【一七五】 世 人 吝 者 見 て、 輙 ち 倹 と 曰 い、 倹 者 を 見 て 輙 ち 吝 と 曰 う。 論 者 も 亦 未 だ 其 の 分 界 を 審 にする 者 有 らざるなり。 倹 吝 は 分 に 定 まる。 分 定 らざれば、 則 ち 終 日 之 を 論 ずるも、 亦 何 の 益 ぞ。 且 つ 倹 吝 の 外 形 を 以 て 弁 ずべからざるなり。 之 を 業 と 欲 とに 譬 う 然 り。 農 夫 有 り。 夙 に 興 き 禾 を 刈 る。 是 れ 業 か 欲 か。 誰 か 能 く 之 を 弁 ぜん。 吾 が 田 を 刈 らば 則 ち 勤 業 。 他 の 田 を 刈 らば 則 ち 私欲 なり。 士人 有 り。 悪 衣 悪 食 矮 屋 に 居 る。 是 れ 倹 か 吝 か、 誰 か 能 く 之 を 弁 ぜん。 禄 命 を 守 り 以 て 其 の 職 に 供 し、 自 奉 (自ら受ける)を 省 き 以 て 之 を 人 に 推 す。 是 れ 君 子 の 業 にして 倹 譲 の 道 なり。 若 し 其 の 禄 を 惜 て 肯 て 用 いず。 米 を 蝕 (腐敗)し 金 を 秘 し 衣 を 腐 し、 以 て 其 の 職 を 缼 く。 是 れ 小 人 の 欲 にして、 吝 嗇 の 為 なり 。