれた。その日は何事もなく終わったものの、翌日英家を訪れると優羽青とバッタリ。やっぱり優羽青君のご実家だったのね、とガックリ。もうここまで来たら観念するしかない。話をしたいと言う彼の言葉に頷き、翌日会う約束をした。カフェで対峙した優羽青にお子さんは元気?と話しかけると怪訝そうな表情をした彼は、何か察しが付いたのかゆっくりため息を吐くと。俺は独身だよきっぱり。その答えに硬直していた碧玲はじゃあ麻由奈ちゃんが言っていたのは、と顔面蒼白の彼女を見て彼は当人から聞いたと言う話を語り始め・・・。まんまと恋人の幼馴染みの嘘に騙され、勝手に雲隠れしてしまった碧玲。なにかと優羽青に依存していた麻由奈は、彼が碧玲と幸せになるのが許せずあんな酷いことを・・・。確かに麻由奈は妊娠してましたが、行きずりの男性との火遊びで出来た子で、優羽青に父親になって欲しいと頼み込みするも色よい返事は貰えなかったので腹を立てて起こした行動でした。というか、そりゃ断られて当たり前(^_^;)麻由奈は父親が優羽青だと碧玲に吹き込み、結果あんなことに。てか、疑いなよ碧玲ちぁん。それか、ちゃんと優羽青を問い詰めてれば要らぬ心配せずとも良かったのに。誤解も解け、碧玲の実家にこれまでの謝罪を兼ねて実家に挨拶に来てくれた優羽青にはほぼ非はなく、娘の思い込みで起きたことと知ったお父さんの落胆ぶりは想像がつく分、可哀想。申し訳ないけど、今回のヒロイン結構アホ寄り?(苦笑)まぁ、娘がまだ物心つく前に復縁出来て良かったと思いました。その後、麻由奈とも決着がつき、二人は入籍。夕愛は何だかんだ佐川さんとくっつくのかなぁって感じのラストでした。おまけの番外編は入籍から数か月後の後日談で、妻と娘を愛しく思う優羽青目線のお話。評価:★★★★
2026.07.13
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8月20日 オーバーラップノベルスf 役立たずと国を追い出されましたが、 魔物と話せるのは真の聖女である私だけでした! ~隣国の魔皇帝に愛され幸せになります~ 沢野いずみ モーニングスターブックス はじめまして、こんにちは。 ~文通歴13年交際0日の親友と、初対面で結婚することになりました~ 守野伊音9月1日 アーススター・ルナ 用済み聖女の最後の仕事 命じられたのは蛮族伯との結婚でした 道草家守 毒牙令嬢ヴェロニカの華麗なる断罪 ~毒と魔術を操って国をお掃除してさしあげます~ 砂礫零9月5日 ベリーズファンタジー この結婚は王命ですから。 初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます 夏目みや 水に流してなんかいませんが? ~無自覚のモラハラでも忘れてなんていないので、 「成婚を落とせ」という手紙はただの起爆剤です。~ ぽんぽこ狸9月10日 Mノベルスf 傷物の人形令嬢は隣国のワケあり辺境伯に囚われ、心のナカまで愛でられる。 かのこ ベリーズ文庫 俺様ドクターと1億円借金ヒロインの契約結婚だったはずが 若菜モモ ハイエンドマリッジ ~身も心も成熟したオトナの男に愛されて~ 伊月ジュイ 偽の婚約をしたら、凄腕SATの溺愛に捕まりました にしのムラサキ 結婚したくないはずの俺様社長に、成婚退会を強行されました 森野りも マーマレード文庫 敏腕外交官の元カレと再会したら、内緒で産んだ子供ごと愛されました(仮) 西篠六花 屋根裏部屋の伯爵令嬢ですが、国王陛下の愛され花嫁になりました(仮) ひなの琴莉9月15日 ビーズログ文庫 見殺しにされた私が助けるわけないでしょう? 青空一夏(敬称略)9月も多いなぁ(^_^;)あと、アニメ「鬼の花嫁」、webラジオを聞くにどうやらコミカライズ版の進行を準拠に展開するみたいですね。ということは原作小説1巻分で12話ってこと?おまけに円盤は全6巻。さすがはアニプレックスと言うべきか。
2026.07.12
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2026年7月刊noicomi COMICS著者:富樫じゅん/クレハ(敬称略)キャラクターの素顔に迫る詳細プロフィールから、あやかしが息づく世界観の徹底解説までーー。『鬼の花嫁』の魅力を余すことなく収録したファンブック。美麗イラストギャラリーや、物語を振り返って楽しめる名場面すごろくなど、絶対に見逃せない企画が満載。さらに、“あのふたり”の禁断秘話を描いた描き下ろし漫画や、原作・クレハ先生の書き下ろし小説など、本書だけの特別コンテンツも目白押し。この一冊で物語のすべてがわかる、完全保存版! ↑楽天ブックスより内容紹介引用アニメ化を記念してか、シリーズ初の公式ファンブックが出ました。noicomi COMICSレーベルでの発売のため、内容もコミカライズ版準拠と言った所。書きき下ろしの漫画と小説はかなりギャグ寄りな内容で、こういうお話大好き。正直これだけでも一見の価値あり。企画として、キャラクター人気投票結果や、クレハさんと富樫さんとの対談も。1位は案の定、玲夜でしたけど、小鬼ちゃんの人気が意外。道理で短編集やおまけ漫画等で出張ってるわけだ。因みに私の推しキャラの千夜さんです。全体的に見て、お買い得な一冊だと思いますが、付録のカレンダーとしおりの形状はちょっと(^_^;) 使いたい人は、真ん中あたりのページに鋏を入れないといけないので果たしてそんな猛者はいるのやら。最初のページにとじ込みで入れるとかじゃダメだったんでしょうかね。最近よくある雑誌のクリアカード&クリアしおりの付録みたいな。はっ、もしかして二冊買えってこと!?取り敢えず、描き下ろしのしおりを使いたい気持ちは山々なれど二冊買いは無理なので眺めるだけに留めるとします。評価:★★★★☆
2026.07.11
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2026年7月刊noicomi COMICS著者:富樫じゅん/クレハ(敬称略)「柚子以上に俺が愛おしく思う存在などいない」ミコトが差し向ける龍の攻撃から、なんとか一命を取り留めた柚子。しかし、回復して安心したのも束の間、ミコトを連れてホテルへ入る玲夜を目撃してしまいーー。彼の愛を信じていた一方で、なかなか屋敷に帰ってこない日々への不安に揺れる。玲夜の行動の目的はいったい何なのか?そして明かされる、“最初の花嫁”にまつわる真実。そこには龍の力が暴走するきっかけとなった謎が隠れていて…? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 東雲柚子=玲夜の花嫁。ミコトの嫉妬により命を狙われる。 鬼龍院玲夜=鬼のあやかしのトップ・鬼龍院家の跡取り。 透子=柚子の親友。 荒鬼高道=玲夜の側近。 鬼龍院千夜=玲夜の父。現鬼龍院家当主。一龍斎ミコト=龍の加護により守られた一龍斎家の令嬢。原作小説三巻目「龍に護られし娘」編の完結巻です。透子を庇ってトラックにはねられた柚子は奇跡的にかすり傷で済んだが、その日以来、玲夜が顔を見せることは無かった。しかし、数日後、透子と出掛けた先で玲夜がミコトと高級ホテルに入っていくのを見てしまい大混乱。そんな彼女を見て、透子は一芝居を打ってまんまと玲夜を猫田家に呼び出すことに成功。柚子が危ないとほのめかしただけですっ飛んできたのを見るに、ミコトに気が移ったとか有り得ない。だから自信を持って、こうなったら本音を若様にぶつけなと透子に発破をかけられた柚子は、ミコトに嫉妬していたこと、玲夜が何も言わずに一人でカタを付けようとしていたことが悔しいと吐露。しまいには花嫁を辞めるとまで言われて珍しく玲夜が狼狽。観念して、千夜と二人で進めていた作戦の概要を語り、蚊帳の外にしていて悪かったと柚子に謝罪します。蟠りが解け、透子を交えての話し合いになると、あの事故自体が透子を狙ったものだったとの説明が。そして龍をけしかける際は必ずミコトは自分から加護を外すと判り、厄介な龍さえ剥せれば勝機はこちらにある。敢えて玲夜が囮になり、手酷くミコトを振って龍をけしかけさせれば・・・。玲夜が危険な目に遭うのは、と心配する柚子を他所に、透子は判ってないわねと作戦の穴を指摘。ああいうタイプはフった本人より、その相手に憎しみが行くものよ。それもそうかと納得する面々で柚子は自分が囮になると手を挙げます。危険だと玲夜は渋るも、柚子の願いにより渋々承諾。千夜の協力で、屋敷に結界を張るも難なく突破され、ついに龍と柚子が対峙し・・・。柚子の前世についてほのめかされる重要エピソードですね。始まりの花嫁・サクのお話は原作小説の短編集エピソード0でも語られていますが、サクの心境を知ってからだと原作四巻で龍が語った過去バナは本当に胸糞。マジで一龍斎の先祖許すまじ。実は神獣だったまろとみるくの協力もあって見事龍は解放され、柚子の加護に付くのですが、やっぱりデフォルメされてました。柚子の腕にだっこちゃんの如く張り付いている姿が可愛い。そんな龍の加護を失ったミコトは恨みを買って家諸共没落の憂き目に。嬉々として一龍斎を潰している千夜さんが作中一番怖い人なのかもしれない。おまけとして鬼の花嫁のスピンオフ「鬼姫」の試し読みが収録されています。さて、今月四日深夜から始まったテレビアニメ。絵も綺麗だしキャストも豪華で良いのではないでしょうか。原作小説一巻分を四話区切りでやるなら丁度この三巻目がラストエピソードになる感じ?評価:★★★★★
2026.07.10
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2026年5月刊ベリーズファンタジー著者:ごろごろみかん(敬称略)冷たい容姿を理由に夫である国王から見向きもされない第三側妃・マリア。そんなことは気にも留めず、お飾りライフを楽しんでいたある日、第一側妃の息子で不吉な赤目を持つ第一王子・ルンハルトと出会う。孤独だった二人は、次第に互いにとってかけがえのない存在に。その裏で、マリアは赤目のせいで不当な扱いを受けるルンハルトを守り、腐敗した王宮を立て直すため、横暴な国王を失脚させる策を密かに巡らせていた。マリアが王弟・アルヴィンや様々な有力者の協力を得ていく中、何も知らない彼らが気づく頃には、破滅はすぐそこまで迫っていて…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 マリア=エリセリュン国王の第三側妃。冷遇されていた王子と知り合い交 流するうちに国王の退位を目論む。 アルヴイン=国王の甥。赤い瞳なことから王族扱いされていなかった。 ルンハルト=国王と第一側妃の間に産まれた王子。 セラフィーナ=第一側妃。息子を疎んじている。 マチルダ=第二側妃。フランチエスカ=マリアの姉。冷酷そうに見える容姿から、可愛げが無いと夫であるエリセリュン国王から見向きをされていない第三側妃・マリア。父王の命でこの国の嫁いで来たものの、参ったわねぇ、これは。大好きな姉がルナリア王国に嫁いで以降、別段祖国にはもう思い入れも無いのだが、こうも軽んじられているのは聊か気分が悪い。どの国にもいい顔をして二国から妃を迎え入れた国王だが、結局自国の筆頭公爵の令嬢セラフィーナを第一側妃とし、その実家共々重用していると聞く。故にマリアと同じく、外国から嫁いで来たマチルダ妃も肩身の狭い想いをしているようだ。一度話をしていたけれど、マチルダ妃は随分と大人しくて気の弱そうな方だったな。マリアより三ヶ月早く輿入れした彼女は苛烈な性格のセラフィーナに随分虐められていたらしい。かくいうマリアも何度か嫌がらせを受けたが、睨みつけただけで向こうはビビって逃げてしまったので、この時ばかりは己の顔に感謝した。ひと月ほど経った頃、あまりにも暇なので庭の散策をしていると子供の泣き声が聞こえて彼女は足を止めた。見ると植え込みの側にしゃがんだ男の子が鼻を啜っている。どうしたの?と声をかければ、驚いたように顔を上げた少年の顔にハッとする。赤い目・・・。それにこの顔。髪色と言い、恐らく国王とセラフィーナの一人息子・ルンハルト王子に違いない。第一側妃との子なのだから、さぞ大事にされていると思いきや、随分と薄汚れているし、四歳の割に小柄な体。どう見ても育児放棄されているようにしか見えない。王子ならば、普通は護衛や世話役と数人の供を連れているはずだ。これは一体どういうこと?その日はあまり話は出来なかったが、気になって何度か庭園を訪れていると自然と親しくなり、ルンハルトに懐かれるように。そうこうしているうちにマリアはルンハルトの親戚だと言うアルヴィンと知り合った。彼もまた赤い瞳をしておりずっと冷遇されているそう。先王の兄の子で、現国王の甥に当たる人だと言うのに、赤い瞳が何だって言うのよ!!他人事ながら憤慨するマリアに、きっとあなたが異国の方だからでしょう、とそう言ってアルヴィンは苦笑した。それほどこの国の民の赤い瞳への畏怖は強いのだと言う。でも、ルンハルトのように幼い子まで理不尽な目に遭うのは許せない。憤るマリアに、実は、と口を開いたアルヴィンが言うには、ルンハルトのために赤い目が不吉などというバカげた逸話を払拭するため、古い文献を調べているそうだ。この国を危機に陥れた悪魔の瞳が赤だったとか、どう考えても眉唾な伝説ばかり。しかし、郊外にある研究室地下の資料室に王家の先祖について書かれた資料を見つけたらしい。彼の話を聞いて、以前から少しずつ考えていた作戦をアルヴィンに話すと、彼は目を見開いた。国王を退位させ、あなたが王位に就くのです。彼は先王の兄の子、母親は平民らしいが血筋的には充分資格はある。いつまでも正妃になれないせいか、セラフィーナの暴虐は増すばかり。先日、マリアは彼女に突き飛ばされ、危うくナイフで刺される所だった。まぁ、返り討ちにしてやったけど・・・。加えて王はセラフィーナの実家であるシャッテンヴァルト公爵家とその取り巻きばかりを重用し、多くの貴族から反感を買っている。こんなのがあの優しいルンハルトの両親だなんて。アルヴィンが王位に就くなら力を貸すと祖国の父からも返信が来て準備は万端。そもそも先日の一件で、夫は重大な契約違反をしてるのに果たして気付いているのやら。マチルダ妃とその祖国・セレニア皇国からも色よい返事が来て後はアルヴィンが貴族をどれだけ味方に付けられるかが鍵になる。数か月後、アルヴィンがまとめた資料によれば、やはり赤い瞳が不吉の証などという文献は無く、御殿医が残した資料で元々赤い瞳は王族にのみ現れるものという一文が見つかった。五百年前の王は赤い瞳だったそうだが、後に弟に暗殺され王位を簒奪された。もしかしなくてもこれって弟王子が自らの行動を正当化するために喧伝したデマ!?エマの疑問に静かに頷いたアルヴィンも同じ考えのようで、味方になってくれた貴族にもその資料を配布し、時が来るのを待った。下準備が進むうち、公衆の面前でセラフィーナが失態を犯し、その評判はがた落ち。こちらは何もしていないのに勝手に転がり落ちてくれるのは楽でいい。年が明け、祝賀会の夜、国王に新年の挨拶を述べたマリアは、彼に退位を促し・・・。一見、悪女なヒロインが嫁ぎ先で冷遇されている王子と出会い、彼を助けたいと奮闘。ルンハルトの親戚アルヴィンとも知り合い、彼女は兼ねてより考えていた計画を耳打ちします。現王を退位させ、あなたが王位に就けばいい、と。ルンハルトとも交流を重ね、実母よりも懐かれ始めた頃、不吉とされていた赤い瞳に関する真実が判り、そろそろあいつを引き摺り落とす頃合いとアルヴィンと二人行動に移します。先陣を切ったのはマリアで、セラフィーナによる殺人未遂の件で、祖国モントヴァルト王国との契約違反を突きつけられた王の顔色は土気色。しかも、マチルダ妃の故郷セレニア皇国がモントヴァルト王国と手を結び、さらにはルナリア王国も同盟に加わり挟撃されたら大国であるエリセリュンもひとたまりもない。その後、国王は病気を理由に退位し、アルヴィンが即位します。マリアはアルヴィンの求婚を受け翌年結婚し、ルンハルトを養子に迎えれ物語は幕。一応、アルヴィンの母親の秘密など、クライマックスで色々判明することもあるんですが、長くなるのでその辺は敢えて割愛しています。マリアと敬愛する姉・フランチェスカとの手紙のやりとりも大きなきっかけになったりと、押し花の件は上手い伏線だなと思いました。あと、とにかくルンハルトくんが可愛い評価:★★★★☆
2026.07.09
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2026年6月刊ベリーズ文庫著者:にしのムラサキ(敬称略)仕事で自衛隊基地を訪れたシングルマザーの明優。なんと娘の父親である航空自衛官・駆と再会する。妊娠発覚直後、明優はある事情から逃げるように姿を消した。なのに駆は執愛滾る笑みを浮かべ、「待ってたよ。俺は君なしでは息もできないんだ」と言ってきて…!自分の元へ戻ってくるよう仕組んだ彼を怪しんでいたがー「死ぬまで離さないって言ったろ?」執着の裏に隠された底なしの一途愛が明らかに!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 羽村明優=家族の協力を得ながら子供育てるシングルマザー。 天瀬駆=明優の元カレのエリート航空自衛官。 羽村美空=駆と明優の娘。 天瀬聡子=駆の再従姉。 天瀬藍那=駆の遠縁で自称許嫁。実家で二歳の娘を育てながら在宅SEの仕事をしている明優は、大口の仕事が入ったからと本社から都内にある航空総隊に赴くよう頼まれ上司と現地へ。妙に胸が騒ぐのはここが航空自衛隊の本部だからだろうか。でも飛行機が置いていないし、あの人はいないわよね?仕事の打ち合わせを終えると、見計らっていたようなタイミングでこのプロジェクトの指揮官が明優に会いたいと明優一人だけ別室に呼ばれることに。担当者が天瀬一尉と声をかけているのを耳にして彼女は肩を落とした。入るよう促された明優はかつての恋人・天瀬駆と対峙していた。駆とは三年前まで交際していた。娘・美空も彼との子だ。当時、転勤で福岡の会社に勤めていた時に知り合い、そのひと月後に彼からの告白で交際をスタート。三ヶ月後には同棲もしていた。美空を授かったのもその頃のこと。毎日が幸せだった。しかし、ある日突然彼女はある選択を迫られることに。会社が吸収合併され、新たに赴任したCEO夫妻は天瀬と名乗り、明優を呼び出すと駆と別れるよう命じたのだ。当然突っぱねたが、兄夫婦は放置しているが甥っ子は大事なうちの後継でね。酷薄な笑みを浮かべたCEOは「だから、判るね?」と猫なで声で問いかけた。実家とは縁を切っていると以前、駆から聞いてはいた。もう戻るつもりはないし、結婚してもわざわざ知らせないと言っていたのも今なら判る。彼は心底実家の面々を嫌っていたから。何なのこの人達。終いには金が欲しいのか、とバカにされて流石の明優もブチギレ。聞く耳持たずにいたら最後の手段とばかりに仲の良い社員達全員減俸にすると宣言。しかも駆に航空自衛隊を辞めさせることもできるとほのめかされ、とうとう明優は折れたのだった。自分への嫌がらせより、他人への害の方が効果があると見抜かれてしまった時点で彼女に勝ち目はなかった。駆のことなら特に。結局、妊娠を告げられないまま一人東京に戻った明優は実家に身を寄せた。詳しい住所は教えてないから駆も探しようがないだろう。そう思っていたのだが、思いがけない縁でこうして再会してしまうとは。制服姿の彼を見てまだ自衛官を続けていられたことに胸を撫で下ろす。ふいに抱き寄せられて目を丸くしていると、もう大丈夫だからと囁かれた。全部片付いたと言うけれどどういうこと?なんと駆は美空のことも知っていた。それにこうして仕事を依頼し、呼び出したと言うことは彼は何もかもお見通しだったのだろう。色々話したいことがある。そう言われて彼女は頷いた。日を改めて対峙した彼が語ったのは天瀬家のお家騒動について。旧財閥の天瀬家は未だに畏怖を込めて天瀬財閥と呼ばれており、血統主義であった。しかし当主で総帥でもある駆の祖父の直系は一人娘の彼の母のみで父は婿養子だったそう。当然ながら総帥は娘婿ではなく駆を後継にしたがっていた。だが駆には航空自衛官という夢があり、説得を続けた結果漸く許しを得たと言う。総帥の意向ならと周囲も黙っていたのだが、三年前に当主が急死。遺言には駆を後継にという文言と全財産の贈与と記載されていた。そしてもし駆が放棄するならばその妻と子に権利を委譲すると。駆は放棄するつもりだったのだが、そうなると明優と美空に財産と後継の話が行ってしまう。焦ったのは親戚達だ。それでCEOたちがあんなことを・・・。CEOは総帥の妾の子だそうで、いくつか会社は貰ったが、総帥にはなれないことを長くコンプレックスに思っていたらしい。そこで自分達が後見している遠縁の娘・藍那を駆に嫁がせようと明優の排除に動いていた。そういえば、CEOとの話のあと、若い女性の声で駆と別れろと電話で脅されたこともあったっけ。その時はもう身を引くつもりだったから・・・。明優が姿を消した後、すぐに彼は天瀬家の誰かの仕業だと気付いたらしい。先ずは父親に確認を取り兼ねてより握っていた弱みをチラつかせて手出しを禁じると、再従姉の聡子に連絡。優秀ながら女ということで外部の会社に追いやられていた聡子に総帥にならないかと持ち掛け、協力を得た。その後、叔父夫婦と藍那の裏を掴み報復を果たした頃には明優が姿を消してから一年以上経っていた。あれだけ脅せばもう手は出さないだろうと思ったものの、他にも総帥の座と財産に目がくらんで二人に害を成さない者たちが出ないとは限らない。会いたい気持ちを押さえて探し当てた明優の家族とコンタクトを取り、彼女達を見守ってくれるよう頼んでいた。想像以上内容に明優も茫然。天瀬財閥ともなると受け継ぐ側も大変だ。しかも知らない間に自分と美空も相続者になる所だったなんて。駆によれば、次の総帥は彼の再従姉の聡子が継いだそうで、もうバカな騒ぎは起こらないはずだと言う。多分、漸く後顧の憂いが晴れたからこうして彼も会う決心がついたのだろう。そして俺を守ってくれてありがとうと頭を下げられ明優は涙をこぼした。もう一度やり直したいの言葉に頷いたが、問題は美空のこと。パパがいると言ったことが無いのでどう反応するか。二人で実家に帰ると家族は復縁を喜び、駆を歓迎。実はずっと養育費も貰っていたのだと母から聞いてビックリ。内緒にしてくれって頼まれたから、でももういいわよねと笑う母に苦笑しつつ、ずっと守られていたんだなと自覚する。そうするうちに弟がお迎えに行っていた美空が漸く帰って来た。だが、娘は見知らぬ男性である駆を激しく拒絶し・・・。財産狙いの親戚のせいで離れ離れになっていた恋人たちの復縁ストーリーです。+シークレットベビー。叔父さんも色々嫌な目に遭ったのかもだけど、明優を虐めたことで駆の怒りを買って立場を失くしていました。ここでやめときゃいいのに、しつこく藍那をけしかけ明優を脅す始末。しかし、母になった明優は強かった。何であなたたちの言うこと聞かないといけないんですか?と逆に返され、ぐぬぬとなってるところに乗り込んで来たのは駆と聡子。いい加減にしときなさいと叱責を受け、連れて行かれます。一方、駆を毛嫌いしていた美空もだんだん打ち解け、やがて彼を「ぱぱ」と呼ぶように。十年後くらいを描いたエピローグでは、天瀬家の賑やかな日常が描かれていました。書き下ろしの番外編は新婚時代の二人のお話。金持故のゴタゴタは額が大きいだけに巻き込まれた方も大変で、明優ちゃんはホント、頑張った。キャラとしてはアニメキャラが初恋で以降恋が出来ないと言う聡子さんがお気に入りです。総帥になった途端、製作会社を買収したと言うオタクも極まれりなことしてる辺り、そう言えば数年前に某国の王族が資金を出して製作したロボットアニメがあったけなぁと思い出しました。評価:★★★★☆叔父さん、諦めわるすぎぃ
2026.07.08
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7月下旬 レジーナブックス 茶番には付き合ってられません わらびもち 笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました ユユ8月4日 小学館文庫キャラブン! 呪いの猫と後宮夜話 ~月夜のまじない妃と眠れない皇帝~ 高井うしお8月5日頃 ソーニャ文庫 さようなら婚約者様。これにてお別れいたしましょう(仮) 宇奈月香 片想い中の騎士様に催眠術をかけたら 「俺の最愛の人」と激重感情をぶつけられています(仮) あさぎ千代春8月7日 レジーナ文庫 「デブはでていけ!」と追放されたので、 チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します 綺羅もも8月19日 アルファポリス文庫 あやかしさんの古民家カフェで、ほっと一息しませんか(仮) 野生のイエネコ 大正帝都の灰かぶり姫 孤独な少女は至幸の愛を知る 朝永ゆうり 集英社オレンジ文庫 鈴掛紬の針しごと 日暮里ミシンカフェ営業中 竹岡葉月起きたら昼近くてビックリ。気圧の影響か眠くて仕方ない・・・。色々予定が狂ってしまい前倒しで購入予定リストになりました。
2026.07.07
