LUNATIC

LUNATIC

2008.06.23
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カテゴリ: 小説
「毎度こんばんわぁ~」
 聞き慣れた、頭の悪そうなかすれた声が万年寝不足の頭にひびく。
「うふふ。あんたのことだからまぁた違う男でも連れ込んでた~? 奥までずっぽりくわえこんでた~? で、どーせ男だけじゃ欲求不満であたしのメッセージ聞きながらオ●ニーしてるんでしょ。だから電話にでないのよねぇ」
 あいかわらずろれつのまわらない粘った声がいちいち癪にさわる言葉を並べる。
「いつまで電話に出ないつもりよ。いいかげんにしなさいよ!……きゃっ!!」
 女が叫んだところで、ガシャーンと何かが割れる音がした。やっぱり地震があったのだ。
 その日のメッセージは、そこで終わっていた。

 それからも、女からのメッセージは続いた。やっぱり私が眠っているときに限ってかかってきて、淫猥な言葉を並べ、私を嘘つきよばわりする。

 私はもう、へとへとだった。なんとかこの女と決着をつけなければ、と、その思いだけにとりつかれていた。

 私の敵は電話の向こうの女、それだけだった。
 私は会社を辞めた。

 毎晩、携帯を握り締めて、まんじりともしない夜を過ごした。
 だがしかし、私が会社を辞めたことが耳に入ったのか、携帯は鳴らない。いやまて、あの女は私が電話をとることを望んでいたはずだ。だったらなぜ……。
 今鳴るか、もう鳴るかと、私は鳴らない携帯を握って日々を過ごした。ひょっとしたら今度は昼間にかかってくるかもしれないと昼も夜もベットには入らず、常に携帯を離さなかった。

 携帯は鳴らない。
 もしや携帯が壊れたり止められたりしているのかもしれない、と、不安になって、家の電話から携帯にかけてみた。
 久しぶりに聞く着信音。自分の着信音が色気のない買ったときのままのものであることを思い出した。
 あの女からかかってこなければ、私の携帯はまったく鳴らないのだと気づくと同時に激しい嫉妬が襲ってきた。
 あんな女でも人の妻だ。あの女は忙しく日常を送っているのだろうか。母の顔をして、楽しく子供と遊んだりしているのだろうか。
 そう考えると、余計に腹がたってくる。 私はこんなに苦しんでるっていうのに。


 小腹がすいて、私は食品のストッカーを乱暴に引き抜いた。

「きゃあああああああ!!!!」

 ストッカーの奥から、無数の黒い虫がぞわぞわと這い出てきた。驚いて、私は引き出しをひっくり返してしまった。
 虫が、一斉に床に広がる。そのすべてが黒いうねりになって私のほうに向かってくる。

「うわーっ!いやーっ!!」


 深夜1時13分。間違いない、あの女だ!
 私は虫をはらいのけ、あわてて携帯をとった。着信ボタンを押して耳に当てる。

 ………女が、泣いている。

「聞いてよ、ぶんちゃん!もう今度という今度は許せない。あのね、結婚しなかったぶんちゃんは正解よ、結婚なんてするもんじゃないわ……」

 私は、その場にへたりこんだ。
 虫だと思ったのは、田舎の祖母から送られてきた黒ゴマだった。





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Last updated  2008.06.23 07:50:45
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