前回アンジェリーナ・ジョリーさんがUNHCRの特使に任命された話題を紹介しましたが、数年前に直木賞を受賞した森絵都さんの「風に舞いあがるビニールシート」を思い出しました。以下、いつものようにネタバレです。
注)UNHCR:
国連難民高等弁務官事務所。世界中の紛争や迫害によって難民となった
人々を保護し、難民問題解決に向けて活動する国連の機関
この作品はUNHCRに勤務するエドと里佳の人生観の違いと結末を描いています。エドはフィールドと呼ばれる難民の居住地で一人でも多く助けることを使命と考えて、結婚後も殆どをフィールドで救援活動をしており、7年間で100日も里佳とは生活を共にできなかった。里佳は東京勤務の事務職でフィールドに出るつもりは全くなく、子供のいる平穏な家庭生活を望み、エドを東京に引きとめようと必死であった。
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価格:570円(税込、送料別)「吹けば飛ぶようなビニールシートはどこまでも飛んでゆく。とりかえしのつかない彼方へと追いやられる前に、虚空にその身を引き裂かれないうちに、誰かが手をさしのべて引き留めなければならない」というのがエドの口癖だった。もちろんビニールシートは弱者の難民であり子供たちである。エドと里佳は7年間お互いの価値観を譲ることは無かったが二人は純粋に愛し合っていた。
しかし、ある時エドの次の赴任先がアフガンに決まり、2人の価値観の違いが修復不能になり離婚することになった。里佳は「夫婦のささやかな幸せだって、吹けばとぶようなものじゃないの?」と叫び、エドは「それでも日本では生きていける、フィールドでは安全に生きていくことを幸せと呼ぶんだ」と答え終局を向かえた。
その後、エドはアフガンで一人の少女をかばって射殺される。里佳は事実を知って3ヶ月の間、悲しみと空虚感から仕事が手に付かないままUNHCRの東京事務所で過ごす。そこへアフガンでの事件の取材に里佳が応じることになり、記者からエドが救った少女の話を聞くことなる。少女に会った記者から、エドは少女の背中に体ごと覆いかぶさるようにして銃弾から少女をかばって死んでいった。そして少女は死んだエドの下敷きになったままキャンプの人間に発見された。エドの体が大きくて、温かくて、安心に思えたからと。
記者は里佳がエドの元の妻であることを知り、記事にするに当たって要望を聞いた。里佳は美談にはしないでと答えると、美談にはしませんが一縷の望みを託したいと言った。
「どこに希望が?」
「少女は、国際機関で働くのが将来の夢だと打ちあけてくれました」
その後、里佳はこれまで一度も考えてみたことの無かったアフガンへの赴任を決意したのでした。
エドの抱いた大義は立派であるが、里佳の希望も決して非難されるものではないと思います。最後に何もかも捨ててアフガンへ行こうと決心した里佳はフィールドで、何を見て、何を感じるのか。。。幸せとは何か。大切なものとは何か。日々を汲々として暮らしている私には、お金とは違う価値観について改めて考える良い機会となりました。
この本は題名の「風に舞いあがるビニールシート」を含む6編からなる短編集であり、どれも主人公が目指す目的に対し懸命に立ち向かう話で「お金より大事なもの」というそれぞれの人間の価値観が表現されております。全てに共感できるわけではありませんが、それでは自分は何をしたいのと考えてみると唖然としてしまいました。Click here→
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