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2026年5月刊ヴァニラ文庫著者:すずね凛(敬称略)皇帝ヴィクトルの花嫁選びの日、妹の侍女として同行したオメガのエディット。想定外の発情が、まさか皇帝の発情を誘発してしまった!? 強引に部屋に連れ去られはしたなく乱れさせられて。苛烈で甘いひと時ののちヴィクトルは、エディットをつがいとすると宣言。彼は「あなたしかいない」と言うけれど、オメガの皇妃など前代未聞と猛反発が起こり!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 エディット=アルファ家系に生まれたオメガとして虐げられていた。 ヴィクトル=帝国の若き皇帝。エディットを妃に迎える。ボーマルシェ=宰相。ヴィクトルの親代わりで国を裏から動かしている。 アナベル=宰相の娘。ヴィクトルの妃候補だった。クザヴィエ帝国国民は三つの特質に別れている。優秀なアルファと特に代わり映えのしない一般人気質のベータ。そして発情という気質を持つ希少種のオメガ。身分の高い者はほぼアルファに占められ、ベータはそれに付き従う。しかし、オメガはその特質から人々に淫婦と呼ばれ、底辺の扱いを受けていた。そんな差別社会で、オメガに産まれてしまったエディットは伯爵令嬢ながら使用人以下の扱いを受けているのは仕方ない事なのかもしれない。異母妹の召使を命じられた地味な装いの彼女を誰も伯爵令嬢とは想像もしないだろう。時は流れ、新たな皇帝の即位に伴って花嫁選びの儀の開催が全貴族家に報らせれた。今年十六になる異母妹は美人なのが自慢であわよくば皇帝の目に留まるかもと大はしゃぎ。兼ねてより手配していたドレスの出来も素晴らしいし、もしもがあるかもと両親も上機嫌なのを見てエディットは俯いた。あの方が結婚される・・・。新皇帝ヴィクトルはエディットの初恋の人だった。数年前、家族で出かけた湯治先で、一人温泉に入れてもらえずに表で待たされたことがあった。雪が降りしきる中、凍えそうだったエディットに自分の手袋をくれた少年。アルファの特徴・額の花形の痣で一目でアルファだと判ったが、大抵のアルファはオメガを厭っている。家族でさえあんな調子なのに、何て優しい方なのだろう。だが、側仕えが「いけません、殿下」と少年に耳打ちしているのが聞こえて、恐れ多くも彼が皇太子殿下だと知った。慌てて礼をとるエディットにヴィクトルが手を振り去っていくのを、ずっと見つめ続けていた。あの手袋は今でも大事に仕舞ってある。見つかれば異母妹に取り上げられてしまうから迂闊に付けていけなかったけれど、辛い時はこの手袋を抱きしめて勇気を貰っていた。でも、この想いもいい加減封印しなければ。どうしても自分も王宮に行きたいと両親に頼み込むと飽く迄侍女扱いとしてならと渋々許可が出た。遠くで一目見られるだけでいい。それで諦められるから・・・。花嫁選びの儀で選ばれるのはアルファの令嬢のみ。しかし、アルファ同士は発情し難いという致命的な欠点があった。特に皇家は純血主義のアルファ、新皇帝になる度に跡継ぎ問題には頭を悩ませており、そこで考え出されたのがオメガの発情を利用すると言うもの。床入り前にオメガの発情フェロモンを嗅がせてその気にさせる。成功率も高く大抵は蜜月期間中に子を授かると言う。当て馬役に呼ばれたのだろう、王宮内の目立たない場所に控えている赤い髪の少女が見えた。稀に失敗することもあるらしく、その場合当て馬は処分されると聞いている。本当に同じ「人」扱いされていないのね、私たち。複雑な心境ながらどうかあの子が死なないよう成功を祈った。遠目でも一目会えれば、そう願っていたエディットの想いは見事に裏切られた。ここはあんたに相応しくない。リゼットにきっぱり言われ宴会場に入らせてもらえなかった。異母妹は姉を虐めるのを楽しみにしている節がある。珍しく王宮に行きたいと必死に頼んでいたから直前で追い出すつもりだったのだろう。音楽が微かに聞こえる中庭の噴水のヘリに座っていると、突然発情の兆しが出て彼女は混乱した。オメガとして産まれながら十六を過ぎても兆しが無く、出来損ないのレッテルを貼られていた自分がまさかここで発情するなんて。毎月高額な抑制剤を飲まずに済んでいたのは助かったが、発情に無縁だったせいで薬を持ち合わせていない。これは襲われても文句は言えない、と隠れる場所を探そうとしていたら大丈夫か?と声をかけられた。顔を上げると夢にまで見た人が目の前に立っている。髪の色でオメガと判ったのだろう、しかも発情しているのを悟ったのか徐に顔を寄せたヴィクトルにキスされてエディットの頭は真っ白。嬉しい気もちを通り越してこれは拙いと必死に彼を引き剥がそうとしたが、時すでに遅し。散々乱されなんとか発情が治まってぐったりする彼女をヴィクトルが抱き上げるとすたすたと歩き出した。衛兵が明けた扉を抜け、未だ彼の腕の中だと気付いてじたばたしていたエディットは、自分を妃にすると言うヴィクトルの宣言に唖然。オメガを皇妃に!?宰相とその娘のアナベルは真っ先に反対の声を上げたが、もう契りを交わしたから撤回は出来ないとしれっと告げられ、ワナワナ震えている。茫然としている実家の面々の姿も見えてなんとも居た堪れない。契りと言っても一方的に発散させられただけで最後までしたわけではない。まだ引き返せるが完全に番ってしまえばどちらか死ぬまで番は解消されなくなる。用は済んだと蜜月期用の寝室に向かうヴィクトルに考え直してくれるよう頼んだが、もう俺はあなたに発情してしまっている。故に無理だと押し切られ、結局そのまま押し倒されてしまった。なし崩しに皇妃になってしまったが、思い続けた人と結ばれて嬉しいのは確か。それならば私は彼を支えられる皇妃になろう。そう決意したのはいいものの、当然ながらオメガの皇妃を受け入れる貴族は少なかった。色々嫌がらせも受けたし、面と向かって批判を受けたこともある。それでも実家にいた頃に比べればなんてことはない。リザベルや継母の方がよっぽど怖かったし強烈だった。その家族が、エディットが皇妃になった途端に擦り寄り自慢の娘だと言い出した時は苦笑したものだ。その家族も、お前たちが皇妃に何をしていたか知っているぞとヴィクトルに詰められ、王宮への出禁を食らいすごすご引き上げて行った。何も話したことは無かったのに、どうして実家でのことを知っているの?あの夜、当て馬役として召し上げられていた少女はマルタと言った。異例の皇妃選抜だったことで彼女は処分されるはずだったらしい。しかし、それを止めたのがヴィクトルでお前たちなら皇妃も気を許せるだろうと控えの当て馬役数人のオメガをエディット付きの侍女に据えた。こうした経緯から侍女たちの皇帝夫妻への忠誠心は強く、エディットにとっても心強い味方になったのだった。ひと月ほど経つとエディットの努力が漸く認められ、味方も増えて来た。ローランド公爵夫人を含め、アルファの女性陣からなる「薔薇の婦人会」の大半の者たちから認められたのは大きい。これは、飴と鞭というヴィクトル推奨の一芝居のおかげでもあったのだけれど、一度打ち解ければ皆悪い者達ではない。しかし、今日も王宮内の庭園で楽しくお茶を嗜んでいたら事件が。エディットにお茶を注いだ給仕が突然悶えだしたと思うと近くの令嬢を襲ったのだ。その者だけでなく、近くにいた数人の給仕たちも。護衛騎士に取り押さえられた彼らは一様に「皇妃さまから甘い匂いがして」と証言。オメガの発情特質が悪さをした、という噂が社交界に広がり、婦人会も無期限の活動休止に。だが、これはどう考えてもおかしい。オメガは初体験を終えると発情しなくなるからだ。故にエディットから誘淫のフェロモンは出ない。侍女達も抑制剤を飲んでいるし、該当者がいない以上、何者かの手によるものだろう。今回の婦人会は宰相の娘・アナベルが指揮を執っていて給仕たちも宰相の家が手配した者たち。怪しいな・・・。ヴィクトルが側近に宰相家を探らせると案の定、アナベルの企みだと判った。給仕たちは媚薬を盛られていただけで、事件後は金を渡され口を噤むよう命じられていたらしい。アナベルは王宮の出入りを禁じられ、宰相は皇妃の無実を発表するよう命を受けた。それが宰相のプライドをいたく傷付けたこともヴィクトルは重々承知している。おそらく、邪魔なエディットを消すために手を打ってくるはずだ。意図せずにエディットが懇意にしていた魔術師の老婆が宰相の子飼いの薬師をしていたのを知ったヴィクトルは罠を張り・・・。オメガバースものです。一応、男性のオメガはいないことにされているので、BL要素は徹底的に排除されている模様。それはさておき、このジャンルは苦手な方もいると思うので読まれる場合はご注意を。徹底的な血筋主義の皇家がオメガの皇妃を迎え入れたことで貴族社会は混乱するも、ヒロインの努力によって環境は変わりつつありました。これからは差別も無くなっていくかもしれない。オメガの希望になっている皇帝夫妻でしたが、それを良しとしない者が不気味な動きを。皇妃の立場を失くして退位させればいいと先陣を切って宰相の娘がことを起こすもあっさりヴィクトルに抑えられ、ほぼ社交界追放の憂き目に。そこで宰相がエディット暗殺を謀るんですが、魔術師がエディットの味方に付いたおかげでこちらも不発に終わります(死んだふりで欺かれていたと言う)こんなことをしでかせば宰相もタダでは済まず、って感じだったんですけど、最後の最後でヴィクトルのある秘密が明かされることに。これは代々アルファで構成されていた皇家の歴史を揺るがすことになるんですが、オメガを妃に迎えたことと合わせ、帝国の歴史が代わる発端となります。その後、ヴィクトルの治世から差別も無くなり、という終わり方でした。この作家さんらしい内容で、展開もまぁ読めてしまうんですけど、だからこそ大団円のラストは気持ちいいと言いましょうか。評価:★★★★☆
2026.07.06
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2026年3月刊ベリーズファンタジー著者:蒼井美紗(敬称略)魔道具作りの天才令嬢カトリーヌ。王命により第一王子セドリックの婚約者となるが、浮気三昧の彼に冷遇される日々を送っていた。そんな中、公衆の面前で「下賤な趣味を持つ地味女」と侮辱され…ついに婚約破棄を決意。手を組んだのは度胸ある美貌の親友コレット。カトリーヌが作った魔道具を駆使し、コレットが“浮気相手”としてセドリックに接近。ふたりで彼の弱みを着実に握っていきーー王子ともども国の転落が始まる…! 一方カトリーヌは稀代の才能を認められ大国へ招待されて大活躍! 虐げられ才女が友情と知性で幸せを掴む、痛快ざまぁ開幕! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 カトリーヌ=婚約者であるバカ王子に振り回されていたが、親友の言葉で婚約破 棄を決意する。魔道具製作が得意。 エルベルト=竜族の青年。カトリーヌの窮地を救った命の恩人。 コレット=カトリーヌの親友の伯爵令嬢。 セドリック=ファーブル王国第一王子。カトリーヌの婚約者。あんなバカ王子はあなたは相応しくないわ。親友のコレットは、セドリックの愚かな行いを目にする度にそう溢していた。自分に勿体ないかはさておき、そうは言っても王命で決まったこの婚約を覆すのは至難の業だ。セドリックが廃嫡にでもならない限り、近い将来、カトリーヌはセドリックに嫁ぐ。愚痴の止まらないコレットに「心配してくれてありがとう」と微笑めば、こうなったらやっぱりアレを実行するしかないわっ!そう言って立ち上がったコレットは、兼ねてより考えていたと言う作戦を語った。本当にうまく行くのかしら。下手をすればコレットも危ないのに・・・。とにかく、彼女発案の作戦はカトリーヌの父・カルディエ侯爵も賛同し、婚約破棄出来た暁には、コレットにいい縁談を紹介すると約束。作戦遂行までは怪しまれないよう私たちは会わない方がいいわ、そうコレットに言われて、暫くはお互い単独行動を心掛けている。どうせなら彼女に護身用のアイテムを渡そう。逆上したセドリックに襲い掛かられても逃げ出す時間を稼げるよう、小さな氷の礫を発射できるものとかいいわね。そこで材料の魔鉱石を採りに護衛騎士二人を連れて素材採集に向かったカトリーヌはそこで狂暴な魔物に襲われた。死を覚悟した時、救いの手を差し伸べたのは一人の青年。常人とは違うオーラに一目で竜族だと判った。ファーブル王国は竜神に護られていると言われている。竜族は竜神の眷属で、この国では神に連なる者として恐れ敬っていた。青年はエルベルトと名乗り、とある理由で人里まで下りて来たと言う。カトリーヌが魔道具の素材を採りにここまで来たのだと話せば、まさしく俺が求めていた人だと協力を仰がれた。彼と彼の妹・ライアは竜族でありながら魔法制御が得意でないのだそう。特にライアの方は深刻で悩み続けた末にすっかり引き籠りになってしまっていた。だが、補助アイテムを使えば制御も上手く行くかもしれない。切実な話にカトリーヌは魔道具作りを引く受けたのだが、ふと閃いてエルベルトに協力を依頼。以前から考えていた。魔鉱石に魔力を注いでそれを核にすれば、効果も上がるのではと。だが、魔法は竜族のみが扱える力。もどかしく思っていた矢先にエルベルトと知り合えた。依頼の品を成功させるためにも協力は不可欠。事情を話すと任せておけというので侯爵邸に連れ帰ることに。考察は的中。コレット用の護身アイテムが成功するとエルベルトの依頼品に取り掛かる。一週間ほど経って出来たそれは想像以上の出来で二人手を散り合って喜んだ。そんな折、セドリックが先触れもせず屋敷に現れ、受け答えが気に食わないとカトリーヌにお茶をぶっかけ帰って行った。その状況を聞いたエルベルトはブチギレ。俺もコレット嬢の作戦に乗ると手を挙げると侯爵が手を回し、彼を舞踏会会場に入れてくれた。そしていよいよ舞踏会本番。セドリックが最近お気に入りのコレットから訴えられた嫌がらせの犯人を勘違いし、まんまとカトリーヌに婚約破棄を突きつける。悦に浸る彼に、私を虐めたのはカトリーヌさまではありませんよ。しれっと犯人は別人だとコレットに訂正されたセドリックは段々血の気が引いた表情を浮かべ・・・・よくある悪役令嬢の断罪イベントに習い、向こうから婚約破棄してもらおうと計画を立てたコレット。セドリックのお気に入りの男爵令嬢はポッと出の自分が気に食わないはずだ。どうせなら派手に虐められて犯人の名を伏せてセドリックに泣きつけばどうなる?案の定、普段から婚約者を疎ましく思っていたセドリックはこれ幸いとカトリーヌを問い詰め、婚約破棄だと言い出す始末。当然カトリーヌに泥を被らせるわけにはいかないので、婚約破棄されたらすぐ犯人はデボラだと申告。元よりカトリーヌに嫌味三昧の令嬢諸共、セドリックの顔を潰すことが出来たとコレットはほくそ笑みます。親友の幸せのためにここまでするとは天晴。努力の甲斐あってセドリックはついには国王からも見放されるのですが、これには神にも等しい竜族のエルベルトからの口添えも大きく、結果廃嫡になってしまったセドリックはカトリーヌにたちへの恨みからある事件を起こし、という展開です。その間、エルベルトとカトリーヌとの恋愛事情なんかも描かれて大団円なラストでした。タイトル的にもう少しずる賢いヒロインかと思いきや、最後まで聖人すぎる子だったなぁという印象。てか、いくら王子が付いてるからと言っても、高々男爵令嬢が格上の侯爵令嬢に聞こえよがしに悪口とか普通はあり得ないんですけどね。命知らずすぎる。評価:★★★★
2026.07.05
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昨日(7月3日)までに購入した本です。ヴァニラ文庫5月刊。うっかり買うの忘れてまして、棚差しにされてたのを見つけ慌てて購入。とはいえ、すずねさんは4月末発売のガブリエラブックスもまだ入手できてないんだよなぁ(^_^;)角川ビーンズ文庫6月刊異世界アラサーブックカフェの作家さんですね。ビーンズ文庫が最近あんまり買えてないのは積読が多いからです。メルティアブックス6月刊初めてのレーベルです。 ベリーズファンタジー6月刊2点前回購入出来てなかった分ですが、まだあと一冊あったような・・・。フロースコミックス6月刊。やっぱりマクシーは可愛い♡ スターツ出版文庫6月刊3点今月の蜜猫文庫はまた追々。毎週土曜日は仕事の兼ね合いもあり、感想記事を書けないことが多くなると思います。
2026.07.04
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2023年5月刊ヴァニラ文庫Miel著者:あかつきもも花(敬称略)留学先で出会った公輝と恋に落ちるも、身分差を感じて彼の前から姿を消した美那。その後、妊娠が発覚し、一人で息子を産み育てていた。そんなある日、会社の副社長として公輝が目の前に現れる。「二度目は逃がしてあげないよ」別れから四年がたっているのに、一途に美那を求めてくる公輝。息子ごと愛情を目いっぱい注がれる日々が始まって…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 前川美那=留学時代の恋人との子どもを育てているシングルマザー。戸ノ崎公輝=大企業の御曹司で副社長。美那の元カレ。前川乃恵瑠=公輝と美那の息子。戸ノ崎信人=公輝の叔父。リビングフロントホールディングス社長。ショッピングモールの運営会社の企画部に勤める美那は、三歳になる息子と二人暮らしのシングルマザー。魔のイヤイヤ期も終わってもまだまだ手のかかる時期。退勤時間になり、数分歩く従業員向けの保育園にいる息子・乃恵瑠を迎えに行く。ああ、やっぱりあの人に似てるなぁ。乃恵瑠を見ているとしみじみ思う。交換留学先のニュージーランドで出会った公輝とは三か月間だけの交際だった。何も告げずに帰国し、少しして妊娠に気付いたのだが海外用の携帯は解約してしまっていたので連絡しようも無かった。いや、本当は電話番号も覚えている。勝手に姿を消したのも連絡絵を入れなかったも単に自分の意気地がなかったからだ。住む世界が違い過ぎるのよ・・・。だからこの選択に悔いは無い。そう思っていた。数日後、新しい副社長として就任の挨拶に現れた男性を見て、美那は茫然。なんでここに公輝くんが。しかも副社長!?金持のお坊ちゃまだと思ってはいたけれど、うちの会社の御曹司なら納得だ。ニュージーランドでは現地スタイルに則り、お互い下の名前でしか名乗らなかったため、今思えば彼の名字も知らなかったのよね。挨拶の言葉を述べる彼はまだ末席にいる美那に気付いていないようなのが救いだが、これは終わったら早々に退席しないと。しかし、結局彼に見つかってしまい、話がしたいから時間を作って欲しいという言葉に渋々頷く。翌日、よく眠れなかった彼女は先輩社員の岸に相談。さすがに名前は伏せたが、息子の父親に図らずも再会してしまったと言うと、岸もあんぐり。乃恵瑠を引き取りたいとか言われたらどうしよう。心配なのは息子の親権だ。彼のことだから息子がいると判ればそのままにはしないはず。不安を吐露する美那にまぁ初っ端からそんな急展開にはならないよと励まされ、それもそうかと心を落ち着けた。取り敢えずちゃんと話すよう諭され、公輝からのコンタクトを待った。が、まさかの社員用の個別アカウントにメールが入っててギョッとしつつ、そう言えば私のメアド向こうは知らないんだったとガックリ。翌日、実家の母にお迎えを頼み、美那は待ち合わせ場所へ。人目を気にしないための配慮からか、ホテルの一室で公輝と向き合うと、一昨日会社の保育園から子供の手を引いている君を見たんだ。徐に言われた話に彼女は観念してあなたとの子よと告げると、もしやと思っていたのかやっぱりと彼は肩の力を抜いた。後を付けたわけじゃないんだ、本当に偶然見かけて、慌てて言いつくろう公輝にしてみれば、相当衝撃だったのだろう。子どもの年齢的に自分の子だと当たりを付けても不思議はない。でも、子どもまで産んでくれたのにどうして俺の前から消えたの?当然の疑問に美那は嘆息すると、ただ自分に自信が無かっただけだと答えた。あなた、激安スーパーでさらに値引きされた総菜買ったことある?どう考えても育ちの違うあなたとは多分格差を感じて辛くなるから、当時は本気でそう思い込んでいたのだ。今思えば、公輝に対して勝手にレッテルを貼っていたのだと思う。それに拍車をかけたのは、彼の父からかかって来た突然の電話だった。公輝の父は別に交際に反対だとかは言ってなかったはず、寧ろ息子を頼むめいたことを言われた気がするけれどどうしてだかそれを素直に受け取れていなかった。やっぱり住む世界が違い過ぎる。元々帰国間際だったこともあって、日本での連絡先すら告げずに美那は公輝の前から姿を消した。今思えばなんてばかなことをしたんだろう。一方、公輝も敢えて美那を探そうとしていなかった。きっと彼女なりに何か思う所があったに違いない。それでもずっと忘れられず、意外な場所で再会した時は心底驚いたそう。しかも息子まで産まれていたとは、嬉しさ半分戸惑い半分な気持ちだと打ち明けられ、この人もこんなに動揺するんだなと妙な感動を覚えた。息子に会いたいと頼まれ、今度連れて行くと答えれば泣きそうな表情に胸が痛くなる。その際、結婚を前提に再び交際を申し込まれたが、乃恵瑠があなたを拒絶するようなら結婚は出来ないときっぱり。子どもの気持ちが最優先という条件に彼も頷いた。次の週末、公輝のマンションに乃恵瑠を連れて行くと最初は人見知りを発動し、彼の顔を見ようとしていなかった。これは拙いか、と心配していると部屋がホテルのようだとそのうち大はしゃぎ。帰る頃には随分と彼に打ち解けていたのでホッとした。思ったより早く公輝に慣れてくれたおかげで、息子を交えての二人の交際も順調に進んでいる。それから数か月。互いの両親にへの挨拶について考え始めていた頃、どうも彼の様子がおかしい。何か懸念事項でもあるのかと思い切って尋ねると、もしかしたら少し騒ぎになるかもしれないと神妙な顔で告げられた。要は私も一応の覚悟しておけということか。そんなある日、突然社長室に呼び出された美那は、数日後に公輝と自分のことが週刊誌の記事になると聞いて驚愕。しかもその書かれ方が、自社のシンママと交際している副社長が云々という醜聞めいた内容だった。社長は公輝の叔父に当たるため、こういう記事が出るのは甚だ遺憾だと言う。君たちが真剣交際しているのは報告を受けて知っているが、と前置き、申し訳ないがと言い渡されたのは美那を九州支社に転属させるという辞令で・・・。シークレットベビーものです。彼氏が桁外れの金持ちなことにビビり、逃げ出してしまったヒロインが妊娠に気付き、後に出産。両親を始め、色々な人達の手を借りて息子を育てていたら数年後に彼氏と再会。母になったことで心身ともに逞しくなっていたヒロインは当時の自分の弱さを認め、お互いまだ思い続けていたこともあって復縁します。でも結婚は息子の気持ち最優先にしたのは英断ですね。公輝は実父ですけど、息子にしてみればただの母親の知り合いですから、まったく懐かないと言う可能性もあったわけで。シンママの再婚相手と上手く行かず、が原因で起きた傷ましい事件も多いから、息子が嫌がるなら結婚は出来ないときっぱり言える当たり、偉いよ美那さん。まぁ、結局この辺りは完全にただの懸念だったので、そろそろ入籍をと考えていたらなんと二人の交際を面白おかしく書き立てた記事が週刊誌に載ると聞いてビックリ。会社と甥を守るため、申し訳ないけど君たち親子は九州支社に行ってくれないかと非情な命令に困惑しているとその必要は無いですよ。そう言って入って来たのは公輝でした。この記事は差し止めたこと、まったくよくもやってくれましたね、と彼は社長を見据えます。僕がいなくなれば総帥になれると思ってましたか、叔父さん。公輝の言葉に見る見る狼狽える社長は、兄である会長にも見限られて退職に追い込まれるのでした。この社長さん、物凄く優秀で人を見る目もあるのにそれよりもっと出来の良い、双子の兄(公輝の父)には勝てず、甥を追い落として次の総帥の座に就くつもりだったのです。長い間積もっていたコンプレックスのせいで自ら墓穴を掘るとは、随分と勿体ない事をしたもので。突然の社長辞任という騒動後、二人は結婚。エピローグではその二年後の戸ノ崎家の様子が描かれて物語は幕。ヘイトキャラがいなかったおかげでサクサク読めるお話でした。にしても、乃恵瑠って結構なキラキラネームですよね。評価:★★★★
2026.07.03
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2026年4月刊スターツ出版文庫著者:藍せいあ(敬称略)傷を癒す異能を持つ梨花。父と継母、義姉はその能力を利用して医院を営むが、梨花への還元は一切なし。それどころか、梨花は奴隷のように扱われていた。そんなある日、断片的な未来を見る異能を持つ義姉・綺羅羅が『皇帝の花嫁に選ばれる未来』が見えたと言う。翌日、凛々しく眉目秀麗な皇帝・白牙が確かに家にやってくるが…。「姉ではない。お前が俺の花嫁だ」綺羅羅の予知はとんだ勘違い。花嫁に選ばれたのは梨花だった。白牙に愛され、懐妊する梨花。嫉妬に狂った綺羅羅は新たな予知をもとに、梨花を追いかけ後宮入りするが…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 梨花=庶子なことから義母に虐げられていた少女。 優れた治癒の力を持つ。 白牙=白虎の国の皇帝。梨花を妃に迎える。 皇太妃=先代皇帝の妃。 綺羅羅=梨花の異母姉。わずかながら未来予知の力がある。 仔巴=梨花付きの世話係。王都からほど遠い・蘭の村で医院を営んでいる父の家で梨花は使用人以下の扱いを受けていた。特に義母からの当たりが強く、今日も何かと難癖を付けては梨花を鞭打ち憂さを晴らすのを、異母姉の綺羅羅が止めに入り漸く理不尽な折檻が終わった。美しく優しい姉は家族の中で唯一の味方だ、自慢の娘の執り成しで渋々鞭を引っ込めた義母は先程とは打って変わって笑みを見せた。美味しいお菓子があるからと綺羅羅を促し母屋へ帰っていくのを見送り、身体を起こした梨花は痛みに耐え傷が治るのを待った。類稀な治癒力、戯れに手を突けた女が産んだ娘を持て余しつつ、父はこの力を喜び大いに利用した。朝昼晩問わず義母にこき使われ、合間には病院の手伝い。毎日へとへとになりながらも病一つにも罹らないのは自身をも癒す治癒の力のおかげだろう。そんなある日、綺羅羅が皇帝の妃に選ばれる夢を見たと朝から大はしゃぎ。未来予知の力を持つ娘が言うのだから予知夢に近い無いと父と義母も大層の浮かれよう。実際に妃に選ばれた者の家の屋根に刺さるらしい白虎の矢まで飛んできて。皆の喜びは最高潮。綺羅羅をしっかり磨き上げろと厳命された梨花は目も回るような忙しさだった。だが、こんな時まで彼女は嫌がらせを受け、しまいには花街に売られそうに。皇帝が迎えにやって来る日は、梨花もこの家を出される日。お前は絶対納屋から出るなと閉じ込められていた彼女は、突然開けられた扉の音に驚いて身を起こした。見ると銀色の髪に上等な着物をまとった青年が立っている。俺の妃をこんなところに閉じ込めたのは誰だ!?その問いかけに父と義母はしどろもどろ。ビビりまくりの両親を他所に私を迎えに来て下さったのではないのですか?と青年に問いかけているのを見て、この方が皇帝なのだと思い当たる。皇帝は梨花の前にやって来ると迎えに来た、そう言って手を差し出した。諦めきれない綺羅羅が追いすがるのをお前は誰だ、とひと睨みで黙らせ、梨花を乗って来た馬車に乗せると慌てて走って来た父達に梨花に対する扱いについて問い質した。返答如何によっては罰を下す。その言葉にちょっとした誤解があったのだと苦しい言い訳をしていた父は冷や汗ダラダラ。綺羅羅の無礼な態度については不問にしてくれると判った上、後に梨花の支度金も寄越すの言葉に父も納得がいったようだ。文句を言いたげな義母を黙らせ、馬車を見送った。しかし、こんなことはあってはならないと馬車を見つめる者が一人。私、ちゃんと予知夢を見たのに!あいつが陛下を盗ったのよ、絶対許さない。美しい顔を歪ませた綺羅羅は異母妹への恨みを募らせた。あの日から暫く経った。世話係の仔巴に髪を梳かされ、美しい衣に身を包んだ梨花は今でも夢の中にいるようだった。白虎皇帝・白牙の寵愛を受け、世継ぎの誕生を心待ちにされているのはかなりのプレッシャーだが、幸せでもあった。仔巴から聞いた話によれば、白虎の矢で選ばれた妃とでなければ皇帝は子を成せないのだそうだ。どういうシステムなのかは判らないが、そのせいで度々跡継ぎ問題に直面しているそう。先帝の皇妃は白牙を産んでくれたが身体を壊し早くに亡くなっている。その後妻である皇太妃が未だ権力を持っており、白牙の頭を悩ませていた。仔巴は気を遣ってか、その辺りのことは多くを語らず、この皇家の事情についてはあちこちで耳にした噂の類から知ったことだ。皇帝の本能で選ばれた皇妃に皆一抹の不安や不満を覚えていることも承知している。だからこそ、もっとちゃんとしなければと思う。白牙と皇太妃が火花を散らす中、梨花が懐妊。大喜びの白牙は梨花を気遣い、仔巴には一層気を配るよう命じた。梨花が御子を産めばその地位は盤石のものとなる。未だ皇太妃の元にある首飾り・妃の証も漸く返却さるだろう。あれがまだあの女の元にあるおかげで、皇太妃につく者も多い。愛は与えられないが、と先帝が後妻に渡したのがあの首飾りでそれが皇太妃を増長させた。それ故少しでも早く取り戻しておきたい。御子さまが産まれたならば喜んで、と皇太妃は言っていたが、要はそれまでは絶対に渡す気はないと言うこと。下手をすれば梨花に危害を加えるかもしれない。梨花の実家についても調べさせていると言うし、こちらも警戒しておかなければ。そんな折、皇太妃の口利きで綺羅羅が梨花付きの世話係として白牡丹宮に召し上げられ・・・。自分の未来予知は絶対、と信じ込んでた綺羅羅でしたが、多分、梨花の未来を視たんだろうなぁ。白牙に全然相手にされてないのに勝手な思い込みで梨花の傍仕えになったのは良かったものの、なかなか白牙に近づけない。業を煮やして私も御子を授かりましたと妊婦のフリをした綺羅羅によって梨花は窮地に陥り、という展開です。綺羅羅が最後までバカ女だったおかげで、皇太妃の計画はパァ。実は、梨花が選ばれた理由も最後に語られててああそういうこと、と矢が云々とか言う伝説より妙に納得。最後は、皇帝の子が一人じゃ不安なんですよ、みたいな意見で即妃を迎えろと煩かった宰相も黙っちゃったんじゃないかってくらい、結構な子沢山になったらしい二人が最後まで仲良くやっていたらしくほっこりしました。なるほど、それで梨花が丈夫と何度も言及されてたわけね・・・。ヒロインの親切心が最後色んな形で戻って来るのも良いです。
