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11月中旬 ノーチェブックス お飾り妻のはずが、 冷徹宰相様(元ストーカー)に毎夜淫らに愛されています 佐倉紫11月18日 ガガガブックスf 聖女様の飼い猫 毛布野タビ12月9日 双葉文庫 救国の乙女はなぜ死んだのか 駄犬12月10日 Mノベルスf 安心してください! 偽聖女だと私を追放した殿下の判断は正しいです 2 桜井ゆきな12月11日 ルネッタブックス 恋は二の次、だったのに 元フライトドクターの密着取材は、恋の再始動でした(仮) 麻生ミカリ パイロットの元夫になぜか迫られたと思ったら、 秘密の子どもごと溺愛してきます(仮) 白亜凛12月18日 カラフルハピネスコミックス お父さん、私この結婚イヤです! 1212月21日 一迅社文庫アイリス お飾り聖女(仮) 高岡未来12月26日 KADOKAWA単行本 暴虐皇帝の子供を孕んだけど今度こそ逃げます 無憂 灰眼の王と、偽りの花嫁 豊川夢久(敬称略)
2026.10.15
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2026年9月刊スターツ出版文庫著者:小原燈(敬称略)奏祈六家の名門に生まれながら、両親と死別した経験から声が出ず、加護の光も見えない「無能」として、虐げられてきた茜。彼女は、ある呪いによって日の光を浴びられない最強の軍人・嶺士との身代わり婚を命じられる。しかし嶺士は、茜の赤い瞳を「美しい」と全肯定して深く溺愛する。温かい愛に触れる中で、茜の閉ざされた心は優しく解きほぐされ、やがて彼女に隠された伝説の「清姫」の力、そして声を失った過去の真実が覚醒していくーー。呪われた二人が唯一無二の愛で運命を覆す、和風シンデレラストーリー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 花宵茜=十二の年に両親と死別し、そのショックで声を失った少女。 黒鉄嶺士=影鬼を退治ずる影狩の隊長。 花宵晶子=茜の母方の従姉妹。優秀な奏祈師。 日向雅人=晶子の婚約者で、大店の後継者。 黒鉄千鶴=嶺士の母。元奏祈師。 花宵瑠璃=故人。茜の母。古来より、天音皇国では影鬼と呼ばれる異形に脅かされていた。だが、常人では到底太刀打ちできない存在にも天敵は存在する。神具と呼ばれる楽器と美しい声によって影鬼を鎮める奏祈師と加護を受けた光器で戦う影狩。花宵茜は、かつてその凄まじい力で「清姫」と呼ばれた奏祈師・瑠璃の一人娘だ。しかし、現在彼女は瑠璃の代わりに花宵の家を継いだ叔父の家の居候として使用人以下の扱いを受けている。叔父は勝手して家を出た瑠璃を花宵家の恥と嫌っていた。凡人と駆け落ちしたのならまだ許せた。だが、瑠璃が恋に落ちたのはなんと影鬼。その事実は秘匿されたのだが十数年後、屋敷の軒先に瑠璃と娘の茜が倒れており、深手を負ったらしい瑠璃は既にこと切れていた。叔父も寝覚めが悪いのか渋々茜を引き取ってくれたが、影鬼特有の赤い瞳をしており、その上、口がきけない姪を早々に持て余した。祝詞を紡ぐ奏祈師として声が出ないのは致命的だ。結局ただの厄介者のに金はかけられないということなのだろう。それでも茜は懸命に働いた。そんな彼女を忌み嫌い、こき使っているのが叔父の娘・晶子だ。優秀な奏祈師でもある晶子は瑠璃ほどではないものの、その腕を見込んで武具に加護を施してほしいと依頼が絶えない。加護付きの武具は光器となり、そのほとんどが影鬼の討伐部隊・影狩に卸され、残りは武具店で販売される。今日はその武具店の跡取りである雅人が来ているから晶子も機嫌が良い。二人は婚約しており、晶子が成人したら祝言を上げるそう。だが、茜は雅人のことが苦手だった。端正な顔立ちで貴公子のような立ち居振る舞いの彼に晶子は熱を上げているけれど、度々雅人から向けられる厭らしい目線に寒気を覚え、極力目を合わせないようにしている。あまりこっちを見ないで欲しい。でないと雅人が帰った後、嫉妬に狂った晶子に折檻されてしまうから。娘が姪に辛く当たっても叔父はいつも見てみないふり。この家で私を助けてくれる人はいない。漸く解放されて部屋代わりの納屋に戻った茜は、少ない持ち物の中から黒い石の耳飾りを耳朶に付けると再び外出。裏庭を抜けると遠くに山が見える。深く息を吸った彼女は心で母が教えてくれた祝詞を唱え、祈りを捧げた。数日後、門の雪かきをしていた茜は黒ずくめの男に声をかけられた。男は黒鉄嶺士と名乗ると当主に取り次いで欲しいという。そして身に着けていた手袋を外すと、冷たいだろう?そう言って茜の手に嵌めた。喋れないと知るや皆舌打ちをしたり面倒そうな顔をするのに・・・。彼のくれた手袋は耳飾りと同じく茜の宝物になった。翌日のこと、叔父に呼び出された茜は黒鉄嶺士に嫁ぐよう命じられた。全身黒ずくめの上顔を頭巾で隠しているなんてきっと不細工に違いない、影狩として有名な男でも結婚なんて御免だと部屋に閉じこもってしまったのだそう。どうやら、彼は昨日晶子に求婚しに来たらしい。彼女は既に婚約しているが、武具屋の跡取りと影狩の隊長では叔父としては黒鉄家に嫁がせたいと思うのは当然だ。しかし、雅人と結婚できないなら死ぬとまで言われてはなぁ。困り果てた叔父は、嶺士が花宵の娘を貰い受けたいと言っていたのを思い出し、ならお前でいいか、と思い至ったのだと。晶子からもそれがいいとせがまれてね。叔父は悪びれもせずそう言った。その夜、晶子のお下がりの振袖を着せられ、嶺士を待っていた。約束通りの時間に現れた彼は昨日のような黒ずくめではなく、影狩の制服姿だった。なんて、素敵な方・・・。彼は茜を見ると目を瞠り、その耳に光る耳飾りを見ると破顔した。もしかして君はいつもこの裏の山に向かって祝詞を唱えていないかい?何故それを?疑問に思ったが頷く、やはり君かと随分嬉しそう。話が違うと破談になってもやむなし、そう思っていた叔父は予想と違う彼の反応に困惑。本当にこの令嬢を貰い受けていいのだな?と問われ、戸惑いながらも承諾した。しかし、晶子は嶺士が美形と判るや私が行くと言い出たのでギョッとした叔父が慌てて引き留めた。その子ったら私の縁談を横取りしようとしたのよ。飽く迄悪いのは茜だと宣う晶子に嶺士はブチギレ。縋りつく晶子を振り払った。お前など彼女の足元にも及ばない。言われて、そんな無能より私が格下だというの?!さっきまでの態度はどこへやら、嶺士を睨みつける。茜、声をかけられ顔を上げた彼女に、この二人にお前の力を見せてやれと嶺士は微笑んだ。声は無かった。しかし、心で祝詞を唱えただけで茜の身体が凄まじい加護の光に包まれたのを、信じられないとばかりに叔父は唖然として見ていた。どう見ても姉以上の力なのではないか。そして晶子もまた、自分より遥かに強大な力の奔流を見て敗北感を味わっていた。悔しくなってつい、その子は影鬼との混血なのよ!と花宵家の秘密を暴露。しかし、嶺士はそれがどうしたと興味なさげな反応を見せると、茜を促し立ち去った。彼女の荷物を取りに納屋に寄った嶺士は酷い扱いを受けていたと悟って何とも言えない気持ちに。持って行くのはこの耳飾りと嶺士がくれた手袋だけでいいという茜が愛しくなり、馬で皇都に向かう。黒鉄邸に着いたのは翌日の昼。日中なのにほとんどの雨戸が閉まっていて薄暗い印象を受けた。が、外観とは裏腹に使用人の美桜は明るく、嶺士の母・千鶴は茜を歓迎した。あれから十日、買い物に出ていた茜は影鬼に遭遇、それを倒し襲われていた少女を助けたはいいが、嶺士が何故か日の光で大やけどを負ってしまった。聞けば、六年前、彼は影鬼の呪いを受け、日の光が天敵になってしまったのだという。痛々しいやけどを治してあげたくて、これは皆を癒してあげられる詞なの、母が教えてくれた祝詞を唱えた。すると見る見る火傷が治って二人はビックリ。これは呪いも解呪できるのでは?と期待したが、さすがに無理だった。やはり、その影鬼を見つけ出し倒さなければならないようだ。一方、晶子は茜の才を目の当たりにして嫉妬に狂っていた。父はもう関わるなと言うけれどこのままじゃ収まりがつかない。そんな彼女の耳に何者かが語り掛け・・・。希代の奏祈師と影鬼の混血なんて、まぁ凡人なわけないよね。晶子はそれにいち早く気付いていたので茜を虐めていたのです。それ+婚約者がちょっかい出してたのもあって面白くない気持ちも判る。この晶子の気持ちも判らないでもないんですよ。父親から瑠璃を越えろと期待をかけられ必死に努力するも、やはり清姫には程遠いと失望されてはやるせない。だからと言って虐めて良い理由にはならないのと、暗黒面を影鬼につかれて雅人と共にとんでもないことをしでかします。そして、嶺士ですが、過去に茜と会ったことがあり、あの耳飾りは黒鉄家当主に代々受け継がれているものをお守り代わりに彼女に渡していたのです。再会した時は痩せ細って大分印象が変わっていたので気付かず、花宵の娘=晶子と思い込んで求婚。当の晶子が嫌がってくれたおかげで探し求めていた茜を宛がわれたのは本当にラッキーでした。っても、大抵身代わりの方がお目当なのはデフォですから。最終的に二人の愛の力で因縁の影鬼を倒すことに成功した嶺士の呪いは解け、茜の父が突然変異の影鬼だったことが判明。このお父さんと瑠璃さんとの出会いとかちょっと気になります。評価:★★★★
2026.10.14
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2026年7月刊蜜猫F文庫著者:当麻咲来(敬称略)伯爵令嬢ベアトリスは、孤児ルチアの愛らしさに心を奪われ、彼女は自分の『推し』だと目覚める。そんなルチアを助けたことで騎士団長ユージーンと出会う。彼は王都を守る騎士団長で、縁談相手だった。やがてルチアが彼の捜していた姪だと知り、推しの幸せを願う二人は結婚をして三人で家族になることに。「貴女は俺の運命の女神なんだ」推しのための結婚のはずが、一途な侯爵様に甘く求められ蕩ける溺愛生活が始まってー!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ベアトリス=無気力な伯爵令嬢。ルチアと出会い推し活に目覚める。 ユージーン=王立騎士団団長。ベアトリスに片思いしていた。 ルチア=孤児。後にユージーンの姪と判明し引き取られる。 ローラ=ベアトリス付きの侍女。 ナタリア=前エヴァリット侯爵夫人。ストラーゼ侯爵=信心深いことで有名な貴族。大商会を運営するダルトン伯爵家の末っ子・ベアトリスは恵まれ過ぎている環境故に夢中になれるものも無く怠惰で無気力な日々を過ごしていた。せっかく綺麗に生まれたのに勿体ない。母・ゾーイは、引きこもり気味の娘の将来が心配で堪らないらしい。もう二十歳なのだから早くお嫁に行って安心させてちょうだい。そう言ってどっさりとテーブルに積まれたのは釣書と絵姿。面倒くさい、でも確かにもう私、そろそろ行き遅れに近いのよね。とは言え、自分に母のような立派な妻になれるんだろうか。そもそも人にも恋愛にも興味がない。こんなんじゃいけないと以前侍女のローラから推し活はどうでしょう?と薦められたけれど、あまりピンと来てなかったのよね。大人気小説「恋する聖女様」のヒーロー・アレクサンドロスの大ファンで、それを生きる糧にしているローラは毎日楽しそうだ。彼女の場合は架空のキャラだけど、何を推すかは自由だそう。釣書を読むのにも飽きて、良いご縁があるようルトリス神様にお祈りしてきます。そう言うとそそくさと立ち上がった。お母様は信心深いから助かった。神殿に行くと言えば解放してくれるのではと言う目論見が当たってほくそ笑む。神殿の廊下には信者からの奉納品が飾られている。ダルトン伯爵家名義の品を観ながらふと足を止めた。ある一角から全てとある貴族の名の奉納品ばかり。相変わらず凄いわね、ストラーゼ侯爵は。財産のほとんどを寄進してるんじゃないかしら。礼拝堂に入ってルトリス神に祈りを捧げる。どうか私にも心から愛する存在が出来ますように。願ったのはそんな些細なこと。組んでいた指を離すと、隣に黒髪の騎士がいてビックリ。素敵な人・・・。思わず見惚れてしまったがあまり凝視してても失礼か、と立ち上がる。失礼します、小声で言うと頭を下げて礼拝堂を出ると神殿で飼われててるんだろうか、白い子犬がいてこちらを見ている。あら可愛い。思わず破顔すると「そなたの願いはきっと叶うだろう」急に頭に響いた声に驚いて辺りを見回す。該当者が見当たらず、気のせいかと待っていたローラと合流し、馬車止めに向かったが待機しているはずの馬車が見当たらない。どうやら指示の行き違いで帰ってしまったらしい。まぁ、歩けない距離でも無し、たまには歩こうと大通りに歩を向けた。民たちの活気的な様子に思わず笑みが浮かぶ。そんな中目に留まったのは四、五歳くらいの女の子が街頭に立ってパンを売る姿。なんてかわいい子なの!?顔立ちは整ってるし声も愛らしい。感じたことのない胸の高鳴りに戸惑った。もしやこれが推しを見つけたってこと?女の子に近づき、中腰になるとおススメを二つ貰える?と声をかけていた。砂糖とバターたっぷりのパンを一つ受け取ると一つは女の子に手渡す。飲み物を買って来てくれたローラに礼を言い、パンにかぶりつく。美味しい。ルチアと名乗った少女は相次いで両親を亡くし、孤児になったのを見かねたパン屋の女将が面倒を見てくれているそう。恩返しのためにこうして手伝っているのだと聞いてその健気さに身震いする。やっぱり可愛い、屋敷に連れて帰りたい。が、ローラに止められ我に返った。ならせめて、とルチアの籠に入っていたパンを全て買い取ると明日店にも行くわと約束する。受け答えがしっかりしてるし、きっと母親の躾がいいのだろう。漸くローラの気持ちが判ったわ。自分にも推しができて初めてベアトリスの心は満たされたのだった。ふと見るとルチアが売り上げの入った皮袋を忘れている。慌てて追いかけると、ルチアが黒づくめの男たちに腕を引かれ、大きな麻袋に入れられそうになっいぇいる。ルチアっ、そう叫んで間に入ったベアトリスは身に覚えのない力を使っていた。何もかも止まっている。まさかこれって時間停止?そんなことより、と我に返って我に返り、犯人からルチアを奪い取ると脱兎の如く走り抜ける。しかし、引きこもり生活の弊害か、あっという間に息が上がって立ち止まってしまった。絶対体力つけよう。ゼーハゼーハーと呼吸しているうちにいつの間にか魔法が切れたのか、男たちが迫って来た。危機一髪のところ、助けてくれたのは先程の騎士。あっという間に賊を叩きのめすと大丈夫ですか?と声をかけられた。彼の話では最近、ルチアくらいの年齢に子供の誘拐が増えているらしい。じゃあ、今のも?そう思うとゾッとする。パン屋で暮らしているそうだけどまた狙われたら大変だ。念のため警備が厳重な伯爵家で預かると進言。ユージーンと名乗った騎士はパン屋の女将に言伝を部下に頼むと、呼び寄せた馬車に三人を乗せた。ゾーイはルチアの可愛らしさに大興奮し世話を買って出て、今は風呂に入らせると浴室に連れて行った。が、数分もしないうちにルチアを伴い戻って来て、握りしめていたものをユージーンに渡した。兄君・エリオット様ですよね?ルチアが首から下げていたネックレスはロケットになっていて、中には小さな絵姿が入っていた。黒髪の青年と茶色の髪の女性はルチアの両親だろうか。ロケットを見て、ユージーンは「兄です」と言って項垂れた。お母さんはどうした?片膝をついてルチアに目線を合わせ尋ねると、既に亡くなってるという答えに彼女を抱き寄せた。君は俺の姪だ、君だけでも生きていてくれて本当に・・・。そう言って声を詰まらせる彼の姿に胸が痛んだ。ユージーン・エヴァレット侯爵。王立騎士団団長でもある彼にはエリオットという兄がいた。しかし、爵位を継ぐ前にメイドのタニアと恋仲になって駆け落ち。彼は必死に二人を探したけれどようとして見つからずでやっと手がかりを見つけた時にはエリオットは流行り病で亡くなっていたという。ならせめてタニアとその娘だけはと探し続けたが、まさか偶然助けた子が姪だったとは夢にも思わず。ありがとうございます、ベアトリス嬢と感謝された。ゾーイはエヴァレット侯爵家とも親交があったからエリオットに気付けたのだ。多分、自分だけなら全く気付かなかったはず。自分はただパンを買い、救出の手助けをしただけ。ほとんどがユージーン自身の手柄ではないか。そのやりとりを見ていた母はなんて運命的な出会いなんでしょうと大はしゃぎ。実はエヴァレット侯爵家からの釣書もあったの気付いてた?ゾーイの言葉に、え!?探してみると三冊目に彼の名前と絵姿が。ユージーンは妙に嬉しそうだし、もしかしなくても本当にあれって神のお告げだったの、とオロオロ。大層乗り気の彼から後日求婚書が届いて、二人の結婚が決まった。ルチアはユージーンが引き取ることになり、ベアトリスも喜んだ。手続きは済んでいるので入籍後は二人の子として侯爵家で暮らすことになる。五か月後、挙式の日に漸く前侯爵夫妻に対面したベアトリスは、義母に当たるナタリアの態度に色々納得がいった。お義父様は温厚で優しそうな人なのになぁ。気位ばかり高いいけ好かない女性。それがナタリアの第一印象だ。そりゃ、ユージーンが会わせたがらないわけだわ。うちのことも下賤な商人風情と見下してたし、なんでかユージーンのことも馬鹿にしてたのが気になる。後に聞いた話によれば、エヴァレット侯爵家はバリバリの文官家系で、騎士になった次男を疎み野蛮人と疎んでいるらしい。元々、長男贔屓だったのもあって親子仲も良くないと。ルチアも母に任せたら大変なことになりそうで、そう言って険しい顔をした彼に同意する。推しと暮らせるのだし、彼の決断はよくやったとしか思えない。どちらにしても、私もお義母さまと仲良く出来そうもないから。そうして始まった新婚生活。ゾーイの教育の賜物か、ルチアもちゃんと貴族令嬢に見える。義父には悪いが、碌でもない事をしそうなので義母を領地に連れ帰って貰った。まったく、タニアさんの悪口をルチアに言うなんてどういう神経してるんだか。おかげで烈火のごとく怒り狂ったユージーンに追い出されたのよね。あれには自分も腹が立ったからよくやったと夫を褒めたい。なんてったって、彼もルチアの大ファンだものね。推しの幸せは自分の幸せと同義。同担と結婚出来て本当に嬉しいわ。ルンルン気分のベアトリスは、実はユージーンから熱烈に惚れられ、姪をだしに求婚されたのだとは夢にも思っていなかった。それから暫く経った頃、巷では未だに子供の誘拐事件が頻発。どれも神殿近くで起こっていたのと目撃証言から神殿関係者の犯行ではと思われているが、捜査協力を頼んでも断れまくりで一向に進展しない。しかも、パン屋の女将の話によると何度かルチアの行方を聞かれたらしく、あまりにのしつこさに騎士団長が引き取ったと言ってしまったという。だがまぁ、犯罪者がわざわざ騎士団長の家に乗り込んでくることは無いだろう。パン屋の女将が口を噤んで害されたらルチアが悲しむ。一方、その頃、二人の留守中の屋敷にナタリアが訪れ、ルチアが連れ出されたと連絡が入り・・・。子育て+聖女ものです。神のお告げ通り、トントン拍子に結婚が決まり、推しである義娘を溺愛していたベアトリス。そのうち、夫のユージーンからも想いを告げられ、かつてない幸福を味わってました。実は子供の失踪事件は、聖女捜索と関係していて、それを指示していたのは莫大な寄付によって神殿を思うまま支配していたストラーゼ侯爵。しかし、神殿は神の御告通り聖女を探してたのに、ストラーゼ侯爵は単なるロリコン。この身にドンピシャなルチアを我が物にせんとしていました。そんな男にナタリアが手を貸したことでルチアはローラ共々連れ去られてしまい大ピンチ。こうなったら神さまから貰ったこの力で、と意気込むベアトリスはユージーン共々神殿に乗り込みます。やがて二人は黒幕と対峙し、という展開です。あの姑、やっぱりやらかしたか~。まぁ当然、ユージーンの怒りを食らい、ストラーゼ侯爵共々厳しい罰を受けることになるのですが、本当に聖女だったルチアを精神的に追い詰めたり、罰が当たって当然。無事救出されたルチアの願いは早く弟か妹が欲しい。無邪気に笑う彼女の横には神の使いである神獣・フェリルウが寄り添う姿が描かれて物語は幕。ファンタジー味の強い内容でしたが、今まで無気力だったヒロインが推し活にハマってどんどんアグレッシブになっていく様が共感も出来て面白かったです。評価:★★★★☆
2026.10.13
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2025年7月刊レジーナブックス著者:美杉日和。(敬称略)我が家はいつでも可愛い妹を中心に回っていた。両親はいつも妹を優先し、妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。大好きだった人形や誕生日のプレゼント、そして今度は私の婚約者。幼い頃からの婚約者アレン様を妹が寝取り、彼の子を身ごもった。妹は私に婚約者を譲るよう迫り、両親たちも了承した。ただ彼らは知らない。アレン様が自身の領地運営を全て私に任せていたことを。その領地は破綻寸前であることも。そう、彼の資産も性格も、全てにおいて不良債権だったのだ。今更いらないと言われても、モラハラ男なんてお断り! 婚約解消した後は自由自適に暮らすつもりだったのに、なぜか幼馴染の冷徹宰相に婚約を申し込まれて……!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 オリヴィア=節約上手の才女。婚約破棄されたのを機に家を出た。 マルク=宰相。オリヴィアに片思いしている。。 ユノン=オリヴィア付きの侍女。 アレン=オリヴィアの元婚約者の顔だけ男。 シーラ=オリヴィアの妹。本当にあんなクズ男と結婚されるつもりですか?身支度を手伝いながらぼやく侍女・ユノンの言葉にオリヴィアは苦笑した。自分でもわかっている。だが、貴族の婚約は謂わば「契約」だ。相手がどんな性格破綻者だろうが、相手は侯爵。格下のこちらからは婚約の解消はできない。それにもう、挙式は三か月後に迫っている。そんなことより、アレン様も所帯を持つのだからいい加減しっかりしてくださらないと。義母に当たるラルド前侯爵夫人に頼み込まれて侯爵家の仕事を手伝わされている身としては、今後もこんな生活が続くのかと思うといささかうんざりしている。ただでさえ、このサルート男爵家のことも父はオリヴィアに丸投げ。おかげで毎日大忙しだ。どうしてこう私の周りの男たちは自分の仕事もできないのっ!なのに、彼らはオリヴィアに感謝一つしない。特に両親は次女のシーナを猫可愛がりして、オリヴィアのことは放ったらかし。完全なる姉妹格差で育った身としては家族への情も薄れつつあった。アレンの方は見目と侯爵という地位のせいで自他ともに認めるプレイボーイ。一時に何人も相手にしているらしくそのうち刃傷沙汰になるのではと気が気でない。ユノンが心配するのも当然なのだ。ユノンは元々冒険者だった。しかし、依頼をこなしている最中に大怪我を負い仲間に捨てられた。死にかけの所をオリヴィアに拾われ怪我が治った後は侍女として働いている。腕っぷしも強いので護衛代わりにもなるし、彼女のさばさばした物言いも気にいっているオリヴィアとは主従というより親友に近い。ユノンにしてみれば恩人が不幸になるのが判るだけに不安なのだろう。挙式間近になってもこうして意思確認してくるのだ。そんなある日のこと。いつものように仕事をしていると珍しくシーナがやって来て、アレンを譲れと宣った。またいつものおねだりか・・・。いくつになっても何かと私のものを欲しがって。呆れて大きく溜息を吐くと、アレン様はぬいぐるみやアクセサリーじゃないのよ。そう簡単にどうぞ、とはあげられないの。妹の頭でもわかるように噛んで含めるように諭すと、だって私、アレン様の子供を妊娠してしまったのだもの。と見下すように微笑んで見せた。お父様とお母様に話したらお姉様に譲ってもらいなさいってぇ。続く言葉にオリヴィアは頭を抱えた。そういうことか、最近仲良さげだなと思ったのよ、この二人。私に仕事を押し付けて妹と浮気とか、正気なの!?あの男!!妹の口ぶりでは両親は本当に婚約者を挿げ替えるつもりなのだろう。となれば、こちらが何を言おうと状況は覆らない。やってくれたわねぇ、ホント。その翌日、アレンから正式に婚約破棄された。正直言えば好きでも何でもないので別段ショックもない。ユノンに言わせれば、良かったじゃないですか、あんなクズ男にお嬢様は勿体ないです。と上機嫌。まったくもってその通りで、これを機に祖母から相続したオリヴィア名義の領地に引っ越すことにした。でもその前にグラン宰相にお詫びして招待状を送った家に新婦が変わる旨手紙を送っておかなければ。それにしても、お嬢様が出て行ったらこの男爵家とラルド侯爵家は大変でしょうねぇ。容易に想像がつくのかユノンは愉快愉快と大笑い。夜会の日、グラン宰相に会うべく早めに会場入りしたオリヴィアは目当ての人物を見つけて少し時間を取ってもらった。マルク・グランはグラン公爵家の嫡男で、今年新しい宰相になった。オリヴィアとは幼馴染であり、その縁で王家御用達の教会の使用まで手配してくれた。なのにこんなことになってしまって・・・。本当に申し訳ないけれど、と前置き結婚がだめになったことを告げた。婚約破棄されたの、私。そう告げるとマルクは驚愕して、一体どうして!?と掴みかかった。経緯を話すと、あいつ・・・!!と怒りの表情を見せた。少しすると落ち着いたのか教会の方はこちらでキャンセルしておくといい、これからどうするつもりなんだ?と尋ねた。祖母の遺してくれた領地に移り住む旨話すと、考え込んでいた彼は頼みたいことがあると言う。取り敢えず、僕の話に合わせて欲しいと言われ、頷いたがまさかこんなことになるなんて。どうして私も乗せてくれなかったの?用があるから先に出ると言っておいたのに、周囲に意地悪な姉と印象付けたいのかシーナはオリヴィアを責めた。横にいるアレンも身重な妹に対して酷い女だ。まだ根に持っているのかい?と完全に悪者扱い。続く悪口に呆れているとオリヴィアの後ろに控えていたマルクが前に出て、婚約者の妹と浮気したくせに随分な物言いだなとアレンを睥睨。婚約破棄の原因が完全にアレンの瑕疵だったと判り、周囲の貴族達も最低ね、とヒソヒソ。だが、婚約を破棄してくれてありがとう。これで僕はオリヴィアにプロポーズできる。そう言って目の前に跪くマルクを見つめてオリヴィアは茫然。合わせてくれって、こういうことだったのね。彼の真意は不明だが、ここは従っておこう。プロポーズを受けると大きな拍手が起こり、その中にいつのまにやら国王までいてびっくり。やっと相手を見つけたのか、とこういう楽しい事が大好きな国王は喜んでいたが、マルクから約束通り、陛下も婚約者をお選びになって下さいねと進言。分が悪いと思ったのか、国王はそそくさと戻って行った。数年前即位した王にはまだ妃がいない。派閥とか色々あるから決めるのも難しいんだろうけど、いつまでも独身なのも拙い。それでマルクと約束したのが年下である彼が婚約したら自分も結婚に本腰を入れるというもの。事情を聴いてオリヴィアは聊かガッカリ。でもまぁ、彼には迷惑かけたわけだし偽の婚約者役も甘んじて引き受けよう。そう思っていたのだが、彼は本気だった。大衆の面前で恥をかかされたアレンが何か仕掛けてくるかもしれないと早々に領地に引き上げた彼女はユノンに呼ばれて玄関に赴くとグラン公爵家から大量の荷物と使用人たちがいて仰天。全てマルクからの贈り物だそうで、午後には本人も来ると言う言伝が。当人から実はずっと好きだったと言われて戸惑ったが、その気持ちが嬉しかった。しかし、今後起こるであろう問題を思うと気が重い。父が反省するならばこの手は使うつもりはなかった。だが反省の意志は感じられずでついに彼女は家族を見限った。身の程をわきまえずにこさえた借金、全て領地を担保にしてると知ったらどうするでしょうね。到底返せる額ではないから父は全ての領地を失うはず。それでも足りるかどうか。そうなれば家は没落、領地も無いので爵位返上になるだろう。今更後悔しても遅いのよ、お父様。愚かな家族の先行きを思うと苦しくなったけれど、爵位返上ともなれば娘のオリヴィアも平民になるということ。いわばこれは諸刃の剣だ。マルクとも結婚は出来なくなる。静かに涙を溢す彼女をユノンが慰め、こういう時はパーッと美味しいものでも食べに行きましょうと誘った。目いっぱいおめかしをしたのはその足でマルクに会う為だ。彼とちゃんと話し合わなきや。しかし、道中、二人の乗った馬車はアレンとその手下たちの襲撃を受け・・・。ザマァ系です。全部捨ててスッキリしたかと思いきや、オリヴィアの価値を今更ながら痛感したアレンが今更ながら悪あがき。とんでもないブラック案件な終身雇用契約書を作って、ユノンの命と引き換えにオリヴィアにサインを迫ります。どこかに捕まっているらしいユノンは早々殺されることは無いはず。とオリヴィアは時間を稼ぎますが、暴力を振るわれ意識は朦朧。それでも必死に抵抗しているとマルクが騎士団を率いて飛び込んで来てアレンを取り押さえ、オリヴィアは救出されるのでした。アレンはこの件でマルクから多額の慰謝料を請求され、これまでの女遊びがこれまた大問題に発展。積み上がった慰謝料で丸裸にされるくらい何もかも持っていかれる羽目に。シーラは没落した家にも戻れず渋々アレンに嫁いだことが語られます。オリヴィアは一時平民になったものの、過去にとある功績を上げていたことで、その褒賞として国王から一代限りですが爵位を賜ることに。おかげでマルクとの結婚も成り、元々アレンと挙式するはずだった教会で式を挙げる二人の様子が描かれて物語は幕。内容としては、よくあるテンプレ展開。あと才媛な貴族令嬢の割にはフランクすぎる言葉遣いが少々気になりました。評価:★★★☆
2026.10.12
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2026年9月刊スターツ出版文庫著者:野口ひよら(敬称略)科学オタクの転生女官・麗麗は、美貌の宦官・冥焔と共に後宮の謎を解く毎日を送っていた。そんなある日、隣国から新たな妃・甜甜がやって来る。彼女はなんと、麗麗と同じ転生者だった。愛らしい容姿と笑顔、そして巧みな話術を持つ甜甜は、瞬く間に後宮の人気者に。しかし、なぜか麗麗だけを執拗に敵視する甜甜。影で巧妙に嫌がらせを行い、あたかも麗麗が悪いかのように悪評までを立てる始末。さらに同時に、後宮内で不可解な事件が多発し始め…。冥焔と共に調査を行う麗麗は、事件の裏にはいつも甜甜がいることに気づきーー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 麗麗=後宮の下級女官。科学オタクだった前世の記憶を持ち、冥焔と共に後宮 で起きる怪事件の謎を解き明かしていく。 冥焔=麗麗とコンビを組んでいる宦官。 その正体は、早逝したと言われている先帝。 甜甜=焱国の従属国・霜からやって来た仙術使い。後に徳妃になる。 瑛琳=麗麗の主で四夫人の一人。 恩雲=焱国皇帝。麗麗に「ガリレオ」という称号を授けた 雪梅=瑛琳妃宮の女官の一人。わざわざ冥焔が呼びに来たということはまた怪異か。連れて来られたのは尚儀局にある仏殿。そこに設置されている仏像が血の涙を流し、焦った女官が皇帝に国の一大事と進言。どうやら自分が呼ばれたのは本当にそれが凶兆なのか審議しろと言うことらしい。しかし、いざ実況見分をしてみればなんのことはない、数々の偶然が重なった自然現象と判った。血涙の正体は塗料を補強するため塗られていた蝋が溶けて流れたもの。偶然か故意かは不明なれど蝋が赤く染められていたから血のように見えたのだろう。遠目で見たら血に見えない事も無いので驚かれて当然だ。それに元々それっぽい言い伝えの詩があるそうで、深読みした女官が取り乱したのも仕方ない。一先ず、入り口や窓に日光を遮断する布を付けるようアドバイスして殿を出た。後宮への帰り道、冥焔から従属国の霜から朝貢のため使節団が来訪すると聞かされた。一応、従属国の形を取ってはいるものの、昔から色々因縁がある国らしい。所謂招かれざる客ってことか。含みある話に麗麗は納得した。従属国らしく貢物を持参したという名目で痛くもない腹を探られるのは業腹だ。だから、あの手の騒動は早めに解決したかったとも。確かに凶兆が出たなんてのは折り合いの悪い国に知られたくないだろう。わざわざこんな寒い時期に来なくても・・・。元々、霜は雪国で雪深くなる前にとの判断なのかもしれないが、遥々数十日もかけてご苦労な事で。慣れない巫の衣装を着せられた麗麗は冥焔共々、皇帝の後ろに控えていた。霜一の仙術使い・甜甜の使うのが本当に仙術なのか見極めろと命じられたが、挨拶代わりにと披露されたそれはどちらかと言えばマジックに近い。ある程度器用で薬品に詳しければ可能。あの煌びやかな衣装も手元に注視されないための目くらましだろう。でもまぁ、見慣れない焱の者たちには充分仙術に見えているはず。それにしてもあの甜甜が妃として主上に献上されるとは。現状、空席となっている徳妃としてどうか、と霜の使節団の責任者にゴリ押され、受け入れないわけにはいかない。皇帝に代わって「ありがたく」と答えた冥焔はどことなく不機嫌に見えた。実のところ、甜甜を徳妃に、という打診は霜から前以てされていた。しかも、あの歓迎の宴では、もうじき奉納祭でございましょう?ならばこの甜甜は必ずお役に立つはずとまで言って来た。徳妃の不在と奉納祭、なぜ霜はそうまで焱の後宮に詳しい?これはもしかしなくてもあの男の入れ知恵か・・・。恩雲と冥焔の叔父に当たる玄策は大罪人でありながら逃亡し現在行方知らずになっている。恐らくどこかの国に潜んでいるはずだ。それが霜だとしたら?甜甜もきっと何か言い含められているだろう、仙術使いと言うのも厄介なのに妃に迎えねばならないとは。麗麗の検分によりあれは手妻(奇術)だと報告されているとはいえ、何か他に隠し玉を持っているかもしれない。恩雲は、霜から付いて来た女官は全て帰国させ、麗麗を甜甜の宮に送るよう指示した。しかし、冥焔はそんな危険な宮に、と反対したが、あの女の見張りには麗麗が最適解なのと、何より主上の命だ。聞き入れないわけにはいかなかった。女官が全て帰国してしまったので甜甜が賜った宮には世話をする者がいない。なので、他の宮から数名ずつ一時的に派遣されることになった。瑛琳妃の所からは麗麗と雪梅。ムードメーカーの雪梅は頼もしい先輩だ。冥焔からの命で自分は仕事をしっつ甜甜の監視もこなさなければならない。この人、ちょっと得体が知れないんだよなぁ。あの宴の帰り道、冥焔が立ち去った後、宮の前で待ち伏せされていきなり「あなたも転生者なのでしょう?」と話しかけられて面食らったものだ。でも、冥焔をイケメンと称してた辺り、本当に彼女も自分と同じ転生者なのかもしれない。一先ずしらばっくれてみたけれど、ふとした会話によってバレてしまった。しかし、それを機に甜甜からの嫌がらせが始まった。自分から水を被り、私が麗麗を怒らせてしまったからとさも被害者のようにふるまう。やられた、と気付いても後の祭り。以来、何かと自分のせいにされてすっかり宮で浮いた存在に。雪梅が居なければ完全に孤立する所だった。時を同じくして後宮では霜製の丸薬が流行。広めたのは当然、甜甜だ。頭痛、疲労に効果ありと大層な人気で、出所が出所だけにもしやヤバイ薬ではと心配になる。冥焔もそう思ったのかとっくに成分を調べさせていた。結果はシロ。原材料は葛粉と特に害のない生薬が少々。人間の脳は案外単純だ。話題の仙術使いから頭痛や疲労に効くと言われれば、それを飲めば治ると思い込む。結果本当に頭痛が治まったりするから侮れない。正に「病は気から」と言う奴だ。だが、近頃宦官が勝手に部署変更してしまうという騒動に始まり、女官同士による刃傷沙汰、女官の集団自殺未遂など見過ごせない事件が次々起こっている。どう考えても怪しいのは甜甜だ。彼女が後宮に棲み始めた途端に起きたことなのに、なぜか誰も疑わず、それどころか人気は鰻登り。それにこの宮の女官たちの様子も段々おかしくなってきていた。プロらしからぬ怠慢さ、というか。女官にも先輩風をふかしてやりたくない仕事は後輩にさせるなんてのはままあるが、まったく仕事をしないなんてことはない。ましてや、臨時の助っ人できているのだからサボっていれば自分の主人の評判に傷がつく。だからこそ雪梅はひとしきり張り切っていた。なのに、皆、甜甜に心酔して仕事も投げ出すなんて。しかし、唯一の砦であった雪梅の様子までおかしくなり麗麗は焦った。すぐさま冥焔に報告したものの、彼の態度はいつもと違っていて・・・。シリーズ三作目です。従属国でありながら焱国に何か含みがある霜国。そこには恩雲と冥焔の叔父であり最大の敵である玄策が潜んでいました。彼の入れ知恵により、とある目的をもって妃として入り込んだ甜甜は麗麗と同じく転生者でした。しかし、仲間意識はなく、どこか麗麗を敵視している態度。度重なる嫌がらせにさすがの麗麗もグロッキー気味だった頃、後宮では事件が相次ぎます。いつもなら冥焔が先導して麗麗と事件解決に乗り出すはずが、何か理由があるのか遠ざけられ、彼女は戸惑います。雪梅の豹変など、ダメージはマシマシ。心が折れかけていた頃、秘密裏にコンタクトを取って来た冥焔の心情を知って麗麗はある決意をして、という展開です。彼女の行動は見事甜甜と霜の思惑を打ち破ったものの、実は霜にはもう一つの目論見があって麗麗はピンチに陥るんですけど、冥焔が間に合って事なきを得るのでした。漸く、明確なる敵が姿を見せて来た感じですかね?恩雲と冥焔も決して気を抜いてるわけじゃないんですけど、敵側のやることが姑息。甜甜も実はそこまで悪人ではなくて、これはもう産まれた国のせいとしか。彼女が霜で受けていたらしい仕打ちを思うと色々歪んでしまったのも判るような。焱に産まれていれば麗麗とも仲良くなれたのかも。今回は逃げられてしまったので再登場はありそう。それと予想以上に麗麗に惚れていた冥焔と、ちょっと恋心を自覚し始めた麗麗。結婚まで行き着くのには道のりが険しそうだけど、恋愛方面も取り敢えず進んでいて良かったです。評価:★★★★★
2026.10.11
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12月3日 アース・スター文庫 銀狼陛下と無能の花嫁 マチバリ 大正帝都トロイメライ 予知夢の乙女と契約結婚 汐屋キトリ ヴァニラ文庫 悪女と呼ばれた死に戻り令嬢ですが、 堅物の大公殿下に溺愛されて契約婚をやめられません 百門一新 ヴァニラ文庫Miel 幼なじみのレスキュー隊員と子育て婚はじめました ~片想いだと思っていたら彼の愛が熱すぎます~ 木登12月5日 ベリーズファンタジー ちびっこ花嫁はビンボー公爵家を改革中 たちばな立花 前世で何もできなかった分、今世は何でも挑戦したい ~冷遇令嬢の万能フリーランス生活。 困るのは私を追い出した実家の方でした~ 雨宮れん12月10日 ベリーズ文庫 不運続きはずだったはずがスパダリ御曹司との偽装婚で最愛妻になりました 若菜モモ 極上のギャップ男子シリーズ タイトル未定 にしのムラサキ 天才外科医の密かなる執愛 ~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~ 伊月ジュイ 脅迫婚?! ~悪い噂の絶えない社長が、 実は誠実で一途だったなんて信じられません!~ 蓮水ちま ベリーズ文庫with バツイチだけど恋をしてもいいですか きたみまゆ マーマレード文庫 わたくし悪徳夫人ですから、 お飾りをやめて実家に帰らせていただきます~(仮) あさぎ千代春 天敵同期の爽やか貴公子は策士な御曹司でした ~恋人のふりさえ仕組んだ彼は、激重愛で逃がさない~(仮) 田崎くるみ12月18日 ヴァニラ文庫Miel 金融界の帝王が政略妻の私に5年越の愛を注いできます(仮) 御厨翠(敬称略)やはり12月期は多いですね
2026.10.10
