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龍一郎の気配に気づいた佐紀が寝床から起き上がった。
龍一郎は佐紀にだけ解る程度に気配を発し小屋に近づいていた。
二人は小屋を出て鍛錬を開始した。
二日の間、龍一郎が鍛錬出来ず身体が鈍っていた。
お佐紀の鍛錬も足りず鬱憤が溜まっていた。
二人が走り出すと跡を三人が追い掛けていた。
龍一郎は佐紀だけに解る程度の気配を発したつもりであったが三人の上達振りが龍一郎の判断を超えていた。
二人は小屋を出て直ぐに解っていた、三郎太、平太、佐助の三人だった。
暫く、三人に後を追わせたが最初に佐助が脱落し次に平太が脱落し、忽然 ( こつぜん ) と龍一郎と佐紀の二人は姿も気配も消してしまった。
佐助は初めて四人の凄さを実感し、三郎太と平太の二人は改めて龍一郎と佐紀の二人の凄さを実感した。
翌日、朝餉の席の三郎太の隣には平太が最初から参加していたかの様に座っていた。
「平太、無論、親御殿の許しは得ておろうな」
龍一郎の声が飛んだ。
「勿論です、江戸での仕事が無い故、参りました」
平太は師匠で相方の三郎太が江戸に居ない為、城の警護から外され忍び仕事が無かったのだ。
「解った、許す、三郎太の補佐を致せ、三の組の先陣じゃ」
「畏まりました」
「平太、腕を上げたな、このまま修練に励め」
「ありがとうございます」
龍一郎が昨夜の平太の粘りを誉め平太が受けた。
佐紀、三郎太以外の者たちは会ったばかりの人間の技量が解るのか・・・と不思議さが募った。
山頂まで二往復した、現在の鍛錬の経路は三番目の道筋だった。
「本日はこれまでと致す、村の民が思いのほか早く集まっておる故、家を建てる事を急がねばならぬでな。
但し、甚八、佐助、平太、それに八重は三郎太がもう一度山へ登るのへ同道致せ、三郎太、任せたぞ」
二人が見つめ合い意思を交換した。
「・・・畏まりました、参る」
三郎太が走り出し、その後を甚八、佐助、八重、平太が追って行った。
「では皆で御殿を作ろう」
「龍一郎様、お尋ねしたき事とお願いが御座います、お許し下さい」
「八重の事か」
「はい、何故で御座いましょう」
「其方のその問い自体が理由じゃ」
「問いが・・・で御座いますか」
「佐紀、訳を教えてみよ」
「佐紀様もお判りですか」
「あなたは貴方の方が八重よりも技量も体力も上・・・とお思いです・・・が八重の真の力をご存知では御座いませぬ」
「八重が力を隠している・・・と申されますか」
「左様・・・そんなはずは無いと思うておろう、其方は儂の技量・体力が解るか・・・解るまい。
儂は其方の力が解る、其方の解ると儂の解るは意味が違うのじゃ。
力量が下の者は上の者の力量は解らぬ、上の者は下の者の力量が解る。
下の者が己の力量に自惚れ天狗になると長い鼻が上を向き、その鼻の上に目が出来、その目で上の者を見下ろす事になる、其方の八重を見る目はその様な物じゃ」
「・・・」
「信じられまい・・・な、其方の己が上と思う処を述べてみよ。
具体的に言えるか、体力か、剣技か、忍びの技か・・・言えまい。
只何となく己が上と思うて居るに過ぎぬ、皆が戻れば解る事じゃ、して願いは何かな」
「は・はい、重しの追加を願います」
「良かろう、足一つの追加を許す」
「ありがとう御座います」
「他にも居れば一つは許す、では作業を始める」
三人が重しの小屋に走り他の者たちは家作りのそれぞれの作業へ散って行った。
「佐助、八重の力量はいかがで有った」
その日の夕食のおりに龍一郎が佐助に尋ねた。
「ははぁ、儂は間違うておりました、八重の名を呼んだおりに龍一郎様は何をするつもりかと思いました。
なれど間違うて居りました、八重の体力は儂より上かも、いや上に違い無い、間違うて居りました」
「佐助、八重は力量を隠して居ったか」
龍一郎に尋ねた男が佐助に確かめた。
「多分、本人に確かめればよかろう、大吾どん」
「八重、どうな」
「どうもこうもなか~龍一郎様にばれても~とる」
「佐紀様にもばれとる」
「うへ~、三郎太どんはどないね」
「儂だけやなか~平太にもばれとる」
「はぁ~、修行がたらんとね~~」
「おまんら、何ね、ここは博多か」
と甚八が閉めた。
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