晴 陶 句 読

晴 陶 句 読

2010.04.29
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テーマ: 一冊仕掛人(459)
カテゴリ: 「本」の紹介
★★★『フェルメールの楽器』 -音楽の新しい聴き方-

・梅津 時比古    ・毎日新聞社


~"専門的すぎて到底手に負えない"と思いながら手にしたものの、読み始めたらページ

を繰るのが惜しいほど珠玉のことばに溢れていて、まさに美しい音楽に包まれている心


地に浸れた本であった! 音楽をここまで言葉で表現できる感性と豊饒なことばと視点に


圧倒される、当然に三つ★!五つか。 「はじめに」してからこうである・・・


 「森のなかの常緑樹の葉の上に、まだ雪が残っているとき・・・・・・。その白い連なりを見

ていると、シベリウスの音が聴こえてくる。冷たい空気を、静寂によって切り裂いてゆくよ

うな音。」 「たとえば、夜半に静かに降る雨の音を聴いているうちに、ペテロの涙を思い


出す。イエスほ知らないと言ってしまった自らの弱さに、一晩中、流し続けたであろうペテ

ロの涙を。 バッハの"マタイ受難曲"で、ペテロが泣いた直後にアルトによって・・・・」



う~ん、もうこれだけで参ってしまう・・・「エリザベス朝時代から続く無意識層の」音は、

ビートルズの「ノルウェイの森」へと「音は次から次へと展開してゆく。」しかし「音楽批

評や楽曲解説の形式においてはほぼ消えていってしまう。  その失われた音のゆくえが


批評的言辞のなかで見えてくる道はないのだろうか。 つまづき、転びつつも、その道を

探っていけたらと、と思う。」と、どこもでも謙虚に言うが、私たち聴く側に届く言葉で綴ら

れ、その「道」を十二分に指し示してくれている!



 クラシックはもとよりあらゆるジャンルの演奏会に足を運び、 演奏会場の設えにまで

を配っての音への追求を見せてくれる2章「コンサートを読む」、1章の「音のかなたへ」

(主な曲60)での"新しい聴き方"に目を覚まされる。(2章の主なコンサート50)


「音楽会は、会場の片隅でこっそり聴いていたい。なぜか、良い演奏になればなるほど



休憩時間はたいてい一人で会場の裏を歩き回っている。ハードロックのライブでもたい


てい後ろの片隅で聴いている。なぜなのだろうと思う。(中略) おそらくは、音楽が人を

孤独にするから、あるいは孤独なときに音楽が伝わるからだろう。」。
目にする風景は勿論、


「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」(07.7、小生も行った)をはじめ多くの 絵画展等

と音楽
との関わりあいというか触発、西行や芭蕉、宮沢賢治等 詩歌の世界と音楽 にまで

言及してのことばは刺激となって深く心にのこるものばかりである。

心打つ一冊である!




『日本記者クラブ賞』(音楽担当)を受賞! おめでとうございます!★






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最終更新日  2010.04.29 17:04:56
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