2006年02月03日
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2006年2月3日


 先般逮捕された、ライブドア前社長である堀江貴文容疑者は、一連の報道が事実であるとすれば、投資家及び社会に対して大きな悪影響をもたらした断罪されるべき人物であるといえるが、一方で、逮捕以前の彼は、急成長企業を、創業し、経営した社長であり、昨年のニッポン放送株の大量買い付けに始まったフジテレビジョンとの攻防など、大胆な行動の数々で注目を集めた人物でもある。また、メディアへの登場も頻繁で、各種の調査では、若い世代を中心に、高い「好感度」を集めていた人物でもある。
 もちろん、彼が罪を犯したとすればその罪の内容と意義は正しく理解されなければならないが、彼の経営手法や行動の意味、多くの人が彼を支持した理由、一連の行動の背景にある彼の人物像といったものについては、納得的に理解しておきたい。以下は、本格的な人物論ではないが、その大まかな骨格を示した序説のようなものだ。
 「ホリエモン」とは、ご承知のように、堀江貴文容疑者の愛称である。本稿では、各種の報道や堀江容疑者の著書、ブログなど、あくまでも対外的に発信された彼の情報に基づいて人物論を展開する。人間・堀江貴文を直に調査して論じるもの、というよりは、対外的に表れた彼を論じるものなので、この点を意識する意味も込めて、文中の呼称は主にホリエモンとする。
 なお、これまでに筆者は一度も堀江貴文容疑者に直接会ったことはないし、ライブドアの株式を買ったこともない。彼の人物像に興味はあったが、彼個人に対しては、好意も悪意も持っていない。また、本稿は、彼を司法に代わって断罪しようとするものでもないし、逆に、彼を弁護する意図を持ったものでもないことをお断りしておく。私見によれば、ホリエモンの行動パターンは、上場企業のある種の経営者群にあって典型的なものだし、このパターンを理解しておくことによって、投資に関する判断の参考になる。


1.容疑者ホリエモン



 先ず、今回の事件について理解しておこう。
 家宅捜索及び逮捕の容疑である「偽計取引」及び「風説の流布」は、どの程度悪いことだったのか、もう一つピンと来ない投資家が多いのではないかと想像する。筆者も、旧バリュー・クリック社の株価の推移を見たときに、マネーライフ社の買収発表(2004年10月25日)で大きく上げたようにも思えなかったし、決算短信の発表(2004年10月12日)も大きなインパクトを持っていたようには見えなかった(株価は翌日上昇しているが翌々日以降、前日よりも安い日もある)。
 材料と株価の推移を素直に見ると、ライブドア社の子会社であった問題の旧バリュー・クリック社の株価は、株式100分割の発表(11月8日)とその後の分割の実行(12月1日)で大幅に上昇しており、全体の構図は、株式100分割で株価が上昇することを見越して投資事業組合を通じて売ることができる旧バリュー・クリック社の株式を有利に入手し、現実に売却益を得た、株式分割による錬金術のプロセスに見える。容疑名で言えば、株式100分割による株価操縦の疑い、株価に大きな影響を与える株式100分割を事前に知りながら旧バリュー・クリック社の株式を手に入れた(当時、同社にはライブドア社以外の株主が25%程度存在した)インサイダー取引、さらにこの売却益をライブドア社に環流させて事業の利益のように見せかけた粉飾、といったことの方がより本質的と思える。
 ただし、たとえば株価操縦やインサイダー取引を立証するためには、行動を起こした時点で、株価を動かす意図や、株価が上昇するであろうという予測を認識していたかどうかが問題となる可能性がある。従って、東京地検は、「そのように認識していた」という供述なり証拠なりがなくても、形式的に立証できる「偽計取引」と「風説の流布」を、必ず起訴に持ち込むことができる容疑と見込んで家宅捜索・逮捕に踏み込んだのではないかと想像する。そうだとすれば、ホリエモンが犯意の認識については、一切否認を続けていることは、罪を増やさないという意味で合理的だし、地検にとっても想定の範囲内だろう。
 100分割による株価上昇は、意図したものでも予想したものでもなく、たまたま株価が上昇したもので、決算数字の操作については現場に任していて事実認識が無く、株式売却益がライブドア本体の収益として環流していることについても投資事業組合の判断と行動なので与り知らない、たまたまこのような形で利益が発生しただけだ、というのが現在のホリエモンの立場ということになるのだろうが、経営を把握していることを誇り、株式市場に通じている(セミナーの講師までしていた)はずの、かつてのホリエモンが、こうしたことについて全く認識がなかったというのは信じにくいことだが、今後、押収された証拠などで、こうした点がどこまで立証されるのかが問題だ。
 ただ、一般論としてだが、たとえばホリエモンが、容疑の事実関係について認めたとか、或いは逮捕後に報じられたライブドア本体に関する粉飾の疑いや海外口座の問題などは、彼が拘置所に入り、資料も押収された現在、メディアとしては、検察からの情報提供なしには書けない記事であるように思える。現在メディアから伝わる情報の多くは、検察から何らかの意図をもって提供されたものであることは心に留めておくべきだろう。また、電子メールがどの程度証拠として採用されるものなのかについても、注目される。メールが残っていれば発言として裏付けられることになるのなら、ネットの世界にある「なりすまし」のような現象が今後犯罪の立証に関わってくる可能性があるということだ。
 事件の印象としては(あくまでも印象だ)、当初の容疑の二件は、起訴までは行けそうだし、十分成立しそうに思えるが、今後、株価操縦、インサイダー取引(ホリエモンの知り合いにも累が及ぶ可能性がある)、粉飾決算(有価証券報告書の虚偽記載)、さらには脱税、マネーロンダリングへの関わりといったより影響の大きな事実が出てくるのか、これらがどの程度立証されるのかが注目される。特に、ライブドア本体の決算粉飾が明らかになると、ホリエモンの株主・投資家に対する責任関係は、より明確になるだろう。
 なお、ホリエモンの保有するライブドア株(17%)は、仮に偽計取引と風説の流布だけであっても、証券取引法違反が確定すれば、株主或いは会社からの損害賠償請求ないしは株主代表訴訟によって、株主への支払いに充てられるか、会社に没収されるか、何れにしてもホリエモンの手を離れる公算が大きいと思う。
 付け加えると、ライブドア本体の決算粉飾に関しては、どうしてもっと海外籍のファンドやSPC(特定目的会社)を使わなかったのか、疑問が残る。利益を出す手段が株式なので、外国籍であることが不都合だったのかも知れないが、海外ヴィークルを使われた場合には、全容の解明がもっと難しかったのではなかろうか。また、一般投資家の立場では、ライブドアと似た趣旨の決算操作を行っている別の上場会社があるとすれば、こうした企業に対してもチェックが働くことを期待したいところだ。







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最終更新日  2006年02月03日 23時35分07秒
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