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2026年8月刊ベリーズファンタジー著者:別所燈(敬称略)王太子の婚約者として国に尽くしてきた侯爵令嬢・セフィリア。突然の婚約破棄&追放宣言に気を失うも、次に目が覚めた時には晴れやかな気分だった! 「これからは好きに生きるわ!」さっそく追放先の未発展な辺境領の環境改善や改革を進め、念願の快適ライフを満喫! 次第にセフィリアを頼って多くの人が流れ込んできて…? 一方王家では、王都から人が離れていくことに焦りを覚えていた。彼らは忘れていたのだ、国の実務を担っていたのはセフィリアだったことをーー。役立たずの無能令嬢はお役御免ですよね? 隠れ才女の痛快セカンドライフ、開幕! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 セフィリア=もう用済みだと婚約者に捨てられた侯爵令嬢。 複数属性の魔法を使える稀有な存在で前世の記憶を持つ。 イアン=黒竜を討伐した魔法騎士団長。王命でセフィリアと結婚する。 リナ=セフィリア付きのメイド。 エドガー=セフィリアの補佐をしていた官吏。 カシアズ=王太子。セフィリアの元婚約者。 この国の王家はつくづく腐っている。大切な主であるセフィリアを散々利用した挙句、身勝手な理由を付けて婚約破棄したあのバカ王子めっ!王宮から持ち出されたセフィリアの荷物はあまりにも少なく、大人二人でも悠々座れるスペースがあった。セフィリア様がいないならこんなところに未練はない。偶然にも同じ気持ちだったらしい元官吏のエドガーと向かい合い、元王宮メイドのリナは国王一家への恨み言を言い合っていた。こんな酷い事って有り得る?誰の努力でこの国が回っていたと思うの!?鼻息荒く吐き捨てたリナにまるっと同意すると、ホント、最低だよ、あの王家は。セフィリア様を追い出した上に僕まで退職したんだから、一週間もしないうちに大混乱だろうなぁ。容易に想像がついて二人は人の悪い笑みを浮かべた。リナとエドガーが乗る小さな馬車の前には四頭立ての貴人用の馬車が走っている。乗っているのはこの度辺境伯位を賜った魔法騎士団長イアンとディアール侯爵令嬢セフィリア。二人は王命により結婚したばかり。これからイアンが領主を務めるノルディア地方に向かうのだ。まったく、どうかしてるわ、あの人達。国のために黒竜討伐を果たしたいわば英雄への褒賞が私との結婚と魔物が蔓延るノルディア地方の統治だなんて。彼が倒した黒竜が住んでいたノクス・モルティス山はノルディア領にある。黒竜が死んでもその影響で魔物が大量発生していると聞く。それに作物が育てにくい土地らしく、これは早急に金策を考えないと領民諸共飢え死にだ。イアンは黒竜討伐の報奨金を使うと言っているけれど、それだって数年もすれば底をつく。イアンは平民ながらその才能だけで魔法騎士団長にまで登り詰め、数々の強力な魔物を討伐して来た。彼を支援する貴族も多く、国民からは絶大な人気を誇る。まぁ、それが気に食わなかったんでしょうね。王族のくせにやることが姑息なのよ。イアンが気にしたらいけないので、なんとか溜息を堪えつつ忌々しいカシアズの顔を思い出し、怒りに震えた。先王によって取り決められたセフィリアとの婚約をカシアズは死ぬほど嫌がっていた。お前のような金髪が誇り高き赤い髪の王家に混ざるなど!そう言って彼女を遠ざけた。ある時期から王宮の一室に閉じ込めると本来王族がするはずの書類仕事を丸投げ。社交の場にも一切出さず、食事も薄いスープと固いパンだけと言う質素を通り越したメニューに給仕するメイドのリナはいつも嘆いていた。セフィリアの生家・ディアール侯爵家は数年前、魔物の襲撃により領地に多大な被害を出した。それを婚約者の実家の窮状だからと王家が援助してくれた。当然、その返済のため両親も頑張ってくれているけれど、利子代わりに働けと命じられたなら従わなければならない。閉じ込められたのはその頃からだ。補佐をしてくれたエドガーがこんなのおかしいですってと憤慨するのを、仕方ないのよ、そう言って寝食の時間も惜しんで働き続けたのだ。だが、状況が変わったのは三日前のこと。珍しく謁見室に呼ばれたセフィリアはカシアズから唐突に婚約破棄を突きつけられたのだった。理由は侯爵家からの返済が滞っているから。それと複数属性の魔法の使い手ながらどれも中途半端で役に立たないから。自分への批評はともかく、返済が滞っているという話に疑問符が。実家の面々は皆仲が良い、借金のカタに娘が王宮に連れて行かれた際は、両親は泣きながら懇願してくれたのだ。お前を連れ帰るために頑張るから、そう言っていた父が約束を破るはずない。とにかく、そういうことだ。ショックで茫然としているセフィリアに声をかけ、もう次の婚約者は決まっている。だからその指輪を返せ。未練など無いので素直に外して指輪を返すと不思議な感覚が襲い、彼女は眩暈を起こしてその場に昏倒したのだった。熱に浮かされている間に奇妙な夢を見た。観たこともない建物に不思議な乗り物。セフィリアは黒髪の女性の姿でこれまた不思議な魔道具を忙し気に叩いていた。そんなある日、彼女は倒れそのまま亡くなった。これは私の前世だ。漠然とそう思った。目を覚ますと会社員だった頃の知識が流れ込んで来る。その影響か今まで大人しく従っていたのが馬鹿らしくなる。前世の自分の死因はまさしく過労死。ブラック企業で能無しの上司にいいように使われて死んだ。正直、あのままこき使われてたらセフィリアもヤバかったと思う。何とか無事だったのはリナとエドガーのおかげね。なんと自分はこの国の英雄・魔法騎士団長イアンと結婚するらしい。婚約破棄された令嬢は所謂傷物と同義の存在だ。本当ならマルグリット王女と結婚するはずだったのに、平民と結婚なんて御免と駄々をこね、結局不要になったセフィリアを押し付けられてしまったのだ。申し訳なさ過ぎて居た堪れない。ってか、用済みなら実家に返してくれればいいのに、約束を破ったのだから会うのは禁止だなんて!無愛想だが、イアンは良い人だった。もう爵位持ちになったのに、セフィリアに敬意を払い恭しく接してくる。もしよければご両親が住む王都にタウンハウスを買うのであなたはそこで過ごされては?と気を遣われて慌てて固辞した。禁止されてるのに近所になんて棲んだらあいつらに何を言われるか。それに家族にも迷惑をかけてしまう。なのでこのままノルディア領に連れて行って欲しいと懇願した。願いを聞いてくださるならリナとエドガーを辺境伯家でも雇って欲しいと言うことだけ。あなたにとって不本意なら白い結婚でも構わない。そう言うと一瞬不満そうな表情をしたイアンは、それについては追々考えましょうとそっぽを向いた。流石は辺境、一週間ほどかけてやって来たノルディア領は聞きしに勝る枯れた地だった。多分、土が酸性なのね。これじゃあ麦が育たない。それでも過去には領主もいたのだから特産品みたいなものはあったはず。城に歴代領主の日誌が残ってればいいんだけど・・・。イアン共々魔法騎士団の団員たちもこちらに越して来たので、領民たちと協力して城を大掃除。何とか厨房と食堂を使えるようにして賄いを振舞った。皆貧しい生活を強いられていたのだろう、賄いは大好評で多くの民たちが手伝いに訪れ数日で生活空間は確保できた。イアンと団員たちは生活を脅かす魔物退治に精を出し、そのうち周辺の魔物の出現は格段に減った。キラービーを倒してくれたおかげでやっと本業に戻れます。メアリーと名乗った中年女性がお礼にと持ってきたのは大量のハチミツだった。聞けば、この地は養蜂が盛んだったそう。実のところ、魔法騎士団の維持費など出費がかさみ魔物を倒すと出て来る魔石を売って収入にしようと思っていた。だが、ハチミツも貴重な甘味料。貴族にも人気があり、蜜蠟で作る蝋燭は高く売れる。キラービーも蜂を大きくしたような魔物で生体は蜂そのもの。メアリーによればキラービーの巣からも良いハチミツが取れるそう。ならばとイアンに魔石だけでなく、キラービーの場合は巣も持ち帰ってくれるよう頼んだ。魔石とハチミツは隣のシエロ領で高く売れ、その収益で宝の持ち腐れだった大浴場の修理もできた。平行してセフィリアは土魔法を生かし、畑を耕してみた。何とか酸性の土を中性にできたのでまずは料理にも使えるハーブを育て、その葉で淹れたハーブティーはイアンも大層気に入ったようだ。彼の副官のカイルがこの土なら蕪もいけるんじゃ、と案が出て試しに植えたらかなりの収穫量になった。でも、なんでこんなに実りが早いの!?実は奥様は土魔法の天才なのでは?と真顔のカイルに言われたけれど、カシアズの指摘通り、中途半端で使い物にならなかったのに・・・。と言うより、魔力が上がっているような。以前と現在、変わったことと言えば王宮を出たこと、それと指輪?まさか、ね。王宮から届いた元同僚からの手紙を読んでエドガーはほくそ笑み、リナにもそれを伝えた。セフィリア様と俺がいなくなったから仕事が回らなくててんやわんやだってさ!あのバカ王子が仕方なしに指揮してるらしいけど無理無理。官吏に無理難題押し付けて退職者続出らしいと聞いてリナもいい気味ねぇ、と嬉しそう。その後イアンに多分今ならセフィリア様がご実家とコンタクト取れると思いますよ、と進言。イアンの飼っている魔鳥に手紙を託して漸くセフィリアは返事を受け取ることが出来た。しかしその内容は驚くべきもの。何と借金は返し終わっていたと言う。それで、接触を禁じたのね。婚約破棄の理由も嘘。しかも私の瑕疵にして実家に慰謝料まで請求していたなんて。ワナワナと震える彼女をイアンは気遣い、これからも好きな時に手紙のやり取りをしていいと言い、落ち着いたら王家にバレないようご家族をここに招待しようと言ってくれた。厚意に甘え、それから家族と連絡を取り合っていると色々面白い事が判った。今王家は赤字続きで裕福な貴族に税を上げると通達しており、猛反発を食らっているらしい。そもそも赤字の原因は彼らの無駄遣いのせいなのだから苦しいなら宝石でも売ればいいのに。しかもカシアズが入れあげていた伯爵令嬢が散々貢がせておきながら王家が危ないと知るやトンズラ。今必死で行方を捜しているとも。ディアール侯爵家は事業が当たり、今は商会を運営しているそうだ。なら、ハチミツや蜜蝋の蝋燭を売ってもらえないかしら。産地を伏せれば上手く行くだろう。その思惑は大当たり、魔石もかなり売れて来たし、セフィリアの魔法のおかげで土も生まれ変わりかつてない程の豊作でノルディア領はかなり潤って来た。イアンとの関係も変わり始めた頃、度重なる失態により王家への信頼は地に落ちた。貴族からの支援も無くなりいよいよ焦ったカシアズはセフィリアの有能さを今更ながら痛感。そこで、彼はセフィリアを連れ戻すため、卑劣な手段に打って出て・・・。ザマァ系です。身勝手な王太子が嫌った元婚約者はとんでもなく優秀で、追い出したことを死ぬほど後悔します。ってか、セフィリアが有能だったことなんてカシアズが一番わかってたはずなんですけどね。実はプレゼントと称して嵌めさせていた指輪は、嵌めている者の魔力を吸収して溜める魔道具でした。最初からセフィリアの魔力の高さに目を付け搾取していたわけです。ついでに借金のカタに仕事を丸投げ。でも好きな女が出来たから用済みとポイ捨てしつつ、借金返済が滞ってると嘘を吐きそれを瑕疵として慰謝料要求とかセコ過ぎて草。そんな得難い娘をむざむざ目障りだった英雄に嫁がせたら、追いやった辺境の地は見る見る発展。王家よりそっちを頼ろうと人々はノルディア領に向かいます。やがて貴族からも見放され、慌ててセフィリアを呼び戻そうと一計を案じ、ノルディア領で騒ぎを起こすのですが、これが拙かった。このカシアズの行動はセフィリアをマジギレされることになり、という展開です。結局、彼らは墓穴を掘ることになり王家の者たちは皆投獄され、身分は剥奪。新たな王として国民に支持されたイアンが就き、妻としてセフィリアが支えると約束して物語は幕。才女を怒らせると怖い、と言うか悪役がアホ過ぎると言うか(^_^;)前世の記憶と知識はおまけみたいなものです。評価:★★★★☆
2026.10.09
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2026年9月刊ベリーズ文庫著者:にしのムラサキ(敬称略)ランチクルーズに参加した栞奈はテロ事件に遭遇。助けてくれたのは居合わせた警察官・啓人だった。お礼をしたいと言うと偽の婚約者を演じて欲しいと頼まれる!二つ返事で引き受けるが、気づけば硬派で実直な彼を好きになっていた。しかし、その矢先に「形だけの夫婦になりたい」と言われて…。実は凄腕SAT隊員だった啓人。囲い込んだ栞奈を屈強なカラダで翻弄し、秘めていた激愛を刻み込んでいき!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 竹田栞奈=多趣味な会社員。事件に巻き込まれた時に忍野に助けられた。 忍野啓人=エリート機動隊員。栞奈に偽装婚約者役を頼む。親友とランチクルーズをするはずが、二日酔いで寝坊した友人は遅刻して乗船できず。仕方なく一人で参加することになった栞奈は、忍野と名乗る男性と知り合った。彼もまた友人が二日酔いで寝坊し、乗船に間に合わなかったらしい。カップルや夫婦など、一人での参加者は彼と自分だけ。明らかに浮いていて気まずいのだろう。良ければ下船までご一緒しませんかと誘われ、栞奈は笑顔で頷いた。ここはワインが美味しいのだと聞き、早速貰いに行くと悲鳴が聞こえた。何事かと振り向けば、ナイフを持った男が船長らしき男性を羽交い絞めにしている。傍には抜き身の日本刀を構えた男もいた。目出帽を被って黒い繋ぎ姿をした二人は、とある死刑囚の名前を挙げると船長を助けたければすぐに釈放しろと喚いた。膠着状態の中、海上警備隊と上空からヘリが近づく音が聞こえる。すぐに人質を解放するよう警告され、犯人は逆上。固まる栞奈に目を付けるとこいつも人質に、と恐ろしい相談をしていた。すると、側にいた忍野が手を挙げ、僕の妻なんです。代わりに僕が人質になりますので、そう申告すると手招きされるまま船長の隣に正座した。そこに一瞬の隙が産まれた。目の前に黒服の男たちが降りて来たかと思うと素早く忍野が立ち上がり、ナイフを持った男を取り押さえた。ドラマの撮影かと思う程、彼と男たちの動きが凄かった。難を逃れた栞奈を心配し寄り添ってくれていた中年女性が「あれ、きっとSATよ」と呟く。SATって、テロを扱った洋画でよく出て来る機動隊のことだろうか。そう言えば犯人達が釈放を要求した死刑囚も確かテロリストだったはずだ。あっという間に制圧された犯人二人は捕縛され、警備隊の船に乗せられていく。それを見送っていると栞奈は船長ともども保護され念のため診察を受けたあと、事情聴取を受けた。こういう経験をすると後にPTSDを発症することがあるらしい。異常を感じたらすぐに精神科を受診するよう言われ、栞奈の土曜日は終わった。その夜、一緒に行くはずだった千鶴から電話が来てめちゃくちゃ謝られた。無事だったんだから気にしないでと逆に慰める羽目になりなんだかなと思う。話題は変わって、千鶴から彼氏が出来たと報告を受け驚く。いやー、その彼氏、土門さんって言うんだけどその人も遅刻して乗船できなかったって聞いて~~。要は港に置き去りにされた者同士意気投合したってことね。お互い酒好きなのもあって居酒屋で盛り上がり、交際することになったのだそう。でもあれ、もしかして土門さんって・・・。今も傍にいると言うので千鶴に忍野さんのご友人ですかと聞いてもらうと知らないと言われ首を捻った。でも彼は確かに。自分にしては珍しく気になる異性に巡り会えたと言うのに、再会できるあてがないとは、つくづく恋愛に縁がないんだなぁ。ちょっぴり残念に思いながら、明日の釣りのための準備を始めた。三か月後、披露宴の受付役を頼まれ席に着いた栞奈は、隣に座った新郎側の友人を見てビックリ。彼もまたお久ぶりですと会釈し、あの後大丈夫でしたかと尋ねられた。元気に頷いた栞奈は多趣味なおかげで忙しくて思い出す暇もなかったと答えると、良かった、そう言って微笑まれた。今日は千鶴と土門の結婚式だ。スピード婚になってしまったのは所謂デキちゃったからで、報告された時は相変わらずカッとんでるなと思う。でもなんだ、やっぱり土門さんの友人なんじゃないの。まぁあの夜は二人ともかなり飲んでたみたいだからなぁ。ちょっぴり恨めしく思いながらもおかげでこうして再会できたのだラッキーと思っておこう。それはそうと結局お礼を言えず仕舞いだった。披露宴の後、改めてあの日のお礼を言うと仕事ですからと予想外の答え。実は警察官なので、人質の交代を申し出るのは当然なのだと。だから気にしないで欲しい。そうは言うけれど、もしSATが来るのがもう少し遅かったら?でも本当に何かお礼を。そう言い募ると、ならと彼に頼まれたのはなんと婚約者のフリ。親代わりの祖父母から結婚をせっつかれてまして・・・。しかし、見合いを強要されるのも面倒、交際相手も今はいないので困っていると言う。そこで仕方なしについ、もう結婚間近の彼女がいると嘘をついてしまったらしい。早く紹介しろと休みの前になると電話が来て今更嘘だと言うわけにも行かず困っているのだと。一日だけでいい、俺の婚約者のフリをしてくださいと頭を下げられ、それでお礼代わりになるなら。そう言って栞奈は快諾。翌週末、迎えに来た忍野の車に乗って最終的な打ち合わせをした。お互い敬語では怪しまれる、あと名前で呼び合おうと決めていざ「栞奈」と呼ばれるとドッキドキ。フリと言うのがチト残念ではあるけれど、ボロが出ないよう頑張ろう。しかし連れて行かれた忍野家はとんでもない豪邸で早くも腰が引ける。忍野の祖父母は年齢の割に矍鑠としており、栞奈を見ると祖母は大喜び。お祖父さんはちょっと頑固そうだけど気になって妻共々玄関まで迎えに来る辺り、やっぱり孫が可愛いんだろうなとホッコリ。早速こんな素敵なお嬢さんがいながらいつも仕事仕事なんでしょ?夫人のお小言が始まり、隣で忍野氏も無言で頷いている。いやまぁ、SATならしょうがないですよ。表面上はニコニコしながら心の中で呟き、忍野に同情した。彼は警察官だと言っていたが、あの身のこなし、彼もSATなのではと予想している。SATはテロリストの天敵なので狙われないよう身内にさえ素性を明かさないと聞いた。赤の他人の栞奈に明かさないのは当然のことで、たまたま気付いてしまったからと言っても確認しようとは思わない。今は彼の婚約者役を精一杯勤めよう。だが、多趣味故に付いた知識により栞奈は予想外に忍野の祖父母に気に入られてしまった。あああぁぁ、実はベランダだけじゃガーデニングも張り合いがないとかつい言っちゃったら、ならうちの裏庭で好きなものを植えたらいいとまさかの答え。でも、お祖父さまは園芸が趣味らしく、良い土なんだよなぁ。大根とか白菜とかここでなら育てられる・・・。いいんですか?つい尋ねてしまい、しまった!と思わず忍野を見ると肩をすくめられた。こうして毎週末、栞奈は忍野邸に通うことになったのだった。出来る限り送迎する。そう言って、なんかすまない、と忍野に謝罪されたが、これは自分のせいでもあるのだ。いえいえ、私もベランダではできない野菜を育ててみたかったし、友人が出来たみたいで嬉しいですと微笑んだ。そうして、忍野邸の一角を借りて始まった畑仕事はやっぱり楽しい。栞奈が来れない平日は二人で世話してくれているらしい。収穫出来たら鍋にしようと約束し、土産に自宅で栽培している椎茸を持参した日は七輪で焼いてもらって大満足。椎茸ってマンションで育てられるのか?忍野は驚いていたけれど、キットを買えば一本で三回は収穫できる。説明すると忍野の祖父母からもさすがだと喜ばれた。そうだ、今度の釣りでブリが釣れたらブリしゃぶにするのもいいかもね。畑があるので最近あまり行けてないけれど、祝日前夜に釣り仲間から久しぶりにと夜釣りに誘われている。元々、興味を持ったものに嵌ってしまう性質だったのもあって、最初は謎解きだけだった趣味もそこから推理小説、読書全般、更に派生してガーデニング、釣り、魚を捌けるようになったら料理と、増える一方で大忙し。恋愛などせずとも栞奈は充分満ち足りて幸せだった。そこに忍野という気になる存在が現れ、こうして婚約者のフリを続けているが、自分が本当の恋人でないことにモヤモヤするようになっていた。それに優しい老夫妻に噓をついているのが辛い。あの子、今日も仕事なの?考え事に気を取られていた時にふいに夫人から尋ねられ、そうみたいですと水やりを再開する。訓練か任務なのか、彼は時々一週間か十日ほど音信不通になる。送迎できなくてすまないと謝られたけど自転車でも通える距離だし、そちらの方が大変だろうにと心配になる。忍野氏の話では彼の両親はアメリカのテロで亡くなったのだそう。忍野はその時十歳でしばらくふさぎ込んだ後、警察官になりたいと打ち明けたのだとか。忍野夫妻は最初反対したが彼の決意は固く、結局許さざる他なかったと言う。念願の警察官になっても啓人はいつもピリピリしていた。でも栞奈さんをここに連れて来てからそれが無くなったんだ。家内と二人、それが嬉しくてね。あとがとう、栞奈さん。忍野氏に感謝され、それが本当ならこんなに嬉しいことはないと思う。三人で和気藹々とお茶していると仕事を終えた忍野が帰って来た。まったく、お前はいつも栞奈さんを放ったらかして!くどくど続くお説教に、仕方ないだろとうんざりした様子の彼に業を煮やした夫人は、投資用に買ったマンション、あなた達の新居にしなさいととんでもない発言を。婚約してるんでしょ?もう入籍しなさいよ。夫人の言葉にまたもや無言で頷く忍野氏を何とか説得し帰路に着くと忍野はずっと黙っていたが、栞奈さんさえ良ければ結婚しないかとまさかの言葉。確かに、全部嘘でしたと打ち明け二度とあの屋敷に行かないと言うのも手だ。でもそうなると二人は大層悲しむだろう。それに私も忍野さんのこと・・・。一旦、返事は保留にしたが、何度考えても答えは同じ。プロポーズ、お受けします。そうして二人は数日後には入籍、忍野邸近くのマンションで新婚生活が始まった。これは所詮は契約結婚。君に他に好きな人が出来たなら離婚に応じる。と彼は約束したけれど、自分の想い人は彼なのだから栞奈が離婚を切り出すことは無いだろう。しかし、その頃から忍野の仕事が忙しくなり、帰ってこない日が増えた。そんなある日、栞奈は出先で仕事中のはずが彼が外国の美女とホテルから出てくる姿を見てしまい・・・。好きなのは自分だけ、と思い込んでいたらまさかの不倫現場(?)を見てしまい、栞奈は思い悩みます。と言っても、これは完全なる勘違いで、ホテルとは言っても出て来たのはラブホとかではなく高級ホテル。折しも国際会議間近だったので、要人のボディガードもおり、その女性はとある国の要人の護衛でした。たまたま、釣り仲間の経営する居酒屋に出向いた、栞奈はそこで先輩隊員とともにいる忍野と遭遇。ぎくしゃくしていたのを先輩隊員に気付かれ、詳しくは言えないが、こいつは奥さんにベタ惚れだ浮気はあり得ないから信じてやってくれと弁明。後にテレビで美人過ぎる護衛、とあの美女が紹介されて漸く不倫疑惑は晴れ、二人は仲直り。しかし、後日、ボランティアで謎解きイベントスタッフをするため出掛けた栞奈が立てこもり事件に巻き込まれ、という展開です。ヒーローがSATと言うこともあってやはりこの手の事件が起こりましたが、いやーやっぱりカッコいい。そりゃ、恋愛に興味なかった栞奈も惚れちゃうよ。実は栞奈もかなり美人なハイスペック女子なので、忍野も彼女に一目惚れし、何とかコンタクトを取りたがっていたり、瓢箪から駒とばかりに結婚に持ち込んでガッツポーズしてたりと天然な彼女と違い結構な策士でありました。事件から数か月後、どうしても栞奈の花嫁姿が視たいとの希望で、結婚式を挙げる二人のやり取りが描かれて本編は幕。おまけの番外編は後日談で、第一子・空の誕生と、その一年後、忍野の両親の墓参りをするというエピソードでした。ラブコメ要素の強いお話ながら、忍野の心情やSAT隊員のシビアな日常などシリアスな場面も。程よく緩急があって面白かったです。評価:★★★★★
2026.10.08
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2026年7月刊小学館文庫キャラブン!著者:朝比奈希夜(敬称略)王室を追われた元王妃セリーナは、彼女に忠誠を誓い続けた騎士エイベルとともに辺境の地を立て直し、やがて王国の歴史を変えた。主従の関係を超えて結ばれたふたりは、いまや領主夫妻となり、領地の再建に奔走している。前王に虐げられてきたセリーナとかつて竜族として差別されていたエイベル。誰よりも過酷な過去を生きてきたふたりは、今では誰もがうらやむ仲睦まじい夫婦だ。だが、そんな中、旧王族派である貴族たちが不穏な動きを見せはじめてー。無垢な愛で結ばれた元王妃と騎士のロマンス・ファンタジー、第二弾! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 セリーナ=ヒースター王国元王妃。エイベルと再婚し領地繁栄に尽力する。 エイベル=竜族の末裔でセリーナの夫。 ハンナ=セリーナの補佐をする政務官。フォルカー=ゼノビア帝国皇帝。前国王イドリスが討たれてヒースター王国はタルブ王国の統治下におかれた。王室は解体され、今はヒースター領となり、イドリスの首を取ったエイベルが侯爵位を賜り統治している。季節は巡り、ヒースター領では小麦の収穫も終わり、セリーナは新たなギルド創立のため毎日忙しくしていた。青のドレスは今やこの領地の顔だ。独自の染色技術によって生み出された青い布地から作られるドレスはタルブ王国の貴族達に大人気。注文が殺到して染織工房ギルドはてんやわんやだと言う。しかしおかげで職を得た者も多い。裁縫が得意なおかげでこんなにお給料が貰えるなんてと女たちに感謝された。エイベルはヒースターのもう一つの資金源であるアビス鉱山に向かい、鉱夫たちに労働環境の改革を伝えた。危険度の高さからイドリスの時からも鉱夫は他の仕事よりも給金は高い。エイベルが提案したのは所謂保険制度で、毎月給金から一定額徴収し運営費に充てると説明。多少でも今より給金が減ることに鉱夫からは不満も出たが、怪我で働けない間の生活が保障されると聞いて渋々ながらも応じた。それにこれからは休憩や休暇もしっかり取れる上環境も良くなるらしいし、なによりいつも難儀していた地下水のくみ上げのため水車も設置してくれると言う。初期費用はタルブ王から貰った褒賞金からの持ち出しだが、効率も上がれば採掘量も増える。あとはなかなかなり手がないと聞く金細工職人たちの店をセリーナと回って、こちらも小規模ではあるがギルド化計画が進んでいる。修行中の生活に必要な支援があれば名乗りを上げる者も出るはず。あの繊細な細工は蒼のドレスに映えるから今度の集まりでは合わせて付けてみよう。令嬢や婦人たちの反応を想像してセリーナの胸は躍った。それから暫くして令嬢たちの社交界デビューの日・デビュタントが執り行われた。タルブ王の代わりに領主のエイベルがデビューする令嬢一人一人に声をかけて行くのを見守っていると、「君はこの場に相応しくない」一人の令嬢に厳しく接する彼の姿に驚く。あの令嬢は・・・。セリーナが入場した時に聞こえよがしな陰口を叩いていた娘だった。侍女のマリーは憤慨し、殴りに行きそうだったのを慌てて止めたのだが、エイベルの耳にも入っていたのね。先王から乗り換えて領主の妻に収まった女。イドリスの悪行のせいでセリーナまで悪し様に言われるのは仕方ない事だ。諦めの境地で気にしないようにしていた。この政権交代劇は多くの者たちから感謝されたけれど、イドリスに従い甘い汁を吸っていた一部の貴族達にとっては面白くない事だった。エイベルには賄賂の類が一切通じないし、第二夫人を娶ってはどうかと薦めてもセリーナ一筋なので割り込む隙も無い。それでもまぁ、陰口程度なら可愛いものだ。問題は明らかに反抗の意を示している者たちである。エイベルに追い出された令嬢が泣きながら去っていくのを気まずい思いで見送っているとそこに招かれざる客が。アリオット伯爵とその息子、セリーナの父と兄だった。結婚するまでセリーナは父からよく殴る蹴るの暴行を受けていた。イドリスの嫁いでからも状況はあまり変わらなかったが、よくもまぁ顔を出せたものだ。二人はニヤニヤとエイベルを見るとあの子汚い竜の子せがれが立派になったものだと嘲笑い、私たちも城に呼ぶべきだろうと偉そうな態度。だが、セリーナに殴る蹴るの暴力を振るっていたあなた達を厚遇する気などないときっぱり言われて途端に狼狽えた。セリーナも肯定したことで、参加者たちは普通娘を拳で殴る?とヒソヒソ話し始める中、そう言えばとエイベルが副官に命じて持って来させた書類を広げた。タルブ王から速やかに規定の税を治めるよう命令書が来ていますよ、とニヤリ。払えないなら屋敷を売れ、それでも無理なら貴族位は剥奪だそうで。大方、娘夫婦から金を搾り取る算段だったのだろう。しかし、まさか王から最後通牒までされるとは夢にも思わなかった二人は嘲笑される中、アタフタと逃げ出していく。これに懲りてもうこちらには関わって来ないと良いのだけれど。エイベルに寄り添うセリーナの姿を、エイベルの統治をよく思っていないゴーベール伯爵とグリッサン男爵が忌々しげに見つめていた。その後、セリーナの希望で孤児たちを預かる慈愛院が設立。この施設はセリーナのたっての希望により建てられたもので、彼女は積極的に運営に携わった。職員たちも寡婦や夫や家族からのDVで家にいられなくなった女たちが多く、ここが新たな居場所になればと思っている。彼女たちはかつての自分を想起させる。施設の前に置き去りにされていたらしい赤子のミヤを見ていると無事産んであげられなかった我が子を思い出す。子が出来にくい身体になったのもあり、エイベルの子も産めるかどうか。そんな最中、多忙なセリーナの補佐役としてハンナという女性が雇用された。役職は政務官。まだ若いのにかなり優秀で、おかげで仕事も大分楽になった。故郷は隣国・ゼノビア帝国との国境近くの村だそうだけれど、あまり良い思い出が無いのか過去を話したがらなかった。アビス鉱山の採掘量も上がり、その収益で農業にも力を入れ始めた。が、農耕地のほとんどがあのゴーベール伯爵の領地であるため、あまり協力は得られていない。農民が望んでも領主があれではね。取り敢えず地道に説得して行くしかない。それから暫く経った頃、ゼノビア帝国皇帝フォルカーから招待状が。数日後の夜会に招待すると言う内容ではあるが、嫌な予感しかない。紅蓮の玉座、世間でのフォルカーの二つ名だ。彼はイドリスよりも横暴で血気盛んな男だ。反対意見など言おうものなら即座に首を跳ねられ、玉座が紅に染まったというのが二つ名の由来だ。相当ヤバイ男なのか?エイベルの問いに肯定すると困ったような顔をされた。しかし、この地の領主として赴かなければならない。うんざりしつつも急ぎ支度し、翌日の朝には隣国に旅立った。数年ぶりに顔を合わせたフォルカーは相変わらず高慢な態度だった。案の定、上手く取り入ったなと嫌味を言われ怒りを堪えるエイベルに寄り添う。その態度に鼻白んだ皇帝はなんとアビス鉱山が欲しいと言う。我が国の鉱夫も大勢いるのだ、労働力はほぼこちらの者たちによるものなのだから権利はあるとなんとも強引な言い分。指摘道理に確かにゼノビア人も多いけれど大半ではない、ほとんどがヒースター領の者たちだ。カチンと来たので思わず状況を説明し、それほどいうならかかった費用全てそちら持ちで返却くださるならと返答するとやはり逆ギレ。いや、どうしてタダでもらえると思ってるの!?近年、帝国は大赤字だと聞いている。その上、自国の鉱山は年々採掘量が落ちているのでは気が気でないのだろう。それにしたって聞けない話だ。丁重に断ってから下がると拙い事になったと皆で座を囲む。タルブ王国を敵に回すのはあちらも得策ではないと流石に判っているはず。このまま引き下がってくれれば良いけれど。しかし、やけにこちらの事情に詳しいのが気になる。まさか内通者がいるのだろうか。モヤモヤした気持ちが晴れない中、ゼノビア帝国からの密偵がハンナだと判り・・・。綺麗に終わってたので一冊で終わりかと思ってました。この二巻目ではエイベルに支えられ更に強くなったセリーナの心の成長も描かれており、様々な試練に見舞われつつも愛のパワーで打ち破って行く二人。信じていた人に裏切られて落ち込みつつも、ハンナには苦しい事情があったのでした。ったく、あの皇帝、人質取るとか汚すぎる。でも、エイベルは普段は人型でも本当の姿は竜。四面楚歌の状況下、彼の活躍は帝国を翻弄するのでした。にしても竜形態から人型に戻る際、服が元に戻ってるのはどういうからくりなんだろう。そこはツッコんじゃいけないところ?エイベルによってフォルカーは討たれ、ゼノビア側に加担していた伯爵と男爵、セリーのの父兄も捕縛された上、流刑に処されます。人質になっていたハンナの妹・モーリーも救出され、大団円で幕。スパダリ過ぎるエイベルがとにかくやたらと輝いていたお話だと思います。愛の力ってやっぱり凄いな。評価:★★★★☆
2026.10.07
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10月30日 ガブリエラブックス ツンデレ公爵様、悪役の姉にデレすぎです! 百門一新11月5日 ポプラ文庫ピュアフル 忌部家の娘と龍神の契約婚 麻生ミカリ11月6日 小学館文庫キャラブン! 後宮のモグラ寵愛はこりごりにつき、ご遠慮いたします 一ノ瀬千景 魔王に見初められた悪役令嬢は、王子と婚約破棄しない 宮野美嘉11月10日 レジーナ文庫 婚約者を想うのはやめました かぐや 私を追放したことを後悔してもらおう 2 ~父上は領地発展が私のポーションのお景と知らないらしい~ ヒツキノトウカ11月28日 新潮文庫nex 完璧な淑女のふしだらな契約 六ツ花えいこ12月4日 悪党のお父様、私と結婚してください 61月9日 ツギクルブックス 公爵令嬢は忠告をきかない ~未来の悪役令嬢は異世界転生メイドに我がままを貫く~ 有沢ゆう 嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに 風見ゆうみ1月12日 蜜夢文庫 寡黙なボディガードは箱入り令嬢を守り抜く(仮) 西篠六花
2026.10.06
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2025年11月刊レジーナブックス著者:千紫万紅(敬称略)我儘な妹ばかりを優先する両親に嫌気がさして、生家を飛び出した令嬢・マリアベル。第一王子レオナルドの侍女として王宮で働く彼女は今日も大忙し。というのも、三ヶ月後に迫った結婚式の準備に追われているのだ! そんなある日、マリアベルは婚約者のオズワルドに呼び出され、婚約破棄を告げられてしまう。--それも、妹のリリアンがオズワルドの子を授かったという理由で。衝撃の裏切りによって、幸せ真っ只中からどん底人生になることを覚悟したマリアベル。しかし、そんな彼女を周囲の人間が放っておくはずがなくーーどん底どころか、幸せがどんどん舞い込んでくる!? 虐げられ令嬢の逆転爽快ファンタジー、開幕! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 マリアベル=王子付きの侍女。 結婚間近だったが妹に婚約者を寝取られ破談になった。 クロヴィス=マリアベルに想いを寄せている公爵令息。 レオンハルト=ネムス王国第一王子。 リリアン=マリアベルの妹。 オズワルド=マリアベルの元婚約者。 エレノア=アウラ王国女王。ネムス王国王宮で第一王子付きの侍女として働くマリアベルは、数か月後の挙式を楽しみにしていた。お相手はラフォルグ侯爵令息オズワルド。片田舎出身の子爵令嬢の自分など到底受け入れられないと思っていたが、レオンハルト王子のお気に入りの侍女であると知るや、侯爵夫妻から大歓迎された。しかも夫人は大切な思い出のウエディングドレスまで譲ってくれて先日仕立て屋にサイズ直しを頼んだばかり。でも、まさかオズワルドから婚約破棄されてしまうなんて・・・。お前みたいにつまらない女より、リリアンの方が美しくて気が利く。初めて会った時はその生真面目さがいいんだと仰って下さったのに、奔放だが明るく社交的な妹に目移りした挙句、深い関係になり何と妊娠までさせていた。ごめんなさい、お姉さま。オズワルドの腕に張り付いて謝罪するリリアンの表情には罪悪感の欠片も見受けられない。またか、マリアベルは妹の性質を思い出し大きく溜息を吐いた。両親とそりが合わず、早々に家を出たので失念していた。リリアンはいつも大して興味もないものでも姉の物を欲しがり強請った。妹ばかりを猫可愛がりしている両親は当然ながら妹の味方で、意地悪しないでリリアンに上げなさいとマリアベルを窘めた。妹のこの自信ありげな様子からして、この一件、きっと両親も関わっている。いや、普通有り得ないでしょう。式までもうあと三ヶ月だっていうのに、こんな時迄リリアンの我儘を聞き入れるなんて。愚かな身内たちの浅はかな行動に眩暈を覚えつつ、オズワルドへの気持ちが急速に冷めて行くのを感じる。こんな最低な男、結婚する前に本性が判って良かったのかも。判りました。お好きにどうぞ、そう告げてさっさと仕事に戻ったけれど、やはりいつもと様子が違ったらしい。レオンハルトに何かあったのかい?と問われた彼女は元婚約者と家族から受けた仕打ちをぶちまけた。有り得ない、僕の可愛いマリアベルにふざけた真似をっ!そうは言いつつもレオンハルトにはちゃんと本命がいる。ルーホン公爵令嬢エリザベスだ。そのエリザベスもマリアベルを姉のように慕っているため、これが耳に入れば烈火のごとく怒り狂うことだろう。一先ず数日休みたまえ、主に勧められ一週間ほどの休暇を貰った。その間に一度実家に戻って婚約破棄に伴うと続けをしておかなければ。案の定、両親はリリアンがそう望んだからだとあっけらかんとした態度。姉なんだから譲ってあげなさい、とか、婚約者は本でもアクセサリーでもないのよ!とはいえ、言ってもどうせ堪えやしない。流石に悪いと思ったのか、オズワルドから相場よりかなり上乗せした金額がマリアベル宛に送られて来た。田舎なら土地付きのそこそこ大きな屋敷が買える額ではあるけれど、腹いせにパーッと使う気にはなれなかった。まぁ、どこかで必要になることがあるかもしれないから・・・。トランクに詰めて他の荷物と共に王宮からの迎えの馬車に積み込む。今回の件で文句があるなら出ていけ、と父に言われたもののもう既に出ているし仕事もしている。では絶縁ということで。きっぱり告げると振り返らずに馬車に乗り込んだ。仕事に復帰するとやたらと独身貴族に声をかけられ、その度にレオンハルトや友人のクロヴィスが撃退している。やれやれこうなると思っていたよ、嘆息したレオンハルトは、さっさと告白しないとずっと続くぞ。その忠告に腹を決めたのか、翌日クロヴィスから求婚されてビックリ。四つ下の彼のことは好ましく思っているけれど正直、そういう対象として見ていなかったから。実は初めて会った時から好きだったと言われてポカン。オズワルドと婚約が決まった時もマリアベルが幸せならと一度はあきらめたらしい。だが、今回の件でもう諦めないと言う。クロヴィスはあの最低男とは違う、でもまた婚約して裏切られたら?有り得ないと思いながらどうしても怖くなって、まだ婚約は出来ないけれどお付き合いならとクロヴィスの告白を受け入れた。マリアベルは美人で頭も良く、厳しいと評判の侍女長お墨付きの優秀な侍女だ。しかももうすぐ立太すると噂のレオンハルトのお気に入りの侍女。婚約破棄された経験があるとしても相手の不貞が原因だし、妻にするメリットは充分ある。レオンハルトもエリザベスもそれを懸念しており、躍起になっている独身貴族に先を越されるなとクロヴィスに釘を刺したのだった。そうこうしているうちに侍女長がマリアベルを養女にしたいと名乗り出てくれて、手続きが済めば彼女は伯爵令嬢になる。公爵家に嫁いでも問題ない家柄だ。なんだかどんどん外堀を埋められている気がするわ。嫌ではないのだが、本人を蚊帳の外にしているのが問題だ。そう言えば、本来なら今日が挙式だったのよね。あれから色々あり過ぎて瞬く間に三ヶ月経っていた。気晴らしにとクロヴィスに誘われブラブラしていると、教会の前で大騒ぎしている人々が。え?オズワルド様とリリアン?それにハインツ子爵夫妻とラフォルグ侯爵夫妻の姿も見えて、クロヴィスと二人、事の成り行きを見守った。まさかあの人達、私が予約していた教会をそのまま使えると思っていたの?しかも、婚約破棄したことを侯爵夫妻には内緒にしていたらしい。この娘は誰なの!?と捲し立てる侯爵夫人に茫然としている侯爵。呆れたように見物している民たちの視線が痛い。そのうち、リリアンに見つかってお姉さま、何とかしてよ~と泣きつかれた。オズワルドからは予約してるのになんで教会から締め出されたんだと掴みかからんばかりの所をクロヴィスに制止され、どうして破談になったのにそのままここが使えると思われたんです?しら~っと言い返すマリアベルに睥睨されてオズワルドはしどろもどろ。元々ここは私の結婚式ならと枢機卿様のご厚意で特別に使わせてもらえることになってたんです。その説明に漸く合点が行ったと彼は項垂れ、ここ使えないの~!?と泣きわめくリリアン。お腹の子に触るからとその背をさすりながら、なんで私がこの子の面倒を、とバカらしくなった。見ると枢機卿が表に出てきていて慌てて立ち上がり挨拶すると笑顔を向けられた。が、オズワルド達には厳しい目を向けこの件は国王に報告するときっぱり。観念した侯爵は覚悟を決めたようで、息子の襟首をひっつかむと馬車に放り込み、夫人と共に帰って行った。リリアンは身重なので、くれぐれも気を付けてやるよう子爵家のメイド達に託すとクロヴィスと共に王宮に戻った。この件は王と王妃をとてつもなく怒らせた。ラフォルグ侯爵にはオズワルドの廃嫡と降格処分が言い渡されたが、元々病気で退職したとはいえ、侯爵は騎士として王家に貢献していたこともあり、その程度の処分で済んだのは僥倖と言える。ハインツ子爵家は貴族位剥奪。リリアンは子供が生まれたら修道院行きが妥当だろうと沙汰が下された。しかし、マリアベルとクロヴィスとの婚約は許可されなかった。本当なら彼女にはもっといいお相手をと王妃は考えていたが、まぁ息子の補佐になる子ならいいでしょうと後押しをしてくれていた。なのに、王は隣国アウラの大使・キルデリクと結婚させると言って譲らない。隣国からのゴリ押しですか?愛してやまない王妃に詰められ、王が渋々語ったのは二十年前、アウラ王国で起こった悲劇。誘拐され行方不明になっていた第一王女・シャンタル。それがマリアベルなのだと聞かされ王妃は茫然。二年前、キルダルクが自国の女王に瓜二つのマリアベルを見て気が付いたらしい。しかし、未解決事件ではあるし、王女は死亡と処理されている。なので、輿入れと言う形でアウラに返還するよう密書が届いたと言う。ハインツ子爵はマリアベルの正体を知っていたのですか?その問いに王は否定した。金を貰い養育を引き受けただけだそうだ。だが曰く付きの子だとは気付いていたと。教会の騒動だけで貴族位剥奪は少し重い罰だと思っていたが、なるほど知らなかったとはいえ王女の誘拐事件に関与していたのだ。実のところ甘い処分だったわけか。クロヴィスと結婚させるわけにはいかないというのはそう言うわけだ。一緒に聞いていたレオンハルトも天を仰いでいたが、なら未来の王配として彼もアウラに行かせればいいでしょう。そういって王に剣を向けるや、そろそろ引退されますか?と脅した。どう見ても本気な息子に恐れを無した王は発言を撤回、今後のことはエレノア女王と話し合うことになった。そんな折、隣国から使節団が訪れ、キルデリクがマリアベルの返還を求め・・・。婚約破棄されたら、ヒロインに次々と幸運(?)が訪れたお話。マリアベルの味方が凄い人達ばかりで、実はクズだった婚約者と離れたことで家族とも縁が切れます。この家族も犯罪に片足突っ込んでいたのが発覚し、とんでもない最期を迎えるわけですが、この人達も実の琴分け隔てなくマリアベルを愛していれば将来安泰だったろうに。ホント、バカ。婚約者も救いようのない愚か者でこの後再び事件を起こし、巻き添えで首一枚繋がっていたラフォルグ侯爵家はお取り潰しに。侯爵夫妻は悪人だったわけではないだけに気の毒でしょうがない。その後、マリアベルは実の母・エレノアと対面し、これからのことを話し合い、結果アウラの次期女王になるのを決めます。クロヴィスは王配として婿入りを決め、暫くはネムス王国に留まり、レオンハルトの腹心を育てるため尽力することになります。マリアベルは後々罪が暴かれ、処刑されたハインツ子爵夫妻に代わり、リリアンの面倒を引き受け、どこででも生きて行けるよう教育。オズワルドからの慰謝料で王都に屋敷を買い、そこで暮らせばいいと手配します。こんな妹でも見捨てられないマリアベルはお人好しだなぁと思いましたが、まぁあのスパルタ教育を見るに、リリアンも大変そう。最後はちょっとコメディ要素もあったり、ザマァ展開に容赦もなくて面白かったです。評価:★★★★☆
