全128件 (128件中 1-50件目)
0日目 0806(火) 成田発1日目 0806(火) サンフランシスコ着,レンタカー,金門橋,アルカトラズ島,大迷走,ホテル,フィッシャーマンズ・ワーフ,ピア39,帽子店,クラブチャウダー,クラブケーキ,モヒート2日目 0807(水) カフェ,ミュニバス,ダウンタウン,中華街,千田さん親子と会食,コーケイジ(日本酒バー),ケーブルカー(ステップ乗り),クラムチャウダー,生牡蠣3日目 0808(木) バッテリー切れ,ベーグル&ラテ,ゴールデンゲート・パーク,カリフォルニア科学アカデミー,ツインピークス,郊外型モール,サンフランシスコ発4日目 0809(金) ニューヨーク(JFK空港)着,リムジン,ニュージャージーの住宅街,コリアン・タウン,サヤカさん・ダイスケさん一家,ベル(ダックスフント),ベーカリー,ミツワ・マーケットプレイス5日目 0810(土) バス,ブルックリン,地下鉄,フリーマーケット,屋台市,ギターマン,スタバ,ミツワ・シャトル,夕焼け6日目 0811(日) マンハッタン,エンパイア・ステート・ビルディング,セント・ポール教会,ワン・ワールド・トレーディング・センター,ナショナル9.11メモリアル,トリニティ教会,証券取引所,グリーン・ライン,車内芸人,公衆電話,スタバWi-Fi7日目 0812(月) 屋台飯,ディーン・アンド・デルーカ,セントラル・パーク,リス,メトロポリタン美術館,自然史博物館,チーズケーキ・ファクトリー,書店,ソウシ君寝かしつけ8日目 0813(火) ホテル,スープ・セット,ロウアー・マンハッタン,ソーホー,サウス・ストリート・シーポート,イエローキャブ(バングラデシュ人のドライバー),ウォール街,バッテリー・パーク,自由の女神像,ウルフギャング(ステーキハウス),ニュージーズ(ブロードウェイ・ミュージカル)9日目 0814(水) ニューヨーク(ラガーディア空港)発,デンヴァー着,レンタカー,ホテル,長距離運転,キャッスル・ロック,パイクス・ピーク,雷雨,雪,マーモット,エンジンブレーキ,虹(小),通行止め,フェイマス・デイヴズ(グリル・レストラン)10日目 0815(木) タコベル,ロッキー・マウンテン国立公園,さらに長距離運転,リャマ,エルク(ヘラジカ),レッド・ロック・パーク,兎,鹿,虹(大),竜巻?,アメリカン・ビュッフェ11日目 0816(金) タクシー,空港,スーベニア・ショップ,「県庁おもてなし課」,整備不良,足止め,ラウンジ,ボーイング787,石川君,マリオット・エアポート・ゲイトウェイ(ホテル)12日目 0817(土) デンヴァー発,「図書館戦争」,「舟を編む」,「オズ はじまりの戦い」,「ヒックとドラゴン」,「人生はノーリターン」13日目 0818(日) 成田着
2013年08月20日
コメント(0)
邦人用の持込品申請書というのが機内で配られたとき,「日本人? ほんとに? そうは見えませんねぇ」とCAさんに英語で言われて,つい,ハハ,サンキューと答えちゃったけど,べつにお礼を言う場面じゃないよな,冷静に考えて(-_-)。なにげにハリっぽい,デンヴァー国際空港。デンヴァー国際空港で見かけた,Kimochis シリーズ。プレゼントして今の気持ちを相手にシェアするためのぬいぐるみ(たぶん)。……何だかなあ。あげる気もしないが,もらいたくもない。 デンヴァー滞在2日目の補遺。ロッキー・マウンテン国立公園までの往還のロング・ロング・ドライブの後,ボスは,(自分ご褒美という訳でもないのだろうけれど,)前日にパイクス・ピークに向かうフリーウェイの脇,キャッスル・ロック近くで見つけてあった,郊外型モールに向かおうとしていた……が,これは敢え無く,デンヴァーからの帰宅ラッシュによる渋滞に阻まれてしまった。そこで(道路標識を見て)誰かがFBのコメントで勧めてくれていたのをボスが思い出したのが,レッド・ロック・パーク。巨大な岩々が,傾いだ層理そのままに屹立する様は,確かに一見の価値ありだった。まったく偶然に,Queens というバンドの夜間野外コンサート会場となっていて,パークの山側には入場待ちの行列が出来,麓エリアには場外で音を聴きつつ楽しもうという腹らしい人たちが,大勢来ていた。ロック・パークでロック!英語読みの店名の話。まずは,ステーキハウスのWolfgang’s。言わずと知れた,アマデウス・モーツァルトの名前で,ヨーロッパ風の洗練をイメージさせるが,英語読みにすると,同時に「オオカミ団」みたいになって,妙にステーキハウスの店名に似つかわしく聞こえるのが,心憎い。Ikea は,英語読みだと「アイキーヤ」。「イケヤ」も十分日本語っぽいが,英語読みだと,「藍木屋」のような漢字を当てたくなる。サンフランシスコで,ダウンタウンからバスに乗って訪れた日本酒バー,コーケイジ(Corkage)。店主のトッドさん(ヒゲメガネ仲間!)に由来を訊きそびれてしまったけど,日本語のような英語のような,絶妙な響きの店名。合宿業務を後入り組に引き継いで,成田を後にします。いろいろあったけど,ボスとの自分史上最長の共同生活(昨夜も同室)も,これで終了!
2013年08月20日
コメント(0)
ホテルをチェックアウト。よいホテルだった。これから空港に再チェックイン。今朝,部屋に届いていた,昨夜の夕食分の伝票で,チップ分をこちらで指定した額(適正額)より勝手に10ドル割り増してあったため,ボスがフロントの日本人スタッフに話しに行き,取り返して来ました(「すみません,こちらの人,計算ができないので……」)。そして,ベッドメイク・チップ2人分10ドルを置き忘れた我々(^_^;。 シャトル車内からの shooting は難しい。空港入口の青い馬,逃したとおもったが,微妙に引っかかっていた。
2013年08月20日
コメント(0)
デンヴァーについて。コロラド州の州都。人口62万と,日本だとほどほどの地方都市程度。デンヴァー国際空港は,中西部のハブ機能を一手に引き受ける。海抜1マイル(1,600メートル)という高原都市。すぐ近所のボウルダーは,言わずと知れた,高地トレーニングのメッカ。要するに,ちょっと酸素が薄い都市。飛行機が飛びません……(T_T)「欠けているパーツがあることがわかったので,次に来る機を待って,そこからパーツを付け替えることにしました」「パーツは付けられましたが,再チェックがまだ終わりません」で,離陸予定自刻から,早2時間30分。機長の説明を通訳してアナウンスする日系アテンダントが,「まだチェックしている始末です」と口を滑らせる始末(^_^;。ボス曰く,「これ,あのボーイング787では?」言ってることが本当だとして,離陸直前にパーツが足りないことに気がついたのなら,総点検をやり直したくなる気持ちはよくわかる。ぜひやっていただきたい。驚くのは,出発が遅れることではなく,出発間際まで気づかれなかった整備不良そのものだ。ボスのプライオリティパスで,ラウンジに入れてもらっている。無料サービスのスナックが,リンゴとかニンジンとか健康志向系なのが,いかにも富裕層向けっぽい。こっちの Wi-Fi は安定しているので助かる……嗚呼,格差社会!12時35分発のはずが,現在,16時35分。上層階にあるラウンジから見下ろすと,いつまで経っても飛ばない我々の飛行機がよく見えるーー機体脇の「787」の文字まで。やっぱりそうでしたか。...あ〜あ,そりゃ飛ばしたくない訳だよ,よほど念を入れない限り。予定の飛行機が飛ばせないことは決まった。あとは未定。どうするんだ。皆がリンゴとニンジンとバナナでハッピーという訳ではないので,ラウンジにはこんな不健康な無料サービスも。阿呆だなあ……利用してしまった(-_^;。 飛行機飛びません…… 航空会社の用意したホテルに一泊です。いやはや。マリアット・エアポート・ゲイトウェイというホテルにチェックイン。人心地つきました。帰国は丸一日遅れる模様(詳細未定)。ふう。デンヴァーにホームステイした帰りにひっかかっちゃった高校2年生が同宿にいて,ボスがいろいろ助けてあげています(^_^)。空港で状況説明をしたCAさんは,代替便は未定なので後で航空会社に電話して確認してほしい,Japanese please で日本人スタッフが応対するから大丈夫,と言っていたが,ボスが夕食後に電話すると,「日本語サービスは21時で終了しました」。時間制限があるなら,それも言っとこうよ…… ちょっと不誠実なんじゃない?ともあれ,明日12時発で帰れるようです。予定より,ほぼ1日遅れ。6月に機体トラブルで行き先変更になったボーイング787が,正に僕らが利用しようとしていたUA139便だったよ……(-_-;
2013年08月20日
コメント(0)
今日,15日木曜日は,デンヴァーの北西にある,ロッキー・マウンテン国立公園へ。車で約2時間,と言うと,さほどの距離ではないように思えるが,フリーウェイを時速120キロでかっ飛ばしまくること前提の「約2時間」なので,実際にはけっこう距離がある。加えて,園内の移動も基本的に車である上,一本道の園内ルートを踏破して,入ったのとは別のゲートから出ると,デンヴァーまではフリーウェイを使わず一般道を走る距離が行きより長く,結果,べらぼうに時間がかかった。もう,走っても走っても山の中。かく言う僕は,国内免許さえ持っていない訳で,その苛酷な運転を100パーセントこなしてくれたボスには,本当に申し訳なかった。今日のハイライトは,ある展望スポットの近くに佇んでいたエルク(ヘラジカ)たちとの邂逅なのだけれど,それもちょっと霞んでしまうくらい,いくら走っても目的地に着かない地図の広さが強く刻み込まれた。その後,レッドロックパークという,赤い地層状の奇岩が楽しめる公園に立ち寄った後,夕食をとって帰宿。昨日も車の中から虹を見たのだけれど,それは,車のすぐ鼻先にあるようにも見える,かなりコンパクトで慎ましい虹だった。今日,車の中から見た虹は,赤から紫までの色が非常にくっきりしていた上に,最初に見えていたところからどんどん伸びて,ついには地面から地面へ半円形を描き,「外側の虹」まで見える,スーパー・レインボウとなった。ここまで大きな虹を見るのは,たぶん生まれてはじめて。空のやたら広いデンヴァーならではとも言える。昨日,パイクスピークという,標高4,300メートルの山頂に行ったときに見かけたマーモット。往路・帰路で1匹ずつ。どちらもボスが発見。画像は,1・2枚目が帰路の,4枚目が往路のマーモット。昨日はマーモットのほかに,リスと,イタチのような謎の生き物を見かけた。今日見かけたのは……1 エルク(ヘラジカ)ロッキーマウンテン国立公園のある展望台の近くに寝そべっていた。はじめ,離れたところから見ると,枝角だけが見えていて,まさかとは思ったが,近づくと,生きた本物のエルクで,離れたところに,あと2頭いた。ボスは,新たにやって来た人たちに,「エルクが見られますよ」「そこにエルクがいますよ」と声をかけて教えて回っていた(^_^)。2 マーモット同じ展望台の岩場で,ボスが発見。僕は目撃できず。3 何か四足動物の群れ道路からかなり離れた草地。何なのか同定できず(後で画像を拡大して見ると,馬だったようだ。なぜあんな高地に?)。4 鹿都合3回ほど。街中の道路際とかに,普通にいる。5 兎レッドロックパークの小道脇。ボスが発見。びょんぴょん跳ねて行ってしまった。かなり小さかったので,仔兎かもしれない。6 リャマ2頭が,ロッキー・マウンテン国立公園のベアレイク駐車場に留められていて,とても驚いた。7 チキチキバッタ国立公園を,車の窓を開けて走っていると,チキチキチキ,チキチキチキ,という声が,あちこちの道端から聞こえてくる。アルバータの滝へのショート・トレッキング後,何匹もが飛びながら鳴いているのを見て,バッタの声だったことがわかった。茶色いが,飛んで羽を広げると緑に見える。8 リスある展望台にて。スナック菓子のにおいにつられてか,すぐ近くまで来るものの,せわしなく,すぐどこかに行ってしまう。2匹いたが,動きが速くて,なかなか写せなかった。9 鴉。リスと同じ展望台で見かけた。州職員の制服を着た若い女の子が,“A crow... or a raven?” と連れに訊いていた。ハシブトガラスより少し大きい程度。ビジターセンターにあったミニ博物館のような剥製展示によると,どうやら raven (大鴉)か正解らしい。
2013年08月20日
コメント(0)
お盆・終戦記念日に海外で遊んでいるのは,何だか申し訳ない気が……デンバーは,まだ14日です。昨日・火曜日は,ボスの案内でソーホーを歩いてヘンなTシャツを買い込み,豆粒ほどの自由の女神を見た後,Wojfgang's で肉食。「熟成肉」を食べさせる話題のお店で,案の定,店内では日本人の姿も見られた。実際,思っていた以上にエレガントで,肉も最高に美味しかったが,ボスの妹さんは「あそこ,会社のパーティーとかで使うことあるけど,肉食べるんやったら○○○の方がもっとうまい思うで」と言っていたので,すでに最先端の店ではなくなりかけているのかもしれない。ともあれ,僕たちにとっては,実に美味い食事だった。その後,ブロードウェイ・ミュージカル Newsies を観劇。本場の舞台はやはり基本的にはすばらしいものだったけれど,舞台は「男の子」率が非常に高く,したがって,客席は女性率,というか,奥様率が非常に高い演目。冒頭近く,朝のシーンで,意味もなくオバサマサービスの半裸シーンがあったりして,ちょっと苦笑してしまった。本日,14日水曜日は,ニューヨークからコロラド州デンバーに移った初日。ホテルのプールでちょっと遊んだ後,ボスの運転するレンタカーで,標高4,300メートルのパイクス・ピークへ。途中,グレートプレーンズのだだっ広さにも度肝を抜かれたけど,4,300メートルまで舗装路をひいてしまうアメリカ人の訳のわからない根性にも脱帽。高所では雪になったが,下界に降りると雨に戻り,それも無闇につぶの大きいもので,帰り道はたちまち封鎖となり,ロッキー山脈の谷筋を通る道から,迂回して帰らなければならなくななった。運転担当のボスはとにかく大変だったが,雷やら虹やら夕日やら,美しいものが押し寄せてきた1日で,山上で酸素不足からふらふらした甲斐は,十分にあったと思う。
2013年08月20日
コメント(0)
ある人から聞いた,元同僚の話が面白かった。モデルかと見まごうブロンド女性,胸は豊胸手術済み,でも頭の中は見事に空っぽで,驚くほど仕事ができず,たまりかねたボスの一声で,ついにクビになったという……重役秘書。そんな生き物,コントとコメディ映画と一コマ漫画の中にしか存在しないと思ってたよ(^_^;。自然史博物館と言えば,ミーハー的には一にも二にも,映画「ナイト・ミュージアム」なんだけど(ベン・スティラーのファンなので,1本目だけは観ている),そう言えば,TVドラマ「フレンズ」(舞台はニューヨーク)の主人公の一人,ロス・ゲラーは,シリーズ後半では大学に転職してしまうけど,前半は博物館勤務で恐竜オタクという設定だったよな,と思い出してみたり。MET の獅子4態。最初のは,スフィンクス。まさかここでいきなり現物に逢えるとは思わなかった!2頭目は,ジャングル大帝かライオンキングかという adorable な1頭。4頭目は,小学生の図工作品にしか見えない……(^_^;
2013年08月20日
コメント(0)
昨日すれ違った人々・その8。「ダイム(10セント)ってどれだっけ? 覚えてないからどれか教えてください」と言ったら,思いっきり苦笑していた,書店のレジのお兄さん。たはは……(^_^;。その7。チーズケーキ・ファクトリーの隣席の,二人してぶくぶく膨れ上がった上に,奥さんの方は杖までついていた,年配の夫婦。だから,もっとヘルシーなお店で食事を……(-_-;その6。自然史博物館のオオナマケモノ?の隣りで,展示物と同じ格好をするというネタ写真を撮っていたら,こちらの意図に気づいて一瞬「ぶはっ」と吹き出した,通りすがりのお兄さん。その5。同じく自然史博物館で見かけた,おそらくニューヨークに来たときの飛行機で隣席だったお兄さん。奇遇です!その4。MET で,自分とそのとき見ていた展示物との間をボスと僕が挨拶なしですり抜けたときに,“Excuse YOU!” と言ってにっこりした,年配の女性。これは,こっちでは本当に気をつけないとダメだ。こうやってはっきり指摘してくれればいいけど,いろんなところで秘かにムカつかれている可能性大(-_-;。その3。セントラルパークで,その辺に落ちていた木の実を手に乗せて,リス寄せしていた女の子。リスは普通に人の手から餌を食べていた。馴れすぎ……その2。パーク脇の道で絵葉書を売っていたアフリカ系兄さん。「絵葉書どう? 記念になるよ。ブラザー。ブラザー。ブラザー! (取り合わず行き過ぎると,後ろから悲痛に)ブラザアァア〜〜〜!」たまらず吹き出すと,向こうも一緒にゲラゲラ笑ったが,それ以上追っては来なかった。皆にやってるんだろうけど,ちょっと面白かった。その1。ティファニー前で,「朝食」の齧りかけサンドイッチとドリンクを持って記念撮影していた彼女。後で見返したら,ティファニーの前景を撮った写真に,彼女が写り込んでいた。やった(^_^)!
2013年08月20日
コメント(0)
昨日は滞米6日目,NY3日目。夕方,ボスの義弟のダイスケさんのご両親との会食があるというので,先にボスとは別行動でエンパイア・ステート・ビルディングに上がり,後から合流することに。初の個別行動である。★ESBの真実・行くなら奮発して,50ドルのエクスプレス・パスを。もったいないと思うなら,上るのを諦めろ(集団で,UNOでもしながら楽しく待てるなら話は別。複数見かけたラブラブカップルは,実に楽しそうだった)。発券,セキュリティーチェック,入場,写真撮影,80階へのアップと,途中イベントはいろいろあるが,とにかく列がいちいち長い。そして,その横をエクスプレス・バス保持者が,するすると抜けていく。世界はパス保持者と非保持者に二分される。精神衛生によくないことはなはだしい。・記念写真(20ドル)と抱き合わせのDVD,音声解説プラス見取り図,最上階展望台(17ドル)と,細々した課金オプションあり。よく考えておこう。僕はつい写真を買ってしまったが,要らなかったな……・発券所をスキップするだけでも少しは違うだろうと,ボスの差配で妹さんがネットでチケットを取ってくれていたが,職員に指摘されて,それがチケットそのものではなく,ヴァウチャー(引き替え券)だったことに気づく。そして,チケットとの引き替えは,発券所。つまり,結果的に,普通にチケットを買うのとほぼ同じだった。ESBを出て,待ち合わせ場所に向かうが,最寄りのサブウェイは週末はその地域に停まらないことが判明。これで待ち合わせ時間までの到着は絶望的になった。次の目的地は,グラウンド・ゼロ。さてさて,どうなることか。一昨日の話の続きを片づけてしまおう。ボスとは,もし1時半のグラウンド・ゼロのモニュメントでの待ち合わせに間に合わなかったら、そのときは,2時半に同じ場所で会うようにしよう,ということになっていた。エンパイア・ステート・ビルディングで予想以上に時間を食った僕は,世界貿易センタービル跡地の最寄り駅を出て,取り敢えず,建造中の高層ビルの敷地に向かった。が,何もない。いや,小さな案内所があった。備えつけのマップを見ると,メモリアル・サイトというのがある。そこに行って,訳もわからず行列に並び,チケットを買った。そこからマップの矢印どおりに歩いていくと,エントランスなるものがある。記念館でも出来てるのかな?いかにも仮設っぽいチケット・キオスク前の行列をスキップして先に進むと,さらに長蛇の列。セキュリティー・チェックがあり……エンパイア・ステート・ビルの再現か!やっと行列を抜けると,そこは貿易センタービルの跡地に作られた公園だった。モニュメントとして,縁石に犠牲者の名が刻まれた池が2つあるほかは,特に何もない。ただ人だけが意味もなく,わんさかいる。一応一通りボスを探すが,あまりの広さと人の多さに(それに,何しろ暑い)すぐに断念して退園し,エントランスに移ってボスを待った。……現れない。後で聞いたところでは,ボスも僕の2,30分前に入場して僕を探し,エントランスで僕を待ったのも同じで,ただ時間だけが少しだけ,ズレていたのだった。こうして僕らは,2つ目の待ち合わせにも失敗した。僕がボスから聞いていたのは,合流後,ハーレム・ラインのグランド・セントラル駅4時25分発でブロンクスビルに向かう,ということだった。地下鉄でグランド・セントラルまで行き,路線図をつぶさにチェックしたが,なんと,ハーレム・ラインなる鉄道も記載がなければ,ブロンクスビル駅も載っていない! さすがに泣きたくなった。駅員を探すが見当たらないので,駅に詰めている警官に訊く。どうも頼りないので,二度,のべ3人に訊いた。ハーレム・ラインとは,たぶんハーレム地区を通ってブロンクスに抜けるグリーン・ラインのことだろう,ブロンクスビルというのは駅名ではなく,グリーンラインが向かうブロンクス地区のことではないかという。仕方がないので,グリーン・ラインの25分ごろにグランド・セントラルを出るのに乗り込んで,終点のウッドローンという駅まで行き,案の定誰にも会えずに,そのまま虚しく帰って来た。これも後で聞けば,ボスはまさか待ち合わせがそこまでもつれ込むとは思わず,情報伝達に念を入れていなかったとのこと。ハーレム・ラインとは,グランド・セントラル駅始発のメトロ・ノース線の俗称,また,ブロンクスヴィルは,地下鉄は行かないようなブロンクスの奥の方の小さな町で,地下鉄に詰めている警官が知らなくも無理はないという。なるほど,ノース・メトロ線なら地下鉄の路線図も他社線として小さく書き込んであるが,それを見ても別称は無論わからないし,ブロンクスヴィルは圏外で,地下鉄の路線図では確認できない。そんなことは知らないから,戻ってきたグランド・セントラル駅で地上に出,心配をかけないよう,番号を聞いていたボスの妹さんに電話をかけようと公衆電話を探したが,コインを入れても,一々戻ってくる。電話機を変えても,やはり戻ってくる。何度やっても同じだ。コインの金額を変えてみても,同じ結果。これには弱った。実は,受話器を耳に当てさえすれば,まず1番を押せというアナウンスが流れたはずというのだが,こちらはまさかそんなこととは思わない。入れたものが一々戻ってくるので,癇癪をおこすだけだった。結局,スタバの前でフリーのWi-fi を拾ってボスに連絡をつけ,シャトルバスでミツワまで戻って,車で迎えに来てもらった。グランド・セントラル駅では,地上に出さえすれば,立派なインフォメーションもあり,もちろん鉄道職員も簡単につかまっただろうと言う。ボスは気の毒がりも済まながりもして,ステーキ肉のふんだんに乗った炒飯まで作ってくれたけれども,何と言って慰められようが,この日はエンパイア・ステート・ビルとグラウンド・ゼロの長蛇の列にひたすら並んだ記憶が深く刻まれたほかは空しく行ったり来たりしたばかりで,徒労感はおよそ一通りのものではなかった。どうせ会食に参加し損ねるなら,最初から1日自由行動にしてもらえば,どれだけ気楽に街歩きを楽しめたかしれない,と残念に思わずにはいられなかった。まあ,翌月曜日のミュージアム巡りが思いのほか楽しかったので,今となっては日曜日のことなどどうでもいいのだけれど,当日の晩は,本当にNYの印象と言えば,とにかく最悪だった。ちなみに僕は,この日,地下鉄で,見知らぬ人から二度も,どこそこに行くのにはこの電車で大丈夫か,ということを訊かれた。一人で黙って立っていれば,このあたりに暮らしている人のように見えなくもないのか,と思うと,ちょっとだけうれしい気がしないでもなかった。
2013年08月20日
コメント(0)
本日の戦利品!ブルックリンのフォートグリーンの蚤の市で売っていた,小皿とお猪口(sake cup)。焼いた本人が売っていた。SKT Ceramics のスザンナさん。アメリカ物でこういう動物シリーズに hedgehog が入ってるのは珍しいと思う。カワウソやキツネもそりゃほしいけど,1つ20ドルでは,3点だけでもボスに正気を疑われます……(-_-)。ニューヨークの“日本食”いろいろ。まずはニュージャージーの日本系大型スーパーのミツワ・マーケットプレイス,いろいろ貴重な食材や調味料がそろうが,「ハンバーグ餃子ライス」は,アメリカン・ジャパニーズ。ってか和洋中?ジンジャーエイル・緑茶味は,同じくニュージャージーの逗留先近所の雑貨店で。飲んでみたら,甘みが強くて緑茶味とは感じられなかったけど,むしろ昆布茶っぽくて,ちょっと好みの味。一方,売り子さん自家製の KONBUCHA は,スモーガスバーグという,ウィリアムズバーグ(ブルックリン)の土曜屋台村で。試飲させてもらったけど,こちらは断じて昆布茶ではない。微炭酸。これも,おいしいとは思ったけど。オニギリ屋台と日本風タコスは,同じくブルックリンはフォートグリーンの蚤の市。タコスは味噌チキンを昼食にチョイスしたが,しっかりと味噌だった。オニギリを売っていた人たちだけは,たぶん本当に日系の人たち。ホームで,ギターを胸の高さでかき鳴らして熱唱していたギターマン。一際激しい一曲が終わると,パラパラと拍手が上がる。反対側のホームの親父が,「ごめん,金入れてやりたいけど,ちょっと無理だわ」と声をかけていた(^_^;。
2013年08月20日
コメント(0)
滞米4日目。夜間に飛行機でサンフランシスコからニューヨークへ。red~eye flight というらしい。通路側の席ではなかったが,隣の長身の青年はほとんど「ライン越え」をしない人で,助かった。反対側の窓側席のボスは,爆睡。そう言えば,「向こうに着いて,泊めてもらう妹のところでいきなり寝まくっても失礼だから,飛行機でよく寝ておく」と宣言していた。有言実行である。空港から,ボスの妹さんが手配してくれた車で,郊外の住宅街にある妹さんのお宅へ。コリアン街で,一人で歩いていると,よく韓国語で話しかけられるとか。お宅に到着し,初対面の妹さんとご挨拶。ダックスフントのベルさんがかわいい。妹さんは産休中で,生後4週間のちっちゃな赤ちゃんを見るにつけ,こんな時期に押しかけて泊めてもらうのが,本当に申し訳ない……ボスと妹さんで,つもる話。犬川さんは時差で眠気が出て大変そうだけど僕は全然平気!とボス。3人プラス赤ちゃんで車で出て(こういうとき,子どもを家で寝かしておくのはアメリカではネグレクトと見做され,違法行為となる由)パン屋で食事の後、食材など買い込む。家ではボスが夕食作り。下ごしらえを済ませてから,リビングのソファで大の字になつて寝る態勢。妹さんが「部屋に行けば?」と勧めると,「いや,横になると爆睡するから」。そのまま,2時間弱ほどソファーで熟睡。ボスのこういうところは,傍で見ていて,なかなか楽しい(^_^)。僕は犬に遊んでもらいつつ読書。夕方,妹さんの旦那さんが,デイケアからピックアップしてきた上の息子さん(2歳)を連れて帰宅すると,ボスは目をこすって起き出し,手早く料理を済ませる。「時差ボケ,大丈夫ですか? なんかぐっすりお休みの写真が,うちから送られてきましたけど」「いやもう,ぜ〜んぜん?」ボスが作ってくれた夕食を堪能後,僕は居間で歓談に加わりながら,子ども番組やディスカバリー・チャンネルを見ていたが,お約束通りに睡魔に襲われ,早めに失礼させていただいた。
2013年08月20日
コメント(0)
無事,NYに到着。昨日はサンフランシスコ3日目で,予備日の扱い。ホテルをチェックアウトして,前日放ったらかしていたレンタカーをボスが取りに行ったら,ライトのつけっ放しでバッテリーが上がっていた! 業者に来てもらい,事なきを得る。その後は,カリフォルニア科学アカデミー,ツインピークスと回った後,郊外型モールで,ボスの大好きな恒例のウィンドウ・ショッピング遍路。その後,車を返して暫しの待ち時間の後,NYへのフライト。
2013年08月20日
コメント(0)
サンフランシスコの街中は,地図を見れば京都を思わせる縦横の通りが整然と組み合わさった街並みなのだが,一つには,よく知られるすさまじい高低差のある坂と,もう一つには一方通行規制の多さで,地図からは想像のつかない凄惨な迷路となっている。実際,前方に白い雲の見えるすさまじい傾斜路を無理やり上ったり,谷底に落下するような逆落としを下ったりする車の助手席で,「えーと,これが何とかストリートだから……」「いや,たぶん方向逆です,これ!」「だいたい,どこに向かってるんですか!?」などと半ばパニくりながら地図をひっくり返したり道路標識を探したりしていると,車酔いするなと言う方が無理というものだ。彷徨の間の妙な角度に傾いた街並み風景の写真が撮れなかったのは残念だけど,はっきり言ってそれどころの話ではなかった。有名なケーブルカーやトロリーバスも車中から見かけたが,たまたま昨日から読んでいるエリック・シュローサー『ファストフードが世界を食いつくす』によれば,サンフランシスコの特殊な地形に合わせてトロリーバス網が発達したのではなく,逆に,ニューヨーク・ロスアンジェルスをはじめ,他の100以上の都市のトロリーバス・システムは,すべてGMが買収の上で意図的につぶし,エンジン車によるバス網にとって代わらせてしまった由。やっとたどり着いた,レトロな味わいのある小さなホテルに荷物を納めてシャワーを浴び,フィッシャーマンズ・ワーフでクラムならぬクラブ・チャウダーとクラブ・ケーキ(カニ肉で作ったミンチのコロッケのようなもの)を,ボスお勧めのさわやかなモヒート(日本の多くの店で出されるものと違って,アメリカではミントの生葉がふんだんに使われる……由)とともに堪能。至福至福。
2013年08月20日
コメント(0)
