ぜんちゃんの風に吹かれた日々

ぜんちゃんの風に吹かれた日々

2005年08月25日
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テーマ: 癒しの風景(25)
カテゴリ: 癒しの風景
パトリス・ルコント監督の官能的でなんとも切ないラブストーリー「髪結いの亭主」という映画があった。


だいぶ髪が伸びたのでいつもの美容室に行こうと思ったが考えるともう五年近くも利用しているのでちょっぴり浮気したい気持ちに駆られた。
今年の初め頃知合いのWさんに勧められた美容室をふと想い出す。
直ぐにWさんに電話を入れ場所を聞いてみた。
どうやら独身の女性がたった一人で店をやっているらしい…。
「どうだい?髪結いの亭主もいいかもよ」憎めないWさんはいつものようにボクを茶化した。

その場所には駐車場が見つけられず仕方なく近くに車を置いて歩いていった。
恐る恐る入口のドアを開けるとそこは五坪足らずの小さい店だった。

その髪結いの女性は驚いたようにこちらを見て「何か?」と言った。
ボクはWさんに勧められてきた事を告げると彼女は少し首を傾げながら考えたが直ぐに毅然とした口調でこう言った。
「うちは予約制になっております。明日にでも連絡くださいませんか?」

次の日、ボクはWさんに会ってこのことを告げた。
「変な顔をして入って行ったんじゃないか?Wだけじゃ分からないと思うよ。どこどこのWと言わないと…」
何となく面倒くさくなったのでいつものところに行くと言うとWさんはまた「髪結いの亭主は悠々自適だぜ」とまた茶化した。

礼儀を欠くのでそこから携帯で店に電話を入れてみた。
昨日突然店を訪ねた事を謝るとそのことについて逆に彼女の方が恐縮するほど謝り直ぐにおいで下さいと言った。

店のドアを開けるといぶかしげな昨日の態度とは一転して彼女は若々しくも満面の笑みを浮かべて応対してくれた。

その小さい空間のなかで穏かな音楽がゆったりと流れていた。
ボクは大雑把にカラーとカットを注文する。


そして肩が凝っていますねと丁寧に時間をかけて揉み解してくれた。
帰るとき割引券やポイントカードをたくさんくれた。
「とにかく初めてだったので数日たって気になることがあったら直ぐにおいで下さい」と優しく言った。

帰路の途中ちょっと切りすぎた髪を撫でながらボクは思った…。
またあの店に行くのだろうか?


あのいままでの店の馴れ馴れしくも遊び感覚の店が妙に懐かしい。
チーフの声が頭の後ろの方で鳴っている。
「ぜんさん今度は吉田拓郎カットしましょうよ!」
「このびんの部分はキンキキッズぽいでしょう?」

髪結いの亭主…。
間違ってもボクはそうならないだろうけれど、優しく屈託のない彼女に髪を染めて貰っているそのとき約3秒間ほど夢を見た気がする。





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最終更新日  2005年08月26日 02時57分18秒
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