2026.10.05
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2026年8月刊スターツ出版文庫著者:湊祥(敬称略)養女の香穂は、本家の実娘であり天才と称される義姉・春妃から召使いのように扱われ、学園でも“役立たず”と嘲笑されていた。だが誰も知らなかった。彼女には、最強の雷神の力が宿っていることをーー。春妃と風神の婚儀の日、その運命が暴かれる。「俺の番は、お前だけだ」 雷神・珠莉から突然求婚された香穂は、初めて無条件に大切にされる喜びを知る。しかし義姉の執念が二人を引き裂こうとしていてーー。これは、最底辺の少女が最強の神に愛され、運命を覆す和風シンデレラ物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 東条香穂=貴族家の養女。無能の役立たずと蔑まれていた。 珠莉=雷神。香穂を番として雷神領に連れ帰る。 東条春妃=香穂の義姉。颯矢の番に選ばれる。 颯矢=風神。珠莉を敵視している。 麒麟=香穂の式神。 晶魔=子供の姿をしたあやかし。秋津国風神領の名家・東条家で暮らして十三年。養女として引き取られたはずなのに、新しく家族になった東条家の人々は冷たかった。特に義姉の春妃は香穂を虐めてストレスを発散している節があり、何度理不尽な目に遭った事か。それでも義姉は美しく優秀で取り巻きも多い。外面の良さも相俟って人気者ではあるものの、一たび春妃に目を付けられたら最後、私に逆らったらあんたの親の会社を潰すわよ。そう言って土下座を強要する。義姉の常とう手段だ。実は義姉よりも優秀なのではと陰で噂されている静子が、春妃に向かって土下座し額を地面にこすりつけているのが見えて香穂はため息を吐いた。ただ、お義姉さまより大きな霊獣を召喚したから。負けず嫌いで、尚且つ風神・颯矢の番の座を狙っている春妃は静子が選ばれたら大変と、こうして出る杭を打ち、決して自分より目立つなと言い含めた。可哀想に・・・。できれば助けてやりたいが、香穂も東条家では使用人以下の最底辺の人間。自分が止めに入っても春妃とその取り巻き達は屁とも思わないだろう。にしても相変わらずやり方が姑息ね。家業を潰すと脅されたら大抵のものは従わざるを得ないのに。とにかく、今後は私より目立とうとしないことね。そう言い含めると高笑いをして去って行った。その姿が遠くなると香穂は慌てて静子に駆け寄ったが、土下座の姿勢から起き上がろうとしない。図らずも見て見ぬふりをしていた自分が慰めても辛くなるだけか。香穂はポケットから取り出したハンカチを静子の側に置くと黙ってその場を立ち去った。屋敷に戻るとすぐさま義姉にこき使われた。あんたは無能のクズなんだから、こんなことくらいしか役に立たないでしょ、それが春妃の言い分で、家族は止めようともしなかった。娘の憂さ晴らしのためだけに私は引き取られたのだろうか。香穂は四歳までの記憶がない。船舶事故の生き残りと聞いているけれど、私は一体何者なのだろう。それから暫く経った頃、春妃が颯矢の番に選ばれた。静子のことを思うと胸が痛む。婚姻の儀式のためにその日は朝から婚姻の儀式を執り行う万象神殿の掃除を言いつけられてへとへとだ。お前は親族の席には座らせないとまで言われてなんだかもう諦めも付いた。春妃には申し訳ないけれど、嫁いでくれれば静子も自分も平穏に暮らせる。とにかくどやされないよう必死に床を磨き、立ち上がった香穂は背の高い男性にぶつかった。目に入った容姿で雷神の珠莉と判って香穂は平謝り。しかし彼は、掃除してたところをすまなかったねと逆に謝罪すると、突然ハッとしたように香穂の手首を取った。お前、雷神領の者だろ?何で風神領にと驚いている。名前はと問われ「東条香穂です」と答えると、やっぱり香穂、と驚愕の表情を浮かべた。香穂、俺の番になれ。そう宣言するや、どうせなら俺たちもここで儀式をしようと会場に連れて行かれそうになって必死に手を振りほどく。なんとか撒いたけれど義姉の儀式を見ていないと何を言われるか。使用人席の末席に着くと今日の主役二人の側に珠莉と火神、水神が見えた。四神が揃うのは婚姻の儀式くらいのもので壮観だ。参列者たちも感動していると、窓を突き破ってあやかしたちが乱入してきた。四神にとって有象無象のあやかしなど敵ではない。しかし、数が多かった。身を護る術のない使用人たちが狙われ、咄嗟に香穂は自らの式神・麒麟を呼んだ。人型の式神を使役できるのはごくわずか。無能と言われ続けていた香穂がまさか人型を呼び出すとはと春妃も義両親も激しく動揺。香穂は無能ではない。ただ風神の力が使えないだけだ。皆を守って戦う香穂の姿を見て珠莉は歓喜した。十三年前、船の事故で家族諸共死んだとされていた幼馴染で番候補の少女。まさか風神領にいたとは、そりゃ見つからないわけだ。使用人扱いされてたみたいだし、一刻も早く連れ帰らねば。あやかしが片付くと、俺の番が見つかった。そう言って肩で息をしている香穂を引き寄せた。炎神と水神も彼女の活躍を見ていたので反対はせず、颯矢も軽口を叩きつつ認めた。面白くないのは春妃で、こんな無能が雷神様の番!?有り得ないと髪を掻きむしっている。そんな彼女を颯矢があの強さなら選ばれて当然だよ、仕方ないと宥めている。有言実行、とばかりに珠莉は簡易ながらも儀式を済ませると香穂を雷神領に連れ帰った。実は四歳までの記憶がないのだと打ち明けると珠莉はショックを受けていた。香穂の態度からしてその可能性が高いかと思ったがやはりか・・・。雷神領の名家生まれの彼女は幼いながらも優れた力を持っていた。お互い子供だったけれど将来の約束を交わして少ししてからのこと、家族旅行に出掛けた香穂は事後に合い帰ってこなかった。それでも彼女の遺体だけは上がらず、もしかしてと探し続けていたのだが、風神領の貴族の養女になっていた。どうも臭い、そもそも香穂たちは狙われていたのではないだろうか。珠莉の番になられては困ると思う者の企て。一番怪しいのは風神だ。昔から何かとこちらに因縁を付けてくる風神とは犬猿の仲だった。降りかかる火の粉を振り払ううちに段々エスカレートしている。今回の婚姻の儀式での騒動もまさか颯矢が?一方、その頃、風神の館では春妃が癇癪を起していた。本当に性格の悪い女だ。うんざりしながらも、まぁこういう手合いの方は扱いやすいかとほくそ笑む。にしても、生きてたんだ、あの娘。亡き先代が差し向けた者の手により、家族は殺せたが肝心の娘は雷神の加護で生き残ったと聞く。暗殺も叶わず、何処かの家に預けられたそうだがそれが東堂家だったとは。しかも、珠莉は見事に彼女と再会して番とした。あまり優秀な番を持たれるとやり難いんだよねぇ。そう独り言ちたあと、怒りが収まらない様子の妻に語り掛けた、二人で香穂に痛い目を合わせてやろう、と。囁く声に春妃は笑みを浮かべた。一月後、神器の儀のために珠莉と万象電を訪れた香穂は風神の神器・風袋を故意に壊したと言う嫌疑をかけられ・・・。架空の国の守護神とその番のラブストーリーです。無能が実は最強だったというある意味テンプレ展開ではあるものの、今作のヒロインは本当にチート系。そりゃ、風神も脅威に思うよなぁと。自業自得で春妃は厳しい処罰をうけたものの、颯矢の方は小賢しくて証拠は一切残さない。過去の事件は彼の父の仕業としても魔族と組んだ春妃を焚き付けたり結構やらかしてます。トカゲの尻尾切で全部春妃に責任をおっかぶせてホント、卑怯な奴です。機会があれば火神、水神の話も、と後書きで言ってらしたので、あやかしとの戦いの行方もシリーズで描かれそうですね。とにかく、颯矢が痛い目に逢いますように。評価:★★★★☆
2026.10.04
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2026年3月刊新潮文庫著者:蒼磨奏最悪の政略結婚から始まる。大正ロマンラブストーリー。北小路家の娘・綴(つづり)は、妾(めかけ)の娘として使用人以下の生活を強いられていたが、軍門の名家・東堂家次男の征司と政略結婚が決まっていた。しかしそれは言いがかりによって一方的に破棄されてしまう。全てを奪われ失意の綴の前に数年後、彼は新進気鋭の作家・壬生冬青(みぶ・とうせい)として現れる。再び自分と婚姻を結ぶように、と。以前と別人のような征司に不審を抱く綴だが、彼には驚くべき秘密があった。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 北小路綴=家族の分家当主の妾の子として冷遇され続けていた。 壬生冬青=本名・東堂征司。一度婚約破棄したはずの綴に結婚を申し込む。 東堂崇明=征司の兄。弟の放蕩ぶりに手を焼いている。北小路礼子=北小路家の正妻。綴を虐げていた。 東堂征司=綴の元婚約者。 黒上鞠=綴の実母。故人。華族の分家である北小路家に産まれて二十二年、妾の子ということで綴は使用人以下の生活を強いられていた。毎日くたくたになるまでこき使われ続け、最近では足の衰えた先代当主夫人・初枝の介護を丸投げされいい加減体力の限界だ。食事も貰えるのは小さい握り飯を三つだけ。それでも母が存命中は当主の目もあったので多少はマシな生活を送れていたと思う。元々、母は花街で人気の娼妓だった。それを北小路家の当主が身請けし屋敷の離れに住まわせると翌年綴が産まれた。面白くないのは正妻の礼子とその子供たちだろう。母と二人、いびられ続け、我慢の限界だったのか七年前、母は自ら命を絶った。悪い事は続くもので、それから暫くして当主は病で入院。あれから屋敷には戻って来ていない。以降、礼子が家を取り仕切るようになり、綴の辛く苦しい日々が始まった。そんなある日のこと、母屋に呼び出された綴は大田原という男と引き合わされた。年齢は五十代後半と言った所か。珍しく機嫌が良さそうな礼子は、くれぐれも粗相のないようにと言い含め、後はごゆっくりと出て行った。大田原は多少行き遅れではあるが美しい娘じゃないかと舌なめずりせんばかりに厭らしい視線を向けて来る。私の家に来れば不自由はさせないよ、と押し倒されかけ堪らず綴は悲鳴を上げた。するとドスドスと力強い足音が響き、スパーンと襖があけられ固まる二人。畳に転がる綴に「北小路綴だな?」と入って来た男に声をかけられ頷くと、話がある、そう言ってひょいと抱え上げられた。そこに「征司っ!」と追って来たのは三十代くらいのガタイの良い男性。あれ、この方、東堂家の・・・。四年前の苦い記憶が蘇り、自分を荷物のように抱えるもう一人の男をまじまじと見つめた。随分印象が変わっているけれど、東堂征司、かつての自分の婚約者ではないか。「文豪の花嫁に相応しくない」散々綴をこき下ろした挙句、一方的に婚約破棄を宣言した征司は、付添人の崇明が止めるのも聞かず出て行った。母のことまで馬鹿にされ怒りに震えながらも綴は何も言い返せなかった。礼子からもせっかくの縁談がお前のせいでとカンカン。しかも征司はあちこちに綴の悪評をバラまき、綴を貶めた。恐らく婚約破棄の理由付けのためだろう。礼子からの当たりが一層きつくなったのは言うまでもない。こっちはえらい目に遭ったって言うのにどういうつもり?でも、四年でここまで印象って変わるものかしら・・・。正直言えば、軍属の崇明のガッチリ体型と違い、作家だという征司は所謂優男風だった。なのに、今は細身ながらも筋肉質なのが判る。それに身長も今更こんなに伸びるなんて有り得ない。ん?もうすぐ夕刻、崇明と礼子たちの話し合いには加わらず、綴と庭で待っていた征司の影に尻尾が見えた。しかも、耳っ!?どう見ても狐のそれに、昔母が教えてくれた「異界を覗く窓」を指で形作り征司を見た。が、当人に「やめろ」と手を押さえられてしまいパチクリ。「やめろ、戻れなくなるぞ」人間が異界に囚われれば抜け出せなくなる。焦った様子の彼は綴を心配して止めてくれたらしい。やはり、四年前の征司とはまるで別人のようだ。話し合いが終わったようだ、礼子と崇明に呼ばれて応接室に入ると、お前の結婚が決まったと告げられビックリ。征司さまがお前を娶ってくれるそうよ、身一つで構わないから明日にでも来て欲しいと。今夜中に準備をしておきなさいと命じられたが何が何やら。崇明は、あの時は本当にすまなかったと謝罪し、今回はそんなことにはならないからと征司を見た。横柄に頷く彼を見るとやはり違和感が強くなる。翌日、指定された住所に着くと壬生と表札が出ていた。<壬生冬青>、それが征司のペンネームだ。初枝が読書好きだったのもあり、新書が発売される度に作家問わず書店から買い入れていた。その中に冬青の著作がいくつかあり、その面白さに夢中になったものだ。こじんまりとした二階建ての一軒家で一階は書庫替わりなのか蔵書が溢れ、二階二間を住居にしているらしい。冬青の仕事場兼私室の隣を貰い、彼から仕事中は声をかけるなと言われたので先に通いの家政婦だと言うトミに挨拶した。人の良さそうな笑顔に蔑む態度は見えなかったことに安心する。夕食の支度が終わるとトミは自宅に帰って行き、いよいよ冬青と対面となった。あの影のこと、本当にあなたは征司さんなのか聞きたいことは山ほどある。結果、やはり彼は征司ではなかった。俺はあやかしだ、こともなげに言われて内心驚いたけれどやっぱりとも思った。狐の?と尋ねるとそうでもあるしそうでもない、俺は色々混じっているんだ。そう言って変化の術を解くと本来の彼が姿を現した。なるほど、確かに見た目は狐のあやかしだが、右の額に角がある。それ以上は言いたくなさそうなので話題を変え、何故征司のフリをしているのかを尋ねた。彼の話では、あの婚約破棄騒動後から暫くして征司は花街で騒ぎを起こし、挙句車に撥ねられ死んだのだそう。東堂家の放蕩息子らしいと言えばらしい最後だが、家名に傷が付く。征司の死は身内と近しい者たち以外にはかん口令を敷き、伏せられた。しかし、彼も小説家のは端くれ、いつまでもごまかすのは困難。冬青が一時世話になっていた僧侶が崇明の知人で作家をしており、それを真似して小説を書いていたのも条件に合った。崇明の頼みで征司の身代わりを務めたのだと言う。話を聞いてそれで色々と合点が行った。人が変わったようだったのも気のせいではなく、小説がヒットしたのも彼に才能があったから。綴と結婚したのは東堂家の男がいつまでも独り身では困ると泣きつかれたそうで、それで丁度崇明からお前に可哀想な事をしてしまったと聞き、じゃあお前でいいかと。エライ言われようではあるものの、彼に悪気は無いように思う。自分があやかしだと知っても態度の変わらない綴が気に入ったのか、肝の据わった娘だと感心している。まぁ、形だけの夫婦になるが、と最初に釘を刺されてしまったがあのまま北小路家にいたらまたどこぞの金持ちの後添えか妾に出されていただろう。執筆作業を邪魔しなければ好きに過ごしていい、そう言い置くとまた仕事に入ってしまった。今回は初めてのジャンルなんだ。万年筆を握りながらなんで俺が、とぼやいている。後に聞いた話によれば恋愛ものだそう。冬青は実体験を生かしているのか怪奇小説ばかりを刊行している。それが当たるから編集部も好きに書かせていたみたいだが、新たな層を開発したいらしい。とは言え、恋愛などしたこともない冬青に男女の機微など判るはずもない。だが、待てよ、ふと自分の現状と綴の存在を思い出し、これは行けるかもしれない。そうして書き始めた小説は仮初夫婦を題材にしたもので・・・。タイトル通りの内容ではあるんですが、その文豪があやかしだったら?何事にも一生懸命で心優しく、達筆な綴に段々と気を許していく冬青。彼は執筆業とは別に軍の依頼でこの世と幽世を繋ぐ境界の見回りをしていました。新婚旅行のついでに出掛けた地で綴はとあるあやかしに目を付けれ、以降つけ狙われる羽目に。何の気なしに使った異界を覗く窓は、次々と綴に災難をもたらし、と言った展開です。その度に奮闘する冬青がカッコよく、そりゃ綴も意識しちゃうよなぁと。あと、彼女の母親・鞠さんの死がどうにも臭い。自殺じゃないんじゃないの?あれ。綴を狙うあやかし・蘇芳にも逃げられちゃったし、多分続編あるんだろうなぁって感じの終わり方でした。色々気になる伏線てんこ盛りだったので、続きを楽しみにしています。評価:★★★★☆
2026.10.03
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10月下旬 レジーナブックス 侯爵令嬢ソフィアの結婚 今野綾11月4日 キキ文庫 身代わりで冷徹王子に嫁げと命じられましたが、癒しの歌のおかげで無敵です 瀬王みかる11月26日 ジュエルブックス 1行で死ぬモブ令嬢ですが、 死亡フラグ折ったら、冷徹王子の執着寵愛が始まりました!? すずね凛 いちゃいちゃクエスト 女勇者からパン屋に転職したら、 魔王の胃袋を掴んでしまい離してもらえません! 葉月エリカ11月30日 KADOKAWA 夫を正しく捨てる方法について 余命わずかな宝石令嬢は、冷酷公爵から逃れられない 芦永12月1日 角川ビーンズ文庫 最弱の辺境へ嫁がされたので、 前世100年分の知識で領地を育ててみせます 景花1月22日 蜜猫f文庫 闇堕ち皇帝は恋に容赦がない 陛下、私のために隣国を滅ぼそうとするのはやめてください 当麻咲来 身代わり姫ですが、 二度目の結婚を諦めなかったら溺愛されました 熊野まゆ(敬称略)もう1月の予定が・・・(^_^;)
2026.10.02
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2026年6月刊レジーナ文庫著者:屋月トム伽(敬称略)孤児院出身の聖女・ミュスカは、教会の物置小屋に居候し、他の聖女たちから仕事を押し付けられる毎日を過ごしていた。ある大雨の日、びしょ濡れで立ち尽くす一人の男性に出会った彼女は、全財産である金貨一枚を貸してあげることに。数日後、教会にやってきた彼はなんと辺境伯のレスターだった。レスターに領地まで連れてこられたミュスカは、金貨のお礼としてご馳走、豪邸の一室、箱いっぱいの金貨を与えられ、果てには結婚まで申し込まれてしまい…… 文庫だけの書き下ろし番外編も収録! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ミュスカ=聖女。いつも貧乏くじを引かされていたが、心優しき行動によりレ スターに見初められる。 レスター=辺境伯。ミュスカに一目惚れして求婚する。シャーロット=伯爵令嬢で聖女。レスターに惚れている。 ディビット=聖堂騎士。ミュスカに想いを寄せている。オースティン=第一王子。レスターの従兄弟。割り充てられた大量のアミュレットに祝福を与え終り、町に両替に行っていたミュスカは念願の金貨を握りしめルンルン気分で家路を急いでいた。すると教会の前にぽつねんと立ち尽くす青年の姿が。どうやら有り金全部を教会に置いて来てしまい、帰りの旅費が無いらしい。それは大変、ミュスカは迷いなく握っていた金貨を差し出すと青年の手を取り握らせた。これだけあれば遠方であっても足りるはず。青年は必ず返すから、と感謝し幾度も振り返りながら立ち去った。身形が良かったから貴族の方かしら・・・。ならお金が帰って来る確率は高い。まぁ、金額的に持ち逃げされる可能性も無きにしも非ずではあるのだが、それでもミュスカは信じたいと思った。この国には聖なる力を持つ聖女たちが結界を張り、魔族の侵攻から民たちを守っている。アミュレットに護りの祝福を付与したり、作物の実りが良くなるよう祈ったりその仕事は多岐に渡る。雀の涙のような給金が出るには出るが、ほとんどが家賃や食費として教会に持っていかれてしまい、手元に残るのは僅かばかり。それでもこつこつ貯金して漸く金貨に両替出来た時は感無量だった。なけなしの金なので、できれば返して欲しい。教会の敷地の片隅に立つ物置のドアを開けるとまたもやどっさりとアミュレットが積まれている。どうせまたシャーロットたちの分だろう。どうして貴族である私たちがそんな仕事をしなければならないの?それが彼女の持論だ。そんなものは平民で孤児のあの子にやらせておけばいい、神父もそれを真に受け、仕事のほとんどをミュスカに丸投げ。まぁこういう手仕事は嫌いじゃないからいいのだけど、かといって彼女達は騎士団と魔族討伐に行くこともしないのだ。同じ聖女でありながら、あの人達はどんな仕事なら出来るんだろう。数日後、いつものようにせっせとアミュレットに祝福を与えていたミュスカは、シスターに呼ばれて礼拝堂に赴いた。そこには先日の青年が。彼はミュスカを見るなり微笑むと約束通りヴォルフガング領に連れて行く、と神父を見据えた。彼は、ミュスカに向き直るとレスター・ヴォルフガングと名乗り、ミュスカを迎えに来たと言う。シャーロットを始め、他の聖女たちの嫉妬の視線を感じながらも神父から早く準備をしなさいと促され、物置に戻って荷造りを始めた。くっついてきたレスターはすきま風が入るそこに眉を潜め怒りを露わにしている。ボストンバック一つだけ持った彼女の背に手を回し、後程彼女の扱いについて審議させると宣言して神父たちをビビらせた。数時間ほどかかって辿り着いたのはヴォルフガング領のスノーブルグ。雪深い所であり、作物の実りがあまり良くない地だ。昨年までは常駐の聖女がいたが、年齢を理由に引退。先代聖女の豊穣の祈りの力がまだ残っているのを期待しつつやはり効果は弱い。そこで新しい聖女を派遣してもらうため先日教会に依頼しに来たらしい。だが、君に会えた。そう言ってレスターは彼女の手を握り、ずっとスノーブルグに、俺の側に居て欲しいと懇願。いや、仕事なのですから喜んでさせていただきますけれど!何だか求婚されているような雰囲気にミュスカは困惑。あの金貨もちゃんと返してもらい、その輝きに頬ずりしたくなる。でも、五倍の額は返しすぎですよ、辺境伯さま。こんなにいただけませんと固辞しても、これは気持ちだからと譲らず結局受け取ってもらえず、皮袋に入れられたまま机の引き出しに仕舞われている。にしてもこの部屋の豪華さは一体・・・。クローゼットにはドレスや靴がずらり。既製品で申し訳ありませんと家政婦頭のスペンサーに謝罪されもう何が何やら。レスターから仕立て屋を呼ぶよう言われていると聞き、必死に断った。先程到着早々に豊穣の祈りを捧げて来たけれどそのお布施にしたってバグっているとしか思えない。でも、とっても良い人たちなのよね。日中はスノーブルグの教会で怪我人の手当てやアミュレット作りを手伝い、それ以外は辺境伯邸で過ごす。護衛宜しくわざわざレスターが送り迎えしてくれるものだから変に意識してしまう。そうこうしているうちに、二人の距離はぐんぐんと縮まり、レスターからの猛アタックの末、ミュスカは彼の求婚を受け入れた。実は一目惚れなんだ、と呟き、面映ゆそうな彼がかわいく思えてくるあたり、私もこの人を好きになってしまったんだなと思う。それから暫く経ってスノーブルグの冬まつりの日、シャーロットがこの地を訪れた。私だって聖女なんだからと、元々ミュスカに依頼されてた仕事を横取りして、隣の領地に向かったシャーロットの祈りはレスターが見る限りダメダメだ。惚れた欲目もあるがやはりミュスカの聖力は凄い。最近、王都で販売されているアミュレットの評判が良くないのも、ミュスカが作ってないからだ。彼女のお手製のアミュレットは今はスノーブルグでしか買えない。これは向こうも相当焦っているだろう。おまけに聖堂騎士のデイビットはレスターと言う婚約者がいるのを知りつつミュスカにしつこく迫っていて気が気でない。もう少し護衛を増やすべきか。そう思っていた矢先、教会で仕事をしていたミュスカが何者かに攫われ・・・。不当な扱いを受けていた聖女が辺境伯に見初められ幸せになるお話すです。テンプレ通り過ぎる展開だったので先の予想はついてしまうんですが、変に奇をてらってない辺り読み易かったです。あとヒロインがチートすぎないのもいい。実はとんでもない力があってどうこう、ってのは無く、ヘイトキャラたちが勝手に自滅して行くさまが滑稽過ぎて・・・。評価:★★★★
2026.10.01
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1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位 12位 13位 14位 15位 16位 17位 18位 19位 20位 21位 22位 23位 24位 25位 26位 27位 28位 29位 30位 不動の7位まではともかく、以下はちょこちょこ変動していますね。
2026.09.30
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2026年7月刊ベリーズファンタジー著者:矢野りと(敬称略)敗戦国となった母国のために人質として隣国に送られた王妃ジュンリヤ。三年間の幽閉生活の末帰国したジュンリヤを待っていたのは夫の国王…と、その隣で微笑む側妃だった。ようやく母国に戻ってきたはずが、そこにジュンリヤの居場所はなく、さらにはあらぬ噂を立てられ孤立無援の状況に。しかし隣国での人質生活を経てジュンリヤには最強の味方がついていた! 彼らの協力を得たジュンリヤは王妃としての信念で、王の器ではなかった国王らの後ろ暗い真実を明らかにしていきーー!? 居場所を奪われたお飾り王妃が幸せを掴む大逆転ファンタジー! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ジュンリヤ=敗戦国の王妃。人質として三年間、元敵国で幽閉されていた。 レザム=リーディオン王国の騎士。ジュンリヤに好意を抱く。 アンレイ=フェルシナス国国王。ジュンリヤの夫。シャンナアンナ=アンレイの側妃。 ランダ=リーディオン王国第一王子。レザムの従兄弟。漸く戻ってくることが出来た。ゆっくりと馬車がフェルシナス国に入ると、王妃到着を心待ちにしていた民たちから歓声が上がった。同乗している侍女のクローナもこれには感無量のようで、姿勢を正すと正面に座る主に改めて労いの言葉をかけた。唯一傍に置くことを許された侍女のクローナは乳姉妹であり、気心の知れた仲だ。それ故に敵国での幽閉生活によく仕えてくれたと思う。三年と少し前のこと、寵愛する愛妾の我儘を叶えるため、先代の国王は隣国の鉱山を狙い無謀な戦を仕掛けた。しかし、隣国リーディオン王国は大国。当然ながら戦も強くこのフェルシナス国はあっさり負けた。それでも戦の元となった先代の王と愛妾の首を差し出したことでリーディオン王は矛を収め、和平にも応じてくれた。が、問題はそこからだ。命知らずにも一部の貴族がリーディオン王に刺客を放ち、暗殺を謀ったのだ。すぐに首謀者は取り押さえられ処分されたが、リーディオン王はカンカン。この件の落とし前としてフェルシナス国の王政の廃止か王妃を人質に差し出すか好きな方を選べと通告。当時、新たな王として第四王子アンレイが即位したばかり、差し出すよう言われたのはまだ年若い彼の妃・ジュンリヤであった。心から妃を愛していたアンレイはどうかそれだけはとリーディオン王に頭を下げた。しかしながら、飲まなければ王政は廃止され、この歴史ある国もリーディオン王国の属国になってしまう。反対する高位貴族は、王妃様は殺されるわけではないのだからとアンレイに王妃を引き渡すよう説得。結局、即位したばかりの気弱な王は彼らの意に従うことになった。リーディオン王はジュンリヤを離宮に幽閉し、最低限の生活は送れるよう手配した。使用人を置かなかったのは嫌がらせのためではない、この意味のない戦争でリーディオン側も多くの死傷者を出しているからだ。下手に使用人を置いてそれがジュンリヤたちを害さないとは限らない。自らの民たちに愚かなことはさせられないというの真意を知ったのは大分後のことだったが・・・。戦争で身内を失くしたのであろう民たちからの謗りや罵倒、石を投げられることも多かったが、それでもジュンリヤは皆に頭を下げ続けた。そう言えば、恩人さんは元気にしているだろうか。いつのころからか、見かねてジュンリヤを庇ってくれた騎士がいた。投げ込まれたごみの片づけを手伝っい、暴言を吐く民たちを宥め追い払ってくれた。いよいよ帰国が決まった日、達者でな、と短い言葉をかけて足早に去って行った後姿を思い出す。王宮の門を潜ると愛しい夫と臣下たちが勢ぞろいしていた。どうか気にしないで欲しい、涙を流して君を行かせたくないと縋りついていたアンレイは三年前より逞しくなっていた。戦火で荒れた都をここまで立て直すのは大変だったろう。元々、身分の低い側妃から産まれた彼は王位を継げるはずがなかった。が、あの戦に賛同した王子たちが軒並み捕らえられ継承権を剥奪されたことで、アンレイしか残っていなかった。臣下たちもごっそり入れ替わり、宰相は文官上がりだという何とも気弱そうな男。皆の労いに言葉に応えながら、アンレイの側に控える美しい女性に気付いた。宰相が言うにはジュンリヤが人質に行っている間に決まった彼の側妃だそう。はぁ!?シャンナアンナと名乗った側妃は、どこか挑戦的な眼差しでジュンリヤを見つめると臣下の礼を取った。この方にしてみれば、邪魔者が帰って来てしまった、って感じかしらね。それでも、国のために泣く泣く人質になっていた妃がいるのに側妃を宛がうなんてどういうこと!?困惑しているとクローナは部屋に帰るなり怒り狂っている。宰相の説明ではミヒカン公爵からゴリ押されたらしい。いい気はしないけれど、アンレイにものっぴきならない事情があったのだろう。その夜、当人からも事情が語られてジュンリヤも何とか自身を納得させた。しかも宰相からは向こう三ヶ月は陛下とのお褥はご遠慮いただくよう釘を刺された。皆疑っているのだ、三年も無事だったのはリーディオン国王か王子の寵愛を受け庇護下にいたのではと。元敵国の王族の子を陛下の子と偽られても困る。言外に言われてついにクローナがブチギレ。宰相に殴り掛かりそうな彼女を何とか押止め承諾を告げた。私、悔しいですっ。大泣きするクローナを抱きしめ、私は気にしてないからと微笑んで見せたが、空元気であることは見抜かれていそうだ。帰国して数か月、ジュンリヤは王妃でありながらもひっそりと暮らすのを余儀なくされていた。アンレイは辛い思いをして来たのだから暫くゆっくりしていればいいと言うけれど、まるでシャンナアンナが王妃のようだ。それに侍女達もほとんどが彼女のシンパで、ジュンリヤの扱いは二の次。そうこうするうち、延び延びになっていたクローナの結婚が決まった。ずっと誠実に待ち続けてくれていた婚約者と漸く結ばれるのだ。それでもジュンリヤ様をおひとりにするわけにはと、最後まで気に掛けてくれていた。そんな彼女に二度と会えなくなるわけじゃないから、とこれまでの忠義に感謝して送り出した。新しく侍女に付いたのはエリという大人しい娘だった。元はシャンナアンナ付きであったそうで、何となく監視されているように感じた。それから暫く経って、リーディオン王国から視察団が来訪。この国がまだ王政を築けているのは偏にリーディオン王の温情と辛い人質生活に耐えたジュンリヤのおかげだ。彼女の誠実さを信じたからこそ無傷で帰国もさせたが叛意あればたちまちフェルシナス王家は解体されてしまう。アンレイと宰相は緊張でガチガチの中、シャンナアンナは悠然と微笑んでいた。その後ろに控えるジュンリヤに気付き声をかけたのはリーディオンの第一王子・ランダだった。傍にはあの恩人さんもいて、やっぱりそこそこ地位のある人だったのだと思い知る。案の定、使節団のもてなしはシャンナアンナが取り仕切っていた。私にお任せくださいときっぱりと言われたら、王妃である私がと我を張るのも悪い気がして。でも、歓迎の夜会でアンレイとファーストダンスを踊る彼女の姿を見ると切なくなる。というか、もう疲れたしどうでもよくなっている。クローナが居たらきっと怒り狂ってるんでしょうけど・・・。バルコニーで黄昏ていると「元気か?」と声をかけられ振り向くと恩人さんがいた。ついそう呼ぶと、変な名前で呼ぶなと苦笑され「レザムだ、レザでいい」。そう言われて頭の中で練習する。いいのかよ、あれ、顎でホール内を示され、仕方ないのよと苦笑する。この国はあんたのおかげで今でもこうしてやってけてるのに、どこか悔しそうに吐き捨てる彼は、やっぱり良い人だと思う。実はこちらになんの報せも無く側妃を迎えていたのだと言ったら烈火のごとく怒りそうだったので止めた。言っておくが、と前置いて彼が言うには、フェルシナスには二度とバカなことをしでかさないよう幾人も間者を忍び込ませているらしい。要はジュンリヤの立場もしっかりバレているということか。あんたが望むならここから連れ出してやるとも言われたが、ゆっくりと首を横に振った。居場所がなくともまだ自分はこの国の王妃なのだ。何もかも捨てて一人だけ逃げることはできない。久しぶりにジュンリヤと会い、亡命をほのめかしたレザムは従兄弟の部屋に着くなり感情を爆発させた。あいつらはどうかしている!!誰の犠牲でこの国は成り立ってると思ってるんだっ。怒りに任せて殴った壁の漆喰がパラパラと零れてランダはレザムを窘めた。一目惚れしたお姫様が不当な扱いを受けていると知ったのだ冷静でいられるわけはない。リーディオン王家の男たちは惚れた女一人だけに尽くし溺愛すると言う、惚れられた方は若干迷惑な性質をしている。ジュンリヤも厄介な男に惚れられたものだ。同情しつつも、この国のヤバさにはランダも気付いていた。あの戦争で厄介な王と高位貴族はあらかた粛清できたが、それに成り代わろうとしている者たちがいる。シャンナアンナの義父・ミヒカン公爵だ。元々第四王子だという現王も頭は悪くないのだが、気が弱くあれではただの傀儡だ。宰相も文官上がりで得意なのは書類仕事だけと来てる。復興の裏で一部の貴族達がやりたい放題。民たちの不満が爆発するのも時間の問題だ。その前にレザムは何とかジュンリヤを助け出そうとしている。どのみち、彼女は不当な扱いを受けているのだ。何かきっかけがあれば一緒に来てくれるはず。自分達の首が薄皮一枚で繋がっているのも知らず、アンレイはジュンリヤの忠告を笑い飛ばし、心にもないことを言って傷付けた。もうだめかもしれない。そう覚悟していた矢先のこと、使節団が暗殺者の襲撃を受けた。幸いにもリーディオン側に手練れが多く、フェルシナスの護衛達も軽傷で済んだのだが、シャンナアンナの何気ない一言で、暗殺者の手引きをしたのがジュンリヤという疑惑がかけられ・・・。ザマア系かと思いきや・・・。ジュンリヤがひたすら可哀想で読んでてイライラしました。夫・アンレイも彼なりにジュンリヤを愛してはいたんですよ。でもやはり三年は長かった。シャンナアンナを好きになってた、とかではなく、不甲斐ないアンレイの態度に段々ジュンリヤが失望して行く様が何とも。別に恩に着ろと思ってるわけじゃない、蔑ろにされてるのが辛いと言ってるのに聞く耳持たず、面倒なことはシャンナアンナに任せておけばいいってさぁ。あんたなんにも判ってないよ、アンレイ。しかも結局ジュンリヤの不貞を疑ってたし。ランダ王子の暗殺未遂事件で犯人を差し出さないわけにはいかずに、ジュンリヤを突き出したりそこまでクズになったかと読んでて唖然。いやいや、シャンナアンナの証言と侍女達の話から怪しいのはお前だ、って普通なる?どう考えてもリーディオンをよく思ってない貴族の仕業やん。どれだけ無実を叫んでも聞き入れられず、こいつが犯人ですと彼女をランダの前に付き出したら、控えていたレザムが激昂。お前たちの目は節穴か、とリーディオン側の調査結果を読み上げます。レザムは自らの身分を明かし、人質ではなく客人としてジュンリヤを迎える旨を宣言し、心を決めた彼女もそれを受け入れます。俺たちはこの国をずっと見ているぞ、その言葉にアンレイたちは平身低頭し、ジュンリヤと使節団を見送り、その二十三年後、レザムの子・トルーザがフェルシナスを訪れます。お母君は息災でいらっしゃいますか?アンレイからの質問にトルーザは頷き、暑苦しい程父上に愛されて幸せそうだと告げ、いっけね、ジュンリヤ王妃は病死したことになってるんだったと渋い顔。それならばよかったと笑うアンレイも貴族たちの突き上げを食らいながらもなんとか王を続けているよう。フェルシナスを出たトルーザのモノローグで、レザムのめげないプロポーズに絆されたジュンリヤが結婚に応じた際、表向きは病死と発表したことなど、その後の事情が明かされ、家路を急ぐトルーザとその従者とのやり取りが描かれて物語は幕。レザムが結婚にこぎつけるまで五年かかったそうだけど、諦めない気持ちは大事。評価:★★★★☆
2026.09.29
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10月23日 レジーナブックス 二度目は貴方と 王太子妃を辞めさせられたその後は 桃井すもも 先に捨てたのはあなたですよね? 私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。 小野まい11月13日 ビーズログ文庫 なぜか執着してくる勇者様から逃げたい末端令嬢のお話 翡翠 理想の冷遇生活だと思ったら ミズメ11月28日 スターツ出版文庫 冷酷な軍神の純真花嫁(仮) 朝比奈希夜 補欠の花嫁は許嫁の愛に気付かない(仮) 桜月ことは 猛虎の若旦那と期限付きの婚約者(仮) 森田あひる12月15日 サーガフォレスト 冷遇された転生幼女は逆転する 「優秀すぎて気味が悪い」と婚約破棄したことを公爵は後悔しているようです 上下左右 婚約破棄されましたがおかげで聖女になれました 無自覚聖女は。もふもふ聖女と不器用王子に全力で愛される 瀬崎由美12月22日 蜜猫文庫 名もなき花は身分違いの恋をする(仮) 小山内慧夢 野獣系騎士団長の旦那様に毎晩抱かれて困っています(仮) ちろりん(敬称略)
2026.09.28
