2006年11月06日
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今日のまとめ

1.価格競争力ではオーストラリア産の鉄鉱石が最も有利
2.市場占有率ではブラジルのCVRDが首位
3.鉄鉱石は年1回のレファレンス価格交渉により指標価格が決められる
4.CVRDはインコとの合併で世界第2位の総合資源企業に躍進

鉄鉱石市場の構造

前回は中国の鉄鋼業界が今急速に成長していること、しかし中国の鉄鋼業界は零細企業がひしめいており過当競争に陥っていること、投資対象としては寡占構造になっている鉄鉱石の株を買うほうが良いというところまで説明しました。世界の鉄鉱石の埋蔵量を見ると埋蔵量の多い順からウクライナ、ロシア、中国、オーストラリア、カザフスタン、ブラジルとなります。

しかし、鉄鉱石はどのくらい安く消費地まで届けられるかという事が重要です。一度に大量の鉄鉱石を運搬できるバラ積み船のほうが貨車やトラック輸送より効率的です。そのためウクライナやロシアは中国市場への供給という観点からは競争力はありません。輸送コスト込みでの価格競争力から見るとオーストラリア、インド、ブラジルの順で安いです(下図参照)。オーストラリアから中国への航行は鉄鉱石を積んだバラ積み船では15日を要しますが、ブラジルからだと30日が必要となります。この海上運賃の差が価格差の一因であることは言うまでもありません。

中国渡し鉄鉱石価格(CFR、US$/トン、リオ・ティント)

インドは近年著しい経済成長を記録しており、国内での鉄鋼需要も急速に増える見通しです。このため輸出に回せる余剰キャパシティーは今後逼迫してくると考えられます。従って今後もオーストラリアとブラジルが主要なサプライヤーであり続けると考えられます。今、海上輸送による鉄鉱石輸出市場のマーケット・シェアを見ると下の図のようになります。

海上輸送により鉄鉱石輸出市場のマーケット・シェア(%、2005年、リオ・ティント)



鉄鉱石の価格上昇幅は2004年が+18.6%、2005年が+71.5%、2006年が+19%でした。またペレットの価格上昇(下落)幅は2004年が+19%、2005年が+86.7%、2006年が-3.0%でした。

鉄鉱石ならびにペレットのレファレンス価格の推移(US$セント/メトリック・トンFeユニット、CVRD)

鉄鉱石の価格交渉はその年に交渉相手として選ばれた大口需要家の代表が鉄鉱石の生産者の代表とじっくりネゴシエーションして決められます。従って価格交渉の結果が判明する前後は思惑によって鉄鉱石の会社の株価が乱高下するケースもあります。その反面、ひとたびその年のレファレンス価格が決まってしまえば、その年の業績は比較的予想しやすくなります。

世界の総合資源会社の顔ぶれ

さて、世界最大の鉄鉱石の業者はブラジルのCVRD(ティッカー:RIO)です。同社はブラジルのみならず米州で最大の鉱山資源会社であり、また時価総額で見るとラテン・アメリカで最大級の企業です。CVRDはブラジル国内に870万ヘクタールの採掘権を所有しているほかブラジル国外にも1980万ヘクタールの採掘権を有しています。また、鉱山資源の搬出・輸出に必要な鉄道や港湾施設などの物流システムを所有・運営しています。

CVRDの売り上げのうち鉄鉱石は全体の75%を占めています。ブラジル国内では北部システムと南部システムと呼ばれる2箇所の基幹採掘・輸送システムを所有しています。ブラジル国内における鉄鉱石のリザーブ(確認埋蔵量と推定埋蔵量の合計)は79.8億トンです。ライバルのリオ・ティント(ティッカー:RTP)のリザーブが23.4億トン、BHPビリトン(ティッカー:BHP)のリザーブが28.4億トンであることを考えるといかにCVRDのリザーブが大きいかがわかります。CVRDの売り上げ高に占める欧州の割合は28.7%、続いてブラジル国内が22.6%、中国が21.2%という順番になります。

先のグラフで見たように距離的な問題からオーストラリアの鉱山のほうがアジアの顧客にとってコストは安いのですが、それでもアジアの顧客がCVRDからも鉄鉱石を購入する理由はヴォリュームの確保ということに加えて、ブラジルの鉄鉱石はアルミナの混入量が少なく、一般に加工コストがオーストラリアのそれに比べて低いことが指摘されています。CVRDは先日カナダのニッケル大手、インコ(ティッカー:N)を総額170億ドルで買収すると発表しています。これによりCVRDとインコを合わせた時価総額は789億ドルとなり、これまでの世界第4位から世界第2位に躍進する計算になります。

世界の総合資源会社の時価総額(10億ドル、2006年10月27日、コンテクスチュアル・インベストメンツ)

鉄鉱石・鉄鋼業界を巡るリスク

さて、鉄鉱石・鉄鋼業界を巡るリスクについて言及しておきたいと思います。先ず鉄鉱石は毎年価格交渉がなされるわけですが、彼らの顧客である鉄鋼メーカーが儲かっていないときには当然、すんなりと値上げが通らないことが考えられます。場合によっては前年よりマイナスで交渉が妥結するというケースも想定しておかなければいけません。

次に昨今の需要増でCVRDなどの企業は増産体制を強化していますが、生産が需要に追いつかない事態もありうると思います。単に鉱山における生産性だけが問題なのではなく、輸送ボトルネックなどの可能性も考慮しなければなりません。港湾施設のキャパシティーが追いつかず、デマレージ(滞船料)が発生するという可能性もあります。

さらに露天掘りの採掘現場で使用される超大型鉱山機械の不足も心配されます。特に大型トラックの大口径タイヤは慢性的な品不足に陥っています。これらの不足で契約通りの出荷量を確保できなかったり、売り上げ目標を達成できないなどの問題が生ずる可能性があります。さらに採掘現場での事故やコスト・オーバーランのリスク、環境問題が発生するリスクもあります。









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最終更新日  2006年11月07日 18時32分05秒


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