7月8日,以下の記事を facebook でシェアした。"Call to help hedgehogs during heat wave"http://dragonflywye.com/2013/07/07/call-to-help-hedgehogs-during-heat-wave/好天続きなのはよいが,熱波は野生のハリネズミにとっては餌や水の不足を,ひいては生存の危機を意味する。どうか皆様のあたたかいサポートを!という,英国での呼びかけだ。が,僕が気になったのは,木彫と思しき写真の方だった。足元にあるのをリース wreath という。紋章上部の飾りである。当然,この動物そのものも紋章上部に付された部分で,これをクレスト crest という。さて,この記事の中の,"The hedgehog has long been a familiar emblem of Ross-on-Wye, but its numbers across the UK have been in steep decline for several years." (はりねずみは長らくロス・オン・ワイのシンボルとして有名だったが,連合王国全体での個体数は,ここ数年,急激に減少している)という一節に,ハリネズミ仲間のひろみさんが食いついた。実はこれについて,僕のエントリーにコメントを下さったのだけれど,たまたま携帯電話で見ていた(つまり,その場でググることができなかった)僕が「さあ,何でしょうね」という“そっけない”リプライを返したために,火がついてしまった由(^_^;。き,調査を開始。その結果をご自身のタイムラインに掲げられた。facebook の記事はいずれ流れてしまう。ちょっともったいないので,ここに記録しておく。http://pickled-hedgehog.com/?p=607http://www.ross-on-wye.com/index.php?page=ross_010The_Town&pg=fullhttp://www.abrahall.com/familyhistory/http://www.britainexpress.com/counties/hereford/churches/Much-Marcle/Much-Marcle-7935-20080216_s.htmhttp://www.britainexpress.com/counties/hereford/churches/Much-Marcle/Much-Marcle-7935-20080216_s.htmhttp://m.flickr.com/#/photos/churchcrawler/368492846/http://en.m.wikisource.org/wiki/A_Complete_Guide_to_Heraldry/Chapter_12Sir John Kyrl について http://research.n-fukushi.ac.jp/ps/research/usr/db/pdfs/00035-00005.pdf以下,犬川。それにしても,ハリネズミの古名 urchin にちなむ地名(Archenfield)が現存したとは! http://en.wikipedia.org/wiki/Archenfieldhttp://groups.yahoo.com/group/Churchcrawling/message/31361こちらを見ると,ictus には blow(一撃する)のほかに thrust(一突きする)の意味もあるみたい。モットーは「ためらわず一突き」か。 http://www.eudict.com/?lang=lateng&word=nil%20moror%20ictus%20translate%20to%20englishそして,カール家紋章のクレストにハリ発見です^^ http://www.houseofnames.com/curl-family-cresthttp://208.254.39.65/tourismmatters/e_article000853663.cfm?x=b11%2C0%2Cw楽しそう。 http://www.wyenot.com/news/2010-05-26-05.htmこちらは一族の Robert Kyrle 。紋章に3ハリ。 http://www.britishmuseum.org/research/collection_online/collection_object_details.aspx?objectId=952418&partId=1http://search.ancestry.co.uk/cgi-bin/sse.dll?gl=43&rank=1&sbo=t&gsbco=Sweden&gsln=Kyrle&gss=angs-d英訳 "Never Delay a Blow" "I do not care for blows" からすると,「すかさず一撃」「ためらわず一撃」。ただし ictus には blow のほか,stabbing, thrust の訳語もあるので,ハリなら「一突き」かな,と。確かにヤマっぽいんですよね,ハリというより。http://www.britainexpress.com/counties/hereford/churches/Much-Marcle/index.htm?page=2あ,こっちの解釈はいいかも。"I don't mind blows" で,"I don't care for blows" と同じことなんだけど,丸くなったハリを攻めあぐねている犬の絵というから,blow は自分側の攻撃じゃなくて,自分が受ける攻撃。「屁でもないぜ!」って感じで,これはハリっぽい! http://books.google.co.jp/books?id=zqlPAn2JxJ8C&pg=PA254&lpg=PA254&dq=hedgehog+nil+moror+ictus&source=bl&ots=EIxxURCKsH&sig=uST6mLFBP9mJ4HF1G8r8QzLUUxM&hl=ja&sa=X&ei=dRPcUb7_OoeDlQWhx4DABA&ved=0CC8Q6AEwAQ#v=onepage&q=hedgehog%20nil%20moror%20ictus&f=falseあー…… 気づいちゃった。Kyrle 家の紋章がハリなのって,たぶんハリが curl into a ball (ボールのように丸くなる)からだ。つまり,駄洒落紋章。モットーは完全に後付けですね。 http://archiver.rootsweb.ancestry.com/th/read/GAEMANUE/2009-05/1243200895再びひろみさんのターン。http://search.ancestry.co.uk/cgi-bin/sse.dll?rank=1&sbo=t&gsbco=Sweden&gsln=Kyrle&gss=angs-c&gl=43&gst&ghc=20&fh=20&bsk=BEFmZmYIgAAERQKraY8-61http://www.flickr.com/photos/nickbyng/198398785/ハリのステンドグラス http://www.flickr.com/photos/21000745@N02/7067720505/これも。 http://www.flickr.com/photos/dave_moodle_dad/2761549379/おっと。これは違う。 http://stglassbflo.blogspot.jp/2012/08/holy-hedgehog.htmlむむ?ロンドンに? http://smumn-london.blogspot.jp/2012/09/london-2012-week-1-and-2.html(犬川)「これは違う。」のレリーフの方が気に入りましたよ^^。ニネヴェの町の廃墟を,荒野を象徴するハリネズミと共に描いている。旧約聖書がモチーフですね。ロンドンのキリストの足元のは…… ちょっとだけヤマっぽい。「資料室」で記事を掘ってきました。ゼファニア書2章13−14節。「主はまたその手を北に向かって伸ばし アッシリアを滅ぼし、ニネベを荒れ地とし 荒れ野のように干上がらせられる。そこには、あらゆる獣が それぞれ群れをなして伏す。ふくろうと山あらしは柱頭に宿り その声は窓にこだまする。杉の板ははがされ、荒廃は敷居に及ぶ」この新共同訳で「ヤマアラシ」となってるところの動物名が,古来いろいろに訳されていて,ハリのバージョンもあるわけです。いや,定説はないんだけど,「その声は窓にこだまする」んだから,たぶん本当はハリでもヤマでもなく,鳥が正解なんですよ。サギ類か何か。アメリカの改訂標準訳聖書 Revised Standard Version とかだとハリになってるので,そういうのに準拠したんでしょう。わはは。 http://andberlin.com/wp-content/uploads/2012/09/roa-hedgehog.jpgこりゃなんでしょ。ハリクマ? http://www.flickr.com/photos/phoenixesrose/2437152650/(犬川)んー,supporter(紋章を左右から支える動物)の組み合わせから言って,たぶんブロワ城のオオカミ&ヤマアラシだと思う。ウィーンの歴史博物館には。店の看板にいいな。 http://travelphotobase.com/v/ATV/AVMKV223.HTM
2013年07月14日
コメント(0)
1950年代のNHKラジオドラマ「ヤン坊ニン坊トン坊」の「ハリネズミ博士」,要調査。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%B3%E5%9D%8A%E3%83%8B%E3%83%B3%E5%9D%8A%E3%83%88%E3%83%B3%E5%9D%8A
2013年03月08日
コメント(0)
★「ハリネズミ」の漢字についての「資料室」での記事は,以下の通り。http://web.archive.org/web/20050219063636/http://www.path.ne.jp/~inukawa/hedgehog/info/%5B03%5D.html#KANJI★「資料室」でも書いたように,ハリネズミを表す漢字は,文献上では以下のとおり,5つまで数えられる。・蝟 (http://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%9D%9F)・猬 [オ胃](手偏ではなく,獣偏。以下同じ。http://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8C%AC)・[豸胃]・彙(http://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BD%99)・[才亢]「彙」から「彚」を分けて考えれば(後述),6つとなる。このうち,唯一読みの系統が異なる[才亢]については用例が少なく,現在も用いられることのない字なので,無視してよいだろう。また,JISコードにない[オ胃]と[豸胃]は,蝟の別体字と見なしてよさそうだ。結局,蝟と彙の2文字だけ知っておけばよいかと思う。「蝟」は,意符「虫」+音符「胃」の形声文字で,虫部に属する。「新漢語林」は,「彙」が書くのにむずかしいので,別体字の「蝟」ができたと説く。「虫」と「胃」,どちらの部位についても,ハリネズミを示す漢字の部位としては奇妙で,解説が必要だろう。まず,「虫」については,昆虫類に限らず,獣・鳥・魚介のいずれにも属さない動物を総称する言葉(部首)であったことが知られている。「爬虫類」のような言葉からもそのことは判るが,「虫」を部首とする文字には,むしろ昆虫以外の生き物の名辞の方が多いくらいである。蜘蛛,蠍,蚯蚓,蜈蚣(むかで。百足とも書く),蛇,蜥蜴,蛙,蟇蛙(ひきがえる。蟾蜍(せんじょ)とも言う),蝮,蛸,蛤(はまぐり),蜆(しじみ),牡蠣(かき),栄螺(さざえ),田螺(たにし),蝸牛,蛞蝓(なめくじ),蝙蝠,蟹,蝦,蝦蛄(しゃこ)……「虫」の形自体が,昆虫等の象形ではなく,蛇,おそらくは蝮(まむし)を象った字形である。そもそも,現在我々が「虫」という形の新字で表している「むし/チュウ」という字は,旧字では「蟲」であり,一方,「虫」の字形は,旧字では「キ」と読まれ,蝮を表す別の文字だった。「キ(虫)」を3つ合わせたのが「蟲」であり,木と森,日と晶,火と炎のように,両者が異なった意味と音を持つ別の字であったことは当然である。ハリネズミが,よく観察すれば明らかに獣の仲間であることが容易に見て取れるにもかかわらず,獣偏の[オ胃]・豸偏(むじなへん)の[豸胃]と並んで虫偏の「蝟」が作られ,結局この字が最も流布している事実は興味深い。確かに,もぞもぞといかにも不器用そうに歩くハリネズミの姿には,素早く動く齧歯類のネズミたちよりも,芋虫や毛虫の類,あるいは爬虫類の方が似ているような気がしなくもない。一方,「胃」は言うまでもなく,にくづき(月)を部首とし,いぶくろ(胃袋)を表す会意文字であった。上の「田」の部分は,旧字では田んぼの田ではなく,「※」を「口」で囲んだような形であり,これは胃の中に入った食物の象形であるという(ちなみに,「石鹸」の「鹸」の左側(鹵,http://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%B9%B5)は,「ロ(ろ)」と読んで岩塩を表し,「鹽」(「塩」の旧字体)の源字である。袋に包んだ岩塩の象形であるというが,形の上での違いは,袋の口に当たる上の「卜」の部分が付いているかどうかだけである)。「新漢語林」の「彙」の項によれば,「胃は昆に通じ,むらがるの意」であるという。しかし,「昆」と「胃」では読みも違えば意味にも通じるところが少なく,部位もまったく一致しない。同書によれば,「昆」は「足の多い虫の象形」なのだ。無理があると思う。以下,「資料室」の記事から引く(一部改変)。-(ここから)----------------------右側の「胃」という部首、これが胃袋であることは言うまでもありませんが、これをさらに細かく見てみると、下半分は肉の形をかたどった“にくづき”、上の「田」は、穀物、つまり“米”が詰まって、まん丸くパンパンにふくらんだ胃袋の形だそうです。中国人にとって「胃」のイメージは、“まん丸い”袋だったんですね。それで、丸くなる動物、ハリネズミにも、この字を当てた。これは、藤堂明保『漢字の話 上』(朝日選書 309、1986.07.)に見える説です。さらに藤堂さんは、「胃は囲と全く同系のことば」としています。面白いとは思うけど、これには異論もありそう。一方、白川静さんは、『字通』(平凡社、1996.10.)の中で、簡単に「胃に蝟集の意がある」と片付けてるいます。でも、これは、もうちょっとちゃんと説明してほしいところ。山田勝美・進藤秀幸『漢字字源辞典』(角川書店、1995.07.)の「胃」の項では、「この音は、胃が食物を委積(いし:詰め込む)するところからきている」としています。勝手に想像すれば、つまり「胃」の声系の字は、すべて胃袋の中で食物がぎゅっと凝縮されるようなイメージを共有しているということでしょうか。それなら、「胃」の音(歴史的かなづかいでは「ゐ (wi)」、現代中国語の読みではウェイ)は、「ぎゅっ」という感じのオノマトペだったのかな? -(ここまで)----------------------確かに「囲」の音は「ヰ(ゐ)」,中国語では「ウェイ」なので,「胃」と「囲」が同系統というのはありそうな話だが,ただ,現代中国語では両者の抑揚(四声)が異なるのが,引っかかると言えば引っかかる(後述)。ちなみに,「囲」の旧字は「圍」,「偉」の旁を「口」で囲んだ形。新字の「囲」は,音読みではなく訓読みで「ゐ」と読む「井」を採用したもので(音読みは「セイ」),かなり乱暴な国字的略字ではあるが,おそらく半ばは「圍」の略記という意識で作られたものだろう。ここでまとめておく。ウィクショナリーによれば,中国語では,「猬」は簡体字,「蝟」は繁体字で,それぞれの字の普通話(ピンイン)/広東話(イェール式)での読みは,それぞれ以下のとおり。・蝟:wèi (wei4)/wai6・猬 [オ胃]:hè (he4), wèi (wei4), xié (xie2)/wai6・彙:huì (hui4)/wai6, wui6・胃:wèi (wei4), dá (da2), tán (tan2), tǎn (tan3)/wai6・圍:huán (huan2), wéi (wei2)/wai4・围(圍の簡体字):wéi (wei2)/wai4同じ声符を持ち(圍・围は違うが),元は同じ音であったはずのものの読みに,異同があるのが面白い。時間の流れとともに分化したものだろうが,それを考えても,やはり蝟・彙・胃と囲・圍・围は,元から別のグループなのではないかという印象を受ける。一方,「彙」という文字には,厳密には2形がある。上部が「彑(「互」の1画目が欠けたような形)」のもの(彙)と,「彐(けいがしら。「緑」の右上のように,「ヨ」の第3画が右に突き抜けたような形。なお,ウィクショナリーによれば,「ヨ」と書いてもよいという)」のもの(彚)だ。JIS では前者が表示されるが,同字と見てよいだろう。ウィクショナリーによれば,戦前はもっぱら後者で書かれていたのに,どういうわけか現代のフォントは,いわゆる康煕字典体に準じた前者になってしまっているという。「新漢語林」によれば,この字は「彖(彑+豕,タン)」に「胃」(の旧字)が加わった形成文字であり,前者は毛の長い獣の象形,後者は前述のように,昆に通じ,むらがるの意で,合わせて,毛が密生しているはりねずみの意味を表す,という。ハリネズミについては,「毛が密生」ではなく,「針が密生」と言ってほしいところだが。この字についても,漢和辞典によって採用している説が少しずつ異なる。ウィクショナリーで紹介されている藤堂明保の説によれば,「会意形声。「彑」(彖(ぶた)の略体)+音符「胃」。「胃」は丸くまとまったものの意」とのことだが,豚は「豕」であって,「彖」には「彑」が付いている分,もう少し細かい意味があると考えるべきでは,と思う。とはいえ,hedge-"hog" の漢字に「豕」が含まれるのは確かで,面白いことではある。
2013年02月22日
コメント(1)
メモ・その1。陰陽師さんのサイト。英語圏の小説の,自前の翻訳が多数。作家の選択がすばらしい。http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/index.htmlメモ・その2。"hedgehog" 語源考証が Wikipedia の当該欄冒頭にあり。
2013年02月15日
コメント(0)
さて,今さら説明は不要だろうけれど,Dumb Ways to Die とは,メルボルンの鉄道会社・メトロ社の安全啓発ソングである。先日,画像付きで YouTube に流されるや,世界中で一挙に大ブレイクした。http://www.youtube.com/watch?v=IJNR2EpS0jw以下,原詞と拙訳。Dumb Ways to Dieおバカな死に方Set fire to your hair火をつけちゃえ,自分の髪にPoke a stick at a grizzly bearつっついちゃえ,ハイイログマEat medicine that's out of dateボリボリ食べちゃえ,古くなった薬Use your private parts as piranha bait大事なあそこでおびき寄せてみよう,ピラニアDumb ways to die, so many dumb ways to die ※いろいろあるよ,おバカな死に方dumb ways to di-i-i-ie, so many dumb ways to die ※いろいろあるよ,おバカな死に方Get your toast out with a fork引っ張り出そう,トーストをフォークでDo your own electrical work自分でやっちゃえ,電気工事Teach yourself how to fly適当に飛ばしてみよう,飛行機Eat a two week old unrefrigerated pie食べちゃえ,放置2週間のパイ(繰り返し ※×2)Invite a psycho-killer insideうちにご招待しちゃえ,殺人狂Scratch a drug dealer's brand new ride傷をつけちゃえ,ヤクの売人の車Take your helmet off in outer space宇宙で脱いじゃえ,ヘルメットUse your clothes dryer as a hiding place隠れんぼしてみよう,乾燥機で(繰り返し ※×2)Keep a rattlesnake as petガラガラヘビはペットにしちゃえSell both your kidneys on the internet腎臓は2つともネットで売っちゃえEat a tube of superglue接着剤は1本丸々飲んじゃえ“I wonder what this red button do?”「この赤いボタン押したら,どうなんのかなァ?」(繰り返し ※×2)Dress up like a moose during hunting season狩猟シーズンには,ヘラジカの扮装しちゃえDisturb a nest of wasps for no good reasonスズメバチの巣には,訳もなく手を出してみようStand on the edge of a train station platform駅ではホームの端っこに立っちゃえDrive around the boom gates at a level crossing踏切では遮断機をよけて車で強行しちゃえRun across the tracks between the platforms駆け抜けちゃえ,ホームの間の線路They may not rhyme but they’re quite possiblyこのあたり,韻は踏んでないかもだけど,たぶんきっとDumbest ways to die, Dumbest ways to dieおバカな死に方一等賞,おバカな死に方一等賞Dumbest ways to di-i-i-ieおバカな死に方一等賞So many dumbほんとにいろんな,So many dumb ways to dieほんとにいろんな,おバカな死に方"Be safe around trains. A message from Metro."「線路の近くでは気をつけよう メトロ社より」twitter では,Happy Tree Friends,いわゆるハピツリに言及している人が多いようだけど,グロシーンを単純な絵柄で何とか見られるものにする,という手法は,South Park の Kenny 殺害ネタも思い出させる。また,Dumbest Ways to Die という発想そのものは,ほぼ間違いなく,Darwin Award (ダーウィン賞:年間で最もおバカな死に方をした人たちに与えられる賞,映画化もされている)が下敷きだろうと思う。直接の影響関係はなさそうだが,ほかに僕が連想したのは,同様に脚韻を踏んでいるエドワード・ゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち』(子どもたちがアルファベット順に1人ずつ死んで/殺されていく),ポール・サイモンの“Fifty Ways to Leave Your Lover”のサビ(テンポのよい命令文の羅列),そして,ティム・バートン「ビートルジュース」(あの世の役所で,死者たちが自分が死んだときのままの姿で,順番待ちをしたり勤務したりしている)あたり。『ギャシュリークラム』は,英語版 Wikipedia の該当ページで引用された紹介記事でも(ダーウィン賞とともに)しっかりふれられていた。で,実を言うと,(すでにほぼ回復しているが)一目見たときから,僕はこの Dumb Ways to Die がツボでツボで,フリータイムは可能な限り眺め続け,そうでなくてもずっと頭の中で流れているという,かなりヤバい状態だったのだ。実際,「不思議な中毒性」がある,と紹介している記事もあり,YouTube に寄せられるコメントを見ても,そういう人は少なくないらしい。YouTube には,DWTD がひたすら繰り返される1時間バージョンまでアップされている。僕は基本的にはダーク・コメディのファンなのだけれど,かといって,ハピツリやサウスパークが特段好きなわけではない。それがなぜこの歌と動画にだけここまで中毒してしまったのか,つらつら考えてみて,2つ,思いついたことがあった。一つは,我々には,実際の死を体験することはなかなかできないにしても(当たり前だ),いわゆるヒヤリ・ハットだとか,あるいは「死ぬかと思った」体験だとか,そこまで大げさではないにしても,仕事なり対人関係なりで,「しまった」「うわ,最悪」「ああもう,時間を巻き戻したい!」と思うような失敗やら災難やらは,しょっちゅう体験しているわけで(僕だけ?),そういった体験や記憶に対する一種の「防衛反応」として,仮想的な「死の瞬間」を,いわば“安全化された形で”,つい繰り返し眺めてみたくなってしまうのではないかということ。もう一つは,これはズバリ,普段は僕らが心の底に押し隠している「死」乃至「死者たち」に対する,包括的な「喪 mourning」乃至は「悼み」のプロセスの一環なのではないかということだ。おバカな原因によるものではなくとも,我々はこれまでの人生の中で,何人もの知人や近親者を亡くしてきている。高2の夏休み,1か月の海外ホームステイから帰った僕は,祖母が日舞のお稽古中に心筋梗塞で他界したことを聞かされた。高校の部活の2コ上の先輩Aさんは,卒業後数年で首を吊ったが,動機までは伝わってこなかった。父が死んだからすぐに帰郷するように,という実家からの連絡を聞いたのは,ある年の夏の,花火大会の夜のことだ。先日,大学の同級生の名前を何の気なしにぐぐったら,目に飛び込んできたのは,彼を「しのぶ会」(1年以上前の)の告知だった。知人や近親者の死の知らせは,多かれ少なかれ,何らかの傷を残す。僕のように,小さいころにはじめて「人は皆,一人の例外もなく,いつかは死んでいなくなる。自分もそうなのだ」ということに気づいたときのショックをうまく処理できず,それを引きずったままおっさんになってしまった人間にとっては,なおさらである。予期も希望もせぬ死に遭遇したキャラクターたちが,諧謔と切なさ,楽しさと冷淡が入り混じったような柔らかいメロディーに乗って,その苦痛も驚きも後悔も忘れ去ったかのように,すべて吹っ切れたように,心底楽しそうに無邪気に歌って踊る光景は,だから,ある種の「救い」であり,「癒し」なのだろう。この歌と動画の本来のメッセージ(Be safe around trains.)とはもはや何の関係もなく,天国のイメージのような効果,厳密に言うと,天国や極楽のイメージがおそらくそれを癒すことを目的として創出されたその同じ「傷」を癒す効果が,この画像には確かにあったのだろう--少なくとも,僕にとっては。もちろん,それによって(他人なり自分なりの)死が,いささかなりとも魅力的なものになる訳ではないけれど,多少飲み込みやすいものにはなったんじゃないかと思う(最後に,轢断3兄弟の3人目が,ぽろりと“半身”だけ倒れるところで,死はやはり死なのだ,ということをぞくりと悟らせて終わらせるあたりは,もう出来すぎと言うほかはないのだけれど)。そう考えると,この,色とりどりのジェリー・ビーンズやコロッケのような dumb people の姿は,もしかしたら,人の「魂」の形なのかもしれない,と思う。
2012年12月07日
コメント(0)
(旧「ハリハリ資料室」001「ハリネズミとは?」後半部より改稿)■ ハリネズミとは? ■・科と種 哺乳類の真無盲腸目 Eulipotyphla (食虫目 Insectivora ) ハリネズミ科 Family Erinaceidae は,ハリネズミ亜科 Subfamily Erinaceinae とジムヌラ亜科 Subfamily Hylomyinae に分かれる。ハリネズミとは,ハリネズミ亜科に分類される動物のことである。ジムヌラ亜科に属するジムヌラ(ムーンラット)は,東南アジアに分布する,ハリネズミと近縁の動物だが,針が未発達で,ハリネズミのように全身針だらけではない。 現生のハリネズミ亜科14種は,かつては4属に分類されていた。現在は5属に分けられるが,この14種のうち,一般によく親しまれているものは,数種に限られる。 ヨーロッパでよく知られているのは,どこかタヌキっぽい顔立ちをしたナミハリネズミ(ヨーロッパハリネズミ)West European hedgehog (学名 Erinaceus europaeus )である。西ヨーロッパでは人家近くにも棲息するので,人々によく親しまれている動物である。絵本に登場したり,ぬいぐるみになっているのも,多くはこのナミハリネズミである。 東アジアに棲むマンシュウハリネズミ Manchurian hedgehog (学名 Erinaceus amurensis )は,ナミハリネズミと同じハリネズミ属 Erinaceus に属し,ユーラシアの西端と東端に分布域が分かれているにもかかわらず,外見上もほとんど区別がつかない。人間の手によって持ち込まれたものが日本各地で野生化し,「侵略的外来種」として問題になっているものは,この種であると思われる。 一方,ペットショップで「ピグミーヘッジホッグ」等の名で売られている小型のブリーディング種は,アフリカハリネズミ属 Atelerix のヨツユビハリネズミ A. albiventris という種だ。本来はアフリカの砂漠地帯に暮らす種である。日本で個人が飼育しているハリネズミは,ほとんどがこの種であると考えて間違いない。 ほかには,大きな耳が愛嬌を感じさせる,オオミミハリネズミ属 Hemiechinus のオオミミハリネズミ H. auritus もペットとして出回っており,画像なども,ヨツユビハリネズミについでよく見られる。・ 形状と習性 ハリネズミの特徴と言えば,何と言っても背中一面を覆う針である。 危機に際しては体を丸めて頭と四肢を隠してしまい,全身の針を立てて身を守る。針の長さは2~3センチ弱である。 体長は種によって異なるが,西ヨーロッパに分布するナミハリネズミで20~30センチ,ペットショップでよく見られるヨツユビハリネズミで14~21センチになる。 丸まった状態で,体を揺する程度のことはできるが,自分の力で長い距離を転がることはできない。また,その針で敵を攻撃するなどということもまずない。 昆虫やミミズ,ナメクジなどを主に食べるが,他の多くの食虫類とは異なり,植物質のものも口にする。 寒い地方では冬眠するが,乾燥地帯に棲むものには,夏に夏眠をする習性がある。・分布 14種のハリネズミは,ユーラシアとアフリカ--具体的に言えば,朝鮮半島・中国を含む東アジアから中央・東南アジアを経て中東地域までのアジア,さらに西はブリテン諸島,南は南アフリカに至るヨーロッパ・アフリカ大陸,要するに,シベリアを除く旧大陸ほぼ全域にわたって分布する。一方,南北アメリカ大陸やオーストラリアには自然分布しない。 森林や草原,乾燥地帯のほか,分布地域の多くでは,人家の近くにも棲息し,身近な小動物として親しまれている。 上記のように,中国・朝鮮半島に分布する一方で,日本には,先史時代の化石は発見されているものの,現在は自然分布しない。だが,一部地域では,静岡県の伊豆地方や神奈川県の小田原市などいくつかの地域で,ペットとして輸入されたマンシュウハリネズミの帰化が報告されており,それらの地域では,人家の近くでも野生化したハリネズミの姿が見られることがあるが,国や地方自治体によって,駆除が進められている。また,ニュージーランドにも,人為的に放されたナミハリネズミが定着している。・人とのかかわり ヨーロッパでは,ハリネズミはウサギなどと同様のありふれた小動物で,絵本や物語にもしばしば登場する。 そのわりに,たいていの場合は人畜無害な小動物として,あまり関心を払われてこなかったようだ。ほぼ唯一の例外は,ロマ(いわゆるジプシー)の人々で,彼らはある種のシンパシーと思い入れをもって,ハリネズミを愛するとともに,彼らを特別のご馳走として,食膳にも供してきた。ヨーロッパのハリネズミは,街中では道路の横断中に車に轢かれるようなことも多く,最近では,自然保護に関心の高い英国やドイツで,要保護動物として注目されている。 日本では,1990年代後半あたりからか,ハムスターを中心とする“ネズミ系”人気の高まりの中で,ペットショップなどでも普通に見られるようになり,飼っている人もそれほど珍しくはなくなっている。同時に,テレビCM等やさまざまなグッズの意匠にも,しばしばハリネズミの姿が見られるようになってきている。(2001.09.18. 最終推敲:2011.06.29.)