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2025年2月刊ヴァニラ文庫Miel著者:あかつきもも花(敬称略)ピアニストになる夢を諦めた栞里は、叔母に命じられた見合いの席に着く。そこに現れたのは、栞里の演奏を幼い頃から見守ってくれた、御曹司の暁彦だった!「可愛い、気持ちいいんだね」この結婚は搾取されてきた栞里を救うための契約上のもの。なのに、惹かれ合う気持ちは止められず、夫になった暁彦に優しく触れられ、快楽を覚えさせられて…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 井沢栞里=飲料メーカーの社長令嬢。叔母の命令で暁彦と政略結婚する。 櫻庭暁彦=大企業の御曹司。長く栞里に想いを寄せていた。自分にとって最後のピアノコンクールが終わってしまった・・・。意外にあっさり終わってしまって、栞里はため息を吐いた。観に来てくれていた叔母が、これで漸くあなたのピアノ生活も終わるのねと嬉しそうに微笑むのを見て複雑な気持ちになる。十年に一度の天才と持て囃されるほどの腕前でも、叔母にとってピアノは騒音の元でしかないらしい。両親が不慮の事故で亡くなっていなければ、自分はこのまま大学院に進み、プロのピアニストを目指していたはずだ。大学卒業後は叔母夫婦が社長を務める飲料メーカー・井沢飲料への入社が決まっており、ピアノとは縁遠くなるだろう。それを寂しいと思いながらも、叔母の命令には従わなければならない。そのみっともない爪、ネイルサロンに行って綺麗にしてもらいなさい。深爪にならない程度に短く切り揃えられた栞里の爪を見て眉をしかめた叔母は、彼女の意見も聞かずさっさと駐車場に向かって歩き始めた。最優秀賞のトロフィーと賞状にも特に言うことは無いらしい。車に乗り込むと明日はお見合よと告げられ驚く。櫻庭グローサリーの御曹司がどうしてもあなたが良いとのご指名でね。ご機嫌な様子で説明する叔母にそういうことかと合点が行った。大企業の後ろ盾が出来れば井沢飲料も安泰だ。良かったわね、お義姉さんに似た美人に産まれて。これは誉め言葉ではなく完全な皮肉だ。俗に言う玉の輿で井沢家に嫁入りした母を叔母はバカにし、嫌っていたから。おかげで何かにつけて栞里がいたらないと母を責めるのだ。母を悪く言われたくなくて栞里はいつの間にか自分を卑下し、他人の顔色を窺がうようになってしまっていた。それはともかく、叔母の話しぶりでは結婚は確定なのだろう。翌日、精一杯着飾らされた栞里は叔母夫婦に挟まれ居心地悪くしていた。お相手は櫻庭グローサリーの社長の息子・櫻庭暁彦、子供時代、同じ音楽教室に通っており、今でもそのよしみでコンクールの度に花を贈ってくれていた。見知った相手ではあるが、会話しているのはお互いの親族のみ。そのうち、彼が二人で話したいと言うので連れ立って庭園に出た。その指、言われて「ああ」と苦笑し、もうピアノは辞めたのだと告げれば、彼は顔をしかめた。君ほどの才能の人がここで辞めるのは惜しい。そう言ってくれるのは嬉しいけれど、櫻庭の次期社長の妻になるのだ。覚えることは山ほどあるのにピアノの練習に充てる時間は無いだろう。元々、大学を出たらピアノを辞めて井沢飲料の社員になり約束だったので・・・。言いつつ宇俯くと、もう我慢しなくていいと彼は栞里の手を握った。見合いと言うより当人同士の顔合わせは恙無く終わった。暁彦の希望で入籍前からこの家に慣れておく方がいいだろうと、花嫁修業と称して栞里を櫻庭邸に呼び寄せた。暁彦の家族は両親と妹の大学院生・千春で、皆が栞里を歓迎した。特に義母の君子が栞里を気に入り、礼儀作法や社交の心得を直々に教えてくれると言う。この屋敷ではしょっちゅうその手の集まりがあるそうで、もの知らずを自認している栞里も気を引き締めた。部屋に案内されると見事なグランドピアノがあって驚いたが、音のことなら心配しなくていいから好きな時に弾けばいいの言葉に恐縮した。実家ではよく叔母に煩いと怒られていたから。でももうピアノは辞めたのだ、私にこんな立派なピアノは勿体ない。そう言えば暁彦はチェロを習っていたっけ、もう弾いていないのかと聞けば流石に忙しくて空き時間に少し嗜む程度だそう。君はよく俺と伴奏してくれたよね、の言葉に小さく頷く。当時は両親も健在で、物怖じしない子だった。八つも年上で高校生の暁彦に伴奏をせがんでは悦に浸っていたものだ。あの時は本当に失礼を、もじもじする栞里に、自分こそピアノの天才少女に誘って貰えて嬉しかったと暁彦は言う。そして彼女の肩に手を置くと、俺はね、君が不当に奪われたもの全てあいつらから奪い返してみせる。そう決意を露わにした。彼女がこんな卑屈になってしまったのはどう考えてもあの叔母のせいだろう。虐待はなにも身体への暴力だけではない、態度や言葉でいくらでも傷付けられる。近年はいくつも賞を採っている栞里ではあるが、それでも全盛期に比べるとはるかに少ない。昔は国外のコンクールの常連だったのに両親の死後三年は予選にすら入れず、ついに天才も地に落ちたかと一時話題になったものだ。が、ピアノを辞めろとしつこく言われ続け練習もし難い環境では仕方ない。もっと早く連れ出してやりたかったが、大学を卒業するまでと我慢した。入籍さえしてしまえば諸々準備していた計画を実行できる。大体、あの井沢飲料の株価格が何で半額になるほど落ちているんだ。あの叔母夫婦はよっぽどセンスが無いらしい。栞里との結婚を機に援助をチラつかせ書類にサインさせたが、碌に書面を読みもせずに署名しているのを見て吹き出しそうになった。弁護士にも確認させた方がとアドバイスもしたのに必要無いと言っていたり、経営者としてどうなのかとあきれるばかり。まぁいい、こちらはちゃんと忠告はしたからな。これから起こることを想像し暁彦はほくそ笑んだ。数か月後、ついに二人は結婚。互いの会社の兼ね合いで披露宴はかなりの規模になり、栞里はへとへと。それでももう少し付き合ってくれと暁彦に頼まれ、叔母夫婦と対面。彼は冷酷に二人を見据えると栞里の後見人から外すと告げた。もう彼女は成人している、もう後見は必要ないだろうと。後見人の権利返上は叔母夫婦にとって死活問題だ。今まで好き勝手やっていたこと全てが出来なくなる。彼らは青くなって栞里に助けを求めたが、彼女は首を横に振って二人を切り捨てた。今まで育ててくれたことは感謝している、でももう必要ないのだと。不当だと二人は最後まで足掻いていたが、署名済みの書類に全て記載されておりつくづく確認しなかった自分たちのせいと判るやガックリ。この数か月の間、ピアノを再び弾き始めたことと、義家族の優しさに触れ、栞里は本来の自分を取り戻し始めていた。それでもまだ叔母のことは怖い。でも暁彦さんが傍にいる。今までありがとうございました。栞里は叔母夫婦に深々と頭を下げた。あれから井沢飲料は社長が変わった。叔母夫婦は実家を出て行方は知らない。暁彦が相応の金を出したと言っているので地方にでも越したのか。新婚の二人はここじゃゆっくりできないからと櫻庭邸を出て、マンションに引っ越した。なるべく二人で家事をしようとハウスキーパーは雇わず、慣れないながらも和気藹々と楽しい日々を過ごせている。が、料理だけはお互いからっきしで初心者用の料理本を見てるのにどうしてこんな得体の知れないものが出来上がるのか頭を抱えた。それでも見た目はアレでも味はそこそこ良い。後は地道に行こうと凝りもせずせっせと挑戦し続けている。そんなある日、義父から創業記念祭でピアノ演奏を頼まれ、栞里は暫く練習に罹り切りになっていた。たまには息抜きをと切れていた洗剤を買いに夫婦で買い物に出ると、面変わりした叔母が立ちふさがり・・・。叔母さんにピアノを否定され、夢を断たれていたヒロインが初恋の人と結婚し、かつての自分を取り戻していくお話です。暁彦の作戦に見事にはまって後見人の権利を奪われた叔母夫婦は贅沢な暮らしから抜けられず、貰った金も早々に使い果たしていました。まぁ、この人達の場合、完全な自業自得なのと、これまでのモラハラで栞里を苦しめていた罪は暁彦にしてみればこれでも甘い。彼は、血液のガンで早逝した兄のことで苦しみ、罪悪感を感じていた自分を救ってくれた少女・栞里が何よりも大切で守りたい存在なのです。だからちゃんと書類を確認して弁護士にも見て貰えと言ったのに、と冷笑して追い返します。そして、創業記念祭で見事な演奏をした栞里はプロのピアニストになりたいのだと暁彦に相談。当然、彼は快諾し、義家族の協力の元、彼女は再びピアノに打ち込みます。五年後、海外でも成功をおさめ、あちこち引っ張りだこの妻のリサイタルを訪れる暁彦と栞里のやり取りが描かれて物語は幕。栞里を憧れだと会いに来た外国人の少女とのやり取りが読んでて、なんだかこみあげてくるものが( ;∀;)良い旦那さんと結婚して良かったねぇ、栞里ちゃん。余談ですが、口絵のイラストがかなり攻めててビックリ(苦笑)評価:★★★★
2026.09.27
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2026年7月刊ベリーズ文庫著者:滝井みらん(敬称略)日本を牛耳る巨大財閥のひとつ『朝比奈財閥』。看護師の凛はその御曹司・颯介の祖母を担当中。皆に優しく太陽のような彼はどんな女性も魅了するが、凛は颯介が超苦手!ある日朝比奈家の財産問題に巻き込まれ、颯介の兄から狙われるように。凛を守るために颯介は契約結婚を持ち掛けて…。嫌いな男との結婚は最低最悪だったのにー「素直に俺のものになれ」余裕な表情の裏に隠された執着愛に絡めとられ!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 岸本凛=看護師。とある理由で颯介と契約結婚した。朝比奈颯介=朝比奈財閥の御曹司。 夜神仁=夜神財閥の御曹司。颯介の親友であり、凛の実の兄。 藤本椿=出版社社長令嬢。凛の親友。朝比奈龍海=颯介の異母兄。朝比奈幸恵=龍海と颯介の祖母。総合病院のホスピス病棟に転属して早ひと月。夜勤を担当した先輩看護師から引き継ぎ、VIPルームに入室すると、朝比奈幸恵は嬉しそうに微笑んだ。幸恵は日本を牛耳る巨大財閥のひとつ「朝比奈財閥」の現総帥の母親だ。末期がんで余命宣告を受け、こうしてホスピスに入院したのだが、最近はアイドル・紅瑠偉にどハマりして毎日楽しそうにしている。病は気からともいう、幸恵の性格ならもしかして、と薦めてみて良かった。後で一緒に瑠偉の所属するグループのライブ映像を観ようと約束していると、幸恵の孫の颯介が見舞いに現れた。手にはケージがあり、開けると幸恵の愛犬「ココ」が飛び出して来て久しぶりの愛犬との再会を喜んだ。当然ながら病院にペットは持ち込み禁止だ。ちゃんと院長には許可を取ったと彼が言うので、仕方ないなぁと苦笑した。元々、凛はオペ看だった。が、ひと月前、病院の近くで車に轢かれそうになったココを凛が助けたのを幸恵に感謝された。凛が朝比奈総合病院の看護師と知るや、お世話してもらうならこの人が良いと院長に直談判した結果、凛は幸恵専属の看護師になったのだった。颯介と顔を合わせるようになったのもその頃からだ。実は中学、高校時代の先輩なのだけれど、彼は大層な人気者だったからきっとその他大勢の私のことなんて憶えていないだろう。そして、彼の隣には凛の兄・仁がいた。お兄ちゃん、元気かな・・・。両親が火事で亡くなって、兄妹は児童養護施設に引き取られたのだが、ほどなくして兄は夜神財閥総帥夫妻の養子になった。その後、成績優秀だった凛は特待生として朝比奈系列の私立学校に入学。そこで数年ぶりに兄と再会することが出来た。しかし、仁に話しかけても思い切り無視されてしまい、もう兄とは他人になってしまったんだと思い知った。だが、学校では椿と言う親友も出来たし、こうして朝比奈病院で働くことも出来ている。じゃあ、そろそろ。朝比奈系列の会社で副社長をしている彼は多忙だ。今日もわざわざ時間を作って見舞いに来てくれたのだろう。ココの入ったケージを持った彼を見送ると、凛ちゃん、ばあさんを頼むよとウィンクして帰って行った。翌日、幸恵の好物だという高級料理店の松花堂弁当を持参した颯介は、わざわざ凛の分まで購入して来てくれたらしく、三人でランチタイムとなった。するとそこへノックもせずズカズカと入って来たのは颯介の兄・龍海だった。彼は幸恵を見下ろし「何の用だよ」と睨んだ。どうやらあまり良い内容ではないらしい。席を外そうとすると幸恵さんにここにいて頂戴と引き留められた。そして龍海を見据え「私の遺産は凛ちゃんに譲るから」ととんでもない発言を。颯介は涼しい顔をしていたが、龍海は見る見る顔を赤くしてついには激昂。ふざけんな!赤の他人に百億近い遺産を譲るとか正気かと息巻く孫をしら~っと睥睨して私の気持ちは変わらないとキッパリ。そもそも、私個人名義の遺産が無くともあなたには朝比奈の財産があるでしょうと取り付く島もない。何を言っても無駄だと悟ったのか龍海は足音荒く出て行った。私、いただけませんっ!と言うより、あまり折り合いの良くない孫に遺産を渡したくないから単にダシにされたのかと思わないでもないが、ダメよ、もう遺言書も書き換えちゃったしと涼しい顔。何と昨日、院長に保証人を頼んで手続きを終えたと言うから驚きだ。口をパクパクさせる凛に、颯介は「貰っておきなよ、凛ちゃん」とニッコリ。いや、さっき百億近いとか聞こえたんですけど!?ばあさんはうちの株を結構持ってるし、まぁそれくらいにはなるかな。幸恵と二人楽しげに話している彼を恨めしげに見て、どうしようと凛は途方に暮れた。退勤時間になり、取り敢えず何も考えずに寝たいと家路を急いでいると龍海が待ち構えており、遺産を放棄しろと迫られた。五百万でどうだ?と言うけれど、その態度にカッチン。そもそもどうして私に言うんです?お身内での問題でしょう。毅然と言い返すと龍海が手を振りあげ衝撃を覚悟していると、ダメですよ兄さん。涼しい声がして顔を上げると龍海は颯介に抑え込まれていた。彼女に手を挙げたらばあさんだけでなく夜神も敵に回しますよ。言われてビクついた彼は解放されるやアタフタと逃げて行った。後を追うボディーガードらしき男性も慌てて着いて行く様を見て、もしかして颯介さんが来てくれなかったら私、相当ヤバかった?今更ながら怖気立ちブルブルと震える。あの人の雰囲気からしてこれは拙いかもと思ってたと嘆息した彼は、面倒事に巻き込んでごめんと謝罪。でも、ばあさんなりの凛ちゃんへも好意の表れなんだ、どうかそれだけは判ってやって欲しい、とも言われ頷く。そうして少し考えこんだ彼は暫くうちに来ないかと告げるや、凛にお泊りの用意をさせるや自宅マンションへ。コーヒーを勧めながら、ケリがつくまで寮には帰らない方が良いと颯介は言う。腐ってもあの人は朝比奈の長男だ、ゴリ押されたら管理人は逆らえない。その言葉にゾッとする。龍海兄さんは俺とは腹違いでね、そうしてぽつりぽつりと彼が話した内容によると、現在彼とは後継者争いの真っ最中らしい。なるほど、それでか。今は異母弟に大きく差を付けられている龍海は、それならと幸恵の遺産に目を付けた。彼女の保有する株があれば、と。余命宣告されているのだからただ待てばいい。しかしそこに来て急に幸恵が赤の他人に遺産を譲渡すると言い出したのだそりゃあ焦るだろう。にしても、五百万で譲れはないよなぁ。苦笑する颯介の言葉に頷いていいものやら。そこでだ、彼に真っ直ぐ見つめられたと思うと「俺と結婚しよう」と、まさかのプロポーズ。は!?何がそこで、なんですか!!食って掛かると、君を守るためなんだ、俺の妻になれば兄もおいそれと手出しできない。俺も君を妻にすればばあさんの株が手に入る。言うなれば利害関係の一致だなとまたもやウインク。彼が言うには、ここひと月というもの、幸恵から凛ちゃんはどう?としつこく薦められていたらしい。遺産を譲ると言ったのも、天涯孤独の凛が将来困らぬようとの配慮だった。そこまで気に入ってくれてたんだ、と思うと涙が出そうになる。その幸恵が自分と颯介との結婚を望んでいる。取り敢えず、五年をめどでどうだろう?そう提案されて凛は、よろしくお願いしますと頭を下げた。親がいないことで反対されるかと思いきや、彼の両親は母(幸恵)から聞いているよ、と大歓迎。婚姻届けの証人欄にも気持ちよくサインして貰えて胸を撫で下ろした。親友の椿には事後報告になってしまい、驚きと共に少し怒られてしまったが、颯介のほうはもっと責められたようで辟易としている。実は龍海へも対策と幸恵のためなのだとは話してあるが、今度詳しく教えてと後日会うことに。一方、同じ頃、颯介は自室で夜神仁と電話をしていた。どういうことです?と淡々と詰められ、事情を話すと溜息の後、凛を泣かせたら承知しませんからと言い残して電話は切れた。凛を死ぬほど気にかけていると本人にも言えな良いものを。あちらにも事情があるとはいえ、兄妹揃って不器用だと思う。俺たちより、お前の方こそ椿とどうなんだよ?と突っ込みたくなったが、他人の色恋沙汰は放っておくに限る。案の定、幸恵は大喜びで、早速結婚祝いにと大事にしていたルビーの指輪を凛に譲っていた。現在は小康状態が続いており、先日は三人で紅瑠偉の舞台を観に行った。朝比奈のコネで当人に会わせて貰ったら十年若返ったみたいだと大はしゃぎしており、その様子に凛も嬉しそうだった。そうこうしているうちに凛と颯介の仲も深まり、五年と言わずずっと一緒に居ようと約束。そんな最中、朝比奈と夜神の共同プロジェクトの巨大テーマパークが遂に完成。その落成式に参加した凛はそこで漸く仁と会話することが出来た。今日はなんていい日、化粧直しに行っていた凛は、具合の悪そうな女性を見つけ介抱をした。水が飲みたいと言うので脱水症状かしらと水を買いに化粧室を出ると何者かに拘束されてしまい・・・。百億の遺産・・・、相続税どれくらい持ってかれるんだろ(^_^;)確か一括で払わないといけないはずなんで、龍海から守る以前に超お金持の旦那がいないと詰みますよね。まぁ、夢のない話ですが、その辺は朝比奈の優秀な税理士が整理してくれるんでしょう。そして、凛を拉致したのは当然龍海の手の者で、颯介と別れろと脅されます。しかし、仁も凛の捜索に手を貸していたのであっさり見つかって龍海は罰として後継者からはずされることに。その後、凛は改めて兄・仁と会い、どうして無視していたのかその真相を語ります。この辺はあまりバラしてもアレなので割愛しますが、彼は彼なりに妹を心配しずっと見守っていたのが判る内容でした。難しい立場だったからきっと苦しかったろうなぁ。数か月後、諸々片付いて颯介と凛は幸恵も参加しやすいようアットホームな挙式を挙げて本編は幕。おまけの番外編はその後日談。第一子の妊娠判明エピソードと、その四年後、第二子を妊娠中の凛を気遣う颯介目線のお話でした。評価:★★★★☆
2026.09.26
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10月13日 ノーチェブックス 醜いと言われて婚約破棄された侯爵令嬢ですが、 狂犬公爵様に溺愛されて幸せです 桜百合 エタニティ・赤 期間限定の契約結婚のはずが、冷徹御曹司の独占欲に孕まされました 白亜凛11月9日 オパール文庫 沼らせないで、メグルくん 元同級生の地味男子が激メロ内科医になって容赦なく迫ってきます! あさぎ千代春11月19日 ティアラ文庫 堅物教育係は躾もご褒美も甘すぎる!? 脱走王女は宰相令息の過保護な溺愛に抗えない 市尾彩佳11月25日 メディアワークス文庫 悪妻は退場しましたので<上> 中村くらら 角川文庫 帝都の禍嫁 真帆路12月1日 Celicaノベルス バッドエンド目前のヒロインに転生した私、 今世ではなぜか独占欲強めの王子様が離してくれません!? 琴子 辺境の魔女と白い竜の幸せな森暮らし ~めぐる季節を、最愛のあなたと共に~ 一ノ谷鈴(敬称略)
2026.09.25
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2025年7月刊ロサージュノベルス著者:森野みずうみ(敬称略)伯爵令嬢マーガレットには前世の記憶があった。-小国の王妃だったが、裏切り者により捕えられ、最期は愛する夫に冷たく見捨てられて絶望の中で処刑された、悲しい記憶が。今世では静かに暮らすことを望むマーガレット。しかし舞踏会で、同じく前世の記憶を持ち、生まれ変わっていた元夫のリチャードと再会する。前世の苦い思い出が過り拒絶するマーガレットだが、リチャードは記憶の中とは違い、切なげな表情で甘く縋るように迫ってきて…?「会いたかった。この瞬間を何度も待ち焦がれたー我が妃」さらには突然求婚され、家の為に断れず結婚することになってしまう。リチャードの豹変に戸惑いながらも、マーガレットはやがて彼の前世からの深い想いを知ることとなりー。「やり直しましょう。わたしたち。最初から」すれ違い夫婦が過去と運命を乗り越える、千年越しの執愛ラブファンタジー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 マーガレット=前世の記憶を持つ伯爵令嬢。 リチャード=侯爵。前世の妻であるマーガレットに求婚する。 アン=前世時代のマーガレットの侍女。 イザベル=リチャードの妹。心臓を患っている。裏切り者によって塔の最上階から吊るされて死ぬ。リヴァージュ伯爵令嬢・マーガレットは、繰り返される悪夢に疲弊していた。だが、彼女には判る。これは私の前世だと。八百年前に滅亡したオレナ王国。その数代前の王リチャード・フェイデンの妃マーガレットは、隣国との戦争中、敵側に寝返った家臣によって囚われた。国境の砦を明け渡すこと。それがマーガレット解放の条件だった。聞き入れられなければ王妃を殺し、塔に遺体を吊るす。不器用な方だけれど、きっとあの方は何を置いてもわたしを助けに来て下さる。マーガレットは愛する夫を信じて待ち続けた。しかし、勧告は無視され、結果彼女は首に荒縄を掛けられて幽閉されていた部屋の窓から突き落とされることになる。首に衝撃と、耳に残る骨の折れる嫌な音でいつもマーガレットは飛び起きる。信じていたのに・・・。あの方にとって私より砦の方が大事なのだと思い知らされた。とはいえ、自分でもわかっている。あの砦は重要拠点、おいそれと渡せるはずがない。きっと廷臣たちからも猛反対されたのだろう。でもだからと言ってそう簡単に割り切れるはずもない。信じていた夫に見捨てられた。それだけが真実で、生まれ変わっても許せずにいる。おかげですっかり男性不審になって、祖母の遺産を相続したのを機に領地に引き籠った。そんなある日、王都のタウンハウスにいる母から手紙が届いた。内容は社交界の重鎮・エヴァレット公爵夫人のパーティーに出席しろというもの。両親にしてみればせっかくのお誘いを断って夫人に睨まれたくはないのだろう。元々家族仲は悪くなく、一生独り身でいいと宣う娘を見捨てず心配してくれているのだ。たまには会いに行かなければ。嫌々ながら王都に向かった彼女は、母から華やかなドレスを贈られてゲンナリ。元々華やかで美しい容姿の彼女には多くの縁談が来ていた。それらすべてを断り、今やマーガレットは二十二歳。貴族令嬢にしては結構な行き遅れになる。無理強いしても、と放っておいてくれてはいるけれどきっと気が気でないはずだ。ごめんなさい、お父様、お母様。心の中で謝罪しながら馬車に乗り込んだ。公爵夫人はマーガレットの顔を見ると本当に来てくださったのね、と上機嫌。その様子に嫌な予感がした。あなたのお相手にどうかと思って、夫人が手招きして黒髪の男性を呼び寄せ私の甥のリチャードよと紹介した。陛下・・・・。間違いない、あの人だ。信じて待ち続けたあの方が目の前に立っていて、マーガレットは眩暈を起こしてふらつく。それを支えてくれたのはリチャードで、いきなり抱きしめられた彼女は目を見開いた。マーガレット、漸く会えた。切なげな声に怒りがこみ上げ、マーガレットは彼に強烈な平手打ちをお見舞いすると、足早に屋敷を後にした。彼にも前世の記憶がある。そう確信した。翌日、伯爵邸の前に一台の馬車が停まった。グロスター侯爵リチャードは、昨夜の謝罪に来たと言う。しかも、マーガレットと結婚したいと両親に頼んでおり、身支度を済ませて降りて来たマーガレットは怒りに震えた。しかし、相手は侯爵。バックにエヴァレット公爵家も付いているとなるとこちらからは断り難い。両親も娘の意思を尊重しつつ、迂闊なことは言えないと困っているようだった。結婚してもあなたの好きにして構わない。だから結婚して欲しい。下手にでているようで、自分の立場を最大限利用しているあたり、狡猾だなと思う。でもまぁそこまでいうなら、とヤケクソ気味にマーガレットは結婚を承諾。式に纏わる面倒事も全て彼に丸投げしたい気分だったが、流石に母に怒られ嫁入り道具にせっせと家門の刺繍を刺す日々。そうこうしているうちに時は流れ、挙式の日はやって来た。侯爵家の結婚式にしてはこじんまりとしていた。あなたは派手な事がお嫌いなようでしたので。見透かされているようで少しイラっとしたが、任せると言ったのは自分だと大人しくしていた。リチャードには体の弱い妹がいた。それでもイザベルは明るく話好きで、あの人と二人だったら間が持たないと心配していただけにその存在がありがたかった。数日後、やはり精神的負担が大きかったのか、マーガレットが熱を出し寝込んだ。リチャードが滑稽に見える程取り乱して心配していたのが意外ではあった。もしかして前世の贖罪のつもりなのだろうか。三日もすると起き上がれるようになり、その翌日には庭を散策できる程度まで回復していた。そんな薄着ではいけないと、走って来たリチャードが自らの上着を掛け寄り添うと、とうとう彼女は爆発。どうして、私を見捨てたのですか?ずっと聞きたかったことを尋ねると彼は何とも言えない表情をして「すまない」と呟いた。謝ってほしいのではない。ただ、あの時のこの人の気持ちを知りたいのだ。そうでなければ自分は過去に囚われたまま。教えて欲しい、必死な形相の彼女に彼は観念したようにあの日のことを語った。戦争が激化し、危険だからとリチャードはマーガレットを彼女の故郷に逃がした。数名の侍女と護衛達、流石にあそこにいれば大丈夫だろう。朝議が長引き見送りに出られなかったが、この戦が終わればすぐ会えるそう思っていた。数日後、戦場に出ていたリチャードは敵の罠に嵌って重傷を負った。王宮で目を覚ますと三日も経っていて、もの言いたげな臣下たちの様子に何故か嫌な予感がした。王妃様が亡くなりました。その言葉に彼は我が耳を失い、どういうことだと激昂。なんと彼女は領地に着いてすぐ、裏切った臣下に囚われ、塔に幽閉されていたと言う。解放条件は国境の砦を明け渡すこと。だが、そんな話、こちらには届いていない。どうしてすぐ連絡しなかった、と問えば、前宰相の娘であるマーガレットの存在を疎んでいた者が報告をもみ消していたそうだ。敵国が指定した期限はリチャードが意識不明の日と被っていて、結果返事はノーと受け取られてマーガレットは殺された。遺体は晒されることなく回収され、今は塔に安置されていると聞き、彼は飛び出した。亡くなってから三日以上、遺体は既に腐臭がしていたが、構わずリチャードは妻の遺体を掻き抱き号泣した。どうして、助けて下さらなかったんですか?マーガレット様はずっと陛下の返事を待っていらっしゃいました。いつも彼女に付き従っていた侍女はアンと言ったか、そのうち興奮して、お前のせいでマーガレット様は死んだんだとリチャードを責めた。遺体は丁寧に王宮まで運ばれ、リチャードは妻の墓所に跪き涙に暮れた。臣下が裏切ったから、報告をもみ消された、そんなのは言い訳に過ぎない。アンはどうしても許せなかったのだろう。彼女に殺されかけたが罪には問わず修道院に送った。そこで静かに暮らせば悲しみも薄れるだろうと。政変により家族を殺され、一人生き残った自分の身元引受人になってくれたクローヴィス侯爵。あなたが王になれと手助けをしてくれて、大事な娘を差し出した。初恋の人でもあるマーガレットとの結婚に自分は喜んだが彼女の気持ちはどうなのだろうといつも不安だった。それでも心の底から愛していた。なのにあんな死に方をさせてしまってとずっと後悔していた。リチャードの話を聞いてマーガレットは泣いた。私は見捨てられたのではなかった。しかも、ずっと愛してくれていたのだと本音を聞きもう充分だと思った。そうだ、仕事人間ではあったけれど、この人はいつも私を気遣ってくれていた。どうして忘れていたのだろう。私もあなたを愛しています。自らの本音を打ち明けると彼は驚いていたが、せっかく二人で同じ時代に生まれ変わったのだ。これからやり直せばいい。他人行儀だった二人が突然仲睦まじくなり、屋敷の者たちは困惑していた。何はともあれ良かったわね、とイザベルに揶揄われたが、気にせず二人は千年ぶりの新婚生活を満喫していた。ある日の夜、寝苦しさに目覚めたリチャードは枕元にイザベルが立っていて飛び起きた。せっかく、あの方に悪夢を見せ続けてあなたを憎むよう仕向けたのに、まさか仲直りしてしまうなんて。あの方は優し過ぎる。私はいつまでも陛下を許せずにいるのに。妹だったその顔がいつのまにか別人に変わったと思うと、リチャードは深い眠りに陥り・・・。転生ものです。前世で悲惨な死を遂げたマーガレットが、同じく転生していた夫・リチャードと再び結婚することに。しかし、献身的な彼の様子に贖罪のつもりかと穿った見方をしていたんですが、漸くあの時の真相を知り、二人は和解。結婚生活をやり直していたわけですが、なんとそこにリチャードに深い恨みを抱いていたアンが悪魔と契約を交わし、千年の時を永らえて復讐の時を狙っていました。そしてその恨みはかつて敬愛していたマーガレットにも向けられ、という展開です。でも、アンのやるせない恨みの気持ちも理解できなくなくはないんですよ。どうしようもなかったと理由を知ってマーガレットは夫への恋情もあって許したけど、アンには憎しみだけが残り続け大事な主人まで悲しませることに。しかし、二人の愛の深さを知って結局自分もマーガレットの幸せを願っていたのだと思い知るのでした。おまけの後日談で二人とその子供たちのことを見守っているアンのエピソードが描かれてたんですが、読んでて泣けました。もう成仏して欲しい気もするけどこれが彼女の望みならそれもいいんじゃないかと。評価:★★★★☆ドロドロ系で切ないお話が好きな方にお勧めです。
2026.09.24
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J:COMの通信障害により、朝からネット繋がらず今日の更新は無理そうです。スマホの方はWiFiに繋がるんですけれど....。明日は無事だといいなぁ。
2026.09.23
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昨日(9月21日)までに購入した本です。レジーナブックス8月刊シリーズ2作目です。佐倉伊織さん、別名義のキャラブンの方も読めてなくて(しかもどちらも続き物)こちらも積みそうでヤバイです。 ベリーズ文庫9月刊4点。まだ7月刊も読めてないのに(^_^;) マーマレード文庫9月刊2点。まだあと1点予定に入れてたような・・・。蜜夢文庫9月刊。レジーナ文庫9月刊。このレーベルも最近あまり購入出来てません。講談社タイガ9月刊こちらは読了済み、感想記事UPしてます。仕事のシフト変更もあって、なかなか読書時間が取れないのが最近の悩みどころです。
2026.09.22
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2026年8月刊スターツ出版文庫著者:松田詩依(敬称略)穢れた力を持つ呪われた双子の妹として虐げられ、姉を唯一の味方と信じて崇拝し、洗脳されてきた千影。彼女は姉の命により敵国の最強軍神・夜神を暗殺するはずが失敗し、彼に囚われてしまう。しかし千影の強力な穢れの力は、不死身の夜神を癒やし力を与える唯一無二の存在だった。「俺の妻になれ」と全肯定され深く溺愛される中で、夜神は千影の心を縛る姉の洗脳を優しく解きほぐしていく。呪われた少女が歪んだ呪縛を打ち砕き、自らの意志で幸せをつかむまで。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 神垣千影=穢れを宿す「呪紋の子」として長らく幽閉されていたが、敵国の大 将・夜神との政略結婚が決まる。 夜神=常世国の大将。何もかも承知の上で千影を妻に迎えた。 神垣紫光=千影の双子の姉。煌都国を守る巫女として君臨する。 久守匡真=千影の元婚約者。紫光に心酔している。 志穂=夜神の世話係。煌都国の由緒ある神官の家で産まれながらも不吉な存在として千影は長く虐げられてきた。反対に双子の姉・紫光は「神に愛された娘」として大事にされている。姉と違って自分は穢れを宿す「呪紋の子」、生かされているだけでも感謝しなければ・・・。それに、この国の穢れを祓うと人々から崇められながらも姉は妹を見捨てなかった。紫光姉さまから貰う血は体の痛みを楽にしてくれる。皆が私を蔑み、触れたがらないのに姉さまは労わりの言葉をかけ頬を撫でてくれた。だから、代わりに私は浄化の儀式によって内に溜まった姉さまの穢れを引き受けるの。孤独な少女は唯一の味方である姉に心酔し、依存し切っていた。自分が姉から移された穢れに苦しめられていることに自覚がない程に。数年後、珍しく父に呼び出された千影は自分に婚約者が出来たと知らされた。お相手は元軍人の久守匡真。神垣家の分家筋であり、今は父の元で神官の仕事をしているらしい。巫女である紫光は生涯純潔を守らなければならない。だが、神垣家の血を絶やすわけにはいかない。そこで千影に後継を産ませる必要があった。忌み嫌われながらもこうして生かされていたのはそう言うわけだ。これも姉さまのため。千影は唯々諾々と受け入れた。匡真は婚約者でありながら千影を疎み、この結婚は飽くまで神垣の血を後世に残すためと割り切り、結婚しても馴れ馴れしくするなと彼女に言い含めた。それでも床入りはどうあっても回避できない。汚らわしいお前が妻などと、あの方の妹でなければとどうしようもない事で千影を責めた。そんな様子を知ってか知らずか、紫光は千影を宜しくねと彼に微笑みかける。途端に挙動不審になる彼を見て、匡真は姉が好きなのだと思い知る。自分との結婚に名乗りを上げたのも姉の側にいるため。仲良さげな二人を眺め疎外感を感じていると、紫光が一緒に出掛けない?と二人を誘った。輿入れはまだ先のことだが、それでもこうして出掛けられるのは最後かもしれない。妹の結婚に姉も感傷的になっているのだろう。数日後、聖域と呼ばれる山まで行くと見事な紅葉だった。が、一方ここは常世国との国境近く、度々邪鬼が現れると聞く。姉も満足したようだし、帰りを促すと運の悪いことに邪鬼と出くわしてしまった。匡真は必死に紫光を守ったが、千影を庇いケガを負ってしまった。傷口から穢れを吸い取り応急手当てをした千影は匡真に姉を託すと囮になるため別方向に駆け出した。しかしすぐ追い付かれて彼女は深手を負い、弾みで崖から転がり落ち気を失った。数時間後、目を覚ますと千影は病院に居た。誰かが「ごめん」と謝りながら背負って運んでくれた夢を見たのだが、あれは夢ではなかった?その後、紫光の我儘で出かけたと言うのに、巫女にケガをさせた上、邪鬼の攻撃で更に穢れを溜め込む羽目になった千影は罰として地下に幽閉されたのだった。三年後、突如牢から引き出された千影は常世国の大将・夜神に嫁ぐよう命じられた。煌都国と常世国は長く敵対していたのだが、この度和平条約が結ばれ、その証として決まった結婚だった。夜神さまは私の体質をご存じなのだろうか。身支度を整えられ、迎えを待っていた千影に別れも挨拶に来た紫光は、あなたの身体中にあるその呪紋を見てあちらの大将はどう思うでしょうね、と嘲笑。あなたにはあれからも穢れを引き受けてもらってたけどそろそろ容量も限界そうだからもう要らない。その穢れで夜神を殺してきて?酷い事を言われているはずなのに、逆らう気持ちは無かった。暗殺をほのめかされた千影は静かに頷いていた。常世国はこんな狭い部屋で祝言を行うのね。四畳くらいの部屋で夜神と向かい合った千影は、言われた通りに盃を交わし彼の口づけを受け入れた。常人ならば穢れでひとたまりもないはず。が、彼は「人間兵器」とも呼ばれる超人。致命傷にはならないか、袂に隠し持っていた短刀で彼の胸を狙うがガッチリ手首を掴まれびくともしない。そればかりか再び口づけられたと思うと、どんどん穢れを吸われて行く。そのうち彼女は意識を失い倒れ込んだ。「俺の花嫁だ、丁重に使えよ」そう言って、入室してきた者たちに指示する声が聞こえた。目覚めると牢の中にいた。気付いたか?そう言われて目を向けると夜神が立っていて、咄嗟とはいえ大量に穢れを吸い出して済まなかったと詫びられた。千影は夜神の暗殺未遂犯として牢に入れられたらしい。自分は無事だったのだから必要ないと反対してくれたようだが聞き入れられず、上に掛け合い漸く釈放の許可が出たのだと言う。とにかく、しっかり休んで体に肉を付けろ、言いつつ千影を抱き上げるとすたすた歩き出した。表に停まっていた車に乗せられやって来たのは二階建ての洋館。迎えに出て来た志穂と言う名の使用人に千影を託すとさっさと奥に行ってしまった。この国の人たちは呪紋を怖がらないのね。夜神がかなり吸い出してくれたおかげで身体中にあった呪紋は大分薄れていた。それでも見ていて気持ちの良いものではないはず。なのに志穂は全く嫌がる素振りも無く、千影の身体を洗い着替えの手伝いをしてくれた。見ると志穂の手にも呪紋がある。思わずガン見してしまい、慌てて謝ると志穂は微笑み、これは夫と息子が生きていた証なのだと告げた。この国もやはり邪鬼は多く出現する。彼女もまた邪鬼に襲われ華族を失い自身も重傷を負った。邪鬼を倒した夜神に拾われ、ここで住み込みで働いているのだそう。奥様のお世話もお任せくださいと言われ、おずおずと頷いた。多分、お前は姉に洗脳されている。紫光に持たされた着替えには全て呪詛がかけられていて、それを燃やしながら夜神に告げられ、千影はショックを受けた。今思えば、どうしてあそこまで盲目的に姉を信じていたのだろう。まぁ、味方があの巫女様だけじゃぁ仕方ないさ。不器用な慰めだったけれど、彼は優しい人なのだなと思う。着替えを燃やしてしまったからな、そう言って彼は山ほどの洋服を千影に買い与え、美容室で髪を整えさせた。鏡を見れば美しい紫光とそっくりの顔があった。美容師には肩にある呪紋に気付いたろうにここでも気にされていなかった。故郷では穢れた者は全て国から追い出されていたのに・・・。帰りの車中で疑問を口にすれば、呪紋があっても普通に生活できるものを追い出したりはしないのだそう。本当にここは本当に煌都とは違うのね。そして、夜神は自らの体質を語った。彼は邪鬼の殲滅のため軍が生み出した人間兵器であるが、特質上、常に穢れを欲していた。じゃぁ、あの時私の穢れを吸ったのは?その疑問に頷くと、俺たちは互いにウインウインな体質なんだ。俺はお前の穢れを吸い取り力を増す。お前は体内の穢れで苦しむ必要は無くなる。それに、と付け加えられたのは彼が穢れの塊の存在であるがゆえに、不用意に素手で生物に触れられない事。お前には口づけても平気だったろう?聞かれて頷くと、それもお前の体質のおかげだと。利害関係の一致。取り敢えず、こんな自分でも必要としてくれる人がいる。そう思うと千影は嬉しかった。その頃、煌都では紫光が呪詛返しを食らい苦悶していた。さすがは常世国の切り札。あの子も失敗した割には生かされてるみたいだし腹が立つったら。それに、浄化儀式を望む者が多く、そろそろ穢れをどこかに移さないと拙い。やっぱりあの子を嫁に出したのは早まったかしら。とにかく、連れ戻さないと自分の身が持たない。それからというもの幾度か千影を返還するよう夜神と常世国に送ったが、すでに婚姻は結ばれているからと一向に応じない。仕方ないので、こちらの式典に二人を呼んだらとんだ恥をかかされる始末。そんな彼女に、私にお任せくださいと跪いたのは匡真だった。それから暫く経った頃、夜神が討伐に出ていた際、屋敷に侵入者が。急ぎ戻ったら、志穂が深手を負って倒れており、千影が何者かに攫われたと告げられ・・・。巫女でありながら腹黒の姉に洗脳された妹が、元敵国の大将との結婚で本来の自分を取り戻すお話です。紫光の意向に従い、千影を攫った匡真ですが、その身体は紫光により穢れを移され邪鬼になりかけていました。助けに来た夜神とも互角に戦い、若干押されかけていた所、姉の血で再び洗脳されかけた千影が彼の前に現れ、という展開です。姉がもう、とんでもない人でなしで絶対にけちょんけちょんにしてくれと読みながら思っていたら、まぁまぁプライドがズタズタになるような咎を受けたのでいい気味。匡真は紫光にのせられたようなものだけど、元からの性格がアレだったのもあり、順当な最期でありました。メイン二人の顛末ですが、実は夜神が三年前、千影を背負って人のいる所まで連れてってくれた張本人だったりで、二人が出会うべくして出会ったのだと判ります。「ごめん」と謝って意味は後に本人からも語られるんですけど、この辺は敢えて割愛します。その辺踏まえて、どちらかというと夜神の方が千影に惚れてる感じ。あの時の女の子に会えて嬉しさ反面、罪悪感反面と言った所でしょうかね。千影も姉の支配を脱却し、自分を一番に愛してくれる人に会えて良かった。評価:★★★★
2026.09.21
