イマケンのページ改

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2004.09.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
奴がボクの部屋へとやってきたのは、5日前の午後7時過ぎだった。何の前触れもなく、出し抜けに窓から侵入してきたのだ。
ちょうどその頃、ボクは自室にて、TV画面のむこうで展開されるオリンピックに釘付けになっていたのだが、背後に位置するドアの施錠をはじめ、諸般の防犯対策をとるなどそれなりに用心はしていた。しかし自室が3階にあるということで油断があったのだろう、窓は施錠しておらず、開け放していた。

奴はおもむろに部屋に入り込むと、やってやったという憎らしい笑みを浮かべてボクを見つめた。ボクは咄嗟に奴に襲いかかった。もちろん殺すつもりでだ。悪口罵倒を飛ばしながらボクは奴を壁際に追い詰めると、すかさず手に持っていた漫画雑誌を奴の頭に打ちつけた。かのように見えたが奴はそれをひょいとかわしたらしく、素早い動きで隣にあった本棚の陰に隠れた。隠れても無駄だ!と「脅しのつもり文句」を吐き捨てながらボクは幾度となく奴を追い詰め殴りかかったが、その度にすんでのところでかわされ逃げ回られた。

埒があかないのでボクは凶器を変更することにした。自室を飛び出しキッチンに入るなりさっそく新たな凶器を見つけ、それを手に慌ててきびすをかえす。この凶器は以前にも実用したことがあり、それが必殺のものであることは知っていた。それにしても、こいつを奴にお見舞いできると思うとはなはだ嬉しくなる。ボクは嬉々として、しかし緊張しながら部屋に戻った。

・・・奴の姿はない。息を殺しているのか、呼吸音さえ聞こえてこない。どこだ、ベッドの下か、それとも本棚の裏、いやクローゼットの中か。部屋を抜け出したという可能性もないではないが、それほど簡単に退いてくれるような奴ではないことくらい重々承知している。というのも奴がボクの部屋に侵入したのは一度や二度ではなく、これまでにも何度か顔をあわせているのだ。

厳密にいうとこれまで見てきたのは奴の仲間なのであろうが、どいつもこいつもやることは同じだ。人の部屋に勝手に上がりこんだ挙句、勝手気ままに迷惑な生活を続ける。しかし奴らがそうした習慣を改善したところでボクは殺戮をやめない。なぜならボクにとっての恐怖は奴らの行動ではなく存在だからだ。全身のあぶらを黒光りさせながら、高速で部屋中を駆けずり回る奴らの奇行を目の当たりにして総毛立たないお人はそういるまい。

それにしても奴はどこに消えたのだ。ボクは先ほどからスプレータイプの新兵器を手に部屋中をくまなく探しているが、陰も形も見当たらない。奴が部屋にまだいるという直感と、奴がこちらを見張っているといのだという意識がボクを恐怖させてゆく。そんなものだからボクは奴の隠れていそうな物陰に向けてスプレーを大乱射した。部屋中に虫除けスプレー的臭気が充満していく。臭気はいかにも人体にも有害そうなものだったが、ボクはかまわず続けた。物陰で奴が有毒なガスを浴びてのた打ち回ることを期待して噴霧していたが、そうなってくれるどころか奴は気配すら感じさせない。奴退治用に開発されたこのスプレーをこれだけまいても何の反応もないというのではもはや奴退治を諦める他ないと考えるのがふつうであろうが、ボクはさっきも述べたとおり、奴が憎くて憎くて(怖くて怖くてともいう)仕方がない。であるからして奴の断末魔を見届けるまでは決して息をつけない。

ボクは一旦、奴退治を「諦めたふり」をすることにした。奴が油断して顔を覗かせたとたんに今度こそ面食らわせてやろうという魂胆だ。我ながら中々のあくどさである。まずはベッドに腰かけ奴の出方を伺うもやはり姿をみせないし物音ひとつたてない。しかし奴はすぐそばにいるのだ。これは自身の第六感による感知なのだからもはや間違いない。
10分ほど「諦めたふり」をしたところで一時休戦することにした。さきほどベッドに腰かけた際、心身ともにどっと疲れていることに気がついたのだ。奴との長時間にわたる攻防によるものか、スプレーの毒にやられたのかは定かでないが、ボクはとりあえず入浴することにした。これとて来る奴との再戦にそなえるための段取りとしてのリフレッシュなのだ。すべては奴を打ち果たすために、である。むろん入浴中とて片時も奴のことが頭のから離れることはなかった。