2011年06月28日
コメント(0)
(旧「ハリハリ資料室」001「ハリネズミとは?」前半部より改稿)■ 真無盲腸類について - ハリネズミは何のなかまか - 3/3 ■ さて,「原始的な食虫性の小型哺乳類のグループ」として位置づけられた「食虫類」だが,研究が進むにつれて,何度もメンバー・チェンジを余儀なくされた。もともと,進化の系統についての仮説よりは,外面的な形態や生態の単純な類似性によって,1つにまとめれたグループであったから,当然と言えば当然のことである。その過程で,「食虫目」の正式名称が「無盲腸目」になったりもしたのだが,このあたりはなかなか煩雑なので,Wikipedia の「モグラ目」の項目に譲りたい(誰かそれなりに専門的な知識のある人がまとめてくれたらしく,なかなか立派な内容となっている。僕あたりでは,とてもああはいかない)。 ともあれ,20世紀後半になると,「食虫目/無盲腸目」は,メジャー・メンバーとしてはモグラ類・トガリネズミ類・ハリネズミ類,マイナー・メンバーとしてはキンモグラ類・テンレック類・ソレノドン類,3科×2で計6科の現生哺乳類からなるグループとなっていた。しかしこのグループは,その後,解体されることになってしまったのである。 実は20世紀と21世紀の変わり目のころには,食虫目に限らず,哺乳類の「目」そのものの一部が,大きく組み替えらている。一例として,「鯨偶蹄目(げいぐうていもく/くじらぐうていもく)」という新たなグループの成立を挙げることができるだろう。ウシやヤギ,カバ,イノシシなどからなる「偶蹄目」と,クジラやイルカの仲間である「鯨目」が,一つの目にまとめられ,「鯨偶蹄目」となったのだ。これは,偶蹄目の中心グループに属するウシなどの動物から見たときに,同じ偶蹄類のカバなどよりも,別の目に分類されていたクジラ類の方が,系統的にはむしろ近縁であることがわかり(この発見は,日本のある研究グループによるものだ),「偶蹄目」というグループが,系統分類学上,意味を持たない概念となってしまったためである。 分子生物学が哺乳類の研究にもたらした,最も大きな知見の一つは,現生哺乳類のうち,ハリモグラなどの「単孔類」・カンガルーやコアラなどの「有袋類」のグループを除いた「真獣類」(=胎盤をもつ哺乳類)と呼ばれる最大グループが,進化系統的に見ると,大きく4つのグループに分けられることを明らかにしたことだろう。ゾウ類などの「アフリカ獣類」,アルマジロなどの「異節類」,齧歯類や霊長類などを含む「真主齧類」,そして,食肉類や偶蹄類・鯨類などを含む「ローラシア獣類」の4つである。 この4つの系統グループは,もともとは「パンゲア」という一つの超大陸にまとまっていた地球上の陸地が,その後,大陸移動によってバラバラに分かれていった際に,各大陸塊に別れ別れになった哺乳類たちが,それぞれ独自の進化を遂げたために生まれたものと考えられている。 この新しい「4大グループ」の概念によって,息の根を止められることになったのが,他ならぬ我らが「食虫目」というグループだった。何しろ,「食虫目」を構成する6つのグループのうち,トガリネズミ科・モグラ科・ハリネズミ科・ソレノドン科の4つは「ローラシア獣類」,現在もアフリカを生息域とするテンレック科・キンモグラ科は「アフリカ獣類」と,別々のグループに属することがわかったからである。進化上の系統が異なる以上,これら6つのグループが一つの目にまとまることはあり得ない。そこで,アフリカ獣類とされた2グループを「アフリカ食虫目」として分離し,ローラシア獣類とされた残り4グループは「真無盲腸目」としたのである。先に書いたように,「食虫目」はこれより以前に正式名称を「無盲腸目」と変えていたから,「真食虫目」ではなく「真無盲腸目」となったわけだ。※ ついでに言えば,この「真~」というタイプの分類名は,ここ最近,特によく見られるようになった。一種,流行りの分類名と言ってもよい。 これは,研究の進展によって新設されたグループ名に,よく見られる名前である。つまり,たとえば仮に「○○類」というグループがあったとして,新たな研究によって,そのうち一部の種が,実は本来,別の系統に属するものであることがわかった,というようなときに(もちろん,「真無盲腸目」はこの例である),それらの“よそ者”を除いた新しいグループを,旧来の「○○類」(この分類名はすでに無効なので,廃止されることになるわけだが)と区別するために,「真○○類」と命名し直すのである。 もう一つのパターンとしては,ある大グループの中の一部が,そのグループだけの独自の特徴を共有し,一つの独立した系統をなしていることがわかったときに,その新しく判明したより狭いグループを「真○○類」とするようなこともある。 なお,上記のWikipedia 「モグラ目」の項によれば,かつて R. Saban (1954) という研究者は,形態を用いた系統学的解析により,「無盲腸目(食虫類)の中ではハリネズミ科が他より離れている」とし,無盲腸目を「ハリネズミ型亜目」(ハリネズミ科)と「トガリネズミ型亜目」(その他全て)に分けた。この旧分類を継承して,「真無盲腸目」を「ハリネズミ目」(ハリネズミ類)と「トガリネズミ目」(トガリネズミ類+モグラ類+ソレノドン類)に分ける考え方が提唱されたことがある(Wilson and Reeder, Mammal Species of the World, the 3rd ed, 2005)。 この考え方によれば,ハリネズミ類は,単独で一つの「目」を構えることになる。つまり,分類上の“格”としては,ハリネズミ類だけで,イヌ,ネコ,イタチ,クマ,アシカなどを含む「食肉目」や,かつての偶蹄類と鯨類を包摂する「鯨偶蹄目」などと“同格”に並ぶことになってしまうのだから,これは言ってみれば,なかなかの“快挙”だった。 だが,残念ながら,この分類は,大きな支持を得るには至らず,今後も認められることはなさそうである。なぜなら,最新の分子系統学的研究によれば,下のような系統関係が示されているからだ(Roca et al. (2004), Mesozoic origin for West Indian insectivores. Nature, vol. 429, pp. 649-651)。 真無盲腸目(現生) = ソレノドン類 + {モグラ類 + (トガリネズミ類 + ハリネズミ類)} つまり,真無盲腸類のグループから,まずソレノドン類が,次いでモグラ類が分岐し,最後にトガリネズミ類とハリネズミ類が分化した,ということである。この研究が正しいとすれば,現生真無盲腸類の中で,他のグループとの共通点の一番少ないのは,ハリネズミではなく,ソレノドン類ということになる。また,ハリネズミ類はトガリネズミ類と「姉妹群」で,最も多くの共通点を持つことになる。ハリネズミが最も特異である,とした Saban の分類は,およそ見当違いということになってしまうのだ。 (2001.09.18. 最終推敲:2011.06.27.)
2011年06月26日
コメント(0)
(旧「ハリハリ資料室」001「ハリネズミとは?」前半部より改稿)■ 真無盲腸類について - ハリネズミは何のなかまか - 2/3 ■ 「真無盲腸目」を構成する残り2つのグループは,モグラ類とトガリネズミ類である。どちらも,ソレノドンとは違って,日本国内に複数の種が分布しているという意味でも,世界的にはさらに多くの種が広い範囲に生息しているという意味でも,立派なメジャー・グループである。しかし,「真無盲腸類」の中で,我々にとって最も身近なものということになると,どうしたってトガリネズミに勝ち目はなく,モグラどんに軍配が上がることになる。現にかつての「食虫目」も,「文部省式カタカナ目名」では,「モグラ目」となっていた。※ ここで,「文部省式カタカナ目名」について説明しておく。 かつて,当時の文部省(現在の文部科学省)が,お節介にも生物の「目名」を勝手に“わかりやすく”書き換えようとして,問題になったことがある。哺乳類で言えば,たとえば「食肉目」を「ネコ目」,「偶蹄目」を「ウシ目」という具合に,とにかく身近な生き物の名前で代表させようとしたのだ。そのように名前を改めることを,文部省は各学会に対して(強制力はないものだから)“推奨”したのである。 僕に言わせれば,これは「程度を下げてやれば,愚かな国民どもも喜んで,少しは科学に興味を持つようになるだろう」という,文字通り“人を馬鹿にした”施策であった。その発想は,「少数の計算は難しいので,円周率は『ほぼ3』とする」とか,「台形の面積公式は長くておぼえにくいので,小学校では教えない」とかいった,当時の「ゆとり教育」とも通底するもののように思えてならない。そこには,「課題は難しければ難しいほど嫌われ,易しければ易しいほど歓迎される」という,何ともお粗末な人間観が透けて見える。文部省職員の“教育観”が,この程度の基礎の上に築かれているとすれば,本当に恐ろしいことであると思う。 文部省によるもう一つのお節介施策である「常用漢字」制度から発生したのが,あのみっともない「混ぜ書き」の習慣である(常用漢字が「漢字の全廃」という驚くべき最終目標への途中過程として定められた制度であることは,どの程度知られているのだろう? 「常用漢字」の前身である「当用漢字」は,漢字全廃までの“当”面の間“用”いることにする漢字,ということである。そんなことが本気でやりたいなら,文科省は1か月間ばかり,全文書をかな書き乃至ローマ字書きのみでやりとりする実験を実施してみるといい。その不便,その不合理を,率先して,身を以て体験すればよいのだ)。これによって,「哺乳類」は「ほ乳類」,「爬虫類」は「は虫類」となったし,「齧歯目」は原則として「げっ歯目」と表記されることになった。ついでに言えば,「両棲類」が「両生類」に改められたのも,「棲」の字が常用漢字からもれたためである。 なるほど,「齧歯目」を初見で読めというのは,ちょっと厳しい要求かもしれない。だが,ルビ(ふりがな)をふれば何の問題もないし,わからなければ人に訊いてもいいし,ものの本に当たってみてもよいのだ。それを咎める人は,誰もいないはずである。ところが,「げっ歯目」などという表記にしてしまっては,「げっぱめ」と読んでください,と言っているようなものではないか。嘘だと思ったら,一度「げっぱめ」で検索をかけてみてほしい。いったい何件のヒットがあるか。こんな阿呆らしい誤読を誘導しているのが,他ならぬ我が国の教育・文化の所管省庁なのだから,まったくもって畏れ入るほかはない。お試しついでに,お手許のワープロソフトで「げっしるい」と打ち込んで,変換してみていただきたい。「げっ歯類」は出るが,「齧歯類」は出ないはずだ。なんと,お上によるメーカーへのご親切な「指導」のおかげで,我々は,正しい用字を知る機会そのものを奪われているのである。規制緩和が聞いて呆れる。これを「衆愚政策」と言わずして,何と言えばよいのだろう。 話が逸れたが,「文部省式カタカナ目名」については,Wikipedia の「哺乳類」の項に,僕が以前(あの界隈で尊重されている「中立性」にも,できる限り配慮しながら)執筆した記事が,おおむねそのままの形で残されているので,ここではこれ以上書かない。ただ,僕は自分の文章の中では,旧来の目名を用い,原則として文部省式カタカナ目名は採らないことを,ここに断っておく。 さて,かつての「食虫目」なり,現在の「真無盲腸目」なりを説明する言葉として,最も明快なのは,やはり「モグラのなかま」という一言だろう。実際,この説明は,ウェブ上でもあちこちで見ることができる。これも「文部省式カタカナ目名」の「モグラ目」と同じ発想で,わかりやすく明快に表現したつもりなのだろうが,おかげでかえって,あらぬ勘違いが横行することになってしまった。 つまり,「モグラのなかま」というのは,もちろん「モグラと同じグループ」ということなのだが,迂闊な人や素直すぎる人がこれを見ると,これ即ち「モグラの一種」ということかと思い込んでしまうのだ。実際には,ハリネズミはハリネズミ科,モグラはモグラ科で,同じ目に属してはいても,まぎれもなく別のグループである。普通に考えれば気づきそうなものなのだが,そこが迂闊な人の迂闊な人たる所以であろうか。現にウェブ上でも,「ハリネズミはネズミではなく,モグラです!」なんて,得々として書いてしまっている人が,少なからずある。喩えて言うと,「リスはネズミです」とか,「人間はチンパンジーです」とか,「トラはライオンです」とか,「チワワはセント・バーナードです」とか言うようなもので,実に乱暴極まりない早とちりなのだが,これも,「わかりやすい」表現は,往々にして,まったくわかりやすくない,ということの一例と言ってよいかと思う。 ところで,ハリネズミの属するグループは,なぜ「食虫目」から「真無盲腸目」に変わってしまったのだろうか。それは,それまで一つのグループであると思われていた「食虫目」が,最近になって,実は系統のまったく異なる2つのグループの混成軍であったことがわかり,あらためて「真無盲腸目」と別のグループとに分けられたためである。 哺乳類(に限らないが)の分類について,必ず言っておかなければならないのは,1990年ごろから,つまり,ここ20年ほどの間に,この分野の研究が非常に大きな進展を果たし,分類群についての専門家の考え方が,それまでとはかなり大きく変わってしまった,ということだ。簡単に言えば,遺伝子レベルの研究が進み,現生生物の進化的な系統が,それまでよりもずっと高い正確さで確かめられるようになったのである。 現生哺乳類は,従来,「偶蹄目」「霊長目」「食肉目」など,「目(もく)」と呼ばれる20あまりのグループに分けられていた。哺乳類に限らず,「界」→「綱」→「目」→「科」→「属」→「種」というのが生物を分類するときの基本的な階層で,右に行くほど細かくなり,最小単位は,原則として「種」である。これに,「亜~」「下~」といった“枝”を付けて運用する(「種」の下に「亜種」,その下には「変種」が来る)。「哺乳類」も正式な言い方では「哺乳綱」であり(「~類」というのは,「~のなかま」というほどの意味で,特定の分類階層を指す言葉ではない),「綱」の次に来る分類階層が「目」ということになる。 すでにふれたとおり,ハリネズミが属していたのは「食虫目」で,これは,昆虫類--より正確に言えば,“昆虫類をはじめとする無脊椎動物”(たとえば,ハリネズミが捕食するミミズやナメクジは,いわゆる“ムシ”ではあっても,「昆虫」ではない)--を主な食物とする,比較的原始的な哺乳類のグループである。 現生哺乳類の祖先となった,中生代の“原始的”な哺乳類の哺乳類の多くは,巨大な爬虫類の闊歩する「恐竜の王国」にあって,昆虫類,いや,“昆虫類をはじめとする無脊椎動物”を,言わば夜陰に乗じて,こそこそとあさる生活を送っていた,と考えられる。 哺乳類の大きな特徴である「保温性」は,変温動物が苦手とする「夜間」というニッチ(隙間)を攻略するための,強力な武器であっただろう。ある程度気温が下がると,変温動物の体温もそれに応じて下がり,体を動かすことができなくなってしまうのだ。恒温動物である(大部分の)哺乳類には,その心配がない(例外として,哺乳類の中でもコウモリ類やヤマネなど一部の小動物は,ある程度気温が低下すると体温が下がり,冬眠に入ることが知られている)。 しかし,高い体温を維持するには,多くのエネルギーを要するから,カロリーの高い食料を,絶え間なく摂り続ける必要が生ずる。その難しい条件を可能にしたのが,「昆虫食」という選択であった。昆虫類は,植物質の食料の大部分よりはるかにカロリーの高い動物蛋白である。しかも,地上に存在する「バイオマス」(生体の総量)が非常に大きいので,一旦それに合った生態と形態さえ確立してしまえば,大量摂取も不可能ではない。つまり,やや乱暴に言えば,「食虫類の生態」こそが,中生代という長い雌伏の時代を通して,哺乳類の存続を可能ならしめ,次に来る「哺乳類の時代」を準備した,高度に有効な戦略であったのだ。 なお,中生代のすべての哺乳類が「食虫目」グループに属したわけではないということ,哺乳類に限らず,恐竜をはじめとする主竜類(鳥類もここに含まれる)も,ある程度の恒温性を獲得していたらしいということの2点を,念のため付記しておいた方がよいかもしれない。実のところ「食虫目」は,あくまで原始真獣類に多く見られた特徴を現在まで残した,1つのグループに過ぎない。中生代の哺乳類にも,ムシ類以外の食物,たとえば脊椎動物(恐竜の子供など)を捕食したものがあったことが知られている。また,体温調節は,哺乳類の得意分野ではあっても,専売特許というわけではない。(続く) (2001.09.18. 最終推敲:2011.06.27.)
2011年06月26日
コメント(0)
(旧「ハリハリ資料室」001「ハリネズミとは?」前半部より改稿)■ 真無盲腸類について - ハリネズミは何のなかまか - 1/3 ■ まず,これだけははっきりさせておこう。 「ハリネズミは,ネ ズ ミ の 仲 間 で は な い 」 もう一つ,明言しておかなければいけないことがある。 「ハリネズミは,モ グ ラ の 一 種 で も な い 」 読者諸賢におかれては,何を措いてもこの2点だけは,くれぐれもしっかりと弁えておいていただきたい。これら2点は,我々があまりにも頻々と目にする,ハリネズミに関する悲しい誤解に対する,真摯なる異議申し立てなのだ。 順に見ていこう。まずはネズミについてだが,彼らは昔から,「齧歯目(げっしもく) Rodent 」というグループに分類されてきた。門歯(前歯)が一生伸び続けるので,絶えず何か硬いものを齧り続けていなければならない動物のグループである。もしも齧るものが見つからなければ,伸びきった前歯が下あごにつっかえて口が閉じられなくなり,ものが食べられなくなってしまう。不便なことだと思われるかもしれないが,食性の関係で,いつも硬いものを齧っているという生態をもつ動物にとっては,こうした歯は,むしろ都合がいいと考えられる。歯というのは,硬いようでも,使っていくうちにどんどん磨り減っていくものだ。かつて,馬を商う者は,馬の口の中を調べて,歯のすり減り具合からその年齢を知ったという。草食動物である馬にしてそうだから,ネズミのように硬いものばかり齧っていると,摩滅していつかはなくなってしまうはずだ(なるほど齧歯類の寿命は,大して長くはないが,体が小さい分,歯そのものもひどく小さいのだということを忘れてはいけない)。歯がなくなってしまえば,ものが食べられなくなるわけだから,その個体は飢え死にしてしまうしかない。歯が伸び続ける,というのは,ネコ類の爪と同じで,それを必要とする生活に対応した特徴であり,紛れもなく自然選択(自然淘汰)の賜物であると言える。ときどき,人家に住まうネズミが,この何万年来の習性に忠実にふるまうことによって,自らの寄食する家の中の電線を齧り,結果,漏電による火事の原因となってしまうのは(このとき,ネズミ自身もたいてい感電死してしまうようだが),ひとえに彼らの生活域にそんな剣呑なものを勝手に設置しておいた人間様の,無精横着不見識によるものであると言える。猫を追うより皿を引け,とは,至言ではないか。 一方,ハリネズミは,かつては「食虫目(しょくちゅうもく) Insectivora 」とされたが,それが解体された後,現在は「真無盲腸目(しん・むもうちょうもく)」というグループに分類されている。旧グループ名からわかるように,主に「ムシ」を食べて生きている。やわらかいムシ類を餌とする以上,その門歯には,一生伸び続ける性質などないし,硬いものを齧り続ける必要も,当然ない。ハリネズミのオーナーさんたちにとっては,わざわざ言われるまでもないことだろう。 つまるところ,「齧歯目」のネズミと,「食虫目」改め「真無盲腸目」のハリネズミは,異なるグループのメンバー同士である。ハリネズミは,ネズミの兄弟でも親戚でも,何でもないのだ。※ 齧歯目に属する動物のグループとしては,圧倒的な巨大グループであるネズミ類と比べればはるかに慎ましい小所帯だけれど,ほかにリス類やビーバー類などがある。いずれも,よく目立つ前歯を持った動物たちである。伸び続ける門歯もその一例だが,形態的にも生態的にも,齧歯目は食虫目より,一段階高度な進化を遂げたグループであると言える。 そもそも,我々がネズミを無意識のうちに「小型哺乳類の代表」と考え,ハリネズミやトガリネズミのような,分類学上は別グループに属する動物まで,無頓着に「ネズミ」の名で呼んでいるのは,「家ネズミ」と総称されるドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの3種が,人家の中にまで生活域を広げ,その結果,我々にとって家畜類の次くらいに“身近な”哺乳類となっていることによるものと言える。 このこと自体,ネズミ類の高度な適応力の一つの現れと言ってよいだろうが,そのような齧歯類の特徴のために,人家の中に侵入して暮らす小器用さなどは持つべくもない,愚直で素朴な食虫類の動物たちにまで「ネズミ」の名が与えられることになったのは,幾分皮肉な話ではある。 もっとも,これは日本語に限った話で,たとえば英語では,ドブネズミやクマネズミは rat,体の小さなハツカネズミは mouse と呼ばれるのに対して,トガリネズミは shrew,ハリネズミは hedgehog(生垣の豚)であって,互いに何の関係もない。 また,「食虫目」よりさらに“原始的”な現生の哺乳類としては,卵を産む唯一の哺乳類である「単孔目」と,卵こそ産まないものの,胎盤をもたず,育児嚢(いくじのう)と呼ばれる袋で子どもを育てる「有袋類」のグループとがある。有袋類は,かつては「有袋目」として一つの「目」と見なされていたが,現在では,「真獣類」と並ぶような,より上位のグループと見なされるようになり(「有袋類」と厳密に同じ意味というわけではないが,現在は「後獣類」というグループ名で呼ばれることも多い),さらにいくつかの「目」に分割されている。 単孔目には,「ハリモグラ」と呼ばれる動物がいる。単孔目のハリモグラは真無盲腸目のモグラの名を騙り,真無盲腸目のハリネズミは齧歯目のネズミを僭称する。思うに,どうも動物たちは,より“原始的”でない,進化の階梯を一段登ったグループの名前で呼ばれたがる傾向があるようだ。もっとも,齧歯目のハリハリ動物である「ヤマアラシ」だけは,何をねらったものやら,皆目見当もつかないのだが。 では,ネズミの仲間でないとすれば,ハリネズミはいったい何の仲間なのだろう? 「真無盲腸目」には,ハリネズミのほかに,トガリネズミ類とモグラ類,それにソレノドン類の,3つのグループが属している。このうち,あとの2つはともかくとして,ソレノドンについては,何やら耳慣れない名前だと思われる向きが多いのではないだろうか。もしかしたら,遠い昔に地上から姿を消してしまった古代生物のような名前だ,と思われるかもしれない。 どっこい,ソレノドンは,カリブ海の西インド諸島で,細々と,わずかに2種だけではあるが,今でも立派に暮らしている,現役の哺乳類である。カリブの海賊たちは,ディズニー映画の中でしか生き残れなかったかもしれないが,ソレノドンたちはまだ滅びてはいないのである。 そもそも,「~オドン -odon 」というのは,ギリシャ語で「~の歯」という意味だ。恐竜の化石というのは,たいていは骨と歯しか残っていない。だから,世界ではじめて化石が発見された恐竜の一つである,由緒正しき「イグアノドン Iguanodon (イグアナの歯)」をはじめ,「~の歯」という名称の恐竜が少なからず生まれているのは,(ユダヤ教やキリスト教の天使の名前が「~エル -el 」(神の~)というものになりやすいのと同じく)無理からぬ話だと思われる。ついでに,特撮番組なんかの「怪獣」の名前にも「~ドン」というものがあるが,これは恐竜の学名からヒントを得たのが半分,語呂で決めたのが半分といったところだろう。 何にせよ,ソレノドンが,動物園でもまずお目にかかれない珍しい動物であるばかりか,たとえ千歳一遇,盲亀浮木の大幸運でもって出会うことができたとしても,3秒で記憶から消えてしまいそうなくらい地味な動物である以上,一般の人にとって馴染みが薄いのは,どうにも仕方のないことだろう。ソレノドンの成獣は実に30センチを超え,体重も1キロほどになるから,「ネズミにしてはえらく大きい」とか,あるいは「鼻先が妙にとんがっている」という程度の印象は与えるだろうが,せいぜいその程度である。 実は,ソレノドン類には一つだけ,一見したところでそれとわかるわけではないが,哺乳類としてはたいへん珍しい特徴がある。それは,毒をもつということだ。「ソレノドン Solenodon 」とは「溝のある歯」という意味である。ソレノドンは唾液に毒を持ち,その毒は門歯にある特殊な溝によって,獲物の体に注入されるのだ。 哺乳類には毒を持つものが珍しく,ソレノドンのほかには,やはり餌を採るために唾液に毒を持つ一部のトガリネズミ(北米に生息するブラリナトガリネズミなど)と,オスの個体が蹴爪に毒腺を持つカモノハシのみであるという。とはいえ,ソレノドン類の毒は,餌とするムシ類の動きを鈍らせるためのもので,人間に対してはほとんど効力をもたないというから,やはり決定的なインパクトという意味では,どうしても見劣りがしてしまう。(続く)
2011年06月26日
コメント(0)
★旧「ハリハリ資料室」記事タイトル一覧(全216項目) 001 ハリネズミとは?[0]ハリネズミの動物誌 002 滅びゆく謎のハリネズミ 003 ねむいねむい はりねずみ 004 これはヤマアラシではない 005 ハリネズミの天敵たち 006 最古のハリハリ動物学 007 ブタの鼻・イヌの鼻 008 東アジアのハリネズミ 009 体内器官 010 “虫食い屋”というグループ [1]ハリネズミの画像 011 ハリネズミのシグネチャ 012 秋山豊英さんの木版画 013 CGハリネズミ大活躍 014 借り物素材集 015 MS的ハリネズミ 016 筆まめ的ハリネズミ 017 衰退の理由 018 ちびギャラリーの 019 へっぽこハリたち 020 ぽたらの木 [1.5]ハリネズミの 図像学・考古学 021 紋章とハリネズミ 022 疑惑のネズミ1号・2号 023 古代エジプトのハリネズミ 024 古ヨーロッパの女神と 025 ハリネズミ土器 026 最古のハリネズミ土器 027 古代の工芸品をゲット! [2]ハリネズミと人間 028 飼育の伝統 029 「イヒ」の効用 030 英国ハリネズミ受難事情 031 元祖・ハリネズミ病院 032 ドイツの森のハリネズミ 033 その他のハリの用途 034 韓国のハリハリ・サイト 035 冷凍・解凍時の諸注意 036 日本に帰化したハリネズミ 037 水戸黄門とハリネズミ 038 ハリネズミを最も愛する民族 039 蛋白源としてのハリネズミ 040 カルトなサイトと呼ばないで [3]ハリネズミ・針鼠・波利禰豆美 041 「くさふ」って何だ? 042 ハリネズミを漢字で書けば 043 各国語の「ハリネズミ」 044 各国語の「ヤマアラシ」と「ウニ」 045 嵐の中のウニ小僧? 046 トンパ文字のハリネズミ 047 ハリネズミと呼ばれるもの 048 ハリネズミと呼ばれる兵器 049 ハリネズミと呼ばれる遺伝子 050 ヘッジホッグと呼ばれる部品 051 ハリネズミ島 052 失敗作・ハリハリ・カー 053 必殺技・ハリネズミ刺し 054 ヘッジホッグと呼ばれる植物 [4]トゲのある登場人物たち 055 ハリハリ本のリスト1 056 ハリハリ本のリスト2(作成中) 057 ハリハリ本のリスト3(作成中) ココロ本 058 トントのセラピー 文学 059 サキによるアンチ怪奇小説 060 帝政ロシアの寓話詩 児童書 061 アルマジロの作り方 062 オギーの成長 063 マックス&ノートン 064 ラッテの冒険 065 ムーミン谷のハリネズミ 066 ハリネズミと森のともだち 067 だれも死なない 068 ティム・ラビットとハリたち 069 舟崎作品のハリネズミたち 070 フクロハリネズミたちの運命 071 北の森のハリネズミ 絵本 072 洗濯屋のティギーおばさん 073 むぎばたけ 074 リトル・グレイ・ラビット 075 しずかな おはなし 076 フォックスウッドものがたり 077 ハンナのすてきな?ホテル 078 帰ってきたケースとケーチェ 079 ミッフィーの本名 080 きりのなかの はりねずみ 081 そらのさんぽ 082 たとえば僕が死んだら 083 バーバモジャの友達 084 朝御飯にはハリネズミさんを 085 てぶくろ付き「てぶくろ」 086 森の仕立屋たち 087 はりこの悩み 088 コッテンの成長 089 ピックルの孤独 090 くるりんの挑戦 091 バーナデットの絵本 092 ヨーロッパの絵本 漫画 093 はりはりハリ太郎 094 怪盗セイント・テール 095 ソファーとハリネズミ ゲーム 096 超音速の青い猫 097 どうぶつの森の仕立て屋姉妹 098 ゲームの中のハリネズミ 映像作品 099 霧につつまれたハリネズミ 100 ストーリー・テラー 101 ミート・ザ・フィーブルズ 102 北朝鮮のアニメーション 103 私立探偵ハリー その他の映像作品 舞台作品 104 トゲトゲ・ノーマンとハリネズミ=タヌキ説 [5]ハリネズミの民俗誌 105 伝統的なイメージ 106 “果物泥棒”として 107 ことわざ・慣用句 108 ハリネズミの日 109 “ヘビ食い”として 110 “瓜盗人”として 111 “ミルク泥棒”として 112 妖精の化身として 113 イソップ寓話 114 グリム・メルヒェン 115 ロシアの民話 116 モンゴルの民話 117 ブルガリアの民話 118 100のトリック 119 ハリネズミとイノシシ 120 ロマ(ジプシー)の民話 121 西アフリカ・ハウサ族の民話? 122 トラとカササギとハリネズミ 123 ゴビ砂漠の俗信 124 モロッコの俗信 [6]ハリネズミのイメージ 125 ハリネズミ族 vs.キツネ族 126 さみしいトゲトゲ屋 127 ハリアラシのジレンマ 128 ハリネズミのような連打 129 “針山状態”のイメージ 130 “つむじ曲がり”と“短髪” 131 “鉄壁防御”のイメージ 132 “家庭主義者”のイメージ 133 “徘徊者”のイメージ [7]ハリネズミ・グッズ 134 ぬいぐるみ・パペット 135 プー with ハリぐるみ on 136 キーチェーン 137 携帯電話カバー 138 プチ丸! 139 出目金ハリネズミ 140 辰年用ハリネズミ 141 クリスタル・ガラス 142 琥珀 143 花山河張り子 144 松かさの民芸品 145 Tシャツ・トレーナー 146 ジャケット 147 スタンプ 148 切手 149 バレンタイン用ハリネズミ 150 チョコチップハリネズミ 151 ハリネズミパン 152 立体デコパージュと 153 ペーパーナプキン 154 カード 155 ペーパーウェイト・ホルダー 156 ゴマ・グッズ 157 卓上ホルダー 158 フェルク&フォルム 159 マグ 160 キンダーサプライズ 161 ドイツのバーチ材引き車 162 フランスの赤い引き車 163 国籍不明の引き車 164 スロープ下りと球落とし 165 レゴベビーのハリ 166 トレジャー・ジェストほか 167 プレイモビル 168 犬・猫用おもちゃ 169 ガーデニング用品 170 アニマルライト 171 ジオラマ用フィギュア 172 その他のグッズ [8]ハリハリ・もの 173 ハリネズミの歌・海外篇 174 ハリハリわらべ歌 175 ハリネズミの歌・国内篇 176 ハリネズミの詩 177 ハリネズミの折り紙 178 ハリネズミのケーキ 179 点心 180 ハリネズミの岩 181 ハリネズミの夢 182 ハリハリ・ジョーク 183 ハリハリの短歌 [9]ハリネズミを探せ! 184 シェイクスピアとハリネズミ 185 チェブとゲーナとハリネズミ 186 旧約聖書のハリネズミ 187 地獄のハリネズミ 188 ゴムあたまポンたろう 189 「三十六禽」とハリネズミ 190 スキャリーおじさんとハリ 191 アリスとハリネズミ 192 プーとウサギとハリネズミ 193 ハリネズミぐるみ 194 ハリ×2 vs. オコジョさん 195 ちびおおかみ 196 ハリー・P氏とハリモドキ 197 リネアと冬眠ハリアラシ 198 サンドパンの正体は? 199 『旅の絵本』のハリ 200 子猫のピッチとハリネズミ 201 砂漠の動物園にて 202 哀愁のバラバラマン 203 ベイブレードのハリネズミ 204 シェーバーの広告 205 営団地下鉄「環境月間」ポスター 206 本箱のハリネズミ 207 『JAF-MATE』の表紙 208 ハリネズミにシャンプーを 209 トヨタ・ノアのCM [10]エトセトラ 210 ハリハリを漬けよう 211 ハリハリを煮よう 212 ハリハリサラダ 213 ハリハリを張ろう 214 ハリハリを名乗ろう 215 ハリアラシ問題 216 アブナい動物
