ラッコの映画生活

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2008.03.06
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カテゴリ: フランス映画
7 ANS

86min
(DISCASにてレンタル)

7ans0.jpg

マイテ(ヴァレリー・ドンゼッリ)の夫ヴァンサン(ブリュノ・トデスキーニ)は7年の刑で刑務所に服役していた。セリフにあるように「明日で1年になる」頃の話だ。何がヴァンサンを刑務所に入れたかは明示されない。7年という刑期はヴァンサンが凶悪犯というほどではないが、でもかなり重大な犯罪を犯したらしいことを示している。だが夫が不在となった2人の家にしても、マイテの近所の女友達の口に出るヴァンサンにしても、彼が犯罪社会のならず者ではないことを示している。その辺のやや怪しい雰囲気をトデスキーニは上手いこと醸し出していた。最初は夫が服役したことはマイテにとって非日常的の特別の事態であっただろう。しかし1年にもなると、週2回刑務所に面会に行って夫と不自由ながらも愛を語り、汚れた衣服を受け取って帰り、それを洗濯してまた次の面会で持って行き、それ以外は夫不在の時間を過ごす、そういうことが日常となっていた。汚れた衣服を洗濯機に入れる前に夫の残り香を嗅ぎ、アイロンで仕上げた服にはゲランのルール ブルー(香水)をスプレーして彼女の香を夫に送ろうとする。夫ミッシェルは長距離トラックの運転手で不在勝ち、妻ジャミラは夜勤もある看護婦をする向かいの家の息子ジュリアンの世話をするバイトをマイテはしていた。マイテに子供はなく、ジュリアンも彼女になついていたので、特に子供の心理には本当の親子のようでもあった。

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ある日面会を終わって刑務所から出てくると、マイテは一人の男(シリル・トロレイ)に声をかけられる。車で送ろうと言うのだ。辞退する彼女だが、やがて受け入れる。男はジャンと名乗り、兄が同じ刑務所に服役しているという。心の均衡を保つためにも愛人を作ることだと言うジャミラに否定的に答えていたマイテだったが、彼女の中にもそのような欲求はあったのだろう、人里離れた野原に駐めた車の中で彼女はジャンに身をまかせる。しかしこれは儚くも成立していた彼女の心の均衡を揺さぶることでもあった。

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これまで1年の彼女の生活は、仕事は学校への送り迎えや食事の用意などの子育てで、いわば内に籠った生活だった。それを変えようとしてであったのか町の化粧品店での店員の仕事をしようとするが、それを断ってしまっていた。しかしジャンと出会って均衡が崩れたのか、変化への欲求からか、その仕事を強く求めるが、既に別の人が採用されていて、断られた彼女は取り乱してしまう。

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夫ヴァンサンは文字通り監禁され自由を奪われた身だが、マイテもこの自由の世界に監禁された身であった。ジャンとの関係にしても彼女や彼の家やホテルなどではなく、広い野原の空間に孤立した一台の車という独房のような閉ざされた空間で行われる。それを明示するかのごとくカメラは車内の様子だけではなく、広い空間の中の車を遠景でとらえる。やがて実はジャンが刑務所の刑務官であることが知れるのだけれど、だからこのジャンは2つの世界を繋ぐ存在だ。しかしジャンも自由ではなかった。刑務所内でヴァンサンと関係することで、ヴァンサンの思い、あるいは彼の持つ人を操るような独特のオーラに支配されていた。妻の写真をヴァンサンに見せられ、彼女に近付き、関係を持ち、そしてヴァンサンの要望で彼女のあの時の声を隠して録音することにもなる。

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しかしこれはヴァンサンの性的な趣味の異常性や変態性を表すものではない。妻を愛する思いと、抱きたいという欲求と、支配続けたいという願望と、失うかも知れないという不安と、自己に対するうぬぼれと、妻に対する一種のサテ"ィス"ム的愛情行為と、またジャンを支配しようという気持ちと(刑務所内ではジャンが命じ、ヴァンサンが従う関係だ)、そうしたものすべてが渾沌と一体となっての欲求だろう。

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(以下ややネタバレ)


7ans6.jpg

出来事を描いたり、気持ちをセリフで表現した映画ではない。言葉で語られることは少なく、夫の服にアイロンをかけるとかいったごく日常の何でもないことが描かれる。この状況下での3人れぞれの心理を、そういう何でもない行為の中に言外に表現した手腕はなかなか見事だ。そいう難しい役を3人の役者が好演していた。特にマイテを演じたヴァレリー・ドンゼッリは、 『マルタ…、マルタ』 のときもそうだったが、崩れてしまいそうな(あるいは実際に崩れてしまう)微妙な心理を言葉少なに上手く表現していた。良くわからないけれど、たぶんこの人の出演作を日本では他にあまり見られないのは残念だ。トデスキーニは持ち前のややヤクザな雰囲気で好演だし、ジャンを演じたシリル・トロレイも、制服役だからこう言うわけではなく、ある種のナチの将校も演じられそうな神経症的不安を内在したような雰囲気が良かった。非常に短期間での撮影だったらしいが、金はかけずとも良い映画は作れるという作品の一つだろう。

7ans7.jpg




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Last updated  2008.03.09 07:12:26
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