照千一隅(保守の精神)

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「照千一隅(しょうせんいちぐう)」(一隅を守り、千里を照らす)は伝教大師・最澄の言葉。本を読み、考えたことをこのブログに書いて参ります。ご意見、ご感想など御座いましたら是非お寄せください。

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2024.11.14
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テーマ: 教育問題(354)
カテゴリ: 教育について

〈過度の学歴社会意識や偏差値偏重の受験競争、校内暴力、青少年非行などにみられる教育荒廃は、画一主義と硬直化がもたらした病理現象である〉という結論にも疑問符が付く。これらは、〈画一主義〉が齎(もたら)したものと即座に断定できるようなものではない。

 例えば、日本人が「学歴」を重んじてきたのは、画一化の問題ではなく、文化の問題と言うべきだろう。ここには、日本人特有の「公正観」がある。学歴は、誰の目にも明らかなものである。この公明正大な尺度で、人材の能力を事前判断するのである。勿論、東大を出たからと言って優秀とは限らない。が、「欧米に追い付け追い越せ」の時代には非常に有効な尺度であったことは否めないであろう。

 が、欧米に追い付いた今、求められるのは知識量や演算速度、すなわち、「頭の良さ」ではない。21世紀という先の見えない時代に求められるのは、自ら課題を設定し、倦(う)むことなくこの課題に取り組み、何某(なにがし)かの「解答」を導き出すことである。そこで重要になるのは、「発想力」であり「想像力」である。

 こういった能力は、「学歴」で判断できないものである。当然、教育内容も、「知識」の量や質ではなく、「発想」や「想像」を重んじるものに変化せざるを得なくなるに違いない。

 〈校内暴力〉や〈青少年非行〉も、〈画一主義〉が生み出したというよりも、高度経済成長によって、家庭環境が大きく変化したことが最大の要因ではないだろうか。さらに、家庭や地域共同体の教育力の低下も大きいだろう。見方を変えれば、精神面を軽んじた物質的豊かさの追求の問題とも言える。いずれにせよ、画一主義が問題であるなら、青少年は暴力的ではなく虚無的になるはずである。

《ここにいう「個性主義」とは臨教審第1部会の新造語であるが、その定義は「個人の尊厳、個性の尊重、自由、自律、自己責任の原則の確立」である。

 このような観点から、同メモは、

①官公庁・企業の採用基準の抜本的見直し、学歴・官学偏重の是正
②大学院教育、基礎研究の整備充実
③大学設置基準、許認可条件の見直しなどによる画一性の排除、個性化の推進
④共通一次試験を含めた各種試験制度の改革
⑤ゆとりと国際化の観点も踏まえた9月新学年制の検討
⑥高校、専修学校など後期中等教育機関の連携と高等教育への接続の研究
⑦単位制の見直し、中高一貫教育の推進など高校教育の多様化、入試制度の改善
⑧義務教育段階においても、過度の画一化を戒め、少なくとも学校選択について配慮する
⑨乳幼児保育に始まる生涯教育システムの確立、教育機関の地域社会への開放、家庭・学校・職場・地域社会を結ぶ教育ネットワーク形成の検討
⑩国・都道府県教育委員会・市町村教育委員会の役割分担の明確化、特に市町村教委の権限と責任の再確立

 ――など、10項目の具体的方策を例示し、各部会での検討を要請した》(香山健一『自由のための教育改革』(PHP)、 p. 76






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Last updated  2024.11.14 20:00:12コメント(0) | コメントを書く


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