2002年06月20日
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 点滴をされたことが有るだろうか?

 それは,長女の出産時に始まる.

 初めての点滴は怖かった.

 看護婦が針を刺す.
「痛くありませんから.」
 追々,指す前に言えよ,と内心彼女をしかる.


 ...ナイス~~・・・
 心なしか機嫌の良い私.

 それでも静脈の中に
     空気は入らないだろうか
     点滴は早すぎて,心臓に負担はかかるまいか
等と取り越し苦労を背負う私.

「1時間ほどかかりますから・・・・・」
という看護婦の言葉に悲鳴を上げる.
 これから小1時間,点滴から目が離せやしない.

 看護婦は点滴の速度を何度となく 調節.

 早ければ心臓への負担が気になり,

 その頃合いが難しい.

 早すぎると何を焦っているのかと疑問に思い,
 遅すぎると体が怠い.

 1時間予定の点滴ならば,55分で取り組みたい.

 しかるに1時間予定の点滴は50分,そして60,65分であってはならないのである.
 55分間意外は私の理念に反するテロ行為でさえあり得る.

 ?

 点滴とは何か?
 これが点滴だ.
 燃えろ,点滴.

 イヤ,あれは「青春」か.

 小一時間は長く,馬鹿事を考えてしまうのも当然である.


 点滴も40分を超えた頃から,私の神経のいらだちは加速を伴う.

 もし点滴が終わった時点で,看護婦が来てくれなければ,私は囚われの身.
 このまま,管で腕に繋がれたまま,余生を送らねばならないのか?

 万が一看護婦が来るのが遅れた場合,血管に空気が入り込んで,気付いた時にはあの世といったことはなかろうか.

 そんなくだらない取り越し苦労にさいなまれながらも 刻一刻と経過をたどり,点滴は減りゆく.

 無意識に点滴と反対の手が,ナースコールをまさぐる.

 な,な,ない.

 焦る私.

 私の右手はもはや一個の人格を持った生物と化する.

 エイリアン・・・

 手は速度をも増して,辺り構わず探しまくる.

 私は知った.
 右手には脳を持つことを.

 ナースコールは心なしか元気がない.

 とうとう右手に見つけられたボタンは,あきらめの表情を露骨にあらわす.

 手は汗をかくほどにボタンを握りしめる.

 目は点滴袋を凝視し,手は痛いほどにボタンに集中.

 点滴の減り具合とボタンを押すタイミング.
 これが点滴の一番の難問である.

 それは早すぎても,遅すぎてもいけない.
 物事は何にも増してバランスが大切たることを再度痛感する.

 点滴袋に液が残っていて看護婦が早く来てくれた場合,液は無駄になるばかりでなく,効き目が薄れるのではないか.

 液が管にさしかかったところでナースコールを押した場合,看護婦が気付かなかったり 他の仕事にとりくまれている最中ならば,この私はどうなると言うのだろうか?

 右手はじとじとと汗ばんでくる.
 親指と人指ゆびは今やナースコールの形にへこみを帯びてさえいる.


 後3分位であろう.

     タイミングをはかれ,
        そして
         タイミングをねらえ.
    全神経を味方に付けて
             そう,
          ベストを尽くせ!


 かすかに遠くから透き通るような声がする.
 その声は,徐々に力強さを帯びてくる.


「ぴがもんさん,
 ぴぎもんさ~ん
 ぴぎめんさ~~~ん

 ぷぐもんさ~~~~~~ん.」

 うん?
 私は誰?
 ここはどこ?

「ピグモンさん,点滴終わりました.
暫く,ガーゼを押さえて置いてくださいね.」

 うん?
 あんがと・・・・・
 私,寝てたのかしら...

 ふと見ると
 看護婦さんの白衣から,狐のしっぽが出ていたようないないよな...

 不思議な瞬間をかいま見たのである. 






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最終更新日  2002年06月21日 00時30分28秒
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