2011年06月26日
コメント(0)
★「ハリハリ資料室」本館 閉鎖のお知らせ 長らくご愛顧いただきました「ハリハリ資料室」ですが,諸事情により,この6月をもって閉室いたしました。 画像ファイルについては修復の方途もありませんが,テキストにつきましては,逐次,本分室にて不定期に再掲していく予定です。 どなたから要望があるという訳でもなく,かつての本館の活動と同様,完全に自己満足のみを目的とした活動ではありますが,どうぞよろしくお願いいたします。
2011年06月26日
コメント(0)
◆救われない話を書く作家がいる,という同僚の栗林先生(読書はもっぱら恋愛小説が専門)の話に興味を示したら,翌日,何冊か持ってきてくれた。 作家の名前は,本多孝好。とりあえず読み始めたのは,『真夜中の五分前』。 恋愛小説で,主人公は仕事ができて異性にもモテモテの,広告代理店の切れ者社員…… とくると,もうそれだけで読む気など薬にするほどもなくなってしまうはずなのだが,そんなことに気づいたのは,かなり読み進めてからのことで,困ったことに,これがすこぶる面白い。もしかしたら,このままこの作家のファンになってしまうかも。実に困ったことだ。 新潮文庫版・上巻,p.53とp.55に,ハリネズミ・レトリックが登場する。「僕は成田さんの口が吐く煙草の煙と酒の匂いと繰言とにうんざりしながら、二人がセックスするするシーンを思い浮かべようとしたが。が、うまくいかなかった。鯨とハリネズミの交尾のほうがまだ想像できそうだった。『俺たちは愛し合ってるんだ』と成田さんは言った。 確かに僕も、それ以外に原祥子が成田さんと付き合う理由なんて思い浮かばなかった。(p.53)」「(前略)そう説明したところで、そんなもの周囲が納得するためのものでしかなくて、そんな理由で人は人と寝たりしない。ハリネズミだって、そんな理由では鯨と寝たりしない。『たぶん、愛していたからでしょう』と僕は言った。『愛?』長内課長は繰り返して、白けた顔で僕を眺めた。『愛です』と僕は頷いた。『愛か』『愛でしょうね』 小さなため息をついて、長内課長はぼやいた。『君らの世代の冗談は、時々わかりにくくて困るよ』『すみません』と僕は言った。」 この,さりげない毒。絶妙だ。 もう一つ,p.88には,「メランコリイ入門」向けの言葉も。「『でも、遺伝子にそんな深い意味なんてあるのかな? 猿と人は遺伝子的にはほとんど同じなんだよね? 五パーセントくらいの違いだっけ? でも、猿は猿で、人は人だ』『そうですか?』とかすみさんは眉をひそめた。『あなたの周りに、五パーセント以上、猿と区別のつく人がどれくらいいます?』」
2009年10月13日
コメント(0)
◆数年ぶりにアクセスして,ゴミ掃除。トラックバックやコメントが流し場の髪の毛のように(というか,それ以上に)たくさんまつわりついていて,驚いた。◆自宅のパソコンが壊れているので,漫画喫茶からアクセス。ふう。◆気が向いたら,今後ここで,「資料室」出張版をやるかも。あるいは,やらないかも。私のことだから,どうなるか,自分でもわからない。
2009年10月13日
コメント(0)
昨夜も「資料室」用の記事を執筆。やっぱり,自宅で執筆できるのはいいなあ。パソコンをご喜捨くださったいしいさんに,深く感謝。 今回は,カビール Kabyle の民話について。ぎょうせい(知名度は低いが,第一法規と並ぶ行政系出版社の大手である)から出ている民話集(ドイツの著名な大民話集の邦訳版)がネタ元だが,このシリーズ,グリム童話の研究で知られる小沢俊夫が監修している。若いころからいい仕事をしてらっしゃったのだなあ。 詳しくは Wikipedia に出ているが,小沢先生の一族には,弟さんの征爾さんをはじめ,錚々たる文化人が居並ぶ。息子の健二君は(ほとんど口をきいたことがなかったとはいえ)大学1・2年のころ,一応は同級だった。お父さんだかの知人のドイツ人の案内をしなければいけないというので,やはり同じクラスのM君に同行のアルバイトを持ちかけていたのを見かけた記憶がある。 同世代の人間は数あれど,共に弱冠二十歳そこそこで世を騒がせたオウム幹部・石川某君と小沢君の両方と同級生だったのは僕だけだろう。何の自慢にもならないけれど。 「世界の民話」には,丹念に探せば,ほかにもハリネズミ民話が眠っていそうだ。そのへんの図書館には無さそうだが,国会図書館に利用者登録して,1冊ずつ出してもらって当たってみようか。せっかく通勤途上で眺めているのだ,たまには利用しなければ。 昼,起きたら,ひつじさんからのハリグッズ情報がメールで届いていた。感謝。 ……アレッシィに,ハリグッズ? 本当に??? 外苑前の駅の近くで,ヒキガエルを発見。熊野通りではしばしば見かけるが,今回はリブロ前の自転車置き場である。さすがに不思議。mixi のローカルコミュニティに投稿してみよう。 授業は,新中3の国語。遅刻6,欠席0。喜んでいいものやらどうやら。
2005年03月10日
コメント(1)
★火曜日の「日記」がまた字数オーバーしてしまったので,はみ出した分をこちらに。何をやっているんだか。★火曜日。ガスを止められた。給料日まで,あと1週間。……行くか,銭湯。でも,仕事で数日間は無理かもなあ。何時までやってるんだっけ。 東京ガスの窓口施設がどんどん閉鎖になってる。新宿南口にあったステーション,青山通りの小さなショップ。今はどこに支払いに行けばいいのか? 困惑。 今日(火曜日)は,某6年制私立校に通う中3Td君の個別のみ。期末テストの報告を受ける。得意な数学は9割行ったし,苦手な英語も平均点より2点低かっただけだから,まあ良しとすべきだろう。今日は学校の春休みの宿題。数学なので,ほぼ楽勝。 隣りの席では,新人のKg先生。生徒の小学生は,受け持ちになって間もない(たぶん初回の)子のようだが,その子に向かって「いま私,個別だけなの。信じらんないよねー。もっとガンガン授業したいのにー」とか話してるのが楽しい。そうそう,このKgさんとは,彼女の採用面接のときに少し話したきりだけど,こういう,TPOとか全然考えないで,思ったことをその場でポンポン言っちゃう系の子だったなあ。「えー,じゃあ,個別授業以外のときは,先生,何やってんのー? 先生,何してる人なの?」「んー,それはねえ,言っちゃいけないことになってるんだってー」「えー,なんでー? いいじゃん,べつに」「んー,でも,ダメだって言われててさあ。私も最初言われたとき,えーなんでー,とか思ったんだけどさあ。教えてほしい? んー,まあ,考えればだいたいわかるんだけどね」云々。結局言わなかったみたいだけど,危なっかしい先生だなあ。生徒とのぶっちゃけトークでは僕も人後に落ちないが,少なくとも僕の生徒は,今度高3になるOs君を筆頭に,うちに帰ってお母さんに言っちゃっていいことと悪いことの区別くらいはつけられる年齢&人格である。 そういえば彼女,僕の辞めた後の小学生の社会の授業に研修という形で入っていたはずだけど,「今は個別だけ」ということは,あのコマ,引き継がせてもらえなかったのか。まあ,「群馬県ってどのへんだっけー。昔やったんだけど,もう全部忘れちゃったなあ。ねえ,このへんってなんか,わかんなくない?」とか素で生徒に言っちゃってる人に任せるのは,正直リスキーすぎるが。 後で聞いたら,Kg先生が使えないとなると,社会のコマはやっぱり手が足りないらしくて,バツマル師のところに打診があったという(「でも,僕もいろいろと忙しくて。新体制になって,ペイも下がったみたいですし…… いぬかわ先生,やりません? ……絶対ヤだ? まあ,僕も今から断りに行くとこですが」)。呵呵。 そのバツマル師と,古ヨーロッパ文化の話を少々。「面白そうだなあ。マリヤ・ギンブタス? 何て本でしたっけ。まあ,買ってみますよ」と言って帰られたが,十中八九,多忙にかまけてそのまま忘れてしまうだろう。いつもそうだから。先史考古学の権威だったギンブタス,実は西海岸のあやしいオールタナティヴ文化どっぷりの人だったんじゃないか,という僕の説については「きっとそうでしょう」と簡単に同意。まあ,これもいつものことだけれど。
2005年03月09日
コメント(0)
★久しぶりの日記。こうなると,もはや「月記」である。 その後どうしていることかと,ご心配の向きもあるかもしれないので,一応書いておくと,今は電車にも乗れるし,1日1食くらいは十分食べられる。 実は昨日,銀行の残金を調べてみたら,1万円が入っていたのだ。思うに,大阪の母の仕業に違いない。ありがたや。★知人からご招待をいただいて,しばらく前に「mixi」に参加し,先々週,先週は,もっぱらあちらで遊んでいた。 「古井由吉」「ラーメンズ」「チェーホフ」「黒田硫黄」「山田章博」「広瀬正」「エドワードゴーリー」「ノルシュテイン」「ベイグラントストーリー」「ムーン」など趣味系のコミュニティ,「原宿」「千駄ヶ谷」「青山」などの地域系コミュ,「猫の奇行」「動物ニュース」「ハリネズミ」など動物系コミュ,それに,いくつかのダメ人間系コミュに登録。 某巨大掲示板のにおいがするコミュはパス,ただし,「パトラッシュ、もう疲れたよ。」コミュだけは,発言が活発な上にいちいち面白すぎて,切るに切れない。 mixi にもブログページがあるので,先週はあちらで日記を書いていた。 こちらの日記と差異化する意味で,向こうでは短めを心がけ,(向こうは画像のアップが簡単なので)写メを使って街角ネタを入れるようにしてみた。……我ながら黒いネタが多いのに失笑。「ペット」のゴミ箱,「ほふり」のポスター…… どこかにないか,ほのぼの系のネタ。★2月にはお馴染みの面々プラスひつじ女史マイナスカーター卿とともに「妖・怪談義」,今月はレギュラーメンバーで「新耳袋」で,前回の日記から2回も新宿ロフトプラスワンに足を運んでいる。 その前に,KS&SK先生ご一家にご馳走になりに行ったときにもご一緒しているから,最近,遊びに行くのは「洞部会」の面々とばかりである。次は5月。 ご馳走会のときは,ビールとつまみ各種を買って行ったのだが,おいしいワインや紹興酒が開けられて,ビールなんぞついぞ出番がなかったので,ついそのまま持って帰ってきてしまった。本来,自宅で飲む習慣はないのだが,ちびちび消費し,あとはビール数本を残すのみ。やっぱりギネスの黒が一番だなあ。 2月の「妖・怪談義」では,ひつじさんからいろいろとハリグッズをいただいた。ヨーロッパのカラフルな木製玩具,ウェブで見るだけは見ていたツボ押し兼用灰皿。お返しに,少しだけ,ヒツジものを進呈。 最近はハリ・コレクターも開店休業,人様からいただく一方である。一応,池袋西武イルムス館で,ファルク&フェルム社のキッチングッズのラインナップが増えているのを確認したっけ。そのくらい。 「妖・怪談義」では,今回も「オフィシャル・シークレット・ゲスト」の人気ミステリ作家氏の話術に,すっかり乗せられる。あの人の書くものの方は好きじゃないんだけどなあ。 でも,最後の怪獣ネタの盛り上がりには,まったくついていけなかった。興味ないんだってば,かいじゅう。 今月の「新耳」のときは,najaさんに「おしゃれキャット」の猫耳をいただいた。どーしろと言うんだろう(^_^;。あのネコがマリーという名前だとは知らなかった。mixi には「ディズニー嫌い」のコミュもあるが,さすがに不活発。 カーター卿からは,上野アメ横で仕入れた「うまい棒」の大袋。いったい何十本入っているんだろう。泣ける……(T_T) 「うちの嫁さんと折半なんで,違う種類のも入ってますが,袋ごと持ってってください」とのこと。ん? 全部サラミ味(そう,「うまい棒スープ」の材料である)に見えるけど…… 2層になってる下の方,よく見たら,色は似てるけど別物で,「なっとう味」だった。あるのか,そんなのが。これでスープを作ったら,納豆汁? ……やめておこう。臆病者と,呼ぶなら呼べ。卿の奥方,納豆がお好きなのだろうか。 卿からもうひとつ,地元の図書館で取ってくださった「ハリネズミのパチパチおばさん」のコピー。ありがたい。 この絵本,どこかで見たことがあったような気がしていたが,どうも僕の勘違いだったようだ。この内容には見覚えがない。ハリネズミのパチパチおばさんが,夢から覚めても覚めても,まだ夢の中にいる……という,ただそれだけのお話。でもけっこう長い。 舟崎靖子・克彦の作品だが,この人たちの作品らしく,およそ子ども向けという意識が感じられない。半端に思弁的。だらだらと行き当たりばったりな筋。これぞ舟崎作品! そういえば,しばらく前まで少年サンデーで連載されていた杉本ペロの「俺様は?(なぞ)」というギャグ漫画で,そういうネタをやっていたな。毎回夢オチなんだけど,覚めてもまだ悪夢の中という。夢か現か,荘子の「胡蝶の夢」以来の古いネタである。しかもこれ,奥付けの「原案・舟崎某」って,我が子の夢ばなしをそのまま作品にしてしまったのでは? もちろん,主人公が「ハリネズミ」だったり「おばさん」だったりする必然性は微塵もない。もはやトンデモ本スレスレの,実に深い作品。卿に感謝。★会社の悪口ならいくらでも書けそうだけど,まあやめておこう。幸い,わけがわからんのは一緒に仕事している人たちではなく,上の方の人たちだけだから。 でもまあ,一言だけ。誰にも必要のない書類が多すぎる。仕事のための仕事。 雪やらテスト勉強やらのおかげで,個別授業の振り替えが重なり,金曜日から昨日の月曜日まで,いきなりの4連休だった。もっとも,ちょっと風邪をひいてフラフラしていたので,半分かたはうちで寝ていたけれど。 土曜日の夜が「新耳袋」。歌舞伎町のロフトプラスワンまで,歩いて行って歩いて帰ってきたのは,たぶん今回がはじめてじゃないかな。いつもはたいてい,仕事先からの直行だったし。帰りに街ネタ画像をいくつか仕込むことができた。★日曜日。午後,とある手持ちのDVDを連続で3回見て(2回目は英語だったけど),3回とも大泣き。 自分は本物の阿呆なのだろうかと,ちょっと嫌になる。★月曜日。振り返ってみれば,充実した1日だった。 プレステでCDが聴けることに今さら気づき(プレーヤーも持ってるけど,埋もれっぱなしである),なぜかエンヤ三昧。単にディスクをかけ変えるのが面倒だっただけだけど,うーん,なんかこれから自殺する人みたいだねえ(^_^;。 銀行で発見したお金で,また郵便局に行って段ボールを買い足し,寝床まわりをまた片づける。先月以来のお片づけ,際限がない感じだったが,今回で少し先が見えてきた感じ。もう天井まで段ボールだらけである。さすがに置き場がなくなってきた。 同じ日に,我が「資料室」のための「古ヨーロッパの女神とハリネズミ土器」を脱稿。いざ手をつけてみれば,いろいろと書くことが出てくるものだ。 久しぶりの「O戸屋」。夕方で,入店したときは空いていたが,僕のすぐ後で,10人近くがどやどやと入店。彼らの後になってはかなわないと,あわててオーダー。 となりの席に座った若い女性2人組のうちの1人は,嫌な隣人だった。腹が減っているらしく,テーブルにつけた二の腕の上にごろんと頭を乗せて,近くの席についている知人に「おいしいですかぁ~」とものほしげに訊いているうちはよかったのだが,やがていよいよ耐えられなくなったらしく,店員に声をかけて呼びつけた。「ちょっと~,来ないんですけど。おなかすいた~。早くしてくれるぅ?」「はあ,すみません。もう少々お待ちください」「なんか,私より後で注文してる人が,もう食べてるんだけどぉ」 そりゃそうかもしれないが,ものには言いようというものがあるだろうに。店員も,ややムッとした様子。「すみません,一番時間のかかるお料理を頼まれてしまったので」「ちょっと,そういう問題?」「はあ」 はあって,あんた。小さくズッコけるいぬかわ。他店はどうか知らないが,外苑前のO戸屋は,気働きがきいて愛想のいい店員とダメ店員との格差が激しい。これはもちろん,気のきかない方である。「とにかく,早くしてって言ってんの。あたしらもあんま時間ないんだからぁ」 本当に時間がないのなら,O戸屋に入るのはそもそも不正解だし,この時間に混むのは当たり前,混んでいる時間に待たされるのも当たり前。実はまさしく「そういう問題」である。しかも,いっしょに入った大集団は,彼女の顔見知りである。オーダーミスならともかく,店としては精一杯急いでこれなのだから,急かしたところで何の効果もあろうはずはない。早く食べ終わりたければ,すぐにできそうなものをメニューから探すのも常識だと思うのだが,このお嬢さんの頭には,そういう知恵は薬にしたくともなさそうだ。 しかもこの人,店員の対応が気に入らなかったらしく,「ぜってー許さねー」とうそぶきざま,卓上のアンケート用紙を手に取ると,猛然と書き始めた。堂に入ったクレーマーぶり,見かけは20そこそこだが,中身はすでに40代である。 さっきの人とは違う「できる」店員さんが,やっと料理を運んでくる。季節限定の鶏の炭火焼き定食,あれは待たされるんだ,確かに。むちゃ美味しいけどね。「ちょっと,さっきの人,遅いって言ったら,てめーが時間がかかるもん頼むの悪い,みたいな言い方されたんですけどー」おやおや,さっそくゴネている。「はあ,申しわけありません」「すんごくムカツいたんですけど」「すみません,順番にお作りしているのですが」「なにー,あの人。言い方がー,ちょー感じ悪くてー」「申しわけございません」「後で謝りに来るように言ってくださいー。ちょームカついたからー」 ……さすがに思わず,顔をマジマジと見てしまいましたよ,出てくるときに。たぶん,近所のどこかのオフィスのスタッフなのだろうけれど,親の顔が見たいとは,まさにこのことである。もっとも,あくまで顔が見たいだけで,この人の親と,店員とお客という立場でお会いするのは,金輪際御免こうむりたいが。もちろん,このお嬢さん自身なら,同僚としても隣人としてもただの同席者としても,絶対の絶対の絶対に御免だ。はっきり言えば,存在すること自体をとっととやめていただきたい。こういう人の存在が,どのような形であれ,誰かの役に立っているとは,とても思えないから。 その後,「バカっ客ほどご機嫌を損ねてはならない」という接客業のいろはを知らない店員嬢がちゃんと謝りに行ったか,それとも,バックレられてクレーマー嬢がもう一度キレたかは,僕は見てないから不明である。 先日,職員室で,Ot先生が,知人の結婚式の二次会で乗ったタクシーが道を間違えたときのことを話していた。Ot先生,すぐさまそのタクシー会社に電話をかけ,同道の友人と交互に受話器を回しながら,怒鳴りつけまくったという。 言っちゃなんだが,Ot先生,アルコールへの耐性はほとんどない。披露宴から二次会会場に向かうところなら,すでにけっこう聞こし召していただろうから,本当に運転手にトガがあったのかどうかは,実のところ大いに疑わしい。 Ot先生が去った後,若いTs先生が溜め息をついていた。「東京来てよく思うんですけど,こっちってクレーマーが多いですよねえ。そのへんのふつーのオジサンが,肩ぶつかったとかで,自分の権利がどうのこうのと。東北じゃあんなことはまずないですよう。北の人間は,心はあったかいですから」 僕も先日の郵便事故のときにクレーマーになったばかりだから他人事ではないのだけれど,確かに,お客さまの立場で人に文句をつけて得々としている人の気持ちは,僕にはよくわからない。でも,そういうのって,地域差だけではないと思うのだが。Ts君も,誠実で心やさしい青年ではあるが,生きるのが下手な人である。先行きが心配だ。 こういう機微を扱った作品として,名匠ロバート・シェクリィに「コードルが玉ネギに、玉ネギがニンジンに」という佳篇(『残酷な方程式』所収)がある。泣き寝入ラー人種(=玉ネギ)からクレーマー人種(=ニンジン)への,華麗なる転身。SFファンでなければ見る機会さえほとんどないのは,残念なことだ。
2005年03月08日
コメント(0)
★毎月,危機が深刻化してる気がする。今回はさすがに危なかった。死ぬかと思った,少しだけ。★木曜日。母から,バレンタインのチョコ代わりにいくらか振り込んだので,銀行で確かめるようにというメールが届いた。すでに夕方である。仕事場に向かいがてら銀行に寄ったが,残金は変わらず,300円のままである。考えてみれば,母が入金後すぐにメールしたのだとすれば,入金は銀行閉店後で,処理は翌日持ち越しになるから,明日まで待たなければならない。朝になったらお金を降ろして電車で帰ろうと,木曜の夜に仕事場に泊まった僕は,実に阿呆だった。3連休じゃないか! 連休明けまで,入金は処理されない。 金曜の午前中,とぼとぼ歩いて帰りながら,母に八つ当たりメール。人間,困ったときにこそ度量の大小がわかるなあ。★金曜日。午後になって起床。先月保険証を探していて,紙の山の下から偶然見つけたビール券を,再び掘り出してみた。学生時代にバイト先ででももらったものだろうと思っていたが,よく見ると,「○○社長」との表書きがある。自慢じゃないが,僕は社長と呼ばれたことは一度もない。そうか,何かのときに父からもらったおすそ分けだ。それなら,思ったほど古くはないから,まだ使えるかもしれない。 今夜はKg君の個別の日である。朝,歩いて帰った道を逆にたどって,冬の午後の弱弱しい日差しの下,仕事場へ向かう。吉野屋で牛丼1日だけセール,財布に10円もない僕には関係ないイベントだ。世間では建国記念日,朝は右翼の街宣カーがうるさくて空きっ腹に堪えたが,この時間になるとそんなでもない。三宅坂手前で大勢出張っていた機動隊員の1人に検問を受けたが,何があったのか。 東京駅前のチケットショップに寄ってみると……祭日休み。まあ当然である。予想はしていたので,ショックはそれほどではなかった。 個別授業を終え,再び歩いて帰宅。この道を通るのは,今日3回目である。部屋に帰って,食料を求め,家捜し。昔買った手つかずの食玩をいくつか発見,まだあったか。むさぼり食う。チョコとクッキー。★土曜日。今日は授業が無い。この状態になると,往復3時間歩かずに済むのは,本当にありがたい。夏のときは,これだけろくなものを食べずに毎日歩いて,なんで大して痩せないかな,と不思議に思っていたが,慣れてみれば片道1時間半というのは大した距離ではない。高校のときだって,駅から学校まで片道30分歩いていたわけで,高々その3倍の距離,大したエネルギーは要さないのだろう。それでも,いよいよ腹の中に何もなくなってくると,やっぱりきつい。 いしいさんにいただいたパソコンで,いろいろ文章をうったりして過ごした。胃が観念して活動を停止すると,空腹はそれほど辛くなくなる(じっとしていればの話だが)。ただし,ものを食っていないからといって水分の補給を怠ると,偏頭痛が起こって,動くのが辛くなってくるから,水だけは忘れずにときどき飲み続けなければならない。僕もそれなりに学習しているなあ(笑)。★日曜日。今日である。夜,Os君の個別があるが,歩くのが億劫だ。獣のような嗅覚で,昔買って忘れていた(らしい)マカデミアナッツ・チョコを掘り出し,またまたむさぼり食う。これで少しエネルギーが補充できたので,再び発掘しておいた要らない本数冊と,お笑いのDVD1本を持って,まずは明治通りのブック○フへ。290円を割ると松*の最安メニューが食べられないので,大事をとってDVDに本をつけたのだが,買い取り額は合計1000円を超し,余裕だった。相変わらず,ブック○フの価格規準はよくわからない。タイムセールのようなことをやっていたが,今の僕には関係ない。キャンペーンでポイントが2倍ついたのは,少しだけ,ありがたい。 渋谷に出て,松*でちょっと奮発。牛丼屋では,皆つましい食事を取っているが,そんなにお金に困っている人が多いのだろうか。僕がいつも食べているヘルシーチキンカレー290円にサラダをつけてテイクアウトしている女性がいたが,ご飯を半分にと頼んでいたから,あれは本当にダイエットなのだろう。 センター街わきのチケットショップへ。父の形見?のビール券を出す。「この券は旧券なので」と言われ,ああやっぱりダメか,と思うが(食事後だし,電車代くらいは懐中に残っているので,そうショックではない),「1枚200円引きでの買い取りになりますが,よろしいですか」との言葉が続いた。ああよかった,お父さん,ありがとう(T_T)。 さっき松*で食事したばかりだが,「お金が入ったらあれを食べに行こう」と思っていたものの1つを済ませておくことにする。「五右衛門」の,カニと本カラスミのペペロンチーノ。すっかり満腹して,久しぶりに電車に乗って,仕事場へ向かった。
2005年02月13日
コメント(2)
