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解く 説く ニュースなるほど
『ある日突然、自分が覆面をした無数の人々に襲撃されて取り囲まれ、いわれのない誹謗(ひぼう)・中傷の言葉を延々とエンドレスであびせられたら、どのような心理状態になるだろうか、なぜこのような目に遭わなければならないのか、一切わからないのだから、不気味だ。
大人でも子どもでもこのような状況におかれたら、恐怖で震え上がるだろう。だが、これは架空の話ではない。同じことが、ネット社会では日常的に起こっているのだ。
ネットの掲示板や「2チャンネル」学校版と呼ばれる「学校裏サイト」などへの書き込みによる誹謗・中傷は、プライバシーがからむため、被害者が事実を公にすることはまれだ。警察に訴えても、立件される例は一部にすぎない。ネットのプロバイダー(接続業者)や管理者はぬくぬくとして、アクセス数の増加で収益増を享受している。
新聞各紙のネットによる誹謗・中傷の記事を収拾して調べてみると、それだけでも、全国各地で小中高校の児童生徒が男女にかかわりなく、同級生などからネット掲示板などで、「死ね」「不登校になってしまえ」などと中傷されたり、裸の写真を公開されたりしている実態が浮かび上がってくる。何人かは周囲への恐怖心から、不登校になったり転校を余儀なくされている。アメリカでは13歳の少年が執拗(しつよう)なネットいじめで追いつめられ自殺した。
大人の社会でも企業内のネットいじめや、選挙戦でのネット中傷が生じている。
負の側面
ネット中傷が社会的に重視されないのは、第一には便利さに支配されているからだ。さらに被害者にとっては人間不信や自己嫌悪に陥り自殺を思うほど心の傷は深いのに対し、加害者側は面白半分で、自分の内面にある抑圧感情を発散するためだったり、全能感(支配欲)の幻想を満たすためだったりするという大きなずれに人々が気づかないためだ。
小中高生ぐらいから、匿名なら何をしてもいいという、対人関係のモラル意識の欠落した心を持つのは明らかに人格のゆがみであり、そういう子どもたちがやがて大人になり社会をつくるのだと思うと、慄然(りつぜん)とする。
ネットを推進している人々は、匿名ゆえに政治や権力・権威に対して自由な言論空間をつくれるし、日常においても本音で意見を述べあえるのだから、ネットの多様な可能性を抑制すべきでないと言う。
それはそれでもっともらしく聞こえるが、若者や子どもたちの人格形成をゆがめるほどの現実が新光している状況を前にして、議論の活気を失うような規制は避けるべきだなどと言っていられる場合はどうだろうか。
かつて九州の水俣市周辺で工場廃液中の有機水銀による水俣病患者が続出していた時、劇症患者が次々に悲惨な死に方をしていたにもかかわらず、政府は経済成長を止めるわけにはいかないと、汚染源のチッソに対し排水規制をしなかった。結果、膨大な数の被害者を出すことになった。経済発展や生産効率や便利さの追求の陰で起こる「負の側面」への対応がいかに重要であるかという教訓を忘れてはならない。
喫緊の課題
他者を傷つける情報を発信しても、責任を取られないでいられる。憲法でうたわれている「表現の自由」は、そこまで容認しているのか。そもそも憲法は、情報発信を無限に可能にした今日の情報革命を予想もできない時代に作られたものだ。「表現の自由」のあり方については、新たな視点で論議すべきだろう。
私は野放図に警察の介入を求めているのではない。ネット社会の「負の側面」について、国家規模の実態調査を急ぐことや、被害者救済の社会システムをつくること、加害者把握のためにプロバイダーにログ(通信記録)の保存を義務づけること、管理者に利用者情報について一定条件下で開示を義務づけること、学校・保護者・行政・警察が一体になって情報倫理や情報の真偽見極め能力の教育に取り組むことなど、喫緊の課題があることを指摘したいのだ。
やなぎだ・くにお
1936年栃木県生まれ。東大経済学部卒。NHK記者を経て作家活動に。災害、事故、科学、医療問題などをテーマに執筆。著書は「マッハの恐怖」など多数。』
線引きはかなり難しいと思う。「表現の自由」という一言に阻まれ、大変だと思う。でも陰で泣いている人の存在があるとすれば、これはもう「表現の自由」なんて言っている場合ではないと思う。
銭湯地域で米軍に弾薬提供 2016.10.18
本日付地元紙『正平調』から。。。 2012.09.25 コメント(4)
5日付地元紙『正平調』より。。。 2012.09.06