2026.07.02
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1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位 12位 13位 14位 15位 16位 17位 18位 19位 20位 21位 22位 23位 24位 25位 26位 27位 28位 29位 30位 今回、あと一歩のところで30位内に入れなかった記事が毎日じりじり伸びて来ているので次回はまた入れ替わりがありそうです。
2026.07.01
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8月25日 MFブックス 伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした やきいもほくほく8月27日頃 スターツ出版文庫 黒の花嫁と白の花嫁 あまぞらりゅう 戦神の花嫁~最底辺の少女は永遠の愛を知る~ 湊祥 呪紋の巫女は夜叉の愛に囲われる 松田詩依 ときつの花嫁 霧内杏8月28日 KADOKAWA単行本 死に戻りの王女は幼馴染の騎士に溺愛される 椎名さえら9月1日 角川ビーンズ文庫 塵芥のびいどろ 置いてけぼりの鳥と約束の花嫁 ちづ9月2日 IRIS NEO 元❝悪女❞は、地味な優等生令嬢になって王国の破滅を回避します!(仮) es(敬称略)
2026.06.30
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2026年6月刊ベリーズ文庫著者:一ノ瀬千景(敬称略)双子のシングルマザー・光莉は、帰宅すると家が火事に!怪我人に付き添い病院へ行くと、双子の父でかつて愛し合った救急医・奏真と再会して!?過去、母の借金の取り立てに追われていた光莉は、大病院の御曹司である彼を想って身を引いた。最後の一夜で授かったことは内緒にしてたのに…。奏真はひと時も光莉を忘れず探し続けていた。盲目なほどの溺愛を貫かれる、双子の白黒ドクターシリーズ兄編! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 星乃光莉=女手一つで双子を育てている看護師。 柚木奏真=救急医。光莉の元カレ。北斗&南斗=奏真と光莉の息子たち。 柚木響司=奏真の双子の弟。法医学ドクター。 柚木衣都=響司の妻。松風恵里佳=柚木記念病院外科部長の娘。柚木兄弟の幼馴染み。都内の総合病院で看護師をしている光莉は、もうすぐ四歳になる双子の子育てもあって毎日が大忙し。休日の今日は、子供たちの大の仲良し瑠璃ちゃんとそのママと近所の公園に来ていた。これだけ走り回ってれば今夜はすぐに寝てくれそうね。毎夜、寝かしつけに苦労しているだけに、瑠璃ちゃんと瑠璃ちゃんママには感謝しかない。子供たちが遊んでいる間に相談にも乗って貰って気分も張れた。今夜は子供たちのリクエストに応えてオムライスにしようとスーパーに寄って家路に着くと自宅付近の空に黒い煙が上がっているのが見えた。嫌な予感は的中。紛れもなく燃えていたのは光莉たち親子が暮らすアパート。熱で割れてしまったらしい自室の窓からカーテンが燃えているのが見えてへたり込みそうになった。しかも、懇意にしている隣室の老女の避難が遅れて間一髪救助されたものの煙を吸ったことで救急搬送されることに。隊員に家族と間違われて双子たちと救急車に乗り込むと、搬送先が柚木記念病院と聞こえてギクリ。やっぱりいるわよね、柚木くん・・・。かつての恋人であり、双子たちの実父の柚木奏真は救急医だ。非番の可能性も無きにしも非ずだけれどもう腹を括るしかないのかも。心配そうに大好きなおばあちゃんを見つめている双子たちの頭を撫でながら光莉は小さく溜息を吐いた。ERに運び込まれたおばさんを見送っていると案の定、スクラブに白衣姿の奏真がいた。彼も信じられないような表情でこちらを見ているのに気付き会釈をする。処置中、付添人は控室にと案内され子供たちとベンチに座った。いつもなら夕飯の時間だ。この子たちもお腹が空いているはず。おばあちゃんの治療が終わったらファミレスに行こうねと約束して一時間ほどした頃、奏真が控室に現れた。おばさんが命に別状無いと聞いてホッとした。念のため数日入院になるそうだが、身内の方もすぐ来るとのことで光莉たちはもう帰っていいらしい。説明を受け、じゃあと立ち上がれば、俺も今日はもう終わりなんだ。だから話がしたいと奏真に引き留められた。まぁそうよね。夕飯を食べさせるためファミレスでならという光莉の言葉に頷き、帰り支度をして来た奏真と近くのファミレスへ。良い子でいたのと待たせたお詫びに今日はデザートもOKになり双子たちは大はしゃぎ。イチゴだチョコだと騒ぐ二人を他所に「どうして黙って姿を消したの?」と奏真が訪ねた。光莉が姿を消して五年近く、ずっと彼はその行方を捜してくれていたらしい。数日休みが取れる度に北海道を訪れ、調査会社とは別に自身の足でも光莉の足取りを追った。まさかそこまでしてくれていたとは夢にも思っていなかった彼女は唖然。産まれは北海道としか話していない。道内をしらみつぶしにしていたら調査費用も相当かかった事だろう。奥さんには止められなかったの?とポツリと呟けば、は?僕は独身だよ、そもそも君がいるのにどうして他の女性と結婚なんて・・・。意味が分からない、と言った風に奏真は困惑の表情を浮かべた。困惑しているのは光莉の方もだ。だって、あの時松風さんが。当時を思い出してはたと気付く。私、嵌められたの?何だか申し訳なくなって、光莉は頭を下げると何故自分が奏真の元を去ったのか、事情を交え語り始めた。奏真からの告白で交際を始めた二人は若さもあってお互いに夢中で幸せだった。しかし、そのうち彼が結婚をほのめかすようになると光莉に一抹の不安が。奏真は大病院の御曹司、きっと彼の親は結婚相手にそれなりの家柄を求めるはず。卑下するつもりはないけれど、光莉の家は少々複雑だった。放蕩の末に光莉を産んだ母はまだ十七歳だったそうだ。星乃の実家にいる祖父母と叔父とは折り合いが悪く絶縁状態で会ったこともない。ホステスを天職にしていながらトラブルが絶えず、あちこちの店を転々としていたため生活は苦しく、このままでは自分も同じ轍を踏んでしまうと光莉は安定した職を得るため上京。奨学金で医科大の看護科に進んだ。看護師になり、奏真との出会いと交際、しかし結婚をほのめかされる度に、絶縁状態の母のことを話すべきか思い悩んだ。丁度そんな時のことだ、マンションに闇金の回収員がやって来たのは。なんと故郷にいる母が闇金に借金をしていたらしい。元の額は大したことは無かったが支払いが滞ってかなりの額になっている。多少の蓄えはあるものの到底すぐ払える額ではない。何やってんの、あの人!頭に来て保証人なわけじゃないし私は関係ない、と借用書を突っ返そうとすれば、お宅のお母さんすい臓がん末期で余命三ヶ月なんだってさ、と回収員の言葉に絶句。どう考えても完済できないので娘から回収しろと上役からの命でわざわざ東京まで来たのだと言う。お母さんが死ぬ・・・。正直言えば良い親では無かった。それでも・・・。すぐには支払えないが必ず返す、と回収員に約束し、一先ず母に遭うことを決めた。どうしよう、柚木くんに相談すべき?しかし、その翌日。松風恵里佳と名乗った見るからにどこぞのお嬢様風の女性が光莉の顔を見るなり、奏真と別れろと彼女を脅した。自分は家族ぐるみで柚木家と親交があり、奏真の許嫁であること、そしてゆくゆくは病院を継ぐ約束になっているのに、あなたがいるから結婚できないって言うのよ!!一体どんな女性なのか見に来てみれば、あなたのお母さん多額の借金があるんですってね。そういってほくそ笑む恵里佳から、そんな人とじゃ彼は幸せになれない。そう言われて光莉は身を引く決意をした。それからは怒涛の日々で、一方的に別れを告げた彼女は退職し母が入院する病院に向かった。余命三ヶ月とのことだったが、結局進行が早くひと月もせずに息を引き取った。借金は母の弟・叔父の政宗が処理してくれたおかげで債務者にならずに済んだ。だがその後すぐ体調を崩した光莉は妊娠に気付き、政宗の援助を受け暫く北海道で暮らしていた。じゃあ、この子たちは。震える声で尋ねる奏真に光莉が頷くと、彼は感慨深げに隣に座る北斗の頭を撫でた。そして、全てを知って憤っているのが伺える。一旦、落ち着くため息を吐くと住む場所がないならうちに来てくれと言われ、戸惑いつつも好意に甘えることに。身内の事情があったとは言え、誤解して勝手していた光莉は責められても文句は言えない。なのに、彼は一切光莉を咎めず双子たちと親睦を深めた。そうこうしているうちにすっかり子供達も彼に慣れ懐くようになると、奏真こそがあなたたちのパパなのよと告げた。大喜びする二人の様子にボロボロ涙をこぼす彼に思わず光莉も貰い泣き。柚木院長に挨拶に行くと大層喜ばれ、初孫にデレデレ。その後、結婚報告に響司夫婦のマンションに行けば、奥さんにメロメロな彼を見て、愛は人を変えるんだなぁとしみじみ。色々誤解されやすい言動の響司には結構きつい事も言われたけれど、それを彼は気にしていたらしい。突然謝られてビックリ。これも奥さんの衣都ちゃんのおかげかな。ほっこりした気分でいると、衣都ちゃんが久しぶりに奏真に遭ったからと、外科の小清水先生、随分やつれてましたけど何かあったんですか?と尋ねた。その医師の名前にギクリとした表情になったのは奏真だけでなく響司だった。怪訝に思っていると、あの先生最近離婚したんだよ、しかも原因は不倫。泥沼だったみたいでそれでお疲れなんじゃないかな。奏真の説明に衣都と二人、あららと視線を交わす。医者は持てるから大変よねぇ、ジト目で夫を見る衣都に俺は浮気はしないぞと必死な響司の姿が面白くて双子たちと笑い転げれば、奏真も大笑いしていてさっきのは気のせいねとホッとした。だが、この見知らぬ外科医の離婚劇が最終的に思わぬ事件を引き起こし・・・。シークレットベビーのお話です。身を引いた理由がよくある外野の嘘を信じたからというよくあるパターンなのですが、一応、親が作った多額の借金の件もあったので追い詰められ度は若干高め。でもまぁ、言うは一時の恥とも言いますし、普通に彼氏に相談しても良かったんじゃないかなぁ。大病院の御曹司なら良い弁護士の伝手もあるだろうし、違法な利子なんかはちゃんと処理してくれたはず。なので、叔父さんが弁護士で良かったねぇ、光莉ちゃん。結局、自称許嫁のお嬢様の嘘八百がバレ、再会した二人は復縁。柚木家の面々との挨拶も終え、入籍を控えた頃、気になることがあると響司から小清水恵里佳の話を聞きます。嘘迄吐いて光莉を追い払ったはいいものの、柚木院長からも息子の嫁にとは考えていないときっぱり言われた恵里佳はもう一人の有望株の小清水と結婚。しかし、夫婦仲は悪くあまつさえ不倫迄した夫に三下り半を突きつけ恵里佳は実家に戻っていました。それだけなら自業自得なれど気の毒に、な話なんですが、響司が言うには心療内科の待合室で大暴れしていたと。必死に宥める外科部長に私が不幸になったのは奏真さんと結婚できなかったせいよ、と聞き捨てならないセリフを言っていたからと兄に気を付けろと忠告。なるほどそれは確かに心療内科案件だ。十分気を付けておくよ、勤めて明るく振舞っていた奏真は、先ほど救急搬送された患者が光莉で驚愕。今日は仲の良いママ友とランチをしに行っていたはず。付き添って来てくれていた瑠璃ちゃんママの話によれば、南斗を連れ去ろうとした若い女ともみ合いになり、十段ほどの階段から転げ落ち重傷を負っていました。脾臓が破裂寸前の重体で外科チームに引き渡す前の処置を奏真は見事成し遂げ、光莉は命を取り留めます。長期入院になったものの、その後光莉は無事退院し、暫しの静養の後、奏真と入籍。まだ式を挙げていない響司と衣都夫婦と合同の挙式の様子が描かれて物語は幕。恵里佳さん、ヤバすぎるやろっ。監督不行き届きで外科部長が辞職になったのも止む無し。飽く迄光莉が訴えなかったから傷害罪の方は不起訴になったんだし空気のいい所でしっかり反省して欲しい。ってか、この人の大ボラのせいであんなことになったのに正直激甘な罰ですよねぇ。光莉ちゃんは優しすぎる。でも、接近禁止はお互いのためだと思う。光莉の顔見たらあの人またムキーーーーってなりそうだもん。それにしても、前作のヒーロー・響司がすっかり奥さん大好きマンになっちゃって(笑)あのころのツンが無くなっちゃっててちょっとびっくりしました。評価:★★★★★鉄板ストーリーながら、クライマックスでの不穏な空気にドキドキ。
2026.06.29
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2026年5月刊ベリーズ文庫著者:一ノ瀬千景(敬称略)父が経営する医療機器メーカーで働く衣都は、営業先で“絶対零度の魔王”と噂される法医学者・響司の冷酷っぷりを目撃!いくら名医でも印象最悪。ある日、父の頼みで渋々見合いに行くと響司がいて!?衣都は経営難な家業のために彼と政略結婚することに。殺伐とした夫婦生活になると思いきや、衣都の態度が響司の情欲を煽ってしまい!?予想外の溺愛に甘く囚われる、双子の白黒ドクターシリーズ弟編! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 椿屋衣都=医療機器メーカーの社長令嬢。 会社を救うため、響司との政略結婚に応じる。 柚木響司=大病院の御曹司で優秀な法医学ドクター。 柚木奏真=響司の双子の兄。川中島篤之=響司の同僚。扱う製品は良いが、大手に押されて年々業績が落ちている父の会社を何とか存続させたい。微力ながらも営業として頑張っていた衣都に縁談が。お相手は法医学医の柚木響司。元々、彼の父である柚木院長は「ツバキ医療機器」の器具を高く買ってくれていた。できれば潰れて欲しくない。しかし、ただの得意客が資金援助するには限界がある。そこで、同じくツバキ製のメスを大層気に入っている響司が衣都との結婚相手に名乗りを上げたそうだ。姻戚関係になれば心置きなく援助できると院長は大喜び。とは言え、衣都の父は娘の意に染まない結婚はと渋っていたらしい。正直言うと響司とは上手くやっていける自信が全くない。悪い人ではないんだろうけど・・・。先日偶然目撃した死亡者家族からの再調査の願いをもう結果は出ているときっぱり断っていた彼の冷酷な眼差しは正に「絶対零度の魔王様」解剖に回っていたご遺体はとある議員の秘書で突然死ということもあって死因の特定を依頼されていた。しかし結果は病死。残された奥さんはそれを認めず、あの人は殺されたのだと幾度ももう一度調べて欲しいと懇願していた。まぁ、病死と断定する所見があったからそう報告したのだろうけれど、もう少し言い方ってものが。それでも彼の同僚の川中島が言うような悪人には見えないので、要はあの物言いが問題なんだと思う。せっかくあんなにカッコイイのに色々勿体ない。そしてとんでもなく扱い難そうだ。なのに、そんな人と結婚なんて。前途多難だけど、それでもやらなきゃ!!実は私、ずっと響司先生に片思いしてたの。見え透いた嘘ではああるが、こうでも言わないと家族に罪悪感を抱かせてしまう。しっかり恩を売っておけばいのに、と響司に呆れられたものの、私が嫌なのだと言うと押し黙った。それからとんとん拍子に話は進み、二人は入籍。どうして式を挙げないんだと両親は嘆いていたが、無駄が嫌いな響司がやりたがらなかったのでしょうがない。でも彼が多忙なのは確かなので、せめて写真だけでも撮らせてほしいと懇願すると意外にもあっさり許しが出て、数日後個人経営の写真館へ。その数時間前まで、泊まり込みで仕事をしていた響司は果たして大丈夫だろうか。多忙な夫に我儘を通してしまった衣都は申し訳なくなって、謝罪すると別にとそっけない答え。すなおじゃないんだから。まだ数週間の付き合いだけど、何となくだが響司はただ不器用なだけと判って来ていた。そうですか、そう言って小さく笑った衣都に釣られてか、響司も笑みを見せた。それから暫く経った頃。世間を震撼させるような事件が続き、響司も忙しそうだ、そんな折、臨床検査技師の操に呼ばれ、法医学科に赴いた衣都はすれ違った看護師たちから意味ありげな視線を向けられ困惑。所々に響司の名が混じった話はどうも穏やかなものじゃない。操に尋ねると、この間の議員秘書さんの件といい意図的に響司の悪評を流している者がいるらしい。どうもうちの事情に厳しいのよね、だからこんなこと思いたくないんだけど・・・。言い難そうな操の言葉に頷いた衣都は、一体誰が彼の足を引っ張っているのかと怒りに燃えた。証拠もないのに週刊誌の記者まで響司に付き纏っているし、川中島の含みを持たせた話も気になる。やがて彼女は思わぬ真実に辿り着き・・・。父の会社を守るため政略婚に応じた衣都。しかし、相手は顔も腕もいいが性格に難ありな法医学ドクター。それでも割と相性が良くて、徐々に仲も良くなっていた頃、響司に汚職容疑が。まぁこれは完全にシロなんですけど、記者に付き纏われて彼もプッツン。そんな折、衣都は響司をライバル視している川中島が、根も葉もないうわさを流した犯人だと判り、彼を糾弾。開き直った川中島に襲われるも、そこに間一髪間に合った響司に取り押さえられます。騒ぎになるのは響司が大事にしているこのセンターにも影響が出る。考えた末に衣都は被害届気を出しませんでした。それでも、川中島は守秘義務を守らず色々事情を外に漏らしていたこと、虚偽の悪評を流した責で解雇に。今後、法医学の仕事はできなくなる罰を受けます。一々突っかかって来ていたお邪魔虫も消えたし、夫婦の絆も深まってというラストでしたが、冷酷魔王なのは赤の他人への態度なだけで、響司は衣都にメロメロなのが何とも。元々、好感を持ってたなら最初からそう言えばいいのに、仕事はできるけど何気に不器用なヒーローだなぁ、と。評価:★★★★☆
2026.06.28
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久々ですが、ここ一年くらいの中で面白かったなぁと思うお話十作品です。カテゴリは「ランキング」になってますが、どれが一番、とかではない感じで。今一番続編を楽しみにしています。お互い宿敵同士と知らずに契約婚をした夫婦のお話。とにかくヒロインの性格が可愛い。※楽天が品切れしてるみたいで電子書籍にリンクしてます。こちらも契約婚もの。仮面伯爵シリーズの作者さんのお話です。少し前の本ですが、読んだのが最近なので。居ない者扱いされていた王女が王位を継ぎ、初恋の人を王配にすると言うお話。そのせいで誤解されてしまったヒロインの苦悩が切ない。数々の試練を乗り越えた怒涛のハッピーエンドというのも良かったです。未亡人になった初恋の人を支え続けた自衛官の恋物語。ヒロインの亡き夫からのメッセージに涙腺崩壊。発売は六年前ですが、読んだのは今年。栢野すばるさんらしい内容で笑いあり、とんでもないシリアスもありなお話でした。ヒーローの綿密な計画の内容を思うと確かに策士で腹黒。でもヒロインが幸せなら無問題。読んだのが最近だから記憶に新しいと言う補正も・・・。こちらも発売は少し前。訳あって結婚五年目ながら未だに初夜を済ませていない夫婦が漸く結ばれたのは良いものの、一難去ってまた一難。自称元カノの登場が波乱を呼んで、というお話。内容自体は割と王道なれど、可愛いだけじゃないヒロインの逞しさに惚れる。契約婚もの。最近読んだすずね凛さんのお話の中では一番好きかも。才女と策士が手を汲めば、という割と予想がつきがちな展開ではあるんですが面白かったです。続編発売に一番驚いたお話。でも、震災や戦争を乗り越えての主人公夫婦の顛末が知れて良かったです。田崎くるみさん作のシークレットベビーもの三つ子は結構珍しいパターンのような。ヒーローに付き纏う重役のお嬢様の執念が凄かった(^_^;)読んだのがもう半年前!?月日が経つのは本当に早い。誤解があって交際に至れなかった二人が久しぶりの再会を機に距離が近づいて、という内容。wituらしいお話でした。以上。ヴァニラが多いのは積読を消化中だからです(^_^;)とはいえ、割と多めに読んでるはずのベリーズ系が思ったより入らなかったのは、無難な内容が散見してたからかも。あと、あまりラノベ系が読めていないのが悩みどころ。それを思うと本当に角川系の大幅値上げが痛い。
2026.06.27
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2026年5月刊蜜夢文庫著者:西篠六花(敬称略)ブーランジェリーのオーナーで28歳のつむぎは、毎朝パンを買いにきてくれるモデルのような容貌の男性客・朔とバルで遭遇したのがきっかけで親しくなる。朔は大学の研究室に所属している天文学者で、付き合ってほしいとつむぎに告白。朔に話していない“過去”があるつむぎは返事をためらうが、彼の優しさに触れ交際を決める。けれど朔の職場の女性がつむぎに敵意を持ち…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 鴻野つむぎ=自身が営むパン屋の常連客・朔と交際を始めるが、その経緯で自身 の過去と向き合うことになる。 日比谷朔=大学院に籍を置く天文学者。つむぎの恋人 辻上桃子=朔を慕う新人助教授。 鴻野将史=つむぎの義弟。大学近くに店舗を構えて二ヶ月。ブーランジェリーloinは天然酵母を使ったパンとスコーンが評判となり、早くも人気店となっていた。毎日忙しくて心身ともにへとへとだけれど、つむぎの心は満たされていた。やっぱりパンを作るのは楽しい。思い切ってまた店を始めて良かったと思う。今日も閉店後に仕込みをして十九時に帰宅。きちんと夕飯を採って二十三時には床に就く。判で押したような日々を過ごしていたつむぎに変化が訪れたのはそれから少し経った頃のこと。loin自慢のカンパーニュを毎日買いに来る少し色素の薄い髪色をした長身の男性は、カンパーニュに目が無いのだと言った。つい嬉しくて話しかけてしまったつむぎを邪険にするでもなく、本当に美味しいです、一度食べたら忘れられなくてとまで言われて面映ゆくなる。今日はお薦めのバゲットも購入してくれてその日は一日上機嫌だった。そんなある夜。たまには飲みたくなって近所にあるクラフトビール専門店に入ったつむぎは、そこであの常連客とバッタリ。彼も一人だったようで誘われて一緒に飲むことに。彼は日比谷朔と名乗り、天文学者で店に近いあの大学で助教授をしているそう。講義は週一回だし、研究が主だから朝も遅くて助かると笑っていた。以降、日比谷とは顔を合わせる度に世話話をしている。そのうち食事に誘われるようになり、数回目に交際を申し込まれた。しかし、日比谷に心惹かれていながらもつむぎはそれを断った。思えばこの時に自分の事情を語るべきだったのかもしれない。最初は友人でもいいからという日比谷の言葉に彼女は甘えてしまったのだ。結局、それがとても心地よくてひと月も経つと彼女は日比谷の想いを受け入れ恋人関係に。その頃には店もSNSで頻繁に紹介されるようになり、最近二社ほど雑誌の取材を受けた。相乗効果で店は大繁盛。嬉しいけれど目も回るほどの忙しさにつむぎはついに倒れ、日比谷を心配させた。いい加減一人では限界が近い。そろそろパートを雇おうか考えていたつむぎであったが、義弟の将史が店に現れたことでそれどころではなくなってしまった。どうしてバレたの!?両親と祖父の助けで遠くに逃げたつもりだった。と思いかけてはた、と気付く。取材を受けた雑誌か。将史が読みそうもないジャンルだったので高をくくっていた。義弟の性格なら見つかったら最後、しつこく付き纏って来るだろう。店も軌道に乗ってこれからという時に閉店して逃げるわけにはいかない。途方に暮れたつむぎは日比谷に相談すべきか悩んでいた。一方、日比谷は新しく研究室入りした新人助教授・辻上からの猛アタックに困り果て、一度は上司である教授の久枝に相談。一度は厳しく注意された辻上だったが余計に闘志を燃やし付き纏って来る。一度はloinまで付いて来てつむぎが恋人と知るや喧嘩を売る始末。つむぎにジト目で見られ、慌てて辻上を引っ張って店を出ていい加減にしてくれと𠮟りつけた。なのに、あんな冴えない彼女より私にしときましょうよ、ととんでもないことを言い始めたので日比谷は君を選ぶことは死んでも無い、ときっぱり拒絶。その翌日のことだ、loinに苦情の電話と口コミサイトに悪評を書かれ出したのは。突如現れた義弟の件と言い、つむぎはもう一杯一杯。どうやら大変なことになっているらしいつむぎの店を心配していた日比谷は、彼女の過去を勝手に調べたと言う辻上から、つむぎは人妻だという話を聞き・・・。実はつむぎは未亡人でした。カメラマンをしていた鴻野清春と結婚した彼女は、なんと入籍から一週間で事故で夫を亡くしていたのです。しかも事故の原因は清春の弟・将史の運転ミス。いくら夫が可愛がっている弟でもつむぎは将史のことをどうしても許せなかった。なのに、兄の嫁は僕の姉、と将史はつむぎに依存。恨んでいる相手に依存されてつむぎは精神的に不安定となり、見かねた両親が実家に連れ帰ったのです。そこで暫く療養し、知人の店の手伝いをするうちに漸く容体も良くなった頃、やはりまた店をやりたいと資産家の祖父の援助でloinを開店したのでした。なのに将史に見つかってあの頃の悲しみと憎しみが蘇り、つむぎは日比谷に助けを求めようとしますがあのバカ女のせいで、最悪な形で自分が人妻だとバレる形に。とはいえ、店を出した時に旧姓に戻していたので何ら問題はないんですが、一時二人は破局の危機に陥ります。でも、辻上が友人に頼んで口コミサイトに書き込んでもらったり、苦情電話を入れていたことを耳にし、日比谷は大激怒。何の権利があってそんなことしたんだと大目玉を食らい、速攻で教授に話が行って試用期間だったのもあって辻上は解雇になります。元々、人の彼氏を横取りしまくったせいで在籍していた大学に残れなかったというサークルクラッシャーだったらしく、今回もイケると思い込んでの行動だったよう。でももう二度と研究職に就けませんね、いい気味。将史の件も日比谷が間に入り、結局警察案件に。後に接近禁止を食らい二人が一安心した頃、つむぎは自らの過去を語ります。でもまぁ確かに夫が死んですぐに籍は抜きにくいよねぇ。その頃まだ二十四ですよ、彼女。そりゃ親も心配しますわ。しかも病的に依存気質の義弟に付き纏われてちゃ気が気でないでしょう。せっかく逃げれたと思いきや、店が大評判になり取材受けたら即見つかってあの騒ぎ。あのアホ義弟も大層な借金持ちだったらしく、つむぎに払わせる気満々だったのが。こわっ。お邪魔虫二匹も消え、平穏な日常に戻った二人は同棲を始め、数か月後。日比谷からプロポーズされて物語は幕。作中に出て来るパンと料理が皆美味しそうで、お腹が好きました。評価:★★★★☆内容的には★5ですが、お邪魔虫二匹がマジで胸糞過ぎて。