今日の出来事ばかりではないが,最近あったいくつかのことについて。★いしいさんから,ノートパソコンをいただいた。久しぶりに自宅でものが書ける。快適快適。これで目がまともに見えれば完璧なのだが。あと,今度こそ部屋を片づけて,ちゃんと机の上で仕えるようにしなければ。 我ながら現金な,とは思うが,久々にいしいさんの日記を覗いてみた。最近また,調子が悪そう。何かできることがあればいいのだけれど。とりあえず,英訳作成のお手伝いかな。★送っていただいたパソコンを渋谷郵便局で引き取って抱えて帰る途中,家の近くで,若い人に道を訊かれた。このあたりは原宿と青山のはずれだから(見通しの甘い新規出店者が,よく店をつぶすエリアだ),立ち往生している外来者は珍しくない。「丸の内線の」外苑前に行くには,という質問の前半はスルーして(丸の内線はこのあたりには来ていない)2通りの道を教えると,「どっちがわかりやすいですか」と,至極もっともな質問。「んー,こっちですね」と2番目に示した道を指して笑うと,向こうもちょっと笑った。 父の生前,確か新橋だったか,たまたま道を訊いた相手の若い人の応対がたいへんさわやかで,父は「お前も,ああいう感じで応対できるようにせいよ」と言った。毎度ながら無茶を言う人だ,人にはそれぞれの人柄というものがあるのに,とは思ったが,そんなわけで,人から道を訊かれることがあると,少なくとも声をかける気になれないほどの無愛想づらではないのだろうと思い,ちょっとほっとする。★K先生宅でのお食事会,給料日前はもちろん参加は無理,その後でも仕事と重なる日はちょっと……とわがままを言ったら,なんと僕の都合のいい日に合わせてもらえることになった。K先生御夫妻,参加者の皆さん,特に,連絡係として何度もメールをくださっ奈蛇児さんに感謝。楽しみだ。★ひろみさんにご喜捨いただいたマックカードで,数日間,かなり普通っぽい食生活を送ることができた。感謝。★前にも書いた「うまい棒スープ」,サラミ味以外では,どうも許容水準に達しない。コンビニの各店によって仕入れている「うまい棒」の味は違うから,注意が必要である。「コーンポタージュ味」が意外にいいスープにならないのが,少し不思議。★インフルエンザで休んでいたAm先生の代講をふられて,打ち合わせの時間も見越して早めに出社したら,当のAm先生が登場(この人は「ロッカー」だから,長い間休んでご迷惑を,なんて言葉は,薬にしたくても出てこない。まあそれでいいんだけど)。なんだ,Am先生が回復して出社してるんなら,代講つぶれてんじゃん。せっかく160円使って電車に乗って来たのに。「……言ってくださいよ~」とTz副室長をなじったら,いや,小学部のコマで同様に代講をふられていたS先生も来てたから,これは要するにJ室長の連絡もれなのだという。いやいや,中学部については,Tz先生の管轄でしょうに。貸しができたことにつけこんで,Tz先生から1000円を借財。これで,Hさんに頼まれていた,新宿・ロフトプラスワンの「妖怪談義」の前売りチケットを取りに行けた。ふう。べつに自分の食費分の借金だって,申し込めば二つ返事で貸してくれる人は1人ならずいるのだけれど,癖になるといけないので,自分のための借金はできない。 チケット購入直後に,偶然,Hさんよりメール。今度持ってきてくださるハリグッズの写真が,また1枚,ついている。ラブリー。★Tz副室長は,理系の先生にしてもちょっと極端すぎるくらい,文章が書けない。全然書けない。ふだんの伝言メモでも,主旨の理解に苦労するくらいだ。というか,口頭の指示でも,聞き返さなければならないことが何度もある。そんなわけで,かつて相棒だったころ以来,文章仕事はいつも,僕に回ってくる。頼られるのは,悪い気はしない。 今回請け負ったのは,3月の個別指導割引キャンペーンのお知らせ。会社のありものフォームがあるというので,「じゃあ,それでいいじゃないですか」と言うと,いや,もっといいものを作りたいのだと言う。意気に感じて,というのではないが,せっかくあてにしてくれているので,頑張って書いた。チェックをしてもらって要求を聞いて書き直し,もう一度見せて直しを入れて出し,決定稿。僕はスロースターターもいいところで,直しを入れる段になってはじめて本腰が入る。自分が責任者だったら,お便り1本,こんなに手間ヒマかけて作りはしないが,頼りにされれば,いいものにしなければという気にもなる。直しを入れるたび,そのついでに構成から練り直すので,我ながら一稿よりもよほど体裁が整った。 上司としてのTz先生のいいところの1つは,スタッフには賞賛の言葉を惜しまないことだ。おだてに弱い僕としては,実に気持ちよく仕事ができる。ノセられてることがわかっていても不快にならないのは,裏表がなくてわかりやすい,Tz先生の人柄のおかげだろう。★悪友エストラゴンから,久しぶりに電話。例によって,大半は漫画の話,少し本の話。 彼はまた転職して,今はカナダ人の経営する会社にいるそうだ。「って,ひょっとしてガイシ? ガイシ? ガイシケー? かっけー」「いや,俺も最初そう思ったんだけど,単にカナダ人が日本に来てやってるだけで,外資じゃないみたいよ」「へー,でもすごいね」「うーん,もう,まわりはみんなカナダ人でさ,英語に苦労してる。携帯にかかってきても英語で答えなきゃいけないしさ,疲れるよ」 彼によると,カナダ人はア○○カ人と違って,わりとまともっぽい連中である,そうだ。ふむむ,さもありなん。 Wikipedia で哺乳類関係の項目に手を入れて回っているという話が,なぜかウケる。なぜだ。「それ,Sに言っていい?」Sは共通の友人の名前である。 夜中の仕事場で,携帯の電池切れで話が終わってから気づく。しまった,話しながら帰れば,90分の徒歩帰宅の,恰好の時間つぶしになったのだ。まあ,その後でもう一度仕事の文案の練り直しをしたら(これが本当に最後),まだ直せるところがけっこう見つかったので,結果的にはそのまま帰らなくてよかったのだけれど。★これは本当に,今日の話。 夕刻,家を出掛けに,携帯電話,どこに置いたっけ?と固まっていたら,首尾よくメールが来て,電話を発見できた。大阪の母からだ。チョコレートの代わりにいくらか入金したので,銀行に行って確かめるように,とのこと。ありがたい。今日はまともな食事をしたり,電車に乗って通勤したりできそうだ。 ベルコモンズ向かいの銀行の出張所に向かう。前にガードマンが立っているのが見え,いやな予感。やっぱり,ATMの工事中。「すみません,夜の8時から使えるようになります」って,これから仕事だし,そんな時間に出直す人なんていないから。 確か青山通り沿いのどこかに,もう少し大きな出張所(ATMセンター)があったな……と思い出しながら,表参道方向へ歩いてみる。案の定,目当ての出張所はつぶれていた。はっは,そんな気はしてたんだ。あった場所ももうよくわからない。今,紀ノ国屋の仮店舗が入ってる地所だったかな? 仕方ない,表参道駅前支店に向かう。さいわい,すいている。さっそく残高確認--300円。えっ? ……そうか,母は銀行の営業時間を過ぎてから入金したから,まだ処理されていないのである。自分でそんなことに気づく人ではない,こちらがその可能性を考えるべきだった。あーあ,今日はDVD1枚と本を1冊売って食費を作るつもりだったけど,もう職場に向かって歩き出さないと間に合わない。今日の食事は食いそびれである。まあ,財布にはまだ115円ばかりある。おにぎりの1つくらいは買えるだろう。「無駄ずかいはしないで美味しいものを食べて散髪に行ってくれると嬉しいです」「寒い時フトコロがさみしいと余計寒いです」とは,母のメールのありがたい文面である。 でも,この人にはやっぱり,根本的なところがわかっていないんじゃないかという気がする。来週,待ちに待った月給が入ったら,まず買いに行きたいのは,部屋を片づけるための大小の段ボール箱を数十と,新しい靴と(はがれかけた靴底がいつ取れるか,実のところヒヤヒヤしている),それにもちろん,新しい眼鏡である。無駄づかいや理容どころではない。 確かに,フトコロが寒いと余計寒い,かもしれないが,あなたの不甲斐ないぐーたら息子は,体温を維持するためのカロリー確保にも苦慮しながら,往復3時間,本物の寒風の中を歩いて通勤帰宅しているところなんである。 そもそも,先月のことは知らないが,一昨月の前半はカリブ海で,後半はカナダで,優雅にリフレッシュしてきたメリー・ウィドウの母である。彼女の言う「無駄ずかい」とは,おそらく彼女には理解できないような金の使い方のことを指すのだろうが,おにぎりを買って残った10円で「うまい棒」を買ってお湯を注いで飲むことも,はたしてそれに当たるのだろうか。「美味しいもの」でないことは間違いないのだが。★三宅坂のあたりから桜田門,内堀通りと,つかず離れず,後ろをずっとついてくる足音がする。皇居周辺はジョガーが多いが,歩いている人は珍しい。ちょっと靴裏を引きずるような歩き方だから,舗道でも砂利道でも足音がよくわかる。もう日も暮れているから,1人歩きは心細かったりもするかもね,などと思いながら,鍛治橋手前の信号で詰まったときに振り返ってみると,白いコートの小柄な女性の姿が見えた。偶然,歩度が同じだっただけかもしれないけれど,こんな自分が少しでも役に立てたのなら,うれしいと思う。★中3Km君,入試の国語で出た問題として,「一度には1つのことしかできない」という内容の熟語を答えさせるものがあり,わからなかったという。四字熟語,と聞いて,さて,と首を傾げていると,Tz先生が「この人にわかんねえんなら,誰もわかんねえよ」と宣言。「いや,もう一人,大御所がいる」とYh君たち。ベテランのCh師匠のことである。「一意専心」,違うなあ。Tz先生にもう一度訊き返してみると,四字ではなく,二字熟語だと言う。それなら「専一」かなあ。「はあ,そんな言葉があるんですか。でもそれが正解だとちょっと,問題として難しすぎますよねえ」と,若いTs先生。 うーん,いずれにしても,まさか単独でそれだけの問題ということはないだろう。具体的な文脈を聞きたいが,Km君,すでに帰った後である。質問にもそれなりの作法がある,たとえば,早慶レベルを受けるほどの生徒であれば,こちらが言わずとも弁えて,ちゃんと前後の附帯状況も添えて持ってくるものだ。君はまだまだ,そういうところが至らないんだな……などと,本人のいないところで,いくらお説教をシミュレートしていてもしょうがない。「虻蜂取らず」=「二兎を追うものは一兎をも得ず」がらみの問題なんじゃないかという気もするのだけれど,それだと逆にやさしすぎるし。卵を割らなければオムレツはできない? 全然違うな。うーん。
2005年02月10日
コメント(0)
★1/24,『空中ブランコ』という本について書いた。こんな本が直木賞受賞作なんて……という,甚だ権威主義的な表現を,敢えてとった。書きっぱなしでそのことはそのまま忘れていたが,この本のことを僕に教えてくださった方からコメントをいただいていたことに,先ほど気がついた。やはりと言うべきか,少し気にしていらっしゃるようだ。ちゃんとお返事しようとすると,どうしても長くなる。妙な具合ではあるけれど,以下,日記本編の紙面を借りて,釈明を試みる。たぶんまともな釈明にはならないだろうけど。いただいたコメントには,恐縮です,とあった。恐縮と言えば,僕の方が,百倍は恐縮しなければならないはずである。人に勧めていただいた本についてボロクソに書いて,勢いでそのままアップしてしまった。……ごめんなさい。たぶん1つには,いわゆる「笑いのツボ」なるものも含めて,作品に求めるものが全然違ったということなのだろう。僕の感想はすでに書いたとおりで(「直木賞」云々は本当にどうでもよいのだけれど),繰り返しになるが,僕としては,「次々に登場する患者さん」たちが,みんな「同じ人」にしか見えなかったのだ。たとえばテレビの「水戸黄門」で,悪代官に苦しめられる,あの健気な娘さんたちのことを考えてみていただければわかりやすいだろうか。『空中ブランコ』の主人公(たち)も,いろいろな職業に振り分けられて,一見バリエーションは豊かだけれど(医師,作家,ヤクザ,そして空中ブランコ乗り--それぞれに華のある,ある種憧憬と羨望の対象になりやすい職業という点はみごとに共通している),苦しんでいる内容も,自分の悩みに対する姿勢も,その原因も,「救われ方」のパターンまで,型押ししたようにみんな同じなのだ。「対人関係や自分の生き方について悩む」ということ自体は,僕にとっても対岸の火事どころではないのだけれど,たぶんこのワンパターンさのせいもあって,感情移入は,ほとんどできなかった。たぶん,いろんな役で出てきたそのたった一人の「患者さん」の,そのたった一つの性格タイプが--それが,いかにも読者が感情移入しやすいように上手に造形されていることは認めるけれど--あまりにも僕自身のそれと違いすぎたのかもしれない。あるいはもしかしたら,しばらく前からテレビを見ることをやめてしまったせいで,こういうライトな作品を楽しむ能力が,根本的に退化してしまったのかも(そういえばこの作風は,いかにもある種のテレビ人の手になるものらしい--ある種の,とわざわざ言うのは,三谷幸喜とは,あるいは少なくとも(これまた直木賞作家である)向田邦子とは,区別しておきたい気持ちがあるからである)。構成の単純さ,主人公(たち)の悩みのわかりやすさは,むしろこのシリーズの美質の一つと言うべきだろう。受賞作というところからこじつけて,久生十蘭や広瀬正や,挙句には司馬遥太郎とまでわざわざ引き比べてあげつらったのは,だから,(僕のよくやる)意地の悪い無いものねだりだ。個人的なことだが,僕は,作者当人の姿が,(紙人形の操り手としてではなく)人の中で生きていくことのさびしさや痛みややるせなさを抱えた一人の人間として見えてくるような作品が好きなのだ。またいつもの偏屈癖かと,笑って見過ごしていただければ幸いである。無いものねだりを続ければ,「主人公の悩みと自分を重ね合わせて元気になる」ということなら,僕はたとえば,安野モヨコ の『働きマン』のような作品に励まされる。登場人物たちは類型的だが,それでも十分に感情移入を許す,ていねいなディテールの描写がある。人中に生きることに伴う悩みとその周辺構造についてのクールな分析と,その本質的な哀しさ・滑稽さ双方への,鋭くもあたたかい目配りがある。いずれにしても,これも先に書いたとおり,ハリネズミの登場を確認したことで,僕はこの『空中ブランコ』という作品に,十分満足しているのだ。「読んで損した」なんてことは決して思っていないし,教えていただいて本当によかったと思う。少なくとも,「ハリネズミ度」を指標にするならば,『空中ブランコ』は,『働きマン』よりも,明らかに格の高い作品なのである。ちなみに,これはずいぶんと昔,学生のころに,精神科医の笠原嘉(よみし)さんの本で読んだのだが,苦しい境遇にあるときの症状の出方を,(1)精神的な変調,(2)行動化,(3)身体化の3つに大別する考え方がある。性格タイプによって,この3つのうちで取りやすいものが違ってくるのではないか,という。この本の主人公(たち)のように,悩みが強迫症状として表現されるのは,その本来の悩みが,本人には認めたくないものであるために抑圧されてしまい,その押さえ込まれた感情が行き場を求めて噴出するが,本人には抑圧した悩みそのものの自覚がないものだから,原因の見当がつかずに困惑する--というようなことなのだろう(「抑圧」という機序を症状の根本に置く考え方はフロイトに始まるもので,確かにわかりやすいけれど,言ってしまえば非常に古くさい症状観ではある)。これは一見すると(1)の「悩んじゃう型」のようだが,抑圧→意外な形での症状化というメカニズムから言えば,むしろ(3)の「身体化型」に近いタイプということになるような気がする。主人公(たち)は確かに悩むが,それは当初,(本来の)対人的なトラブルについてではなく,突拍子もない衝動や不安についての悩みなのである。主人公(たち)は,(そしてもちろん,主人公に感情移入することができた読者も,)ファンタジーの域と言ってよい伊良部医師の天衣無縫すぎるあり方にふれることによって,その「認めたくない」という気持ちの元になっている意地や体面やプライド(すなわち社会的感情)の馬鹿らしさを教えられ,「癒される」。ハチャメチャな伊良部先生を仮に(2)の行動化型だとすると,これは,生真面目で抑圧的な「身体化型」としての主人公(と読者)が,気ままではた迷惑な「行動化型」の人物に出会って成長する,Type A meets type B. とも言うべき物語である(もちろん,実際の「行動化型」の人間の大部分は,伊良部医師のような傍若無人で気ままな人間とはまた違ったタイプのはずだが)。と,すれば。僕の場合,およそ基本的に真面目な抑圧タイプではなく,周囲に気兼ねしてあれこれ悩んだり,認めたくない自分のプライドや不安をと格闘するよりも,気の進まない仕事をぽーんとおっぽり出して,周囲に迷惑をかけかつ自分も困るという経験の方が多い,つまり「行動化型」の人間である。平たく言えば「困ったちゃん」だ。そのせいで,伊良部先生のドタバタぶりを見せつけられると,逆に居心地の悪さを感じ不愉快になる,という側面もあるのかもしれない(そう,「ただの阿呆ではない」ことを作者が毎度毎度念入りに確認するこの伊良部医師というキャラクターは,僕にとってはただひたすらに不愉快な人物なのだ--結局はそれがすべてなのかもしれない)。心の葛藤よりも身体化した症状よりも,その行動面でトラブルを起こしてしまうタイプの人間の多くは,伊良部医師とは異なり,(1)自分の問題行動を問題行動として認識するだけの判断力と社会性を有し,(2)それゆえに多少なりとも苦しみ,(3)さらには,そうやってちゃんと苦しんでいることをもって,自分を許すためのささやかな根拠としてしまっているのではないか。彼らは,伊良部医師のような人間が現実の社会の中で人並みの居場所を与えられることは限りなく少ないということを,日々,痛切に,骨身に染みて感じている。自分の行動の問題がわかっていて,それがトラブルにつながることがわかっていて,それなのにそういう行動をとる。危ないのを知っていながらダンプの前を横断し,そして跳ねられる。そういう人間が,自分と同じような,いや,明らかにもっととんでもないことばかりをしでかして,しかもパーフェクトにハッピーなままでいる人物を描写した“おとぎ話”を読んで,癒されたり,楽になったり,元気をもらったりするなんてことが,いったいあり得るだろうか?要するに--『空中ブランコ』シリーズは,「困ったちゃん」(=行動化タイプ)のための作品集ではない。主人公(たち)にせよ,彼/彼女(たち)に感情移入できる人たちにせよ,彼らとは別の,もっとまともで真面目で,適応的な人たちなのだ。実を言えば,僕は1月24日の自分の日記を読み返してはいない。たぶん僕自身が読んでも不愉快な文章であることは,想像がつくからだ。ただ,いただいたコメントだけを一読して,この文章を書いている。そのせいで,これがおよそ見当違いな文章になってしまっている可能性も多分にあるが,それでも読みたくないものは読みたくない。……僕にとっての「問題行動」乃至「心のトラブル」とは,たとえばこういうことなのだ。★最後に,日記らしいことをいくつか。その1。最近のKg君(小5)の関心事は,円周率(文部科学省によれば「およそ3」だそうだが)とともに,フィボナッチ数列をおぼえることである。もちろん僕が教えたわけではない。彼が1日に1冊を読む習慣を堅持している読書人であらせられることを知っているので,思いついて「『ダヴィンチ・コード』,読んだの?」と訊いてみたら,「なにそれ?」と返されてしまった。そりゃそうですね,小学生が読むのはちょっと,と思われるようなアダルトな描写もあることだし,基本的に人文系は,星座の恣意性を鋭く批判したりするKg君の守備範囲ではない。いずれにしても,中学も3年になってフィボナッチ数列という言葉をはじめて知った僕なんぞは,まだまだかわいい方だったわけであります。Kg君には,この前の授業では「解の公式」の証明をせがまれたし,そうそう,あの日は「4のn乗引く1が必ず3の倍数になるのはどうして?」という質問も持ってきたのだった。前者は平方完成,後者の証明には因数分解の和と差の積の公式を使う。やれやれ,彼には早いとこ因数分解を手ほどきしてしまった方がよさそうだ。その2。小さなシアワセ。選びに選んで,「こいつらはいらない」と決めた5冊の蔵書の「ブックOフ」での売り値の総額が,ぴったり290円だったこと。290円というのは,「松*」のメニューでサイドディッシュを除けば一番安い,「ヘルシーチキンカレー」のお値段である。前にも書いたが,「ヘルシーチキンカレー」は吉*屋の「牛カレー丼」と同じ値段なのだが,牛カレー丼より味付けが豊かだし,無料で味噌汁もついてくる。そして松*の味噌汁は,具の油揚げが,なかなかにぜいたくだったりもするのだ。その3。究極の貧乏メニュー,「うまい棒」スープを開発。ここにレシピを公開する--って,名前でわかるか。コンビニで売っている駄菓子の「うまい棒」を2つに折って紙コップに入れ,お湯を注ぐだけである。「めんたい味」と「サラミ味」の2つを試してみたが,青のり付きの「サラミ味」の方が具合がよかった。やや薄味ながら,なかなか汁物らしい味になるし,菓子本体もほどよく形が残り,(これは意外だったが)明石焼きにかなり近い食感だった。貧乏仲間はお試しあれ。ちなみに「うまい棒」は定価10円の駄菓子だが,○ーソンで買えば9円である。百円も出せば(僕はそんな大金は--「ブック○フ」から「松*」に向かう間の短い時間は別にして--持ち合わせていないが),なんと11杯も!飲める計算である。その4。Os君(高2)の個別中,J室長より携帯に電話。授業終了後,留守録を聞いたら,Am先生の代講の件で話があるので連絡をもらいたいとのこと。若い社員のAm先生はインフルエンザで,2日前から休みを取っている。社員なればこそ,安心して流感にもかかれるわけだ--なんて皮肉を言う資格は,望んでその立場を下りた僕にはない。折り返しかけてみると,J室長の携帯,留守電になっている。「11時過ぎてるし,もう家で寝てるんだろね」とOs君と話していたら,廊下から当のJ室長が登場。「上がります(=帰ります)!」と一言言い捨てて,歩み去って行った。……いろいろと疑問はあるけれど,まあいいや。
2005年02月06日
コメント(0)
★小5Kg君。他県から通ってきてくれている彼は,今はご近所の某大手エリート塾の生徒で,こちらに来るのは週に1度の僕の個別を受けるときだけである。彼は先日受けたそちらの塾の模擬試験で,上位1パーセント(つまり100人中なら1番)に近い順位を獲得,俄然やる気になっているという。何しろ秋までは我が塾の6年受験生に混じって理社の授業を受けていた飛び級少年だし,国算理社,どこにも穴がないから,まあ当然と言えばそのくらいで当然なのだけれど,このアベレージを今後も維持し続けることは,簡単ではないだろうと思う。 今回はなぜか,理科の偏差値が一番よかった。前に,星座がさっぱりわかってないので,彼くらいのときはギリシャ神話ファンだった僕としては,ついあれこれ言ってしまったのだが,「星座なんて,星はどんなふうにでも結べるんだから無意味じゃない。さそり座? こんなのサソリに見えないよ」と,ぶつぶつ言い返されてしまった。それでも気にはなっていたらしく,「最近,夜に空を見たら,オリオン座と冬の大三角形は,すぐわかるようになったよ」と得意げに報告するKg君。よしよし。「でも,それくらいしか見えないんだよね」「うーん,まあ,このあたりだとそんなもんだよ」「でも,うちの方でもそうだよ」「おんなじおんなじ。首都圏には違いないんだから」 Kg君,実は今回も星座のところ,少し間違えている。まあ,北天の北斗七星,南天のオリオン座の位置を示して,さて,真上を向いて全天のスケッチを作れば,この北斗七星とオリオン座はどんなふうに見えるでしょうか,なんて,確かに問題がいやらしすぎる気もするけれど。「えっ,だってこれだと,オリオン座のずっと上の方に,もう一回地平線が来ることになって,おかしいじゃない」と頑張るKg君。「だからさ,オリオン座から首をぐーっと上げて真上の天頂まで行って,そっからさらにぐーっと先まで行って,ブリッジして後ろ側の星空を見たら,ほら,頭の上の方に,北側の地平線が見えることになるでしょ」「あー,そう考えるのかー」と,さすがにわかりが早い。 理科の見直しを済ませて社会科に入ったところで,今度は東経140度の経線が135度の右か左かという話から,春分・秋分の地球の自転のイメージがわかないとか,北回帰線・南回帰線がよくわからないという話になって,地球儀の残骸を引っ張り出してああだこうだ言ってるところで,僕の次の生徒が来て時間切れ。模擬テストの見直し,1コマで4教科全部は,さすがに無理だったか。 折りしも今日,もう1コマ増やした方がいいでしょうか,との打診電話をお母さんから受けた,とTz副室長から話があったところだ。僕はもちろんTz先生にしても,チャンスさえあれば受講コマ数をガンガン増やさせてやろうという主義ではない(上が聞いたら腹を立てるかもしれないが)。Kg君は向こうの塾にも週に3回通っているのだし,これ以上増やす必要はないと思うのだが,見直しの済んでいない過去問がずいぶんたまっているのは確かだ。来月だけでも2講座に増やして,たまってる過去問を処理しちゃおうか,と本人に相談。明日,家に電話してお母さんと話し,最終決定だ。★中3Hy君の社会。暗記課題,今回も,完璧ではないが,真面目にこなして来ている。前回は日本の地形をざっとやったので,今日は農業。次回工業をやったら,歴史に移れそう。先に世界地理を見るべきだろうか? ちょっと悩む。★私立校3年のTd君。またZ会の数学の問題が宿題になっている。今回も解法がわからないような難問はない。1問だけ三角比問題があり,三角比嫌いの僕としては,何とか初等幾何だけで解けないかとかなり頑張ったのだが,無駄なあがきだった。しぶしぶ余弦定理を使って立式,連立方程式に持ち込み,二次方程式の和と積の関係から解を導く。やれやれ。
2005年01月25日
コメント(1)
★20代後半から30代のはじめまで。あのころは,年をとったな,と思うことがときどきあった。今にして思えば,年をとったと思うだけで済むこと自体が,若さの証拠だったのかもしれない。最近は,年をとったと思うことが最近多いな,と思う。一段メタ化したわけだ。やがて,森の中では「木が生えてるな」といちいち思うことなどないように,年をとった自分が当たり前になるころには,老化がすっかり完了しているのだろう。人間の認識は,つねに現実の変化を後から追いかけるものでしかないから。★年をとったことを実感した理由の1つは,今読んでいる本が,2冊ながらに司馬遼太郎の本だったりすることだ。1冊はエッセイ集だが,そこに収められた雑文の1つから『翔ぶがごとく』という作品を知り,10巻本の第1巻を買って読み始めた。去年の春,小6生たちに明治時代の歴史を教えたとき,明治の元勲たちの動きに興味をもって,司法卿・江藤新平を主人公にした『歳月』を読み,さらに興味を覚えた。あの作品は,『翔ぶが如く』という大作の副産物だったのだろうか? 司馬は西郷びいきのようだが,このことは大部分の読者の嗜好にもよく合っているだろう。大久保にはさすがにそれなりの敬意が払われているが,大久保に追随した官僚系の人物たちは,そろって小物のあつかいである。★今僕が読んでいるあたりでは,西郷は,渋谷金王町にある,弟・従道の屋敷に寄宿して,駒場野にウサギを撃ちに行ったりしている。渋谷-駒場界隈が,武蔵野の名残りを留める草っ原だったころの話だ。金王町の名前は,秋葉権現から来た秋葉原と同様,お社がその由来で,金王神社に由来する。先日読んだ『空中ブランコ』では,主人公の精神科医がクライアントを誘って,金王町歩道橋の表示を金○町に書き変えるシーンがあった。金王様の名前に馴染みのない人なら,一度は当然考えることだろうが,それにしても子どもっぽい。 この『空中ブランコ』,読了後,「直木賞受賞作」という表紙の腰巻きを,もう一度まじまじと見てしまった。あの久生十蘭が,何度も取り損なったという直木賞? 広瀬正が,これまた何度もノミネートされながら,ついに受賞を果たすことなく急逝した,あの直木賞? この作品集が? 拙いというのではない。「オール読物」誌連載の娯楽作品なら,こんなものだろう。ただ,どの一篇も,みな同じ話なのだ。主人公は変わる,ヤクザだったり医者だったり作家だったり,だか,人格的には紛れもなく全員同一人物である。そして,同じストーリーが繰り返される。奇妙な衝動や恐怖に取り付かれた主人公が,巨大な稚気のかたまりのような精神科医に毒気を抜かれ,やがて症状の改善を見る。作家を主人公とする最後の話だけが少し違っているのが--彼女を「癒し」たのは,医師ではなく,彼女の友人である--また小ざかしい。これが直木賞? 僕は確かに,年をとったのだろう。無論,故司馬遼太郎も,直木賞作家である。 ともあれ,『空中ブランコ』は,読書の愉しみのために手にとった本ではない。「ハリネズミ」という一篇がおさめられていること(Hさんに教えていただいた)のが読んでみた理由だから,文句を言う筋合いはないわけである。 主人公たちの衝動や不安には,決まって特定の心因があり,それは自分の生き方へのだったり,対人関係のストレスだったりする。このわかりやすさは,ある種の読者には歓迎されるだろうけれど,僕としてはあまりいい印象を受けない。乱暴な心因一元論につながるおそれがあるからだ。たとえば,僕には,パニック障害で長時間1人で電車に乗れない(乗れなかった)知人が1人ならずいる。そのような「症状」に,周囲の人間がワカリヤスイ原因を見つけてあげようとするのは,ある意味,かなり危険なことなんじゃないかと思う。 僕に関して言えば,今日,駅の改札を出るときに,前の女性が切符をもった右手に小さな箱をもっていたために,改札機に切符がうまく入れられず,彼女がもたもたと荷物を左手に持ち変え,右手の切符を持ちなおして機械の挿入口に入れるまで,僕はなすすべもなく待っていた。改札を出て,所用で郵便局に向かうとき,前から来た御老人が,腰はほぼ90度近くまで曲がって杖をつき,頭もほとんど真下にがくんと垂れているのに,つば付きの帽子をかぶっているものだからまったく前が見えず,僕は突進してくる彼のために道を明けなければならなかった。昨日は昨日で,よろよろ歩く酔漢を避けなかったために,廃語から罵声を浴びせられた。地下鉄を降りるとき,降車側のドアのまん前でぼーっと立っているぼんくらをどうやって脇にどかそうかと頭を悩ませるのは,ほぼ毎日のことである。「いらち」な人嫌いをもって任じている僕のことだから,こんな些細なことでも,毎日毎日不愉快な思いをして,それでもよく平然と電車に乗ることができるなあと,どうかすると自分で感心してしまう。職場から歩いて家まで帰れば,1時間半ばかりかかるのだが,赤の他人と狭い車両に詰め込まれる経験をしなくて済むのは,それだけでどんなにすがすがしいかわからない。我々は慣れているからなんとも思わないけれども,実は何十人もの“他人”たちが待ち構える狭い箱の中に平気な顔で乗り込んでいけるというのは,その方がよっぽど「まとも」でない,そう,「異常」なことのような気がしている。★「せんせい,最近もDVD売ってらっしゃいますか?」と,Ta先生の無邪気な質問。先日僕が「パイレーツ・オブ・カリビアン」のDVDを600円でブックOフに売っぱらった話をしたとき,彼女はずいぶん悔しがったのである。「ええ,売ってますよ,もちろん」 僕はやややけっぱち気味で答える。先週売ったのは,「猫の恩返し」と「ヴァン・ヘルシング」だ。と,横からTz先生が,「海賊版売りゃいいんだよ」と口をはさむ。「海賊版?」と,自他ともに認める世間知らずのTa先生。「市販のDVDをCDロムにコピーしてさ,売るわけ。インターネットとかで。違法だけどね。違法コピー」 Tz先生は,40代のベテランの先生だ。百科全書派だか何だか,フランスの古い時代の人文学を研究したが,なぜか学者にはならなかった。一見無頼派インテリの典型のような人なのだが,実のところ,彼は現役の司法試験受験生である。この業界の「センセイ」には,実は自身が受験生である人が少なくない。だから,彼については,やさぐれた法律家の卵くずれという形容の方が適切だろう。酒色の楽しみを愛することが甚だしく,一攫千金を夢見てロトを研究しているそうだ。言われなければ仕事場にかかってきた電話もとらないが,契約書類は期日までにきちんと提出していらっしゃるあたり,決してだらしない人ではない。 実のところ,Tz先生がパソコンの前に座っているところを,僕はほとんど見たことがない。実際にCDを焼いたりネットビジネスを活用したりといったことに精通しているのは,若い理数系の先生たちだろうが,彼らがそういう話題を口にするのを聞いたことはない。Tz先生の発言は,悪ぶった中学生のような知ったかぶりと言うべきだが,年配の方だけに,微笑ましいというよりはむしろ痛々しい気がする。 僕自身,社会の有益な一部品としての生活をとうにあきらめた人間だが,Tz先生はやはり,自分とは決定的に生き方の違う人だと思う。何だか興がさめて,DVDの話もそれ以上続ける気がしなくなった。『空中ブランコ』を読んで,その登場人物よりも作者と読者に対して思った「稚気」という言葉が,もう一度脳裏に浮かぶ。
2005年01月24日
コメント(1)
