2006年01月20日
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 「景気が回復した」というマクロの数字や報道、政府・エコノミストなどの見解を目にすることが増えてきた一方で、「都市と地方では景気回復に差がある」、「『勝ち組』と『負け組』の差は一段と開いている」といった、経済「格差」の問題が指摘されることが多い。

 こうした、地域差の問題とも関連するが、資産・所得の階層別の景気回復にも差があるようだ。この現象は、消費の動向とも絡むので、景気全体の判断と共に、投資銘柄の選択などにも関係してくるので注目しておきたい。


■百貨店vs.コンビニ

 これは、さる消費関連業種の社長さんと話していて気がついたことなのだが、どうやら主な顧客の「階層」によって消費回復には時間差があるようなのだ。
 以下のような現象が象徴的だと思う。
 昨年の12月の年末商戦で、一部の百貨店の売り上げが史上最高になるなど、景気の回復が消費にも及んで来たことをうかがわせるニュースがあった。忘年会で、東京の繁華街に出た時にも、久しぶりに帰りのタクシーが拾いにくかった。読者の中にも、同様の経験をされた方は多いのではないだろうか。往事をご存知の方は「ああ、バブルの頃のようだ」と思われただろうし、知らない方も、確かに景気は回復したという実感をお持ちになったのではないか。
 しかし、昨年の第4四半期、コンビニの既存店売上高は、各社とも対前年比何パーセントか悪いのだという。コンビニでは、まだデフレは終わっていない、ということらしい。
 確かに、消費者物価がやっとゼロよりプラス(ほぼゼロ)ということは、原油など国際商品市況の影響を受けてプラスになる商品があるのだから、一般消費財はまだデフレから抜け出していないのだろう。
 コンビニの関係者に聞いたところ、弁当なども相対的に高額の商品は売れ行きが悪く、顧客の意識の上でも、同じ質の製品は、いずれ価格が下がると期待する向きが多いという。また、100円ショップのような業態の売り上げは健闘しており、顧客の購入単価はさらに下がりつつあるようだともいう。この話を聞く限り、コンビニの客層に関しては、景気回復の動きが見えていない。



■稼ぎ方から見る三つの「階層」

 上記の状況に関して、可能な解釈は、稼ぎ方で見た「階層」によって、個人単位の景気回復(≒所得拡大)には時間差があるのではないか、ということだ。
 それぞれ主な所得の源泉から見て「給料階層」、「ボーナス階層」、「株式階層」の主に三階層が考えられる。
 たとえば、主に年収数百万円のレンジで、正社員であるとしても、収入の大半を給料に依存するグループを「給料階層」、外資系証券のフロント業務の社員などが典型的だが、成果に応じたボーナスが主たる収入源となるグループを「ボーナス階層」と呼ぶことが出来るだろう。医者や弁護士のような、高所得の自営業も、変動するフローの稼ぎによって所得を得ているので、ボーナス階層だ。これらに対して、近年、存在感を増しているのが、主に創業者や創業時の社員だが、株式によって一気に大きな資産を獲得している「株式階層」だ。ボーナス階層の所得が主に数千万円なのに対して、こちらは、一年当たりに換算して億円の単位になることが珍しくない。これらに、あえて付け加えると、いわゆるニートの場合は、「お小遣い階層」とでも呼ぶべきだろうか。
 さて、これらの「階層」の損得を時系列的に振り返ると、まず、「株式階層」は、昨年の年央の時点で、既に資産を何割も増やしていた公算が大きい。IPOを通じて、新規にこの階層に仲間入りした人もいただろう。また、彼らは、概して不動産取得に積極的なので、都心部の不動産価格の高騰の恩恵も受けている可能性が大きい。彼らの景気がいち早く回復していたことは疑うべくもない。
 続いて、成果主義の下の「ボーナス階層」の場合、12月にボーナスを貰った人もいるだろうし、外資系企業のように(外資は1-2月が多い)、まだボーナスを貰っていなくても、一年の稼ぎが見えてくる昨年の暮れぐらいには、所得の拡大に自信を持っただろう。
 これらに対して、数では圧倒的に多いはずの「給料階層」だが、正社員の雇用と固定給の引き上げには企業側が慎重になっていることもあり、日本の稼ぎ頭とも言うべきトヨタ自動車のような企業がやっと、この春から賃上げを認めようかといった情勢だ。サービス業や中小企業などでは、月例給が上がるのはもっと先のことになる企業が多数あるだろう。
 日用品の消費のようなものは、生活給である月例給与が伸びないと、消費の増加にはつながりにくい。加えて、この階層は、所得税における控除の縮小や、年金保険料の値上げをはじめとする社会保障費のアップ、遅かれ早かれやってくる消費税率上昇、といったことを考えると、将来の生活に楽観できない。ムードだけの景気回復を信じて、大らかに消費など出来ないのだ。まして、「お小遣い階層」には、景気回復の恩恵が回ってくるのは、もっと人手不足になってバイト代が上がるようになってからだろう。これらの人々を主な顧客層とするコンビニエンスストアのような消費業種がまだ好況を感じることが出来ないのは無理もない。
 このように、稼ぎ方の「階層」によって、景気回復に時間差があることは覚えておく価値があるだろう。今後にも通用する一般的なパターンになる可能性がある。


■格差による時間差を投資ではどう考えるか

 稼ぎ方の形態によって存在する格差によって、景気回復に「時間差」が生じることを、投資をする上ではどう考えるべきだろうか。
 もちろん、こうした現象自体だけで、「景気は本格的に回復しない」とか、「景気はまだまだ回復するはずだ」と景気全体の先行きを判断することはできない。
 景気全体について、筆者が重要だと思う材料をあえて挙げると、昨年9月に上場企業(3月期決算企業)の有利子負債残高が8半期ぶりに増えたこと(日本経済新聞、1月15日付け)や、これと裏腹だが、1998年来ずっと対前年比マイナスだった民間銀行の貸出残高が昨年の10月、11月とついに陽転したこと、つまり経済全体として、信用の拡大傾向に転じたことは、デフレ脱却に向けた動きとしても評価できる。



以上





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最終更新日  2006年03月01日 23時00分23秒
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