2026.06.26
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7月中旬 ノーチェブックス 呪いの眠り姫はヤンデレ騎士に夜ごと執愛される 沖田弥子8月24日 ことのは文庫 鬼門に捧ぐ花嫁 呪いの糸で結ばれる初恋 結来日ひろは8月25日 メディアワークス文庫 婚約者の王子に毒を盛られたので愛が冷めました 2 あさづきゆう 幽霊屋敷の祓い屋医師 染井𠮷乃8月27日 フェアリーキス 聖女はおうちに帰りたい! 攻略対象外のはずなのに、主人公がルート入りしようとしてきます 月神サキ9月10日 蜜夢文庫 エリート同期と子作り契約 愛を信じられない私は子どもだけは欲しいのですが(仮) 琴子さくら9月24日 蜜猫文庫 冥奏師公爵の執着が重すぎる ~逃げたい浄罪の乙女と、夜ごと魔力を暴く愛の呪いと(仮) 猫屋ちゃき(敬称略)来月になったら10月の予定も出そうですね。
2026.06.25
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2026年4月刊ベリーズ文庫with著者:皐月なおみ(敬称略)人懐っこい同僚が“癒やし役”に立候補!?ひとりが好きなのに、彼のペースに巻き込まれ…。愛犬ロスによる不眠のせいで、残業中に職場の休憩室で寝落ちしてしまった一華。ふと懐かしい温かさに目覚めると腕の中には愛犬…ではなく同僚の歩が!しかも終電を逃し歩と朝まで過ごすことになり…!?口下手でひとりを好む一華は人懐っこい歩と一緒は気まずいと思ってたけど…。これ以上関わることはないと思いきやなぜか歩は一華に興味津々なうえ、“癒やし役”に立候補してきて!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 加藤一華=仕事は優秀だが人付き合いが苦手で、何かと誤解されがちな性格。 加藤歩=一華の同僚。明るい人懐こいワンコ系男子。 夏木=歩の営業アシスタント。 河西彩香=一華の後輩。法律事務所向けの業務支援ソフト開発販売会社・キュリルテクノロジーの営業として働く一華は人付き合いが大の苦手。今日も課のムードメーカー・加藤歩が音頭を取って飲み会をするらしく、加藤さんもどう?と誘われたがまだ仕事があるのでと断る。そんな一華に、あ、それならお手伝いしますとおずおずと声をかけて来たのは一華のアシスタントの河西だった。時計を見ればもう定時は過ぎてる。それでも自分が手伝えば三十分ほどで終わるからと申し出てくれたのだろう。失敗したー、仕事残ってるとか言われたら河西さんも気にしちゃうよね。次に誘われたら他に用があるって理由にしよう。いいのよ、すぐ終わるから。河西さんは気にせずみんなと行って。こういう時、ニコリと笑えればいいのだが、真顔でこんなこと言われた河西は一瞬泣きそうな顔をして、すみませんお先に失礼しますと先輩たちに促され退勤して行った。一人ぽつんとPCに向かう一華を歩のアシスタントを務める夏木が睨みつけ、だから言ったじゃん、加藤さんは呼んでも来ないって、それに見た?あの態度・・・。一華への不満を聞こえよがしに言いまくる夏木に同意する他のアシスタントたちの声が遠ざかり聞こえなくなると彼女はため息を吐いた。歩や河西には申し訳ないが、自分のことは放っていて欲しい。大抵の人は皆でわいわいするのが心底楽しいのだろうけれど、一華は一人が好きだった。かといって引き籠りなのではなく、映画館や地元の催しに行くのも、外食するのも一人の方が楽しめるからだ。何と言っても気兼ねしなくていい。それに加えて一華の場合、その日あったことを反芻し反省点含めてじっくり考え答えを出す時間がどうしても必要で、それは一人にならなければできないことだった。でもこうして会社で働いている以上、最低限の人付き合いも必要だと思う。もう少し愛想があれば、夏木さんからの評価も変わっていただろう。一時間ほどの作業を終えて、会社を出た一華は近道である公園を通り抜けつつ、落ちているペットボトルを数個拾い中ほどにあったゴミ箱に入れ満足げに微笑む。ゴミ拾いでポイント一点!徳を積むと良い事があるのよ。亡き祖母は幼い一華によく言って聞かせた言葉だ。ゴミが落ちていたら拾ってゴミ箱へ、困っている人が居たら助ける。そうした小さな徳が溜まりに溜まったら後で自分にいい事が返ってくるのだと。ポイントにしているのはどれくらい徳が溜まったか一目で分かるようにと勝手につけたもので、午後に給湯室の掃除もしたので今日のポイントは二点。気分が良くなって丁度やっていたフェスタをぶらぶらし、キッチンカーで買ったタコスで夕飯を済ませる。途中、おひとり様でこんなとこ来て楽しいのかね、と通りすがりの学生に馬鹿にされたが気にしない気にしない。スマホの電源を入れ、愛犬の写真を見ると少し凹んだ心も癒されていた。翌週、担当している法律事務所でトラブルが起こり、一華は大忙し。本来なら河西と連携を取らなければならないのに、あちこち飛び回っていたせいで彼女は何をしていいのか判らなかったそう。そういうの、ちゃんと加藤さんの方が指示出さなきゃ!これみよがしに一華の協調性の無さを責め立てる夏木にストップをかけたのは歩で、今回ばかりは仕方ないよと宥めた。夏木が歩に好意を持っているのは周知の事実で想い人に宥められた彼女は渋々黙った。そして歩は一華にも加藤さんもこっちに仕事回してくれていいからと笑顔を見せた。その態度にまたもや目を吊り上げる夏木に周りもヤレヤレと言った雰囲気。一華も居たたまれなくなり迷惑かけてすみませんと謝罪した。その日は結局事後処理に追われようやく終わったのは二十一時近く。さすがに河西は二時間ほど前に帰らせたが、仕事も終わりかけていたので素直に帰宅してくれた。こっちも来週に持ち越さなくて良かった~~。これで土日はゆっくりできる。久しぶりにあのブックカフェにでも、と週末やりたいことをつらつら考えていた一華はそのまま机に突っ伏して眠ってしまっていた。フワフワ・・・。トモ、生きてたんだね・・・。無意識に抱き寄せようとして愛犬の手触りと違うことに違和感を覚え、目を開く。そこには腕まくりした逞しい腕。ギョッとして掴んでいたその手を振りほどくと向こうも目が覚めた様だ。加藤君、なんでここに!?寝ぼけ眼の彼は、漸く事態を把握して、ああ、と頷く。歩の話では、例の如く皆と飲みに行ったものの、持ち帰りの仕事を会社に忘れていたのを思い出し戻って来たのだそう。そこで気持ちよさそうに一華が寝ていたので起こそうとしたらトモと抱き着かれ、放してくれなかったと。酔いもあってつられて眠ってしまい、今ココという状況らしい。誓って何もしてないからっ、の言葉に耳まで赤くした一華もコクコク頷く。そう言う点では歩のことを信頼している。明るいお調子者だが決してバカではない。時計を見ると何と午前二時。こりゃ終電ないなと頭を掻く彼にごめんなさいと詫びた。俺も何としても起こすべきだったからと謝罪した彼から朝までやってるバーがあるからそこで始発まで時間潰そう?と誘われた。食事も絶品というそのバーは本当に美味しかった。珍しく話も弾み、もしかして今週トラブル以外に何かあった?と問われ顔を上げる。なんというか余裕ない感じだったから・・・。ホント、周りをよく見てる人だな、と思う。彼になら話してもいいか、漠然とそう思えて「先週末、うちの犬が死んだの」トモっていうゴールデン・レトリバーが老衰で・・・。二十歳だから大往生なんだけど、死んだ日からよく眠れなくて。トラブル自体は一華のミスなどではなかったが、眠れない上に毎日残業では相当きつかったろう。河西にも悪いと思いつつ一杯一杯だったはずだ。子どもの頃から一緒だったそうだし、ペットロスは侮れない。もっと周りを頼ってくれてもいいのに。そういうの加藤さんには難しい?歩の言葉に一華は小さく頷き、両親が厳しく他人に頼るなと教え込まれたこと、それに加え一人の時間が無いとダメな自分の性格を話した。寧ろ、大勢で騒ぐ方が楽しい歩だったが、稀に一人になりたいこともあるので一華の性分も判る気がした。週明け、一華ちゃんおはよう、と歩から声をかけられしどろもどろに挨拶を返していると、室内はざわざわ。もう一人のお調子者社員・石橋がいつからお前らそんな仲に!?と驚いている。まさか本当に下の名前で呼ぶなんて!!あの後、同じ加藤じゃお互い呼びにくいから下の名前で呼び合わない?と提案されたのだ。なんで!?と嫌がる一華に夏木だって俺のこと「歩」と呼び捨てよ?加藤が二人じゃ紛らわしいってさ。そりゃ、夏木さんは別な意味で、と思ったが何だかんだと言い包められ不承不承承諾していた。当然ながら面白くないのは夏木で、河西への伝達事項にまでアシスタントの先輩として口を出し一華に文句を付けて来た。なら、お前が河西さんをバックアップしてやってくれよ。そう言って歩が間に入り、夏木に言い含め一華がいない間のフォローを頼んでくれた。私の仕事が増えると不服気な彼女に俺はそこまでお前に仕事回してないぞとキッパリ。毎度キッチリ定時上がりしている夏木はかなり業務内容に余裕があった。偏に歩が時間内に処理できるものしか回してないからで、そこを突かれると夏木もぐうの音も出ない。判ったわよ、と頷いた彼女は話が終わった後、またしても一華を睨みつけていた。それから暫く経った頃、歩が何かと気遣ってくれたおかげで一華のペットロスは大分緩和して来ていた。先月、彼がゲーセンで取ったというゴールデンレトリバーのぬいぐるみを貰い、それを抱きしめていたら自然と眠れるように。八時間睡眠のおかげで顔色も良い。一華ちゃん、いいよな。女好きの石橋の言葉に歩は眉を吊り上げた。彼女の可愛さは俺だけが知ってればいい。ふと沸き上がった感情に自分でもびっくり。俺ってもしかして彼女のことが好きなのか!?あの日を機に始まった一華との友人関係は、決して変な気を起こさないと言う約束から成り立っている物だ。なのに今更下心を見せたらもうあんな風に笑顔を見せてくれなくなるかもしれない。そう思うと告白できなかった。一方、就業後に彼と一緒に行った紅茶専門店に入ろうか迷っていた一華を丁度通りかかった夏木が見咎めた。へぇ、あなたも歩とここに来たの?でも勘違いしない方がいい、彼は誰にでもあんな調子だから自分だけ特別とは思わない事ね!!言いたいことだけ言って店に入っていく夏木の背を見送り一華は今言われた言葉を反芻した。そうだよね、彼は優しいからコミュ障の私に声かけてくれてただけ。もういい、次に会う時はもう大丈夫とそう言おう。小さく嘆息した一華は歩とは個人的に会わないことを決意し・・・。ワンコ系の陽キャ男子とおひとり様大好き女子の恋物語です。傍で見てても良いバランスの二人なのに、同僚の女からの横やりが入り、由々しき事態に。いや、相手にされてないのはあんたの方やで?夏木さん。もう個人的には会わない、と後日一華から宣言された歩は大慌て。告白する前にシャットダウンされたらそりゃ焦る。しかも飲み会で夏木から、さっき加藤さんがうちの取引先の弁護士と連れだって歩いていたと聞かされいても立って居られず居酒屋から飛び出す歩。幸運にもイタリアンレストランに向かい合って座る二人の前に、彼女とはどういう関係でといきなり詰め寄る彼を一華が止める前に弁護士の方は何かを察したのか自棄に挑戦的な態度。それでも屈しない歩に弁護士が大笑いし、失礼と差し出した名刺には永江祐一郎という名前。一華の従兄ですと挨拶され、大事にされてるなとウインクした彼は一華を託し店を後にします。一華の実家は地元でも大きな寺のため、色々厳しい彼女の両親に頼まれた祐一郎が度々様子伺いで食事に誘ってくれていたのでした。理由を聞いて気の抜けていた歩は自らの気持ちを打ち明け、一華も私も歩君が好きと告白。晴れて二人は交際を始めますが、恋に不慣れな一華のためゆっくり行こうと歩は告げます。歩への恋心で一華にライバル心を燃やし当たりのきつかった夏木は、周りからもその態度が目に余ると上司に報告されて厳重注意を受けます。確かに、一華が祐一郎と歩いてるだけで取引先の人との交際は禁止されてるのに、もしかして身体で仕事取って来たんじゃない?とか大げさに触れ回ってたのを、周りが滅多なこと言うもんじゃないと止めてたからなぁ。あの物言いはヤバイ。まぁ、おかげで歩がブチ切れて一華とハッピーエンドになったんだから、夏木さんはキューピットになる、のか?その夏木さんもそのうち居難くなって辞めそうな気がしてたんだけど、しぶとくいる辺り給料良い会社なのかも。二人が結婚したら同じ姓なので、ハンコとか変える手間なくていいね、と何となく思いました。冗談はさておき、内容はすごく良かったです。評価:★★★★★
2026.06.24
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2026年3月刊ヴァニラ文庫著者:華藤りえ(敬称略)幼馴染みの医師、誠司と政略結婚した瑠里。長年、彼から触れられなかったのに、ある日を境に急に熱っぽく迫られて!?実は誠司は、瑠里が妹から預かっていた書きかけの離婚届を見つけて誤解していたのだった。そうとは知らず戸惑いながらも彼に愛される日々。「抱いて、いいか」蕩けるように快感を覚えさせられる中、とある美女が彼に急接近してー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 六条瑠里=結婚して五年目の夫との仲に悩んでいる。 六条誠司=心臓血管外科医。瑠里の夫。豊坂美智香=誠司の妹で瑠里の親友。 豊坂馨=誠司の親友。遠坂貴理子=誠司と馨の同期の病理検査医師。今年二十三歳になる瑠里には結婚五年目になる夫がいる。とある理由で高校卒業と同時に籍を入れたが、夫婦水入らずの生活を始めたのは去年のこと。それでも一緒に暮らし始めてもう一年になるのに実は初夜も済ませていない。まぁ、入籍当初は義祖父の意向で瑠里が大学卒業するまでは手出し厳禁と言い渡されていたからで、いざ二人きりになってもさぁ、これで心置きなくとはなかなか至らない。要はタイミングの問題だ。それに、誠司さんが結婚を急いだのは半分が同情だと思っている。六条伏見総合病院の共同経営をしている六条家と伏見家。しかし、本来なら義祖父の後を継ぐはずの誠二の父は医師を目指さず画家になったことでその期待は孫の誠司に注がれた。そして少々歳は離れているが、と伏見家の一人娘である瑠里が彼の許嫁に決まった。両親からも瑠璃は誠司くんのお嫁さんになるのよ、と言われ、あのカッコイイお兄ちゃんのお嫁さんが私、と幼い彼女は舞い上がった。そうして時が経ち、研修を終えた誠司が外科医師の道を歩み始めた頃のことだ、瑠璃の両親が事故で急死したのは。まだ高校生の彼女に突如転がり込んで来たのは大病院の経営権。両親は二人とも医師であったが、元々伏見家は六条伏見病院の経営を担っていた。まだ未成年の瑠里の後見人になればあの病院を恣にできると葬式後に伏見家の親戚達が瑠里の親権を巡って大揉め。その醜い争いにの祖父・孝司がブチギレ。誠司もまた思う所があったのか、一人両親の死を悼んでいた瑠里にプロポーズ。夫婦らしい生活を送れるのは数年後になるが、俺たちが籍を入れてしまえばあいつらは君について好き勝手出来ない。それに将来のこともゆっくり考えられるはずだ、と。結婚すると言う孫の言葉に孝司は随分早まったなぁ。そう言って苦笑していたが、これが瑠里を守るには一番の方法だと頷いてもいた。だからと言って、瑠璃が大学を卒業するまでは絶対に手を出すな、ときっちり約束させたのは流石と言う他ない。元々許嫁とは言え、結婚自体はそれこそもう少し後の予定だったから、誠司にしてみれば瑠里はまだまだ子供だろう。やっぱり十歳差は大きいよなぁ。未だに子供っぽい体型の瑠璃では食指が湧かないのかも。一年も同じ部屋に棲んでて全く触れられないのはきっとそういうことだ。そんなある日のこと、幼馴染でもある義妹の美智香から離婚すると相談を受けた瑠里は、早まる義妹を必死に止めていた。あの馨さんが浮気なんて絶対有り得ないって!!そう宥めても、あの人、他所でシャワー浴びて来てるのよ、という話に目を瞠る。それでもあんなに美智香にベタ惚れの馨が浮気をするとは考えにくい。その辺、疑問に思うならちゃんと本人に聞いた方が良いよと慰めた。その後、憂さ晴らしと称した買い物とディナーに付き合わされ瑠里もへとへと。離婚届まで書いて来てたから没収したけど、旧姓の六条美智香と記入してあるのを見て微笑む。どっちにしろこれで出しても不受理だよ、美智香。帰る頃には落ち着いていたし、今夜勇気を出して聞いてみると言っていたから明日には報告が来るはず。疲れからウトウトしていた瑠里は美智香から預かっていた離婚届を仕舞わないまま眠っていた。目覚めるとベッドの中にいて、リビングからの物音で誠司が帰宅していたことに気付く。寝過ごしたと思い慌てて支度をしていると鞄からあの離婚届がはみ出ていて見つかったら大変、と引き出しの奥に仕舞う。相変わらずカッコイイ。瑠里の作った朝食を食べ先に出勤する誠司を見送り、三十分後、彼女も六条伏見総合病院に出勤だ。実は、瑠里が誠司の妻であることは公表していない。知っているのは誠司の同僚で義弟に当たる豊坂馨と院長の孝司、あとは上層部の数人くらいだ。瑠里のことは皆、院長の姪っ子だと思っているらしく、誰も誠司の妻だと想像もしていないのだと思うと虚しい。一方、誠司は瑠里の鞄からはみ出していた離婚届を見てから心中穏やかでなかった。瑠里が好きだからこそあの下種な親戚たちの魔の手から守るため結婚を急いだ。おかげで四年も我慢を強いられる羽目になったが後悔は微塵も無い。漸く祖父の許しを得て夫婦で生活を共にできるようになったのに、生活時間が合わずすれ違いばかり。すっかり初夜のタイミングを逃してしまった。この場合、さり気なくこちらから誘うべきか。女性にモテモテでも誠司は瑠里意外に興味がなく恋愛は未経験。こういう場合どうしたらいいのか判らない。そこで揶揄われるのを覚悟して馨に相談すれば、お前ら結婚して五年だろ!?と心底呆れられた。まぁ、それならケーキ出も買ってってやれよ、一緒に食べながら会話しろ。お前らに足りないのは語らいだ。馨のアドバイスに確かに、頷いた誠司は早速実行。かくいう馨も不倫疑惑から離婚の危機だった。結局、ネコ嫌いの美智香に黙ってネコを拾い、預けた保護施設に足繁く通っていただけらしい。他所でシャワーを浴びたのもネコ臭さを消すためだったと。結果、馨が拾ったネコを美智香が大層気に入り、昨日施設から引き取って来たそう。そのネコを介して更に仲が深まったとデレデレの馨に一瞬殺意が湧いたが妹夫婦が仲睦まじいのは良い事だと思う。時同じくして、美智香からその後を聞いた瑠里もホッとしていた。見せてもらったネコの写真は本当に可愛かった。そりゃ馨さんもメロメロよね。ホント、騒がせてごめんねぇ。平謝りの美智香に意を決して自分たちのことを相談すると、あの朴念仁めぇと美智香は怒りの表情。私、全面的に協力するからっと連れて行かれたのは美容院。その後はあちこち買い物させられてさすがにげっそり。ほぼ同時刻に帰宅した誠司は瑠里を見ると固まっており、いきなりキスされたと思うと寝室に連れ込まれ押し倒された。待ちに待った展開、嫌なわけがない。大いに盛り上がった二人は漸く初夜を迎えたのだった。翌朝、誠司が買って来たケーキが朝食になったが二人とも上機嫌。それからというもの、語らいも増え休みの日には出掛けるように。できれば早いうちに子供が欲しいなぁ。そう漠然と考え始めていた頃、誠司の元カノを自称する遠坂貴理子があらたな病理検査医師として赴任してきて・・・。歳の差婚ものです。漸く観も心も結ばれ、結婚五年目にして新婚気分を味わっていた瑠里と誠司の前に、誠司の自称元カノ・貴理子が現れます。でもあれおかしいな。誠司のモノローグのよれば彼は瑠里が初めての相手でした。なのに元カノ?馨もめんどくさいのがやって来たと眉を潜めるも、義兄夫婦の邪魔はさせまいと誠司に協力。そもそも、昔誠司に全く相手にされず、別の医師と結婚していた貴理子さん。一児をもうけるも後に不倫に走り泥沼離婚していました。その時、風の噂で誠司が許嫁と結婚するもまだ子供もいないと聞き及び、箱入り娘程度なら少々脅せば自分から離婚するだろうと瑠里に喧嘩を売ってきます。しかも、伏見の令嬢は禄に家事もせず、夫婦仲も冷え切っていると言う根も葉もない噂をバラまき、ついに誠司は激怒。その頃には誠司の気持ちを疑っていなかった瑠里も、貴理子からの喧嘩に受けて立ち、言い負かしたことでいつのまにやら出来ていた人だかりから拍手喝采を受け勝利をもぎ取ります。この騒動で貴理子の評判はがた落ち。噂もデマと証明されたのはいいものの、瑠里こそが誠司の妻だと関係者たちに知れ渡って彼女は腹を括るのでした。離婚届の件も終盤やっと誤解が解けて一件落着した頃、誠司の提案で結婚式を挙げた二人が新婚旅行へ。ラブラブな二人の旅先での様子が描かれて物語は幕。中盤にはこんな感じだったので、もしやと思えばやっぱり出て来たよ、昔の女。でも、本人のモノローグでデマなのは判ってたからモヤモヤ度はほぼ無し。代わりに実は頼もしかった瑠里の意外な一面が見れて良かったです。やっぱりラブコメは良い。評価:★★★★★
2026.06.23
