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居酒屋で与力と同心の会話が続いていた。
「その様な凄まじい技前を目の前を見せられては・・・儂の気も・・・入門しようと思うて居った気も萎えてしもうたのじゃ」
「実はなぁ~儂も似た様な者なのだ」
「どう言う事なのだ」
「儂の弟が入門して居る、父の命により一緒に入門のはずであったが、丁度その日が儂の役務の日でのぉ、弟だけが先に入門したのだ」
「それで次の日にでも行けば良かろうが ??? 」
「それがなぁ~、その日の道場での出来事を弟が興奮して話おった。
その話を聞いて儂は怖気付いてしもうたのよ、恥ずかしいがな」
「何があったと言うのだ」
「其方は駒清と言う船宿を知っておるか」
「あぁ確か以前は蕎麦屋だった店ではなかったか」
「そうよ、その店よ、以前の蕎麦屋の時は良く通ったものだがな。
船宿になってからは儂の様な薄給の者には入れぬわ」
「其方も通っておったのか、儂もあの店の蕎麦が好きでなぁ~通った、通った毎日の様に行っておった、その船宿がどうしたのだ」
「そこの女将、お駒と言う名なのだそうだ」
「その女将がどうしたと言うのだ」
「まぁ待て・・・その女将が実は剣を使うらしいのだ・・・それも滅法強いらしいのだ」
「待て、待て、船宿の女将・・・元は蕎麦屋の女将であろうが」
「そうなのだ、だがな何でも亭主の清吉は岡っ引きらしい」
「亭主が清吉で女将がお駒・・・それで船宿の名が駒清か」
「店の名などで感心をするで無い」
その時、最初は攻められていた若輩が小さな声で言った。
「そのお駒様の件の時に私は道場に居りまして全て見ておりました」
「何~」
「何だと~」
「ひぃ~」
先輩二人の怒号に悲鳴にも似た声を上げ首を竦めた・・・が一瞬で平静に戻りしっかりと答えた。
「始めから全てを見ておりました」
「やはり、お主は変ったなぁ~以前で有れば首を竦めて終りであったがな」
「そうよなぁ~、図太くなったのか、物おじしなくなったのか、自信が付いたのか」
「弟から聞いた話は信じがたい・・・が怖くなってな、詳しく話せ」
「そうだ、最初からきっちりと聞かせろ」
「はい、では最初から詳しくお話いたします」
<つづく>加賀の若様 奮闘記 #345 <墨堤 散策> 2026.10.04
加賀の若様 奮闘記 #344 <町年寄り 奈良屋> 2026.04.09
加賀の若様 奮闘記 #243 <吉宗からの呼び… 2026.03.23