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2025年1月刊ティアラ文庫著者:桜舘ゆう(敬称略)『シンデレラ』として転生したアーティ。でも王子様とは結婚したくない!自立して夢を叶えるべく家出しようとしたら、ずっと好きだった幼馴染の魔法使い・シリウスに求婚され!?「君のいない世界は耐えられない」独占欲の滲む甘い囁き。巧みな愛撫で蕩けた最奥に愛楔を受け入れれば、心ごと抱きしめられているようで幸せいっぱいにー。運命を変えた乙女の、最高の溺愛婚! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 アタナシア=童話「シンデレラ」のヒロイン。 実母の死をきっかけに前世を思い出す。 シリウス=アタナシアの幼馴染みで初恋の人。優秀な魔法使い。 ヴェルデル=オリスタリア王国王子。「シンデレラ」のヒーロー。 ヴァレッタ=シリウスの侯爵令嬢。 エルマ=アタナシアの意地悪な義姉。 ドルシア=エルマの妹。大人しく地味な性格。モルベルト男爵令嬢・アタナシアには前世の記憶がある。それを思い出したのは四年ほど前のこと。実母の病死がきっかけだった。突如流れ込んで来た二十九年に渡る前世の記憶。ファッションデザイナーだった自分は奇しくも「シンデレラ」をモチーフにした個展「シンデレラ展」に心血を注ぎこんでいた。が、個展開催が間近に迫った日、彼女は轢かれそうな猫を助けて事故死。デザイナーが急死したのだ、恐らく個展は中止になったんだろうなぁ。そう思うと後悔が残る。にしてもまさか自分が「シンデレラ」のヒロインに転生するなんて、これも心残りの影響なのだろうか。つくづく縁があるとしか思えない。せっかくならこの世界でもデザイナーになりたかったのだけど、自分が迎えるエンディングを思うとどう考えても無理な話だ。正直、彼氏いない歴年齢の自分からしてみれば一目惚れなんて信じていない。そんな私が初対面の王子に惚れて惚れられ王子妃になんてなれるんだろうか。王子様よりよほど王子様らしい幼馴染のシリウスを思い出して笑みが浮かぶ。とんでもないスパダリキャラのくせにこんな私と結婚したいと言ってくれる人。王弟であるベイフェルト公爵の嫡男で、少し前に将来の勉強のために公爵領の一つ・ブルクハウゼン領の領地に行ってしまった。もしかしてこれは彼がモブである証拠なのかもね。大筋は変わらないが、かの物語は翻訳や解釈、出版社によって微妙に内容が違っていたりする。シンデレラのシンボルともいえる靴がガラスでなかったり・・・。それでもヒロインには幼馴染なんていなかったはず。もうすぐ意地悪な継母と義姉妹が父の再婚によりやって来る。取り上げられないうちにお母様の遺品で金目の物は全部かくしておかなくちゃ。時は流れ、漸く長い勉強を終えシリウスは王都に戻るべく準備をしていた。当時は父に止められたが、こうしてブルクハウゼンの領地を受け継ぎ、新たに公爵となった今、アーティ(アタナシア)に正式に結婚を申し込むことが出来る。しかし、最初の一年は頻繁に返事をくれていた彼女だったが、今では精々年に数通返信があれば良い方。父によれば、モルベルト男爵家は没落寸前だと言う。彼女の家はそこそこ裕福だったはずだ。それが没落?それが傍から見ても傾いているとなれば、再婚相手が問題なのだろう。男爵は溺愛していた先妻を失くして以来、人が変わってしまったと聞く。それでも仕事だけは真面目にこなしているから下手に口を挟めず父も心配していた。きっと正面から尋ねたらごまかされるな。ならばと、空間移動の魔法を使い、身一つで男爵家の裏口に転移。だがそこでシリウスは信じられない者を見て絶句した。なんで、彼女が洗濯なんてしているんだ!?地味な灰色のワンピースを着た彼女は汗だくで、時たま洗濯物を広げては汚れが落ちているか確認している。すると、ドレス姿の若い女が現れ、明日のお茶会用に使うテーブルクロスの刺繍は終わったのか?とキンキン声で尋ねる。今日中には、と答えながらアーティは呆れたように溜息を吐きながら、毎日やることが多すぎです。テーブルクロスだけでなくバザー用の小物もお義姉さまに頼まれてるんですよ?家事全般私に丸投げされてるのに無理言わないでください。頭の良い彼女らしく、理路整然と状況を説明したが、それが気に食わないと義姉はアーティの頬を叩くと二日だけ洗濯以外の家事はしなくていいから、とにかく刺繍を仕上げろと告げると足早に去って行った。信じられない・・・。義姉があんな調子じゃ、継母はもっとひどいのだろう。男爵は何をやっているんだ!?とにかく、彼女の現状を見極めなければ。呪文を唱えたシリウスは一瞬で黒猫に変身すると、アーティの足に擦り寄った。動物好きの彼女はすぐさま猫を抱き上げ、自分の部屋に連れ帰った。ごめんね、私これから大急ぎで刺繍を仕上げなきゃ。猫(シリウス)をベッドに下ろすとアーティは裁縫道具を取り出した。テーブルクロスなのだろう、大きな布に繊細な刺繍が施されている。彼女は昔から刺繍が上手だった。貰って欲しいと恥ずかしそうに手渡されたガーベラが刺繍されたハンカチは今でもシリウスの宝物だ。あの義姉の口ぶりではこのテーブルクロスもバザーの品も全部自分が刺繍をしたと言うつもりのはず。しかも何だこの部屋は、屋根部屋じゃないか。怒りがこみ上げどうやって彼女を救うか頭を巡らした。転移魔法でアーティを連れ出すのは簡単だが、まだ彼女の気持ちを聞いていない。こんなことならもっと度々様子見に来るのだった。せめてまともな食事位は用意してやれたし、それこそ父に相談して彼女を助けることも出来たはず。つくづく当時まだ子供だった自分が悔やまれる。取り合えず、どうしたいのかアーティに聞くべきだな。シリウスは夢の中を装い、彼女の前に現れるとこれまでのことと、自分と結婚するつもりはあるのかを尋ねた。アーティが継母たちに受けた仕打ちは想像以上だった。だが、次女のドルシアだけは無理を言わずたまに食事の差し入れをしてくれたそう。要は酷いのは継母のカルラと義姉のエルマってことか。二人は邸中の金目の物を全て売り払い贅沢三昧、そのうち使用人を雇う金も無くなった。執事のセバスチャンだけは残ってくれているけれど彼にだって生活はある、そのうち出て行くのではと思っているとも。でもね、お母様の形見はここに隠してあるの。さすがにドレスは全部は無理だけど・・・。私、ドレスショップの店をやりたいんだ。お母様の遺品を売ってその頭金にしようって、嬉しそうに夢を語る彼女にストップをかけたシリウスは、僕のお嫁さんになってくれるんじゃないのかい?と問いかけた。恨めし気な視線に、私だってシリウスと結婚したいけど、無理よ。私は王子様に見初められて王子妃になるんだもの。王子!?はぁ?嘘だろ、あいつが君を見初めるだって!?従兄弟のヴェルデル王子の顔を思い出して、ぶるぶる拳が震える。それが「シンデレラ」のエンディングで、私がその主人公なの。ここは童話の世界なのよ。愛しい彼女がとんでもないことを言っている・・・。俄かには信じられないが、だからこそ父の再婚時期を知り母親の遺品を隠せたのだろう。王子妃になったらデザイナーにもなれないしドレスショップも出来ないわ。私それは嫌なのだから逃げようと思ってて。要はアーティはシリウスが迎えに来るのを信じていなかったのだ。期待もせず、決められた未来に抗う為一人で何とかしようとしていた。そんなことしなくていい!君は僕と結婚するんだ、あいつには渡さない。ドレスショップがやりたいなら協力するとも、シリウスの勢いに若干彼女は引いていたが、漸く信じてくれたのか涙を浮かべた。だが、後日開催される舞踏会は適齢期の貴族令嬢は全員参加が義務付けられている。それにはアタナシアも参加しなければならない。まぁ、着ていくドレスも無いんだけど、そんな彼女はまだこれが夢の中だと思っているようだ。それならそれで自分の魔法で飛び切りの装いと演出を用意しよう。舞踏会当日、魔法使いを装い、シリウスはアタナシアに素敵なドレスと、かぼちゃの馬車、そしてネズミの馭者にガラスの靴を用意した。奇しくも彼が用意したのは物語と同じもの。かくして彼女はしっかり王子に惚れられ追いかけられる羽目に。道中、シリウスに拾われ、彼こそが魔法使いと打ち明けられ驚いたが、あいつに見つかる前に籍を入れようと公爵家のタウンハウスに着くなりサインさせられた。さすがのヴェルデルも例えアーティを見つけだしても人妻に手出しはしないだろう。ホッとしたのも束の間、なんと王子はいつまでも見つからない令嬢にしびれを切らし、シンデレラに多額の懸賞金をかけ・・・。童話のヒロインである初恋の人を救うため奮闘する魔法使いのお話です。シリウスはヒロイン以外にはどうでもよいスタンスなので、こうなったら身代わりを仕立てるか、と画策していた頃、民の血税をそんなくだらないことに使うとは何事か、とヴェルデルによる懸賞金によるシンデレラ探しは猛反発をくらいます。そりゃ、一億もかけてたんじゃねぇ。おかげで懸賞金は撤回され、シリウスの案でもう一度舞踏会を開いてそこでお気に入りを見つけろと言う言葉に王子も渋々承諾。なぜなら、シンデレラの装いには認識阻害の魔法がかかっていたため、面影くらいしか覚えていなかったから。なのに、足が良かったから惚れたとか言うもんだから、そんなんで妃決めていいんかいっ、となりました。シリウスが「あいつ」と言ってたのも、そういう性格だと身に沁みてたからなんですね。結果、彼の案は功を奏し、アタナシア渾身のドレスを着た侯爵令嬢ヴァレッタが見事妃の座を射止めてめでたしめでたし。出来れば次女以外の継母たちには痛い目に遭って欲しかったけど、多分、このお話ではザマァにはあまり重きを置いていないんだろうなぁ。評価:★★★★☆
2026.09.20
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2026年9月刊講談社タイガ著者:友麻碧(敬称略)大妖怪ぬらりひょんが出現した。正体はーー夜行の母・朱鷺子。陰陽寮が総力を挙げて討伐に乗り出すも、ぬらりひょんは隊士を翻弄し、浅草は大混乱に陥る。英雄として母を斬る覚悟を固める夜行だが、それには大きな代償が待ち受けていた。一方、武井に攫われた菜々緒には大妖怪・天狗の魔の手が迫る。引き裂かれた夜行と菜々緒は、運命を乗り越えられるのか。五行結界動乱編、決着! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 紅椿菜々緒=類稀な霊力を持ち、数年前猩猩に攫われ額に印を刻まれている。 紅椿夜行=菜々緒の夫。「皇國の守護神」の二つ名を持つ。 紅椿朱鷺子=夜行の母。 武井=本名・橙院武流。天狗の命で菜々緒を拉致した。 菊大路一成=六番隊隊長。夜行の同級生。 京極零時=十三番隊隊長。一成と夜行の同級生。武井に攫われた菜々緒が連れて来られたのは天狗の集落・天狗郷。どうやら武井は、これまでも天狗の命で幾人もの霊力の高い女を献上していたらしい。菜々緒を引き渡し、蛍流に会わせてくれと叫んでいた。が、外法と名乗る大和天狗の長が彼に寄越したのは、箱。こうしてあくせく武井が命令をこなしている間、蛍流は亡くなりその遺骸は外法に食われていた。箱の中に入っていたのは頭蓋骨と小さな骨がいくつか。茫然としていた武井は自らが騙されていたことを知るや、菜々緒を連れ天狗郷を脱出。激しい追手からの攻撃を躱し辿り着いたのは一時潜伏していた小屋だった。鷹夜がくれた籠目玉のおかげで何とか追手を巻いたけれど、武井が深手を負ってしまった。奇しくもここは五行結界の外。陰陽寮の助けは望めないかもしれない。程なくして武井が目を覚まし、菜々緒は蛍流が彼の妹だと知った。何があったのかは知らないが、妹が天狗に囚われて従わざるを得なかったのだろう。確かに武井は許されないことをした。それでも死んでほしくはないと思う。菜々緒は小屋の近くで採集した木の実をすりつぶして水に溶いたものを彼に飲ませた。きちんと儀式を踏んで作ったものだ、少しは回復の助けになるはず。数時間後、武井は予想以上に回復しており、誘拐の際に使用した打掛を菜々緒に手渡した。これを被っていれば追手にも見つからないと。自分が時間を稼ぐから夜行の元に返れということらしいが天狗の追手は中々に強く武井の奮闘があってもなかなか隙を作れない。結局見つかってしまった菜々緒だったが、必死の抵抗をしているうちに天狗の姿が消えていた。右の掌が熱い。見ると掌に×の字が浮かんでいる。そして足元にも×の字がいくつも散らばっていて何が何やら。困惑する彼女の耳に聞こえたのは自分を探す夜行の声。彼は菜々緒を見つけると無事でよかったと抱きしめた。彼の他に一成と零時が来ており、追手たちは次々倒されて行く。武井は救助と言うより捕縛されたようだが、一先ず彼も助かって良かった。菜々緒救出も成り、彼らはすぐにでも皇都に引き返すと言う。大妖怪ぬらりひょんが現れ、大暴れしているそうだが、その正体は朱鷺子。錯乱した彼女が飲んだぬらりひょんの丹丸のせいらしい。どちらにせよ、元に戻す手段がない。そうなればもう斬るしかないのだ。いくら嫌われていたにせよ、夜行にしてみれば朱鷺子は実の母だ。本音を言えばそんな辛いことはして欲しくない。だが、実の親だからこそ自分が手を下さなければならないと夜行は決意していた。一方、夜行の父・夜一郎は息子に咎を背をわせまいと、部下の緑川蓮太郎に特殊な銃弾を託し、ある頼みごとをしていた。夜一郎は自分が朱鷺子を押さえる。動きが止まったら自分ごと撃て、と。この作戦は鷹夜の乱入もあり、少し計画は狂ったが朱鷺子の自我を呼び覚ますのには成功。蓮太郎のライフルが放つ銃弾は全弾命中したが、断末魔の呪いが発動。夜一郎と蓮太郎が重傷を負うも仕留めるには至らなかった。結果、再び朱鷺子の意識はぬらりひょんに飲まれ、丁度その場に到着した夜行は母親だった大妖怪と対峙した。その頃、陰陽寮で菜々緒の話を聞いていた卑弥呼は、彼女に封印の才があると確信した。何匹もの天狗を一瞬で封じたのも彼女の霊力ならば不思議はない。もしかしてこれはぬらりひょんを倒す切り札になるかもしれない。迷っている暇はない、卑弥呼は武井もとい、橙院武流に菜々緒の力を呼び起こすよう指示。これは彼が橙院家でも類稀な力を持ち、呪法にも精通しているからだ。かくして、本来の力に目覚めた菜々緒は夜行の元へと急ぎ・・・。五行結界動乱編の後編です。武井さんにものっぴきならない事情があったようで、根っからの悪人では無かったのは良かった。でも、彼の大事な妹は天狗に食われ既にこの世を去っていました。生きる希望を失っていた武井ですが、騒動後に菜々緒に頼まれた沙羅の交霊術によってほんの少しだけでしたが妹と話すことが出来て、その遺言に従い生きると決意します。本来なら死刑になるほどの罪状でしたが、卑弥呼の計らいで五番隊に送り込まれ、そこで新たな人生を始めるのでした。一方、夜行は椿鬼の特性を生かしぬらりひょんとも戦えていましたが、ここにきて血縁の呪いが発動。朱鷺子が傷付けば夜行にも傷が出来、段々と劣勢に。そこに現れたのが菜々緒で、一成たちの援護のおかげで何とかぬらりひょんに辿り着き、という展開です。その際、ぬらりひょんの中にいた朱鷺子の意識と会話した彼女は義母の真意を知るんですけど、ホント、ぬらりひょん、許せんなという気持ちに。菜々緒のがんばりでなんとか朱鷺子は救えたものの、その後の顛末が何とも切ない。夜一郎も怪我と今回の事件の責任を取り引退したことで紅椿家の序列はかなり落ちることになりそう。そんな最中でも、夜行と菜々緒の祝言が挙げられたのは良かったのかもしれない。そして、夜行は卑弥子から菜々緒の額の印について語ります。あれはあやかしに付けられた傷ではない、と。菜々緒の傷の秘密については、次の「序列変動白宵編」で描かれるそうですが、小説の方はまたコミカライズ版で一区切りついてからの発売でしょうね。また二年くらい待たされるのかしら(^_^;)評価:★★★★★ダブルカバーの隊長たち&菜々緒の構図が良いです。
2026.09.19
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2025年9月刊ノーチェブックス著者:無憂(敬称略)自国の平和のため、隣国へと嫁がされた姫、ジュスティーヌ。彼女を娶った大公は彼女をずっと虐げてきたが『とある事件』で死去し、ジュスティーヌは自国へ戻ることに。天真爛漫だった彼女は、男性への不信感に満ちていた。国王や王太子はそんな彼女を慰めるため、護衛騎士となったラファエルにジュスティーヌを降嫁させようとする。ラファエルも彼女を憎からず思っていたが彼には彼の事情があった。--ラファエルには婚約者がいたのだ。しかし、ジュスティーヌのことを知るごとに彼の心は揺らぎ、次第に強い独占欲を剥き出しにするようになってーー? これは、無垢な姫君と無自覚に巨大な執着を抱く騎士がいびつに淫らな夫婦になっていくまでの物語。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ジュスティーヌ=ノール王家の末姫。和平のため隣国の大公に嫁いだが、加虐趣 味のある夫に長年虐待されていた。 ラファエル=近衛騎士。帰国したジュスティーヌの護衛を務める。 マルスラン=ノール王国王太子。 ミレイユ=ラファエルの恋人。 アギヨン侯爵=ミレイユの父。貴族派の重鎮。戦争を終わらせた立役者であるジュスティーヌ王女が帰国される。ノール王国の民たちは喜びに沸いていた。六年前、まだ十二歳だった末姫は隣国の大公に嫁いだ。停戦の条件が王女を貰い受けることだったからだ。だが、大公は当時五十を過ぎており、王女とは四十も歳の差がある。当然、ノール王家は渋ったが、ジュスティーヌ本人が自ら志願したことで話は決まった。自分が嫁ぐことでこの不毛な戦争が終わるなら、と。引き渡しの際、王女の護衛を務めたラファエルはまだ騎士になりたての新米だった。王女は笑顔で家族に手を振り、凛と前を向いた。だが、側にいたラファエルは王女の目に涙が光っていたのを見逃さなかった。まだこんなお歳の方が国のためにと思うと労しくてならない。どうか幸せであられるようにそう願わずにはいられなかった。ジュスティーヌ王女の帰国から数日後、王宮に呼び出されたラファエルは、王太子から直々に王女の護衛を依頼された。大公の死により帰国が適った王女が修道院に行きたいと願っているそうで、国王と二人必死に止めていると言う。お前もあの国で妹がどんな目に遭っていたか聞いているだろう?詳しくは存じ上げませんが、と前置き肯定すると、マルスランは隣国の大公への恨み言を吐き出した。六年もの間、ジュスティーヌは夫から受けた虐待で身も心もボロボロになっていた。ドレスの下は消えない傷跡が無数にあり、診察をした医師が絶句したほどのものだったと言う。あの男のせいで妹は男性恐怖症で再婚させるのも難しい。かといって修道院に行かせるのもな。ほとほと困り果てた王家は暫く静養させるのが良いだろうと、輿入れにも着いて行った侍女達と乳母と共に王女を離宮に送った。その護衛をラファエルに頼みたいのだと。まだ十八歳のはずだが、美しく成長はしていたものの、ジュスティーヌにはどこか危なげな雰囲気があった。家族との再会で多少は元気を取り戻したようだが、当然ながらあの頃のような天真爛漫さは影も形もない。幸いにも、ジュスティーヌは護衛騎士達を怖がる素振りは無かった。苦労を共にした乳母と侍女達が傍にいるおかげもあるだろう。マルスランも一番怖がるのは大公と同年代の男だと言っていたし、それは仕方ないことだ。なのに、後添えを欲しがる高位貴族達がジュスティーヌを妻に、と申し込んで来ているらしい。誰のおかげで戦争が終わったと思っているのだとラファエルは恥知らずな男たちに内心で悪態をついた。ひと月ほど経つと漸く彼女に笑顔が戻った。祖母である王太后との面会のため、数日離宮を離れたのも良い気分転換になったようだ。その頃から彼女は、水面に映る月が見たいの、そう言ってラファエルを伴い夜の散歩をするように。あの人が寝所を訪れる夜は辛くて堪らなかった。でも、来なければ来ないで幽閉同然の私はどこにも行けなかったの。そんな時はいつも窓から池に映る月を眺めていたのよ・・・。隣国で過ごしていた時、王女にとって水面に映る月だけが慰めだったのは理解した。だから、こうしてまた月を見たくなる夜は付き合ってくださいねと頼まれ、ラファエルは必ずと誓いを立てた。その頃から、ジュスティーヌはラファエルに対し好意を抱くようになっていた。だが、近衛騎士であり隊長、加えてあの容姿だ恋人位いるだろう。それにこんな体の自分が愛されるわけはない。そんな彼女の気持ちを他所に、休暇で実家に戻っていたラファエルは父からジュスティーヌが自分に降嫁すると聞いて驚いていた。王と王太子からの頼みなのだと言う。降嫁するにしたってラファエルは伯爵家の次男坊だ。兄がいるので爵位は継げない。それに俺にはミレイユと言う恋人がいるんだぞ。どういうことだと、父と兄に食って掛かれば、元々王女のお相手にお前をと、お考えだったらしいのだという予想外の答え。ラファエルは先の戦で勲功を挙げている。褒賞として長く席の空いているボーモン領の領主に据え、未亡人となり帰国したジュスティーヌを嫁がせる。護衛騎士に任命したのもラファエルに慣れさせるためだったのだろう。マルスランがラファエルを随分と買ってくれていたからこのジロント伯爵家も大層な名誉だと大喜び。それにミレイユ嬢との結婚は無理だ。アギヨン侯爵が許すはずがない、とも。数年前に手酷く断られているし、本当なら封爵はもっと早くに決まるはずだった。それを侯爵が猛反対して先送りになっていたのだと聞いてラファエルはショックを受けた。王女の都合で白い結婚になるかもしれないが、必ずお受けしろと言い含められ彼は頭を抱えた。ジュスティーヌが嫌いなのではない。寧ろ初恋の人だった。ミレイユと交際が始まったのもあの輿入れの直後、やさぐれていた時期に庶子だと侮られ泣いていた彼女に同情したからだ。それでも一度は結婚を決意し求婚までしたのに、侯爵は爵位も無ければ手柄も立てていない男に娘はやれないと門前払い。そこで奮起した彼は数々の武功を立てわざわざマルスランも褒賞として叙爵できるよう取り計らってくれたのにそれさえ横やりを入れて潰されていたとは。腹が立って段々ミレイユへの想いもしぼんでいくのも判る。元々は初恋を忘れるための関係だったのもあり卑怯だと思いながら自然消滅を図ってしまった。先輩で友人の騎士・セルジュに散々詰られたがどうしろと言うのだ。それに、ジュスティーヌ様は俺との結婚を承知しておられるのだろうか・・・。一方、ジュスティーヌもまたついに兄からラファエルとの結婚話を聞かされ仰天していた。お前との結婚、ボーモン伯爵領領主ボーモン伯爵に封ずる。それがラファエルへの褒賞だ。ジロント伯爵家も了承している。これが最善の策なんだ。判っている、家族は皆自分の幸せだけを願っているのだ。兄のお墨付きのラファエルならば白い結婚になってもきっと大事にしてくれると。でも、こんな私が降嫁したら迷惑にならないだろうか。それに彼には恋人がいるとも聞いている。そのことを兄に聞けば、ミレイユ嬢のことなら気にしないでいいと言う。どのみちアギヨン侯爵が許さないとも。お前をまた意に添わぬ男の元にやりたくないんだ。悲痛な兄の言葉に彼女の心は揺れ動いた。だが、そんな時に事件が。なんと思いつめたミレイユが夜会の夜、ジュスティーヌの目の前で自殺を図ったのだ。城内は騒然となり、色恋沙汰でとんでもない事件を起こしたとラファエルとアギヨン侯爵家は処罰を受けた。不幸中の幸いか未遂だったためマルスランの口利きでラファエルは謹慎で済んだ。そして王家はこれ幸いとアギヨン侯爵側は領地の一部の返還を要求。それを隣接するボーモン領に併合させるとラファエルに伯爵位を叙爵。図らずもジュスティーヌの降嫁がスムーズに決まったのだった。こうして正式に決まった結婚。だがどうしても彼女には蟠りが残り・・・。心身ともに傷付いた王女とその護衛騎士との恋物語です。まぁ、中盤揉めに揉めながらも結婚に至るんですけど、ヒーローのラファエルがジュスティーヌ以外には割とクズ男ムーブをかましててですね(^_^;)まぁそれだけお姫様に一途ってことなんでしょうけど、ミレイユへの態度と言い、そりゃセルジュにも叱責されますわ。でもまぁ、ミレイユと駆け落ちしたとしても上手く行かなかったと思う。だって、この人元々ジュスティーヌのことが好きだったんだもの。そんな彼に心惹かれていくジュスティーヌですが、十二で五十過ぎの大公に嫁いでから虐待され続けてすっかり男性恐怖症に。ラファエルと再婚が適うも恐怖心から彼を受け入れることが出来ずに苦悩の日々を過ごします。そんな調子なので二人の不仲説が流れ、ラファエルの前にボーモン領の税金を管理していたバルテルが再び私腹を肥やすためアギヨンの指示で姪のカトリーヌを送って二人の離婚を目論み、という展開です。しかしその頃にはラファエルの努力の甲斐あってか、ジュスティーヌも大分本来の自分を取り戻してきていたので、夫の浮気疑惑を一笑に付します。理由はあんな下品な女をこの人が選らぶとは思わなかったから。騒動後、自らの身体に残った虐待の痕を見せた彼女はあの戦争が自分を手に入れるために大公が起こしたのだと吐露。ずっと言えなかったと泣く彼女をラファエルは抱きしめ・・・。翌年屋敷の使用人たちも目のやり場に困るほどの仲睦まじい二人のやり取りが描かれて物語は幕。あんなクズで最悪なロリコン男は実は不能だったというオチはアレでしたが、初体験が愛する人で本当に良かったと思う。跡継ぎは望めないかもしれないと王家の人々は悲観してたけど、あの熱々ぶりでは割と早く子宝に恵まれそう。評価:★★★★★結構ドロドロな内容でしたが、ヒロインの過去を思うとそれも仕方なし。最後は怒涛のハッピーエンドで本当に良かったです。
2026.09.18
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9月下旬 アルファポリス 不老長呪にまつわる怪取材録 ウェルザード10月上旬 エタニティ文庫・赤 冷徹外科医のこじらせ愛は重くて甘い 伊東悠香10月中旬 アルファポリス文庫 白蛇様の婿入り婚 恋を煎じて、愛を呑む あぐつ11月2日 Kラノベブックスf 貧乏で凡人な転生令嬢ですが、王宮で成り上がってみせます! 小針ゆき子 記憶を失ったらあなたの恋心も消えました ごろごろみかん11月13日 富士見L文庫 捨てられ聖女、魔王城を改築してホテル経営はじめます 茨木野 獅子王と羅針盤の乙女 異世界で❝偽物❞と言われた少女は、極悪非道な海賊に見いだされる 坂合奏 どうせ愛されないのならこれが最初で最後の我儘です 忍丸11月20日 アース・スター文庫 桃果の花嫁 水野沙彰 皇帝陛下のあやかし調理人 夢見里龍11月30日 GCノベルズ 裏方聖女は逃げ出した 1 ~カフェハウスを経営したいので チート薬師になってお金を稼ぎます~ 柚屋志宇12月10日 ムーンドロップス文庫 くじ引きで過保護なイケメン奴隷が当たりました(仮) 季邑えり 公爵閣下の専従次女は愛され甘い夢を見る 別人なのに主人が溺愛してきます(仮) かほなみり(敬称略)
2026.09.17
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2026年8月刊スターツ出版文庫著者:あまぞらりゅう(敬称略)人間、妖、神が共存する瑞穂皇国。高い霊力を持つ秋葉は、名誉ある白龍神の花嫁候補だった。しかしある日、双子の妹・春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。以来、ずっと無能と蔑まれ、生きてきた秋葉を救ったのは、もうひとりの龍神である黒龍神・憂夜。彼は秋葉の魂を見初め、妻にしたいと言う。最初は戸惑う秋葉だったが、次第に彼のもとで居場所を見つけていき…。しかも、何故か奪われたはずの力が戻り始めて!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 四ツ折秋葉=無能の娘として虐げられている四ツ折家の長女。 憂夜=黒龍。秋葉を花嫁に迎える。 四ツ折春菜=秋葉の双子に妹。白龍の花嫁となる。 光河=白龍。 紫流=光河の側近。千年に一度と言われる程の霊力を持って産まれた秋葉は、偶然助けた龍に印を付けられ将来は龍の花嫁になると期待されていた。しかし、それから程なくして双子の妹の春菜が重傷を負い、妹を救うため力を注いだ彼女には少しの霊力も残っていなかった。死にかけた妹の命を救ったのだ。本来なら感謝されるべき所だが、秋葉が無能に成り下がってしまったと知るや両親の態度は一変。春菜でさえも命の恩人である姉を蔑み、以来使用人以下の扱いを受けている。しかも、今まで中の上がいい所だった春菜の霊力が格段に上がり、額には龍神の花嫁の印が。まさか、私の力や印が春菜に移ってしまったの?残りカスすら残っていない今の身体に秋葉は途方に暮れた。数年後、先触れがありいよいよ白龍が春菜を迎えに来る日がやって来た。娘を褒めそやす両親とまんざらでもなさそうな表情の妹。あまり見ていると難癖を付けられてまた殴られてしまう。春菜を救ったことに後悔は無い。でも龍神には自分が印を付けた者が判るのではないか。淡い期待は見事に裏切られ、美しい衣装を纏った春菜を恭しく迎える白龍の姿に茫然。あなたが印をつけたのは私です!悔しくてつい声を上げると、印のないものが戯言を、と一蹴され取り付く島もない。そこにふいに第三者の声が割り込んだ。お前がその女を連れて行くならこの女は俺が貰う。そう言って秋葉を引き寄せた男はニヤリと笑った。白龍によればこの男は黒龍らしい。友人が花嫁を娶るというので寿ぎに来てくれたようだが、随分面白いことになっていると事の成り行きを見守っていたそう。そして、お前の目は節穴だなぁ、と呟く。聞き捨てならんと白龍が文句を付けようとしたが一方的に会話を終わらせた黒龍は、両親に異論はないなと問いかけた。図らずも娘二人が龍神に嫁ぐことになり二人は大喜び。一層の繁栄を期待したが、お前たちがこいつをどう扱っていたか俺は知っているぞ、とキッパリ。流石は神、色々見透かされていると知って特に父は蒼白になっていた。そんな両親に絶縁宣言した秋葉は、よく言ったとばかりに大ウケしている黒龍の住処へ連れて行かれたのだった。ふざけんなっ!あんな無能が黒龍の花嫁!?幼い頃から何でもできた姉が妬ましかった。ある日産まれた邪悪な心の声に従い、自らケガをして死にかけた彼女は姉の霊力と白龍の花嫁の印を根こそぎ奪ってやった。実際死にかけたし危険な賭けだったけどその甲斐あって春菜は全てを手に入れた。そうよ、神こそが私の伴侶に相応しいの。実のところ、皇太子の婚約者に内定していた春菜は皇后になるよりも白龍の伴侶の方が格上だと思い込んでいたのだ。でも、あの黒龍も美しい方だったわね・・・。どうにか、あの方も私のものにならないかしら。邪悪な笑みを浮かべた春菜の思惑に、白龍は全く気付いていなかった。あれから半月。黒龍の屋敷にも慣れて、彼の眷属たちとも親しくなった。狐のあやかしだと言う狐宵からはあまり歓迎されていない感はあったが邪険にされているわけでは無いからと割り切っている。神の花嫁のお役目は神のサポートだ。それ故に霊力の高いものが選ばれる。本来なら秋葉を娶るのは論外なのだが、黒龍・憂夜は彼女の可能性を信じていた。それもそのはず、秋葉は霊力回復のための鍛錬を欠かさない。それは使用人扱いされていた頃から変わらず続けていたことでいずれ実を結ぶことだろう。まぁとんでもない脳筋娘なのは否定できないが。とにかく見守ってやってくれという主の言葉に狐宵は渋々承諾した。一方、娘たちが嫁に行った途端、村の結界が揺らぎ、二人の父・夏純は焦っていた。恥を忍んで娘婿になる白龍に頭を下げたらそれは黒龍の管轄だからとにべもなく断られて愕然。黒龍!?あいつはヤバイ、秋葉を虐待していたのを知っていたし、花嫁をそんな目に遭わせたものは許さないだろう。秋葉にも絶縁されているしどの面下げて頼めばいいのだ!が、いよいよあやかしの侵入が始まり、そのうち対処が追い付かなくなって来た。背に腹は代えられないと夏純は憂夜に土下座して頼み込んだのだが案の定知らぬと追い返された。白龍と春菜に泣きついても申し訳ないが範疇外だと断られ、苦渋の決断で秋葉を呼び出しどうにかしろと命令。当然ながらその行為は憂夜の怒りを買い万事休すとなった所を仲裁したのは秋葉だった。うちはともかく村の皆が気の毒だから。鶴の一声とは正にそのことで憂夜の力で結界は強化された。心なしか夏純の霊力も上がった気がする。そうして天狗になった夏純は調子に乗り、後にしっぺ返しを食らうのだが、それが散々虐げた娘による試しと仕返しだったことに全く気付いていなかった。秋葉の霊力復活の自主練が続く中、白龍・光河の屋敷は横暴すぎる花嫁のせいでぎすぎすしていた。確かに霊力は高いのだが、何故光河さまはあんな性格の悪い娘を選ばれたのだ。春菜に虐げられる使用人たちを庇い続け紫流はへとへとだった。どれだけ何とかして欲しいと進言しても春菜のしたいようにというばかり。お優しい光河さまらしからぬ対応だ。それに度々感じる揺らぎというか邪悪なる気配を感じるのは気のせいか。屋敷の周囲は光河の結界で守られており、害ある者は入って来られないはずなのに。異変が起き始めたのは正に春菜がやって来てからだ。やはり、何かある。一方、その頃、秋葉は春菜の放った式神の襲撃を受けていた。眷属のクロを救うため、彼女の力がついに戻り・・・。ドアマットヒロインと黒龍の恋物語です。が、このヒロイン、脳筋すぎてイマイチ悲壮感を感じられず、妹との決着もまぁそうなるよねって感じでした。姉を羨むあまり邪悪なものに心を乗っ取られてしまった妹・春菜。正直、皇太子の婚約者に選ばれた時点で凄い事なのに私に相応しい夫は神よ、と欲望は止まることを知らず。ああいう手合いは全てを手に入れても決して満たされない。憂夜の言う通り、春菜の欲望は自分自身をも取りかえしのつかない状況へと追い込んでいきます。秋葉の力で何とか龍玉に閉じ込め心の浄化を図るみたいだけど、邪心は消えてもあの性格は治らないと思う。自分の責任でもあるからと春菜のいる龍玉ともども結界に籠るという光河さんの覚悟も立派ですが、ホント、そもそもあなたがちゃんと見極めてればねぇ。上記の通り、脳筋ヒロイン・秋葉ちゃんのおかげで危機的状況でも何とか行きそうな感じが、この手のジャンルでは珍しいな、と思いました。評価:★★★★☆
2026.09.16
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2026年7月刊ムーンドロップス文庫著者:屋月トム伽(敬称略)ある日、妖精の住まう国ベルハイム王国の王女と判明したリーゼ。不幸な境遇から一転、彼女は妖精姫と二つ名をつけられて、エクルース王国の王太子リヒトの後宮へと入ることになる。次期国王でありながら人前に姿を現わさないリヒトは、冷酷非情という噂があった。なのにいきなりキスしたかと思うと、何かとリーゼのことを気に掛け、毎夜彼女のもとを訪れる。だが、後宮にはもう一人令嬢がいて…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 リーゼ=ベルハイム王国王女。従兄のルーセルの頼みでリヒトの花嫁候補とし てエクルース王国までやって来た。 リヒト=エクルース王国王太子。魔力暴走に悩んでいる。 ルーセル=ベルハイム王国王太子。リヒトの友人。 シエラ=リヒトの従妹の公爵令嬢。足が不自由。 エセル=エクルース王宮女官長。リーゼを敵視している。 王妃=リヒトの母。リーゼを気に入り後押しする。妖精の住まう国・ベルハイム王国。王女リーゼは数少ない妖精の愛し子だ。おかげで魔法も数多く使えるが、生まれつき魔力をコントロールするための「魔法の核」に欠陥があり、外から魔力の補充をしないと魔力枯渇により死んでしまうという厄介な体質だった。今は妖精たちがくれた魔法の弓が補充の手助けをしてくれているものの、一時は本当に危なかったのよね。実は、元々リーゼはオルエーヴル伯爵家の生まれだ。両親を早くに亡くし、代わりに後を継いだ伯父から使用人以下の扱いを受けていた。その際、妖精の弓まで取り上げられて当然ながら魔力不足で毎日ふらふら。しかも亡き父が決めた婚約者まで従姉妹のローラに横取りされ正にどん底だった頃、王宮から迎えが来て亡き母・マリサが王妹であると知らされたのだ。妖精のいたずらにより取り換えられた子、それがマリサで王は亡き妹の忘れ形見だとリーゼを引き取ってくれたのだ。あれから一週間、一応令嬢としての教育は受けているけれど、使用人として過ごした期間が長く正直、王女と呼ばれてもまったくピンと来ていない。皆さん、とてもよくしてくださるんだけどね・・・。そんな彼女が従兄で王太子のルーセルからエクルース王国の王太子に嫁いでくれないかと頼まれた。少々事情があってね、彼には君が必要なんだ。優し気な笑みを浮かべるルーセルだったが、目が笑っていない。友人のためと言いつつ多分何か思惑があるのだろう。彼が言うには一先ずリーゼはリヒトの花嫁候補になるらしい。ということは選ばれない可能性もあるわけだ。その場合は側妃としてでも居座ってほしいんだけどね。要はエクルースとどうあっても姻戚関係を結びたいと言うことか。それも無理そうなら仕方ない。その時は遠慮せずに帰っておいで。そう言ってルーセルはリーゼを送り出したのだった。エクルース王国はベルハイム王国の隣国にはなるが、海路でしか行き来できない。陸路では両国間に巨大な妖精の森が鎮座し、妖精の許しが無いと入ることはできても一生出られないと言う。船で数日かけて上陸するとリックと名乗る竜騎士が迎えに来ていた。リヒトは魔族討伐の指揮を取っており、会えるのは翌日になるらしい。花嫁候補は後宮に棲むのが仕来りだそうで王宮に着いて早々、後宮の管理を任されている女官長エセルに引き合わされた。って、なんで睨まれてるの!?生家のオルフェーヴルと名乗ったからか、本当にベルハイム王家の方ですか?とじろじろ見られ、その不躾な態度をリックが叱責した。どこぞの伯爵夫人らしいが仮にも王女への受け答えではない。ここでは女官長が一番偉いのだろうかと勘違いしてしまいそうなほどエセルの態度は尊大だった。だが流石にそうではないらしい。リックがブチ切れ、リヒト様に報告すると口にしたら、こちらですと漸く部屋に案内してくれた。にしても随分と地味な部屋ね、寝台は豪華だけど・・・。おまけにお茶どころか着替えを手伝う侍女も現れない。まぁ、使用人生活が長かったせいで何でも一人でできますが。さっさと風呂に入ると疲れていたのか食事も採らず寝てしまっていた。なんか息苦しい・・・。気付くと誰かにキスされていてリーゼはビックリして魔法を放っていた。随分なご挨拶だな、頬を流れる血を拭った青年は「お前は今夜の夜伽係だろう?」と不遜な態度。まさか、この人。リヒト様ですか?恐る恐る尋ねるとそうだと頷いたので慌てて謝罪し、リーゼは自分がベルハイム王国から来た花嫁候補だと名乗った。彼はリーゼの言葉になんで花嫁候補が夜伽部屋にと考え込んでいる。女官長に案内されたと言えば納得いったようで嘆息すると明日部屋を変えさせると言って出て行った。翌日、リヒトから叱責されたのか女官長が迎えに現れ、新たな部屋に案内された。でもあれ?ここって離れじゃ・・・。見るからに何年も放置されている感のある建物で中は荒れ放題。ちょっと、殿下は本当にここに棲めって仰ったの!?と食って掛かったが、このエクルースの後宮で暮らせる方はお一人のみです。そう言ってさっさと立ち去った。この寒いのに暖炉は埃だらけで薪も見当たらない。おまけに朝食もまだなんですけど~~~~!?とにかく掃除しなきゃ。掃除道具を借りに王宮に向かうととリックと遭遇。新しい部屋はどうでしょうか?と満面の笑みで聞くので手を引き離れに連れて行くと唖然としていた。まさか、そんなはず、殿下はちゃんととオロオロ。その様子にやっぱり女官長の独断かと大きく溜息を吐いた。別に私はここでも構いません。侍女も結構、女官長に何を言い含められてるか怖いですから。きっぱり言い切ると、掃除道具を貸してください、あと薪を戴けると。これは拙い事になったと汗ダラダラのリックに矢継ぎ早に頼み、ふと気になって食事は自分で作るのがこの後宮のしきたりですかと尋ねる。昨夜からお茶の一杯どころか食事も出ないんですけど。そこまで言うとついにリックの堪忍袋の緒が切れたようだ。お待ちくださいと駆け出していく。多分、リヒト様に報告に行ったのね。大事にはしたくなかったが仕方ない。離れに厨房も完備されてはいたが食材も薪もないのでは何もできないんだから。それから暫くすると離れには大勢の使用人たちが集まって作業していた。近くのガゼボで王宮から届いた食事を食べ、食後のお茶を飲んだリーゼはホッと一息吐く。あれから女官長は相当絞られたらしい。なのに一切こちらに一言も謝罪がないとは相当舐められている。作業を見ながらまったりしていると、リーゼさんと気安く声をかけられ振り返る。そこには車いすに乗った綺麗な女性と女官長が。ってか、リーゼ「さん」って・・・。どちら様でしょう?と尋ねれば無礼ですよと、と女官長が声を上げた。それを制してシエラと名乗った女性はリヒトの従妹だと言う。彼は私と結婚するの、この足の責任を取る。彼はそう言ったの。だから王妃になるのは諦めて頂戴ね。言うだけ言うと女官長に車いすを押させてシエルは去って行った。なるほど、彼女が今の後宮の主ってわけね。色々納得がいった。後でリックに話を聞けばシエルは王弟・ネーベル公爵の娘なのだそう。昔からリヒトにベッタリだったが事故で歩けない身体に。それ以上は彼の口からは言えないと言う。まぁ彼女の口ぶりからして何となく事情の察しは付く。女官長が怖いもの知らずなのも。バックに王弟が付いてるんじゃ強気にもなるか。にしても、なんでこの人は毎日私の部屋に来るわけ?隣で眠るリヒトはいつもリーゼにキスをするととても機嫌がよくなる。お前のおかげで伽をしなくて済むと微笑まれ胸が高鳴った。ある夜、どういうことだと尋ねると彼は自らの体質を語った。七年前、妖精の森近くを視察していた彼は水の精霊に襲撃され、魔力の核を壊されたらしい。幸いにもその場に居合わせた見知らぬ女性の治癒の力によって命は取り留めたものの、視察に同行していたシエラは足に重傷を負い彼は魔力の核の損傷によって魔力が不安定に。そのうち膨大な魔力が発散場所を求め身体中を暴れまわり、そのうち周囲の者の体調にも悪影響が。ならば魔力をどこかで吐き出せば良い、そうして効率の良い発散場所として伽が始まったのだと言う。特に女好きでもない彼にとって伽は相当苦痛だった。ストレスは溜まり、シエラには事故の責任を取れと結婚を迫られる。そりゃ気も休まらないわ。でもシエラ様の足は別にリヒト様のせいではないのでは?疑問を口にすると、核が損傷し初めて魔力暴走を起こしたのがあの時だったそう。ネーベル公爵に責任を取れとガン詰めされたが、彼の両親は頑として認めなかった。シエルは王妃の器ではないし、息子には彼自身が望んだ妃を迎えて欲しいからと。良いご両親ですね。頷く彼はお前といると安らぐんだと呟いた。伽で発散せずとも暴走していた魔力が落ち着き、淀みが吸い取られて行くようで。言われてはたと気付く、それ気のせいじゃないかもしれませんと。リーゼは自分も魔力核に障害があること、そのせいで外から魔力を補充する必要があるのだと。説明を聞いて、知らず二人はお互い体質がマッチしていたことに気付き目を丸くした。合点が行ったのか、お前は俺の妖精姫だ、ときつくリーゼを抱きしめた。以来、リヒトは足繫く離宮に通った。そのうち、一線を越え度々結婚をほのめかされるように。でも、リヒト様は七年前の命の恩人を忘れられないみたいなのよね。聞けばリーゼに似ていたそうだが、心情的には複雑だ。彼から貰った婚約指輪代わりのピアスをいじりながら悶々としていると怒りの形相のシエラに難癖を付けられた。それを止めたのはなんと王妃。無礼は許しませんよ、と控えていた女官長にさっさと部屋に連れ帰れと目配せした。慌てた様子で車いすを押す女官長とまだ何か喚いているシエラを見送ると、お茶にしましょうか?と王妃は優雅に微笑んだ。王妃はリーゼに心から感謝していると告げ、どうか一生あの子を支えて欲しいと頭を下げた。シエラが目障りなら自分がリーゼの後ろ盾になるとも。きっと息子があんな体になってずっとやきもきしていたのだろう。王妃に励まされ、リーゼは自分に出来ることをしようと決意した。王妃が言うにはあの体質からリヒトは王太子に相応しくないとネーベル公爵を推す一派があるらしい。おかげで彼はずっと難しい立場だった。なのに今は精力的に表に出て公務をこなしているおかげでネーベル公爵派は劣勢になっていた。シエラを焚き付けているようだし、目障りでしょうがない。舌打ちせんばかりの王妃に苦笑いしつつ、リーゼには気になることがあった。精霊は滅多なことでは人を襲わない、よほど怒らせたのなら別だが果たしてリヒトがそんなへまをするだろうか。もしあの事故が仕組まれたもので、それがネーベル公爵の企てなら今相当焦っているはず。そうならないためにも彼の魔法核、直すことはできないかしら。そこで彼女は妖精の知恵を借りるため、一人妖精の森に行くため準備を始めた。その最中、リーゼを王妃にと推してくれていたリヒト派の重鎮・リティス公爵が呪いに倒れ・・・。訳ありの王太子の花嫁候補になった、これまた訳あり王女のお話です。黒幕は勿論ネーベル公爵なんですけど、やり方が汚い。その行為は精霊をも怒らせてそれが娘のシエラの足の自由を奪っていました。そう、あの足はリヒトのせいでは無かったのです。妖精の森に入ったリーゼは不可抗力で過去に飛び、あの事故現場に遭遇。公爵によって奪われていた彼の魔法の核を取り戻しますが、タイムリミットもあってそれを彼に戻すのは無理でした。ケガの応急手当だけしか間に合わず泣く泣く時空を飛んだ彼女の姿をリヒトがおぼろげに覚えていたと言うのが似ている云々の真相。自分に嫉妬していたと知ってリーゼはガックリ。妖精の助けで精霊の怒りを解いた彼女はリヒトの魔法の核の修復を手伝ってくれると言う精霊に感謝して彼の元に戻り、という展開です。多分、リヒトの恩人はリーゼのことだろうと思ってたので予想通りでニヤリ。追い詰められてリヒトとリーゼに暗殺者を送っていたネーベル公爵もシエラ共々捉えられ、シエラの足はリーゼが治して後顧の憂いを断つのでした。ネーベル公爵家はお取り潰しとなり、当然首謀者の公爵は処刑。加担していたシエルへの処罰は王妃が下したんですがこれがまた相当エグくてその恨みの深さが知れます。その心情を知り、普段なら例えシエルにも情けをかけていたはずのリーゼも口を噤むのも判る。それだけの苦しみをリヒトに与えてたんですもん。あ、あとあの女官長も結構な報いを受けシエル共々とんでもない目に合いそうなのにはスッキリしました。リーゼへのあの態度、王妃とリヒトが見逃すはずないので、ご愁傷様。諸々片付いて怒涛のハッピーエンドな〆でした。思いっきりTLながら設定とか話の流れは結構ラノベ寄りなので、ファンタジー系統がお好きな方はかなり楽しめる内容かと。評価:★★★★☆
