ラッコの映画生活

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2007.05.01
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父の仕事の関係で子供の頃の数年間パリに住んでいたことは前回書きましたが、そこでボクは普通の公立のパリの小学校に通っていました。当時は日本人学校のようなものは、補習校すらありませんでした。パリに行ったのは小学3年生の終わる直前の2月だったのですが、もちろんフランス語のフの字もわからず、最初は1年生のクラスに入れてもらい、少しずつ上の学年にお引越し。

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さて前回のように具体的映画作品の中のシーンをあげるのは難しいのですが、つまり記憶にあまりないのですが、 『男と女』 でしょうか。これは普通の学校ではなく私立の寄宿制の学校ですが、子供を預けてあるドーヴィルの寄宿学校に日曜日子供に会いにきたアヌーク・エメが夜子供を学校に送っていくシーンがあります。映画的にはここで遅くなって列車に間に合わなくなってしまい、同じくパリに帰るジャン=ルイ・トランティニャンに紹介され車で送ってもらうことになり、それが2人の出会いとなるわけです。このシーンで階段をよちよち登り学校の門に向かう子供をアヌーク・エメは「早く、早くして」って急いでいます。この学校の扉が2つの責任世界の境界なんですね。それで自分の責任世界にまだいる子供が学校の責任世界に入るまで見届けているわけです。 『ピアニストを撃て』 もう1本やはり古い映画ですがトリュフォーの初期の作品です。兄のしでかしたことで主人公シャルル・アズナヴールを待ち伏せしている悪党2人の車のフロントグラスに、まだ子供の弟が友達と牛乳か何かをひっかけるシーンがあります。怒った悪党は走って逃げる子供たちを追いますが、子供たちが道に面する学校の扉をくぐったとたん、それ以上追うのをやめてしまいます。これって実は悪党でなく子供の親であったとしても学校の中には無断で入れないからなのです。あとは 『Le Pellican』(1973) というジェラール・ブランの映画にも学校出てきましたが、これは本国フランスでもあまり知られていない映画ですね。良い作品なんですが。

そこでボクが体験したパリでの学校生活を描写してみます。あくまでボクがパリで通った2つの小学校の例であり、またかなり以前のことであり、他地域や現在の状況とは同じではないと思います。学校は木曜と日曜をのぞく週5日間で、朝8時半から11時半と午後1時半から4時半でした。現在は土曜の午後が休みだったり、1972年9月新学期からは木曜ではなく水曜が休みのようです。この日はまだ小さい子供なので休息デーでもあり、またカトリックの国ですから公教要理、つまり教会などに行って宗教教育を受ける日なわけで、公教育は宗教に関わらないということでもあります。11時半から1時半は2時間の昼休みで、希望者には給食もありますが、生徒の9割以上は家に一度帰っていました。つまりは毎日8時半と1時半の登校、11時半と4時半の下校と、各2回ずつあるわけです。

まずカバンを持って(あるいは背負って)8時半前に登校します。低学年の子供は親や姉・兄や、お金持ちの家庭では女中さんとかが学校まで送ってきます。そしてそれは既に書いたように学校の扉に子供が入るまでで、そこから先へは生徒以外は入れません。生徒である自分はそのまま校庭に向かいます。入ったすぐにはコンシエルジュ(門番)がいますし、校庭に向かう途中にも先生がいたりするのでイヤでも校庭まで行かされます。フランス文学を読むと学校の描写でプレオー(雨天練習場と訳されている)というのが出てきますが、校庭よりはやや狭めだけれど屋根のある校庭のようなもので、雨が降っていればそこに行く。そして校庭やプレオーで始業の時間がくるまで遊んで待つ。見張りの先生が当番制かなにかでいつも1~2人いるので、喧嘩とかあれば引き離すし、トイレは別室ではなく校庭に面して個室のドアが並んでいます。時間が来ると各担任が決まった位置に立ち、各クラスの生徒は順不動に担任のところに整列し、揃うと整列した生徒を担任が教室まで導きます。教室では必ず担任がいるわけで、音楽とか別の教師が担当の時間にはその教師が教室に来るのを待って入れ代わります。休み時間になると担任が生徒を廊下に整列させ、校庭まで導きます。休み時間の校庭やプレオーでのあり方は朝と同じ。また休み時間が終わると始業時と同じく整列して教室へ。11時半頃になると同じように担任が生徒を整列させて玄関へ。特に低学年では親等迎えの人の顔を見るまで各生徒を外には出しません。これが午後またもう一度繰り返されます。

まあ何とも面倒臭いシステムのように感じられる方もいらっしゃるかも知れませんが、ポイントは子供は一時も大人の目から離れないということと、学校の門を境とした徹底した責任所在の明確化です。登校時刻が終われば入り口には鍵がかけられるわけで、訪問者はコンシエルジュを介してしか学校内に入ることはできない。つまり神戸での事件のようなことはあり得ない。あるいは子供が大人の目から離れることはないので休み時間にベランダでふざけていて生徒が落ちて死んだなんてこともあり得ないわけです。


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Last updated  2007.06.02 22:24:33
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