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イミドス(imidosjp)

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2020.02.11
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カテゴリ: 自作小説-時代
< 第六回戦 - その二 >-----#152


「次、柳生新陰流・鰐淵俊三郎殿、橘流・橘小兵衛殿」

鰐淵が勢いよく立ち上がり己を鼓舞しながら開始位置に歩き出した。

対する相手・小兵衛は閉じていた目をゆっくり開き対戦相手が木刀を持っている事を確かめると木刀を手にしゆっくりと立ち上がりゆっくりと歩み出した。

「俊方、どう見る」

「はぁ、我弟子にございますれば勝ちを信じております」

「どうじゃ儂と賭けをせぬか」

「弟子が負けたる時は試合えと申されますか」

「いやか、どうじゃ・・・弟子が勝ちを収めた時は・・・其方に太刀を取らそう」

「・・・お受け致します」

「ご両者、よろしいか・・・では、始め~」

審判が試合開始を告げた。

試合は相正眼で始まった、だが直ぐに鰐淵が八双へと構えを変化させ攻めに移った。

その攻撃は若さに溢れた迅速で力強いものだった。

そんな攻めを受ける小兵衛は下がり続けた。

誰の目にも年老いた小兵衛が力と胆力の差で何れは負ける・・・と思われた。

「流石は柳生だ強いでないか、隠居」

「だな、流石の橘も若さには勝てんようじゃて」

橘道場に詳しい隠居も小兵衛の不利を感じていた。

「俊方、弟子は強いのぉ~儂は太刀を失う様じゃのぉ~」

「ははぁ~、お褒めのお言葉忝う御座います・・・ですが、上様の太刀は無事で御座いましょう」

「何、其方の弟子が負けると申すか・・・攻め勝っておるでは無いか」

「攻めているのでは御座いませぬ、攻めさせられて御座います」

「んん~どう言う意味じゃ」

「あの年寄りは巧妙に御座います。

受けを全て流し打撃を逸らし、尚且つ円を描きながら下がって御座います。

我が弟子は疲れ果てる事で御座いましょう、その時があの年寄りの勝ちの時と存じまする」

「じゃが受けも疲れるであろう、あの年寄りも疲れるのではないか」

「只の受けは疲れまするが流し逸らしますとそれ程疲れませぬ、攻めている方が疲れます」

「受けよりも攻めが疲れるのか」

「はい、只の受けで御座いますと引き戻しに力は要りませぬ。

ですが流されますと余分に振らされ引き戻しにも余分の力が必要とされます。

あの弟子は半時以上も攻め続ける事が出来る者で御座います。

ですが此度は四半刻も続けられぬと思われまする」

「左様か・・・受ければ良いと言う訳では無いのじゃの~攻めさせて疲れさせる・・・か」

指南役・柳生俊方の予見した四半刻が近づいた頃、攻めている南郷の動きが少しづつ鈍くなって行った。

南郷の左脇構えから右への胴切りを小兵衛は腰を少し引いただけで躱した。

躱された南郷は右へ流れた木刀を右八双に移し小兵衛の左肩へ袈裟切りを振るった。

小兵衛はその袈裟切りを一旦木刀で受け左に身体を傾ける様にして右へ流した。

疲れが見え始めた南郷の木刀の引き戻しが遅れたことを察した小兵衛がこれまでにない動きを見せた。

南郷の左に踏み込んだのだ。

そして南郷に右からの胴切りを見舞った。

だがその振りは南郷の腹に当たる直前に止められその木刀に南郷を乗せると身体を回転させた。

南郷の身体は小兵衛の木刀に乗り回転し仰向けに寝そべった。

小兵衛の前の対戦者と同じだ、平四郎の技とも同じだった。

会場は声も無く森閑とし、その中を小兵衛が木刀を正眼に構えたままに後退し開始線に戻り木刀を左手に持ち替え控えた。

一方、倒された南郷は仰向けのままに茫然としていた。

係りの者が二人南郷に近寄り一人が用心の為木刀を踏みつけ、もう一人が南郷の肩を揺すった。

二人に助けられ起き上がった南郷は支えられながらよろよろと控えの場所に戻った。

対戦中は興奮に力を出していたが終わった今、南郷は肩を上下に荒い息をしていた。

その顔は茫然とし目は一点を見つめて焦点を失っていた。

「俊方、その方の弟子も良く戦ったな」

「上様、お褒めのお言葉、有難き倖せに御座います・・・なれど、お褒めに値しませぬ。

あの年寄り何時なりとも勝つことが出来ましたでしょう」

「何、あの者は遊んでおったのか」

「最後の踏み込みの速さと木刀の振りの速さを見ますに左様と心得えまする」

「う~む、橘道場恐るべしじゃのぉ~」

その時、それまで沈んだ目で一点を見つめていた南郷の目に光が宿りその眼が小兵衛に向けられた、その顔とその眼には敵意は無く逆に尊敬と羨望に溢れている・・・様に俊方には見えた。

「恐れながら、上様、一言宜しいでしょうか」

「なんじゃ、俊方、申してみよ、許す」

「この俊方、若手の一番弟子を失うて御座います」

「何、あの者、立ち直れぬか、剣を捨てると申すか」

「いえ、あの者・・・橘道場の門弟に成りましょう」

「うむ、してどうする、許すか」

「はい・・・某も門弟に成りとう御座いますれば」

「何、その方も橘にな」

「はい、御指南役としては許されぬ事で御座いましょうか」

「許す・・・じゃがその前に試合うてみよ」

「はぁ、畏まりまして御座います」


​<つづく>​






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最終更新日  2025.06.15 14:30:29 コメントを書く


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