2026.09.15
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2026年8月刊レジーナ文庫著者:亜綺羅もも(敬称略)高校でいじめられ引きこもっていた里奈は、ある日、自分をイジメた張本人と共に異世界に転移してしまう。彼女に悪く言われ、また転移時に授かったスキルも戦闘に一切役立たない【マイホーム】であったことから、転移先の貴族からも見放され、一人で異世界をさまようことに。そんなリナ(里奈)を助けたのは、人嫌いで有名な龍のイド。人の姿になった彼と共に始まった生活の中で、リナの持つスキルが、チートともいえるものだったことが発覚し…… ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 江藤里奈=異世界召喚された女子高生。元の世界では引きこもりだった。 イド=邪竜ヴォイドドラゴン。リナと行動を共にする。 クマ=リナの使い魔。スキル【マイホーム】のサポーター役。 結城姫乃=リナを虐めていた同級生。共に異世界召喚される。 サリア=異世界人。後にリナの友人になる。自分の部屋にいたはずが、ふと気づくと異世界に召喚されていた里奈(リナ)。その場にいた王様が言うにはここはメロディアと言う国らしい。度々の魔族の侵攻にほとほと困り果てた王様は異世界から魔族王に勝てる力を持つ者たちを召喚したと言う。そう、呼ばれたのはリナだけではなかった。クラスメイトの結城姫乃と見知らぬ男子高生。最悪にも散々リナを虐めて不登校に追い込んだ姫乃が一緒に異世界召喚されてきてしまうとは。早速冴えないジャージ姿とストレスによる肥満で見る影もない彼女を姫乃は指をさして嘲笑った。誰のせいで、と怒りが湧いたが言い返せる度胸も無く顔を上げることもできないリナをその場にいる者たち皆が嘲笑する。まぁ、とにかくそななたちのスキルが知りたいと言われ、渋々応じて順番に鑑定アイテムに手を当てるた。下柳勝也と名乗った男子高生のスキルは【勇者】、姫乃のスキルは【大魔導】と出て周囲が素晴らしいと盛り上がっている中、鑑定されたリナのスキルは【マイホーム】?????皆がポカンとする中、再び姫乃の笑い声が響き渡り、役立たずのデブはここにいる理由は無いと指を突きつけた。居た堪れなくなったリナはその場を逃げ出し、右も左も判らないメロディアの城下を彷徨った。充分追い付けたはずなのに誰も止める者はいなかった。あの人達も自分を必要としていない・・・。あてもなく、町で聞いた親子の会話を元に危ないと言われていた東の崖近くまでやって来た。別に死にたいと思ったわけじゃないのに、瘴気で溢れていると言う崖下は黒く淀んでいて何も見えない。だが、突如リナのいた地面が割れて彼女は真っ逆さまに落下していた。崖下には巨大な竜がいた。ヴォイドドラゴンと呼ばれる邪竜は目の前に落ちて来た少女が虫の息なのを見て、気まぐれに己の血を与えた。見る見る消えていく無数の傷。少女の呼吸が落ち着いて目を覚ました。信じられないことに少女は彼を見ても恐れなかった。そればかりか自分を助けてくれてありがとうと感謝され、他の人間たちとはあからさまに違う対応に戸惑った。リナは自らの名を名乗ると自分が異世界人であること、外れスキルだったせいで討伐メンバーに相応しくないと追い出されたのだと事情を語った。捨てられて一人ぼっち。お前は俺と同じだな。ポツリと呟いた竜の真意は判らなかったが、彼もこの世界では孤独な存在なのだろう。似た者同士で意気投合した二人。お前のスキルって何なんだ?と聞かれ、【マイホーム】って言うの。でも、どういう効果か謎で。困り顔のリナに、なら口で唱えてみろという竜のアドバイスに従い、【マイホーム】!と唱えた。すると現れたのはどこかもとの世界の住宅に似た建物が現れてビックリ。中に入ると水回り全て現代風のものが完備されている。トイレなんてウォシュレット付き!やっぱりこの世界って汲み取り式だと思っていたのでこれはありがたい。おまけに浴槽はジェットバス!? いや、これホントどういう仕様?これがリナ様のスキルですよ。そう言ってって声をかけて来たのは、可愛らしいクマのぬいぐるみ。背中にちょこんとついている羽をパタパタさせてふよふよと浮かんでいる。誰???僕はリナ様の使い魔。スキルのサポートを務めます。どうか名をお与えくださいと請われ、見たまんまで「クマ」と名付けた。どうやらこれで主従関係が成立したらしい。あの竜から聞いた話ではこの地は瘴気に覆われているそう。彼の血によりリナには耐性が出来てはいるけれど人間の身体である。浴び続けているのは流石に良くない。この家に入ったらあの纏わりつく嫌な感じが無くなった。疑問を口にすればクマがそれはあなたのスキルの影響ですと答える。ステータスを確認しろと言うので目の前にウィンドウらしきものが現れ、そこに記載されていた文字を読む。まだレベルは1だけど横に空気清浄とあって、これのおかげかと納得した。取り敢えずここに居れば一先ず安心ってことね。クマによればレベルが上がれば様々な機能が追加されると言う。この建物だけでも充分ありがたいが、他の力も興味がある。あ、でもさすがにイドは入れないわよね?彼の巨体を見つめ残念に思う。足一本位ならなんとか玄関に入れそうといったサイズで残念に思う。せっかく渾名まで付けて友達になれたのに・・・。俺にも住んで欲しいのか?落ち込むリナの様子から察した彼の身体が光に包まれ急速に縮んでいき、光が治まると褐色の肌をした美青年が現れた。これくらい造作もない。キャッキャと喜ぶ彼女に照れながら顔をそむけるイドが何だか可愛らしく見えた。翌朝、目を覚ますとリナは見事に痩せていて驚きの声を上げた。イドによればこれは彼の血の効果らしい。姫乃からの虐めに遭うまでの自分の姿を懐かしく思う。もう少し肉が落ちれば完全にあの頃の体型になるだろう。しかも身体が軽い。これもイドの血のおかげか。あと、あれ?レベルが上がって機能が増えてる。ショップ?ああこれはね、クマの説明でこの機能がまんまネットショッピングと判り感動。今のところ空腹感は無いが、彼の血の効果がいつまで続くのかは謎。いずれ食べ物も必要になる。なら調理用のコンロに鍋、やかん、フライパン。食器類にあとは冷蔵庫も要るわよね。ショップ機能を起ち上げると見覚えのある某通販サイトに似た画面に。操作画面も元の世界と同じ。次々商品をカートに入れてはた、と気付く。これ支払いどうするの?あやふたしているとクマがモンスターを狩ればいいとこともなげに言う。なんでもモンスターを倒すと心臓が残り、それを換金できるそうだ。この世界の通貨単位はエリム。サイトの金額と照らし合わせると大体日本の円と同等の価値らしい。レベルも上げなきゃいけないしいっちょ狩に行きますか。とはいえ、自分にどれだけ戦闘力があるのか。ステータスを見ても今イチピンとこない。大物ほどその心臓の値は跳ね上がる。その辺りはイドが狩ってくれると言うのでリナは一先ず最弱のゴブリンで腕試し。あれ?私結構強くない?拾いものの小剣で次々ゴブリンを葬り、石のような鉱物(モンスターの心臓)を回収する。やはり、だが弱いモンスターの心臓は安いと言う。ある程度狩ってゴブリンの姿が視えなくなるとここから動くなよ、とイドは大物のいる狩場へ。一先ず休憩しようと座り込むと、前方から泣きながらやって来る若い女性が。お人好しの血が騒ぎ、どうしたの!?と声をかければ、女性はサリアと名乗り父が亡くなり多額の借金が発覚したが返す当てがないのだと語った。こうなったら私も死ぬしか無いと崖に向かっていたそうで慌てて止める。これで足りない?持っているすべての心臓を見せたが彼女は首を振る。やっぱり、イドも安いって言ってたもんね。なら申し訳ないけど、彼の帰りを待って大物の心臓を譲ってもらうしかない。案の定、帰って来たイドは渋った。しかし、人に優しくしたらいつか倍になって自分に返って来るんだよっ。ウルウルとしたリナの瞳に負け、イドはどれでも好きなのをもってけとそっぽを向く。立派な心臓にサリアは聊かビビっていたが、これだけのものがあれば十分よ。そう言って一つだけ取り出し、何度も礼を言って町に帰って行った。借金、ちゃんと返済できたらいいな。お前はお人好しだな。呟く彼に良くお母さんに言われてたの、人には優しくって。ニコッと笑うリナに赤面したイドはお前の頼みや願いなら何でも聞いてやる!お前だけだぞ!!見事なツンデレを発揮する彼は本当に可愛い。それから数日後、鍛錬の甲斐あってレベルも上がり、周囲の瘴気はかなり薄れて来ていた。それに伴いクマ以外の使い魔が二人増えた。キツネっぽい雰囲気の妖艶な女性のレンは家事担当。ライオンフェイスの筋肉マンはライオウと名付け家廻りの開拓を頼んだ。彼らも狩に加わり、オーク程度なら束で現れても脅威にもならない。まぁ、一番の稼ぎ頭はイドなのだが・・・。もう億以上の金を稼いでおり、生活に必要な家具家電、開拓に必要な重機も購入できた。やはり人間の食べ物もイケるイドは元の世界の料理が甚く気に入り、賑やかな食卓が心を和ませる。加えて、リナのお人好し精神が縁を呼び、町にも何人かの知り合いが出来た。最初の友人はサリアで、無事借金を返済しかなり余ったからと残りを返しに来てくれたのだが思い切り辞退した。そうこうするうちに浄化もどんどん進み、家の周りはライオウ力作の見事な庭園に。この近くに住みたいなぁ、ポツリと呟いたサリアの願いをかなえるため、少し離れた場所に彼女用の家を建てたら、以前より頻繁に交流は続いている。しかし、平穏な日々は続かない。噂を聞きつけたのか、メロディアから姫乃と勝也、兵士を引き連れた王がリナの前に現れて・・・。異世界転移ものです。リナと邪竜イドとの恋もありますが、大筋は完全にラノベ寄りの内容です。外れスキルとバカにされた【マイホーム】がとんでもないチート系なのに、イドがまた規格外の強さで向かう所敵無しな状態のリナ達。一方、魔族王討伐に出ていた姫乃達はまったく歯が立たずで、国王は焦っていました。おい、追い出した奴の方が強くて使えるではないかと今になってリナを囲い込もうとやってきます。姫乃の高圧な態度にトラウマを刺激され弱腰になりかけたリナですが、彼女から姫乃の行いを聞いていたイドがふざけんなと大激怒。彼の力によって姫乃は精神を刺激されもがき苦しむことに。王達はその様子にビビり散らかしすごすごと撤退していきますが、メロディアの町が攻撃を受けていると知っていつもの持論が発動。皆と民たちを救いに行きます。ほぼイドのお手柄でしたが、リナ達の活躍を人々が称える中、すっかり王の信頼は失墜。彼女を脅かす者はいなくなる中、サリアの案で孤児たちの支援に力を入れます。共に過ごすうち、心を通わせたリナとイドが夫婦になり、仲睦まじい姿が描かれて本編は幕。文庫版のおまけの短編はイドの浮気疑惑のエピソードでした。実はイドはこの世界でも異質で上位の存在らしいのですが、匂わせだけで正体が明かされなかったのはちょっと残念。続編がある場合、このレーベルはナンバリング表示があるのでそれが無いってことはこれ一冊で完結なんですね。不自由な生活を強いられるならちょっと御免被りたい異世界転移ですが、もしかしてプラ〇ムビデオも見れる?みたいなモノローグもあったので、電気ガスも要らずに電化製品が使えるみたいなスキルならいいかもしれない。(現金)とにかく、イドとリナの初々しいカップルが可愛かったです。評価:★★★★★
2026.09.14
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2026年8月刊ベリーズ文庫著者:蓮美ちま(敬称略)火事で自宅を失ったOLの野々花。そんな時、勤め先の社長・一哉が幼い双子を連れている場面に遭遇!彼は女嫌いで独身のはず。まさか隠し子!?と慌てる野々花に、一哉は「甥っ子たちの面倒を見てほしい」とベビーシッターとしての同居を提案してきて…。双子のママ役として奮闘する野々花に一哉の態度が豹変!?「君を逃がしたくなくなった」-甘え下手な野々花を極上の愛で包み込み…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 宮部野々花=IT企業広報部チーフ。一哉の甥っ子たちの世話を頼まれる。 白河一哉=野々花の勤め先の社長。白河李月&維月=双子の兄弟。一哉の甥っ子たち。 白河美月=双子の母。フリーライターで外国に取材に行っている。 益田亜沙美=証券会社の社長令嬢。一哉を狙っている。IT企業ネイバークリフトの広報部チーフになって早数か月。公園でサンドイッチにかぶりつきながら物件情報を眺めていた野々花は頭を抱えた。部下のミスで残業になり、くたくたになって辿り着いたマンションは火事で立ち入り禁止になっていた。出火元は野々花の部屋の上の階らしい。すぐに火は消し止められたみたいだが消火のための放水で下の階は水浸し。とても住める状態ではなかった。大家さんの話では検分後はすぐ修理に入るそうで、その間、住人は出て行かなければならない。建て替えするほどでもないけれどやはり数か月はかかるらしく、仕方なしにこうして側入居可で家賃お安めの物件を探している次第だ。ネイバークリフトは元々給料が良いし、チーフになったおかげで役職手当も出る。本来ならセキュリティ対策もしっかりしている駅近のマンションにも棲めそうなのだが、野々花が自身の生活に使える金額は少ない。とはいえ、こういう事態になっても仕送りは減らせないのよね。野々花には年の離れた弟妹が四人いる。一番下の弟はまだ小学生でまだまだ金はかかる。五年前に父が事故死して以来、女手一つで子供たちを育てる母の負担を少しでも減らしたくて家賃と生活費以外の金額を実家に送金しているのだ。こうなったら事情を話して実家に暫く居させてもらうか・・・。いや、群馬から会社まで通勤に二時間よはキツ過ぎるでしょ!早晩バテる未来しか見えない。ビジネスホテルでの宿泊も少ない貯金では数日が限界だ。ネカフェの方が割安なのでそっちに移って物件探しをしているが、家賃の折り合いがつかず手詰まりになっている。やっぱり、今まで住んでたところが破格だったんだよねぇ。気の好い大家さんでずっと更新し続けていただけに残念でならない。おまけに家具家電のほとんどが水を被ってパァ。こっちは火災保険で何とかなりそうだが、やることが山積みで頭が痛い。不動産屋を回って休憩がてら遅い昼食だったわけだが、幼児特有の笑い声が聞こえて顔を上げた。可愛いっ、双子ちゃんだ。お揃いのTシャツを着た男の子たちが止める父親の声を無視して走り回っている。奥さんの代わりに子守をしているのか、慣れない様子が微笑ましい。子どもって本当に急に駆け出したりするから目が離せないのよね。弟たちの幼い頃を思い出しついその様子を眺めていると一人がトイレに行きたいと騒いでいる。もう一人は鬼ごっこするんだと父親の手を引っ張るわでほとほと困り果てている様子だ。すると元気な方がサイクリングロードの方に走り出したので、咄嗟に野々花が男の子の手を掴み引き戻した。勢いで尻もちをついてしまったが目の前をロードバイクが走り抜けていくのを認め冷や汗が出た。キョトンとしている男の子に腕を引っ張ったことを詫びていると父親が走って来て礼を言われた。でも、あれこの声。白河社長!?声を上げると彼も気付いたようで、驚いていた。女嫌いで有名な白河は独身だ。じゃぁこの子たちは。まさか隠し子!?しかし、プライベートなことを詮索するのも悪い。一先ずこの子は自分が見ているから、その子をトイレにと促し、少しだけ子守を引き受けた。十数分後に戻って来た白河は、楽しそうに維月を遊ぶ野々花に目を奪われていた。大人しい李月もすぐに懐き、帰るぞと促しても離れようとしない。私、誰にも言いませんから、と言われあらぬ誤解をされていると気付いた。翌日、回って来た書類で彼女の自宅マンションで火災被害に遭っていたことを知った。しかもまだ次の部屋が決まっていないらしい。ふと思いつき、秘書に頼んで彼女を社長室に呼んだ彼はある依頼を口にした。部屋を提供する代わりに甥っ子のシッターを引き受けてくれないか、と。李月と維月は姉の子なんだ。白河の説明によれば、彼の姉・美月は夫の浮気が発覚して双子の誕生と同じくして離婚したのだそう。だが、フリーライターをしている美月から一生に一度の仕事なんだと、とある国に二ヶ月ほど行きたいと相談を受けた。そしてその間だけ子供たちを預かって欲しいと。美月が行くのは少々情勢が不安定な地でまだ二歳にならない子供、ましてや二人も連れてはいけない。姉は父とは険悪でね、苦笑した彼の様子を思うに、実家に預けるのは無理で結果弟に頼んだってわけかと納得した。が、子育て経験のないものに幼児の世話はハードルが高い。精魂尽き果てた頃、子供の扱いが見事な野々花を見て、これは、と思ったらしい。会社にいる間は保育園に預けているからいいとして、それ以外の世話を手伝って欲しいと言う。火事のことは聞いた、部屋も決まってないならうちの一室を提供する。報酬も弾むから。確かにかなり美味しい話だ。家賃も要らないと言うし、食費込みで生活費もロハ。その間、浮いたお金を取って置けば引っ越しも出来る。しかし、問題はこの見目麗しい社長と同居ということ。まぁ、相当モテるだろうし、私なんかに興味は無いと思うけど・・・。でも何で私?疑問を口にすると、君は浮ついた女たちとは違うと思ったからだときっぱり。実は、美月はシッターを手配してくれたらしい。が、いざ家に来ると途端に白河に熱を上げ、仕事そっちのけで迫って来たそう。頭に来て即クビにしたと憤慨。そういう者ばかりではないのは承知しているが、以来頼めていないと溜息を吐いた。なるほど、モテ過ぎても大変なのね。白河は副社長の相澤と二人でこの会社を起ち上げた。今や一流企業となり、ビジネス誌の取材も多いが顔出しNGを貫いている。おかげで表に出る場合は相澤が対応しているのだが、彼がまたかなりの色男でその手の話が絶えない。取り敢えず、事情は分かった。住まわせていただく上に生活費も出していただけるんですから、報酬は要りません。暫くお世話になります。そう言って野々花は頭を下げた。野々花が暫く同居すると告げると双子たちは大喜び。弟妹達の世話で培ったスキルを遺憾なく発揮し、その手腕を白河は尊敬した。が、少しすると魔のイヤイヤ期がやって来た。さすがの野々花も手を焼いたが白河も丸投げはぜず、根気よく付き合ってくれる。先日は動物とのふれあいコーナーもある公園に出掛け、美月に送る用の写真をたくさん撮った。数日後、お前、宮部さんとデートしてたんだって?そう聞いて来た相澤によれば、たまたま社員が目撃したらしい。おまけに双子も見られていたようでどういうことだとその話で持ち切りだとも。わざわざ足を延ばして出掛けた先で社員に見られるとは世間は意外に狭い。そんなことを考えながら、相澤には何か聞かれたら双子は姉の子だとだけ答えておいてくれと頼んだ。当然、噂話は野々花の耳にも入った。直接聞きに来る者はいなかったが、聞こえよがしに言うのは止めて欲しい。だが、年下のくせにチーフになったのが気に食わないのか何かと自分にケチを付けて来る後藤が、身体使って昇進したのかよと中傷して来た時には猛然と抗議した。後輩達も後藤に食って掛かって撃退してくれたのに感謝し、ため息を吐く。いつの間にか白河に心惹かれていた野々花はこんなことになっちゃってと混乱している。白河本人が望まずとも縁談は山のように来るし、今は益田証券の社長令嬢でモデルの益田亜里沙がしつこく迫っていると聞く。私なんかに好きなられても困るよね。悶々とする中、白河から野々花とは結婚を前提に交際していると公表され・・・。本人自覚無しだけど美人で性格も良く子供好きの子が惚れられないわけがない。お互い両想いだったのに、双子がいるうちは不埒な真似は出来ないと白河は想いを打ち明けられずにいました。しかし、こうして目撃情報が出てしまった今、双子は姉の子でを預かっていること、野々花とは結婚を前提の付き合いだと皆に公表します。ただこの時は彼女が無用な悪意に晒されないためと言う言い訳でしたが、後藤みたいなクズに誹謗中傷されてたのを後で知って激怒。丁度、美月が帰国し双子を引き取ったのを機に野々花に告白します。彼女もまた気持ちを告げ晴れて二人は交際を始めますが、白河を狙っていた亜里沙が自分と婚約していたのに社員の女に取られた、という内容のでっち上げをゴシップ誌にリークしたおかげで野々花が矢面に立たされ、という展開です。まぁ、これは白河を本気で怒らせただけで亜里沙共々、娘を使って彼の後ろ盾を得ようとしていた証券会社共々停滞制裁を受ける羽目に。ネイバークリフト社を震撼させた騒動も終わりを告げるのでした。その後、白河からのプロポーズを受け、本編は幕。おまけの番外編では、二人の挙式の様子とその後日談、三年後の白川家の日常が描かれていました。最近のこの作家さんにしては珍しくほのぼのファミリーものって感じでしたが、後半はやっぱりトラブル発生。ヘイトキャラも登場したけれど、ヒーローが万能過ぎてあっという間に解決したのが流石と思いました。評価:★★★★★
2026.09.13
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11月2日 ヴァニラ文庫 悪女の取り巻き、王子様に溺愛される(仮) 高遠すばる ヴァニラ文庫Miel キャリア署長とゼロ日婚 ~甘美な制服姿にメロメロです~(仮) 玉紀直11月10日 Mノベルスf 貧乏令嬢のポジティブすぎる契約婚 ~継母としてもがんばります!~ やきいもほくほく マーマレード文庫 家なし無職の崖っぷち女がママになったら、 元極道のスパダリ弁護士に滅入られました~(仮) 真彩-mahya- 転生陰陽師の最愛花嫁 2(仮) 若菜モモ11月12日 ルネッタブックス 薄幸令嬢ですが、愛しちゃいけないαと禁断の恋に落ちてしまいました(仮) 春日部こみと EyleNOVELS 聖女の姉が棄てた元婚約者に嫁いだら、 蕩けるほどの溺愛が待っていました【新装版】 1 瑪々子11月13日 アース・スターノベル 私、曇りの聖女と呼ばれたけれど! ~トンデモギフトの悪役令嬢は暴れん坊~ 川崎悠11月20日 一迅社文庫アイリス 狼伯爵の愛されご主人様 テイム契約相手が領主様だなんて聞いてません 黒湖クロコ(敬称略)
2026.09.12
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2026年6月刊ヴァニラ文庫著者:七里瑠美(敬称略)「俺はあなたに求婚する」-。悪女とされ、周囲から疎まれているコーデリアは、王弟で公爵のヴィクターから突然契約婚を持ちかけられて!?戸惑いつつも受け入れるが、冷徹な彼から思いがけず優しく丁寧に扱われ、心惹かれていく。偽りの夫婦だからと気持ちを抑えようとするも、甘く愛おしそうに迫ってくる彼に、心も身体も奪われていき…? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 コーデリア=何かと悪評の絶えない伯爵令嬢。 ヴィクター=公爵。コーデリアに契約婚を申し込む。 サンドラ=コーデリアの異母妹。 ジェイン=コーデリアの継母。王宮で開催されていたお茶会に参加していたコーデリアは、自分にぶつかって来た挙句ドレスを汚した貴族令嬢を宥めながら漏れそうになる溜息を何とか我慢していた。正直、この程度の染みならば伯爵家の洗濯メイドが綺麗に落としてくれるはず。大丈夫だから、と恐縮する令嬢の肩に手を添えたらいきなり大声で泣き始めて批難の視線が自分に突き刺さるのを感じる。いや、どう見ても私責めたりしていないでしょ!あなたも周囲に誤解されるような泣き方をしないで頂戴っ。だがまあ、仕方ないか。だって私は悪名高い悪女ですものね。人目があるから取り敢えず穏便に済ませて後で報復されると思い怖がっているのか。とにかく困ったわ~、いい加減泣き止んでくれないかしら。途方に暮れていると背後から男性の声が。視線を向けると国王の弟・エルバート公爵ではないか。ギョッとして慌てて挨拶する彼女のドレスについた紅茶の染みが見えたのか公爵は眉を潜めた。ここは私が預かる。そう言って使用人たちを呼ぶと一人に泣いていた令嬢を控室に案内させ、残りはコーデリアの替えのドレスの用意と着替えの手伝いを指示した。公爵様のおかげで助かったわ。染み抜きは王宮で手配してくれるそうで、着替えを済ませたコーデリアは早々に引き上げることに。帰宅すると早速父に見咎められちょっとしたトラブルがあったと報告するや叱責された。こちらは被害者だと言うのに何故自分は責められているのか。理不尽さに腹を立てるより悲しくなった。お父様にとって家族は後妻のジェインと異母妹のサンドラだけだものね。元々父はジェインを妻にしたかったそうだ。しかし、亡き祖父母に猛反対され泣く泣くコーデリアの母・メラニーと結婚。ほどなくコーデリアが産まれた。だが、父は祖父母の目が無くなるやジェインと既に産まれていたサンドラを屋敷の離れに住まわせ、自らもそちらで生活するように。よく母も許可したものだと思うが、彼らにしてみればメラニーやコーデリアの方が異物だったのだろう。メラニーが病死すると父は早速ジェインを後妻にし、サンドラ共々母屋で暮らし始めた。疎外感はあったが、体裁を気にしてかコーデリアもきちんと伯爵令嬢として扱われていたし、社交界デビューもさせてもらった。父と継母は異母妹に家を継がせたいだろうから嫁に出されるのは私よね。それならそれでもかまわない。寧ろその方が肩身の狭い思いをせずに済む。でも、問題は私にまともな縁談が来るかどうかよね。どうしたわけか、今年になってからというもの覚えのない事で恨まれ、悪し様に言われることが増え今では立派な悪女呼ばわりだ。仮面舞踏会で男漁りしているとか、先ずそんなところに出入りした覚えがない。きつい顔立ちをしているが本人は至って大人しく従順な性格だ。出掛けるより読書と刺繍をしていたいくらいでいつの間にか独り歩きしている悪評に困惑するばかり。しかもそんなことは決してしていないとはっきり否定しても誰も信じてくれないのが一層状況を悪くしている。こうなったらいっそ修道院に行くのもありなのかしらね。そう呟くと大きく溜息を吐いた。それから暫く経った頃、王宮での夜会に参加していたコーデリアはまたしても因縁を付けられさすがにブチキレ。会ったこともない貴族令息に近づき婚約者を奪ったと言うが、どこに証拠がと詰め寄ると令嬢達の方がビビッてアタフタと逃げ出した。またもや集まる批難の視線を振り切りバルコニーに行くと腕を掴まれ振り向いた。公爵様・・・?戸惑っていると彼は徐に「あなたに求婚する」と告げた。は?唖然としていると、君もこの状況を変えたいのだろう?囁かれ不承不承頷く。私は君の母上の実家・ペングリア侯爵家と繋がりを持ちたいんだ。公爵の鋭い視線にああそういうこと、と納得する。母の生家であるペングリア侯爵家は国境の領地を任されている武門一族だ。後で知ったのだが、母が父に嫁いだのも政治的な思惑が絡んだものらしい。今この国では南の新興貴族と歴史ある貴族が集まる北が勢力争いをしている。というより、正確には北が南を忌み嫌っているだけのようだが、王家としては頭が痛い状況だ。そこで彼は貴族の重鎮であるペングリア侯爵家と姻戚になり、南だけを優遇しているわけでは無いと意思表示したいようだ。なるほど、そういうことなら。まともな縁談は厳しいと考えていた先に降ってわいたようなとんでもない良縁話を彼女は粛々と受け入れた。気に入らないな・・・。エルバート公爵ヴィクターは、結婚の許しを得にベネット伯爵家を訪れた際に感じた彼女の家族の態度に鼻白んだ。後妻が継子に愛着が無いのはまぁ判る。しかし、実の父まであんな調子ではさぞかしこの家は居心地が悪かったに違いない。大体、コーデリアを妻にしたいと言っているのになぜ次女のサンドラを勧めて来るんだ!不愉快極まりない。しかも当のサンドラは本人を目の前にしながら姉の至らなさをベラベラと。腹に据えかねて許可も得ずに私に話しかけるなと王族の特権で黙らせたがまだ何か言いたげにしている。流石に拙いと思ったのか伯爵がサンドラを諫めたので、そこからはスムーズに話は進んだ。数日後に迎えを寄越す。そう言うとコーデリア以外の面々は驚いていたが入籍前に婚約者の家で作法を学ぶのは珍しくないと押し切った。この家は以前から北の筆頭・モーガン侯爵家と繋がっていると耳にしている。彼は王が南贔屓だと思い込んでいる節があり、それが逸脱して色々問題行動が目につき叛意の意思ありとマークされていた。自分とコーデリアとの結婚でモーガンも何か動きを見せるかもしれない。彼女には黙っていたが、反逆者一派の動向を探ることもヴィクターの目論見であった。エルバート邸で暮らし始めた頃は悪評を信じていた使用人たちから遠巻きにされていたコーデリアだったが、物静かで心優しい彼女の態度にやがて誤解も解けて行った。今ではまだ入籍前だと言うのに新しい公爵夫人として敬われている。ヴィクター自身も単に最初は猫を被っているだけかと疑っていたのだが、そんな疑いはすぐに解けた。健気で愛らしい、それが彼女に対する評価に変わり、誰があんな噂をと犯人の炙り出しに躍起になっていた。数日後、渡したいものがあると実家から呼び出された彼女に付き添うと決めたのはヴィクターで、いざ一緒に馬車から降り立つと伯爵は明らかにビビっていた。まさかコーデリア一人で来ていたら無理難題を押し付ける気だったんじゃないだろうな。三人を睥睨するとジェインは縮こまっていた。相変わらずサンドラは姉を貶めようとするのに余念がない様で、これも伯爵を睨み黙らせた。コーデリアに渡すものがあるのだろうと促せば渋々物置代わりになっている屋根裏部屋のカギを差し出した。母から自分宛ての手紙が入った箱があるのだと彼女は喜び勇んで取りに行き、帰りの馬車では大事そうに箱を抱えていた。見事な寄木細工の箱は開け方にコツがあると言う。六年前に亡くなったメラニーは一年ずつ開けるよう娘に六通の手紙を残していたと言う。細工を開けられなかった伯爵はメラニーが何か拙いものを隠していないか気が気でなかったらしい。娘を呼び出し箱を開けさせ抜き取るつもりだったのだろう。今頃ビクビクしているはずだ。内心でほくそ笑んでいるとコーデリアからお話したいことが、と声をかけられ頷いた。屋敷に戻り、早速自室で話を聞くと、これをと差し出されたのは書きかけの便せんが数枚。箱の底板に隠されていたらしいそれはメラニーが死の間際に記したもので、自分が死んだらコーデリアをお父様たちが養育して欲しいと嘆願する文章が綴られていた。この家は狙われている、ジェインはモーガン侯爵の庶子云々とある。恐らくこれはメラニーがペングリア侯爵宛に書いていたものだ。それに、やはりモーガン侯爵か。ジェインは元メイドでベネット伯爵に見初められたと言う。もしこれもモーガンの差し金なら?色々繋がって来たな。ヴィクターは心配げなコーデリアに微笑むと、ペングリア侯爵に会いに行こうと翌日使者を送った。三週間後、二人はペングリア侯爵領にいた。祖父母は初めて会うコーデリアをメラニーにそっくりだと抱きしめ涙を流していた。祖父母は何度も孫に合わせて欲しいと父に頼んでいたらしい。が、その度に断られ、コーデリアも会いたがっていないのではと思い込んでいた。しかし、例の書きかけの手紙を渡すと祖父は悔しそうにしていた。ヴィクターのおかげでこうして祖父母にも会えた。それに悪評の出所まで探り出し処罰すると言い切ったのを見て祖父母も感涙。良い方に巡り会えたなと喜んでくれた。二週間ほど滞在したがヴィクターの仕事もあるので惜しまれつつも侯爵家を後にした。しかし、道中馬車が何者かに襲われ・・・。知らず反逆に巻き込まれそうになっていた伯爵令嬢と、黒幕を探っていた王弟との恋物語です。ここまでくればもう解決までまっしぐら。生き残った暗殺者がアレコレ喋ってくれたおかげであとは断罪に追い込むだけ。でもまだ横やりが入るかもと、二人は死を装い王宮の一角に隠れていました。そして数日後、予定通り開かれた夜会で無事な姿を見せたヴィクターとコーデリアの姿に貴族達は騒然。やがてヴィクターの口から事件の真相が暴かれ、という展開です。もう黒幕自体の名前は序盤から上がっていたので、ここではぐうの音も出ない程追い詰められるだけなんでクライマックスらへんは消化試合と言った感じ。コーデリアの後ろ盾は祖父母がなるみたいだし、挙式の日を心待ちにする二人の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編はヴィクターのために、彼の好物のクッキー作りに奮闘するコーデリアのお話でした。タイトルほど虐げられてはいませんでしたが、見覚えのない悪評で悪し様に言われてたのはひたすらに気の毒に思いました。まぁ悪評を流していたのは姉を妬んでいたサンドラに頼まれたモーガンの手の者の仕業だったんですけど、ヴィクターが激怒していたのもあってそりゃ厳しい罰(母共々修道院送り)を食らうのは仕方なしかと。バレたらどうしようかと考えない辺り頭が悪いんだろうなぁ、この妹。評価:★★★★☆よくあるシンデレラストーリーですが、陰謀もあったりで面白かったです。あと、ヴィクターがチョロすぎw
2026.09.11
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9月下旬 アルファポリス 桜見荘302号室に関する怪異報告 三嶋トウカ10月7日 レジーナ文庫 うそっ、侯爵令嬢を押し退けて王子の婚約者(仮)になった女に転生? しかも今日から王妃教育ですって? 天富七緒 愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす リオール10月15日 アルファポリス文庫 龍神の生贄(仮) 高瀬百合10月27日 ノーチェ文庫 見逃してください、邪神様 落ちこぼれ聖女は推しの最凶邪神に溺愛される イシクロ11月5日 ベリーズファンタジー 雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。 無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです! 三沢ケイ 私の人生にあなた達の居場所はありません 琴乃葉 隣の薔薇は美しく見えるものです 楽歩 未練なんてありませんが? 九条睦月11月10日 マックガーデンノベルス 悪妃は余暇を楽しむ ごろごろみかん ベリーズ文庫 花嫁候補は完璧主義の理系御曹司!? ~彼の独占欲には抗えません~ 滝井みらん 無自覚シンデレラが幸せになる方法 田崎くるみ 藤堂彬の誤差だらけの結婚生活 【極上のギャップ男子シリーズ】 皐月なおみ ブルームーンと甘やかな呪縛婚 玉紀直12月17日 オークの樹の下 6(敬称略)映画もですが、ホラー小説が結構好きでちょこちょこ購入してます。
2026.09.10
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2026年8月刊スターツ出版文庫著者:霧内杳(敬称略)先野家の双子の姉・千月は、新月の夜に生まれ、精神干渉の力を持つ穢れと虐げられてきた。ある夜、番の子を宿している証である“紋”が手の甲に突然現れる。身に覚えのない千月だったが、その“紋”は最強軍神・威一朗の番に選ばれた証だったーー。威一朗に救い出された千月。番の子を産むためだけの『とつきとおか』のお役目のはずが、宝物のように愛されて…「俺が一生、愛する」。彼の子を宿した千月は特別な加護を受ける。一方、嫉妬に狂った妹の千陽は、懐妊を画策し二人の運命を切り裂こうとするがーー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 先野千月=新月に産まれた不吉な娘だと母と姉から虐げられていた。 精神感応能力を持つ。虎渡威一郎=皇衛府大将。鬼のあやかしで、千月を花嫁に迎える。 先野千陽=千月の双子の妹。治癒能力者。 白峰威子=威一郎の姉。 白峰晃雅=白峯家当主。威子の夫。人とあやかしが共存する世界。帝を頂点に、人間筆頭の白峯家とあやかし筆頭の虎渡家が都を守護していた。しかし、人間とあやかしは過去に幾度も戦を繰り広げた者同士。和平を結び、共に守護の役目を請け負っても完全に蟠りが消えたわけではない。今も絶えずトラブルは起こり、精鋭で結成された皇衛府が対処に当たっている。隊を率いる大将・虎渡威一郎は、虎渡家の次期当主として、力を得るべく番を探していた。あやかしが厳しい条件の元行う儀式は、自身と番うべく存在と魂を結ぶ。妖力の強い威一郎でさえも骨が折れた儀式は何とか終わり、無事魂は結ばれた。まだ名前も顔も判らないが、霊力を辿れば労せず見つかるだろう。それに番の左手には威一郎のものだと一目で分かる紋が浮かび上がっているはず。だが、ひとつ気になるのは番が辛い目に遭っているらしいということ。魂が結びついた時に聞こえた悲鳴と嘆き・・・。一日でも早く迎えに行ってやりたい。威一郎はまだ見ぬ花嫁の無事を祈った。新月をまたいで産まれた娘は禍を呼ぶ。双子として産まれながら、両親にとっての娘は千陽だけらしい。新月に産まれた千月を疎んだ母は、顔も見たくないと離れにある掘っ立て小屋に放り込んだ。産まれて十八年、少ないながらも食事を運んでくれる使用人のおかげで何とか生きて来られた。でももうだめかもしれない。相変わらず理不尽な言いがかりで千月を鞭打つ母と、それを見ながら嘲笑う千陽。今日は何を理由に仕置きを受けているんだっけ?気を失いそうなほどの痛みの中、懸命に許しを請うた。何でお姉さまに威一郎さまの紋が浮かんでいるのよ!こんな穢れた女があの方の子を宿しているなんて!!怒り心頭の様子の千陽が植木ばさみを取り出したので流石にぎょっとして落ちかけていた意識が浮上。すると何者かの制止の声が。軍服姿の青年は傷だらけの千月を抱き起すとその唇にキスをした。傷はそのままだけれど痛みが薄れていく。迎えが遅くなって済まない。そう言ってそのまま抱き上げると二人を睥睨。千月の手の甲に紋が浮かんでいるのを確認すると虎渡家次期当主の番と承知で酷い暴行を加えていたのなら万死に値する。新月、穢れと少女に似た娘が喚いていたが成程、大体の事情は察した。だからこそもっと早く番探しの義を行っていればと自分を責めた。喚き散らす母子を完全無視した威一郎は千月を連れ先野鄭を後にした。虎渡家はとんでもなく広い屋敷だった。こんな自分を連れてきたらこの方のご家族に叱責されてしまうのでは、と千月はドキドキ、しかし、当主夫妻は千月を歓迎し、身体中に残る傷や痣を見るや傷ましげな表情を見せた。うちの可愛い娘に随分なことをしてくれたものね。ああ、きっちり落とし前は付けるとも。当主夫妻の言葉は予想外過ぎて千月はポカン。新月産まれはあやかしの世界では吉兆の象徴なのだそう。お前の産む子は一族を繁栄に導き、父親(威一郎)に新たな力を授けると言う。でも本当にもう私のお腹の中に赤ちゃんがいるんですか?恐る恐る尋ねると魂が結びつくと番には子が宿る。番との最初の子は処女懐妊となるが、子も両親のいいとこ取りの強い子が生まれると説明され目を丸くする。学のない自分には難しい話は半分も理解できなかったが、せめて子が無事に生まれるよう頑張ろうと思った。数週間後、自分こそが威一郎の妻だと千陽は大暴走。あまりにもしつこいので威一郎が友人の検査員・泰成の協力を仰ぎ、間違いなく千月が自分の番であることを証明。千陽の方がバッシングを受ける羽目に。あの男の言う通りに怪しげな薬を飲んで妊娠したって言うのに恥をかきに行ったようなものじゃないの!物の当たり散らしながら千陽は白峰家現当主の姿を思い浮かべる。とにかく、お姉さま一人を幸せにはさせないから。そう呟くと自らの左手に浮かんだ紋をうっとりと見つめた。威一郎の頼みで、嫁に出ていた姉の威子が千月の教育係を務めてくれた、行儀作法に読み書きなど、千月はどんどん知識を吸収して行く。おぼつかなかった箸使いも上手くなり、今では当主夫妻と仲良く食事を共にできるくらいに成長。まぁ、卑屈な性格はまだまだ治りそうもないが・・・。威子もなんだか元気がない。理由を聞けば夫と上手く行っていないそうだ。嫁いでもう何年も経つのに子に恵まれないのも溜息の原因らしい。威子の夫・晃雅は白峰家の現当主だ。その彼が千月と虎渡の結婚を猛反対して威一郎は大激怒。威子には悪いが顔も見たくないと息巻く彼を宥めた。そうこうしているうちに皇衛祭が開催。いよいよ千月が威一郎の番として公表され・・・、タイトルがなんか昨日の作品と被ってますが、内容は全然違います。テンプレなヘイトキャラが妹でラストの方ではザマァ展開も。嫁ぎ先は皆良い人ばかりで、千月の心も徐々に回復。妹とそれを影で操っていた晃雅の介入によってついに眠っていた千月の力が目覚め、という展開です。大筋自体は割とよくある内容なんですが個性豊かなキャラも多く読んで面白かったです。評価:★★★★☆