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2024年11月刊ティアラ文庫著者:真波トウカ(敬称略)乙女ゲーム世界に転生したユリア。推しキャラ・ヴィルの闇堕ちを回避して、陰から見守るつもりが…「かわいすぎて、もっと触れたくなる」まさかの溺愛ルート!?熱く貪るようなキス。執拗なまでの愛撫に敏感な身体は甘く満たされる。「きみのいない人生なんて考えられない」戸惑いつつも“好き”が溢れてー。想定外な激重愛に押しつぶされそう!ヤンデレ侯爵の執着ラブ! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ユリア=ゲーム「魔法学園エーデルリヒト」に登場する悪役令嬢。ヴィルフリート=ユリアのバディの侯爵令息。闇魔法の使い手。クラウディーテ=ヴィルの姉。病で長期入院をしている。 フェリクス=魔法実践学の教師。 ソフィー=「まほユリ」のヒロイン。 ハインツ=ユリアとヴィルのクラスメイト。ある日突然、自身の前世を思い出したユリアは混乱していた。ここが生前やり込んでいた乙女ゲーム「魔法学園エーデルリヒト」略して「まほユリ」の世界だと判って素直に喜んでいたのだが、まさかの悪役令嬢なんて。どのルートでも破滅しか待っていない性悪女・ユリア。魔法練習相手<バディ>のヴィルと組んでヒロインのソフィーを虐めまくる。まぁ、ユリアの結末は自業自得だが、実行犯のヴィルはもっとキツイ処罰を受けてしまう。実は前世ではこのヴィルが推しキャラで、攻略対象外なのが残念でたまらなかった。彼も攻略できていれば闇落ちは防げたんだろうなぁ。にしても、たかが男爵の娘に侯爵家の跡取りである彼がどうして従っていたんだろう。何か弱みでも握られてたのかしら。とにかく、私がユリアになったからには何としても彼を救って見せる。先ずは不必要に近づかない事かしらね。バディなので全く話さないというのは難しいけれど、それ以外はなるべく距離を置いて・・・。が、この人、私に対して塩対応過ぎない!?挨拶したらそっぽを向かれ、ヴィルと呼んだ日には君に愛称で呼ぶ許可した覚えはないとバッサリ。取り付く島もないとは正にこのこと。でも、そろそろ魔力を吸い出さないとこの後とんでもないことになる。マテリアルにあったヴィルの過去を思い出し、どうしても阻止したい出来事があった。希少な闇魔法の使い手である彼は魔力コントロールが不得手だった。ちょっとした感情の揺らぎでそれが暴走し、ヴィルは最愛の姉を死なせてしまう。ユリアが彼のバディに決まったのは魔法の相性が良いからだ。魔法はほぼ使えないものの、無尽蔵に他人の魔力を吸い取ることが出来るユリアの力でヴィルは不承不承ながら定期的に魔力を吸って貰っていたのだ。もしかするとこの辺の事情が後に彼がユリアに従う理由なのかもしれない。長く入院している姉の見舞いに向かうなら尚更暴走出来ないくらいに魔力を吸収しておいた方が無難だ。なので、病院に行く前にしておこう?殊勝な態度で申し出たユリアにヴィルは鼻白み、そうやってベタベタ俺に触るのが目的なんだろう?と言い放ち。吸収のため力を籠めようとしていた手を振りほどかれた。この一瞬だけで判る、今にも溢れ出しそうな魔力。今日があの事件の日とは限らないけれど、やっておいて損はないはずだ。こんなに溜まっていては本当に危険なんだって!!言い募るユリアに、ヴィルは飽く迄も頑な。多分、お姉さんを死なせたことで自棄になりユリアと悪事を働くことになったのだろう。尚更このままいかせる訳には行けない。ままよと彼の唇にキスすると手を握るより多くの魔力を吸い取ることに成功。まぁ、激怒したヴィルに唇を思い切り噛まれてこっちは流血沙汰だけど・・・。なんて奴だ!そう言って彼は足早に去って行った。翌日、昼食を食べるため中庭にやって来たユリアはため息を吐いた。流石は悪役令嬢、友達が一人もいないとは。普通この手のライバルキャラには取り巻きくらいいそうなものだが、よくよく思えばユリアは高位貴族でも何でもない。ただの性格の悪い男爵令嬢。そりゃそんなのと友達になりたくないわよね。ホント、ユリアにはヴィルしかいなかったんだ。でも、ヴィルを闇落ちさせないためには私とは引き離さなきゃ。そして私は性根を入れ替えたことをアピールして何とか友人を作るの!そう決意してサンドイッチにかぶりついているとヴィルがやって来ていきなり頭を下げた。何事!?唖然とする彼女にヴィルが語ったのは昨日のこと。怒り心頭で見舞いに行ったが、身体がいつもより軽かったそう。それで姉にもにこやかに接することが出来たのだが、医師から姉の病が長引いているのは呪いの魔法をかけられているからだと聞いてショックを受けた。いつもだったら暴走しかけていた。君が無理矢理にでも魔力を吸収してくれていたおかげだと礼を言われた。そしてかさぶたが出来ているユリアの唇に指を当てると傷は綺麗に無くなっていた。ごめん、俺のせいだから。再び謝罪してくれた彼は治癒の魔法を使ったらしい。このくらいなら魔力暴走もしないから、照れくさそうな表情に、内心でユリアは昇天しかけ、慌てて首を振る。私もかなり迷惑かけてたから気にしないで欲しい。そんな彼女に「最初の頃に言われた話は今でも有効か?」、神妙なヴィルに聞かれ、はて、何か約束してたかしらと思いつつ。ええ、勿論と頷くと彼は嬉しそうに微笑んだ。昼休みが終わるとヴィルがユリアの隣の席のハインツに席を代われと脅している場面遭遇。慌てて止めたがハインツの方がビビって、彼にどうぞと籍を明け渡していく。満面の笑顔で自分の机とユリアの机をくっつけるヴィルは昨日までの塩対応はどこへやら。どこにでもついて来る彼に、一体何なの!?訳が分からないとユリアは一喝。君が俺に恋人になれって言ったんだぜ、とキョトンとしている彼に、ユリアぁあああっと頭を抱えた。成程、恋人の頼みだからってのも従ってた理由か。闇落ちを防ぐために無理にでも魔力吸収したら逆に惚れられてしまったと言うのはゲームの抑止力なのだろうか。どちらにせよ、ソフィーを虐めるつもりは更々無いので、私さえ気を付けていれば破滅は回避できる?その後、やはり人付き合いは必要よね。クラブにでも入るかと各クラブの募集ポスターを見てみたがどれも皆、魔法が仕える前提の所ばかり。諦めかけていると、魔法を使わない同好会「シュテルン」なる張り紙を見つけ要項を呼んでいると背後から声をかけられた。もしかして入部希望者?問いかけて来たのは、ヴィルに脅され席を代わってくれたハインツ。どうやらシュテルンの発足人が彼らしい。気楽な同好会と聞いて、心配して付いて来たヴィルと二人で入部した。ヴィルは私以外にも親しい友人を作るべきよ。これは勿論、自身にも言えることだが、明るく気の好いトマスを含め、たった四人の同好会ながら楽しかった。数か月後に進級した際は皆同じクラスで大喜び。そしてこの年はソフィーも新入生として現れ、なんと彼女も入部希望で部室に訪れたのでビックリ。ユリアたちももう三年。こつこつ下手ながら貯めた魔力で作ったグリモワールも何とか手に入れ、魔法の練習も始めた。そんな時に起こったのが呪いの魔法による人心掌握事件。トマスが被害に遭い、部活メンバーは随分気を揉んだ。犯人を説得することで何とか事件は解決したが、お姉さんのこともあるのでヴィルには辛い事件になってしまった。彼の姉・クラウディーテは未だに呪いの魔法の影響を受けているらしい。病が良くならないのもそのせいだそうで、悔しそうな彼を見て胸が痛くなる。それから暫く経った頃、二人は担任のフェリクスからバディの解消を告げられ・・・。転生ものです。乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公が推しキャラの闇落ちを防ぐべく奮闘するも逆に惚れられ深い関係に。でも、この悪役令嬢、主人公と中身が変わる前までは本当にただの性悪で何とセフレまでいたアバズレ。せっかくの初体験が初体験でなかったと言う事態に彼女は大ショック。それでも、ヴィルはユリアの男遊びもとうに知っていて、それでも今の君の恋人は俺だと彼女を溺愛します。なのにバディを解消させられ、あまり元の相棒に固執するなと諫められた二人は悶々とするまま、夫々魔法の勉強に打ち込んでいたんですが、ある時、ヴィルの姉・クラウディーテの持つグリモワールに秘められた魔法に固執したある人物がとんでもない騒動を起こし、という展開です。犯人についてはまぁ最初から怪しさ大爆発だった人なので、推理も何もない感じでしたが、最後は愛が勝つ、と言う王道なラストでした。内容としてはラヴコメが七割シリアス三割。ユリアの前世・山田百合の推しには認知されない方がいいという考えは、痛いほどわかる。評価:★★★★☆
2026.06.22
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2026年5月刊スターツ出版文庫著者:巻村蛍(敬称略)異能を持たないあやめは、親友に許嫁を奪われ絶望の淵にいた。信じていた親友の優しさは嘘で、あやめを蔑み利用するためだった。すべてを失った彼女の元に、名家の次期当主・春市が現れる。彼は強大な神の力で傷を負っていた。しかし、あやめは彼の暴走する力を癒やせる唯一の存在だった。「お前以外考えられない」孤独な二人は惹かれ合い、春市はあやめに愛を注ぐ。偽りの親友や過酷な運命を圧倒的な愛で打ち砕く和風シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 伊佐奈あやめ=なんの能力も持たない只人だったが、春市の「うつわの乙女」だ とが判り生活が一変する。 陽前院春市=七蓬国を守る二院四条家の一つ・陽前院家の次期当主。 「神返り」により長く苦しんでいた。 西園寺翠=あやめの親友。 秋充=春市の側近。 原川祥=あやめの許嫁。同じく只人。 陽前院凪斗=春市の弟。次期当主の座を狙っている。大多数の者が何かしらの異能を持つ七蓬国の中で、ほんの一握り何の異能も持たない只人は、とある理由によって国から保護対象になっていた。しかし、真の理由はあまり知られておらず、それ故に只人は「無能」の烙印を押されて差別の対象になることもままあった。只人の少女・あやめもまたこの春入学した高校でクラスメイト達から無視されたり、聞こえよがしな悪口を言われ続け早くもグロッキー状態。異能を持つ者は皆その力に因んだ髪色のためカラフルな色味の髪をしている。その中で只人特有の黒髪黒瞳は悪目立ちしてしまうから。現在、この学校に只人はあやめとその許嫁である原川祥を含めて四人だけ。もう学校には慣れたかい?そう祥に聞かれても愚痴めいた感想しか出てこないのが悲しい。そんな彼女に祥は苦笑いしていた。只人にはこれ以上数を減らさないよう「許嫁」という制度がある。只人であれど異能持ちと結婚することはできる。産まれて来る子どもは異能者になるからだ。しかし、異能者の血が入るともうその夫婦から只人は産まれない。そこで只人には早いうちから同コミュニティの中で相手を決め、許嫁となり成人するとそのまま結婚させていた。只人は只人同士からしか生まれないと言う特性を生かした制度で、あやめの許嫁となったのが祥だった。幼馴染でもあったのでどちらかと言えばまだ恋愛感情は湧かないけれど、優しい祥となら自分の両親のように仲の良い夫婦になれるはず。あやめはそう思っていた。そんなある日、クラスの女王様・藤野志乃から嫌がらせでネクタイを燃やされ、我慢できずにあやめはその場を逃げ出した。どれだけ走ったのか気付けばどこかの屋敷の敷地に入り込んでいた。すぐ立ち去ったのだが、その時誰かの視線を感じた気がする。見つけた、俺の「うつわの乙女」あやめが庭から立ち去ると、蔵で寝かされていた青年が包帯だらけの顔で笑みを浮かべた。そして、控えていた側近に先程の少女を連れて来るよう命じていた。翌日登校すると親友の西園寺翠が心配そうに声をかけて来た。翠は水の異能者で、学校でトップの力を持つ。実は藤野よりその言動には影響力があるのだが、驕らず誰にでも優しい。そんな彼女が友達になろうと言ってくれてどんなに嬉しかったか。翠が居なかったら不登校になっていたかもしれない。だが、放課後、あやめは信じられない光景を目にした。なんと、祥と翠がキスしていたのだ。二人に裏切られたと気持ちはぐちゃぐちゃ。祥を問い詰めると翠を好きになってしまったと言う。しかも西園寺家に婿入りするするから許嫁を解消したいとも。確かに私たちは親同士が決めた許嫁だけど、よりにもよってその許嫁の親友に手を出す!?どうやら祥は長く只人である自分にコンプレックスを持っていたようだ。異能者に見初められて舞い上がっていたのか、聞いていられなくてそっぽを向く。するとその愁嘆場に声をかけて来た人物が。秋充と名乗った青年はあやめを迎えに来たと言い、この場に居たくなかった彼女はその手を取った。あなた様は「うつわの乙女」なのです。道中言われた話にもあやめは上の空だった。連れて行かれたのは昨日迷い込んだお屋敷。陽前院家と知ってギョッとした。あやめでも二院四条家くらいは知っている。この七蓬国を守護する六つの家の中で二院に当たる陽前家は鬼神を先祖に持つ家系と聞く。神の血を引く二院の当主は凄まじい力の持ち主だそうだが、蔵の中に寝かされている包帯だらけの青年がその次期当主と聞いて衝撃を受けた。秋充の話では、当主の長男・春市は類まれな力の持ち主故にその力に苦しめられているそう。内側から身体を攻められ二十歳迄生きられないかもしれないとも。悲痛な秋充の表情と声にふらふらと立ち上がったあやめは春市のすぐそばで腰を下ろすと知らずその唇に口づけていた。ハッと我に返って後ずさると春市は驚愕の声を上げてむくりと立ち上がりもどかしそうに包帯を外して行く。現れたのはうっすらと痕は残っているものの、全身を覆っていた赤い痣がほぼ消えていた。さすがは「うつわの乙女」だな。感心するような彼の言葉に大混乱。これが私の力?でも私は無能の只人で!!そう言い募ると「うつわの乙女」は只人しかなれないんだぞ、無能だからこそこの荒ぶる神返りの力を吸い取れる。それが只人が保護対象になっている理由だ。とはいえ、「うつわの乙女」に関しては国の上層部と二院四条家の者くらいしか知らされていないそうで、大抵の者はただ絶滅危惧種だから保護されているという認識らしい。あやめが無意識に起こした行動は春市だけの「うつわの乙女」だからのようだが、確かに躊躇せず初対面の男性にキスするなんて自分でも信じられない行為だ。未だ半信半疑な事もあるけれど、無能の私でも人助けができる。それが嬉しくて定期的に彼の力を吸い取って欲しいという依頼にあやめは力強く頷いた。それにこの胸の高鳴りは・・・。その後、秋充を伴い帰宅すると、彼から事情を告げられた両親は目を丸くしていた。でもお前がやりたいならと応援してくれて秋充が帰ると原川家から破談の申し込みがあったと気づかわし気に娘を見た。まぁ、そうなるでしょうね。予想は付いていたのと先程よりショックでないことに自分でも驚く。翌日、翠からも謝罪されたが、彼女の物言いに違和感を覚えた。いつものように気遣う雰囲気ながら言葉の端々に嫌味が混じる。いつもそんな感じだったのに、私はそれに気付かないふりをしてたんだ。ようやく納得がいってもういいよ、仲がいいふりしなくても大丈夫。そう告げると翠はやっと素を出して見下したような目線で見つめて来た。いい引き立て役と思ってたんだけど、仕方ないわね。そう言って鼻を鳴らし立ち去る彼女を見送り、どっと疲れたあやめはやれやれと溜息を吐いた。あれから秋充の頼みで、あやめは陽前院家で同居を始めた。見る見る回復していく兄の様子に、自分こそが次期当主と思い込んでいた春市の弟・凪斗は焦っていた。そんな彼に当主を決める儀を早めさせれば良いのです、と近付いてきた者が。老中の何人かを買収し、渋っていた当主に儀式を早めるよう進言した結果、一週間後と決まりほくそ笑む凪斗を見て翠は内心でせせら笑った。春市の存在を知らない翠は凪斗に取り入り、当主になった暁には花嫁に迎えてくれるよう便宜を図っていたのだ。あやめを悔しがらせたくて祥に手を出したが、端から只人と結婚する気なんて無い。凪斗に取り入った後、あっさり祥を捨ててやったから、今頃あやめに復縁を迫っるんじゃないかしら。翠の予想通り、祥はあやめにすがりやり直そうと懇願していた。その頃には春市に心惹かれていたあやめはきっぱり拒否。しかし無理矢理押し倒され貞操の危機に陥った彼女を助けたのは春市だった。彼の異能で脅され這う這うの体で逃げていく祥を見送り、春市に抱きしめられた彼女は自らの想いを告げ、彼もまたお前を愛していると告白。弟が焦ってバカなことをしているようだが、体調の不安も無くなった今当主の座を譲るつもりはない。春市は隠遁生活の終わりを宣言した。結果、儀式は兄弟同士の力比べになり、あやめも出来る限りその手助けをした。だが、うつわの乙女の存在に気付いた凪斗から話を聞いた翠はあやめを攫い・・・。異能、学園もの、恋愛という人気要素を詰め込んだ和風シンデレラストーリーです。無能は絶滅危惧種という設定が結構新しくなるほど、と。ちょっと天然で猪突猛進なヒロインと、そのヒロインを溺愛するヒーロー。何かとヒロインを目の敵にする自称親友の性悪女が色々邪魔をしてくるんですけど、あんな真似しでかしてヒーローの怒りを買わないわけがなく、最後はキツイお仕置きを食らい表舞台から姿を消します。元許嫁もいつの間にかいなくなってたし、ヒロインに徒成す者は皆消えていくあたり、いい具合にザマァされててスッキリしました。元許嫁は本当に愚かでしたからね。あいつにヒロインは勿体ない。最後は怒涛のハッピーエンドでしたが、濃いキャラも何人かいたので、一応続編も視野に入れてるのかも。この手のジャンルでは珍しい性格のヒロインだったのもあり、面白かったです。評価:★★★★☆
2026.06.21
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7月上旬 アルファポリス 貴族令嬢、転生5秒で家出します。目指せ、ソロ活山暮らし はるひん7月中旬 エタニティ・赤 ハイスペ同期の溺愛予告は躱せません 蓮美ちま 女嫌いの年上旦那様は、契約妻を溺愛で囲い込む 西篠六花7月下旬 レジーナブックス 2番目の番とどうぞお幸せに 聖女は竜神に溺愛される 雨香8月10日 Mノベルスf 悪役令嬢無双 ~死に戻って三回目の人生も好きにやらせていただきます!~ 伊野瀬凛8月12日 ビーズログ文庫 終わりを望むのは、罪から 婚約破棄された私を救ったのは、世界で一番過保護な義兄でした 楽歩 富士見L文庫 恋と、嘘つき その依頼はカラメルの如くほろ苦く、トルテの如く甘く 岐川新 如月夫婦の春夏秋冬 麦野ほなみ かくりよ領事館の料理番 龍神をもてなす洋風コース 矢古宇由佳8月25日 角川文庫 青い瞳の花嫁 異国の言ノ葉は恋になる 猫とろ角川系の書籍の値上がりがエグすぎて戦慄(^_^;)まぁ値上げに関しては、ここだけではないんですけど、そろそろあれもこれもと買えなくなって来てしまったなぁ。
2026.06.20
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2026年4月刊ヴァニラ文庫著者:佐倉紫(敬称略)悪辣な王の孫姫であるセラフィーナは王宮から逃げ、辺境の神殿で神官として生きていた。しかし、武力政変で王家が滅び彼女の前に新国王となったジェレマイアが現れた。「この私の妻になってほしい」国の安定のため、結婚をもちかけられ婚姻を結ぶ。政略婚のはずなのに、彼は優しく情熱的に距離を詰めセラフィーナの心と身体は甘く染め上げられて!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 セラフィーナ=悪辣王の孫娘。祖父から逃れ、いち神官として暮らしていた。 ジェレマイア=カエダリア国の新王。セラフィーナを妻に迎える。 グラネット=隣国の王太子でジェレマイアの友人。 ラリア=セラフィーナを敵視する侯爵夫人。王都から遠く離れた辺境にある神殿では今日も多くの怪我人が運び込まれていた。「癒し手の女神」を祀るここは率先して病人や怪我人を迎え入れているのだが、今日は特に多い。近くの鉱山で事故があり数多くの死傷者を出したからだ。横腹に大きな傷を負った少年は虫の息で、必死に手当てをしながらもセラフィーナはこの子は夜を越せないだろうと漠然と考えた。「癒し手の女神」の末裔でありながら、カエダリア国の現国王グノーヴァは暴君の上、残忍な男だった。そしてその息子である王太子デクトーもまた父親とそっくりな性質。民のことなどお構いなしで自分達が贅沢をするためだけに重税を課した。相変わらずな身内の横暴ぶりに呆れてセラフィーナはつくづくあそこから抜け出せて良かったと思う。血縁すらも信じていない祖父は役に立たないと思えば孫娘の命すらも奪っていただろうから。ここ数日、寝る間も無く治療に当たっていた彼女が次の患者を診るため立ち上がると、何やら外が騒がしい。すると兜をかぶった騎士が聖堂内に「ここにセラフィーナ姫はおられるか?」と呼びかけた。ギョッとして振り返ると騎士と目が会い、こちらに向かって来るのを見て立ち竦む。目の前に立った騎士が兜を脱ぐと見事な赤毛が現れ、彼女の記憶が刺激された。この人、もしかして・・・。彼はセラフィーナの前に跪くとあなたを迎えに来たと言う。そして、革命が起こりグノーヴァとデクトーは処刑されたこと、革命軍を指揮した自分が新しい王になったと告げた。その話に聖堂内にいた者たちから歓喜の声が上がった。悪辣王とその息子が死んだ!と。ジェレマイアと名乗った彼が新たな王になったのは判った。祖父と父が討たれたと言うなら生き残りである私の息の根を止めに来たのだろうか?彼らの悪行を思えば無理もない、民たちにとってはセラフィーナも憎い王族の一人だ。現に先王の孫と判るや、彼女は罵倒を浴びた。殺せと騒ぐ彼らにキレたのはジェレマイアの方で、床に鞘に入った剣を打ち付け黙らせると「この方は私の妃になる方だ」だと宣言。その剣幕にビビりながらも皆は不満を隠そうともせずセラフィーナに厳しい視線を向ける。居たたまれずに俯けば、彼女は悪辣王とは違う。そう言って抱き寄せた彼は「癒し手の女神」の血筋の重要さを説くも、すぐには受け入れられずとも良いと頷いた。その後、簡易な式を挙げ、ジェレマイアの妻になったセラフィーナは、翌日には馬車に座っていた。にしても、本当にあの子に似ている。祖父の不興を買い処刑されたシヴィル公爵の息子は彼のように見事な赤い髪で、これまた祖父の命で理不尽にもむち打ちの刑に遭っていた。見ていられなくてやめてあげて、と祖父に縋り泣いていた幼い自分がパニックを起こしかけた瞬間目もくらむような光に包まれ・・・。それからの記憶は曖昧だった。だが、あの鞭打たれていた少年に礼を言われ、君はここにいない方がいいとアドバイスを受けたことだけは覚えている。でもあの時の少年なら何か一言言ってくるはずよね?それに、「癒し手の女神」の血筋が欲しいだけの政略結婚だと言われているし、あまり期待はしない方がいいのかもしれない。そう決意した彼女をジェレマイアは意味深な目で見ていた。二人の結婚は案の定波紋を呼んだ。せっかくあの悪辣王が死んだのに寄りにも寄ってあの男の孫娘を妃に迎えるなどと!革命軍の幹部だった者たちは猛反対だったが、ジェレマイアは一歩も引かなかった。セラフィーナ王女との結婚が革命軍軍隊長を引き受ける条件だったはずだ、と睨まれ幹部たちもタジタジ。乗り気でなかった彼を引っ張り出したから勝利できたのだ、約束を違える訳にはいかない。それにセラフィーナの血筋についてに話す彼の言い分も一理ある。渋々ではあるものの皆の承認を受けたことで、セラフィーナの妃教育が始まった。八歳まではそれなりの教育は受けていたので基本は出来ているがダンスや語学についてはあまり経験がない。外交もまた王妃の務め、元々頑張り屋な彼女は厳しい授業にも文句も言わず二月も経つと教師を務めるメリルお墨付きを貰う程に。夫婦仲は悪くないと思う。以外にも心配性だったジェレマイアに根を詰め過ぎだと叱られるも、それが心地よかった。実の家族は心配なんてしてくれなかったから。特に祖父は稀に王家に現れる「癒し手の女神」の力を使う「癒し手の王女」になれと幼い彼女に厳しい修行を強いて、少しでもへまをすれば容赦なく暴力を振るった。未だに反感を持つ者は多いけれど、侍女達は皆優しいし、ターニャ・エーデン公爵夫人という年上の友人も出来た。神殿での生活も悪くは無かったが、これほど穏やかな暮らしは初めてかもしれない。それから暫く経った頃、ターニャの薦めで無償医療事業の着手を始めたセラフィーナは自らも積極的に治療に当たり人々を驚かせた。だが、自宅から動けない者もいる。ジェレマイアはそんな者たちを受け入れる入院施設を備えた治療所を建てたいと言っていた。なるべく早くとは思ってはいるが、その費用をどこから捻出するか。グノーヴァたちの無駄遣いによって国庫はほぼ空。セラフィーナ指導の無償医療事業だけで精一杯。炊き出しも貴族たちの善意の寄付によって成り立っている始末。出来れば孤児院は早急に建てたいんだけど・・・やはりまだまだ支援は足りていない。ターニャから貴族と交流するのもあなたの活動の助けになるはずと提案され、忙しい合間を縫い、定期的にお茶会を開いている。ターニャのおかげで友人も増えたが、招待には応じても頑なな態度を崩さない者もいた。ライール侯爵夫人ラリアはセラフィーナへの敵意を隠しもせず、何かと突っかかって来て今日はあなたのような肩を妃に迎えるなんてとジェレマイアのことまで悪し様に言っていたのでさすがの彼女もブチギレ。不敬ですよと諫め、その場を追い出した。ライール侯爵はジェレマイアの側近の一人。少し拙かったかもしれない。猛省する彼女にあの方は自分の娘が妃になると勝手に期待して夢破れ、それが面白くないだけですよ、とターニャに言われ、そういうことかとようやく納得がいった。とはいえ、民たちの生活改善は早急に進めねばならない事、勝手な私怨で場を乱されるのは御免被りたいものだ。その後も変わらず忙しい日々が続き、炊き出しに参加していた彼女は何者かに襲われた。近くにジェレマイアもいたのでセラフィーナは無事だったものの、犯人が隠し持っていた毒針がかすってジェレマイアが死の淵に。私のせいだ、と自責の念に駆られ一歩ずつ死に向かっている彼の腕を掴み彼女は祈った。するとおびただしい程の光が部屋に溢れ彼女は意識を失った。髪を撫でる感覚に目を覚ました彼女はジェレマイアが枕を背に半身を起こしているのに瞠目した。女神に感謝する彼女に、こうして助けられたのは二度目だとジェレマイアが微笑む。やっぱりあなたあの時の。問いかける彼女に頷いたジェレマイアはグノーヴァに意見したことで父親が殺され、彼もまた見せしめで鞭打ちの刑に処されことを語った。残虐非道な祖父のせいでこの人は父を殺され自身も死にかけた。胸を痛め謝罪すると君はむしろ俺を助けてくれたじゃないかの言葉に首を傾げる。あの光は君の秘められた力で凄まじい癒しの力がある。そう説明されても今イチピンとこないが、これが祖父が欲しがっていた力かと思い当たる。一目惚れだったんだ、その言葉に涙が溢れ、私もですと呟いた。両想いと判ってから彼は一層過保護になり手伝いにもなるから護衛をもっと増やすと言って聞かず、たまに自身も付いて来るから困ってしまう。活動も定期的になった頃、隣国アーシア国から王太子グラネットがやって来た。彼はジェレマイアの友人でもあり、遅ればせながら友の結婚祝いと称しての訪問だった。悪い奴ではないんだが、金と女にだらしなくてな。そう語るジェレマイアはガッチリとセラフィーナをガードした。彼の言葉通り、確かに馴れ馴れしい。私と一晩どうだい?とか普通人妻に向かって言う!?アーシア国から物資の支援を受けている現状、あまり強く出られないのが悔しい。ジェレマイアも一刻も早く追い出したいと愚痴り帰国をほのめかしてものらくらと交わすばかり。そんな折、セラフィーナが炊き出しに出掛けた先でグラネットに遭遇。孤児たちを汚らわしいと蔑んでいたのにどういう風の吹き回し。しかも間の悪いことにラリア迄現れ、こんなところで逢引きですか?と嘲られ、セラフィーナもプッツン。顔も見たくないと水汲みにテントを離れた彼女は薬をかがされ・・・。身内の悪行のせいで善良なヒロイン・セラフィーナも白い目で見られる中、初恋の少女である彼女を救うためジェレマイアは自らの妃に迎えます。周囲の反感を買いながらも慈善事業に精を出す彼女の元には多くの協力者たちが集い、活動の規模も徐々に拡大。しかし、自分の夢がお前のせいで潰えたと侯爵夫人のラリアの恨みを買い、グラネットは利害関係の一致から手を組みます。「癒し手の女神」の血筋は金になる。ジェレマイアの友人とは思えない程グラネットの芯は腐っていて、彼女は危機一髪。しかし、様子のおかしいラリアの表情からジェレマイアは不審に思い夫人を問い質すととんでもないことになっていました。丁度その頃、アーシア王からの書簡でグラネットについてのことが綴られており、彼は愕然。妻の危機と二人を追い、寸での所でセラフィーナを救ったジェレマイアはかつての友人に引導を渡すのでした。にしたって、終盤登場したグラネットの悪辣ぶりにビックり。この事件自体、おまけみたいな印象なのは、セラフィーナの波乱万丈な生きざまのせいでしょうか。なので、内容の方もがっつり目のシリアス。この作家さんのお話にしては珍しいパターンだったと思います。評価:★★★★☆
2026.06.19
