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2008年10月27日
第145回 「ドル不足」について
カテゴリ:
カテゴリ未分類
今日のまとめ
3. 加えて「ドル不足」は米国経済の減速の結果として生じる
4. 「ドル不足」は新興国経済の急激な鈍化のリスクを高める
■「ドル不足」とは
最近、よく聞く言葉に「ドル不足」という表現があります。この「ドル不足」というのは昔から金融市場で日常的に使用されている経済用語ではなく、新しい流行語です。造語である以上、その定義は未だ定着していない観がありますが、私の考えでは現在の「ドル不足」とは次のような状況を指していると思います。
【証券取引・企業の財務取引などに起因するもの】
これは極めて短期の、今、起こっている状況です。先ず世界のマーケットが混乱しているので投資家は不案内な遠い外国への投資を減らし、自国に資金を呼び戻し(=これをリパトリエーションといいます)ています。たとえば外貨建て投信を解約する行為というのはリパトリエーションの一例に他なりません。その場合、実際に投資家の要求に応えて運用会社がやることはそのファンドで持っていた外国の債券や株式を市場で売却し、現地通貨を売り、日本の投資家にお金を返す場合は円に転換、またアメリカの投資家の解約に応じる場合はドルに転換するわけです。これは円買い、またはドル買いの需要を増やします。
そういう証券投資からくるドル買いのニーズに加えて金融機関の信用供与の打ち切りという問題があります。つまりサブプライム問題により大量の価値の毀損した流動性に欠ける資産を抱え込んでしまった米国の金融機関はこれ以上リスクを増やすわけにはいきませんから外国での融資の打ち切りなどの措置を講じます。するとこれまでなんの不自由もなくドルでお金を借りられていた企業が突然、資金繰りに困ったりする事態が発生するのです。「借り換えができない!」この「寝耳に水」の事態に直面して企業の財務担当者は「ドル不足」を実感しているわけです。
これらの「ドル不足」の事態を一層深刻にしている要因が新興国の銀行や事業会社が「世界で最も有利な金利の国から資金を借りよう」という発想で有利な条件を求めた結果、日本円や米ドルでの調達を増やしていたことが裏目に出たということが挙げられます。国際的に評判の高い、信用力のある企業ほど資金政策の高度化、国際化を進めていましたから突然、資金を引き揚げられて「立つ瀬が無い」状況に陥ったのです。
【米国経済の減速に起因するもの】
アラクルーズの株価チャート
(出典:データ360ドット・オーグ)
米国の貿易赤字が減るということはすなわち新興国など、米国への輸出で外貨を稼いでいる国の外貨の積みあがりのペースが鈍化することを意味します。
つまり全体の量として米国国外に蓄積されるドルの増え方が減速したように見えるわけです。これがドルの「不足感」を醸成するのだと考えます。
■「ドル不足」が意味するもの
さて、それでは「ドル不足」は世界の経済にとってどういう影響を持つのでしょうか?現在のように世界の投資家や事業家が経済の先行きに不安をもっている場合、「国際化なんて、ろくなことは無いな」という消極的な発想がどうしても台頭します。すると経済政策が内向きになります。1930年代のアメリカの大恐慌はスムート・ホーレイ法に代表される国内優先政策があだとなって逆に世界経済の混迷を深める結果となったと今では広く理解されています。従って世界のリーダーはその過ちを繰り返さないよう、一致団結して問題解決に取り組もうとしている態度がみられます。これは大変心強いことです。しかし
ひとたび国のレベルから金融機関、ないし事業会社のレベルに降りてくると事態は深刻
です。つまりビジネスのレベルでは世界のいたるところに自由な資本取引の断絶が既に起き始めているのです。これまで好調だったBRICsなどの新興国ほど資本調達コストの下落の恩恵を大きく蒙ってきました。それが突然、奪い去られると新興国ではモノが生産できなくなるばかりではなく新しく開花した消費セクターにも深刻な打撃を与えます。すると新興国の経済成長が大きく減速するリスクが出るのです。
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最終更新日 2008年10月27日 19時27分53秒
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