★小6社会。これで僕がやる小学生の授業は本当に最後だ。女子1名が受験当日でお休み。 教材は総まとめのプリント。今日も皆ちょいはしゃぎ気味。一昨日の入試の結果発表が出ているころで,まずは僕の個別も取っているおーちゃんことKk君の携帯に,お母さんからおめでとうメールが。やった! ぺえがそわそわし始める。何度か外に出て,携帯メールを確認している。やっと来た。合格者の受験番号の掲示を写した写真画像。あった! ないわけないのに,やっぱりうれしそうなぺえ。この調子で本命校のときもキメられるといいのだが。★うって変わって中学部。何だか欠席者が多い。というか,2クラスで1人しか来てないぞ。いつもどこかの教室でカリカリ自習をしているIg君。上位校を受ける三羽ガラスの1人だが,今や中学部のヌシとなりつつある。小6の妹さんも今年受験で,さっき僕が授業をしたトップクラスの一員である。普通は高校入試の場合,保護者は中学入試ほど過熱しないものなのだけれど,Ig一家はダブル受験のために,一家そろって受験モードで,面談なんかも実に熱心。ご両親がそろってお見えになる。 しょうがない,今日はマンツーマン授業だ。小学部で使ったまとめプリントをそのまま流用。うーん,やっぱり苦戦。社会は小学生の方が知識が細かいのだ。でも,このくらいはやっぱり知っててくれないとなあ。自習用にプリントを全部渡しておく。昨日も「先生,奥州平泉って何県ですか」と訊いてきたIg君,ちょっとだけ不安。★午後イチ,中3上位クラスの英語。さすがに三羽ガラスはそろっているが,あとは全滅。入試直前に授業をサボられるというのは,教える側としてはなかなかの屈辱なのだが,彼らがちゃんと来てくれたことは救いである。この面子なら,たらたら基礎の確認なんてやっても無駄なので,過去問に切り替える。筑波大附属高校(通称「ツクフ」)の,古めの問題。最新のものを使わないのは,彼らなら誰か1人くらいやったことがあるかもしれないからだ。 バリバリ過去問でセルフトレーニングができているこの連中は,授業もやっぱり過去問の方が盛り上がる。平常授業も過去問なので,あえて変化をつける意味で,日曜講座は単元や問題形式別の演習にしていたのだが。僕も解いたことのない問題だったが,バランスのいい良問で,うん,やってよかった。読解問題も,ちょっと子どもっぽいけど,わかりやすくてリーズナブル。天使のドレスを着て魚屋を手伝う少女の話だ。★下位クラスの英語。授業不成立かと思いきや,午後になって3人が来ていた。こっちのクラスは,つい数か月前にはじめて塾に来た子や,むかしのことなんかスッカラカンな子だっているから,基礎の確認がけっこう意味をもつ。前回に続き,前置詞のまとめ。下位クラスでもひときわダメダメなSk君,今日もなっちゃいないけど,実は某高校への専願推薦が通ったと,さっきOt先生から聞いた。おめでとう。本音としては,もう前置詞なんてどーだっていい!んじゃないかな。★オプション講座のリスニングが先週で終わったので,集団授業はこれで終わり。やれやれ。 コンビニに行こうとして,エントランスでSz君を待っているお母さんに会った。ごあいさつ。氷雨も降る寒い日なので,どうぞ奥で,と勧めたのだが,遠慮して1階ロビーから動かない。 後で,あらためてお菓子をもって見えて,数学の個別指導をしたOt先生に,いっそうていねいなごあいさつをしておられた。Sz君は,2年のときから個別を併用しながらどうにもならなかった子なので,彼の推薦合格は,本当に朗報である。我々から見ても行き先が心配な子である上に,お母さんがまた非常に苦労性でいらっしゃったから,本当にやれやれである。行き先が心配であることには変わりないのだけれど。★ウィキペディア,環境関係の法令の項目を大量作成しているありがたい人あり。ただし匿名子。コンテンツは,それぞれの法令の第一条の紹介に毛が生えた程度なので,早くも目をつけられて,いくつかは「削除依頼」が出されている。その削除依頼を勝手にひっぺがしたりしているあたり,執筆者はあまり協調性のある人ではないらしい。 削除依頼のページに,削除反対のコメントを書く。全ウィキペディアの今月中の削除依頼関係の記事が1ページに羅列されているから,このページ,むちゃくちゃ重い。アップできないんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたが,何とかなった。作成された法令ページを自分の会話ページにリストアップ。解説記事を加筆することで救済を図っていくしかないかな。荷が重いけど。★高2のOs君,指数関数。彼の高校は進度が遅いけど,さすがにややこしいところに入ってきた。ルート4を2に開くことすら気づかないOs君,答えが合わないので調べてみたら,216を126と書き間違えていたりするOs君が,曲がりなりにもこんな単元まで何とかついてきていることをこそ評価するべきなのかもしれない。
2005年01月23日
コメント(0)
★今日は千葉の渋谷幕張中の本番。12時からのKk君の個別が振り替えになったので,今日は家でゆっくりできた(応援には誰が行ったのだろう?)。 仕事場の近所の吉野屋で,カレー丼とおしんこと味噌汁。うまいうまい。★小6男子トップ,最後の授業。とはいえ,大部分は明日の日曜講座でも顔を合わせる子たちだ。何人かは渋幕を受けてその足で来ていて,遅刻者はいたが,欠席者がいないのはさすが。 子どもたちの雰囲気は,相変わらずハジケた感じにはしゃぎ気味。プリントで,工業都市などの確認。 沖ノ鳥島,「島ではない」と中国から文句が来ている件について,Kb先生から「R25」誌の記事を見せてもらったというぺえが,詳しく教えてくれた。ぺえは何でも知っている。今に始まったことじゃないが,どっちが先生なんだか。「国際的には,そこで経済生活が維持できるっていうのが国連法での『島』の条件なんだけど,日本の主張は,満潮時に海面上に出ているってことなの。沖ノ鳥島って,この机くらいしかねえから」「えっ,さすがに机くらいってことはないんじゃないの?」と僕。「前,机3つくらいって,授業で言ってなかったっけ?」と横からOg君。僕は言ったおぼえがないから,別の先生の授業だろうか。 うーん,それにしても,どうなんだろう。黒田硫黄の「大日本天狗党絵詞」に出てくる沖ノ鳥島は,小さな岩の塊を中心に,護岸工事で固めただだっぴろいコンクリの地面が,見た目一部屋分くらいの広さで広がっていたのだが。漫画を判断の根拠とするわけにはいかないし。 授業の後,ウェブで調べてみると,沖ノ鳥島は東西4.5キロ,南北1.7キロの環礁なのだそうだ。海面上に出ている部分は2つあり,それぞれ1メートルと3メートルほどの岩である。机1個というのは言いすぎだが,それにしても小さい。いや,「沖ノ鳥島 FAN CLUB あこがれの日本最南端沖ノ鳥島」によれば(あるんですな,そんなサイトが),満潮時にはわずか70センチの岩が出るだけというから,まさに机1個か。侵食による消滅の危険があるため,1988年の護岸工事では,285億円がかけられたという。 「日本の島へ行こう」というサイトの図解もわかりやすかったが,肝腎のところがわからない。もしも本当に「そこで人間が経済生活を営むことができる」ことが島の条件なら,どう見たってこれは島ではなく,岩である。中国のイチャモンは不愉快だけれど,正しい指摘としなければならない。だが,国土交通省東北地方整備局河川部(沖ノ鳥島と何の関係があるのかは疑問である)のウェブサイト「水辺倶楽部」によれば,沖ノ鳥島は国連海洋法条約第121条による「島」である,そうな。うむむ。 さて,こういうときこそ,我らが Wikipediaの出番である。まだまだ発展途上だが,こういう議論の多い論題については非常に充実している。「沖ノ鳥島」の項の記事によれば,中国側は、海洋法に関する国際連合条約121条3項に「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されており、「沖ノ鳥島」は島ではなく岩であり、排他的経済水域は設定出来ないと主張した。これに対して日本は同条約同条1項の「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう」を根拠に島であると主張している。とのこと。なるほど,さすが,ぺえの報告は的確である。要するに,国連法に矛盾した記述があるということか。条文の内容を明示しないで一方の主張のみを正しいとする「水辺倶楽部」の記述は,公平さを欠くとしなければならない。先月の Wikipedia の「ノート:樺太」での議論の相手のことをふと思い出した。残念ながら,客観的には,中国の言い分の方が正しそうだが…… 明日の日曜講座で,さっそく報告しよう。★それにしても,IMEは本当にひどい。半ば目の不自由な状態で使っていると,なおのことイライラさせられる。★理社の授業後,中3のNdさんとHiさんが職員室に来襲。この2人は明日,推薦入試の結果が出る子たちである。ちょうど千葉の入試を受けてきた小学生たちと同様,いつもより数割増しの狂躁状態にあるのだが,さすがは女子中学生,キャイキャピケラケラ,2人で女3人どころか8人分くらいのかしましさ。傍若無人にはしゃぎかえって,いっこうに帰る様子がないので,こちらが退散することにする。僕が腰を浮かせると,隣りのバツマル師もあわてて帰り支度を始めた。今職員室に残っている講師は我々2人きりだから,バ師も退散となると,教室を閉めることになり,結局きゃぴきゃぴ娘たちも追い出されることになる。待てよ,それならもうちょっと居残っていようかな……って,それでは堂々巡りか。あきらめて帰ることにする。 バツマル師が職員室から追い立てると,2人はとっととエレベーターに乗って先に下りてしまう。我々が降りて行ったときには,すでに影も形もない。穏和なバ師も「逃げ足がはやいやつらだな」と呆れている。逃げ足云々ではなくて,あとの人のためにエレベーターを開けて待つとか,お騒がせしてすみませんでしたとか,せめてさようならの一言だとか,人として当然の気遣いができるかどうかなのだが。「……20年後の姿が目に浮かぶようです」と毒づくいぬかわ。「電車の中で何が耐え難いって,うるさいおばさんの集団と同席するほどつらいことはないですからね」と,例のごとく無難な相槌のバツマル師。今夜も寒い。
2005年01月22日
コメント(0)
★今月から小5社会の担当をはずれたので(新人のKg先生が入ることになった),金曜日は休日になった。はれて「週7勤務」から解放されたわけである。ふう。小6ももうすぐ卒業だから,次年度は再び中学部のみの担当となる。その方がいい,と思う。小学部の先生たちは,本当に「子ども好き」な人たちが多く,中学部とは,明らかに空気が違う。★契約関係の書類を作るために,区役所・病院・銀行の3箇所を回らなければならなかったのだが,クリアできたのは区役所だけ。病院と銀行は週明けに行くしかない。★区役所は,神宮前保育園(幼稚園かな?)の隣りの出張所へ。いつも思うが,職員の方の対応が,とてもものやわらかでていねい。会社で必要な住民票の写しのほか,母に頼まれている印鑑証明登録も。本人証明ができないので(パスポートの発掘にはまだ成功していない),書類を送ってもらって,それを持ってまた来なければならない。★行きがけに青山のマクドナルドに寄ったので,青山通り,表参道,明治通りと,華やかな大通りばかりを通って一周する形になった。この5年で,ずいぶんいろいろと変わってるなあ。 帰りがけにブック○フに寄って,DVDを2枚売る。給料日から1週間で,すでにこの金額しか手もとにないのは,マズい。昨日,Ts先生が僕の片眼鏡を心配して,2,500円で眼鏡を作ってくれる渋谷の店を教えてくれたが,すでに定期券代さえ使い込んでしまっている今の状態では,その店に行くのは,来月になりそうだ。今月は一応,あてがないわけではないのだけれど,間に合うかどうか。
2005年01月21日
コメント(0)
★遅刻した。ヘコミ中。小6のKk君の個別。明日も入試の本番なのに! さすがに,J室長からも苦言をいただく。ううう。 Kk君,TOTO中はたぶん大丈夫だけど,もう一つの某中学は,一見して「知るか!」と言いたくなるような変な問題がけっこう出るので,点数が読めない。問題文の中のヒントをていねいにすくい取って求められるキーワードとロジックを洗い出すことが不可欠なのだが,そういうちまちました作業が,彼にどれだけできるだろうか。★今日は,雇用契約書と関連各書類の提出期限。意外に提出率がいいのでアセる。「いぬかわさんだけだよ,世間ナメてるの」と,ニヤニヤしながら,元のパートナー,今は上司のTz副室長。ナメてはいない,ナメてはいないんだけれど……まだ何もやってない。明日は1日フリーだから,区役所,銀行,病院と手際よく回って用事を済ませなければならない。★マクドナルドで,フィレオフィッシュとチーズバーガーを注文。レジでオーダーと支払いを済ませ,待って待って待ってから,「フィレオフィッシュはお時間いただくことになりますけど……」というレジ嬢のお言葉。「すでにけっこうお時間差し上げたと思いますけど」という憎まれ口を呑み込んでYesと答えたら,それからさらに,のべ10分ばかり待たされた。フィレオフィッシュの製造工程は,きっと裏の池で泳いでいる魚をすくうところから始まるのに違いない。まあ,自分が時間にルーズでお客サマやら同僚やらに迷惑をかけまくっている以上,僕には文句を言う資格がないわけだけれど。★小6非受験生クラスの授業。今日は特に事件なし。淡々と進み,淡々と終わる。長文の教材は井上靖の『しろばんば』。主人公が受験勉強に入るときの話だが,なんでそれを非受験クラスの教材に入れるかなあ。★中2英語。比較のまとめから受動態へ。カリキュラムから,ずいぶん遅れてしまっている。Ts先生の下位クラスは,もう比較も受動態も終わって,今回は接続詞なのだ。マズいマズい,駆け足,駆け足。 年が明けて,授業を受ける姿勢に,以前とは違った緊張感が出てきたような気がする。下位クラスもそんな感じです,とTs先生。★先週体験授業を受けたOtさん。まずは1週間,3教科それぞれの授業を体験してもらうはずだったのだが,1回目の僕の国語の授業を受けたあと,2回目の数学の授業には姿を見せず,今日,お母さんからお断りの電話があったという。本人にまだその気がないようなので,とのこと。 男子3人だけ(うち2名は極度におとなしめ)のさびしいクラスの上に,事務のHnさんのあの失言(本人に聞こえるところで,「体験生にしっかり営業かけてください」)があったからなあ…… とついつい他の要因に逃げたくなるが,1回の授業だけでそれ以上来る気をなくさせてしまったのは,やっぱり僕である。……ヘコむ。 なんかもう,何もかもがダメダメな感じ。そんな1日。
2005年01月20日
コメント(0)
★小6のKk君の個別。僕が個別をもっている唯一の小6生だ。元気で明るい素直なよい子なのだが,それがあまりに絵に描いたようで,教える立場から言えば,実はあまり面白みがなかったりもする。もちろんそんなのは無いものねだりであって,こういう「いい子」は,何だかんだ言ってありがたいのだけれど。集団でも僕の担当するトップクラスだから,優秀な子だ。受験勉強を始めたのがちょっとだけ遅かったので,特に歴史知識に大きな穴がポコポコあいていたのだが,ここにきてかなり埋まってきた。「東○大東○中,略して東東。トイレみたいで,ちょっとやだよね」「うーん,東東のトイレには,TOTOって書いてあるのかね。トイレのTOTOは,東洋陶器っていう会社の名前なんだよ。そういえば,八重洲ブックセンターのトイレは,大は知らないけど小の方のアサガオは,陶器じゃなくて,プラスチック製なんだよね。あれはもともとK建設の社長が,サラリーマンがほしい本を気軽に買いに行ける本屋さんがないっていうことで自分で作っちゃった本屋さんだから,トイレとかにも何かこだわりとか事情とかがあったのかもね」 たあいない雑談の合間に,知識の確認や時事問題の解説。まあ,便器の話が何かの役に立つとは思えないけれど。★小5の非受験クラス,相変わらず生徒はTs君だけ。1人クラスでも辞めずに続けてくれている彼には,感謝しなければならない。今日も文法プリントを進める。品詞分類。ときどきトンチンカンなミスが出るのは相変わらず。 先週の面談で,港区のどの中学に進ませるか迷っている,と言っていたお母さん。Tz副室長が,情報を集めてみるので1週間ください,と返事をしたのだが,僕もその後忘れていた。Tz先生から,本部の担当者にも問い合わせているのだが,あと3日ほど待ってくれとのこと。あわててネットで各学校のサイトをサーチ。 区立でも学校によって,掲載内容がずいぶん違う。学校によっては卒業生の進路の集計表まで載せてくれているのだが。港区の区立中の特徴は,少人数校が多いことだ。数年前に2校が統合されてできたばかりという学校も,少なくとも2つある。★昨日に引き続きの,中3Td君の個別。今日もZ会の数学だが,昨日に比べればとっつきやすい問題ばかりだ。昨日の問題は平成15年度,今日のは14年度だという。ってことは,難化したわけだね。ふむむ。★高2のOs君,大学付属の私学生なのだが,9月までに英検2級に通らないと,大学に進学する資格を失うのだと言う。あれ,そうだっけ? 道理で最近熱心に英語を勉強してると思ったら。予想問題をやってみたら,正答率が,一般問題で2割,リスニングで3割だったというから,お話にならない。少なくとも,この2月の合格は絶望的だ。週に2回の僕の個別では,科目は何でもいいと言ってあるのだが,最近は数学で手一杯。頭が痛い。年度が変わったら,僕も小学部の方の授業がお役御免になって,今よりはずいぶんヒマになる(はずな)ので,以前からの要望に応えて,週3コマに増やした方がいいかもしれない。
2005年01月19日
コメント(0)
★コンビニで買った「日本の神様がわかる事典」(正確なタイトルは失念)で,小さな発見がいくつか。1つは,うちの母方の家と深いゆかりのある,紀伊山地の某神社が,日本神話の原初神を祭る神社の筆頭に挙げられていたこと。ご神体は玉石なのだけれどね。もう1つは,お菓子の神様を祀る神社として,本社の次に挙げられていたのが,道後湯神社の境内にある摂社だったこと。母方の実家は道後の近くで菓子屋を営んでいて,僕も正月のお参りでこの神社でお払いを受けたことがあるのだが,何げにそんなに由緒正しい神社だったとは知らなかった。★Wikipedia 「クリ」の項のノートページで続けているクリ談義,一昨日にアップしたつもりの文が実はアップできていなかったのはショックだったが,昨夜書きなおして再アップ。今夜,さらに手を入れて形を整えた。クリもなかなか奥が深い。★小5Kg君の個別,過去問のチェック,算数の後は理科。あああ,前回クリアできなかった電流問題じゃないか。さいわい,Tz先生に1/R=1/R1+1/R2の公式を手ほどきしてもらった結果,僕もKg君も,この単元は怖いものなし状態に--なったのはいいが,Kg君,黒板に豆電球を10個以上使う複雑な配線図を描き,自分で解き始める。あいかわらずのマイペース。まあ,ものを学ぶ姿勢としては実に正しい。 授業の途中で,Kg君のお母さんから伝言電話,上着なしじゃ寒いから,駅までタクシーに乗りなさいとのこと。そう,この寒いのに,彼は学校の制服のカッターの上に何も着ていないのだ。「タクシーは高い,バスでいいのに」とぶつぶつ言うKg君。「だから,そのバスを待ってる間が心配だってことだろう」「えー,バス停についてすぐバスが来たら大丈夫じゃない」5年生にして中学入試問題をガンガン解きまくっているKg君だが,こういう理屈にならない屁理屈をこねるところは,やっぱり子ども。いいけど,来週また体調不良でお休みなんてことにならないようにね。★社会科個別の中3Hy君。彼はお寺を継ぐべく高校からは山陰某県に移る。受験が東京より遅くて3月まで時間があるのはいいけど,今までサボりにサボりまくってるので,都道府県名をおぼえるところから始めることになった。今日は2回目,前回の課題は意外にしっかりやってある。でも,中国四国地方はしっかりやってるのに,関東地方が何だかおざなりなのが面白い。現金だなあ。★千葉の名門私立に通う中3Td君の数学の宿題。Z会のテストが宿題というのも妙な話だけど。解法はわかるんだけど,手間のかかるものばかり。延長しまくった挙句,1問は明日送り。どの問題も,面白いことは実に面白いんだけど。でも,これだけの問題を100分というのは,さすがにちょっと無理でしょう,このテスト。★W学院に通う高1のHn君(年末に子ども図書館でばったり会った彼だ)より,名指しで電話。僕はもう彼の授業をもってないのに……と思ったら,「寒の入りっていつからですか? 今は大寒ですか?」という質問。ふふふ,そういうことなら,確かに僕に訊いいてくれたのは正解だ。お母さんのご質問である由。二十四節気は,Wikipediaのトップページから,すぐに調べられるのだ。
2005年01月18日
コメント(0)
★ふくやまけいこ「サイゴーさんの幸せ」,ハヤカワのコミック文庫。 上野動物園から脱走した動物たちのうち,ハリともヤマともつかない動物に,テレビのクルーがチクチクされるシーンが1コマ。ハリネズミはそんなことは絶対にしないから,習性から言えばこれはヤマアラシのはずなのだが(新大陸種か旧大陸種かは不明),それならば後ろ向きでなければならないはず。ふくやまけいこには,『タップくんの探偵室』という動物タウンもののシリーズがあるほか,『ふくやまどうぶつ大百科』という作品集もあるはずなのだが(彼女は,「モーニング」誌で連載中の子ネコ漫画「チーズ スイート ホーム」の作者,こなみかなたの友人でもある),チクチク系には興味がないのだろうか? ハヤカワの漫画文庫シリーズ,ほかにも,動物漫画家の佐藤晴美(講談社α文庫『マンガ 絶滅する日本の動物』の作者)や,ロックバンド漫画からファンタジー系に移った異色の少女漫画家,森脇真末美(新連載のタイトル決めに困って,まあ少女漫画であることは間違いないんだから,とやけくそ気味にタイトルを決めたという『女の子物語』は,ロック野郎たちの熱い物語で,「女の子」の登場シーンは非常に少ない)の作品が入ってるらしい。いずれも露出度の低い,貴重な作家たちだけど……問題は,果たして彼女たちの本まで置いてくれてる書店が,どこにあるかである。★中2の国語,授業体験生が1名,女の子。受付のHnさんが中学部職員室に来て,ちょっともじもじしていたと思ったら,口を開いた。「さっき,Tz副室長から電話があって,今日来る中2の体験生にしっかり営業をかけて,入室に誘導してくださいってことです」 あのねえ,Hnさん,その体験生,あなたがドア開けっ放しで話してる目の前の教室の,直線距離にして4メートルのところに,ちょこんと座ってたりするんだけど。あなたのその声も(たぶん)聞こえているんだけど。そういう生臭い話は,職員室に入って,ちゃんとドアを閉めてしましょうよ。 体験生さん自身は,おとなしめっぽいど,感じのいい女の子。Otさんというその名前は,娘さんが3人いる知人のライターさんと同じ名前だ。彼女の住所はこのご近所じゃないから,もちろん全然関係はないんだけど,それぞれにユニークなOtさんちのお嬢さんたちと,どことなく通じるものを感じさせる,面白そうな子だ。入室してくれるといいなあ。中2は女の子がまだ1人もいないので,内心ヒいてる可能性は大だけれど。 後でTz先生に訊いたら,「体験生のOtさんに,土曜日に受けた判定テストの見直しをしっかりやっておくようにという声掛けをしておいて」と,Hnさんに言伝を頼んだんだけど,という。Hnさ~ん,「体験生のOtさんに」までしか合ってないんですケド。最初もじもじしてたのは,言伝の内容を忘れちゃったからだったんですね。そもそも我がTz先生が,生徒に営業しろ,なんて無粋で無意味な電話を,わざわざ入れてくるわけがないのである。★バツマル師が岩波文庫の『哲学者列伝』のキュニコス派のくだりを読みながら,しきりにウケている。脳みそが半分フランス国旗の色に染め上がっているバ師は,大学と塾の授業と翻訳仕事の合間にも,ヘレニズム文化の研究に余念がない。『列伝』は僕も資料としてもっているが,通読しようとは思わないなあ。 なぜかキュニコス派のくだりにはハウチワマメなるものがよく出てくるのですが,どんな豆だかわかりますか--とご質問を受ける。ハウチワマメとは,実はルピナスの花がつける豆のことで,ノボリフジともいうそうな(ノボリフジなんて言うと,なんだか家紋の名前みたいだけれど)。ウェブで調べてみると,花の画像はいくらでも転がってるんだけど,豆の方はほとんど見当たらない。キュニコス派が好んで食べるくらいだから,およそ食用としては考えられないような粗食には違いないのだけれど。 「ルピナスって言えば,やっぱりモンティ・パイソンの怪傑デニス・ムーアのスケッチですよね」「へー,ルピナスの語源はラテン語の『オオカミ』。怪盗ルパンもこのつづりですね,そういえば」「いいですよね,キュニコス(犬儒)学派。僕なんか,キュニコスとエピキュリアンしか信用してませんから」とか何とか,例によって脈絡もなくひとしきり盛り上がる。
2005年01月17日
コメント(0)
さて,帽子男,見た目どおりの御仁でした。不器用そうな職員氏,異常なほど待たせた挙句に,冷蔵庫ほどもある馬鹿でかい荷物を抱えて登場。ああ,デカすぎてかえって目につかなかったか,正規の場所とは違うところに収納されていたか,おおかたそんな理由で遅くなったんだね,と見ていると,冷蔵庫みたいな箱を抱えて走ってきた職員氏,自分の椅子にぶつかって,ガッタン! 派手に荷物を落としてしまった。 さて,たとえば,食器の入ったケースを台の上に落として大きな音を立ててしまった,なんてとき,O戸屋なんかでは,たとえそれが客の目の前でも何でもないパントリーの中で,食器を割ったわけでも何でもなくても,それでもその場にいる全店員が,すかさず「失礼いたしました!」と口々に,でもはっきりと謝罪する。スタッフの失敗は店の責任であり,店の過失は店員全員の過失なのだ。大きな音に驚かされて,ちょっと眉根を寄せた神経質な客も,そこで気持ちよくクールダウンして,なかったことにできる。要はタイミングなのだが,そこがわからないのが元親方日の丸の悲しいところで,職員氏,さっきから見ていると,謝罪の言葉はわりに乱発する人のはずなのに,こういう肝腎なときに限ってとっさに出てこない。詳細は忘れたけど,「あ,落としちゃった,大きいですね,これ。汗かいちゃった」とか何とか,どうでもいいことをゴニョゴニョ言ったのが,失敗をごまかそうとしているような不愉快な印象を与えたような気がする。さあ,どうでるか,帽子男。「いや,落としたよな,今,オレの荷物」「あ,はあ,すみません」「すみませんじゃすまねえんだよ。人をさんざん待たせといて,どうすんだよ」「すす,すみません」「壊れたかもしれねえっつってんだよ。え,あんた,どうしてくれんだよ」 うわー,まるでコントか安ドラマか田舎芝居である。「誠に申し訳ありません。じゃあ,開けてみますか」「はぁあ?? なんでだよ」「ええ,ですから,壊れてるかどうか……」「な・ん・で,開けなきゃ,い・け・な・いんです,かぁあア?」「はあ,すみません」「だから,すみませんじゃすまねえっつってんだろうが。どうすんだよ,壊れてたら」「はあ,それはもう,ば,賠償を,きちんと」「ほーお,賠償してくれんのね。ここに言いに来ていいの,壊されたって」「ええ,まあ」「○○さんに壊されましたっつってよお」「ええ,ハイ」「どこに言ってけばいいんだよ,それを」「それはもう,窓口の者に言っていただければ」「そうか。じゃあ,壊れてたら弁償してもらうからな。なってねえんだよ,この野郎」 その後のやりとりはよく見えなかったが,彼はどうやら,職員氏に名刺を出させ,そこに自宅の電話番号を書かせたらしかった。そして荷物をかかえて,カウンターに向かったときと同じ,ゆったりとした足取りで出ていった。 どうやら,単なる短気な兄ちゃんではなく,そういう系統のお仕事も守備範囲に入れていらっしゃる,一応は本物のソレもんの人だったらしい。自宅の電話番号を取っていくあたり,さすがに押さえるところを押さえている。 それはそれとして,文句の一つも言ってやらにゃ,と意気込んでいた僕は,これですっかり毒気を抜かれてしまった。 もうあまり詳細に書くのも阿呆らしいので,手短に済ますが,帽子男に怒鳴りつけられた風采の上がらない職員氏は,実に熱心に僕の話を聞いてくれた。 「それはうちの荷物ですか」と言われた時点で,僕が簡単には渡さないぞという姿勢を見せると,無理に引き取ろうとはせず,「今日は持って帰られますか,すみませんが,とりあえずコピーを取らせていただけませんか」と言ってこちらに判断を委ねたのは,--僕が持っているのは結局他人の荷物なのだからちょっとどうかとは思ったが,--おかげで,かえって素直に引き渡す気になった。 相槌ももの慣れた感じで,「いや,それはひどいですね」「いや,私,その話は申し送り受けてないんですが,ほんとにお怒りになるのももっともです」「ちょっといいですか。……うーん,おっしゃるとおり,住所も名前も全然違いますねえ。ほんとにひどいなあ」…… で,とにかく,せめて,郵便事故の証明書のようなものだけでもいただけないか,というこちらの話に対しては,この話は早番の課長・課長補佐にもしっかり通して,できるだけ早いうちに,課長補佐から送り主さんに電話をさせて,送り返された荷物をまた郵便局にもってきてもらい,大至急お手許にお届けする,と約束してくれた。そういう明解な約束をいただいた上は,これ以上文句を言いつのれば言った分だけ,僕は--さっきのチンピラ君と同様に--ただの理不尽なクレーマーになり果ててしまう。あいにくさっき携帯電話の電池が切れてしまって,自分の電話番号も先方の番号もわからないので,昼前にあらためて電話して番号を伝える旨を話して,話を終わらせた--が,うーん,せっかくだから,やっぱりやっぱり,あと一言二言,言っておきたいぞ。 「では,そういうことで,よろしくお願いしますね。いや,この荷物の差出人と受取人の方もね,荷物が行方不明になっちゃって,きっとお困りだろうと思ったからですね,僕は今日実は,終電逃してしまったんだけど,ここに書いてあるこの住所の職場から,ここまでずーっと歩いて来たんですよ,この荷物持って」あー,我ながらなんとクレーマーらしい恩着せ台詞だろう。終電逃したのは,ただただ僕が間抜けだったというだけで,たまたま今夜当番に立ってしまった目の前のこの人はもちろん,郵便局にも何の責任もない。「うん,実はね,ほんとに困ってたんだよ,これ,行方不明になっちゃってね,どこに行ったんだーって。いや,持ってきてくれて,ほんとに助かりました」それそれ,おじさん,そうやって,クレーマー相手なのにすぐに敬語くずしちゃったりするところ,そういうところが素人さんなのよ。『社長を出せ!』って本,知ってます? まあとにかく,僕はすっかり溜飲を下げて,郵便局を後にした。さすがに,僕は結局,目の前で誰かに平身低頭,謝らせたかっただけなのかなあ,と思うと,どうにもすっきりしなかったが,とにかく取った行動に間違いはなかったということで,自分を納得させるしかなかった。 怒りは冷めていたが,眼鏡なしの近眼乱視目玉のおかげで,帰りもずいぶんサッサカ家までたどり着くことができた。 さて,翌日,職員氏に名前を教えられた,早番の課長補佐氏に電話。「ああ,はい,○○ですが。……ええ,たいへんご迷惑をおかけいたしました」と切り口上を返したなり,あとは黙ってこちらの出方を窺っている。うーん,昨日のおじさんの恐縮ぶりとは,またずいぶん感じが違うな。黙り合っていても仕方ないから,こちらから話を進めることにする。「で,えーと,昨夜の××さん,でしたっけ,あの人から一通りのお話は?」「ええ,うかがってます。荷物はもうこちらの手許にありまして,すぐにお送りするようになってますので。お送り先は,転送を希望されていた職場の方でよろしいですか? △△区▲▲……」「あー,ええ,そちらでお願いします」「わかりました。では,早急にお送りしますので」「よろしくお願いいたします」「では,失礼いたします」 ずいぶん淡々とした人で,なんだか事務的なやりとりになってしまった。それにしても,「もう手許にある」って,どういうことだろう? 昨日のおばさんの話では,もう先方に送り返してしまった後だということだったと思ったが。もしかして,僕が電話番号を伝える前に,送り主さんに連絡がついて,早くも郵便局に荷物を持ってきてもらうことができたのだろうか? ……こんなに早く? 後でわかったことだが,荷物は送り主さんのところには一度も戻っておらず,この2日後に,課長補佐氏の言葉通り,荷物は無事,「速達転送」扱いで,僕の仕事場に届けられた。月並みな表現だが,やれやれと胸をなでおろした。これなら,あの間違えて僕のところに届けられた荷物も,今ごろは本来の受け取り手のところに届いていることだろう。 思うに,先のおばさん担当者が言っていた「もう送り返されてしまった」というのは,渋谷郵便局から先方の地域の郵便局に戻ってしまったということで,まだご自宅に戻されるところまでは行っていなかったのだろう。……だったらそう言えよ! って言うか,ちゃんとそこまで調べろよ! 調べた上で,再転送なり何なりの手続きを(少なくともそういうシステムがちゃんと存在することは今回明らかになったのだから)取ってよ! 今回の事故で,一番とんでもないのは転送票を貼り間違えた職員だが,その次に仕事がダメダメだったのは,どう考えてもあのオバサンである。僅差で,電話を最初に取った,あのセントラル・サービス嬢が続く。彼女がまともな取次ぎをしていたとしても,おばさんがまともに動いてくれたとは思えないけれど。 それはそうと,例の帽子男は,あの後どういうアクションを取ったのだろう? 夜番のおっちゃんには本当に同情を禁じえないが,「郵便局ダメダメじゃん」という感想そのものは,結局くつがえることがなかったいぬかわである。