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2026年4月刊ベリーズファンタジー著者:長月おと(敬称略)「邪魔者」と家族に虐げられる小国の王女マリーベル。敗戦を理由に、大陸最強と恐れられる敵国の第三王子・ギルベルトに人質として嫁がされることに。冷ややかな結婚生活が始まるも、薬師だった前世の才能が開花! 忙しい王族や侍女のためにハーブティーや新薬を作り出すと次第に信頼を得て…。冷徹なギルベルトとも距離が縮まり、気づけば敵国王家が全面的な味方に! そんな中、ある企みを持つ祖国の家族から自死命令の手紙が届きーーギルベルトを筆頭に、王家は国の最強騎士団を率いて徹底制裁を決意。捨てられ王女が無敵の味方と幸せを掴む大逆転! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 マリーベル=人質として元敵国に嫁いだ王女。 薬師をしていた前世の記憶を持つ。 ギルベルト=クルグス王国第三王子。マリーベルの夫。 ベティーナ=リュシエール王国王妃。マリーベルを目の敵にしている。ディートリッヒ=クルグス王国王太子。国王に寵愛されていた側妃の娘だからと王妃と異母兄妹たちに虐げられていたマリーベルは、その日、少し前まで戦争をしていた元敵国であるクルグス王国の第三王子に嫁ぐよう命じられた。隣国クルグス王国は魔法大国であり、戦争の勝利側である。国境近くの鉱山に目を付け無謀な争いを挑んだこのリュシエール王国軍はあっさり負け、先日莫大な賠償金を請求されたばかり。到底一括払いは無理なのでどうか分割をと頼み込み、利子替わりとしてうちの王女を嫁がせると約束したらしい。当然王妃が可愛い実子・第二王女のクリステルを差し出すはずがない。厄介者にも使い道が出来たと彼らは大喜び。かつての敵国への嫁入り、多分歓迎はされないだろう。それでもここにいるよりマシな気がした。母が病で亡くなってから、父王は溺愛していたマリーベルにも関心を失くし放置した。おかげで母を疎ましく思っていた王妃・ベティーナがやりたい放題始め、ついには城を追い出し庭師小屋にマリーベルを追いやった。十八になるこの歳まで生きていられたのは奇跡に近い。そうよ、たとえ人質扱いだって構わない。この人達を顔を合わせずに済むんだから。数日後、隣国に旅立った馬車は国境を越えてすぐに野盗の襲撃を受けた。この国は良く思われていないから裏から入れと王妃に厳命され素直に人気の少ない裏街道から入ったら早速このざまだ。護衛騎士も僅か五人に対し野盗は二十人近い。劣勢を悟り爪弾きの王女なら捨て置いても構わないはずとさっさと撤退しようとしている騎士達は、元々そうした命を受けているのだろう。こんなところに一人で置いて行かれたらどうなるか。恐怖に怯えていると野盗たちの上に雷が降り注いだ。これは魔法?見ると馬に乗った騎士がいてその装いから身分の高い者と判る。野盗たちは彼の魔法であっという間に蹴散らされ、遅れてやって来た騎士たちによって次々捕縛されて行く。彼はギルベルトと名乗り、あなたの夫となる男だと告げた。この方が・・・。魔法騎士団団長としても尚馳せるギルベルトはクルグス王国の第三王子だ。ニコリともしない表情を見るに歓迎されていないのが丸わかりで先が思いやられる。しかし、この道は戦争の影響で治安が悪いから表から使用しないよう知らせたはずなんだが、とギルベルトは首を捻った。その後何の返事も無いため、もしやとわざわざこちらに馬を向けたのだと言う。成程、そういうことか。王妃殿下は余程私が憎いと見える。クルグス王国王都に着く前にあいつが野盗に襲われて死ぬのも面白いわね、とでも思ったのだろう。彼に気付かれないよう嘆息し、こちらの不手際でしたと謝罪する。その後、魔法騎士団の護衛で王都に入った馬車は王城近くの邸宅舞に停まった。先に一つ詫びておく、君は王子妃になるつもりだったかもしれないが俺は結婚を機に臣籍降下し公爵になった。淡々と告げる彼の説明にに頷き、一行に構いませんと承諾すると少し驚かれた。正直言うと王子妃より公爵夫人という立場の方が気が楽だ。王の意向で、暫くはマリーベルの行動はかなり制限されると言う。元敵国の姫なのだから警戒されるのも当然で、挙式もリュシエール王国の動き次第でいつになるかも分からないそう。しかも、ギルベルトは白い結婚を望んだ。俺に愛情を求めないで欲しいとキッパリ言われるとやはり傷つくが、それでもマリーベルのことは丁重に扱うつもりのようで通された部屋は母が生きていた頃のものより豪華なものだった。クローゼットには数十着のドレスが並び、エラと言う専属侍女も付けられ、八年ぶりに王女の扱いを受けてなんだか落ち着かない。言葉通りにギルベルトはマリーベルは公爵夫人として最高の待遇を受けさせてくれた。ならせめてと朝の見送りをすればそんなことはしないでいいと断られ、俺は帰宅が遅いからと夕食も共に出来ないでいた。そんな最中、エラが調子悪そうにしていたのでその症状から温室にあったハーブで症状緩和のハーブティーを作って渡すとこれがえらく効いたらしい。翌朝エラから感謝され良かったと微笑んだ。公爵邸にあるハーブ園は身体の弱かった先々代公爵夫人のために作られたもので、沢山のハーブが生い茂っていた。暇を持て余していた際、執事のレイと庭を散策中に見つけ立ち入り許可を貰った。雑草を抜いて幾分綺麗になったそこは宝の宝庫。リュシエール王国の庭にもハーブが植えられていて、食事も碌にもらえなかった彼女はそのハーブで薬を作って町で売り幾何かの金を得ていた。何故マリーベルにそんなことが出来るのか、それは一度熱で死にかけた際、自分の前世らしき夢を見たからだ。とある国の宮廷薬師だった彼女は二十歳の時事故で命を落とした。この夢をきっかけにマリーベルは薬師としての知恵を得てこれまで生きて来た。それにこの作業はとても落ち着く・・・。エラからの評判を聞きつけ、遠巻きにしていた使用人も体調の悩みを相談に来るようになり、効果が出ると感謝された。その甲斐あって皆かなり好意的になってきたように思う。数日後、騎士団と公爵家の仕事が重なり疲労困憊のギルベルトを見て、彼女が作ったのは疲労回復&安眠できる栄養ドリンク。最初は警戒していた彼もとんでもない効き目のそれに心底驚いていた。実は他に飲ませてやりたい人がいるんだと追加を頼まれ渡すと、大好評だったらしい。お礼だと言ってギルベルトがくれたのは調合部屋。元々先々代公爵夫人のための薬を作るための部屋だったそうだ。道具は全て揃っていて笑顔で礼を言えばそれを凝視していた彼は慌てて視線を逸らしていた。それから暫く経った頃、屋敷に客人が。王太子ディートリッヒは線の細い優い人物で、あまり丈夫ではないそう。最近胃の調子が悪いんだとマリーベルの腕を見込んで薬を作ってほしいと訪れたらしい。そういうことならと渡した胃薬は効果覿面だったようで、後日ギルベルトを通じて感謝された。なにか謝礼をとのことだったが、辞退する彼女をギルベルトは不思議そうに見ていた。うちの宮廷医師の薬より効果ある薬を無償で良いだなんて!兄からは今自由には出してやれないから外商でも呼んでやってくれと頼まれている。ずっと蔑ろ医師ていたという自覚があるギルベルトもせめてなにかと思ったものの、彼女はドレスも宝石も欲しがらない。まぁ何か欲しいものもあるだろうと渡した小遣いはほぼ手付かずだし、マリーベルは無欲すぎると心配になった。そして兄からはもう一つ厳命を受けていた。マリーベルの薬はこの国の薬学に革命をもたらす、お前は彼女を絶対に手放すな、と。マリーベル均整の栄養剤を調べた結果、とんでもない効果があることが判明していた。王宮お抱えの薬師でも不可能な薬。先日、ディートリッヒに渡した薬にも宮廷医師でも作れるようレシピも付けており、こういうのは普通秘匿されるものではと目を見合わせたほど。王女を人質にだしているのだから文句はないだろう。勘違いしているとしか思えない程、リュシエール王国の態度は酷い。未だに利子分の支払いがされないのでしびれを切らした父王が二国会議を提案。向こうからは王妃と第一王子が参加するそうだ。話し合い如何ではまた戦争になる。勿論クルグス王国は負けることはないだろうが、戦争になったらマリーベルの立場は悪くなるし、リュシエールに返すことになるかもしれない。そうならないよう、お前が彼女を繋ぎ止めておけ。兄からの命は尤もなれど、マリーベルを放したくないと言うのが本音だ。彼女への恋心を自覚したギルベルトはそれから好意を隠さなかった。突然豹変した彼の態度にマリーベルは戸惑うばかり。そしていよいよ開催された二国会議の日、ベティーナは久しぶりに会ったマリーベルが大事にされているのを見抜き鼻白むと、彼女に自死を命じ・・・。その部屋には王妃とマリーベルしかいなかったので出来た会話ですが、何言ってんのこのおばさん💢死んだのはクルグス王国での扱いを悲観して、つてことになれば我が国に有利に働くからね。ブルブル震える彼女にほくそ笑んで、三日以内に死になさい、いいわね!!マリーベルの死をクルグス王国のせいにしてリュシエール王国側は賠償金をチャラにしようと考えていました。思い悩むマリーベルの姿を見て、ギルベルトは彼女を説得。理由を聞き出すと王妃が下した命令に激怒。そんな命令は聞かないでいいと彼女を抱きしめます。この話を国王たちにも打ち明けると皆もなんと卑劣な!と怒り狂い、そうはさせるかと策を講じます。一方、王妃はそんなこととは露知らず、と言う展開です。あほ過ぎるヒロインの実家の面々は、突然攻め込んで来たクルグス王国のの軍に真っ青。見事捕らえられた彼らはマリーベルへの仕打ちを参考に夫々厳しい処罰を受けるのでした。王妃も恨むなら側妃の方だろうに、なんでその娘にまで辛く当たるかねぇ。正に坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって心境なのか。でも流石にやり過ぎた、無視する程度なら戦争に負けても王族は幽閉程度だったろうに。知らずに自分を泥沼に追い込んでいた彼には今後厳しい労役が待っています、ザマァ見ろ。正直、王妃は戦争の発起人だし死刑でもいい気はしますが、多分これはあっさり死なせては報復にならないと言うギルベルトのなりの復讐なんでしょうね。諸々が片付いた後、マリーベルの立場を守るためその知識を生かし王太子専属の薬師になった彼女の活躍が示唆されて物語は幕。おまけの番外編はラブラブ新婚夫婦のイチャイチャ話でした。評価:★★★★☆
2026.06.18
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2026年5月刊スターツ出版文庫著者:朝比奈希夜(敬称略)嘘を聞き分ける異能「鳳鳴聴」を隠し、占術師として生きる亡国の公主・美玲。ある日、隣国の影皇帝・景文に見出され、身分を偽り後宮へ潜入することに。宮廷に渦巻く陰謀や異母姉との因縁に、二人は互いの知恵と異能で真実を解き明かしていく。景文に能力だけを買われたと思っていた美玲だったが、実は彼は幼い頃に慕った恩人であり、彼女に深い想いを寄せていた。「もう離さぬぞ」再会した冷徹な彼は美玲を溺愛してきてーー。過酷な運命を乗り越えた二人が真の愛と居場所を掴み取るまで。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 美玲=亡国の公主。嘘を聞き分ける異能「鳳鳴聴」の持ち主。 景文=太微国皇帝・高徳帝の影武者。 伯庸=景文の双子の兄・高徳帝。 明珠=高徳帝の淑妃。美玲の異母姉。深淵の乱により胡安国皇帝・昭江帝が隣国の禁軍に討たれて早一年。トップがいなくなったことで国は大いに荒れた。現在も荒んではいるものの、元々この国は作物の実りがいいので国民は飢えずに済んでいる。皇帝がいなくとも食べていけるなら別段不満はない。それどころか煩い役人もいない分、治安は悪いが美玲のような素性を隠して生きている者にはありがたい。亡き母は昭江帝の陽妃でお気に入りだった。美しい母に似た美玲もまた皇帝自慢の娘で、先に産まれた徳妃の娘・明珠ではなく美玲を太微国に嫁がせようとしていたと聞く。だが、これが徳妃の怒りを買った。美玲が十二の歳のある夜、宮に火をかけられ逃げ遅れた母は、助けに来た少年に娘を託して亡くなった。このまま後宮に居ては危ないと少年の機転で都の外れにある町に預けられた彼女は、以来身分を偽り占術師で生計を立てている。まあ、私に占いなんてできないんだけどね。あるとすれば「鳳鳴聴」という、嘘を聞き分ける特殊な異能くらいだ。それを生かしそれらしいことを言えば依頼人は大抵信じてくれる。食っては行けるがいつまでも皇帝がいないのはやっぱり不安なのだろう。おかけで最近は客も増えて来ている。今日は大好きな甘いものをたらふく、と思い買い物に行けば財布を掏られすっからかん。空腹を抱えてため息を吐いていると依頼人が。随分身形が良い、貴族か。二十そこそこに見える青年は景文と名乗り、自分と一緒に太微国に来て欲しいと言われ目を瞠る。そなたの力を借りたい。そう言って甘味を差し出されつばを飲み込んだ。占いをしに来たのでは?と問えば、そなたの異能で聞いて欲しい事があると言う。「鳳鳴聴」のことを知ってる!?一瞬身構えた美玲にまあ落ち着けと従者を呼んで茶を用意させた。その大きな体を見て「あの時のスリ!!」奏羽と呼ばれた従者は、指をさして怒っている美玲に「主のご命令でして、申し訳ありません」と平身低頭。と言うことはわざと有り金奪って頼みを聞かざるを得ない状況に追い込んだってわけ!?なんて性格の悪い。景文を睨みつけるとのっぴきならない事になっていてなと悪びれもしない。だがまぁ、断るならお前はインチキ占術師だと触れ回るぞと脅して来た。彼の言葉にグッと詰まり、渋々引き受け、詳しく事情を尋ねた。古来から二国は争わずに共存して来た。しかし、何を血迷ったのか突如その禁を破り太微国が胡安国に攻め入り皇帝と妃たちを皆殺しにした。後に深淵の乱と呼ばれたこの戦は太微国をも揺らがし、万敬帝とその子供たちも何者かに討たれている。今は生き残りの公子・伯庸が皇位を継いで高徳帝として国を治めているが、そもそもあの乱自体、不可解な点が多いのだそう。万敬帝は好戦的ではないし、そんな血迷ったことはしない人物だった。ましてや長年続いた理を自ら崩すとは信じ難いと。確かに、母が存命中には万敬帝の妃が公子を連れてよく宮に遊びに来ていたくらい交流があったし、父帝も美玲を隣国に嫁がせたがっていたのを思うと確かに色々腑に落ちない。数日後、美玲は皇帝に呼ばれた占術師として太微国の王宮に入った。着替えて奏羽に連れられて行った部屋には景文がいてその装束は正に皇帝のそれ。あなた皇帝だったの!?と尋ねれば、首を横に振り私は兄の影武者だとニヤリ。何と彼は高徳帝の双子の弟なのだそう。だが激化する皇位継承争いを恐れた彼の母は景文を死んだことにして離宮に匿っていた。彼にしてみれば兄だけ矢面に立たせてしまっていたと申し訳なく思っており、皇位を継いだもののすぐに体調を崩した兄の影武者になるのも吝かでなかったそう。兄は胡安国の後宮にも遊びに連れて行ってもらえなかったからな。寂しげな表情の彼の話に記憶が呼び覚まされ「兄さま?」と呟く。母の幼馴染みの妃が手を引いていた男の子。お転婆な美玲に呆れもせずよく蹴鞠に付き合ってくれていた。確かに彼なら自分の異能を知っていてもおかしくない。しかも話を聞くうちに彼こそが自分を火の中から救い出してくれた少年であったと知って衝撃を受けた。あの日、嫌な予感がすると美玲の母に呼び出された彼は、燃えさかる宮を見て慌てて中に飛び込みなんとか美玲を連れ出した。本当は太微国に連れ帰りたかったが、自分も死んだことになっている身、美玲を匿うのは難しかったのだと。彼の言葉にノイズは走っていない。全部真実だ。自分の異能がそう教えてくれている。初恋の人で命の恩人とこんな再会をするとは夢にも思わなかったが。景文の計画では兄が復帰するまでの間、皇帝の権力を使い深淵の乱の真相を探り、首謀者を炙り出すこと。あの戦は決して万敬帝が血迷って起こしたことではないと確信しているからだろう。けれど、だとしたら一体誰が禁軍を動かしたのか。そして、胡安国側にも裏切り者が。何者かが易々と皇宮に入れるよう手引きした者がいる。一番臭いのは高徳帝の淑妃に収まっている美玲の異母姉の明珠か。ここでも出てくるのね、あの人達。母を焼き殺しただけでは飽き足らず、皇帝に命まで売るとは。徳妃は太微国の禁軍に他の妃たち共々一緒に殺されたと聞いているが、景文によれば明珠が匿っているのではとのこと。占術師がやって来たと、翌日には後宮で噂になり、早々に彼女を呼びつけたのは一番上の位の貴妃。いかにも高慢そうな言動に内心呆れつつ当たり障りのない答えを返す。ご希望の結果でないのか毒入りの茶を供され占いの前後は絶食しないといけないのですともっともらしい事を言って宮を辞した。茶をぶっかけられたけど、かかったのは肩の当たりなので問題はないだろう。その後、呼ばれるままに妃たちの宮を回っていたら、ついに淑妃からのお呼びが。変装の成果か姉は自分に気付かなかった。昔人を殺しましたね?とつつけば見る見る顔色を変えたのでやはりと確信する。自国の皇帝殺害にも関与している証拠が出れば死刑判決が出るだろう。そのためにも裏を取らなければ。しかし、調査を進めるうちに意外な容疑者が浮上し・・・。後宮ものです。どうにも不可解な「深淵の乱」。しかも万敬帝が命じたわけではないらしい。では誰の指示なのか。まぁ、そんなことできるのはどう考えてもそれなりの身分の者。死んだ者扱いだった景文はともかく、何故か一人だけ生き残り皇位を継いだ者がいる。消去法で行くとこの人しかいないでしょって感じ。彼は古来より伝わる両国の成り立ちについての文献を読み込み、両国の掌握を目論みます。しかし、この愚かな行為は天を怒らせ、太微国をかつてない危機に。まだ秋なのに真冬の寒さ。日も差さず作物も不作に陥る中、何とかその怒りを鎮めるべく奔走する美玲たちはある結論に辿り着き、という展開です。最後は怒涛のハッピーエンドなんですが、若干速足だった印象。それでも悪党たちは全員相応しい終わり方だったのでその辺はスッキリ。相変わらずルビの少ないレーベルなので、登場人物が割かし読みやすい名前だったのはありがたいです。評価:★★★★☆
2026.06.17
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2025年2月刊ヴァニラ文庫Miel著者:蘇我空木(敬称略)「許嫁の約束は今も有効のままだ」彩子の実家の凋落とともに破談になった元許嫁の橙吾が勤務先の会社を買収!?立場を弁えて距離を取ろうとするのに絶対に逃さないという。身体を甘く愛でられ与えられる快楽が、消したはずの想いを湧き上がらせて…。橙吾の見せる執着に搦めとられそうになるものの、立場的に彼との結婚が許されるはずはなくー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 三浦彩子=元社長令嬢。親元を離れ慎ましく暮らしている。 加々良橙吾=大企業の御曹司で彩子の元婚約者。 錦田茉弥香=彩子の女子高時代のクラスメイト。自称橙吾の新しい婚約者。都下にある小さな電子部品工場で働く彩子は、この工場が大手家電メーカー「CALOR」の子会社になると聞いて驚いていた。正確にはCALORの傘下「ヴェイン」の子会社らしいのだが、でもどうして彼がここにいるの~~。ヴェインの幹部と共に現れたのはCALORの専務・加々良橙吾。彩子の元婚約者だった。破談になってそろそろ十年、彼はもう新しい婚約者がいるだろうし、社員達の後方にいる私になんて気付かないだろう。そう高をくくっていたのだが、視線を感じて顔を上げると彼とばっちり目が合って慌てて目をそらす。仮にも親会社の重役に失礼な態度だったか。とはいえ、向こうは気にしていない様子で社長の説明に耳を傾けている。まぁ、どうせ彼が来るのも初日だけでしょ。しかし、予想に反して橙吾は完全に譲渡が済むまでこちらに通って来ると言う。噂好きのパート社員の世津子が社長に聞いたらしく、喜んでいる女性陣を横目に彩子はそっと溜息を吐いた。しかも、過去の発注について知りたいと言うので一番説明が上手いからと彩子が橙吾たちに説明役をする羽目に。何とか説明を終えて頼まれていた過去の資料探しのため倉庫に入ると、後ろから抱きしめられてギョッとした。橙吾くん、と言いかけて加々良専務、と呼びかけると途端に彼は眉を吊り上げた。久しぶりに会えたのに、と不満そうな橙吾に、もう私たちは何の関係も無いはずです。言い切ると俺は承諾していないとキッパリ。だからお前は今でも俺の許嫁だと不敵に笑いキスをした。祖父同士が親友だったことで婚約が決まった彩子と橙吾。政略結婚ではあるものの、幼馴染でもあったので家族ぐるみで仲が良く、彼の両親にも随分世話になった。結婚は彩子が成人してからと決めていたが、辣腕を振るっていた祖父の急死により、暗雲が立ち込めた。彩子の父・俊将が後を継いだものの、父は学者肌でとことん社長業に向いていなかった。見る見る業績が悪化したことで俊将は退任を決意。祖父の右腕だった副社長に席を譲り。これまでの負債の補填のため株も彼に譲渡した。この退任劇はマスコミの格好の餌になり、三浦家には取材陣が押しかけた。好き勝手な憶測記事のせいで誹謗中傷が殺到し、幾度も引っ越しを余儀なくされた。最終的には母の実家近くの田舎町で漸く一息つけるようになったのだが、この取材のせいで父はうつ病を発症。今は落ち着いているけれど、二人とも都会には行きたくないと言うので就職を機に彩子だけ上京したのだった。橙吾には父の退任が決まってすぐに破談の申し入れをした。彼からはもうすぐ帰国するから待っていて欲しいと幾度も手紙が来たが、転居を繰り返しているうちにそれも届かなくなっていた。彼に迷惑をかけてはいけない。だから自分から離れたのに、当人は絶対に離さない、と宣言するや翌日から猛アタックが始まった。工場の人達には内緒にしたい。せめてと頼み込めば渋々ながら彼は受け入れて、就業後には慣れた場所で待ち合わせをしてよく夕飯をご馳走してもらっている。橙吾の世話係の福場は彩子を随分心配してくれていたらしい。当時より老けた顔を見て時の流れを実感した。嫌いで別れたわけじゃない、寧ろ大好きだかから破談を決断しただけに、彼の方からグイグイ来られると決意が揺らぐ。結局何だかんだと押し切られてある夜一線を越えてしまい、彼のマンションで夕食を採る度にベッドに連れ込まれている。一方、橙吾は半年ほど前に彩子を見つけ、その就職先の経営状態に眉を潜めた。製品の評判は良いが儲けが少ないのは少数ロット注文が多いからか。跡継ぎもいないようだしこのままでは数年もしないうちに・・・。そこで彼は工場の買収を決意。ヴェインの配下に入れて福利厚生もしっかりさせる。勿論、自ら工場に行ったのは仕事の一環だが彩子に会うためだ。二十七歳になった彼女は地味な装いながら相変わらず綺麗だった。俺は応じていないと破談も却下し押しに押してやっと深い関係になれた。本音を言えばあんなセキュリティ皆無な安アパートに置いておきたくはない。幾度も同居を勧めるも頑として頷かないのでどう納得させるか。そんな折、数々のハラスメントで問題視されていたヴェインの副本部長・増井が彩子にブスと暴言を吐いたと耳にし、これまでの問題行動を理由に懲戒解雇にした。誰がチクったと増井は大暴れしていたが身から出た錆だ。彩子に暴言を吐いた直後だったので彼女に復讐に来るのではと一時警戒したけれどどうやら杞憂だったようだ。しかし、伏兵は予想外の所から現れた。ある日の夜、いつものように夕飯に出掛けた際、沈んでいる彩子にどうした?と尋ねれば、橙吾くん、新しい婚約者がいるんでしょう!とキレられ茫然。いや、そりゃ誰のことだ?心底不思議そうに尋ねられ、先日女子高時代の同級生だった錦田茉弥香がアパートの前で待ち伏せて、橙吾の今の婚約者は自分であること、彩子にいつまでも未練がましく彼に付き纏うなと威嚇されたというとんでもない話。錦田と聞いて、ああ、あの。と漸く思い出す。錦英会という病院グループ経営する理事長の娘でCALORの取引先な事から幾度か会ってからしつこく言い寄られていた。全くどっちが付き纏ってるんだか。嘆息した彼が真実を話すと何とか誤解が解けたようだ。素直に謝る彩子に微笑み食事を続けながら、錦田について手に入れた情報が使う時が来たな、とほくそ笑む。その矢先のこと、彩子の部屋が何者かに荒らされると言う事件が起きた。コッソリ持っていた橙吾との写真を全部破られ落ち込む彼女を慰めた橙吾は錦田への報復を実行に移し・・・。事情あって離れていたカップルの復縁話です。割と早くよりを戻した二人でしたが、橙吾に横恋慕するお嬢様が彩子の前に現れ宣戦布告。忠告したのにいつまでも別れないからと彼女のアパートに不法侵入して部家を荒らして大事な写真もびりびりに。幸い、先日貰った指輪はネックレスに通して首に下げていたので無事でしたが、本人より橙吾の方がブチギレ。そもそも問題行動があったとは言え、彩子に暴言吐いた社員も問答無用で懲戒解雇する人ですよ、錦田さん終わったな。なのに、このお嬢様、最後の仕上げとばかりに工場に乗り込んで来て彩子の父の退任劇を皆の前で暴露。父が無能だと娘も、と続けた錦田にお父さんは無能じゃないっ、と当時の事情を語ります。そこに橙吾も現れて錦田を糾弾。分が悪いと逃げ出した錦田を見送ると橙吾だけでなく工場の皆も彩子を励まし誰もネクサスのことは口にしませんでした。数日後、錦英会の脱税が報じられ、それが橙吾のリークと知って彩子は目が点。お前を傷付ける者は容赦しないという彼の覚悟が決まり過ぎてて怖い(^_^;)物凄い追徴課税されそうだから錦田家も一気に貧乏になりそう。果たしてあのお嬢様に質素な生活が耐えられるのか・・・。数か月後、二人の結婚式当日の様子が描かれて物語は幕。こういう場合の執念深さはあってもいいと思います。評価:★★★★☆
2026.06.16
