2006年07月07日
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◆投資と投機

 投資と投機には、さまざまな定義があり、ここでも混乱が見られるが、筆者は、経済価値の生産に関わる資本に参加し、理論的には、追加的リスク負担に対するリターンの追加(リスク・プレミアム)が期待できるのが「投資」であり、基本的に市場参加者間の見通しの違いに賭けるゼロサム・ゲームであって、リスク負担に対する追加的リターンが期待できないのが「投機」だと考えるのが、現実的であり、便利だと思っている。よく、リスクの大小で、投資と投機を分ける人がいるが、運用主体が負担するリスクは、運用に投じる額でコントロールできるのであり、リスク負担に対して、追加的なリターンが期待できるかどうかの方が本質的な違いだ。 具体的には、株式や債券、不動産などに資金を投じる行為には「投資」の側面があるが、外国為替のリスクは基本的に「投機」のリスクだ。もっとも、ここで、投資がいいことで、投機が悪いことだ、というようなニュアンスは一切込めていないことに注意して欲しい。投資も投機も、ルールに則って行われる限り悪いことではないし、多くの場合経済的にプラスの役割を果たしている。
 それでは、投資の場合、何がちがうかというと、たとえば株式投資の場合、予想された収益を企業が上げてくれるなら、時間の経過に従って、株主の保有する価値が増えることだ。たとえば、株価1000円で、PERが10倍、PBRが1倍の株は、利益成長がゼロの場合でも、10年経てば、BPSが2000円になる。この間、配当で利益が流出していなければ、10年後には、株価は1000円よりはかなり高くなっている公算が大きい。つまり、投資の場合、適切な価格(あるいは、それ以下)で買って、保有していれば、時間の経過が投資家にとってプラスに働く効果が期待できるということだ。
 乱暴な言い方だが、たとえば、「株式投資は博打だけれども、時間を掛けると、回収率が100%を超える有利な博打だ」ということが、言える。この場合、「時間が味方になる」という見方が出来、時間と共に、有利さが拡大することが期待されるわけだが、これを取引の上で単純に「有利」と言っていいかどうかについては、問題が残る。
 投資の理論を考えると、「リスクを負担した状態でより高いリターンを期待できる」という状態は、「リスク無しで低いリスクフリー・リターンを期待する」という状態と、市場を通じて交換可能なのだから、「投資」で時間を掛けることが、「有利だ」という訳ではない(要は、「証券市場線」の上にある点同士は、市場で交換可能なのだから、等価なのだ、と考えるべきだということだ)。比較の観点では、期待回収率が100%(手数料抜きで)のゼロサム・ゲーム的博打である「投機」が、相対的に不利だというだけのことである。ちなみに、理論の世界の投資家は、無駄なリスクを取った投機には参加しない。

◆長期運用の短所
 現実に、たとえば、特定の銘柄に対する株式運用で得られるリターンには、生産活動に資本を提供することによって得られるリターンと、その時にその銘柄を選んだことの当否を反映したリターンとの、二種類のリターンが混じる。
 前述のように、前者は投資のリターンと言っていいが、後者は、その運用者と他の市場参加者のどちらが正しいかによって決まる投機のリターンだと言って良い。

 物事を整理する上でいささか複雑なのは、たとえば「良い!」と思う情報に基づいて資金を投じる場合、運用期間が長期化するほど、その情報以外の要素が資産価格に影響することが増えてくるし、その情報自体の価値も変化する。
 たとえば、有望な新製品の発売を見越してある会社の株を買った場合、その製品が市場に出る前の期間に、経済情勢の急変や、その製品とは別の分野での経営の失敗などが起こる可能性があるし、時間が経つうちに、その製品や技術の相対的な価値が低下してしまう可能性もある。
 つまり、「特定の情報(いわゆる「材料」)」に基づいて資金を投じる場合、いったん投資ポジションを作ってしまうと、その後は、なるべくその情報が早く広まって、価格に早く反映する方が有利だし、有り難いのだ。「有利な投機の機会」などというものは、そう頻繁に手に入るものではないが、平たく言えばチャンスに資金を投じる場合、運用期間が長くなるほど勝率が悪くなる、とも考えられる。
 もちろん、同じだけ儲かるなら、短期間に儲かる方が、資金の効率がいい。

◆長期と短期のまとめ
要点を箇条書きでまとめておこう。
(1) 長期運用でリスクが縮小するというのは嘘。
(2) リスクに対する態度が一定の場合、運用期間によって、適切なリスク資産への配分比率は決まらない。どれだけリスクを取ることが出来るかを決める最大のファクターは投資主体の財務的な強さ。
(3) 長期運用の確実が期間当たりのリターンに与える悪影響が大きい。
(4) 「投資」は生産活動への資本の提供であり、理論的には、リスク負担に対して追加的なリターンが期待できる。
(5) 「投資」にあっては、時間と共に運用資産額の増価が期待できるが、これは、資産市場での取引条件と比較すると「有利」なわけではない。
(6) チャンスに対する資金投下にあっては、運用期間の長期化は、余計なリスク要因の影響が増大を意味するので、歓迎できない。
(7) 自分が、利益に参加する「投資」をしているのか、チャンスに賭ける「投機」をしているのか、について、意識することが重要である。







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最終更新日  2006年07月07日 22時27分02秒
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