部屋に戻った。なんとなく憂鬱な気持ちで明かりをともすと奴はボクの内心など何処吹く風で、堂々と壁にへばりついていた。それを見るなりボクの今にも消え入りそうな殺意は再燃した。今度こそ、とスプレー缶をつかみトリガーを引き、奴に毒霧を噴霧した。そして霧は奴に引っかかったかにみえた。が、浴びせる霧の量と時間が足りなかったのだろう、奴は何てことない様子で本棚の裏側へと消えていった。ここにきてようやく理解した。ボクには決して奴を救えないということを。

翌日の昼には部屋の要所に固形タイプの毒物を設置した。こちらもスプレー同様、奴退治用に開発された代物であるが、直接やつと対面することなく奴が自ら墓穴を掘って絶命してくれるという利点があるので使ってみた。その効果はすぐにあらわれるのかと思ったが、その日の晩に姿をあらわした奴は特に具合が悪そうなわけでもなく前日どおりにピンピンしていた。早いうちに死んでくれないとこまるのだが、あろうことか奴は今日まで奴は延命していた。奴はここ2、3日は姿を見せなかったが、その間もボクには奴の居場所が手に取るようにわかっていた。それは何故か?答えは簡単、奴が移動すたびにカサコソとアルミ箔のへしゃげた音が部屋中に反響するのだ。アルミ箔は奴を感知するセンサーとしてボクが部屋中に仕込んだもの。結果これが功を奏し、奴の居場所を的確に捉えることができた。そして今夜、ボクは奴に永遠の別れを告げることになったのである。めでたし、めでたし。





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Last updated  2004.09.03 17:00:18
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Re:コックローチ(09/01)  
みぃ0704  さん
こんばんは♪お元気ー。
あまりの文字の多さにびびりながら読んでしまいました。
何かの小説のようです。わくわく。
で、それは、ゴキちゃん?ゴキちゃんなのね?違う?
怖い怖い~。ブルブルものです。
スプレーとか毒物タイプのものは、うさぎさんがいるので使いたくないし
でも、ゴキちゃんは、怖いし。

で、私は見つけしだい、スリッパで、一撃です。フッフッフッ。 (2004.09.02 01:28:57)

Re:コックローチ(09/01)  
なかなか、ドキュメンタリーチックな内容ですね☆


無事、仕留めたということでおめでとうございます☆ (2004.09.02 01:29:23)

Re[1]:コックローチ(09/01)  
みぃ0704さん
>こんばんは♪お元気ー。

なんとか元気にしてます(^_^ )
心の夏バテだったんですよね(苦笑)

>あまりの文字の多さにびびりながら読んでしまいました。

うっぷんばらしに書いたようなところがあるので、まとまりなかったです、スミマセン。


>何かの小説のようです。わくわく。
>で、それは、ゴキちゃん?ゴキちゃんなのね?違う?
はい、「御器ねぶり」です←ゴキブリの名の由来。

>怖い怖い~。ブルブルものです。
>スプレーとか毒物タイプのものは、うさぎさんがいるので使いたくないし

なるほどですね。うちのウサギもも雨の日は中に居ることだし、気をつけないといけないですね。

>でも、ゴキちゃんは、怖いし。

>で、私は見つけしだい、スリッパで、一撃です。フッフッフッ。

なんかゴキブリ並みに怖いです(汗) (2004.09.02 01:48:22)

Re[1]:コックローチ(09/01)  
ひまわり0823さん
>なかなか、ドキュメンタリーチックな内容ですね☆

一部脚色パートもあるんですが、ほとんどドキュメンタリーのはずです。たぶん。

>無事、仕留めたということでおめでとうございます☆

お祝いありがとうございます(^ロ^)
奴も消滅してくれたことだし、今夜はよく眠れそうです。おまけにいい夢見れそうな予感がします。 (2004.09.02 01:55:03)

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