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2026年5月刊ベリーズ文庫著者:森野りも(敬称略)ブラック企業での日々に疲弊した紗月を救ったのは、大須賀と名乗るハイスペックな男。しかし一夜を共にした翌朝、彼の正体が苦い思い出の初恋相手・航生だと発覚! 過去、誤解によって憎まれて「顔も見たくない」と振られたはずなのに、なぜかプロポーズされて!? 彼には何か事情があるようで、契約妻になった紗月。愛されるわけないはずがーー「君が欲しい」航生は十年間秘めていた執着愛を燃え上がらせて…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 永井紗月=ブラック企業に勤めるOL。 初恋相手の航生から契約婚を申し込まれる。 大須賀航生=大手化学メーカーの御曹司。十年間、紗月を想っていた。 大須賀理仁=航生の異母兄。会社の跡取り。 大須賀典子=航生の義母。ブラック企業に勤める紗月は、改善されない職場環境と上司からの嫌がらせにほとほと疲れていた。しかし、実家の窮状により安定した収入を捨てる訳には行かず、退職に二の足を踏んでいる。お人好しな両親が、叔父に泣きつかれて借金の保証人になったら、当の叔父はドロン。多額の借金を抱えて二人は途方に暮れた。決して裕福ではない父に幾度も金の無心をしていたちゃらんぽらんな叔父。どう考えても返済する気ゼロだったよね!?私が居たら絶対にサインなんてさせなかったのにっ。後先考えず思い付きで行動しがちな永井家の血筋で紗月だけは堅実でしっかり者だった。煩わしいと思われつつも厳しく家計を管理し貯金も出来るようになっていたのに、借金の額を見てガックリ。姉と妹にも申し訳ないけど、と声をかけ三姉妹で実家を援助しているが、返済まで何年かかるやら・・・。ブラックではあるものの給料自体はそこそこなので、迂闊にやめられない原因はそこにある。が、何かと紗月をいびっていた課長の坂本が、いよいよセクハラを仕掛けて来たので、さすがの彼女もプッツン。殴ってやりたい衝動を何とか抑え退勤するや、今日ばかりは居酒屋で思い切り飲みたい気分であった。しかし、ストレスのせいだろうか胃が酒を受け付けず、せっかく頼んだつまみも喉を通らない。そんな彼女をチャラ男たちが目を付けしつこくナンパしてきた。うんざりしているとスーツ姿の男性が間に入り、恋人のフリをして助けてくれた。おまけにさっさと会計を済ませると紗月を外に連れ出す。慌ててお礼を言うと、飲み直しませんか?と誘われ、着いて行くと雰囲気の良いバー。やはり、胃の不調でほとんど食べられなかったけれど、聞き上手な彼に会社や家の事情を愚痴ると気分はスッキリした。家のことを心配してくれた彼は、会社や上司に関しては眉をしかめ、早急に対処が必要だなと独り言ちる。その後も大いに盛り上がり、紗月は彼に誘われるままホテルへ。彼氏いない歴=年齢の自分がこんなにあっさり会ったばかりの男性に着いて行くなんて驚きだが、彼が何となく島くんに似た雰囲気だからかもしれない。まぁ、大須賀って名乗ってたし島くんとは別人だと判ってるのにね、と思わず自嘲した彼女は、そのまま彼と一夜を過ごした。翌朝目覚めると隣に寝ていた大須賀の姿にギョッとして、そう言えばと自らの大胆な行いに赤面。このまま帰るのも不義理だし、と彼が起きるのを待っていると、友人の麻由からメッセージが。やり取りしているうちに先日開催された同級会の話になり、島くんが来てたよ!の文に手が止まる。麻由によれば、今の島は相当垢抜けたらしく、OGセラミックと言う大手化学メーカーに勤めているそう。どうやら、当時の紗月が島に好意を抱いていたのを知っていたからか、麻由なりに色々情報を仕入れてくれたみたいだ。ありがとうと礼を言い、未練がましくOGセラミックのHPを開くと社長の顔写真と名前に目が行く。大須賀勝一、大須賀・・・。おまけに専務取締役に大須賀理仁とあってまさかとベッドを見るといつの間にか彼が目を覚ましてこちらを見ていた。点と点が繋がり、彼の正体に紗月は激しく動揺。島航生は、紗月のクラスメイトで背は高いが影の薄い少年だった。しかし、たまたま骨折で入院した妹の見舞いに訪れた総合病院で眩暈を起こして倒れた中年女性を介抱した。その女性がこの病院に入院予定の航生の母親で、息子のクラスメイトがこんなに優しい人だなんて、と紗月は気に入られてしまった。それが縁で彼とも話すようになり、数学が得意な彼が教えてくれたおかげでテストも良い点が取れた。そのうち互いの家の事情も打ち明ける様になり、お気楽な家族につい厳しくしてしまうと溜息を吐く紗月に、彼はお前は良くやっているよと励ましてくれた。私なんかより、島くんの方が大変なのに。俺は愛人の子どもなんだ、と打ち明けられた時は驚きつつ、元々屋敷の離れに囲われていたが本妻にいびられ続けてついにそこを出たらしい。なのに、彼の母は胃がんで入院。判った時には末期で手の施しようがなかったそう、異母兄は戻って来いと言ってくれているそうだが最後まで母の側にいたいという彼の気持ちは痛い程判る。航生の兄の理仁とは病院で何度か会ったことがあった。実母と折り合いの悪い愛人と異母弟にわざわざ会いに来てくれる優しい人と言う印象だったが、笑顔でも目が笑ってないように見えて少し怖くも思えた。数か月後、その理仁に呼び出された紗月は弟に纏わりつくのはやめて欲しいと言われ、航生から相談されてねと紗月の悪口を連ねたトークアプリ画面を見せられ茫然。ショックを受けつつ、もしかして好意を見透かされてたのかもと理仁の言葉に頷いた。帰り際、背後からいきなり覆いかぶさられて驚いていたら、ゴミが付いていたと微笑まれた。翌日、不機嫌MAXの航生から「顔も見たくない」と絶交宣言を受け、紗月の初恋は終わりを告げた。後に聞いた話によれば、彼が大企業の社長の愛人の子であることなど悪評が広まっていたらしい。紗月は彼のプライベートについては親友の麻由にすら話していなかった。だが、事情を知っている物は限られている。噂を流したのが紗月だと思い軽蔑されたのかもしれない。あのすぐ後、航生は学校を欠席しそのまま卒業になった。彼女にとって苦い思い出だ。にしても、彼はどうして私と関係を持ったんだろう。当時の仕返し?その日はそのまま別れたが、数日後、残業の挙句、坂本にあれこれ嫌味を言われていると突然現れた航生が坂本を糾弾。紗月を連れ出すと車に乗せた。すると徐に家族が借金を背負わされたと言ってたな?と聞かれ、頷くと俺が立て替えてやると言われ、思わず「はぁ!?」そんな義理、あなたに、と言いかけると食い気味に「俺と結婚してくれ」のセリフに唖然。取り敢えずこっちの話を聞いて欲しいと前置いた彼が言うには、大須賀家に戻り会社の役員になったはいいが、義母の典子が理仁可愛さに一時期は航生を潰そうとしていたらしい。しかし、父が航生の力を買っていて下手なことはできない。そこでなら自分に逆らえないようにと勝手に親戚の令嬢との縁談を進めているらしく迷惑でしかないと。そこで、紗月に三年でいいので妻のフリをしてくれないかと言うのだ。なるほど、その報酬が借金の建て替えね。彼にしてみれば全く知らない女に頼むより、事情を知っている自分の方が色々都合が良いのだろう。でも、顔も見たくないって・・・。気になって尋ねれば、当時は母親が亡くなって精神的に不安定でイラついていただけだという。実際は嫌ってなんていない、の言葉に我ながらチョロいなぁ。自覚しつつも紗月は彼の提案を受け入れたのだった。それから二人は早々に入籍。借金返済に親は恐縮しきりだったが、絶対に返すと約束し良い人を見つけたなぁと大絶賛。逃げた叔父は航生が調査会社に探させると言う。示しはちゃんとつけなければの言葉に家族も同意した。当然ながら大須賀家側はいい顔をしなかったが、今では次男の方に全幅の信頼を置いている社長は、結婚を許してくれないなら会社を辞めると脅され渋々許したと聞く。義母に関しては直接乗り込んで来て難癖を付けられたが、ブラック企業で上司にいびられ続けた紗月にはそよ風のようなもの。話がお済みでしたらお帰り下さいと追い出すと悔しそうにしていた。理仁の方は、相変わらずの優しげな表情で君のためなんて離婚を促されたが、なんかもうこの人性格悪いなぁと思う。あの日のことも理仁の策略だったのではと考える程。一つ屋根で暮らしているのもあって、完全に彼への想いが再燃していた紗月は、やたらと自分を甘やかして来る航生の真意を測りかねていた。本当は両想いだったのなら嬉しいんだけど。手持無沙汰なので短時間でもいいからバイトがしたいと相談すれば、うちの会社でいいならと薦められ先日からOGセラミックの経理部で働いている。でも、この会社、やたらと経費としての計上が多いような。確認して見るとちゃんと上の承認も得ているみたいだが、どうにも引っ掛かって航生に報告をした。彼の方で調べてくれると言うので、次また見つけたら知らせて暮れの言葉に頷く。この人に任せておけば大丈夫。かつての同僚から先日連絡があって聞いたのだが、あの会社は現在OGセラミックの子会社になったそうで、問題ある社員は皆、外国に飛ばされたと言う。あの坂本はアフリカ支社行きになったとウキウキした調子で話していて、あららと苦笑する。数々のハラスメント行為を訴えても何もしなかった会社が随分変わったものだ。これはきっと航生の采配なのだろう。試しに坂本の顛末を話せばへぇ、と笑っていた。その反応に声を上げて笑う彼女を見て、航生は内心でホッとする。ストレスから食欲もなくガリガリの彼女を見て、彼女の職場への報復を決意した航生は秘書の土方に呆れられつつ行動に移した。かつて、大須賀家のいざこざに彼女を巻き込み傷付けてしまったのを航生は死ぬほど後悔。彼女に頼まれてなんて嘘を吐き、後ろから抱き着いているような場面を見せつけられた時は軽く殺意が湧いた。そんな理仁の腹黒さに気付かず踊らされた時期もあったが、実際に頭が回るのは自分の方だ。会社で頭角を現し始めるとすぐに無能な長男より父は次男に助力を求めてきたので、義母共々相当焦っているはず。なんとしても理仁を後継にと必死になっているようだが、最近の調査で理仁に大きな瑕疵が見つかった。そろそろあの時の落とし前を付ける頃合いか。丁度、紗月からの報告から面白い事も判った。義母と理仁への制裁のためいよいよ航生が動き・・・。再燃ものです。大企業の社長一家の確執に巻き込まれ引き離されてしまった二人が十年ぶりに再会。二度と放すものかと一計を案じた航生は紗月に契約婚を申し込みます。元々両想いだった二人は、誤解も解けて本当の夫婦になりますが、うちの膿を出しておこうと、兄・理仁の横領を告発。しかもそれが違法薬物をネタにゆすられていたと言うアホな理由。大須賀社長は愚かな息子にガックリ。義母も頼りの実子の失脚に消沈し、義息子夫婦に関わることも無くなります。まぁ、過去の行いの報いですよね。愛人との間に子どもまでいて、屋敷の離れに住まわせるとか、この人も悔しかったろうとは思いますけど、怒りの方向間違えてる気がします。おかげで理仁にしわ寄せ行っちゃってあんなことに。もう、息子が矯正のために送られた田舎に一緒に行ったらいいんじゃない?この人の亡くなった航生のお母さんへの仕打ちを思うと色々生温いように思いますが、結局憎き愛人の子に何もかも持って行かれたことが一番堪えるのかも。その後、紗月の叔父も見つかったことで永井家の問題も完全に解決し、念願の挙式を挙げる二人の当日の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編はそれから半年後、紗月の妊娠報告を受け大喜びの航生目線のお話でした。内容としてはザ・王道。モヤモヤ度も少なく面白かったです。評価:★★★★☆
2026.06.15
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昨日(6月13日)までに購入した本ですモンスターコミックスf 5月刊もう8巻目かぁ。 スターツ出版文庫5月刊。朝比奈希夜さんの最新作は後宮もの。フロースコミックス6月刊ベリーズファンタジー6月刊ザマァ系。 ベリーズ文庫6月刊2点同日発売の田沢みんさんの本も気になってるので買ってしまうかも。 マーマレード文庫6月刊2点。レーベル違いですが、田崎くるみさんが2ヶ月連続刊行で嬉しい。 ムーンドロップス文庫6月刊2点。先月のビーンズ文庫、ビーズログ文庫が全然買えていないので、そちらはまた追々・・・。
2026.06.14
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2026年1月刊ヴァニラ文庫著者:小桜けい(敬称略)没落令嬢のセラフィナは、融資と引き換えに冷徹な騎士団長エドガルドと契約結婚をする。人前では完璧な夫婦を演じ、夜は契約通りに抱かれる関係。「今夜は覚悟してくれ」愛のない結婚なのに、閨での予想外に情熱的な愛撫に身も心も甘く蕩けていく。その不器用な優しさに惹かれ始めた矢先、夜会でのある出来事が彼の独占欲に火をつけてしまいー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用 登場人物 セラフィナ=没落貴族の娘。家族のために求婚に応じる。 エドガルド=公爵家当主。セラフィナに契約婚を申し込む。前当主の作った莫大な借金により、貧乏生活を強いられていたコンテスティ伯爵家。本来なら婚活に勤しんでいる年齢の長女・セラフィナは、家計を支えるために王都のレストランに働きに出ている。ドレスを仕立てる金もないので社交界デビューも出来ておらず出会いも無い。結婚を諦めかけていたセラフィナは、父から自分に縁談が来ていると聞いて目を瞠った。お相手は国王陛下の従弟・カルデナス公爵エドガルド。近衛騎士隊長として名を馳せる人物だが、そんなお方が何故私に?お前は母さんに似て美人だからどこかで見初められたんじゃないか?流石は私の娘、と言わんばかりに嬉しそうにしていた父には悪いが、夜会や舞踏会にも出席したことがない身としては謎過ぎる縁談だ。娘の表情に流石の父もこの話に喜んでばかりもいられないと気付いたらしい。取り敢えず、顔合わせをしてみて嫌なら断って良いと言ってくれた。カルデナス公爵邸で対面したエドガルドは整った顔立ちながら無愛想な人物だった。恐ろしく剣の腕が立ち、十代の時に王を襲った暗殺集団を一人で倒したと言う。こんな目立つ人、覚えていないはずもない。どう見ても初対面だ。父は娘を心配し、どういう経緯でうちに縁談を?とエドガルドに尋ねた。手放しで喜ばれると思っていたのか、彼は意外そうな表情をするとセラフィナを見つめ、その理由についてはお嬢様にだけ話したいと告げ、彼女を庭園に連れ出した。二人きりになり、セラフィナと向き合った彼はこのことは他言無用でお願いしたいと前置き、彼女に縁談を申し込んだ理由を話した。国王は歳の離れた従弟のエドガルドを自分の子のように可愛がっていた。それ故、女っ気のない彼を心配し、勝手に縁談を進めようとしたらしい。お相手は隣国国王の末姫。少々気は強いが大層な美人だそうだぞ、ニコニコ顔の王に言われて、エドガルドは焦った。恋愛するより仕事に打ち込んでいたい彼にとって王のお節介は正直迷惑だった。幸い、まだ候補の段階だったのでありがたいお話ですが、と何とか断ることが出来た。が、一人に決められないなら本妻を迎えてから妾を作ればいいとかとんでもないことを言い出した。一先ず、私がピックアップした令嬢と見合いをしろ。王妃と二人、真剣に選び始めた王を見て、これはもう自分が結婚するまでこのバカげた話が続きそうだとうんざり。嘆息した彼は自分が結婚に向いていないと判っていた。しかし、いずれは家の為に妻を迎えなければならない。故に自分に愛情を求めず、跡継ぎを産んでくれる都合の良い妻が欲しい、そう思ったと言う。要は仮面夫婦という関係に甘んじてくれる令嬢はいないかと探していた彼は没落貴族の娘なら援助を条件に応じてくれるのではと考えた。見る見る落胆していく彼女を見て、最低な話をしていると自覚があったエドガルドは内心で激しく動揺。取り繕うように、君の家の事情は調べさせてもらったと言い、援助は充分にすること、セラフィナに生活の苦労はさせないと約束。表では仲良し夫婦を演じ子どもさえ産んでくれれば俺を愛する必要も無いと告げる彼に彼女はもう一つ条件を出した。それはセラフィナの父が考案する領地の開墾計画への投資。父の案は本当に素晴らしいんです!だが、行動に移すには相応の金が要る。これで領地が潤えば屋敷も買い戻せるだろうし、歳の離れた弟妹達にもきちんとした教育を受けさせてやれる。叶えて下さるなら、あなたのそのお話謹んでお受けします。迷いのない眼差しに頷いた彼は、俺たちは「エル・アロンドラ」出会ったことにしよう。バイト先の店名を告げられ、実は君を見に行ったんだと言う話に驚く。フードを被っていたそうだから気付かないのも無理はない。打ち合わせを終え、実はバイト先で見初められていたのだとセラフィナが話すと父も納得。しかし、一度家族と相談してから返事をしたいと言う伯爵の申し出にエドワルドも了承した。きっと、彼女が説得してくれるはず。半年後、二人は盛大な結婚式を挙げた。困窮していた没落令嬢が働き先のレストランで公爵に見初められた、という話は多少の尾ひれがついて広まりロマンス好きの貴族たちを熱狂させ暫く巷を賑わせた。そうした経緯から、公爵夫人になったセラフィナの人気はすさまじく、ひっきりなしに招待状が届く始末。お茶会は勉強になることも多い、彼はああ言ったけれど夫婦になったからには外以外でも仲良くなりたい。しかし、いつも微妙な表情をされるので迷惑だったのかしら、としょんぼり。いつからか、不器用な優しさを見せる彼に心惹かれていた彼女はこの関係を虚しく思っていた。一方、エドガルドは可愛らしいことばかりする妻に毎日悶絶していた。彼女が刺繍をしてくれたハンカチは宝物になり、ここぞと言う時には持ち出して周囲に見せびらかしている。女にも恋愛にも興味がないはずが、今ではすっかりセラフィナにどハマりしているなんて自分の変化に驚くばかり。幼馴染の仕立て屋に仕立てて貰ったウエディングドレスを着た彼女は女神のような美しさで、見惚れてしまったエドガルドは、今思えば初めてあのレストランで見た彼女に一目惚れしていたのだ。過去に戻ることが出来たならちゃんと想いを告げてプロポーズしたい。今更、君を愛してしまったと告白したら迷惑に思われるだろうか。知らず両想いになっていた二人はお互いの気持ちに気づいていなかった。二月後、ふとしたことで喧嘩してしまった彼らはここで初めて自らの気持ちを打ち明けた。晴れて仮面夫婦を脱却し仲睦まじく過ごしていたのだが、セラフィナにストーカーの影が。彼女への想いを綴った気味の悪い内容の手紙が毎日屋敷に届くようになり・・・。そりゃ、あんないい子みんな好きになっちゃうよ、ってくらいヒロイン・セラフィナは健気で心優しい女性でした。彼女のことをすぐ好きになってしまったエドガルドの葛藤がコメディタッチで描かれていて、これは二人の想いが通じ合って終わりかな、と思ってました。が、終盤にきて勘違いストーカー野郎の登場ですよ。誰にでも親切なセラフィナの行動がきっかけで彼女に恋した伯爵令息がキモイ手紙を毎日送りつけて来る。そのうちそれはエドガルドの知る所になり周囲を警戒していた所、事件が。まぁ、これは彼が罠を張っていたのでセラフィナは無事でしたが、ストーカー男は実は何人もの少女を手に掛けていたサイコ野郎だったことが判明し、それをもみ消していた祖父の伯爵諸共捕まり終身刑に。この件で一層夫婦の絆が深くなった二人は、相変わらずの仲良しぶりが描かれ、六年後のエピローグでは三人の子供たちの親になっていました。困窮していた伯爵家も持ち直したし、正に大団円。あらすじだとシリアスに見えるも、実際の内容はラブコメだと思います。評価:★★★★★
2026.06.13
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6月下旬 アルファポリス 自宅アパート一棟と共に異世界へ 5 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました 如月雪名7月上旬 レジーナ文庫 聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ? 2 渡邊香梨 妹が「いらない」と捨てた伯爵様と結婚したのに、 今更返せと言われても困ります 当麻リコ あなたの愛など要りません 1 冬馬亮8月3日 ヴァニラ文庫 政略結婚のはずが、冷酷皇帝に溺愛されて離縁できません(仮) かべうち右近8月5日 ベリーズファンタジー 王家の皆さん覚えていますか? 辺境に追いやられた王太子の元婚約者です。 別所燈 加護なし令嬢、辺境伯に嫁いだら 精霊に囲まれて国一番の繁栄を呼ぶ妻になりました ~精霊に見放された家族と婚約者は破滅しているようです~ shiryu 「出涸らし」と嘲られた私ですが、 呪われた王子に嫁いだら幸運の聖女として覚醒しました。 さあ、幸せになりますよ!【最強令嬢の大逆転シリーズ】 天壱8月10日 ベリーズ文庫 政略結婚ゼロ日婚ですが、なにか? -敬語男子の財閥御曹司に翻弄されています- 【絶対王者なバディシリーズ】 滝井みらん 本日より、弊社社長と疑似子育て始めます 蓮美ちま マーマレード文庫 ベネチアで始まる恋(仮) 若菜モモ 離婚前提の政略妻ですが、 冷徹外科医の旦那様に秘密の子どもごと家族溺愛されています(仮) 木登8月18日 ヴァニラ文庫 独身を貫くつもりが執着愛の強い陛下に熱いプロポーズを受けています(仮) 七福さゆり(敬称略)予定に入れてた(はず)のにまだ購入出来ていなかったレジーナブックスが文庫で出るみたいで良かった。それはそうと、マーマレード文庫が結構溜まってるのでいい加減消化しなければ(^_^;)
2026.06.12
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2026年5月刊ベリーズ文庫著者:田崎くるみ(敬称略)「君も三つ子も、この手で愛したい」別れたパイロットの一途な執愛に囲われて…。「やっと見つけた」-訳あって三つ子のシングルマザーになった那奈は、元彼のパイロット・稔とまさかの再会。彼は他の女性と幸せになったはず。破局後に内緒で出産したことを必死に隠そうとするが…。稔は一途な執愛を露わにし、「ずっと探していた、もう逃がさない」と熱く迫ってくる。かつてふたりの仲を引き裂いた女による妨害も稔が滾る愛で跳ね除け、戸惑う那奈を三つ子ごと包み込み…! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 平林那奈=元CAのシングルマザー。 瀬戸稔=那奈の元カレの副操縦士。翼、翔真、彩羽=稔と那奈の子供たち。三つ子。 福本春香=那奈と同期のCA。稔に想いを寄せている。福岡で青果店を営む伯母夫婦の元で三つ子の子育てをしている那奈。友人の結婚披露宴に招待され久々に上京した彼女は、東京便の担当副操縦士が元カレの瀬戸稔と知って懐かしさと共に胸騒ぎを覚えた。早々会うことも無いだろうと高をくくっていたら、空港でしっかり見つかってしまって万事休す。がっちりと腕を掴まれ、どうしても話したいことがあると頼まれ、渋々頷いた。明日時間を作ってくれと言われ連絡先を交換した。披露宴は素晴らしいもので、那奈の心もホッコリ。しかし、気になるのは伯母たちに頼んで来た子供たちのこと。我儘言ってないと良いけど・・・。福岡に想いを馳せているとトークアプリにメッセージが届き、稔からと判ってため息を吐く。そこには待ち合わせ場所と時間が書かれていた。どうしよう、子供たちのことを打ち明けるべきか。翌朝、待ち合わせ場所のカフェに向かった那奈は、パイロットの制服を着た稔の横にかつての元同僚・福本春香の姿を見つけて足を止めた。やるせなくなって今来た通路を引き返す。四年前、稔と交際していた那奈は、彼に横恋慕していた福本が原因で結婚を諦めた。勤め先の重役の娘の福本は、あなたが別れないなら父親に頼んで稔をクビにすると脅迫して来たからだ。彼女の父に果たしてそれほどの力があるのか、甚だ疑問ではあったが当時の那奈には効果覿面だった。那奈の両親は長く不仲で父は愛人と一緒になるからと出て行った。大恋愛の末に結婚したと聞いている。なのに物心つく頃にはろくに口も聞かず娘が成人したらさっさと離婚。母はその一年後に病気で亡くなったのだが、連絡を入れても父は葬儀にも来なかった。そんな父を思うと果たして稔はどうなのだろうと思う。長い葛藤の末に突然別れを告げた那奈を彼は責めなかった。外国の航空会社で働きたいと言う夢を持っていたから、その夢の為に一時離れたいと言うならいつでも待つ。そう言ってくれていたのに・・・。逃げるようにアメリカの航空で働き出した彼女は、少しして体調不良で倒れ、検査の結果妊娠が判明。悪阻が酷かったのもあって早々に退職することになり、彼女が頼ったのは母方の伯母だった。急ぎの用事が出来たので会えません。もう連絡してこないでくださいと送信して、お土産の購入で時間を潰して福岡行きの便に乗り込んだ。空港には従兄弟の健吾が迎えに来てくれていた。家に着くと疲労困憊と言った様子の伯母たちの顔を見て申し訳なくなる。自分一人での子育てはきっと無理だったろう。なのに、孫が出来たみたいで楽しいと笑う伯母夫婦には頭が上がらない。一応、と彼らには三つ子の父親に再会したとだけは伝えた。対話を求められたけど怖くて逃げ帰ってしまったとも。数日後、定休日に飛行機好きの長男・翼に請われて健吾を伴い福岡空港に出掛けた那奈は、丁度福岡便で来ていたらしい稔と再び遭遇。迷子になっていた翼を探していた時、当人を伴い現れた彼は最初、健吾が父親だと思ったようだ。慌てて否定していると今度こそ話がしたいと頭を下げられ観念した。翼は健吾に見ていてもらい、近くのカフェに腰を下ろす。開口一番、福本さんから全部聞いたよと言われ顔を上げると、全部俺のためだったんだなと謝罪され、那奈は両親の件で自分も稔を信じられなかったからだと俯いた。彼は那奈と付き合い始めていた頃から福本に付き纏われ迷惑していたらしい。何度、自分には将来を決めた人がいると断ってもめげずで困り果てていた頃、那奈から別れを告げられたそう。稔はすぐに福本が関わっていると気付き、那奈の本心を聞き出そうとしたが敵わず、結局二人は一度破局してしまった。したら、意気揚々と福本が迫って来てカマをかけるとあっさり白状。激怒した彼はきっぱりと彼女をフった。だが、福本はとんでもない執念深さで尚も付き纏い、その姿に二人は結婚間近なんて噂も出ていい迷惑だと。憤慨している稔の目は嘘をついていなかった。それに、いくら重役でも勝手に人事には口を出せないよ、ましてや俺はパイロットだぞ。その言葉は目から鱗で今更ながらに確かにと思う。思えば両親のことや当時は気付かなかったが妊娠初期で精神も不安定な頃だった。ごめんなさいと涙を流す那奈は、あの子は俺の子だろ?と聞かれて肯定した。とっても飛行機が好きな子でね、翼って言うの。そう告げると感慨深そうでカフェを出た後、許可を得た彼は翼を抱き上げた。混乱させるかもなので父親とは言わせず、ママの友達と紹介したが、息子はすぐに懐いた。翌週、休暇で福岡を訪れた稔は伯母の家を訪れこれまでの不義理を詫び、那奈と子供たちが世話になったと頭を下げた。実は三つ子だったと知って当初彼は軽くパニくっていた。あの日、残りの二人は伯母たちが動物園に連れて行っていたので不在だったから。男の子二人にはすぐ懐かれたが、末っ子の彩羽は大きな男性が怖いと及び腰。慣れるまでに中々の時間を費やした。漸く彩羽も慣れた頃、三つ子には稔がパパだと打ち明けた。子どもたちは大喜びで、その日を境に彼から東京で暮らさないかと相談を受けた。君もCAに復帰したくないか?と聞かれ心が騒ぐ。シフトを調整すれば俺が見ていられるし、うちの空港は託児所もあるから。そう説得されて那奈は復帰を視野に入れた。暫くして那奈と子供たちは東京に引っ越した。どうせなら一軒家がいいだろうと購入したのは中古ながら築浅の空港へのアクセスも良い物件。那奈は稔の母親と意気投合し、CAに復帰したいのだと相談すれば協力を申し出て、知り合いに良いシッターがいるからと紹介してくれるという。周辺は待機児童が多く、保育園が見つからない。なのでできるなら託児所がある元の会社に再就職したい。が、問題は福本のこと。顔を合わせれば絶対に一波乱あるだろう。でももう、何を言われたって揺るぎはしない。そんなある日、買い物に出掛けていた那奈は家の前に福本の姿を見つけて・・・。タイトルの執愛滾る、は福本さんにこそ相応しい言葉なのでは?稔の新居をどうやって見つけたのか、那奈と対峙した福本は早速難癖を付けてきますが、那奈はもう福本を恐れていませんでした。あなたのお父さんにそんな権利ありませんよね?やたらと父親の権力を振りかざす福本にしら~~っと言い返すと、子供をダシに復縁を迫るなんて卑怯よと責任転嫁。本当に彼と別れないと後悔するわよ、と再び脅しをかけられるも、後悔するとしたら四年前にあなたに従ったことだと告げ、さっさと家に入り、その後、帰宅した稔に事細かに報告。会社側はまたもや父親の権力を振りかざし、人事部の社員を脅して瀬戸家の住所を聞き出した行為を重く受け止め福本に厳重注意。福本の父は自ら降格処分を受け入れ、福本本人は業務部に移動となります。CAじゃなきゃここにいる意味がないとさっさと退職した福本はこのまま黙っていないだろうと用心していた所、公園に遊びに来ていた彩羽がいなくなり、という展開です。相当に稔のことが好きだったんでしょうけど、個人的に他の女の物になった時点で一気に冷めるタイプなんでこういう執念深さは理解不能です。そりゃ、たまには押して押して、で振り向いてくれる場合もあるかもだけど、那奈にベタ惚れな稔じゃあどんなに福本が美人で金持の娘でも望み薄だよね。だからきっぱりフラれたら自分には縁のない人だったんだと諦めて他を当たる。犯罪まで起こしてるんじゃぁ、自慢のお父さんが可哀想。しかも、こんなことしでかしても一切反省していないらしいのが怖い。矯正のために放り込まれた地方の会社で揉まれて心を入れ替えてくれればいいけど。この誘拐未遂事件から数か月後、稔と那奈の挙式の日、那奈は数年ぶりに音信不通だった父と再会。父の今の妻が前妻が復縁したがっていると勘違いし、母親の葬式について書いた那奈の手紙を隠していたと判明。父は母が死んだことも知らなかったと語り娘に謝罪するのでした。稔が父の行方を捜してくれたことを感謝し、親族だけを招いた暖かい式の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編は後日談で、本編ラストから六年後、瀬戸家の四人目の子供に纏わるエピソードでした。シークレットベビーものですが、三つ子は珍しい。一人でも子育ては大変そうなのに、三人同時となると壮絶だろうな。割と早めに誤解が解けて復縁もあっという間だったけど、出番自体はそうないのに、福本さんがとにかく強烈だった印章。評価:★★★★★