2026.09.09
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2026年7月刊ベリーズファンタジー著者:浅岸久(敬称略)幼少期から完璧であれと育てられてきた侯爵令嬢・カティアは、素性を一切明かさず引きこもる王太子と望まぬ結婚を控えていた。息苦しい日々を送る中で、ある日自身と似た境遇の青年・セオと出会う。思わぬ展開で一夜をともにしてしまい…良心の呵責から家を出るも、その後妊娠が発覚! 遠く離れた街で平民として、子と慎ましくも穏やかに暮らしていた。それから四年、偶然再会したセオは国王となっており、かつての政略結婚の相手だったと判明し…!? 互いを知らぬまま別れた二人が再び出会い、すれ違いながらも愛を紡ぐ極上シークレットベビー! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 カティア=港町で息子と暮らすシングルマザー。セルジュリウス=シュタルド王国国王。 ラピス=カティアの息子。 アビゲイル=商会の娘。カティアを敵視している。リーヴィス侯爵=カティアの父で厳格な人物。 ルーカス=公爵。アビゲイルを養女に迎える。 ノーラ=カティアが働く雑貨屋の店主。リーヴィス侯爵家の一人娘・エルカティアは、厳格な父により厳しく育てられた。その甲斐あってか、王太子・セルジュリウスの婚約者に選ばれるまでになったのだが、彼女の心は晴れなかった。他の貴族からの嫌がらせか、エルカティアの悪評が広まり、覚えのないことで悪し様に言われるようになったのだ。必死に努力して学園で主席を取ってもカンニングを疑われる始末。おかげで父はカンカン。お前がしっかりしていないから付け込まれるんだと平手打ちを食らい、理不尽さに泣きたくなった。望んでもいない立場を妬む人達。娘の言い分を聞こうともしない父。極めつけは公の場に一度も姿を現さない王太子。そんな人の妃になったとて幸せになれるとは到底思えない。その夜、カティアは質素なワンピースに着替えて町に繰り出した。四年前から彼女はミドルネームの「イヴ」を名乗り、市井について勉強していた。行きつけの食堂に顔を出すと歓迎され、せっかく先日成人したのだしと薦められるまま酒を飲んだ。イヴのお守り、評判いいんだってね?常連客の一人に声をかけられ、おかげさまで、と微笑む。夢魔を加護に持つカティアは、その特性を生かして石に夢魔の力を注ぎ、それを小さな袋に入れたお守りを雑貨屋で販売していた。安眠効果だけではなくリラックスできると人気が出て追加注文で大忙しだ。夢魔を低級妖魔だと罵り、父はカティアに隠し通せと厳命した。が、こんなにもみんなを笑顔にしている夢魔は凄いと思う。つい感慨に浸っていると背の高い青年が入店。セオ、と店主に呼ばれているのを見るに彼も常連なのだろう。ほぼ満員なで丁度空いていたカティアの隣の席に着いた彼は何か嫌な事があったのかヤケ酒したい気分だと言う。ついに結婚するのかい?苦笑いする店主にセオは肯定すると頭を抱えた。父さんがもう長くないんだ。自分が生きているうちにとせっつかれて・・・。しかし、どうやら婚約者はとんでもない悪女らしい。政略結婚なのはいい、だが性格が悪い女は嫌だ。そう言って強い酒を煽った。この人、貴族なのかしら。口を吐くワードで何となく状況は察せられた。きっと私みたいに息抜きに来ていたのね。そう思うと親近感がわいて、判るわよ、その気持ちっ。そう言って話に割り込むとかく言う自分も顔も知らない人に近々嫁ぐのだと打ち明けた。どれだけ飲んだだろう。意気投合してセオに宿屋に誘われたのは覚えている。気付くと裸でカティアは真っ青。隣には同じく裸で寝ているセオが。パニくった彼女は一人屋敷に戻ったのだが、夜に抜け出しののが父に見つかって大目玉。しかも行きずりの男性と関係を持ったことを自白させられ、結果カティアは手切れ金と共に屋敷から追い出されたのだった。ひと月ほど経った頃、王都から南西にある港町レイネで暮らしていた彼女は体調不良に。何日も具合が悪く医師の元に行くとなんと妊娠していると言う。どうしよう、セオに知らせるべき?でも彼の本名も知らないし、もうすぐ結婚すると言っていた。あの夜、彼は婚約は破棄する、結婚しようと言っていたけれどどこまで信用して良いものか。子どもを産むなら手切れ金は残しておいた方が良い。仕事を探していたら丁度店番が欲しかったと雑貨屋の店主のローラが住み込みで雇ってくれるそう。彼女には本当に世話になった。時は流れて翌年、カティアは元気な男のを産んだ。一方、その頃。執務室で山と積まれた釣書にうんざりしていたセルジュリウスは南西から星の鼓動を感じて立ち上がった。「星の子が生まれた」主君の呟きに腹心のレスターは目を見開き、陛下の御子と言うことですかと驚いている。「星の子」とはこのシュタルト王家を継ぐ者のことだ。瞳の中にオクタグラムを宿し、強大な加護を持つ。セオ、もといセルジュリウスは、まだ王太子だった頃、身分を隠して行動していた。「星の子」は暗殺や誘拐の危険を回避するため、二十歳になるまで軟禁状態で過ごすのが習わしだった。しかし、そんな生活は息が詰まる。レスターともう一人の腹心・フロウの協力でしばしば息抜きをしていた時、出会ったのがイヴという女性。目を覚ますと彼女はすでにおらず、必死に探したが行方はようとして知れなかった。それが一年近く経って「星の子」の気配を感じた。これはイヴがあの夜授かった子をどこかで産んでくれたに違いない。縁談はすべて断ってくれ。そうレスターに命じるとフロウにイヴと赤ん坊の捜索を頼んだ。三年後、ローラの店で住み込みの仕事をしながら子育てをしていたカティアは、息子の成長を感慨深く思っていた。段々あの方に似て来ている。ラピスが産まれる直前、新聞の一面を飾っていた新国王の写真は、髪色は違うがセオだった。この方が引きこもりの王太子・・・。しかし、セオは健康そのものの体つきだったし、これまで姿を見せなかったのは何かわけがあったのだろう。しかも彼はカティアの悪評を鵜呑みにしてあの女との結婚だけは嫌だと吐き捨てていた。当時はまさか自分のこととは思わず同意してあんなことになってしまったが、今思うと複雑な気分だ。とにかく、お守りをもっとたくさん作らなきゃ。もうすぐ海商祭。観光客も大勢くるので稼ぎ時だ。カティアのお守りはここでも大人気でローラから追加で補充を頼まれていた。が、そのローラから今年は王様が来るんですって、と大はしゃぎ。大丈夫、こんな下町にまで来ないわよ。祭りの当日、彼女は戦々恐々。祭りを見て来なさいよとローラに言われ、観念してラピスと大通りへ。そこでカティアは、セルジュリウスと遭遇し・・・。シークレットベビーものです。元々婚約者同士だったのに、ややこしい出会い方をしたおかげで離れ離れに。再会に至ったのは四年も経ってから。しかし、セルジュリウスもここで逃がしてなつものかと交流を重ね、ラピスも懐いたことでカティアも絆され共に王都に帰ることを決意します。しかし、ルーカス・グレンソン公爵が下町の娘・アビゲイルを使い、セルジュリウスの妃にすべく奔走。果たしてカティアは幸せな結婚が出来るのか、という内容です。ここにリーヴィス侯爵との再会もありまして、親子関係の修復についても描かれて行きます。ぶっちゃけこのお父さんも厳しいだけで娘想いの人だったので和解できてよかった。実は凄かった夢魔の力とか、割と怒涛の展開だったのもあり面白かったです。あと、身の安全のためとはいえ王太子を軟禁していたのはともかく、せめて婚約者には面会させておくべきだとしみじみ思いました。評価:★★★★☆
2026.09.08
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昨日(9月6日)までに購入した本です。蜜猫文庫8月刊。 スターツ出版文庫8月刊4点このレーベルの本も少しずつ積読になって来ているような・・・。ヴァニラ文庫9月刊佐倉紫さんの最新作です。 ベリーズファンタジー9月刊2点。仕事の都合で月曜日も感想記事を書き難くなってしまったので、予約投稿をうまく使っていかないとなぁ。とは言え、休日は休日で微妙に忙しいのが悩みどころ(^_^;)
2026.09.07
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2025年7月刊BKブックスf著者:茨木野(敬称略)魔法が全ての国において魔力を持たずに生まれたレイ・サイガは「無能令嬢」と言われ、家族からも周囲からも虐げられる毎日を送っていた。ある日、サイガ家に縁談が舞い込むが、その相手は【極東の悪魔】と呼ばれる悪名高い男、一乗寺護だった。レイを良く思っていない父は、義妹・アリアルの身代わりとして一乗寺家へ嫁ぐことをレイに命じる。レイは地獄のような家から抜け出したい一心で縁談を受け入れることを決意する。しかし、恐ろしい人物だと噂されていた護は意外にも温かく優しい旦那様だった!?そして護との出会いにより、魔力がないはずのレイにある力が秘められていることが判明し、彼女の生活は大きく変わっていくー。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 レイ=西の大陸の伯爵令嬢。 魔力を持たないため無能令嬢と呼ばれている。 一乗寺護=極東の五華族の一つ・一乗寺家の当主。魔法が全ての西の大陸で魔力を持たず産まれたレイは、伯爵家の長女でありながら家族から虐げられていた。いつもは屋敷の離れにある物置小屋で暮らしているレイだったが、今日は珍しく母屋に呼び出された。久しぶりに会う家族。一体何の用だろう。また理不尽な理由で暴力を振るわれるのだろうか・・・。しかし、父から発せられたのは極東の華族に嫁げという意外な言葉。王家から送られて来た勅書をレイに渡し、読むよう言われて中身を見ると確かに王家の印がある。内容は先程父が言っていた通りのもの。勅書にはサイガ伯爵家の娘としか指定されていない。ああ、そういうことか。どこか納得したような表情のレイを見て、父は可愛いアリアルを野蛮人の国に嫁がせるわけにはいかんからなとほくそ笑んだ。どうせもう決まったこと。それにここで生きていくのも疲れた。無能を産んだからといじめられ続けながらも母はいつも自分を守ってくれていた。その母ももういないのだ。この縁談、謹んでお受けいたします。そう言って彼女は深々と頭を下げた。極東までは十日ほどの船旅になる。一乗寺家からの支度金を両親は一銭たりともレイに渡さず、船賃は母の形見を売って工面する羽目に。そうして十日目の朝、極東の港が見えて来た。長く鎖国をしていた国らしいが一体どんな所なんだろう。着いたら一乗寺様のお屋敷を探さなければ。だが、船が突如現れた魔物に襲われ、レイも海に落ちた。流されそうな船員を何とか助けようとしているとそこに一人の青年が飛び込んで来て魔物を倒した。そして青年によって二人は救われなんとか港に着くことが出来た。あんた、もしかして!レイの瞳の色ですぐに西の大陸の者と判ったのだろう。サイガ伯爵のお嬢さん?助けてもらった礼の言葉を遮られたものの、彼が一乗寺護と名乗ったのでビックリ。この方が。あんた勇敢だな、しかもあの海坊主のこと見えてたんだろ?うみぼうず、あの魔物のことだろうか。勇敢かはともかく魔物の姿がはっきり見えたのは確かで、おずおずと頷いた。見鬼の才があるのは珍しい、そう言った彼の話では大抵の人間は魔物を視認できないらしい。それに、俺に触れられる者は母以外に居なかったとなんだかとてもうれしそう。極東には魔法の概念自体が無いのだそう。その代わりに異能力を持っており、力の強い者たちがこの国を守護している。護は「霊亀」という異能で最強の盾を展開し戦うらしいのだが、強い力にはリスクもある。常に体の周りにバリアが張られている状態で他人との接触が困難なのだと。なのに、あんたには触ることが出来た。凄いな、見鬼の才だけでなく「異能殺し」の力もあるなんて!聊か興奮気味の彼に圧倒されつつ、自分は魔力を持たない無能であると打ち明けた。出来損ないがこの人の妻になんて烏滸がましい。父の話では護は「極東の悪魔」と呼ばれているそうだが、それも強すぎる故の異名なのだろう。こんなに良い方なのに。しかし、彼女の告白に護はきょとんとして、確かに魔力は無いのかもしれないが異能力を二つも持ってて無能なわけないだろう。自分を卑下するなと卑屈になっていた態度を窘められた。多分、レイは転生型能力者なんだろうなと一人納得している彼を見て、知らないワードの羅列に彼女は混乱。だが、そのすぐあと、護が言うようにレイは自分の異能力の凄さを目の当たりにすることに。護が来ているからと助けを求めて来た市民が連れていた女児は妖魔に噛みつかれたままぐったりしていた。護の力で妖魔は祓えたが体内に毒が残り女児は痙攣。それを心配そうに見ていたレイが無意識に女児に触れるとその身体が光りを帯びた。少しするとけいれんが治まり女児は目を覚ましたのだった。感謝しきりの女児の家族の様子に戸惑っていると、多分「異能殺しの力だ」と護がポツリと呟いた。自分にこんな力があったなんて・・・。俄かには信じられないけれど、何だか救われた気がする。一乗寺の屋敷には沢山の寄生型異能者がいた。妖魔に寄生された者はその力を使える代わりに異形に変化してしまうと言うリスクがあると言う。レイの世話係に任命された朱乃は鬼を身体に宿し、年頃の娘とは思えない体格と容姿をしていた。本人もそれを気にして顔を隠して生活していると聞き、居た堪れなくなる。その夜、護と男たちが夜回りに出ている間に屋敷が襲撃され、レイを守って朱乃が大怪我を負ってしまった。治癒の力など無いくせに!それでも朱乃が治るよう、西の大陸の守り神に彼女は祈りを捧げた。すると見る見る傷は塞がり、そのうちに光と共に朱乃の身体が変化し始めた。収まると床にはレイと同じ年ごろに見える少女がいて、屋敷の者たちも驚愕。目覚めた彼女は自分の変化に戸惑いつつも、私、力を制御できるようになったんだとボロボロ涙を溢した。朱乃の弟・蒼次郎も姉に抱き着き大号泣。数刻後に戻った護たちも驚いていて、これも「異能殺し」の力なのか?と茫然。数日後、レイの異能を調べることになり、結果判ったのはレイにはザシキワラシとトウテキという万象を消すと言われる妖魔の力があることが判明。異能力の高さも護の亡き母・守美以上と判り、レイの身辺警護をすべきと皆の意見も一致した。他の五家に狙われる可能性があるからだそうだが当人はピンと来ていない。寄生型の能力を安定させるなんて、レイの力は本当に「異能殺し」なのだろうか、これはもっと詳しく調べる必要がある。護は伝手があるからと専門家に頼んでくれると言い、その間に自分でできることを、とレイは屋敷にいる寄生型能力者すべてを治療。力が安定したことで彼らは皆人と変わらない姿を取り戻し、彼女に感謝した。亡き母が苦しんでいた姿を思い出し、困っている人を放っておけない気性の彼女はあちこちで人助けに奔走。やがてその活躍は極東の王の耳にも入った。王城に招かれたレイは先祖返りで妖魔ハクタクに侵食されかかっていた国王を救うことになり、その褒賞として「大能力者」の称号を得た。それから暫くして、護の友人・四月一日百春の検査によってレイには三つの異能があることが判り・・・。不遇ヒロインが嫁ぎ先で才能を開花させ愛情も信頼も得ると言うシンデレラストーリーです。しかしながら、ほぼヒロインのアゲアゲ展開なのでヘイト部分は序盤のみ。それと、作中色々匂わせだけして全て中途半端なのがちょっと。どうせなら幸運をもたらしていた娘が去って後悔しきりの愚かな家族の断罪話とか、どれか一つでも解決して欲しかったなぁ。ラスボスらしい「白面」は、行方不明(?)らしい護の父親じゃないかと踏んでるんだけど、どうなんだろう。総合的に見て、設定とかは面白かったんですが、色々と惜しいお話でした。続編が発売されたらまた印象は変わるかも。評価:★★★☆
2026.09.06
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2026年8月刊マーマレード文庫著者:木登(敬称略)旧華族の令嬢・紅子は、冷徹な外科医・壮之助と政略結婚をすることに。壮之助には亡き妻との間に娘がおり、秘密を抱える紅子は離婚を望んでいた。そんな愛なき夫婦だったが、共に暮らすうち、紅子の明るさと健気さに触れた壮之助は次第に惹かれていく。別れるはずだったのに、甘い独占欲と極上の愛に包まれ、紅子は幸せな家族へと迎え入れられ…!? ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 久遠寺紅子=壮之介の再婚相手。旧華族・早乙女家の令嬢。久遠寺壮之助=総合病院の医療部長。父の命で紅子と再婚する。久遠寺あかり=壮之助の娘。 早乙女律=紅子と元カレの間に産まれた息子。 早乙女順三=内科医。紅子のまたいとこで一時彼女の主治医をしていた。父が院長を務める久遠寺総合病院の医療部長を務める壮之助は、八歳になる娘と暮らすシングルファザーだ。と言っても外科医として多忙の日々を送っている彼がまともに子育てできるはずもなく、同僚の紹介で雇い入れたナニーの佳代に娘の世話は任せきりになってしまっている。自分の子であるのだから愛情が無いわけではない。しかし、亡くなった妻との関係を思うと娘にどう接して良いのか判らないと言うのが本音だ。どんな経緯であれ、夫婦になったのなら妻と打ち解けられていれば良かったのだが・・・。そんな息子の気持ちを知ってか知らずか、ある日の午後、院長室に呼ばれた彼は再婚を命じられた。お相手は旧華族の名家・早乙女家の次女紅子。語学も堪能な美人とのことだが、引く手あまたであろう令嬢が地方病院の外科医の再婚相手という立場に納得したのか。まぁ、うちの病院にしてみれば大層なメリットに違いない。こうして命じて来たと言うことはもう決定事項なのだ。亡き妻との結婚もこうして父による鶴の一声で決まった。だが、また当時のようなことが起こったら堪らない、本当に先方のお嬢様は承知しているのか尋ねれば、彼女も少々難ありの人なんだと父にしては珍しく歯切れが悪い。週末顔合わせをするからと言うので承諾すると壮之助はさっさと部屋を後にした。数日後、割烹料理の店で両家の顔合わせが行われた。早乙女紅子は写真よりも美しく儚げな女性だった。壮之助もあまり話すタイプではないので自然と互いの親(主に父親)同士の会話だけが弾んでいる。それにしてもさすがは旧華族の血筋と独特のオーラを漂わせていた早乙女氏だが、なんでこんなに紅子さんを下げるようなことばかり言うんだ?聞いてるうちに彼がどんどん俗物に見えて来て辟易とする。親父もなんだってこんなのにペコペコしてるんだ。かく言う壮之助の父も長男に比べて次男のこいつはと話題に乗っかり、互いの母はまた始まったと言う表情。父は長男の慎之介を溺愛していた。容姿も自分に似ていて頭も良い。希望通りに優秀な成績で医師になり、次期院長だと期待していた矢先のこと兄は失踪した。原因は賭博による借金。人を雇って探しても行方はようとして知れず、結果、今まで無視していた次男に漸く目を向けた。お前しか残っていないから。父には何の期待もしていなかったから、そんなことを言われても別にショックではなかった。それからあれよあれよという間に相手を宛がわれ結婚したのは製薬会社の社長令嬢の小百合。妻になった人が慎之介の元交際相手と知ったのは籍を入れて数か月後のことで、それでも妊娠に至った時は少しは関係も変わると思っていた。が、彼女はずっと兄を思い続けており、好きでもない人との子どもは産みたくないと大暴れ。今思えば妊娠期によるノイローゼだったのかもしれない。それでもなんとか宥めて、子供さえ無事に産んでくれたら離婚に応じると約束。しかし、一日でも早く出て行きたいからと退院後に住む部屋を探していた小百合は無理をし続け脳梗塞を起こし救急搬送された数時間後に亡くなった。帝王切開で生まれたあかりが無事だったのだけが不幸中の幸いだった。小百合の実家は娘の死がショック過ぎたのかあかりを引き取ることを拒否。壮之助が親権を持つことになった。妻の実家の人たちの気持ちはまだわかる、が父はせっかく生まれたあかりを女の子だからと興味を持たず知らんふり。母も父に気兼ねして会いに来れずで、父親の壮之助に至っては生活サイクルが合わず同居しているのに余り会えていないのだから寂しい思いをさせている自覚はある。是非、紅子さんには男の子を生んでもらいたい!ガハハと笑いながらデリカシーのない事を言う父を冷めた目で見ながら、彼女と二人で話したいと許可を貰いドライブに連れ出した。車を走らせながらこちらの事情をどの程度知っているのか問えば、全て承知していると返答が。そこで、と彼女が話したのは別居婚の提案だった。紅子はあかりの複雑な心境を慮ってくれているようだ。佳代も交えてあかりには自分が再婚すること、あかりには新しい母親が出来るとは話してある。後で佳代からも説明してくれたらしい。不安もあるが母親が出来るのは嬉しいと言っていた。別居となるとあかりは寂しがるかな?だが、彼女の方も心の折り合いを付けたいのかもしれない。数週間後、二人は入籍。東京から大きなトランク一つを持ってやって来た紅子は、暫くビジネスホテルに滞在すると言う。そんな彼女に一目でも娘に会ってやって欲しいと頼むと少し迷いながらも承諾してくれて家に連れ帰った。あかりは若干人見知りを発動していたが、お土産のシールを貰うと大喜び。彼女が帰る時間になると「帰らないで、こうこちゃん」と泣いて引き留めていた。正直こんなに懐くとは思っていなかったので驚いたが、同居となればまた変わるかもしれない。慣れさせるためには少しずつの方が良いと心を鬼にして紅子をホテルに送った。しかし、その数日後、いつものように佳代を交えマンションであかりと遊んでいた紅子が貧血を起こして倒れ救急搬送されるという出来事が。数年前から酷い貧血症らしいが、どうりで顔色が悪いわけだ。目ざとい父から大事なお嬢様を、と叱責されたが、その父が出て行くと紅子の方がブチギレ。あんな言い方酷いです!と憤慨する姿が何だか可愛くて久しぶりに声を上げて笑った。私、素は大人しいだけのお嬢様じゃないんですよ!もう夫婦なんだし、壮之助さんの前では本性出しちゃいます!!ぷりぷりとまだ父に怒っている紅子が彼には初めて愛しく思えた日だった。一人の時に倒れたら大変だ、と壮之助に説得され、翌日には紅子は久遠寺家にいた。これまでのように数時間ほどの滞在ではなく一緒に暮らすと決まってあかりは大喜び。一緒に寝たいとまで言い出して、本当に彼女を受け入れてくれたんだなと思う。このままずっと家族でいてくれたらいいのに・・・。既に彼女に心惹かれていた壮之助は結婚の継続を願っているが、入籍前に紅子から数年での離婚を希望されていた。どうやらのっぴきならない事情があるらしい。別居を申し出たのもあかりに懐かれてしまってからでは別れにくいからかもしれない。早いもので紅子がやって来てから三ヶ月。早乙女側の意向で二人の医師がこの病院にやって来た。どちらも大学病院務めのエリート。なんでわざわざこんな地方の病院に、と考えはたと気付く。父さん、このままではこの病院、早乙女に乗っ取られますよ。紅子が言っていた数年というリミット、多分それはそれくらいには計画が完了していると言う意味だろう。旧華族と縁戚関係になり良い後ろ盾が出来たと父は大喜びだが、気付いた時には取り返しのつかないことになっていそうだ。紅子もまた早乙女氏に何か弱みを握られているのかもしれない。そんな矢先のこと、早乙女家の遠縁だという早乙女順三と話す機会があり、衝撃の事実を知った。きっかけは順三からの問いかけだ。律君も引き取って下さったんでしょう?と聞かれて疑問符が。誰のことです?神妙な表情の壮之助の様子に、あちゃ~と言った表情の順三は芳次さん(紅子の父)に僕から聞いたと言わないでくださいね、と念押しして語り始めた。当主を務める兄に対してコンプレックスを拗らせていた芳次は何よりも早乙女の血を重んじていた。長女と長男の結婚も思う通りに運び、残るは次女の紅子のみ。美人で頭の良い子だから政治家の二世にでも嫁がせるか・・・。芳次が相手をピックアップし始めた頃、なんと紅子が家出。一年近く経って見つかった娘はなんと子供を産んでいた。隠れて付き合っていた恋人との子で、相手が浮気の末に山の事故で死亡。その直後に妊娠に気付きバレたら堕胎させられると逃げ出したらしい。しかし、紅子は出産時に大量出血により死の淵を彷徨い暫く寝たきりになっていた。実家に戻された彼女を診ていたのが順三なのだと言う。芳次は紅子を激しく叱責し暴力も振るったそう。しかも産まれた孫を雑種の子など早乙女の血筋と認めないと家人に赤ん坊の世話をするのを禁じた。ふらふらになりながらも子供をあやす紅子が不憫でならなかったと順三は言葉を詰まらせた。が、紅子の母か姉が見かねて本家に助けを求め、当主の意向で理不尽な扱いは無くなったが赤ん坊は遠縁に預けることに。以降、紅子は息子・律に会えずで三年後、壮之助との結婚が決まり、後はあなたの知る通りです。順三の話で漸く色々と合点がいった。彼女はきっと壮之助と結婚すれば、数年後に息子と暮らせるようにしてやると言われたのだろう。順三は乗っ取り要員に違いないが、紅子への気遣いは本物に見える。事情が分かった今、紅子と話をしなければならない。帰宅した彼は全て判っていると前置き、彼女からどうしたいのかを尋ねた。あなたさえ良ければこのままここにいて欲しい、律くんのことも引き取りたいのだと本音を語ると観念したのか彼女もこれまでのことを話し始めた。ほぼ順三の話の通りだったが紅子もまた横暴な父に苦しめられてきたこと、壮之助を愛し始めていると語った。なんとしても家族を守る。そう決意した壮之助はこれからのための行動を始め・・・。お互い、ワンマンな父親に振り回され続けていたヒーローとヒロインが子供たちと幸せのために奮闘するお話です。ジャンルとしてはステップファミリーものになるそう。全編通してヒーロー・壮之助目線で語られているので、主役は彼だと思うんですが、マーマレード文庫の人物紹介は紅子がトップなのでそちらに習っています。さて、紅子の憂いを晴らすため、先ず壮之助が始めたのは家族問題に強い弁護士を探すこと。そして見つけた弁護士からのアドバイスで必要書類を集め、紅子に頼んで早乙女本家の当主にも面会。姪っ子を不憫に思っていた彼は全面的に協力することを約束。もし弟が何か言って来たらこちらに回せ、と力強い返事を得て、次は律を迎え入れるための準備を始めます。当初はあかりの反発を食らったものの、後に打ち解け、年明けには律を養子に迎え久遠寺家は四人家族に。しかしこの行為はどちらの父からの怒りを食らい大騒動に、という展開です。ちゃんとハッピーエンドでしたが、テーマがテーマなのもあって恋愛要素はかなり少な目。二人の恋模様を期待するとがっかりするかも。正直、タイトル詐欺に近いものが(^_^;)無愛想なヒーロー目線だし甘い要素もほぼゼロ。壮之助が紅子を好きだと気付いた時が可愛かったけど、ほんとそれくらいです。ただ、お話自体は薄暗い雰囲気ながらも良かったです。飽く迄期待しちゃいけないのはラブラブ部分だけですので。評価:★★★★★
2026.09.05
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9月下旬 レジーナブックス 出来損ない令嬢に転生したギャルが見返すために努力した結果、 溺愛されてますけど何か文句ある? 2 やきいもほくほく10月6日 小学館文庫キャラブン! 黒百合姫は破産フラグを回避したい 腹黒王子は誘惑対象ではありません マチバリ10月19日 HJノベルス ラスボスの継母に転生したけど、 手作り魔道具とお菓子で家族円満です! 木崎優11月5日 一二三文庫 花薬師の恋契り 1 日埜和なこ11月10日 DREノベルス 辺境のお菓子番 ~無能と追放された主席宮廷菓子師、 知らぬ間に王都で評判になっていました~ 歩人11月26日 SB文庫 みだりに怪異と決めつけてはいけません 峰守ひろかず 実業日本社 処刑された悪女、回帰してしたたかに生きる 2 ~死の元凶(呪われた公爵)に凸ったら、溺愛運命ルートに!?~ 蒼伊12月10日 ツギクルブックス 追放令嬢に転生したゲーム好きのOL、世界最強の魔法剣士になる。 てるゆぬ(敬称略)近いうちに月ごとにまとめた購入リストを作ろうと思ってます。一応、忘れないうちにと買いたい本を書き出してたんですけど、見返すにしても少し見難いなぁと、今更ながら思いまして。多分、9月期は追加含めてこれでもう無いと思うので、纏められるかな?
2026.09.04
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2025年4月刊ガガガブックスf著者:マチバリ(敬称略)巫女のレティーシャが嫁ぐことになったのは『狂犬』と名高い公爵様。その正体は、レティーシャが貴族だった子供の頃、わがままの限りに虐げてきた元使用人のヴィンセントだった!…きっとひどい復讐をされるんだわ!そんなレティーシャの思いとは裏腹に、毎夜、彼から注がれる甘美な熱情に、レティーシャは抗うこともできず溺れていく。「俺から逃げられると?あなたは俺の妻だ!」これは復讐、それとも愛?ヴィンセントの真の目的とはーあぶない公爵様の重たい愛に悶える、偏愛ラブファンタジー! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 レティーシャ=没落貴族の娘。両親の死後、巫女として神殿に居た。 ヴィンセント=レティーシャの元使用人。 パウロ=司祭。仮面で顔の大半を隠している。 ミーガン=ヴィンセントの自称婚約者。 ノエル=神殿の先輩巫女。巫女として神殿で働くレティーシャは、「外れ巫女」と呼ばれ、巫女仲間から虐げられていた。「外れ巫女」とは、産まれてすぐ神殿に預けられた者たちとは違い、ある程度の年齢まで外界で暮らしていた者を指す別称だ。要はただの僻みのようなものだが、レティーシャ自身はこの扱いも甘んじて受け入れている。彼女は元々貴族の生まれだった。そこそこ裕福な子爵家の一人娘で、今思えばかなりの我儘娘だったと思う。しかし、十二の年、父が事業に失敗。多額の借金を抱える中、母が流行病で亡くなり、後に父も家令と共に馬車の事故であっけなくこの世を去った。残されたのは返済し切れていない借金とレティーシャただ一人。屋敷と家財を売ってもまだ足りず、レティーシャは娼館に売られることが決まった。使用人たちからも見限られ誰も助けてはくれない。だが、たった一人ヴィンセントだけはどこにでも着いて行くと言って聞かなかった。これまで散々バカにして犬扱いまでしていた私に尽くそうなんて本当にバカな子。彼女は隠し持っていた母のネックレスを退職金代わりにヴィンセントに握らせると引き留める彼を振り切り、取立人の馬車に乗り込んだ。その後、彼女は娼館に連れて行かれはしたのだが、用心深い支配人は念のためとレティーシャの魔力属性を鑑定。結果は聖属性。この子は娼婦にはなれないよ、支配人は取立人に彼女を神殿に連れて行くよう指示した。巫女なら支度金を出してくれるはず、それで手を打ちな。支配人の言葉に取立人は舌打ちしたが、法律では聖属性持ちの女児は巫女になる決まりだ。それを無視して娼婦にしては厳しい罰を受ける。従うしかない。こうして、レティーシャは神殿に預けられたのだった。あれから六年、相変わらず他の巫女たちは自分にだけ厳しい。特に貴族の生まれだと言うノエルから当たりは日に日に強くなり、何かと難癖を付けては嫌味を言われている。ホント、もういい加減にして欲しいわね。まぁ、口が裂けても文句は言えないのだが。そんなある日ののこと、大司祭に呼び出されたレティーシャは、自分がガーデン公爵のつがいに選ばれたと聞いて唖然としていた。私が公爵様の!?この国では皆多かれ少なかれ魔力を持っている。高位貴族になるほどその魔力量は膨大で、強すぎるが故に自らの身体にも影響を及ぼしていた。放っておけばそのうち死に至る。そんな彼らを唯一救えるのが聖神力を持つ巫女たち。彼女たちは夫婦の営みによって相手の魔力を受け止め体内で中和することが出来る得難い存在だ。つがいと言いつつ要は結婚相手なので、貴族は髪や瞳の色など好みのタイプを選んで指名してくる。で、今回選ばれたのがレティーシャと言うわけだ。なんて物好きな。ため息交じりの大司祭の呟きに今回ばかりは同意する。まぁ、あの狂犬公爵だからな。狂犬?エライ言われように困惑していると件の公爵が現れた。背の高い黒髪の青年の顔を見てレティーシャは愕然。ヴィンセント・・・思わずつぶやくと、様を付けないかっ、と大司祭に叱責された。が、誰に向かっての物言いだ!とブチ切れたのはまさかの公爵。その勢いにビビる大司祭はどうして自分がと疑問に思いつつ謝罪したのを認めると、彼は「お嬢様・・・・」と膝をついた。ヴィンセントは遅くなってすまないと詫び、私たちの屋敷に帰ろうと彼女の手を取った。連れて行かれたのはガーデン公爵邸。馬車の中で聞いた話によれば、ヴィンセントはれっきとした公爵家の嫡男だそう。じゃあ、なんでうちで使用人をしてたのだろう。疑問を口にすると、まぁ色々ありまして・・・。どこにでもあるお家騒動です。前公爵夫人は後妻なので、自分が産んだ子を後継にしたかった。命の危険を感じた彼は公爵邸から出奔。街を彷徨っていた所をレティーシャの家の庭師に拾われたのだそう。そこから先は彼女も知っている話だ。あなたは私の犬よ、一生私だけのために生きるの。生意気な子爵令嬢の言葉はヴィンセントに生きる理由を与えてくれた。だからどんな我儘にも従ったし、子爵家が没落しても彼女の側にいた。だから、娼館にだって着いて行くつもりだった。なのにあなたは奥様の形見を握らせ、僕を置いて行った。恨みがましい彼の表情に何とも言えない気持ちになる。レティーシャに置いて行かれた彼は絶対に助けると心に誓い、そのためには金と力がいるとガーデン公爵家に戻った。ヴィンセントは巫女の子だ。権力が集中しないよう、大抵の貴族は迎え入れたつがいと子を成し、後に後妻を迎えてもつがいと子に家督を継がせている。ガーデン公爵家も例に漏れずで、いくら後妻と異母弟が主張しようとヴィンセントが後継者だ。前公爵も肯定し、数年後、ヴィンセントが公爵となり、無駄な足搔きをしていた継母は前公爵に連れられ領地に引っ込み、異母弟のパーヴェルは遠縁の貴族の養子になった。これで漸くお嬢様を助けに行ける。しかし、国中の娼館をしらみつぶしにしてもレティーシャは見つからなかった。まさか外国に売られた!?焦り始めていた彼は王太子の命で出かけた神殿で奇跡的に探し続けていた人を見つけたのだ。丁度、自らの魔力に苦しめられていた彼がつがいにレティーシャを指名したのはそれから数日後のことだった。彼は彼で苦労していたのね。ヴィンセントは事情は語ったが、本心は言わなかった。おかげで、レティーシャがとんでもない誤解をし続けることになることも知らずにいた。これは仕返しに違いないわ。ヴィンセントは私を恨んでいて当然だもの。こんないい暮らしをさせながら、あとでどん底に叩き落とすつもりに違いない。子どもが生まれたらすぐ引き離されて追い出すとか?一番有り得そうな復讐方法を考えて背筋が凍る。もしそうなったら謝り倒して、せめて年に何回かは会わせてもらえるよう頼まないと。と、考え込んでいけないいけないと首を振る。暇だからつい余計なことを考えてしまう。ヴィンセントがくれた資産は使い切れないくらいあるし、商売でも始めようかな。売り物は巫女時代で培った護符。ちょっとした災難なら跳ね返せる護符や、保温機能を付与したもの。製作は作り方をレクチャーした養護院に委託し、材料費を除いた額が養護院の運営費に充てられる。慈善事業にもなって一石二鳥。別に護符の販売は神殿の専売特許ではないし、あちらとは効果が被らない者をを売っている。まぁ、予想以上に当たったから後で抗議が来るかもだけど。それから数か月経った頃、屋敷に一人の女性が訪れた。ボルティア伯爵令嬢・ミーガンは、ヴィンセントの婚約者なのだと言う。彼女はつがいの役割を知らないのか早く出て行けと捲し立てた。が、多分、私が役目を終えるとすれば子供を産んでからかと。そう言うとミーガンはポカン。少しして気を取り直すと、とにかく私と彼は結婚するからっ、そう言って出て行った。メイドからミーガンの訪問を聞き、ヴィンセントは歯噛みした。ガーデン公爵家の財産目当ての意地汚い女。レティーシャの天然な返しに毒気を抜かれてすごすご帰ったようだが、流石に見過ごせないとボルティア家に厳重抗議した。潰されたくなければ娘が馬鹿なことをしないよう見張っておけ。ヴィンセントの忠告にボルティア家の者たちはすくみ上り、ミーガンにも約束させたからもう凸って来ることは無いだろう。が、数日後、今度は神殿からパウロ司祭とノエルが来訪。ヴィンセントの使命は何かの間違いだととんでもないことを言い出したパウロは、ノエルこそが彼のつがいだとゴリ押し。勝ち誇ったようなノエルに困惑していると丁度ヴィンセントが帰宅し、俺が指名したのはレティーシャで間違いないと宣言し、擦り寄るノエルを追い出した。そのやりとりを見ていた執事は、二人が帰った後、あの司祭に見覚えがあると言う。火傷を隠すため目元を覆う仮面をしているが、顔立ちも声もどこかで。近年会ったことがある者ではないはずだが、何か引っかかる。思い出したら教えて欲しいと執事に頼み、今回の件でいよいよ神殿の闇を暴く時とヴィンセントが力を入れ始めた矢先のこと、レティーシャが行方不明になり・・・。復讐ものと思いきや?なお話です。高位貴族の魔力暴走を鎮めるために考え出された「つがい」というシステム。魔力が強い貴族にしてみればありがたい存在の巫女なのですが、神殿がぼろ儲けする仕組みにもなっていて、実はあちこちでトラブル続出。それを憂いた王太子の頼みでヴィンセントが動いていた時、彼は探し求めていたレティーシャを見つけたのです。あんなことを言っておきながら自分を捨てた彼女を憎みつつそれ以上に愛していたヴィンセントは神殿の件が片付くまでは、と本心を隠していました。幸いにもレティーシャは神殿にはいたものの、闇の部分には関わっていなかったので問題なかったのですが、なぜかパウロが彼女を神殿に戻したがっているのを知って不審に思います。そんな最中、神殿に居た者しか知り得ない暗号で呼び出されたレティーシャは、パウロの正体を知って愕然。執事が既視感を覚えたのもそのはず、パウロこそヴィンセントが戻ったことで追い出された彼の異母弟・パーヴェルと判明。同じ頃、執事の話で黒幕が異母弟と知ったヴィンセントは神殿に向かい、という展開です。主役CPが最後の方まですれ違ってたのもあって結構じれじれしてます。事件解決後、彼が本心を語ったことで誤解も解けお互い両想いでハッピーエンドで幕。この作家さんらしい内容で面白かったです。あと、初めて読んだレーベルですが、行間が広くて読み易いのが助かりました。評価:★★★★☆
2026.09.03
