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こけしは祖父文六の作風から徐々に自身の作風が確立される。 1961
年ごろは文吉のピークと呼ばれ矢内謙次は「頭は丸みを帯び大きく、細めの胴とよくマッチ」「目は細く、長く、大きく彎曲し、筆致鋭く、太い眉とのバランスの妙」「甘美派であっても、アルカイックスマイルが横溢」と絶賛した。その後、身内の不幸がつづき表情は強烈となってゆく。しかし 1965
年以降、文六の復元に挑戦したこともあって再び生気を取り戻している。その後も強烈な表情がつづくが、天童以後、特に 1980
年以降になると表情は柔かくかつ深い明るさを帯びてくる。系統としては遠刈田系。佐藤丑蔵の影響もあって肘折系とする考えもある。
今回の表紙は、もっとも大きい 32
㎝から 8.5
㎝までの六本に木地玩具のえじこを配してみた。表情はやさしさのなかにも呪力のあるものを選んだ。 一番大きいこけしは胴が括れた変型、頭部は髷がある「およね」と呼ばれるもの。その右は 1982
年作で伊之助型重ね菊。その右は 1991
年作。帯入で菊・牡丹が描かれている。その右は小寸で梅模様。 1981
年作。右端は頭が手柄と呼ばれるもの。強烈な色彩のろくろ模様である。 1996
年 74
歳の作。左端のえじこは 71
歳の作。蓋付の小物入となっている。その右は小寸で胴模様は桜崩しというもの。いろいろな変化を楽しめるように選んでみた。(松田ひろむ「鴎座」 2019
年 8
月号)

文吉晩年の呪力
今回は意識的に文吉晩年のものを選んだ。文吉独特の強烈な表情は見るものをたじろがせるので、やさしくなった晩年に絞ったわけである。しかしそうはいっても文吉の呪力はいささかも衰えていない。
私は呪力とは魅力と考えている。ただ呪力と魅力を同一視する考えは少ない。文吉の場合は「情味」という言葉で表現されることが多いだろう。
「魅」とは物の怪(もののけ)のこと。「魅力」とは「物の怪の力」つまりは呪力である。しかし一般に魅力とは「人の心をひきつけ夢中にさせる力」で可愛い、美しいとほぼ同義となっているのでやはり呪力がいい。なお「魅力」は明治時代に生れた和製漢語で中国語にはなかったのだが、いまでは魅力が中国に逆輸出、「魅力」( mèilì
)となっている。(『精選版日本国語大辞典』参照)
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