2005年01月15日
コメント(0)
さて,昨日の続き。夜中の12時前,僕は仕事場で,怒りに任せてこの日記を書いていた。隣りには,さっき個別授業を終えたO君。お母さんのお迎えを待つ間,Z会のテキストで英単語をおぼえている。「先生,これって,レイズ? ライズ?」だーっ。今に始まったこっちゃないが,高2の終わりにもなって,なんで raise が読めなかったりするかな,コヤツは。君の脳味噌は,火山灰地(水持ちが悪い)か,扇状地(水はけがよい)か? 「rise と raise の関係は,lie と lay と同じ。『上ガる』『横たワる』はア段でライズとライ,『上ゲる』『横たエる』はエ段でレイズとレイ。母音による変化が日本語と対応してるの。でもって,つづりにa(エイ)が入ってる方が,レイとレイズ」という内容を,実際にはこの20倍くらいの語数を費やして説明。「おーーーっ,そうだったの?」って,生まれてはじめて聞いたような反応はしないように。しかも,なんでわかりもしないのに,自分から自動詞とか他動詞とか言い出すかな,この人は。じゃあ,「手を上げる」だと自動詞と他動詞のどっちだ? うんうん,自分が手を上げるんだから,自動詞? ……ちがーーーーう!「先生,終電,そろそろヤバくない?」って,だったら,日記に集中させてくれ! 走りましたとも,誤配の荷物かかえて,地下鉄の駅まで。間に合わなかったけど。5秒差で終電のドアを閉められたけど。ううう,もしもこの荷物がなければ,って,そんなことを言ってもしょうがない。でも,もしも頑張って,あと20秒長く全力疾走していれば……電車には間に合っただろうが,間違いなく風邪をひいただろうな。 腹を立てることの効用はあまたあるが,その最たるものの一つは,長い歩きが苦にならないことだろう。退屈と憤怒ほど遠い感情もない。その上,知らず知らず歩みが速くなる。もう一つの効用は,多少の暑さ寒さは意識にのぼらなくなることだ。赤坂は弁慶橋の交差点にあるサトウ電機の電光掲示板によれば,夜1時の時点で2度だった--風もなかったし,平年のこの時期に比べれば,たぶんずいぶんと暖かい方だろう。 眼鏡が壊れていることにも,効用はある。周囲がよく見えず,距離感が取れないので,気づかないうちにずいぶん先まで来ていて,何だか得をしたような気になる。皇居外苑で星空を眺めて,あのぼんやりと霞んでいるのはスバルかな,と片眼鏡を取り出してみれば,それはなんと,全天一明るい恒星,シリウスだった。もう一度眼鏡をはずしてみれば,全天の星々が残らずスバル化しているのだった。ありゃりゃ。 山手線のあっち側から渋谷まで,1時間半ばかりを歩きながら,つらつら状況を考えるに,「もう返送されてました,すみません,じゃあさようなら」という対応は,やっぱりいくら何でもあんまりなんじゃないかという気がしてきた。郵便事故? 限りなくありそうにない話だ。日ごろからいいかげんな僕のことである,荷物を受け取るのを忘れていて,下手な言い訳をしていると思われたとしても不思議はない。せめて証明書でも出してもらえないだろうか? この時間では,担当者も管理職もいないだろうから無理か。ダメと言われたら,この荷物は一旦持ち返っちゃおうかなあ。発想がだんだんゴネ屋になっていく深夜思考。 さて,僕と同様,金曜日の終電にときどき乗ってしまうほどのうっかりさんならよくわかるだろうが,酔っ払いというのは,実にロクでもない人種である。銀座駅はまだいいが,新橋駅からどっと乗り込んでくるご機嫌な酔客の集団には,本当にうんざりさせられる。銀座線とは何の関係もないのだが,同僚の知人は,酒に酔って貨物電車にラリアートをかました結果,1か月入院したそうだ。 しかし,東京渋谷・夜中の2時という場所と時間帯に限って言えば,実はそんな時間のそんな場所に,シラフでいる人間の方が,よほどたちが悪かったりする。一応言っておくと,ホームレスの人たちは,その中では一番まともな方だと思う。僕は2年前,宮益坂の,渋谷郵便局のちょうど筋向かいあたりで落とした財布を拾ったというホームレスさんから連絡をもらって,半ばあきらめていた財布を取り戻したことがある。 渋谷郵便局1階で,念のため,携帯電話で証拠写真を撮影。と,1枚撮ったところでいきなり電池切れ。ううう,昨日も充電しなかったしなあ,そう言えば。 と,いきなり,自転車に乗った男がロビーに入ってくる。折りたたみ式の小さな自転車だが,ちょっとびっくりした。チーマー風の若い男で,ATMで用を済ました後,来たときと同じように,自転車に乗って出て行った。 渋谷郵便局の2階に上がると,意外なことに,4人もの先客が椅子にかけていた。カウンターでは,担当の職員さんが,何やらたくさんの封書を,大あわてで処理している。ちょっと迷ったが,「1列に並んでお待ちください」というプレートのところに立って待つことにする。 職員がようやく郵便物の処理を負え,「お待たせしました」と,客の1人,中年の男に声をかける。「控えがたくさんあって,混ざっちゃったかもしれないんで,これ,コピーになるけど」とかごにょごにょ言いながら,書類のやりといをしている。うーん,不器用そうな人だ。簡単に敬語が崩れてタメ語になってしまうのも,小さな局ならいいけれど,こういう大きな所では,何だかだらしない印象を受ける。 座って待っている残り3人の客のうち,2人はアベックだった。小声で楽しそうに話していて番が回ってきているのに一瞬気づかず,3人目の野球帽の男に促されて,男の方があわてて立つ。この先客は,封書1通で,すぐ用が済んだ。 さて,3人目。野球帽の男。サングラスもかけてたかな? ジーンズ,スニーカーというストリート・ファッションで,あからさまなチンピラではないけれど,カタギらしくないのは間違いない。凄みをきかすような,ゆうゆうとした動きでカウンターに向かう。ドスの効いた,低い声。20代半ばくらいだろうか。引き取り票を受け取った職員氏,奥に入ったまま,体感時間で5分かそれ以上も出てこない。不器用そうな印象は,はずれていなかったらしい。靴の爪先でトントンと床を叩き始める帽子男。不穏な予感。(続く)
2005年01月13日
コメント(0)
来月から僕が給料をもらうことになる会社--前にも書いたように,僕が勤めている会社は親会社に合併・吸収されることになったから,次の僕の勤務先というのは,かつての親会社のことである--の社名を口にするとき(対外的にはすでに会社が変わっているので,仕事場で外電話に出れば,いやでも口にすることになるのだが),つねに頭に浮かんでくる英単語が1つある。その単語は4文字からなり,fで始まり,kで終わる。 おそらくは今後3日間くらいの期間限定となるだろうが,今,同じ単語を僕に想起させるものが,もう1つある--「郵便局」だ。 これまた前にも書いたように,先月僕は,身分を証明できる書類をもたないために,不在郵便の引き取りを拒否された。それはいい。職員の態度は気に入らなかったけれど,要するに自分が一社会人としての常識的な手続きを怠っていることがそもそもの原因である。そのときは結局,職員氏のアドバイスにしたがって職場への転送手続きをとり,荷物はスムーズに僕の仕事場へと届けられた。 さて,そのときと同じように,大晦日,「郵便受けに入らない郵便物」が拙宅に届けられ,同じように部屋の主は不在だった。配達人は「郵便物お届けのお知らせ」を残して荷物を局へ持ち帰ったが,これもいつもどおりである。 僕だって,年末年始の郵便局が殺人的に忙しいこと(そして,その期間は郵便事故も起こりやすくなること)くらいは知っているから,預かり期間ギリギリの7日になって,渋谷郵便局に出向いた。今度ははじめからその場での引き渡しを要求したりはしない。職場への転送依頼である。 さて,1月7日の夕刻に転送手続きをして,今日12日の昼過ぎ,出社した僕の手許に荷物が届いた。うちの仕事場には遅くとも昨日11日に届いていたらしいが,よろずいいかげんな会社だから,実際にはもっと早く届いていたのかもしれない。だから,配達が遅いとかなんとか,目くじら立てて言うつもりはない。 問題は,僕が受け取った荷物が,僕宛てのものではなかったことである。僕とは何の関係もないAさんから,何の関係もないBさんへの荷物に,渋谷郵便局の職員Cさんが,僕の転送願いを貼っつけて,ごていねいにも僕の仕事場へ送りつけるよう手配してくれたというわけだ(僕は荷物の表書きから,AさんとBさんの名前を知っているが,不条理なことに,C氏の名前だけがわからない--これが逆なら,絶対にここで公表させてもらうところなのだが)。信じられない! ……いつからこの国はイギリス領になったのでしょうか,高尾慶子さん? この“事故”によって生じた主要な疑問点は,2つある。1.荷物が行方不明になったAさんとBさんはどうしてるのか?2.僕宛ての荷物は,今,どこで何をしてるのか? すぐに電話しましたとも,もちろん。常識ある社会人としては当然のことです。……つながらない。サービスコールのつながりにくさまで民営化ですか,郵便局さん。 すぐに切ってかけ直す。と,いきなりつながる。??? 応対してくれた若い女性の対応は,実にすばらしくそっけなく機械的で,誠意のせの字も感じられないものだった。もしいつか「未来世紀ブラジル」の日本版が作られるとしたら,ぜひ彼女を,セントラル・サービスの電話受付嬢の役(声だけだが)にご推薦して差し上げたいものだ。これが一種の(というか,紛れもない)クレーム・コールであることがわかっていないのだろうか? とにかく,こちらの事情説明をほとんどさえぎるようにして,彼女は僕が受け取りそこねた郵便物の元の宛先(僕の住所)と転送先(僕の仕事場),そして,現実に送られてきた郵便物の宛て先とを聞き出すと,担当者から折り返し電話をさせる旨を告げて,電話を切った。どうやら,彼女にとって唯一重要な使命は,事件に関係する全ての住所をチェックすることだけだったらしい。 その印象が正しかったことが明らかになったのは,待つこと15分だったか,20分くらいだったか,担当者を名乗る,今度は中年の女性からの電話を受けてからだった。声に当惑の感じられる彼女とのやりとりでわかったのは(「以前にも転送をお使いになったことがありますか」とか,ずいぶん妙なことばかり聞いてくる上に,何だかずいぶんと話がまどろっこしいなとは思ったのだが),受付の彼女が,まともに申し送りをしていないという事実だった。確かに3つの住所は担当女史に伝わっていたが,届いた荷物の宛て先以外の2つの住所がそもそも何なのか,彼女には伝わっていなかったし,そもそも,僕が自分宛ての荷物を受け取りはぐれていて,それがいまどこでどうなっているかを知りたがっているのだということさえ,担当女史は僕から聞いて驚いていたのだ。「そんなことは,私,今はじめて聞いたのですが……」って口ごもっちゃったりして,そんな素な反応返してどうするんですか,プロとして。確かに悪いのはあなたの同僚だけど,今は局としての対応をしているんでしょう? 結局,僕あての荷物がどうなっているのかは,担当部局に確認しなければわからないとのこと。受付の素敵なお嬢さんのおかげで,二度手間である。というより,そもそも!「でも,保管期限は1月7日で,今日って……」「ええと……」「13日で」「13日ですね」「ってことは,1週間近く経ってるわけですから,さすがにもう送り返されてしまってる可能性が高いんじゃないですか?」って,何でこっちがこういうことを言わなきゃいけないんだ。「はあ……,ですがまあ,生ものなどでなければ,1週間くらいは局に置いてあることもありますので……」はい? じゃあ,「保管期限」って,いったい何ですか? さて,この担当者さんから再度もらった電話によれば,僕あての郵便物は,保管期限の1月7日の2日後である9日(早!),無事に送り主のお宅に届けられていた由。えーと……1週間くらいは,とかって,何の話でしたっけ? ここまで頼りないとなると,大人げないとは思いつつ,嫌味の1つも言いたくなる。「えと,9日ってことは,速攻で送り返されてたってことですよね,結局」「はあ,まあ,翌日にもう一度お届けして,それでお留守だったということなので……」そりゃそうだ。こっちは職場への転送手続きをとっているのだ。仕事休んで,家でぼーっと郵便屋さんを待ってたりはしない。 電話を切ってから,考えた。 荷物を送ってくれた方は,2週間かけて荷物を郵便局から自分の家に送ってもらうために送料を支払ったことになる。送り返されてしまった荷物について,僕の方に何も言っていらっしゃらないところから考えると,僕が受け取りを拒否した乃至は怠ったと解釈して,多少なりとも気を悪くされている可能性がある。僕はと言えば,結局,荷物を受け取りそこねたわけだが,しかもこれから,誤配された荷物をもって,渋谷郵便局まで出向かなければならない(給料日前の貧窮状態で,財布の中には80円くらいしかないから,当然,行き返りとも歩きである)。 それより何より,僕のところに送られた荷物の送り主と本来の受け取り主は,荷物が消失して,さぞ困っていることだろう。ついでに言えば,名前から考えると,お二方とも,西洋種のミスターのようである。余計なことだが,問い合わせもままならない場合だってあるのではないか。どちらにせよ,日本人にとって,名誉になることでないのは間違いない。 こういう事故,こういう対応が,いったい民間の業者で考えられるだろうか? とりあえず,電話を受け付たスタッフは,担当者でなくても,一言は詫びの言葉を口にするのではないか。誤配された荷物は,即刻取りにくるのではないか。返送された荷物は,無料で再配送してくれるのではないか。 民営化? ……ふざけるな。 つぶ○て○○え,郵便局。
2005年01月12日
コメント(0)
1月1日から,仕事場の看板が変わる。今までの会社の看板が,吸収合併された親会社のものに変わるのだ。われわれ職員は,年度末に契約更新ということになるのだが,それに先立って1月20日までに提出する書類一式というのを,昨日Tz副室長から受け取った。 まず,A4用紙1枚の職員台帳。これには「保証人」の欄があって,保証人の氏名・続柄・生年月日・住所・電話番号・勤務先社名・役職・勤務先電話番号まで記入しなければならない。保証人の生年月日を何に使うのだろう? また,今までの会社と合併先の会社では,メインバンクも異なるので,銀行口座も新しく開かなければならない。今年度いっぱいで退職する人でも,指定の銀行に口座を開かなければ,1・2月分の給与の振込は受けられないという。やれやれ。まあ,実際には現場の室長レベルで調整するのだろうし,それを見越した上であえて居丈高な言い方をしているのだろうけれど,感じが悪いことに違いはない。 まだある。健康診断書。僕のまわりでは,これの提出が一番不評である。「この忙しいときに」というわけだ。僕などは,まず保険証を作るところから始めなければならない(いや,これは自分が悪いのだが--しかも,後でわかったが,健康診断に保険は効かないから,保険証は要らないのだった)。“3000円までは”会社が費用を負担してくれるとのこと。ありがたいことで。 ちなみに,職員の交通費の会社負担額は,新体制では1日あたり500円までになる--つまり,片道だと250円までだ。僕自身は地下鉄で1本(初乗り運賃区間内)なので全然困らないのだが,たとえばJRと地下鉄を乗り継いで来ている人なら,初乗りでもこの限度額を超えることになる。もちろん,超過分は本人負担となる。 それから,住民票と卒業証明書の提出。お役所じみた形式主義だ。住民票は300円かそこらだが(自治体によって違うらしい),これも自腹で取ってこなければならない。 そして,8項からなる「誓約書」。守秘義務の条項には特に「インターネット」の言葉があるから,この日記にも,仕事がらみのことはますます書けなくなる。もっとも,こう書いていること自体が,すでにして内部情報の漏洩であったりするわけだが。 某篤志家さんから届いたハリネズミ・グッズの詰め合わせ。先週,不在郵便で渋谷中央郵便局に戻っていたのを取りに行ったのだが,自動車免許も保険証もパスポートも持っていないような人間には,大事な荷物は引き渡せないらしい。「じゃあ,自宅に再配達してもらわない限り,僕がその荷物を引き取る方法は存在しないということですね?」と確認したら,しれっとして「その場合,差出人に差し戻しとなりますが,それでよろしいですか」とおっしゃりやがりました,局員氏。よろしいでしょうかだって? よろしくないぞ,と答えれば何とかしてくれるんだろうなアンタ,とか思っていたら,続けて「あとは,職場に転送するという方法もありますが」と言う。差し戻しとか言う前に,まずそれを言えよ! やっぱりダメだな,郵便局。その場で仕事先の住所を書いて転送の手続きをとったが,考えてみれば,身元証明ができないから荷物の引き渡しを拒否された僕が,どうして自分の望む所に荷物を転送することだけはできるのだろう。解せないシステムではある。 さて,その小包,ちょうどイヴに僕の手許に届いたのだが,開けてびっくり,予想していた以上にゴージャスなのだ。いや,この人にはいつも驚かされるのだが,今回も,海外の書籍をメインに,これも珍しい海外の雑貨や,果てはお手製の一品(詳しい取り説つき)まで…… 言葉に詰まる。今までだって十分そうだったのだけれど,これはもうどうあがいてもお返しのしようがない。せめて,愉しんで読んでいただいているらしい「資料室」の記事の追加・更新で何十分の一なりと報いたことにするほかはなさそうだ。とりあえず全品を改めてお礼状を認めるべきところだけれど,とてもいっぺんに全部取り出してみる心の準備ができない。今日でやっと半分くらいだろうか。ますます遅れる礼状である。 今日の僕の担当授業は,1コマ目が12時から1時半,2コマ目は6時から7時半。つまり4時間半も空きがあるので,いろいろ用のある上野に行ってみることにする。「いいなあ」とバツマル師,「優雅な生活だねえ」とTz副室長。ふっふ。べつに優でも雅でもないんだが。ってか,Tz先生の組んだ時間割のおかげで,時間が空いちゃったわけなんだけどね。 上野駅地下のファミレスで食事中,携帯にメール,ハリグッズ発見情報。それはありがたいのだけれど,誰からだかわからない。まあいいや。返信。(あとで判明,カーター卿でした。感謝) まずは駅前の玩具店,ヤマシロヤ。ひろみさんに教えていただいた「きりにつつまれたはりねずみ」のヨージクのぬいぐるみ……え,売り切れ? もう? 製造数自体少ないとのことだったから,きっと予約注文だけで全部ハケちゃったんだろうな。残念。かわりに童心の「はりねずみのリックS」(どこかで見たことがあるような気がするのだが,思い出せない。テディベア作家の誰かによるものとおぼしきデザイン)と,オーロラのディンプルシリーズのハリの,薄色バージョン(これもひろみさんのサイトで知ってはいたけど,実際に目にするのははじめて)を購入。ほかに,同じオーロラのシャーベット・バルーンのラージとミドルも発見(と一口に言ってしまうが,ラージの方は,大きめのソファークッションほどもある。まあ,販促用の非売品で,さらに3回りほど大きなサイズのものも見たことがあるけど)。ヤマシロヤ,なかなかハリ率高し。 お次は,上野の森美術館の「大兵馬俑(へいばよう)展」。日曜日なので,かなり混んでいる。兵馬俑そのものには実はあまり興味がなかったりするので,人混みの後ろからざっと見て回る。本当のお目当ては,「杜虎符(とこふ)」。これはトラの形を模した金属製の割符(色は黒,金色で古代漢字が記されている)で,中3のAさんから,会場でレプリカが売られていたと聞いていた。出口のところの土産売り場で捜したのだが,見つからない。さてはガセだったか? 自分もほしいけど,お世話になっているあの書家さんに,ぜひ一体お送りしたかったんだけどな。 しょうがない,「杜虎符」を写したペーパーフォルダと,古代漢字の手ぬぐいを買う。あとは「中国古代兵器展」と記された,いかにも流用ものっぽい古代武器フィギュアのセット。国語の授業で,「矛盾」という故事成語の説明で「ほこ」という言葉を使うが,一まとめに「ほこ」と訓読してしまう中国武器たちについての我々のイメージは,実はかなりあやふやである。こういう見本セットが手許にあってもいいだろう。戟(げき,ほこ)とか蛇矛(じゃほこ)とか方天戟(ほうてんげき)とか,三国志ファンが喜びそうなセットだ。18本の長柄武器がずらっと並んで千円ポッキリとは,さすが中国ものである。 最後に,国際子ども図書館。明治時代に建てられた荘重な建物が,「子ども図書館」というかわいらしい名前の印象を見事に裏切る。「本にえがかれた動物展 II」。今回は十二支でまとめているので,ハリネズミは発見できず。ただし,ひろみさんに教えていただいたように,ポスターに使われているイソップの肖像に描きこまれている動物の中に,ハリらしき姿が。ポスターを間近で見ても,モグラかハリネズミかはっきりしない。 その「子ども図書館」で,まさか知り合いに声をかけられるとは思わなかった。去年入試直前に個別指導で国語を見たH君。今は晴れてかのW学院高の1年生である。今でも試験前には個別を受けにきてるから,そう久しぶりではないのだが,お互いにびっくりである。「見慣れた後ろ姿だと思ったら」と笑うH君。うん,何しろしっぽつきだからね。彼によると,今日この近くの奏楽堂でコンサートを開くのだが(彼はピアノ担当),夕方まで会場に入れないので,父兄の1人の提案で,急遽この図書館のロビーで打ち合わせをすることになった由。僕もH君も,この建物に入ったのは生まれてはじめてなのだが,偶然ってあるものだ。 さて,教室に帰らなければ。JR上野公園口側にある公園出口から,車道沿いの側道を地下鉄の駅のある南側へ下っていくと,最後は階段になっている。と,後ろから,黄色い大きな自転車が。乗っているのは,元気なお婆ちゃん。「あら,やっぱり階段なのね。困ったわ」道をご存知ないということは,このあたりのご近所さんでもないのだろう,お達者なことだ。脇には車椅子の方も乗れるエレベーターがあるけど,自転車はちょっと。 というわけで,何だか漫画みたいだけど,いぬかわ,声をかけて,お婆ちゃんの自転車を階段の下にお運びいたしました。ずいぶんお礼の言葉をいただいて,かえって恐縮だったけど。「なんてうれしいのかしら」って,東京の育ちのいい方は感嘆文をさらっとお使いになることを実体験できて,こちらもうれしゅうございました。お婆ちゃんが,長髪に片眼鏡のヘンな風体の男と,目だけはできるだけ合わさないようにしていたのは,たぶん僕の気のせいなのだろう。今日耳にした,もう一つの名台詞。「……それでもどんどんぶつけちゃう。もう鬼畜以上だから」地下鉄の駅の出口ですれ違ったおばちゃん二人連れの一方の言葉だったのだが,いったい何の話だったのだろう。「鬼畜」って,おばちゃん世代にも浸透している言葉だったっけ?職員室で待機中,国語の授業に入っているTs先生から質問。「先生,ホニュウコウレイ・チョウモクってわかります?」テキストの文にあった言葉らしい。見せてもらうと,「哺乳綱霊長目」。……なるほどねえ,確かに,Wikipedia の記事でも,食肉目イヌ亜目イヌ科、なんていう分類階級の記述は,読みにくさが気になるところだ。かまわず続けて書いてしまうことが多いが,半角開けたり「・」をはさんだりする方が,読む人には親切だろう。 今日の最後の授業は,おなじみ高2O君の個別。O君,冬休みになって,ちゃっかり髪を茶色く染め直してる。「それ,新学期になったらまた黒く染めるわけ?」「んー,わかんない。たぶんね」彼は明日からスノボツアーだ。愉しんでこい。
2004年12月26日
コメント(0)
★ プチ欝,やや回復。前に日記を書いたときからずいぶん経っているが(ほぼ1か月だ),最後の日記のタイトルも depression で,笑える。というか,笑えません。笑えないって。★ 最近ずっとポケットに入っているのは,故グールド先生の『ニワトリの歯』。いつも思うが,真に科学的思考とは,こういうもののことをいうのではないか。日本の高校生は,3年間に1冊は,グールドの本を読むべきである(ついでに岸田秀もね。「科学的」ではないけれど)。今日はそれほど没頭していたつもりもないのに(人は誰でも,自分がハイエナの外性器の形成過程の話に没頭していたなどとは,なかなか認めたがらないものである),気がついたら3駅も乗り過ごしていた。1駅ごとにちらっと窓の外を見て,降りる駅はまだ先だと確認していたはずなのに,3駅にわたって,目に映った駅を別の駅と勘違いし続けたらしい。自分の人間としての性能が,日々確実に低下しつつあるようで,ちょっと哀しい。教室には遅刻したが,1コマ目は個別で,生徒のKg少年が僕よりさらに遅れてきたのはラッキーだった。★ 小6生の過去問,またジリジリとたまってきた。ヤバいヤバい。本日は月末につき,月報の締切。僕の場合,日々の日報をつけておらず,1か月分の日報をまとめて書くことが月報作りの作業に含まれるのだが(そんなものは「日報」の名に値しない?……そうかもしれない),毎週ほぼ7日ずつ出勤しているわけだから,これがけっこう億劫であったりする。もちろん,ちゃんと毎日つけていない自分が悪いんだが。結局,今日になってなお,手をつけるのを伸ばし伸ばしにして,終電の時間に間に合わなかったし。★ ここしばらく,Wikipedia をあまりいじっていない。先週「地球サミット」の項目を立てたのが,最後の大きな書き込みか。いやいや,その後で「レッドリスト」「レッドデータブック」にも加筆したっけ。官庁の(とりわけ環境省の)広報ページほどあてにならないものはない。レッドデータブック,2年も前に出てるじゃないか。経済復興が最優先課題というか,全国民的な悲願でさえある昨今,基本的にその脚を引っ張るような活動しかできない宿命がら,環境省の肩身が狭いのはわかるが,もしかして,文○科●省と同じような,使えない人材のふきだまりにされてしまっていないか(あ,でも,同じ文○省でも,僕が前の仕事の出入りしていた某部署の担当者は,みんな優秀で勤勉でいい人ばかりだったけど……と一応フォロー。でも本当のことだ。特に,体○課のS先生と競技●ポーツ課のT先生。世の中には「ちゃんとした」人だって,まだ少しは生き残っているのである)。「ウィキポータル/生き物と自然」のページで,主要項目一覧の「自然保護」の項に項目名を追加するうちに,まだまだずいぶん基本的な項目が抜けていることに気づいた。「生物多様性条約」もなければ「種の保存法」もない。とりあえずそもそもの発端から,ということで,「地球サミット」の項目を立てたのだが,後が続かない。べつに環境問題について,そんなに興味があるわけじゃないしなあ。一応,資料はいくらか仕入れてみた。法整備という切り口から書かれた畠山武道『自然保護法講義』,反動物保護運動の立場からの『動物保護運動の虚像』,その他その他。まあ当面は,現代用語辞典レベルの記事で,基礎事項の項目数を増やしていくことが課題なのだけれど。そんなわけで,dog breed の国際プロジェクトの人(ドイツの人なのだが,かなりアバウトな,味のある英語を書く。英語にt音とth音があることに納得がいかないらしく,tree of life が three of life になったり,ふつうidea(考え)と書くようなところで,代わりに thought と書いてる……ならいいのだが,どっこい taught になってたりする。楽しいからいいけど)から要請のあった全日本犬種の項目化と,勝手に着手した「日本の哺乳類」全種項目化の野望は,すっかり停滞してしまっている。哺乳類といえば,ここ数か月,ずっと哺乳類関係をいじってきたのだが,実のところ,この分野の活動的なWiki人としては,僕のほかにはAさんくらいしかいない。僕が「食虫目」の項目を整備したときにお祝いコメントをくれた人だ。その後,記事について何度かやりとりをしたが,最近はちょっとウザがられているんじゃないかという気がしてきている。彼の日記に,いくつか要らんコメントを書いたからなあ。ところで,そのWiki日記によると,Aさんは最近『絶滅哺乳類図鑑』を買われた由。良書である。彼も「衝動買い」と書いていらっしゃったが,僕もそうだった。ただの衝動買いではない,“青ざめながらの”衝動買いである。何しろ,税別1万2千円だ。だから,せっかく哺乳類分類学のテキストとして最良の1冊なのに,持っている人が非常に少ないのだ。活発な書き手であるAさんがこの資料を使えるようになったことは,ともあれ喜ばしい(とりわけ,これまでAさんがお使いの資料は,ちょっと情報が古いもののようだったから)。僕の最重要のネタ元が共有物になってしまったのは,ちょっと惜しい気もするけれど。しばらく前に,Aさんは齧歯類に着手されたのだけれど,僕がつい何気なく「ヤマアラシ」のことでコメントして以来,この領域への彼の加筆はぱったり止まっている。単にお忙しい日が続いているだけ,と思いたいが。僕の方は,気が向いたら,国内の哺乳類の種数では実は齧歯類をしのぐ最多数をほこっているコウモリ類に手をつけたいと思っている。せっかく手もとにいい資料もあることだし。★本家いぬサイトでは,最近珍しく掲示板でのやりとりがぽつぽつ続いている。いしいさんから,ハリネズミ型のまな板を送っていただいた。ありがたいことだ。ハリネズミ・スリッパの画像も。豊作である。彼女のお住まいのあたりには,ハリネズミファンの隠れ集落でもあるのだろうか。ひろみさんからは,ロシアアニメ「霧のなかのはりねずみ」のぬいぐるみ発売の報をいただいた。これが,おそろしく出来がいい。ハリマニアとしては,これはやはりゲットするしかない一品なのだろう。原作のキャラクターのかわいらしさがよく出ている。ひろみさんとは,最近なぜか,ペンギンの話をしている。