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〈過度の学歴社会意識や偏差値偏重の受験競争、校内暴力、青少年非行などにみられる教育荒廃は、画一主義と硬直化がもたらした病理現象である〉という結論にも疑問符が付く。これらは、〈画一主義〉が齎(もたら)したものと即座に断定できるようなものではない。
例えば、日本人が「学歴」を重んじてきたのは、画一化の問題ではなく、文化の問題と言うべきだろう。ここには、日本人特有の「公正観」がある。学歴は、誰の目にも明らかなものである。この公明正大な尺度で、人材の能力を事前判断するのである。勿論、東大を出たからと言って優秀とは限らない。が、「欧米に追い付け追い越せ」の時代には非常に有効な尺度であったことは否めないであろう。
が、欧米に追い付いた今、求められるのは知識量や演算速度、すなわち、「頭の良さ」ではない。21世紀という先の見えない時代に求められるのは、自ら課題を設定し、倦(う)むことなくこの課題に取り組み、何某(なにがし)かの「解答」を導き出すことである。そこで重要になるのは、「発想力」であり「想像力」である。
こういった能力は、「学歴」で判断できないものである。当然、教育内容も、「知識」の量や質ではなく、「発想」や「想像」を重んじるものに変化せざるを得なくなるに違いない。
〈校内暴力〉や〈青少年非行〉も、〈画一主義〉が生み出したというよりも、高度経済成長によって、家庭環境が大きく変化したことが最大の要因ではないだろうか。さらに、家庭や地域共同体の教育力の低下も大きいだろう。見方を変えれば、精神面を軽んじた物質的豊かさの追求の問題とも言える。いずれにせよ、画一主義が問題であるなら、青少年は暴力的ではなく虚無的になるはずである。
《ここにいう「個性主義」とは臨教審第1部会の新造語であるが、その定義は「個人の尊厳、個性の尊重、自由、自律、自己責任の原則の確立」である。
このような観点から、同メモは、
――など、10項目の具体的方策を例示し、各部会での検討を要請した》(香山健一『自由のための教育改革』(PHP)、 p. 76 )
教育について(98)官僚支配 2024.12.02
教育について(97)日本の官僚主義化 2024.12.01
教育について(96)学歴主義の人材採用を… 2024.11.30