2007年08月17日
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 過去の標準的な投資理論では、株式のようなリスク資産のリターンは、「リスクに見合った、期待リターンに収斂するはずだ」という基本的な考え方を持っていた。たとえば、代表的なリスク値の尺度として「β値」のようなものを考える。

 最初にあった、アノマリー現象に対する反応は、「無視」あるいは「単なる例外事象」としてこれを扱うという態度だった。たとえば、小型株の高いリターンは、たまたま何年か続いたもので、一時的なものであるはずだ、という理解だ。

 しかし、特定のアノマリー現象が、ずっと連続的に続いたというわけではないが、たとえば小型株効果や低PBR効果のように、単に例外事象として考えるには、有効な期間が長く、また、データの取り方によっては、既存の理論で有効なはずだと考えられたβ値などよりも、リターンに対する(特に銘柄間のリターンの格差に関する)説明力が大きなケースがあった。これらを、単なる理論の例外として処理するだけでは、理論自体の説明力・信憑性に不満が生じるようになったのは当然だろう。

 この場合に、旧来の理論の側から生まれた別の態度は、「リスクに見合った、期待リターン」という理論の大枠を維持しつつ、リスクの種類を複数考えようという、修正的なアプローチだった。たとえば、β値と共に、企業の時価総額やPBRを、リスクを表す別の代理変数として捉えて、たとえば「利益の不安定性を表す」とか「倒産の確率に関係する」といった、解釈を加えていくようなアプローチがあった。かつて「効率的市場仮説」を提唱したユージン・ファマは、ケネス・フレンチと共に、90年代初頭に、こうした路線の研究を精力的に発表した。

 また、全く異なるアプローチとして、そもそも、資産市場では、情報が瞬時に伝達されて、人間が合理的な判断を下すことが出来る、という前提自体を疑う考え方を採る者が現れた。市場の不完全性とその背景に、人間の認知・判断能力の限界や、判断の歪みの傾向性があることなどを強調して、既存の理論を否定して、新たな市場の説明原理を求めようとするアプローチで、これが次の「行動ファイナンス」に結実する。

 正しく行われたアノマリーの研究は、過去の大量のデータに基づいて、株式リターンの傾向性を調べたものになる。主なアクティブ運用の方法論は、ピッタリ同じではないにしても、何らかのアノマリー現象を応用していると解釈できるものが多い。つまり、アノマリーの研究は、投資家にとって、投資戦略の一種の「道具箱」のようなものだし、控え目に言っても、投資戦略を考える上でのヒントを提供している。

 仮に、プロとして運用の仕事に従事する場合には、主なアノマリーの全てについて、どんな時に、なぜ起こったのか、今後も有効である可能性があるのか、ということに関する、知識と自分の見解を持っている必要があるだろう。アノマリーについて十分説明できないとすると、プロの運用者としては、知識不十分だと言って差し支えなかろう。

 但し、アノマリーは、それが有効だった時期であっても、ある性質を持つ銘柄の平均的な相対リターンがリスクに比して高かったというだけのことであり、これを高い確度で実現するためには、数十から数百の銘柄による分散投資が必要な場合が多かった。たとえば、低PER効果が有効な時期に、低PER銘柄に投資しても、一銘柄だけの投資の場合、市場平均を下回るリターンに終わる可能性は相当にある。アノマリーは、それが有効な場合でも、株式のリターンの大半を説明して、ほとんどの銘柄に有効に当てはまる、というほどに強力なものではない。利用できるかも知れない、一つの「傾向」に過ぎない。



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最終更新日  2007年09月07日 18時31分54秒
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