ペンギン好きの方にペンギンの悪口を聞かせるのは意地悪だったかなあ。ペンギンは群居性の動物である。集団でぞろぞろと南極の(いや,赤道直下にもいるけど)白い氷の上を移動し,後には汚物が点々と散らばる。さて,彼らは今,水際にたどり着いたところだ。水の中には,天敵の海獣類が何かいるかもしれない。誰か1羽が飛び込んでしまえば,安全かどうか,すぐにわかるんだが。どうしよう。……こういうとき,ペンギンは“押しくら饅頭”をするのである。誰か運の悪いやつが(結果によっては,それほど運が悪いわけではなかったやつということになるが),ぼちゃんと水中に落っこちるまで,えいやえいやと押しあいへしあいするのである。万一,落ちたやつがシャチやらトドやらにブシュッと襲われたら……ああよかった,僕じゃなくて,と,皆が胸をなでおろす。100羽のペンギンの安堵の溜め息が聞こえてくるようだ。何だかなあ。後ろ足で立ってるだけでもう十分だと思うんだけど,なんでそんなとこまで,人間のカリカチュアみたいなんだろう。そして彼らは,真っ白な氷の世界の中,一つところに何日も何日も立ち続けて,自分の体温で卵を孵すのだ。★ 掲示板でペンギンの話になったのは,ウクライナ発の不条理?小説『ペンギンの憂鬱』からだったが,僕はその後,同僚のバツマル師に勧められて,『ダヴィンチ・コード』を読んでみた。「はやりものだし,歴史ミステリーに興味はないし,第一ハードカバーで重いし」と「読まない理由」をたらたら並べたら,バ師は「じゃあ,ご自宅にお送りしますよ」とのたまったのだ。そこまで言われては,読まないわけにはいかない。ありがたく拝借した(さすがに自宅送付はお断りしたが)。……うーん,面白い。歴史ミステリー謎解きアクションサスペンスなんて,どう考えても僕が手に取るべき本ではないし,魅力的なヒロインとの逃避行を続けながら,次々と謎を解いては困難な局面を打開していくダンディーな主人公(古典語には堪能なくせにフランス語はからっきしという,いかにもアメリカの小説家が考え出しそうな無茶な設定)は,まるでインテリゲンツィア版の島耕作だが,そんなことにこだわりさえしなければ,非常によく書けたエンターテインメントである。カトリック教会によって隠された女神信仰の歴史については,いくらかの脚色はあるものと考えて割り引いた方がいいのだろうが,そもそもバツマル師がこの本を読んでみたきっかけというのが,同じ大学に勤める古典学の碩学に勧められたからだというのだ。だとすれば,そうそういいかげんな話でもないのだろう。ちなみに,レオナルド・ダ・ヴィンチは,「ヴィンチ村のレオナルド」である。彼のことを「ダヴィンチ」と呼ぶのは,ドン・キホーテを「デラマンチャ」と呼ぶようなものではないのか。「ダ・ヴィンチ」という雑誌のタイトルも気になるなあ。★中3Abさんの襲撃。職員室でも際立って愛想のない僕のところにいちいち遊びに来るとは,相変わらず変なやつである。「……オタク? 僕が? 何言ってるんだか。君は日本語を知らないね。オタクっていうのは,職場の机の上に,ハリネズミ型の黄色いまな板飾って喜んでる人間のことじゃないぞ。ガンダムについて1人で3時間語るヤツのことだ(←我ながら暴論だが,実際のところ,本物のオタクが好物にする話題は,そんな誰でも知ってるドメジャー作の話などではあるまい)」「あー,いるいる。絶対勉強になるからって,総集編のビデオ貸してくれた人がいたけど,要約しすぎててよくわからなかった」何をやってるんだか,受験生が。「あー,まああんまり勉強にはならんと思うけど」「いいんだ,私いま,大好きな小説読んでるから。人気作ですよ」「作者,誰?」「小野不由美」「あー,あれだ,『十ニ国記』?」「キャー! 先生,知ってるんですか?」「よく知らないけど。『十ニ国記』の挿し絵は,山田章博が描いてるんだっけ」「キャー,山田章博さん,大好き!」まずい,話題がほんとにヲタっぽくなってきたぞ。でも,人は誰でも,譲れない領分というものを持っているんじゃないだろうか。持っているはずだ。ああ,持っているともさ。「山田章博は挿絵画家じゃないよ。あれで昔はちゃんと(?)漫画を描いていたんだ」「えー,漫画家だったんですかあ?」「そう,墨と筆,ガラスペンを使った流麗なタッチでね(遠い目)。何を隠そう,僕は高校生のころ,彼のファンクラブに入っていて……」って,ヤバい。この話が長くなると,ほんとにマズいぞ。このくらいにしておこう。★ 最近教室に入り浸って過去問をバリバリ解きまくっている中3のIg君(6年一貫進学校の名門,K高を受けるらしい)が質問に来る。珍しいことだ。慶O高校平成13年。男が妻に謝っている。ごめん,だけどやっぱり,彼女のことが好きなんだ。息子はまだ小さいから,僕のことを miss したりはしないと思う。「あー,この miss がわかんないんだね。I'll miss you.なんて台詞,どこかで見たことないかな。親しい人と別れ別れになるときなんかによく言ってる決まり文句なんだけど。知らないか。じゃあ,おぼえとくといいよ。miss っていうのはね,いなくなってさみしい,っていうこと。いなくなってしまった人のことを,ある種の喪失感とともに思い出すことだよ」「あー,そういうことか。ありがとうございました」理解の早いIg君,すぐに納得して職員室を出ていく。それはいいんだけど,中学生に読ませるものにしては,ちょっとエグくないか,このシチュエーション。KO高校……いいぞ(笑)。
2004年11月30日
コメント(0)
★危機は回避された。 土曜の午前中にあった小6生父兄の進学保護者会は本当に憂鬱だったが,何とか乗り切った。 憂鬱だったのは,生徒から預かっている過去問の答案のコメントつけと返却が遅れに遅れており,この機会に吊るし上げられるのは必至と思われたからだが,これはとにかく謝り倒して,今後は大丈夫ですからと受け合うことで,追及を受けるには到らなかった。 それでも,ご家庭でのご指導に一番熱心なOg君パパには,やっぱり「状況がわからないので提出を止めていたんですが,ほんとに状況は変わったと思っていいんですね」と確認にいらっしゃった。 さらに,僕のところには来なかったが(それがまたイヤなのだが),ThさんとTkさんのお母さんが,「社会の過去問が帰ってこない」とJ室長に直訴したようだ。Thさんには(つい前日だが)ちゃんと返してあるし,Tkさんの過去問は確かに手もとにあるが,たった1回分だけで,しかもファイルすらされてない。そもそもTkさん,授業中に当てると,5回中3,4回は答えられないで,誤魔化してばかりいる女の子である。社会は暗記科目だから,まじめにおぼえる努力を積んでいればできるわけで,現に上位クラスには,彼女ほどできない子はほかにはいない。こちらはこちらで何を言われても仕方がないのだけど,人に文句をつける前に,やるべきことをちゃんとやらせないとかないと,入試直前になっててあわてても間に合わないよ。★昨日も保護者会で朝から集合したのに,今日は今日とて,朝から日曜講座。理不尽だ。明け方まで睡魔が訪れないので睡眠時間が確保できない。眠いよう。★寝不足やら何やらで最近気分が落ち込みがちだったが,懸案の保護者会も終わり,過去問の返却サイクルにもめどがついたことで,ちょっと落ち着いたところで,新刊の漫画数冊を楽しむ。 岩明均「ヒストリエ」1・2巻,漆原友紀「蟲師」5巻,同「フィラメント」が発売。どれもいい感じだ。どんなに気分がみじめでも,本当によいものを知っていることは,最低限の慰めにはなってくれるなあ,と思いながら,ふと,今無性に見たいものをいくつか思いつき,メモを作る。たむらしげるのアニメーション「ガラスの海」,チャップリンの映画「犬の生活」,故グールドの科学エッセイ第3弾『ニワトリの歯』。Wikipedia では,グールドについて「複雑なものを単純化せず,複雑なままで説明する天才」としていたが,この紹介は実に言い得て妙である。さっそく渋谷に出て,『ニワトリの歯』は購入したが,DVDは,給料日まではちょっと手が出せない。と言いつつ,「Happy Tree Friends」の3巻がHMVにひっそり入荷されていたので,それだけはつい買ってしまったが。★上遠野浩平『しずるさんと偏屈な死者たち』。ハリネズミのチクタの物語が各篇の間に挿入される。僕の好みのタイプの話ではないし(しずるさんの絵に書いたようなアンニュイさと聡明さは,何だかなあだった),謎解きとしても,第一話以外はごく他愛無いものだけれど,この手のものとしては,よく書けた良質な作品ではあると思う。それにしても,「ヒストリエ」「Happy Tree Friends」と来て,なんでこうも猟奇ものづいてるのかなあ,最近。「ガラスの海」でなごみたいのに。★六本木の青山ブックセンターが閉店してしまったそうだ。おやおや。数号前の「モーニング」誌のサラ・イネスの近況報告に書いて合った。何ちゃらヒルズにも書店が入ってるそうだが,行く気がしないなあ。青山BCのように未明までやってるとは思えないし。 渋谷にできた文教堂は,なかなかいい感じ。センター街に売れ筋本専門店を出して本店を縮小してしまった大盛堂は,すっかり行く価値のない書店になってしまった。いまだに「本のデパート」のキャッチフレーズを使っているのは片腹いたい。★単発で個別指導を担当した中3Thさんから「チェンジ」を食らった。「合わないから」ということだが,言わせてもらえば,中3にして素行不良で女子校をクビになったチャラチャラギャルと「合って」たまるか(-_-メ。「チェンジ」はこの仕事に就いて初体験である。 数日後,今度は,内心いやいや個別指導を担当していた中1のSs君の家から,「本人が『合わない』と言っているので」退室したいとの電話。Ss君は読解力が皆無に近いのに,お母さんの期待度が高く,本人は伸びきったゴム状態なので,指導をしていても伸ばせる自信がなかった。僕としては本当なら「よっしゃ! 辞めてくれてありがとう!」ってなもんなのだが,Thさんの件と連続なので,さすがにちょっとメゲる。そんなになげやりな授業をやってたかなあ,最近。 とどめは,小6の集団授業。「過去問返却の遅れについてのクレームがあるので」ということで,クラス編成を変えて僕の担当生徒を減らす(小6のトップとセカンドの2クラスから,新編成のトップ男子クラス1クラスに)旨,通告があった。うーん,J室長はいつも角を立てないように話を通す人だから,この新編成には,過去問の件以外にも,何か僕には言えない理由がありそうだ。この時期になって担当クラスから女子がはずれたということは,もしかして女子に評判が悪いということなのだろうか? やれやれ。★授業後,中3Abさん襲来。世界史図説を片手に,アマラとカマラやらゲルニカやら His Master's Voice やらキリスト教の葬儀やら,気の向くままに好き勝手な話を小一時間ほどもして帰る。こういうヤツもいるんだけどなあ。
2004年10月31日
コメント(0)
小6生の持ってくる過去問の添削,早く片づけないと,たまっていく一方だ。悪い逃避癖が出てしまい,日記も放り出して,しばらく Wikipedia にハマっていた。タヌキ,スカンク,ノラネコ・ノネコ,ヤマネコ…… あー,どれもハリネズミやハリハリ動物たちとは関係ない……(T_T) いやいや,いぬかわ的には,十分関係があるのである。ティギウィンクル夫人はじめ,妖精のイメージを投影された英国のナミハリネズミたちは要するに「タヌキ」だし(おい(^_^;),「スカンク」はキノボリヤマアラシの,“新大陸固有種&怒らせるとコワい厄介者”仲間。厄介者と言えば,ハリネズミが問題視されることがある帰化種問題において,「ノネコ」は実は一番深刻な厄介者だし,「ヤマネコ」はトゲネズミと同じく,そのノネコやノイヌ,マングースの被害者グループに名を連ねていて-- ほら,こうやって並べてみれば,ほとんどトゲトゲ動物オールキャストである。 僕としては,ノラネコとノネコの区別には,やっぱりあんまりこだわってもしょうがないと思う。ネコは犬とは違うんだし。ノラネコや半ノラは,座敷ネコよりずっとネコらしい。僕も以前,自分の部屋でネコと暮らしていたが,最後まで不憫でしょうがなかった。それを不憫と言うこともまた,人間の傲慢さではあるのだろうけれど。 無条件の動物好きとそうでない人との間には,暗くて深い川があって,そのことがノラネコ問題をややこしくしている。まずは両者が,「利害も価値観も一致しないけど,それでも同じ社会の中で折り合って共存していかなければならない2つのグループ」として,自分たちのことをクールに認識することから始めるべきだろう。べつにノラネコ問題には限らないけれど。 スカンクには,べつに何のこだわりもない。分類上の位置づけについて,不適切な書き換えを見つけたので,ツッコミを入れて,元に戻してもらっただけ。 その人は,僕が最初に長い記事を書いたときに,祝福のお便りをくれた人だったから,ちょっと後味が悪かったけど……(まだまだ狭い世界なのだ) 当方がかなり舌足らずだったのに対して,先方が紳士的だったおかげで,終始穏やかに話が進んだのは幸いだった。 ただ,動物の系統図は今ちょうど,どんどん塗り替えられているところだから,ウィキの投稿者には,特に相当の注意深さが要求されると思う。「オオカミ」の項でかつてあったいがみ合いなんかは,たまたま自分の拠った資料にしがみついての不毛な喧嘩だった。僕も20代のころはあんな感じだったかもなあ。 日本のアニメ・マンガを紹介するフィリピンの雑誌の編集者と,ちょっとしたメールのやりとりをした。 その雑誌に以前掲載されていた「ゴキ友 Gokitomo」という漫画。日本人スタッフ(今は日本に戻っているそうだけれど)のアドバイスのもとに,そのフィリピン人の編集者さんが自分で描いていたのだが,ちょっと見たところでは,どう見ても日本人の描いた作品としか思えない。「ツカガワさん」とか「サキガワくん」とか「ケンセンくん」とか「キグライさん」とか,微妙に変な名前の人たちが出てくるので,やっぱりメイドインジャパンではなさそうだな,と察しがつくくらいのものだ。 その漫画に,テンレックという,マダガスカルの,ちょっと珍しい動物が登場しているようなので,うちのサイトの記事で勝手に紹介していたのだが,忘れたころになって,「ご紹介ありがとう」というメールが届いたのだ。何度かメールをやり取りしたが,実にいい人だった。 公式サイトのカウンタの数字は4桁しかなかったが,日本やアメリカでは,ちょっと考えられないことだと思う。ジャパニーズ・マンガのファンになるほどコアなオタクはさすがにそんなにいないのか,雑誌自体がまだまだマイナーなのか。 それにしても,フィリピン発で,日本の高校生たちが主人公で,しかもゴキブリがテーマだなんて,なんとカルト愛好家受けしそうな内容なんだろう。しかるべく手続きを踏めば,トンデモ本大賞にノミネートしてもらえるんじゃないだろうか。掲載誌を1セット送ってもらおうかなあ。 僕自身は,あの黒い虫とは,無論不倶戴天の間柄である。まだ“4センチ級”が少なくとも1匹,うちのキッチンに潜んでいる。昨日も惜しいところで逃げられた。今度の給料日が来たら,一番にしなければいけないのは,新しい捕獲器を買ってくることである。 「失神ごっこ」と「地下鉄の怪」の話を書こうと思ってたけど,例によって小ネタですっかり行数を食ってしまった。また今度にしよう。
2004年09月29日
コメント(0)
外苑前のO戸屋。店に入るとき,“ミズ・柳葉敏郎”が,客の忘れた携帯電話を握りしめて駆け出していくのとすれ違う。あーあ,あの人がいないとダメなんだよな,この店って。ミズ柳葉だけは,3人分の給料をとってもおかしくない,完っ璧なスタッフなのだけれど。先日,僕と同席した客のオーダーが通っていないことに気づいたのも柳葉嬢だった(もちろん,オーダーミスそのものは,別のスタッフによるものである)。 店に入ると,残っているホールスタッフは2人。若い男性店員が,入り口のすぐ近くで,同じことを何度も聴き返す小太りなおばちゃんのオーダーを取っている(「えーと,このセットなんだけど,ほかのものをつけないで,このお料理だけっていうのはできないのかしら。できる? これとかはつけないで? これもこれもなしで? そう,できるの?……」)。 もう一人は若い女性店員で,満席に近い客席に背中を向けて,のろのろと引き出しの備品の補充をしている。僕もウェイターのアルバイトをやっていたからわかるのだが,あれは本来,ホールに仕事がなくて手持ち無沙汰なときにやる仕事である。ほぼ満席で,しかもホールスタッフがたった2人しかいないのに,客席に目配りをしないで自分の世界にひたりきっているのは,そもそも言語道断。 男性スタッフの方も,客が来たのに自分の手が放せないなら,ヒマな同僚に席までの案内をフってくれればいいと思うのだが--結局,店の奥でゆるゆると「仕事」をしているスタッフの背中をにらみながら入り口で待たされていた僕を席に案内してくれたのは,忘れ物をしたお客さんをつかまえられずに戻ってきたミズ柳葉だった。もちろん,待たせたことを非常に恐縮して詫びながら,席まで案内してくれた--彼女には何の咎もないのだが。 それにしても,今日のスタッフは皆見慣れた顔だけど,あの女性スタッフ,前からあそこまで“使えない”人だったかな,と思って観察していると,彼女,今日は体調でも悪いのか,確かにまともに仕事をしていない。ミズ柳葉の方は,こちらがものの5秒も観察していると,視線に反応してパッとこちらを向くのが,もうほとんど達人の域なのだが,もう1人の“ミズ・のろのろ”の方は,そもそも客席なんて見ていない。眉根を寄せて,まるで目やにのたまった野良犬のように,やたらに目をしばたたかせ,こめかみをボリボリかいたりしている。僕の見立てが正しければ,あれは「あーあ,昨夜はせめてもう3時間早く寝とくんだったなあ」という顔である。もちろん,二日酔いでなければの話だが。 一度,ミズ柳葉がレジで帰る客の会計をしているときに,新しい客が入ってきたが,レジのミズ柳葉が「いらっしゃいませ!」と大声で言っているのに,のろのろ姉ちゃんは耳にも入らないらしく,振り返りもせずに帰った客のテーブルを片づけ,そのまま奥に引っ込んでしまった。レジで手が放せないミズ柳葉は,さすがに呆れたようにのろのろ姉ちゃんの背中に視線を送っていたが(それでも口元には営業スマイルが貼りついたままなのが見事),新しい客が待ちくたびれて勝手に空席に座ってしまうと,声をかけ謝罪し,レジから素早くメニューを届けていた。すごい! っていうか,のろのろ姉ちゃん,もうこの店には要らないでしょう。 この新しいお客のオーダーをとったときも,注文はたった1品だけだったのに,ぼーっとしていたのろのろさんは,「すみません,もう一度お願いします!」と訊き返していた。まあ女性だから,体調の振幅も大きかったりするのかもしれないけれど,ここまでくると,ちょっとすごい。 トラの模様は,黄色い地に黒縞か,黒地に黄縞か。「とらや」さんの看板を見る限り,地が黒で,文字が黄色である。欧米ではトラの毛色は黄色ではなくオレンジだというが,それはまた別の話。 そのとらや坂(勝手に命名)の赤坂豊川稲荷,今日が大祭日である。あまり時間はないが,赤坂まで歩いてみる。 最近,腹式呼吸にちょっと凝っている。所在ない長歩きの暇つぶしにもちょうどいい。こんなことで腹筋が鍛えられて腹がへっこむとは思わないけど,習慣化できれば,何らかの違いは出てくるんじゃないか。 お堂では太鼓を叩いてお祀りをしており,誰でも上がっていいということだったが,時間がないので鰐口の縄をふって(なぜか鰐口本体ははずしてあって鳴らなかったが)お賽銭を放り込んで手を合わせるだけ合わせてきた。 Ta先生が,日曜日の件のお詫びとして,風月堂のレモンサブレをくれた。「僕はいいから,それはTs先生に」と言うと,Ts先生の分はもちろん用意してあるという。それならと,遠慮なく頂戴した。 今日も職員室でお香を焚いたが,反応したのはそのTa先生と,数学・理科担当の若いMs先生。Ta先生は「何かいいにおいしません? 白檀のお香? ああ,やっぱり。やっぱりいいですよね,落ち着きますね」。彼女は専門が「平家物語」という,ちょっと浮世離れしたばーちゃんねーちゃんで,成田山のお寺の図書館なんかにもしょっちゅう通っているから,まあ白檀のお香くらいなら歓迎してくれるだろう,とは思っていた。 でも,ヒネた見方をする気はないけれど,Ta先生やバツマル師のような象牙の塔の住人たちは,どんなに呑気なように見えても,総じて先輩や上司に調子を合わせるのがうまい。そうでないと,右も左も「センセイ」だらけの研究室では,到底サバイブできないのだ。だから今の彼女の言葉も,半分方割り引いて聞いておこう。大ベテランのC先生あたりが「どうも教室が抹香臭くてかなわんねえ」とかおっしゃったら(まあ,針灸師として第二の人生を歩もうとしていらっしゃるC先生は,まさかそんなふうにはおっしゃらないだろうが),彼女,「そうですよねえ,ちょっと職員室って感じとは違いますよねえ」くらいのことはしれっと言いそうだ。その変わり身を,どこかからこっそり観察してみたい気もしないではないけれど。 うれしかったのはMs先生の方の反応で,こちらはパッとにおいに気づいて,デスクをぐるっと回ってお香の所在を確かめにきた。 「あ,やっぱりお香ですか。いいですね。どんなタイプですか。ああ,コーン型。僕はまだ始めたばかりで,うちではラベンダーのお香とかを焚いてるんですが……ちょっと拝見。あー,僕が買ってくるのは20個入りで300円とかだから,それに比べると,これはかなり高いものですねえ」 ふむむ,白檀だから高いのかな? 原宿のエイジアンな民芸雑貨屋をぶらついて,安いお香を捜してみようかな。 小5非受験生国語,Ts君の1人授業。深呼吸歩きのおかげで,のっけから自分の声がよく通ってうれしい。だが,肝腎のTs君は,宿題がけっこうボロボロ。ちょっと買いかぶっていたかなあ。特に,単語区切りの課題はずいぶん間違えていた。 今日は宿題解説とテキストの問題だけで時間いっぱいになってしまったので,文法プリントはなし。相変わらずのクズ・テキスト,普通,「随筆(1)」という単元で,沢木耕太郎の長野オリンピック・レポートを教材にするか? これも大きく分ければ随筆になるのかもしれないけど,これでは一般的な「随筆」というのがどういうものなのか,生徒にイメージが与えられないじゃないか。 小4生たちがどやどやと中学部フロアにやってくる。聞けば,クラスメートの1人がいたずらで教室をチョークの粉まみれにしてしまったので,代わりの教室を捜しに来たという。僕も小4生の授業を受け持ったことはあるけど,授業中に,なんでそういうことが起こるかなあ。 「で,先生は?」 「教室でそれをやった子を叱ってる」 いや,空き教室が必要なのはわかるけど,授業中に生徒に捜させてないで,自分で来いよ。ほんとに,小学部の若手は使えない。 後で,小学部の副主任のSk先生が来て,しきりに謝って行った。Sk先生も今年度いっぱいで辞められる由,次年度の小学部が心配である。 中3Td君,ますます私語多く,増長気味。彼は小林よしのりの愛読者だが,今日は授業前にかわぐちかいじの「ジパング」を読んでいた。この手合いは,どうしてこうも嗜好が型にはまっているのだろう。思弁なき国粋主義ごっこ。軍歌だ日の丸だだと悪ノリに拍車がかかる一方なのは,気の合う仲間でもいるのだろうか。単語・文法の力は,信じ難いが確かに身についてきているようだ。 Td君のお父さんは,最近銀行から証券会社に転職したばかりだが,もうNY支社に出張している。オフィスに日本人は数えるほどいない由。父親の出張のおかげでテレビが自由に見られると喜んでる息子の方は,どうしてこんなに英語嫌いなのか。しかも,せっかく数学が得意なのに,英語以上に理科が嫌いなので,文系に進まざるを得ないのである。どうすんだ,進路。 副室長のTz先生は,このところ,我が社が今年度いっぱいで親会社に吸収合併されることを説明する電話を生徒の保護者にかけるのに忙しい。明日は秋分で休日,明後日の金曜日は彼の公休日だが,土曜日に代講を立てて,木金土日の4連休をとって家族旅行に出かける予定の彼は,今日中にこの電話を終わらせてしまわなければならないのだ。 「いぬかわさん,合否判定テストの採点,入力までお願いしていい? 週末まででいいから」って,週末まででいいのは当然でしょう,Tz先生は来週まで出てこないんだから。 高2のOs君の数学,今日もアホアホパワー炸裂。土台が高2レベルの学力じゃないんだけど,テストも近いとなればそんなことも言っていられない。1週間前にやったことも,すでに忘却のかなた。いちいち最初から説明しなければならない。わめいたり叫んだり地団太を踏んだりしながらの個別指導,足掛け6年の付き合いだから,お互いに今さら気がねはいらない。 Os君が問題を解いている間に,少しでもと,小6の子たちの過去問の答案に赤を入れる。うーん,この時期だから仕方ないけど,みんなひどい点数だ。都道府県のシルエットを当てる問題,Os君にふってみると案の定,1問もできない。 「だけど,県庁所在地だったら,前に一応おぼえたよ。先生,問題出してみてよ」 「栃木」 「えー,栃木? 前橋は群馬だよね。何だっけ。じゃあもう1問」 「愛媛」 「えー,なんでそーいう微妙なとこばっかり出すわけ? 沖縄とか出してよ」 「沖縄・那覇は,サルでも知ってる。でも書けないでしょ」 「えー,こうでしょ」って,やっぱり那も覇もダメじゃん。 「で,これだけど,正解は何県?」 「福島」 「えー,オーストラリアじゃないの? これは愛知でしょ」 「……青森」 「あ,一番端? ほんとの向きは,こうか」 「それだと,逆さま。……あのね,君たちはエスカレーターで大学に上がれるけど,外部の人は,ちゃんと入試をクリアして入学してくるんだからね。そんなんじゃ,ほんとにムチャクチャ馬鹿にされるよ,大学で」 「うそーん,こんなの絶対できないって」 いや,できない方が明らかにおかしいんだが。大学付属高校なんて,全部つぶしてしまえ。 まあ,エレベーターの上で阿呆に磨きをかけてるお坊ちゃんは放っておくとして(「社会科も見てください」と言われたら,そうも言っていられないのだが),それよりも,現役の中学受験生が,高知県の形を選ぶところで,新潟県なんかを選んじゃっているのは,深刻な問題だ(まあ,似てなくもない,と言えなくもないが……そうか?)。答案をチェックしながら,溜め息。こんなサービス問題,落とさないでほしいなあ。せっかく,「明治時代に政府から足尾銅山を払い下げられた人物の名前は?」なんてふざけたカルト問題(答えは田中正三……じゃないよ,もちろん)と同じだけの点数がもらえるんだから。いや,それより先に,租庸調の「調」をひらがなで「ちょう」と書くのはやめろ。受かる気ないの? 明日は祭日。でも,個別生の飛び級少年Kg君が来る気でいるかどうか確かめてないし,金曜日にテストがあるOs君に追加授業を頼まれたので,僕はいつもどおりに出勤する。いい機会だから,小6生の過去問答案チェックやノートチェックを片づけてしまおう。
2004年09月22日
コメント(2)
★「デ*-ズ」のキノコ料理は最高,と書いたが,店員の熟練度は必ずしも最高ではない。人がまだ食べているのに「お下げしてもよろしいでしょうか」って,どういうこと(-_-メ?★火曜日も勤務日だが,仕事は個別指導1コマしかない。気楽な日。いぬかわの気持ちとしては,この日が休日である。★『不死鳥の騎士団』読了。新しい登場人物が多いが,例の不思議ちゃんを除くと,みんなあまりキャラが立ってない気がする。 今回死んだあの人も,以前の登場時のことをこっちが完全に忘れているし,この巻では最後まで,ぶつくさ言ったり口論したりしているだけで,一向にいいところを見せてくれていないので,死んでもあまりショックを感じない。作者はこのキャラクターを死なせたとき,台所に駆け込み,苦しさにしばらく動けなかったというが,作者の思い入れが空転して,読者が置いてきぼりになってはいないか。僕だけかなあ。作者のこの思い入れは,このキャラクターが若いころはドハンサムだったという設定と関係があるのかどうか。なんだか『マディソン郡の橋』みたいだけど(読んでないけどね)。 戦いのシーンも,これまでに比べて,迫力が感じられなかった気がする。ハリーが,トリオではなくグループで戦っていることは,彼の前進を表しているのだろうけれど。前回死んだのはただの顔見知り,今回は身内で,その点でもお話としては段階的に盛り上がっていることになるのだろうけれど…… ダンブルドアの謎解きも盛り上がらないし,カタルシスも弱い。全体的に,説明的に過ぎてノリの悪い回だった。 ハリネズミそっくりの幻獣「ナール」がやたら登場するのが救いか。救いじゃないって。 どうでもいいんだけど,松岡さんはどうして「かけら」を「欠けら」と書くんだろう。★給料日から1週間。ちょっと気温は高いが,かなり早め(と言ってももう午後だが)に部屋を出て,久しぶりに仕事場まで歩いてみる。 赤坂の豊川稲荷は明日が祭礼。サントリー美術館,ちょっと迷ったけど,結局入らなかった。お堀端の白い彼岸花たちは,早くも盛りを過ぎている。 皇居外苑の芝生,立ち入り禁止だと思いこんでたけど,夜だけだった。芝生で日光浴をしている人たちの中に,なぜか西洋種の人たちが目立つ。僕も真似をして,芝生の上で1時間ほど昼寝。気持ちいい! 起きてから,楠木正成像をはじめて見に行ったけど,何ということはなかった。だいたい,正成を忠臣の鑑に仕立て上げたのは,水戸光國である。北朝は名ばかりの自称天皇の系譜であって,正成はあんなデカい彫像になって外苑に飾られるほどの役者ではないはずだ。 丸の内に開店したイルムス。気持ちのいい店だ。ファルグ&フォルム Farg & Form の製品が置かれており,ハリネズミものとしては,マグ(白と紺グレー),コースター,ランチョンマットといったお馴染みの品が見つかったが,はじめて見るものとして,ポットホルダー(鍋敷き)があった。わーい。タグに「アカツキコーポレーション(株)」「made in India」とあるのがちょっと謎だけど。ほかに鍋つかみもあったけど,これにはハリのものはなかった。 丸ビルを,外から見物。隣りの文部科学省の方が気になるな。建て替え工事の間,どこへ移転してるんだろうと思ってたけど,こんなところに来ていたとは。★ちょっとした考え違いで,給料日20日前にして,いきなり財政難。うーん,7日までに少なくとも3万円,捻出しなければならない。日払いのアルバイトでも探すか?★昨日,今日と1本ずつ,職員室で白檀のお香(コーンタイプ)を楽しんだ。いいなあ,お香のかおりって。★「HOWDY!!」BBSで,香港の若手アニメーターが道楽で作った宇宙船ハリ親子のアニメーションを紹介。 ウィキペディア,チェック項目の一つに,久しぶりに生産的な更新があり,うれしい。「ハリモクラ目」の項に,ミユビハリモグラの新種についての加筆。加筆者は通りすがりの人。
2004年09月21日
コメント(3)
全128件 (128件中 1-50件目)