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2016年12月03日
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テーマ: 俳句入門(4)
カテゴリ: 文法

山口青邨の場合

下2段活用「るる」の誤用があまりにも多い。これは俳誌や句集だけでなく、KADOKAWAの「俳句」などの総合誌にも目立つ。あまりの多さにこれは作者の問題だけではなく、編集者としていかがなものかと考え「俳句」編集部などに提言しようと考えていた矢先、「毎日新聞」の坪内稔典さんの「季語刻々」(2016年12月3日)も掲句の誤用が載って唖然としてしまった。
稔典さんも「季語刻々」では「触れる」と2か所も書いているので、「触るる」と「触れる」は同じと考えているのだろう。しかし、この句の「触るる」は誤り。


月光が革手袋に来て触るる                 山口 青邨
 月光が来て触れる、と句中の人物が感じているのだが、このような感じは、心のときめきに生じるのではないか。たとえば好きな人に会いに行く途中など。作者によると、ドイツ留学直後の若い日の作。革手袋でドイツの町を歩いていると、手袋の甲や指が白く光った。それを月光が来て触れると、感じたらしい。(坪内稔典「毎日新聞」季語刻々二〇一六・一二・三)

下五の「るる」が、正であるのは、上五または中七に切れがある場合と倒置法と考えられる場合だけである。
次の句はいずれも誤用。
草じらみ人につかんと立ち枯 るる  山口青邨
海底のごとくうつくし末枯 るる
蓮枯 るる 満目の中黄の一葉
凍雲はみな根を山にけふ暮 るる

次の句は、句中に切れがあるので、連体形で誤りではない。
モナリザはいつもの如し菊枯 るる 山口青邨
青邨も次のように終止形「る」を知らなったわけではない。
独活の花白し淙々と水流 る
ただし、正用と誤用とが混在することは、無自覚的であることの証明でもある。

終止形「る」を連体形の「るる」にすることは誤り
涙溜めたる沼にして蓮枯るる 斎藤夏風

口語の感覚で「れる」を「るる」としていると考えられる。この誤用は、非常に多い。

ラ行下二段活用
種類    語  未然 連用  終止  連体  已然  命令          
下二段  流る  れ  れ   る   るる  るれ  れよ

おもな接続語   む  たり  ―   こと  ども  ―
         ず  けり      とき  ば
            て
口語の場合                   仮定
下一段 流れる  れ  れ   れる  れる  れれ  れよ
                            れろ
この活用表は頭が混乱するもので、文法の授業といえば「困惑した、退屈した、そして恐ろしかった」(井上ひさし『私家版日本語文法』)ということになる最大の原因である。しかし、ゆっくり考えれば理解できることである。

そのために口語については間違わない俳人たちが、文語になったとたんに間違うのだ。文語は現代の日本語と異なるもので、自覚的に学ばない限り身につくことはない。これは「ラ行下二段活用」であるが、他の二段活用も同じである。
「毎日新聞」の見識が問われる。
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連体止め
「るる」のような連体止めは「誤用」と書いたところ、数人の方か連体止めはあるとのご指摘をいただいた。私の持っている5種類の古語辞典の活用表には、そのような活用はなかったが、『新明解古語辞典』の活用表にはたしかに「るる」が終止形となっていた。連体止めというよりも、終止形がなくなって、連体形になったという考えもあることも分かった。このへんはかつて、某氏の「ことばの散歩道」で指摘してされていたことだが、忘れていた。再確認しようと思って、そのサイトを開こうとしてしたら、そのサイトが消えていた。このへんがネットの危ういところである。
もう少し、整理して、私なりの考えをまとめたいと思う。





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Last updated  2016年12月10日 13時54分58秒
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