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2026年7月刊ベリーズ文庫著者:朝永ゆうり(敬称略)大病院の理事を務める父の紹介で外科医の瑞樹と結婚した万智。「結婚したのは院長になるためだ」と言う瑞樹とは、愛など一切ない完璧な仮面夫婦。もとから恋愛に夢を見ていない万智は、院長を目指す彼のため妻の役目に徹していたが…。周囲の嫌がらせにも屈せず夫を守る万智の姿に、瑞樹の庇護愛が燃え上がり!?「俺が愛の存在を教えてやる」-溢れる激情に万智も心を揺さぶられ…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 望田万智=病院理事長の娘。政略結婚相手の瑞樹に尽くす。 持田瑞樹=エリート心臓外科医。次期院長の座を狙っている。鴎川沙久良=病院長の娘。 鴎川翼=外科医。鷗川家に婿入りして副院長になった。 トキ=VIP室に入院している老婦人。光前寺総合病院の理事長の娘・万智は、父の命令で心臓外科医の望田瑞樹と政略結婚をした。現在、光前寺総合病院は理事長派と院長派に分かれている。外科医を娘婿に迎えたり、働き方改革を積極的に行っている事から院長派が一歩リードと言った所。ならばこちらも、と父が考えたのがこの結婚。とにかくお前は彼が次期院長になれるようサポートに徹しろ。と厳しく言い含められた。お母さんのように、ね。万智の母は碌に父とは口も聞かないくせに、家事は一切手を抜かず、父を支え続けた。両親もまた政略結婚だったそう。母はいつも夫をサポートするのが妻の務めと口を酸っぱくして言っていた。それほど尽くしても愛情も感謝の言葉も貰えないのに?子供のころはそれが不思議でならなかったが、大人になってこうして政略結婚を受け入れている辺り自分も染まっていると思う。だって、夫となった瑞樹からも万智と結婚したのは院長になるためだと初日から釘を刺されているのだ。元より愛情を求めるだけ無駄なこと。やはり宣戦布告に取られていたか。結婚披露パーティーに現れた鷗川夫妻は、晴れの日に嫌味たっぷりのコメントを言うとさっさと帰って行った。院長の娘・沙久良は底意地の悪い女だ。有明会というこの病院に勤める医師の夫人たちの集まりで頂点に立ち、気に入らない者はいびり倒して追い出していた。その会に万智を勧誘しているのを耳にして瑞樹はギョッとした。つい嫌なら断ってもいいんだぞ、と柄にもない事を言ってしまい押し黙る。その態度にどう思ったのか、瑞樹さんの立場が悪くなってはいけませんから。そう言って入会を希望していた。彼女との結婚で実質鷗川の婿養子・翼と瑞樹はライバルになった。腕で瑞樹には敵わないと向こうも熟知しているはず。万智が酷い目に遭わなければいいが・・・。瑞樹の嫌な予感は的中。沙久良によって万智は幾度も嫌な思いをさせられることに。会の集まりでは主旨を詳しく教えて貰えず恥をかかされ、望田家で集まりたいと言うので頑張ってもてなしの用意をすれば難癖を付けられ大事に活けたフラワーアレンジメントを台無しにされた。そして、病院内の花の管理を任されたのはいいものの、花のチョイスを馬鹿にされた挙句、花瓶の水に細工をされたのか花は夕方には枯れていて大ショック。せっかくトキさんにも褒めてくれたのにな。VIPルームに入院している夫人は花と華道に詳しい様で、万智の活けた花によく感想を言ってくれていた。今日の花もこういうアレンジの仕方いいと思うわと微笑んでいた。その表情を思い出すと申し訳なくなる。ため息を吐きつつ新しい花に取り換え、何とか無事だった分は持ち帰り自宅に活けなおした。綺麗だな。病院に飾ってあった花だろ?珍しく瑞樹に話しかけられ、はいと肯定する。自分の管理不足で大半を枯らしてしまったのだと話せば、あの女に嫌がらせされてるんじゃないのかと問われ慌てて否定する。嘘が下手だなと思うが本人が言いたがらないのを無理に聞き出すのは悪手だろう。理事長から鷗川が横領をしていると聞いて尚更これ以上のさばらせておけないと思う。しかも、夫の立場が悪くなると黙って嫌がらせをされている万智のことも気掛かりだった。彼女はどこか亡くなった瑞樹の母を想起させる。大手製薬会社社長の父は仕事人間で兄二人も似たような性質。そんな父を支え続けた母は瑞樹が高校生の時に心臓病で亡くなった。父や息子たちに迷惑をかけたくないからと入院もせずに。母の死をきっかけに瑞樹は心臓外科医の道を目指したことで父と絶縁。体面上、式には呼んだが出席だけして挨拶したいと言う万智の挨拶も断って帰って行った。無駄口を聞かず、リラックスが出来ればと瑞樹の為に気分が落ち着く香を毎晩焚き、家事も一切手を抜かない。母と彼女の姿が重なって何とも言えない気持ちになる。その日を境に瑞樹の態度が軟化。実は美術館巡りが好きなんだ、と彼が連れて行ってくれたのはアート系美術館。人気作品をモチーフにしたイヤリングも買ってもらい、万智の胸は高鳴った。しかも、有明会の会合にも付いて来て、沙久良の嫌味な物言いに眉を潜めていた。時間が合えば今後も一緒に行く。彼女にそう告げながら、沙久良への怒りが募る。あれでも今日は瑞樹がいたからソフトだったんだろう。それでもあの言い方は無い。家柄的には上になる万智をまるで貧乏人扱いまでしていたのを思い出し更に腹が立った。これは早々に調査を勧めないと。そう決意した矢先のことトラブルが。元大物政治家の胆嚢結石の切除は翼の担当だった。研修医でもこなせる簡単な手術なのに、名乗りを上げたのは患者が元大物政治家だから。しかし、手術日前日に結石の裏に大動脈瘤があるのが判りそれが破裂寸前。患者も体調不良を訴え、瑞樹が手術することに。結果手術は成功したのだが、翼は家族にいいように説明し手柄を横取り。瑞樹も業腹だったが、ここはいい気にさせておいた方が後の逆転が生きると判断。これまでに揃えた院長たちの不正の証拠を揃えて告発の日を待った。だが、数日後の病院の創立記念パーティー当日、万智が何者かに攫われ・・・。次期院長の座を巡っての争いが激化する中、瑞樹は万智を愛しく思うようになっていました。そして、万智もまた。そんな中、翼のミスを瑞樹がフォローしたことで形勢逆転されそうな鷗川サイドは大焦り。こうなったら万智が不貞をしたとでっち上げてスキャンダルで瑞樹を追い落とそうと画策して実行に移します。もうね、どうせ沙久良の案なんでしょうが、やることが下種過ぎてドン引き。これまでの嫌がらせを思うとあなたの方がよっぽどお育ちが悪いですよ?万智が無事救助された後、怒り心頭の瑞樹によって鷗川院長による横領が暴露され、彼らは退陣に追い込まれるのでした。当然、沙久良は醜い悪あがきをしましたが、会のメンバーにも見放された上、実は華道の家元だったトキさんに完膚なきまでに叩きのめされます。これまで散々、万智の花に文句付けてたからこのシーンはスッキリ。ってか、人の作品にケチ付けられるほどの腕じゃなかったのかいぃっ。騒動後、理事長の推薦で瑞樹が次期院長に決まり、思いが通じた二人の仲睦まじい様子が描かれて物語は幕。じれじれ系なかぁと思いきや、ヒーローが割と早くヒロインに心を許したので、優しくなるのも早かった。判り易いヘイトキャラへのザマァもあってテンプレながら面白かったです。評価:★★★★☆
2026.09.02
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9月25日 レジーナブックス はっきり言ってカケラも興味はございません 身勝手な婚約者とはお別れします 桜みおな 破滅予定の悪女ですが、 天使な双子の継母になったので心を込めて育てます! 氷雨そら10月28日 スターツ出版文庫 鬼の花嫁 新婚編 六 (仮) クレハ クチナシの花嫁(仮) 琴織ゆき 貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されてます いずみ 涙の治癒師 ~無能と呼ばれた私を、若き当主だけが信じてくれました~ 樹花奈10月30日 角川ビーンズ文庫 あなたの好きにしてください 私が偽物の番でも愛してくれますか? 鳥村居子 eロマンスロイヤル 厄災の魔女、魔力を失ってこじらせ王弟殿下のお嫁さんにされる かな11月5日 フロースコミックス 今世は当主になります 9 公爵夫人の50のお茶レシピ 12 悪女は砂時計をひっくり返す 1212月1日 Mノベルスf 傷物の人形令嬢は隣国のワケあり辺境伯に囚われ、心の中まで愛でられる かのこ(敬称略)鬼の花嫁、ついに本編の続きがっ
2026.09.01
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1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位 12位 13位 14位 15位 16位 17位 18位 19位 20位 21位 22位 23位 24位 25位 26位 27位 28位 29位 30位13位以下がちょこちょこと変動しています。「鬼の花嫁」の伸びが凄いのはやはりアニメの影響ですかね。
2026.08.31
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2025年2月刊レジーナブックス著者:悠十(敬称略)ルビアス王立学園の卒業パーティーにて、王太子が婚約破棄するという大事件が発生した。アリスはこの騒動に巻き込まれ、元王太子となったアルフォンスとの結婚を命じられる。普通の令嬢なら悲観する状況だが、前世の記憶を取り戻したアリスは大喜び!? イケメンで優秀な国一番の優良物件を婿に迎え、アリスは彼と幸せになると決意する。そんな想いを認めてくれた愛と情熱の大精霊と契約して奔走していると、アルフォンスの元婚約者の取り巻き、そして国王のたくらみが二人を襲う! さらに、彼が婚約破棄をしなければならなかった理由も明らかになって……? 愛の力ですべてを薙ぎ払う、無自覚サクセスストーリー開幕! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 アリス=乙女ゲーム「精霊の鏡と魔法の書」のヒロイン。アルフォンスが引 き起こした断罪イベントで「ざまぁ返し」をされ退学になる。アルフォンス=元王太子。攻略キャラの一人でアリスと恋に落ちる。 ローズ=炎の大精霊。アリスを気に入り契約する。 ベアトリス=ゲームの悪役令嬢。転生者で断罪イベントを自力で回避した。 シリル=王太子。アルフォンスの異母弟。 バートラム=アルフォンスの側近。大好きな乙女ゲームをプレイしながら、結婚を夢見ていた前世。そんな自分が「精霊の鏡と魔法の書」のヒロイン・アリスに転生した。神様、本当にありがとう!目の前にいる本物の王子様・アルフォンスはゲームのシナリオ通りにちょっとしたきっかけで仲良くなったのだが、いくら好きでも自分はしがない男爵令嬢。多くを望んではいけない。ガワはピッチピチの十六歳の少女でも中身は常識ある三十路女。普通に考えれば王妃になどなれるはずがないのだ。それにアルフォンスの方も弁えているように感じる。ゲームでは一番攻略が簡単なキャラだったから意外に思う。彼はアリスとよくお茶を楽しんだが、必ず側近のバートラムを伴い、決して二人きりにはならなかった。だが、それほど慎重な彼が婚約者のベアトリスに公衆の面前で婚約破棄を告げるとは!ベアトリスはアリスのライバルキャラで、所謂悪役令嬢だ。アルフォンスのの婚約者でもあり、アリスを目の敵にしてあれこれと嫌がらせを繰り返し、最後はアルフォンスに断罪される。テンプレ的な悪役ながら、実のところアリスは彼女に意地悪されたことが無い。どちらかと言えば取り巻き達を諫め、庇ってくれていたように感じる。これはもしや、彼女もまたゲームプレイ経験のある転生者なのではないだろうか。断罪されないよう潔白を示すための証言まで用意してあるのを見るに可能性は高い。おかげでシナリオは相当変わって来ている。なのに、ゲームの抑止力か断罪イベントが発生。二人に待っていたのは『ざまぁ』返しであった。数か月後、アリスはアルフォンスを婿に迎えて実家のコニア男爵家に帰って来ていた。用意周到なベアトリスは自らの潔白を示し、無実な彼女を断罪しようとしたアルフォンスは廃嫡された。彼を唆した覚えのないアリスも退学の憂き目に遭い、アルフォンスとの結婚を命じられたのだが、内心では大喜び。だって彼との結婚は叶わないと思っていたのだもの。ベアトリスには感謝しかない。どうやら彼女には本命がいたらしいし、あちらはあちらで宜しくやってればいいのだ。が、あれ以来アルフォンスの元気がない。俗に言う燃え尽き症候群みたいな感じで食欲もなくどんどん痩せて行く。そんな時はさぁ、飛び切り美味い肉を食わせてやんなよ。領地の少年からのアドバイスでアリスは奮起した。コニア男爵領にはダンジョンがある。最下層に棲む魔物は希少な食材をドロップするそうで、販売目的の冒険者たちが潜っていた。しかし、潜るにはある程度の戦闘力が必要だ。もしくは精霊と契約して守ってもらう。ならば今こそやり込み勢の本領を発揮する時。この男爵領は流石はヒロインの故郷、精霊界に通じる扉もあった。本来ならアリスも光の大精霊・ルーカスと契約するはずが、ベアトリスに先回りされ横取りされていた。彼女も転生者だと確信したのもこの時だ。まぁそれはともかく、今の自分に精霊がいないならこれから探して契約するまで!扉を潜り契約してくれる気のある精霊を募った。私の大好きな旦那様に美味しいお肉を食べさせてあげたいの!大抵の人間は富や名誉を願って契約を望むものだが、目の前の少女はどうやら違うみたいだ。そこに面白そうね、と声をかけて来たのは女神コスをした筋骨粒々のオネェ。もとい、炎の大精霊・ローズだった。心は乙女と言う彼はアリスの願いにいたく感動して契約してくれた。だが、いくら自分が付いていてもダンジョン最下層に挑むならあなたも鍛えなきゃダメ、と、それからローズによる厳しい訓練が始まった。それから暫くしてアリスは包丁一本あれば中型の魔物程度を倒せるようになり、最下層に挑戦。見事に高級肉をGETして戻って来た。その日、領民を交えての無礼講でのバーベキューが行われ、アルフォンスは調理された高級肉を味わった。ローズにも紹介され、改めてアリスは凄い人だと思う。久しぶりに食事を美味しいと思えたのは彼女のおかげだ。「私の都合に巻き込んですまない」そう言って、彼はアリスに詫びた。それからの彼は腐ってばかりではいられないと精力的に動いた。もう王子でもなく、この家の婿養子なのだから仕事をさせて欲しいとアリスの父・デニスに頼み、領主の仕事を手伝っている。その間にアリスはダンジョンに潜り食材や毛皮、稀に魔晶石を入手。おかげで男爵領はかつてないほど潤っていた。しかし、そんな最中に事件が。先ず、ベアトリスに想いを寄せているジオルドが、お前のせいで彼女が悪く言われているとアルフォンスに決闘を申し込んだ。しかしそれはアリスによる返り討ちで不発に終わったのだが、その夜アリスは呪いに倒れたのだ。大精霊と契約をしていれば呪いの類は彼女に害を成せない。しかし、小さな呪いをいくつもかけられるとそのうち保護もたわみ、それが穴を作って侵入。呪いがかかるようになる。なぜか呪いの類に精通していたアルフォンスのおかげで九割の呪いは解呪出来た。一番厄介な呪いはここまで解ければ自分が介入できるとローズがアリスの精神に干渉して彼女自身の力で解呪させることに成功。事なきを得たのだが、どうやらアルフォンスが廃嫡となり、地方の男爵家の婿になった程度では許せない者がいるらしい。おそらく父の仕業だろう。私は父が溺愛する王妃の子ではなく忌々しい側妃の息子だから・・・。国王夫妻は長く子に恵まれなかった。そこで嫌々側妃を迎えたのだが、側妃はすぐに妊娠。そうして産まれたのがアルフォンスであった。だが、皮肉なことに王妃も奇跡的に懐妊。後に第二王子シリルが産まれた。シリルの誕生は側妃とアルフォンスに暗雲をもたらした。王にしてみれば家族は王妃とシリルのみ。側妃とアルフォンスは汚点だと二人を遠ざけた。その後、側妃は不審死を遂げ、アルフォンスも毒殺を恐れる日々。側妃は亡くなる前に息子を憂い、後ろ盾としてバクスウエル公爵家の令嬢・ベアトリスと婚約させたのだが、ベアトリスを偏愛する公爵に彼はよく思われていなかったそう。ベアトリス自身もアルフォンスを避けていたため援助は期待できなかったと言う。彼の話を聞いて、断罪を回避するため彼女も必死だったのだろうと思う。だが、中身が変わったせいでこうして弊害が起きてしまった。にしても、国王には呆れる。彼には何の罪もないのに。後に判明したが、ジオルドと呪いを送って来たコーネリアスを焚き付けたのはバクスウエル公爵だったらしい。実は両想いであったシリルの妃になると思われた彼女は、結局王族には向かないと判断されシリルの妃候補に上がらなかったと言う。そこで、懇意にしていた二人との結婚話が持ち上がり、どちらかと秒読みになった頃、この事件が起きた。てか、狂った親が次から次へと。そう思うとアリスの父であるデニスは出世欲もないし割かしまともな部類の人間だ。国王と公爵にみたいな毒親を持ってしまったアルフォンスとベアトリスには同情する。だが、一難去ってまた一難。今度はアルフォンスを狙った国王から影の妖精が放たれ、彼の暗殺が実行されようとしていて・・・。転生ものです。主人公は前世の記憶を持ったままゲームのヒロインに転生。攻略キャラの一人である王太子・アルフォンスと想いを躱しますが、なんと悪役令嬢の方も転生者だったことからシナリオはもうぐちゃぐちゃ。それでもアリスの方は死んだのが三十路だったのもあって色々と弁えていました。決してアルフォンスとは深い関係にはならず、ただ好意だけを寄せていただけなのに、なぜか断罪イベントが発生。アルフォンス共々彼女は罰を受け退学処分の末に実家に戻されてしまいます。そのうち、明らかになっていくアルフォンスの事情と、シナリオを大改編したせいで断罪を免れたベアトリス側もなんだか雲行きが怪しい。アリスを狙った呪い騒動が漸く落ち着いた頃、今度はアルフォンスを狙い、王の命で影の妖精が現れ、彼に呪詛をかけようとしますが、それを止めたのはローズとアリス。妖精が言うには国王に囚われ、こうした暗殺を幾度も行っていたと暴露。妖精に掛けられた首輪をアルフォンスが解き、自由になった妖精は国王を呪います。結果、王は狂気に陥り後に亡くなり、アリスとアルフォンスは一応の平和を取り戻すのでした。一見か弱い外見ながら愛ゆえにいつの間にかとんでもない強さになっていたアリスをアルフォンスは頼もしく思い、深く愛するように。彼の側近のバートラムもやって来て、皆で男爵領を盛り立てていく様子が描かれて物語は幕。最後のベアトリスの選択と言い、テンプレの転生ものとは違った展開が予想外過ぎて面白かったです。おまけの番外編は、男爵領で起こったとある事件の話と、バートラム目線の後日談の二本。タイトルは結構お気楽系なれど、ストーリーは結構シビアな内容です。評価:★★★★☆
2026.08.30
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2026年6月刊マーマレード文庫著者:花木きな(敬称略)樹里と恭夜はライバル会社の令嬢と御曹司でありながら、10年来の親友。実は恭夜への恋心を秘めてきた樹里だが、事業提携のため、彼から仮面夫婦としての結婚を迫られ!?割り切って始めた新婚生活なのに、恭夜は情熱的に距離を詰めてくる。「樹里のことは、毎日可愛いと思っている」-独占欲全開の溺愛に翻弄され、隠していた樹里の想いも溢れ出し…。 ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 園原樹里=美容機器会社の社長令嬢。 片思いしていた恭夜と結婚することになり戸惑う。 千堂恭夜=樹里の大学時代からの友人。 互いの会社のために政略結婚を持ち掛ける。 草薙慎二=製薬会社の御曹司。 戸田悠莉=恭夜の結婚相手と言われていた女性。美容機器メーカー「ジャドウ」の社長令嬢・樹里は、この会社の後継者を目指して現在奮闘中。だが、社長の娘ということで同僚達からは遠巻きにされ、聞こえよがしな陰口を叩かれたりと悩みは尽きない。遠巻きにされるのはまだ良い。しかし、本人に丸聞こえな悪口はいかがなものか。結局のところ、単に自分は侮られているだけなのではと思う。難しいなぁ。独り言ちながら昼休憩に入った樹里は前方に見えた草薙慎二の姿に眉を潜めた。大手製薬会社・草薙製薬の御曹司の彼は父のたっての頼みで見合いをした相手だ。会うだけと言う約束だったのと草薙の人となりが自分に合いそうになく、父には断っておいて欲しいと頼んだ。なのにしょっちゅうメールを寄越すわ、こうして会いに来るなんて面の皮が厚過ぎる。今日は大事なイベントの日。この人と談笑してる暇なんて無いんだからっ。とはいえ、本人にそんなこと言うわけにはいかず、仕事中ですのでとその場を離れようとしたら腕を掴まれて万事休す。イベントが終わったら今日のことを伝えてお父さんから改めて断りを入れてもらわなければ。ちょっと、本当に・・・。そう言いかけた彼女は、颯爽と現れた親友・恭夜が草薙を制した。そそくさと立ち去る草薙を見送り、助かったと彼に礼を言った。もしかして例の見合い相手?と聞かれて頷く。嫌な所を見られてしまった。恭夜とは十年来の付き合いなのだが、ジャドウのライバル会社・センドウの社長令息なことから、互いの親は犬猿の仲。彼のおかげで難を逃れたと言うのにそれを父に言えないのが悲しい。美人は大変だな、と言われて溜息を吐いた。取り立てて自分が綺麗とは思っていないが、美容機器メーカーの営業として少しでもよく見えるよう努力はしている。恭夜も皮肉で言ったわけでは無さそうなので、苦笑いしながら今日実家に寄って父から苦情を入れてもらうつもりと話した。数日後、退勤後によったコンビニで恭夜と遭遇。相変わらず父は千堂家を毛嫌いしていて、絶対に二人きりで会うなと釘を刺されてしまった。ライバル社の社長の身内同士、情報漏洩を疑われる。父の言葉は目から鱗で、傍からはそう見えるんだとショックを受けた。ので、いくらわざわざ彼が会いに来てくれたのだとしても場所を移して長話は出来ない。まったく、親父もいつまで昔の話を引き摺ってるんだか。不服そうな恭夜が言うには、千堂社長と樹里の父は大学時代は仲が良かったらしい。なのに、何かがあって関係は拗れに拗れた。てか、もう三十年近く前の諍いが原因なんて一体何が原因なんだか。とにかく、どっかで夕飯食べにでも行きたいのは山々なんだけど、そういうわけでそろそろ。立ち去ろうとした樹里の手を取り、先日倒産した老舗メーカーの名を挙げた彼は、このままじゃうちとジャドウも危ないぞと告げた。実のところ、あのメーカーの倒産は衝撃だった。戦争の影響で原材料は爆上がり。加えて物価高のせいで皆美容に金をかける余裕も無いだろう。両社とも他人事ではない。倒産を回避するためにも、お互いの得意分野で手を結ばないか?センドウの宣伝力とジャドウのブランド力。確かにそれが適えばどんなにいか。が、あの二人が易々と手を組むとは思わない。だから、俺たち結婚しよう!突然の提案に樹里は唖然。恭夜に片思いしつつも自分でも叶わぬ恋と諦めていた。なのに、当人から政略結婚しようとプロポーズされている。でも確か、彼も取引先の役員の娘とお見合していたはず。疑問を口にするとどうしてもと頼まれて一度食事に付き合っただけだと言う。先方はその気だったみたいだが、断ったとも。俺は結婚するなら樹里がいいと思ってた。お前は俺が相手じゃいやか?問われて慌てて嫌じゃないと首を振る。それにこの結婚は両社にとってメリットばかりだ、きっとうまく行く。力強い彼の言葉に樹里は頷いた。案の定、二人の結婚は波紋を呼んだ。だが、恭夜は絶対に手を組むメリットはあると根気強く説得。両家の母の口添えもあって渋々だが父達も折れた。結婚式だけは親に仕切らせてほしいというのが最大限の譲歩で、その程度ならと二人も承諾。婚約が報じられると、どちらかが吸収合併されるのではと不安に思うものも多く、これからは業務提携をして行くだけだと説明が行われた。それから少しして樹里は法人向けの営業部の係長に就任。元々樹里は優秀だったのもあり、いよいよ後継者教育が始まったのだという噂が流れた。その影響か陰口がピタリと止んだ。今まで樹里を軽んじていた者たちが非礼を詫びて来た時は何の茶番かと思ったが、これからは口を慎むよう揶揄を込めて釘を刺しておくのを忘れなかった。そもそも、勝手に結婚までの腰掛入社と思われていたのは心外だ。父は仕事には厳しい人だし、そんな性根では入社もさせてくれなかったろう。舐めて貰っては困る。盛大な披露宴になるので式は来年になったが、入籍だけは済ませて恭夜がもともと住んでいた2DKのマンションで同居を始めた。恭夜は毎日忙しそうだが、夫婦の時間を持つことも忘れなかった。政略結婚という形になってしまったが、俺はちゃんと樹里を愛してるから。どちらにせよ、両想いだとしても双方のメリットが無ければ結婚は許してもらえなかったろう。その時は何もかも捨てて駆け落ちしたさ、と意外な言葉に、なんだ結局私たち両想いだったのねと可笑しくなった。未だこの結婚に思う所のある者たちは双方にいるようだが、そいつらがぐうの音も出ない企画をぶち上げるとお互い頑張っている。まぁ、母親同士は仲良いけど、父親同士は相変わらず口も聞かないみたいで呆れるけど。それと、こうして結婚したにも関わらず草薙からは相変わらずお誘いのメールが届く。いや、なんで人妻をデートに誘うのよ。どうかしてるわ、あの人。今のところ、付き纏われてはいないので実害はないが、あまりしつこいようなら俺に言えよ、と恭夜にも言われ、頷いた。それから暫く経った頃、ネットニュースで恭夜の不倫が報じられ・・・。タイトル通りのお話です。不倫報道はある者による企みにより流されたデマで、当然恭夜は浮気なんてしていませんでした。調査の結果、どうやらこの話、彼に一時持ち上がった縁談相手・戸田悠莉の口から語られたものらしいと判明。当人にどういうことかと確認を取ると、悠莉は妊娠しておりその父親が恭夜だと嘘を吐いたことから大事に。アルバイトの男性と交際の末に妊娠した彼女が打ち明けると相手はドロン。もう中絶も出来ない時期で咄嗟にうそをついてしまったようですが、何てはた迷惑な。保身のためについた嘘のせいでセンドウもジャドウも大混乱で、社長同士はまたもや大喧嘩になっててんやわんやになっていました。しかし、当人の証言で不倫報道はガセと判ったので、記事を書いた記者に謝罪文と先日の報道が誤報だったと訂正文を出すよう警告。その記者の話で、ネタを売り込んだのが草薙と判り、激怒した恭夜によって彼は社会的地位を失うのでした。このお嬢様が本当にバカ娘で、責任を取って役員を辞める羽目になった父親が何とも気の毒。そして騒動の終息後、二人の父の仲違いの原因が明かされたんですが、想像通りの色恋沙汰。樹里の父親は元々恭夜の母い惚れてて云々的な内容で、子供たちにしてみればいつまで引き摺ってんだよ、あほくさ、になるのも仕方なし。まぁ、樹里父は今妻にぞっこんなので未練はないみたいで、漸く蟠りも解けてめでたしめでたし。エピローグではウエディングドレス選びに力を入れる恭夜目線での二人のラブラブなやり取りで物語は幕。好きな作家さんなんですが、不倫疑惑が出る辺りまで割と淡々とした展開なので好き嫌い分かれる内容かも。評価:★★★★
2026.08.29
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2025年2月刊ジュエルブックス著者:葉月エリカ(敬称略)異世界転生したら乙女ゲームの悪役令嬢に?婚約破棄されたうえ、辺境に追放!?監視役はコワモテの辺境伯さま。なんと私との結婚をみんなに宣言してしまって!?でもただの監視役ー本当の夫婦じゃない。そんななか子どもを拾って一緒に子育てを。本当の夫婦として愛が芽生えてきて…。「君を誰にも渡したくない」キマジメから一気に絶倫キャラに豹変!舌で、指先で、そして巨大なアレでー愛されまくって朝まで寝かせてもらえません! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 ルイーザ=ゲーム「蜜色パティシエール」に登場する悪役令嬢。事故死した大 学生・高村奈月が転生した姿。 ダリウス=辺境伯家当主。追放されたルイーザを妻に迎える。 リアム=ルイーザとダリウスが保護した少年。 シャーリー=「蜜パ」のヒロイン。 陣内嵩男=奈月に付き纏っていたストーカーで共に事故死する。スチュワート=王太子。「蜜パ」の攻略キャラの一人。ちょっと複雑な家庭環境で育った奈月の夢は福祉の仕事に就くこと。だが、そんな彼女を悩ませているのは、大学の同期生・陣内嵩男による付き纏い行為。所謂オタクの彼は飲み会でも浮いていて、気を遣った奈月に話しかけられて以来、自分に気があると勘違いしてしまった。当然、そんなつもりは更々なかった彼女は困惑するばかり。バイト帰りに待ち伏せされることも多く、今夜もまた暗がりから声を掛けられて飛び上がった。奈月が嵌ってる乙女ゲー、課金しまくって全部クリアしたよ。奈月はあんなキラキラした男が好みなんだね、ニヤニヤ笑う彼に、戸惑いながら陣内君と声をかけるとなぜか急にブチキレ。一体どれだけお前に金を使ったと思ってる、と掴みかかって来るのを支えきれず、二人は車道に転がり落ちた。そこにトラックのクラクションとライトが迫り・・・。気が付くと白い空間だった。やっぱり死んじゃったのかな、私。でも、私が居なければ高村家は血の繋がった本当の家族だけになる。幼い頃、乳児院から奈月を引き取ってくれた高村夫妻は長く子供に恵まれなかった。本当の我が子のように二人は可愛がってくれたけれど、七年後、なんと母が妊娠。驚いたことに産まれたのは三つ子だった。念願の実子が産まれても奈月を蔑ろにすることはなく分け隔てなく育ててくれたのは感謝している。それでもなんとなく感じる疎外感は多分奈月自身の問題だろう。優しいあの人達のことだからきっと私の死を悲しんでくれているはず。それだけで充分だ。しんみりしているとすぐ近くから話しかける声が。視線を向けると、ザ・大阪のおばちゃんと言った風情の人物。話し方もコッテコテの関西弁だったが、おばちゃんはこっちの世界の神だと言う。あんたの家族のことなら心配ないで、まあ、生き返らせえることはできへんけど。そう前置いた神さまは奈月を異世界転生させてくれると宣言。サービスするさかい、あんじょうやりや。手を振る神様の姿が遠ざかり、意識が浮上し始める。目を覚ますと彼女は天蓋付きのベッドに寝ていた。側にいたメイドがギョッとして、お嬢様がお目覚めに~~~っと駆け出していく。起き上がると茶色の長い髪がはらりとシーツに垂れて奈月はビックリ。寝台の横にあった台の上から手鏡で自分の姿を確認するととんでもない美女。いや、この顔は・・・。間違いない、ルイーザ・ネヴィル。アプリゲーム「蜜色パティシエール」でヒロインのライバルの悪役令嬢その人であった。夢じゃなかったんだ。神様の言っていたとおり、奈月は異世界転生をしていた。普通ならヒロインに転生させてくれそうなものだけど、実のところシャーリーよりルイーザの方が好きだった奈月にしてみれば「判ってるじゃない、神様」だ。まぁ、問題は後に控えるザマァ展開なのだが。どうやらルイーザは病による高熱で一週間ほど寝込んでいたらしい。おかげでとんちんかんな言動しようが、性格が百八十度変わっていようと死にかけたせい、で通じる。なんとかこれで軌道修正出来れば、と足掻いてみたけれど、まさか断罪イベントが三日後じゃ仕込みのしようが無い。なんかシャーリーもこんな子だったっけ?と思う位印象が変わっていたのが気になるが、結局、王太子である婚約者のスチュワートにこれまでの悪行の罰として婚約破棄された挙句追放処分になってしまった。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。ルイーザの父・レヴィル伯爵に大恩があると言うカートレッド辺境伯の嫡子・ダリウスがルイーザの身元引受人になってくれると言う。両親は泣いて喜び、どうか娘を頼みますとカートレッド領にルイーザを送り出した。屋敷に着くと辺境伯の親戚達が集いやいのやいのと騒いでいる。どうやら長く病で臥せっていた辺境伯が亡くなったらしい。嫡子のダリウスが家と爵位を継いだものの、遺産の取り分で大揉め。ルイーザの到着を執事から聞いたダリウスは彼女を呼び寄せると、私の妻です。と皆に紹介。は?妻!?否定しようとすると合わせてくれと視線で頼まれ、渋々言われる通りに従った。従姉妹や再従姉と結婚させようとしても無駄ですよ、おじさん達。そう言って親戚連中を睨んだ。なるほど、そういうことか。お金持ちも大変ね。親戚達が帰り、漸くダリウスと二人きりになると、本当に結婚するつもりなのか恐る恐る尋ねた。これはあなたにもメリットがあると思いますよ。肯定したダリウスは追放され行く宛てのない貴族令嬢が辺境伯の妻になるならこれ以上ないくらい幸運なはずです、とキッパリ。私は煩い親戚達からの縁談攻撃から逃げられる。まぁ確かにお互いウィンウィンではあるが心の準備ってものが。不安に思わずとも君を愛する気はりませんので、という返しに唖然。スチュワートさまからくれぐれもおかしなことをしでかさないよう監視も頼まれているとも聞き、なるほど、それで身元引受人ねと納得。ちょっと期待してしまっていた彼女はガッカリ。心配せずとも私は悪さも脱走もしないからっ。こうして始まった夫婦生活は思ったより穏やかで、一見するとコワモテな彼がただ不器用なだけの人だと判りルイーザは次第に彼に心惹かれ始めていた。そしてダリウスもまた、実際の彼女と噂と悪女のギャップに困惑していた。スチュワートの新たな婚約者・シャーリーをとことんいじめ抜いていたそうだが、顔立ちはきついものの、使用人たちへの接し方を見るに心優しい人だとすぐ判った。まぁ、殿下を取られそうになって魔が差したんだろう。お互いの印象が変わりつつあった頃、孤児院の慰問に出掛けていた二人は川で溺れていた少年を助け屋敷に連れ帰った。五歳くらいだろうか。しかし、意識が戻った少年は自分のことを何一つ覚えていなかった。溺れたショックによる一時的な記憶障害であろうと診察を受け、親は名乗り出るまで屋敷で預かることに。リアムと仮名を付けられた少年は二人を本当の両親のように懐き、リアムを介してルイーザとダリウスの関係も徐々に変化。ある夜、あの日言った言葉を取り消したいと彼から言われ、ルイーザも承諾。本物の夫婦になった彼らはリアムを慈しんだ。それから暫く経って、ダリウスはスチュワートから王宮に呼び出された。何やら相談があるらしい、本当は数時間でも君と離れたくないんだ、と渋る夫を送り出し、リアムとピクニックに出掛けたルイーザは何者かに攫われて・・・。転生×悪女×子育てという人気ジャンルてんこ盛りのお話です。仮初の夫婦のはずが、リアムが来たことにより母性と父性に目覚め、平穏に暮らしていました。そこにダリウス宛てに王太子からの呼び出しが。新しい婚約者シャーリーの人が変わったようだ、それをスチュワートは思い悩み、先輩で友人でもあるダリウスに相談をしたかったのです。一方、誘拐されてしまったルイーザは指示したのがシャーリーと知って驚愕。しかもその喋り方、もしかして陣内くん?一緒に死んだストーカーがヒロインに転生って、そりゃあまりの変わりようにスチュワートも困惑しますよねぇ。違和感憶えただけシャーリーに溺れてなかったのは立派ですが、陣内はヒロインの姿でとんでもないことをしでかしていました。それをベラベラと楽しそうにルイーザに暴露したら、スチュワートにも聞かれてしまい万事休す。しまいには俺はシャーリーじゃないとまで言い出して心の病とされてしまいます。事件後、明らかになるリアムの正体は意外なもので・・・。内容はエロ+ラブコメと言った感じ。ルイーザにメロメロになったダリウスの言動が一々おかしく笑わせてもらいました。強面の人がデレデレになる姿っていいですよね。評価:★★★★☆
2026.08.28
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2026年5月刊オパール文庫著者:玉紀直(敬称略)病院内カフェで働く美乃梨。憧れのフライトドクターの侑馬に付き合おうと迫られ!?勤務中の真剣な表情とはひと味違う、色っぽい眼差し。「なぜだか、君を構いたくて仕方ないんだ」官能の扉を拓くような口づけと愛撫で腰砕けになって…。最奥を抉られ、淫らな悦びに満たされる。この幸せがずっと続けばいいー。そう願うけど!?凜々しい医師と一途で甘い、年の差恋愛! ↑楽天ブックスよりあらすじ引用登場人物 近藤美乃梨=カフェの支店長。憧れていた侑馬と交際を始めた。 桐生侑馬=美乃梨の勤めるカフェの常連。フライトドクター。 島崎克己=美乃梨の従兄で侑馬の同僚。 三笠=ベテラン看護師。美乃梨を気に掛けている。総合病院・天空中央病院エントランス横にあるコーヒーカフェ・くつろぎ堂で働く美乃梨は、中庭から飛び立って行くドクターヘリを見送った。相変わらず桐生先生は子供たちに大人気ね。ドクターヘリが飛び立つ様は緊迫感がありながらもやはりカッコイイ。子供たちが憧れるのも無理からぬことかもしれない。かく言う美乃梨の父もフライトドクターだった。現場で事故に巻き込まれて亡くなってしまったが・・・。病院内のカフェだけあって利用者は見舞客と病院関係者がほとんど。夜勤明けはここのコーヒーを飲まなきゃ、とまで言われるとつい張り切って二時間も早く店を開けてしまっている。先日、桐生から働き過ぎだと注意されたばかり。とはいえ、先生よりは働いてないですよ。心配してもらえるのは嬉しいが、桐生だって多い時は日に七回も出動しているし、疲労度具合は比べるべくもない。なのに何回言ってもタバコは止めないし、疲れが取れるからと薦めてもシュガーを入れてくれないんだから。先程、救急が足りないとヘルプで呼ばれて行った桐生を思い出し、今日は早く上がれるといいけどと救急外来に続く廊下を見つめた。ついつい忙しい医師たちの要望に応えて二時間の残業をこなしていた美乃梨は流石に空腹を覚え、ラーメン食べたいなぁと独り言ちた。俺、美味いラーメン屋知ってる!背後から声をかけられて飛び上がれば、桐生が立っていた。どうやら彼もヘルプに行ったまま帰り損ねたらしい。せっかくの休日にコーヒーなんて飲みに来るからっ。つい呆れたように呟くと美乃梨ちゃんのコーヒー飲まないと一日が始まらなくて、と嬉しい事を言われて胸が高鳴る。とにかく、奢るからラーメン食いに行こうと言われ連れて行かれた店は本当に美味しかった。それから何度か誘われているうちに桐生から交際を申し込まれ、美乃梨は舞い上がっていた。そんなある日、店でトラブルが。カフェのパート店員の佳恵が社員の敦子と大喧嘩。ただでさえカツカツで回している店舗なのに怒った佳恵は退職してしまい、急遽店員募集をかけることに。暫くは本社からヘルプが来るのでその間に見つかれば良いが・・・。が、敦子に喧嘩の原因を聞くと佳恵の勤務態度を問い詰めたことから始まったのだと言う。佳恵はまだ二十歳ながら三歳の子供がいるシングルマザーで、子供が熱を出したとしょっちゅう早引けしていた。その件についてはその分自分が頑張ればいいと特に気にしていなかった。だが、子供が熱を出したなんて嘘。早上がりしてデートアプリで知り合った男とデートしていたらしい。佳恵の子供と敦子の友人の子供と同じ保育園だったことから発覚したそうで、それを告げたらあっさり白状したと言う。当然ながら職務規定違反、自主退職と言うよりクビだった。病院内のカフェなら医者と知り合えるというのが佳恵の志望動機で、それならもっとまじめに働けよ、と言うのが敦子の談。本当なら自分の仕事なのに嫌な役をやらせてしまったと敦子に詫びた。まぁ、私は美乃梨が人一倍働いてたの知ってるからさ。だから、余計にああいう不真面目な奴がいるのは腹立って・・・。照れくさそうな親友の心遣いに改めて感謝した。だが、この一件がまさか後に波乱を起こすきっかけになるとは美乃梨は夢にも思っていなかった。もうすぐ父の七回忌。桐生の部屋で過ごしていた美乃梨がもうすぐ父親の命日なこと、もフライトドクターだったと語ると彼の顔がこわばった。もしかして近藤知治さん?名を出されて頷く。同じ病院に居たのだし、知っていても当然か。現場の事故に巻き込まれ亡くなったのもあり、桐生が出動する度に不安になるのを思うと母も同じ気持ちだったんだろうか。でもおかしいんです、父の遺体にはブラックタッグが付いてたって聞いて。ブラックタッグは搬送不要、つまり救命不可能と言う目印だ。ベテランで慎重な父がそんなタッグを付けられるほど深手を負ったとは考えにくい。誰かがトリアージミスをしたのでは、と密かに思っているけれど、所詮は素人考えに過ぎないのだから。あいつはお前には重すぎる。従兄の島崎克己もフライトドクターで桐生の同僚なのだが、彼と交際していると報告したら途端に渋い顔をしてそう言った。克己くんは反対なの?元々、克己は桐生と馬が合わずしょっちゅう対立していると聞く。だからそのせいでいい顔をしていないだけ、そう思っていた。七回忌当日、その日は雨で父の死後、自分の実家に帰っていた母・美佐江とも久々に再会した。克己も忙しい中顔を出してくれて法要も恙無く終わった頃、佳恵が訪ねて来てビックリ。そう言えば今月七回忌がと話した気がする。でもどうしてわざわざ・・・。佳恵はあのフライトドクターのことで話があると言い、同行していた三十代くらいの男性に、この間教えてくれたことこの人にも言ってあげてよ!と急かしている。柳と名乗った男性は個人病院の雇われ医師で、元天空中央病院のフライトドクターだったそう。近藤先生には良くしていただいて、そう前置いた彼はあの事故の日のことを語った。あの現場は酷い有様で、父も治療に当たっていたが爆発が起こり巻き込まれた。わざわざ言われずとも美乃梨もそれは知っている。だが、柳が言うには確かに父は負傷したがすぐに搬送すれば助かったはずだと言う。レッドタッグだったんです、近藤先生は。でも、桐生先生が処置し終えたらブラックタッグに変わっていて。その話に美乃梨は血の気が引いた。もしかしてすぐ搬送されてたらお父さんは助かっていた!?ふらつく彼女を克己が支えた。いつからいたんだろう、ぼんやりしつつ、柳はトラウマになり病院を退職。黙っていてすみませんでした、と話し終えると走り去っていった。その後を追いかける佳恵から、エリートを捕まえていい気になってるからよと捨て台詞を投げかけられたが、そんなことより信じられない気持ちで一杯だ。克己君は知ってたの?だから、反対してたの?その言葉を肯定され、余計に混乱する。それ以来、美乃梨は桐生を避け始め・・・。結構じれじれ系のお話です。あのシンママ、クビになったのは自分のせいなのに偶然柳と知り合いそのトラウマ話を聞いたら美乃梨に腹いせできると思ったんでしょうね。もう性格悪すぎて箪笥の角に小指を五回くらいぶつける罰を与えて欲しい。それはさておき、後にその話を桐生に問い質すと彼は認め、美乃梨は絶望の淵に。でも彼のことをまだ愛してる。ジレンマに陥る彼女の元に何かと美乃梨を気にかけてくれていた心臓血管外科医の隅田から連絡が。父の友人でもあった彼は七回忌の法要に行けなくてすまないと謝罪し、君はあいつに似て限界まで頑張ってしまうから気を付けろよとお小言が。あいつは僕の患者でもあったから余計に気になってね、と続いて??隅田が語ったのは、父は重度の拡張型心筋症で当時はもう長くない状態だったこと、最後まで仕事をしたいと言うのが希望で、あの日は致命的な発作を起こして更に事故に巻き込まれたのだと知ります。桐生がレッドタッグからブラックタッグに変えたのももう手の施しようがなかったからと判り、どうして真実を打ち明けてくれなかったのかと彼に謝罪するため病院へ。しかし、彼は危険な事故現場に出動したばかりで、という展開です。当然、克己も事情を知ってたろうになんであんな誤解されるような肯定をしたのか、まぁこれにはまた深い事情がありまして、この辺りはあんまりネタバレしてもアレなので気になる方は実際に読んで確かめてください。克己自身に根深いものがあっても、美乃梨と桐生の方はちゃんとハッピーエンドです。この作家さんはラブコメ系も多いですが、こうして主要人物たちが過去と向き合うというお話も多く、今作は完全に後者。こういうのも嫌いじゃないけど、性格的に引き摺ってしまうので個人的には明るい内容が好きです。評価:★★★★☆
2026.08.27
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