2026.06.11
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2024年10月刊マーマレード文庫著者:木登(敬称略)児童文学作家の知葉は、妹の忘れ形見の小学生・要とふたり暮らし。飛行機好きな要の希望でブルーインパルスの本拠地近くに引越したら、高校の同級生・紀一郎と再会してしまう。ずっと片想いしていた彼は、航空自衛隊でパイロットになっていた。「いまも、知葉が好きだ」-空白の期間を埋めるように熱く迫られ、封印していた彼への想いが溢れ出し…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 高坂知葉=亡くなった双子の姉の子供を育てている小説家。時松紀一郎=航空自衛隊・ブルーインパルスのパイロット。 高坂要=知葉の甥。 高坂紅葉=知葉の双子の姉。故人。 坂田=紅葉の元カレで要の実父。執筆業を生業にしている知葉は、現在甥の要と二人暮らし。両親は既に亡く、双子の姉の紅葉も四年ほど前に母と同じ病気を患って亡くなった。知葉は姉の代わりに要を立派に育てると決意。幸いにも優秀賞を採った児童向け小説が当たってシリーズ化、ありがたいことに後発の作品も好調なおかげで作家業だけで暮らしていけている。そんな折、紅葉と交際していたという坂田なる人物が訪ねて来た。有名商社の跡取りということで両親に結婚を反対されていた二人。それでも結婚を強行しようとしていた彼の将来を潰してはならないと紅葉は身を引き田舎に帰って来ていた。なのに、理由も言わずに別れを告げられた坂田は納得いかず、一時精神を病んでいたそう。それでも諦めきれずに紅葉を探し、漸く見つけた時には彼女はこの世を去っていた。彼は要を見て紅葉の面影を見たのか涙をこぼし、自分勝手かもしれないけれどと前置き、要を認知したいと申し出た。そして成人するまでの養育費を払いたいのだと。坂田は無理に要を連れて行こうとはしなかった。その姿勢から信頼できると申し出を受け入れると、彼は休暇が取れると要に会いにやって来る。そんな坂田を要は素直にパパと呼び慕っていた。数年後、要も小学一年生になった。しかし、叔母と二人暮らしという家庭環境をクラスメイトに揶揄われた要は沈みがちになりやがて不登校に。子供の言った事ですから、と大した問題ではないと流そうとしていた担任の態度に知葉はブチギレ。子育ての先輩である担当編集者のアドバイスで転校を決意。翌年、ブルーインパルスファンの要の希望でお隣の県・宮城の東松島に移り住んだ。ブルーインパルスの町と言っても過言でない東松島は至る所にイルカを模した青いマークで溢れていた。マンホールまで・・・。驚きつつも感心しているとふと昔を思い出した。時松くん、元気かなぁ。ブルーインパルスのパイロットになるため、航空大学に進んだと聞いている。テレビでブルーインパルスを見る度にもしかして時松君が乗ってるかもとドキドキした。でも、彼は紅葉のことが好きだったから。まったく、三十にもなっていつまでも初恋の人を忘れられないなんてね。新しい学校で大丈夫か少々不安だったが、要はすぐに七門くんという友達が出来て毎日楽しそうだ。暫くして松島基地で航空祭があるらしく町は大賑わい。当日はブルーインパルスの飛行演習と、その後はパイロットとの握手会もあるそうで要に行きたいと強請られた。当日は推しのパイロット・パインさんに会えると上機嫌で、パイナップル好きな人なのかしらと首を傾げる。実際に生で見たブルーインパルスの飛行は圧巻だった。子どもたちに大人気の彼らはさすがに慣れているのか握手会もスムーズに進行。え、待って、時松くん?パインさんだぁ、と感動の声を上げる要に、パインって「松」の方のパイン?と聞くと頷く。そっか、夢を叶えたんだね。しみじみしていると向こうも気付いたようで「知葉?」と声をかけられた。だが、何となく居た堪れなくて握手を終えた要を連れてそそくさと立ち去った。それから一週間ほど経ったある日のこと。お使いに行った要がいつまでも帰宅せず、知葉はパニック。慌ててスーパーまで走ると、泣きべその要と隣には要の自転車を担いだ時松が。事情を聴くに、どうやら要は店内で自転車のカギを落としたらしい。サービスカウンターにも落とし物の届けが無く途方に暮れていた所、時松が知葉の息子じゃないかと気付き声をかけてくれたそう。家にスペアキーがあると聞いてこうして自転車を担いで来てくれたと聞いて知葉は平謝り。憧れのパイロットに親切にされて要は離れ難そうにしているし、時間大丈夫なら夕飯食べてってと誘った。彼は紅葉の死にショックを受けていた。そして要が紅葉の子で、たった一人で甥っ子を育てると知るや知葉を労った。将来はパイロットになりたいと言う要が子供の頃からできる勉強を教えて欲しいと彼に頼み込むのを、迷惑でしょと窘めるも、土日は無理だけど平日夜なら構わないと彼はあっさり承諾。それからというもの、週に一、二回の頻度で時松が通ってくるように。そんな彼を見て、知葉は恋心が再燃。でもたとえ受け入れてくれても私は多分要を優先にしてしまうだろう。そう思うと気持ちを打ち明けられずにいる。そうこうしているうちに、坂田から次の連休に要を旅行に連れて行きたいと言う電話が。現在アメリカで働いている彼は要を溺愛し、小学生になると旅行に連れて行っていた。一泊二日ならもう甥っ子も慣れたもので早くパパに会いたいと大はしゃぎ。あれ、でもちょっとまって、確かこの日は田舎から送られて来た野菜をお裾分けしたいと時松が来る日ではなかったか。二人きりはドキドキする~~。坂田が迎えに来ていそいそと出掛けて行った要を見送った日の夜、二人の間には微妙な空気が。口火を切ったのは彼の方で、ずっと知葉が好きだったと言われてビックリ。紅葉が好きだったんじゃないの!?思わず聞き返せば、彼は首を横に振って完全否定。紅葉には知葉と上手く行くよう協力してもらってたんだと頭をポリポリ。あの頃の俺はがっついてたから、そんなテンションじゃあの子は引いちゃうって怒られて・・・。気恥ずかしそうな彼の言葉に知葉はあんぐりしつつ、自分が勝手に思い込んでいただけだったと知って脱力した。沈黙の後、同じ気持ちなら俺はもう諦めない。でも要君のことで思う所があるならいくらでも待つ。そう言って帰って行った。思いが通じてからというもの、ぎこちないながらもトークアプリで頻繁にやり取りしている。こんなに幸せな気持ちは久しぶりだ。しかし、そんな彼女に坂田がプロポーズして来て・・・。未だに紅葉を忘れられない坂田は要を溺愛しつつ、愛しい人にそっくりな知葉を妻にして心の安寧を得ようとしていました。彼はただ寂しくて間違った選択をしようとしている。要のためと承諾しても、いずれ似ているのは顔だけだと落胆し、苦しむのは坂田の方だろう。何とか坂田を説得しようとするも彼は聞く耳持たずで悩んでいると、知葉の気持ちを察したのか、要が坂田に会いに一人新幹線で東京に向かおうとしていました。要が父を説得するために起こした行動に知葉は心を決め、プロポーズをキッパリ拒否。紅葉が最後まであなたを想っていたと語ります。その話に坂田は漸く自らの過ちを認めて謝罪、憂いが晴れたあと、知葉と時松は交際を始めるも、ブルーインパルスパイロットの任期が終り、彼は本来の所属である那覇基地へ。遠距離恋愛を続けた彼らは、要が十三歳になり英語の勉強で坂田のいるアメリカに向かって漸く入籍。その頃には五年の月日が経っていました。何というか、時松くん偉いよ。その二人も後に娘を授かり、久々に帰国した要を交え賑やかな様子の彼らの姿が描かれ本編は幕。大筋は子育てものでその裏でヒロインの恋が描かれていた感じ。物語冒頭で亡くなった紅葉の過ちが坂田さんを信じなかったことだと終盤に判明したり、故人ながら登場人物たちに多大な影響を与えていた印象です。坂田さんは特にねぇ。もう孫がいるから親から結婚を強要されなさそうだけど、一生独り身な気がする。だからか、おまけの番外編は、要の要望で坂田を交えて紅葉の思い出(暴露)話に盛り上がる知葉たちのお話でした。評価:★★★★☆
2026.06.10
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2026年4月刊ベリーズファンタジー著者:葵井瑞貴(敬称略)稀有な治癒の異能を持つ伯爵令嬢・エスターは、献身的に婚約者に尽くしてきた。しかし、強欲な妹に婚約者と力を奪われた挙句、濡れ衣を着させられ収容施設に追放されてしまう。そんな絶望的なエスターに救いの手を差し伸べてくれたのは、親友のアデル。エスターは彼女の協力を得て、“死”を選び収容施設から脱出することに…! 「都合よく扱われる人生はやめます!」──ここから、すべてを奪われた令嬢の大逆転劇が幕を開ける。一方で力を手に入れた妹と、それを取り巻く人々は、エスターを失ったことで順風満帆な日常に綻びが生じはじめ…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 エスター=傷を癒す異能を持つ伯爵令嬢。 シリウス=第二王子。エスターに想いを寄せている。 アデル=王国一の豪商の娘。エスターの親友。ミーティア=ミーティアの妹。メイナード=王太子。後にミーティアと婚約する。 ダニエル=カルミア侯爵子息。エスターの婚約者。治癒の異能を持つ伯爵令嬢・エスターは、野心家の父の大事な駒として育てられた。お前のおかげでカルミア侯爵家と縁戚になれると父は大喜び。しかし、当の本人は婚約を結んだダニエルのことがあまり好きになれなかった。見栄っ張りで金遣いが荒く、機嫌が悪いとすぐに怒鳴りつけて来る。所謂面倒くさい男、それがダニエルであった。今日はエスターの十八歳の誕生日。意気揚々と現れたダニエルから贈られたのは大きなエメラルドのネックレス。君の瞳の色だと自信満々に語っている彼には悪いが、趣味の悪さに口の端が引き攣った。嬉しいわと必死に笑みを浮かべ感謝の気持ちを伝えると満足そうな顔にヤレヤレだ。ドッと疲れて父に断って休憩していたエスターは、パーティー会場に戻る途中、ダニエルの浮気現場に遭遇。相手はなんと妹のミーティア。幼少時からやたらと姉の物を欲しがる自己中心な妹だったが、婚約者にまで手を出すとは・・・。呆れてため息を吐く冷静なエスターの態度になぜかミーティアの方が逆ギレ。お姉さまだけいつも狡いのよっ!そう言って先程ダニエルから貰ったネックレスを引きちぎった。その際、妹ともみ合いになり、首にはネックレスが擦れて出来た傷から血が。慌てて手を当てて力を使おうとしたものの何の手ごたえも無い。逆に向こうもエスターの手が当たり軽い傷が出来ていたミーティアの手に治癒の光が輝いている。驚愕する姉を他所に妹は勝ち誇ったような高笑いをしていた。数日後、エスターの婚約は白紙となり、代わりにミーティアとダニエルの婚約が結ばれるそうだ。父の愛情はすっかりミーティアに移ってしまったようで、エスターのことは二の次らしい。少しも申し訳ないと思っていないのが丸わかりの妹に謝罪されてもモヤモヤが残るばかり。無性に親友に会いたくなってシレーネ家を訪ねた。アデル・シレーネは同級生でエスターの親友。幼い頃からの病で寝込むことも多いが明るい彼女にいつも励まされていた。アデルは丁度寝込んでいた時期でパーティーに来られなかった。送って貰っていたプレゼントの礼を言い、あの日起きたこと、異能が仕えなくなったことを話すと彼女は眉を潜めた。異能者が力を使えなくなることは実はそう珍しくない。精神的ストレスが主な原因らしく、時が来れば治ると本にあった。しかし、驚きはしたがダニエルの性格と妹の本性を知っているだけに、そこまでショックでは無かったと思う。それ故、現状に戸惑っている。そんな彼女にアデルは一緒にリヴィエラ国に行かない?と告げた。いよいよ病状が悪化し、医療大国のリヴィエラの医術を頼ることになったのだと何でもない事のように話した彼女は、エスターに今は伯爵家にいない方がいいと言う。あなたの症状も治るかもしれない。シレーネ夫妻からも是非と言われ、お世話になりますと頭を下げた。伯爵家の事務仕事は全てエスターが片付けていたのもあって最初父は渋ったが、異能を取り戻すためだと告げれば渋々応じた。諸々の準備を終えていよいよ明日は出発の日。上機嫌の姉の部屋にやって来たミーティアは何故か自らの腹にペーパーナイフを突き立て悲鳴を上げた。お姉さまがいきなりっ、その言葉に父は激怒し、エスターは屋敷の地下に幽閉され、数日後には貴族専門の精神科病棟・ルミナス療養所に放り込まれていた。あれから何日経ったんだろう。出してくれと泣き叫ぶ声や、悲鳴があちこちから聞こえておかしくなりそう。食事も薄いスープにパンの切れ端のみ、栄養失調まっしぐらであとどれだけ持ちこたえられるか・・・。そんなある日、いつもの食事のトレーに紙片が。トレーを持って来たのは若い女性らしい。指示をよく読んだか確認されると包まれていた錠剤を口に含む。程なくして心臓に激しい痛みを感じた彼女は、意識を失い床に倒れ込んだ。目覚めるとベッドのそばにシレーネ夫妻がいて、エスターの無事を喜んでいた。そして二人が口にしたのは衝撃の事実。エスターが妹の殺害未遂で療養所に送られた日、アデルの病状が急変しこの世を去ったと言う。娘はあなたの無実を信じていましたと涙ながらに語る夫人から預かったのはアデルからの手紙。私が死んだ後はアデル・シレーネとして生きればいいと。エスターが飲まされたのは一時的に人を仮死状態にする薬。今頃、シレーネ氏の指示でエスターは死んだと病院で埋葬の手続きをされているはずだ。当然、棺の中身は空。二人はエスターをアデルとして守りたいのだそうだ。きっと大丈夫、大好きよ。と締めくくられていた手紙を抱きしめる彼女に氏はこれからリヴィエラに向かうと告げた。もともと療養に行く予定だったので、三人が出国しても怪しむ者はいないだろう。あちらではエスターの容姿をアデルに似た雰囲気に変えてもらう。アデルの容姿を覚えている者が少ないから元の顔をそういじらずとも髪色と瞳の色を変える程度で済むだろう。そうして一年後、エスターはアデル・シレーネとして夜会に参加していた。今夜は王太子・メイナードとミーティアの婚約が発表され、夜会は一気に祝賀ムード。今、ミーティアは聖女として崇められ、その異能で虚弱体質のメイナードを癒したのをきっかけに妃に望まれたらしい。エスターを捨ててミーティアに乗り換えたダニエルとカルミア侯爵家は話が違うと大層お怒りのようだったが、ミーティアが自分と深い仲だったとばらされたくなければと脅し、焦った父は理由を伏せてメイナードに頼み込み侯爵を円卓の末席に就けた。おかげで侯爵に席を取られたウォルス伯爵が王家に直談判しているそうだし暫く円卓は荒れるはず。シレーネ商会には様々な裏話が流れて来る。にしても、優しく清廉な聖女の仮面を被り続けるのも大変ね。数日後、自分が死んだとされる日にエスターの墓を訪れた彼女は、そこで第二王子のシリアスに遭遇。それから、同じく慈善活動に力を入れている彼とは何度か顔を合わせ、会話する機会も増えた。シリウスの従者・ライアンとアデルの護衛兼世話係のソニアがなかなかにいい雰囲気でつい応援してしまいながら、自分はシリウスのことが気になり始めていた。やがて、親交を深めていくうち、彼が幼い頃憧れていた初恋のお兄ちゃんだと気付き・・・。人生やり直しの物語なのですが、転生要素も含まれてます。実はこのヒロインとミーティアは若くして事故死した現代人女性で、互いに同じ愛読書の登場人物に転生していたのでした。エスターは意地悪な姉で、ミーティアは主人公。聖女の力に目覚めたミーティアが、王太子と結婚するハッピーエンドなお話。しかし、エスターも転生者だったので意地悪キャラにはならず、逆にミーティアの方は我儘自己中の前世の性格に引っ張られ真逆の立ち位置に。焦ったミーティアは自分に他人の異能を奪い取る力があることに気付き、手始めにと姉の力を習得。一芝居打って二度と出られない療養所に送ります。その後彼女はメイナードに近づき、その心を得て見事婚約にこぎつけたわけですが、亡きアデルの願いもあって新たなアデルとして顔を変えたエスターが王国に戻ってきたことで事態は徐々に変わっていくのでした。ここに来て失態が目立ち始めたミーティアはエスターがいたならと言われる度に疲弊して行き、それが能力の暴走を招き、と言った展開です。その裏でエスターはシリウスと想いを交わし、終盤命を落とす彼を救うべく奮闘。やがて、自分がエスターだと彼にバレてしまい、求婚されるも自分は一度死んだ身。もはやエスターの戸籍もないので、ならアデルとして嫁いでほしいと請われます。その後、出るわ出るわと多くの悪事が暴露され、崩壊していくミーティアを始めとしたメイナード陣営の末路を見るに悪いことはできないねぇとしみじみ。エピローグと番外編で本編ではあまり描かれなかった主役CPの幸せなお話が読めて良かったです。これぞ立場逆転ストーリーな内容でした。評価:★★★★☆
2026.06.09
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2026年5月刊アルファポリス文庫著者:狭山ひびき(敬称略)鬼を狩る一族である「道間」家に生まれながら能力を持たず、忌むべき色である赤髪で生まれたユキは両親から疎まれ、ある日、父によって山奥に捨てられる。夜が更け、凍死寸前の彼女の前に現れたのは、月のように美しい鬼の青年だった。道間を憎む彼に命を絶たれたユキは、気が付くと鬼の里にある彼の屋敷に寝かされていた。鬼の頭領である彼ーー千早はユキを鬼として生き返らせたという。そのまま彼に仕えることになったユキだが、なぜか千早は彼女を温かい優しさで慈しみーー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ユキ=鬼を狩る一族・道間家の長女。 無能力な上、赤い髪で産まれたため家族から蔑まれていた。 暁月千早=鬼の頭領。父親を殺した道間家を恨んでいる。 青葉=千早の従兄弟で側近。 牡丹=千早の父方の叔母。 水無瀬=現世に棲む鬼。鬼を狩る一族・道間家当主の長女ユキは、赤い髪で産まれたことから家族にいない者扱いされていた。せめて破魔の力を持っていれば扱いはまだ違ったのかもしれないが、不幸なことにユキにはその力の欠片さえも持ち合わせていなかった。それでもまだ使い道はある。腐っても道間の血を引く娘、いずれ婿を向かえて子供を産ませればいい。ただ、そのためだけに生かされていた。しかし、数年後に妹が生まれ、破魔の力が芽生えるとスペアの役割すら無くなった。妹が産まれた時点で覚悟はしている。そしてとうとう彼女は山奥に捨てられたのだった。しんしんと冷える山の中、肌襦袢一枚で放置されれいたユキは自分に死が迫っていることを感じ、目を閉じた。するとそこに足音が聞こえ、彼女の前で止まった。力なく瞼を開けるとそこには美しい青年が。鬼・・・。その類稀な美しさと色素の薄い髪を見て呟くと、彼は道間の女狐か、と吐き捨てた。そんな彼は死にかけたユキを見下ろし、「死ぬのか」と問いかける。もはや言葉を発する力もない彼女に、なら俺がお前を殺してやろう。そう言ってユキの首に手をかけた。目覚めると暖かい布団の中にいた。私、死んだはずでは?覚醒したことに気付いたのか、襖近くで立っていたあの鬼が「お前はあの時死んで鬼になった」と告げる。もうお前は道間ではないとも言われたが、実感がわかない。どうやら自分は人の理を外れ鬼として生まれ変わったらしいが、身体に変化はないように思う。それでも寿命が千年と聞いて流石に驚いた。とは言え、無能力の私が鬼になったとて出来ることは限られているだろう。彼は暁月千早と名乗り、鬼の頭領なのだそう。そして、先代頭領である彼の父を殺した道間を激しく憎んでいた。あの時彼は、ユキを慰み者にした後殺してその後死体を捨て置くつもりだったと言う。が、気が変わったと。道間の娘を下女にしてこき使うのも悪くないと酷薄な笑みを浮かべたが、こんな綺麗な客間に上等な布団で寝かされていたのを思うと随分と破格な扱いに思う。とにかく私はここで働けばいいのね。慌てて布団の上に正座したユキは宜しくお願い致しますと深々と頭を下げた。ユキの仕事は千早の身の回りの世話係。朝に弱いと言う彼を起こし、着付けを手伝った後はその髪を丁寧に梳く。すると、俺よりお前の髪を何とかしろと、彼は手ずからユキの伸び放題だった赤い髪に鋏を入れた。その光景に従者の青葉もビックリ。しかも椿油を用意してやれとその日のうちに部屋に届けられて、こんな高価なものをどうして、とユキは戸惑った。共に過ごすうち、ぽつりぽつりと千早が語ったのは道間家との因縁。鬼はあやかしではなく、神の亜種で本来は狩られる存在ではないらしい。しかも、道間の先祖は鬼と契りを交わして破魔の力を得ていた。だが、鬼の血を引くことは道間にとっての消せない汚点だったようで、鬼を狩ることでその汚点を消したかったのかもしれないと。お前の赤い髪も先祖返りによるものと聞いてユキも漸く腑に落ちた。今までも赤い髪や色素の薄い髪の者は何人も産まれている。それを忌み子と排除して来た道間家は鬼の血から逃れられないことに恐怖していたのだ。先祖返りの中には規格外れの能力を持った者もおり、彼の父を倒したのもその類だった。千早はこれ以上の犠牲を出すまいと多くの生き残りを連れて狭間に移り住んだ。そのことに反感を持っている者もいるはず、その選択を逃げただけと恥じ入る彼に、ただ、皆を守りたかっただけですよね、と悟すユキ。この語らいから二人の関係は徐々に変わって行った。道間の娘が頭領の屋敷の下女をしている。狭間に棲む鬼たちの間では周知のことだが、頭領が思いの外目に掛けている娘に徒成す愚か者はいなかった。青葉も最初は警戒していたものの、ユキが来て以来、ピリピリしていた主が穏やかになったことで信頼してくれるように。そんな最中、やって来たのは千早の父方の叔母である牡丹。青葉の母親でもある彼女はユキを大層気に入り、アレコレと世話を焼いた。年頃の娘が着る着物をいくつも注文し、着飾らせると千早も満足そうだった。ある日、ユキを嫁にしようと思う、と千早に告げられた青葉は反対しなかった。その後、千早に求婚されたユキも道間の生まれであることに悩みはしたものの、自分が彼に心惹かれているのを自覚していたのもあって受け入れた。しかし、この結婚は現世に残っている鬼たちを刺激した。おかげで千早の留守中にユキが攫われるという事件が。幸いにもここでユキの鬼としての力が発現したことで無事だったが、この件で現世の鬼たちが過激化しているのを思い知る羽目に。それから少し経った頃、ついに現世の鬼たちが道間家襲撃を目論んでいると言う情報が入り・・・。いやー、そりゃ恨まれるよ、道間家。しかも鬼だけでなく身内にも酷い事してたんだからこの襲撃も因果応報だと思います。この計画を聞いたユキもまた道間家に降りかかる禍いを止めようとはしませんでした。そうして千早たちと賑やかな日々を過ごしていた頃、道間家滅亡の報せが入るのでした。まだ子供の妹迄死んだのは悲しいけれど、そもそも自分は妹の名さえ知らされていなかったと思い当たります。バカみたいな習わしで爪弾きにされてた娘だけが生き残ったのを思うと、何か切ない。道間家を滅ぼした現世の鬼の頭・水無瀬は皆の安全を選んだ千早の方針とは相容れないようで一触即発の雰囲気に。最後の生き残りのユキを渡せと迫るも、最早彼女は一度死んで鬼になったこと、道間ユキではなく暁月ユキであるとその要求を突っぱねるのでした。中盤で、ユキを攫ったのもこの水無瀬の指示なので、それを思うと千早が現世の鬼と手を組むはずないんですよねぇ。続編があるとすれば水無瀬との決着かな。千早の立場的にザマァはないのかと聊かガッカリしてたんですが、まさか別口で全滅とは。割とこの系統では少数派な顛末だったかもしれない。おまけの番外編は本編の後日談で、ほのぼの話二本でした。評価:★★★★☆
2026.06.08
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