晴 陶 句 読

晴 陶 句 読

2010.05.05
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テーマ: 一冊仕掛人(459)
カテゴリ: 「本」の紹介


・宇多 喜代子   ・角川選書


~まことにうれしい一冊である! それもそのはず「名句の条件を述べた論文にしても

意見は様々で、結局のところ、誰にもわかりやすくて、時代や場所を越えてみんなに愛


誦されれば名句なのよ、というところに落ち着く。そんなふうに"みんなの名句"があると


するのであれば、一方に "わたしだけの名句"があってもいい。」「句を鑑賞する楽しみ


は、個人の空想や思念や体験が、その句の中に再生してゆくところにある。」という姿勢

での選句とその解説にたっぷり浸れる。「できるだけよく知られた句を選んだのは、昨今


俳句について語り合う人たちに若い方がふえたことに因る。いわば年寄りの炉話と思っ

ていただければいい。」



 匿名句も含め略故人俳人190名強と300強の句を十二ヶ月に選別し、私的周辺事情

を織り交ぜての労作だけに、幾度くり返し読んでも飽きずばかりか、 その都度、読み手の


時代・季節・自然・現象・場所・状況・モノ・人間・言葉・家族・恋・喜怒哀楽・・・が甦る

こととなるであろう、手許に置いておきたい書である。



そんな、この本の喜びをここに揚げて奪ってしまってはいけないので、非常に困難だが

各月一、二句だけ「わたしの名句」(目に止まった"現代的?"な句)を厳選してみる・・・・・


一月   地球一万余回転冬日にこにこ     高濱 虚子

       春寒し赤鉛筆は六角形          星野 立子

 三月   退屈なガソリンガール柳の芽       富安 風生

 四月   鳥の巣へ鳥が入ってゆくところ     波多野爽波

 五月   新樹ならびなさい写真撮りますよ    藤後 左右

 六月   黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ     林田紀音夫


 七月   あるけばかつこういそげばかつこう   種田山頭火

       一匹の蟻の自由を見てをりぬ      匿名

 八月   祈りとは膝美しく折る晩夏         摂津 幸彦

 九月   とき過ぎてゆくと思ふのみ秋の風     斎藤 空華

 十月   洋上に月あり何の仕掛けもなく      三好 潤子 

十一月   桐桜欅柿朴庭落葉             瀧井 孝作 

十二月   山鳩よみればまはりに雪がふる     高屋 窓秋 

       寝そべつてをりてクリスマス気分になる  加倉井秋を





「言葉はまず素っ裸の言葉として読むべきで、場所とか人物とかをはじめに特定しては

いけないというのが私の俳句鑑賞の一義である。」などと、どこまでも分かり易い!






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最終更新日  2010.05.05 16:39:43
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