inatoraの投資日記

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2005年11月27日
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先日、公認会計士の論文試験の経営学に関する話題を取り上げた矢先に、とある筋から経営学の問題を入手しました。

今回は、問1~問3までを簡単に確認したいと思います。最後の問4は次回にします。

***************************

問題1

株式の価格は、ファイナンスにおいてもっとも信頼できる価格として考えられてきた。それを支えてきたのが効率的市場仮説である。

問1 市場の効率性が成立するためのメカニズムとして、合理的投資家による裁定取引がある。合理的投資家の存在を所与として、裁定取引が機能するための条件を述べなさい。

以下の2つの文は、それぞれ市場の非効率性を意味しているかどうか簡単に説明しなさい。

問2 3年連続で市場よりも高いリターンをあげている投資信託があった。
問3 決算短信によってソニーの増益が報告されたが、ソニーの株価に変化はなかった。



従来型ファイナンスにおいて最も重要な概念である効率的市場仮説に関する問題ということで、私が模範解答から想定していた問題であったことが確認できましたが、若干違った部分もありました。

TACが用意した模範解答は前回に示したとおりですが、「その模範解答は違うと思う」という部分があったので、その点について考えてみたいと思います。


*問1について
問1に対するTACの模範解答は完璧だと思います。

税金・売買コスト・代替証券の調達コストといった「制度面における制約」のほかに、ファンダメンタルズからの乖離がさらに大きくなる可能性があるという「ノイズ・トレーダー・リスク」が、市場の効率性をならしめるための裁定取引を阻害する要因になりうることを示せば良いと思います。

ちなみに、ノイズ・トレーダー・リスクは、ノイズ・トレーダーのマネーパワーがアービトラージャーによるそれを上回るときに発生し、現実の市場ではこのリスクを考えなければならないというのが行動ファイナンス派の考え方です。

この観点から見た効率的市場仮説の問題は、ノイズ・トレーダーの存在をハナから無視したり、たとえその存在を認めたとしても、アービトラージャーのマネーパワーが強いのでノイズ・トレーダーによる脅威はないと決め付けている点にあると結論付けることができます。

したがって、従来型のファイナンス学者にしてみれば、裁定取引が阻害される可能性がある要因は、(税制や取引コストなどの)証券制度上の問題に過ぎないという解答にもなり得ます。(従来型のファイナンス学者は、ノイズ・トレーダー・リスクをとるに足らないものであると考えているから。)


*問2について
問2に対するTACの模範解答は、半分しか合っていないと私は思います。

ある投資家が3年連続で市場平均を上回ることが、市場が非効率であることを示すかどうかについてですが、これは完全にそうであると言い切ることはできません。



市場平均を上回るリターンを上げる投資家が存在したとしても、効率的市場仮説を信じる学者にはまだ逃げ道が2つ用意されています。

(1)リスク調整後のリターンが市場平均を上回ることが出来ない。すなわち、市場平均よりも高いリスクをとったから市場平均を上回ることが出来た可能性がある。

(2)市場が効率的であるかどうかを検証するに足るだけの十分な期間ではない。すなわち、スキルではなく単に運の良さで市場平均を上回ることが出来た可能性がある。

このような論理を持ち出すと、ウオーレン・バフェットのパフォーマンスでさえもファイナンス学者達は否定することができます。だからと言って、当のウオーレン・バフェットはそんな貧乏学者の戯言は気にも留めていないと思いますが。


*問3について


「決算短信で増益と報告されたが株価は反応しなかった」ことを「織り込み済み」と解釈するためには、いくつかの条件があります。

まず、ストロング・フォームの効率性が支持される場合を考えます。この場合、決算短信よりもはるかに前の段階、すなわち、インサイダー情報などによって株価は既に織り込まれていたと考えることができます。

次に、セミ・ストロング・フォームの効率性が支持される場合を考えます。この場合、決算短信における増益発表が投資家にとって本当に予想外の数字であったかどうかにかかっています。

もし予想外の数字であれば、決算短信の発表後にその増益分を株価に織り込みに行きますので、本文とは合わないものとなります。

もし予想できた数字であれば、すなわち、決算短信における増益発表がなんらかの形で事前に読み取ることが出来たならば(たとえば、月次売上の推移やその前に発表した業績修正など)、それは織り込み済みであると解釈することが出来ます。

最後に、市場の効率性が支持されていない場合を考えます。この場合、行動ファイナンスの実証研究にもありますように、「投資家による保守的バイアス」の可能性を考えなければなりません。すなわち、業績の上方修正に対して、現実の投資家は効率的市場仮説が想定するほどにはすぐに反応することが出来ないというものです。


そんなわけで、投資という正解が一つではない世界で試験委員の先生の意向を反映させた上でこの問題を解かなければならないということを考えると、(公認会計士の)受験生にとっては甚だ迷惑な話だと思います。

今回の場合は、試験委員である加藤教授がどちらかと言うと日本では珍しい「非効率的市場派」であることを考えると、問2と問3についてはどちらも「非効率的である」ということをベースとした解答でも差し支えないような気もします。

しかし、一番無難なのは、考えられるいくつかの可能性に場合分けをして「市場が効率的であると考えて良い場合も、そうでない場合もある」というスタンスだと思います。

「市場が効率的であると考えるのは単なる学者の戯言だ」というのはここでは言いっこなしにしましょう。勝つための投資家になるための心構えとしては正しいかもしれませんが、それだと公認会計士の試験には受かりそうにないからです。(笑)





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最終更新日  2005年11月27日 22時03分06秒
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