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魔力がないため虐げられてきた伯爵令嬢リフィアは、父の命で呪われた仮面公爵オルフェンに嫁ぐ。王国一の魔術師ながら忌避される彼と心を通わせるうち、少しずつ呪いが解けていきー「大好きな君を、この手でずっと抱き締めたかった」甘く幸せな新婚生活の陰で、『聖女』の資質に目覚めたリフィアに迫る魔の手。そこには衝撃の真実が隠されていて…!?愛を知った薄幸令嬢が残酷な運命を断ち切り、本当の幸せを掴む物語。
登場人物
リフィア=魔力を持たないからと家族から虐げられていた伯爵令嬢。
オルフェン=呪いを受け隠遁生活を送っていた公爵。リフィアの夫。
アスター=ヴィスタリア王国王太子。
セピア=リフィアの妹。
ラウルス=オルフェンの元部下の魔導騎士。
ファルザン=人気のヴァイオリン奏者。
火属性魔法の家系・エヴァン伯爵家の長女・リフィァは、魔力を一切持たずに産まれた。魔力無しの証拠であるその白い髪を両親、特に母は忌み嫌い彼女を遠ざけた。
お前のせいで不倫を疑われたと酷い暴力を受け、死にかけたこともあるけれどいくら理不尽な目に遭ってもリフィアに恨みも怒りの気持ちも無かった。
屋敷の奥深く、亡き祖父の私物置き場になっている物置部屋に閉じ込められても、エヴァン家の守護女神ヘスティアに今日も恙無く過ごせたと感謝の祈りを捧げる。
数年後、リフィアが十七歳になったある日のこと。
珍しく父の書斎に呼び出された彼女はオルフェン・クロノス公爵との結婚を命じられた。黒の賢者の称号を持つ優秀な魔術師だが、五年ほど前、バジリスクからの攻撃から王太子を庇い呪詛を受けて以来、あまり表には出て来ていない人物だ。呪詛の影響で顔と腕に鱗が浮き出ているらしい。
それを隠すため仮面をしていることから仮面公爵とも呼ばれている。
私の結婚相手がクロノス公爵様・・・。
十五歳の誕生日、本来なら社交界デビューするはずがリフィアには人前に姿を見せることすら許されなかった。しかし、世間体を気にしてお披露目をしないわけにもいかず、当日は本人の体調不良を言い訳に両親は舞踏会だけを開催。華やかな世界に多少なりとも憧れのあったリフィアはこっそり部屋を抜け出し、寒空の下、外から会場内を盗み見ていた。そんな彼女に自らの上着をかけてくれたのがクロノス公爵で、その上着は今でも大事に取ってある。あの時のお礼も言えることがただ嬉しかった。
呪われた仮面公爵に嫁ぐのに何をへらへら笑っているの!?
父の説明では近年、公爵は呪詛の影響で体調を崩し魔術師団長の座も辞して領地に引き籠っていると言う。前公爵夫人が不憫な息子のため嫁探しをしていたそうで、うちの娘で良ければと父はその話に乗ったのだそう。多額の支度金を貰っているから戻って来ることは許さん。
父の言葉に母も頷き、厳しい顔でリフィアを見据える。
唯々諾々と従う娘に早々に興味を失くし、その金で新しいドレスを買ってくれと母が父に強請るのを横目に、セピアだけは何か言いたげな目で姉を見ていた。
二週間後、迎えの馬車に乗り込んだリフィアはクロノス公爵邸にやって来た。
実家とは違い、無能の象徴たる白髪を見ても公爵邸の人達は誰も軽んじる様子はなかった。姑のイレーヌからも歓迎されて自分のような娘を迎え入れてくれた旦那様とお義母さまのためにも精一杯尽くそうと心に誓った。
が、肝心のオルフェンは姿を見せない。
不思議に思っていると最近は起き上がれない日が続いているのだとイレーヌが顔を曇らせた。せっかく来てくださったのに申し訳ないと謝罪する義母に気にしないで欲しいと笑顔を見せたリフィアは、せめて自分に旦那様の看病をさせてもらえないかと頼んだ。
案内されたオルフェンの私室では具合の悪そうな彼がベッドに横たわっていた。間違いない、やはりあの時の方だ。呪詛は徐々に彼の身体を蝕んでいるらしい。その苦しそうな姿に胸を痛めたリフィアはオルフェンの手を握るとどうか少しでも良くなるよう祈った。
