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2020.03.05
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54

「薄紫のつぶやき」というタイトルなのに、このシリーズの記事って、つぶやきにしては長すぎるなあ。
そう感じている人もいるでしょう。

初めは、短いつぶやき風の文も試しに載せてみようという目論見だったのですが、いつのまにか無題の記事の寄せ集めみたいになってしまいました。
要するに、私の中では、「薄紫のつぶやき」= 「無題(untitled)」ということになっているわけです。

でも、また気が向いたら正真正銘のつぶやきも混ぜてみたいなあとは思っています。
140字どころか、17文字にも満たない、ジジイの吐息に近いような文。
それでいて、スタイリッシュであれば言うことないんですが…



英語にbizarre なる語がある。
strange (奇妙な/不思議な) やweird (ヘンな/おかしな) の類語なんだけど、ネイティブにとっては、ちょっとニュアンスが違うらしい。
日本語では、「風変わりな」とか「珍奇な」という訳が当てられることが多いが、要するに、「すっごくヘン!」という感じではないだろうか。

このブログでもけっこう変な人物を取り上げてきたが、このbizarre という単語で真っ先に思い浮かぶのは、やはりフランク・ザッパかなという気がする。
なにしろ、bizarre と言えば、一時期、ザッパのレコードレーベル名でもあったし、2019年のホログラムツアー名も The Bizarre World Of Frank Zappa となっているくらいだ。
本人もその音楽も「変てこりん」なんだけど、同様に、彼が曲のテーマとして執拗に取り上げたのも「変てこりん」なアメリカの姿ではなかったかと思う。

ここまで読んだあなたは、「ああ、またあの変人の話題かあ」と思うかもしれないが、それはざーんねんな判断。
今回は人だけではなく、植物にもbizarreなヤツがしこたま存在するってことにちょっとばかり触れておきたかっただけ。
いわゆる「ビザールプランツ(珍奇植物)」というやつだ。

まずはどうでもいいことだけど、この「ビザール」っていう日本語表記、ちょっと気になるなあ。
英語の発音は「ビザー」に聞こえるんだけど…

今度、知り合いの英語の先生にでも聞いてみよう。
で、その「ビザールプランツ」って、一体何ぞやという話だが、言うなれば、食虫植物やサボテン、多肉植物、熱帯植物など、それぞれの環境で独自の進化を遂げたユニークな植物はすべてビザールということになるのではないか。

ただ、それにも流行り廃りがあるようで、現在は空前の多肉ブームらしいが、好事家の間ではエアプランツ(チランジア)なるものもひそかに流行っているらしい。
これは土なしで育つ不思議なグリーンで、テラリウム等に入れて手軽に飾れるそのオブジェ感覚が受けているようだ。

こうしたビザールプランツは種類も豊富で、コレクターにとっては蒐集欲が掻き立てられるのだろうが、しがない年金生活者にしてみれば、そんなもんにはハマりようがない。笑

そういう意味では、私が持っている『植物の私生活』という本などは、これまでにも度々紹介してきたけど、実に優れものである。
これぞビザールって感じの植物はだいたい収録してある。
せっかくなので、今回は塊根植物の代表格であるパキポディウムの写真でも載せておこう。



ずんぐりむっくりのこのフォルム、なかなか強烈な印象ですなあ。
おそらくこの膨れた幹に水分をたっぷり蓄えて、乾燥地帯をたくましく生き抜いているのだろう。
しかし、いくらビザールとはいえ、これを育ててみたいとは思わんなあ。笑

56

西脇順三郎の詩を読む楽しみの一つに、いろんな植物の名前に出会えるということが挙げられる。
山野草のファンであれば、植物の名前が次から次へと出てくるというただそのことだけで、堪らないのではないか。
例えば、今頃の季節であれば、「しゆんらん」という詩なんてどうだろう。
途中、なかなかシュールな会話が展開されたりして、この人の詩を読むのが初めての人はびっくりするかもしれないけど、書き出しなどはいたってまともだ。

二月中頃雪が降っていた。
ヒエの麓の高野という里の
おくの松林へシユンランを取りに出かけた
仁和寺の昔の坊主などは考えないことだ。



シュンランってどんな植物だろう。
そんな人のために、『日本の野草』という図鑑から写真を拝借してきた。
なかなか素朴な感じの野生ランだ。
昔から山菜として花が食されてきただけでなく、文人たちからも愛されてきた植物だという。
いかにも西脇先生が好まれそうな感じの植物ではある。
でも、先生の詩がただ「これ、ええなぁ」で終わるわけないと思って読み進んでいくと、やっぱり、こんなオモロイことを書いておられる。

生まれた瞬間にみる男の子のペニスの
ような花の芽を出しているシユンランを
二株とイワナシを三株掘った。

興味深々、このシュンランの花芽とやらをネット画像で見てみたが、なるほど、まさにそれは赤ん坊のオチンチンだった。笑

興に乗ってきたので、もう一丁、「大和路」という詩の中から、春の野草が列挙された一節を紹介しよう。

ゲンゲ、天人唐草、タビラコ
ジゴクノカマノフタ、スミレ
ミミナグサやホウコグサ…
またうぐいすの鳴く如意輪寺で
若い尼さんとワラビを摘んだ

この中のゲンゲ、天人唐草、スミレは先生のお気に入りなのか、「田園の憂鬱(哀歌)」という詩の中でも、同じような並びで出てくる。

法隆寺へいく路に春が来ると
ゲンゲ天人唐草スミレが咲くが

この真ん中の天人唐草(てんにんからくさ)というのは、イヌノフグリの別名だという。
イヌノフグリって、思わず笑ってしまいそうな名前だが、あのオオイヌノフグリとはまた違う植物らしい。
たしかに似てはいるけど、イヌノフグリの方は在来種で、帰化植物のオオイヌノフグリに比べると、花が小さくて、色も少し地味な感じがする。

近頃はなかなか見られなくなったこの植物のお上品な別名を使って、西脇先生はなんとも不思議な響きの詩句を作ったものだと思う。
「ゲンゲてんにんからくさスミレ」
これを口にした時の、流れるような音の連なりがなんとも心地よい。
呪文のように何度も繰り返して言ってみたくなるフレーズだ。
これはやはりイヌノフグリを持ってきたのでは出せない味ではなかろうか。





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Last updated  2021.03.01 13:53:22
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