すると、苦しそうだった呼吸が落ち着き彼が目を覚まし自分の手を握る少女を見てギョッとしていた。オルフェン自身もどうして急に楽になったのか見当もつかないながら名を聞かれリフィアと名乗ると、そうか君が・・・。こんな死にかけの男に嫁がされて迷惑だったろう?と自嘲する彼の言葉に食い気味で否定する。あの舞踏会の夜でのことを話すと彼も覚えていたらしい。以降、リフィアは献身的にオルフェンの世話を焼き、彼が良くなるよう女神に祈りをささげた。
暫くするとオルフェンの身体を蝕んでいた鱗が段々と薄れていき、そのうち起き上がれるように。それでもまだ右手と額には残っていたが、歩けるようになるとリフィアを伴い庭園を散歩するのが日課になっている。その仲睦まじい姿にイレーヌは涙を流して喜び、息子にちゃんと彼女を籍に入れようと提案。
これまで三度ほど妻を迎え入れたが、皆数日持たず屋敷を立って行った。最後の希望がリフィアであり、その彼女のおかげでオルフェンは持ち直した。当時は彼の体調からもう長くはないかもと入籍を先延ばしにしていたけれど、きっともう大丈夫。
数日後、無事署名を済ませたリフィアはクロノス公爵夫人になった。
半年後、見舞いを兼ねて夫人を紹介してくれと王都から王太子・アスターが屋敷を訪れた。迷惑そうなオルフェンを他所に、アスターは奥ゆかしいリフィアを気に入り上機嫌。
そんなアスターにオルフェンは前以て依頼していた鑑定をしてくれるよう促すと、はいはい、と彼が取り出したのは大きな石のついたペンダント。
それをリフィアの首に下げさせると鑑定魔法の呪文を唱える。
すると石が金色に輝き、これは間違いないねとオルフェンに向けてニヤリと笑った。
大方予想は付いていたのか、オルフェンはやはりと言った表情でリフィアに向き直ると、君には聖女の資質があると告げた。フィアは魔力が無いよね?それは元々聖力を持っているからなんだよ。
いきなり勝手な愛称で呼び始めた王太子を睨みつつ、オルフェンもその説明に頷く。何故自分が持ち直したのか、しかも彼女が手を取り祈りを捧げてくれる度に回復していくのでこれは聖力なのではと思い当たったそう。鑑定してみた結果、大聖女に匹敵するほどの聖力の持ち主だと判り、アスターからこの世界を支えている世界樹に定期的に聖力を注いでほしいと頼まれた。
ここ数百年、世界樹の老化が進み、各貴族家が奉納する魔晶核の力で延命していた。しかし、聖力とは比べるべくもない。これで世界樹も生気を取り戻すはず。
だが、世界樹は魔物を脅かす。聖女に出て来られては困るとリフィアは狙われる危険性がある。お前も復調したなら奥さんを死ぬ気で守れよ。そう言ってアスターはオルフェンに発破をかけた。
そうこうしているうちに国王との拝謁も済ませた彼女は定期的に世界樹に力を注ぐという、忙しい日々を過ごしている。オルフェンとの関係も一層深まる中、娘の噂を聞きつけたエヴァン伯爵がそうと判っていればと歯噛みしていた。
そしてやがて明らかになる伯爵家の過去と聖女誕生に纏わる秘匿事項。
父の罪の巻き添えを食ったリフィアは危機に陥り・・・。
王道のシンデレラストーリーです。
実はヒロインは聖女でした、と判明してから話は意外な方向に進んでいきます。
ただ、旦那様と静かに暮らしていきたいだけなのに周りは許してくれず、その上、実父のやらかしのせいで彼女は父に恨みを持つある人物に攫われ命の危機に。
加えて明らかになる聖女に纏わる闇の話。
この一連の内容は読んでて正直ゾッとしました。まさに一人の犠牲で皆が助かるなら、とか言う胸糞理論で概要を知るアスターの苦悩も。でもそんなのくそくらえ、なのがオルフェンで愛しい妻のため、彼は決められた運命すらも覆して見せるのでした。
エヴァン伯爵は過去の罪で裁かれ、夫人はとんずら。結局伯爵家はセピアが相続すこととなり、姉妹は和解。というかそもそも悪いのはあの毒親たちだったのであいつらがいなくなれば仲良くなるのは当たり前。セピアも想い人のラウルスに想いが通じて良かった。
色々予想外な展開もあって面白かったです。
評価:★★★★☆
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