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業の花びら 夜の湿気が風とさびしくいりまじり松ややなぎの林はくろくそらには暗い業の花びらがいっぱいでわたくしは神々の名を録したことからはげしく寒くふるえてゐる ……遠くで鷺が啼いてゐる 夜どほし赤い眼を燃して つめたい沼に立ってゐるのか……松並木から雫がふりわづかばかりの星群が西で雲から洗はれてその偶然な二っつが黄いろな芒で結んだり残りの巨きな草穂の影がぼんやり白くうつったりするああたれか来てわたくしに云へ「億の巨匠が並んで生まれ、しかも互に相犯さない、明るい世界はかならず来る」と宮沢賢治校本全集3 春と修羅第二集 下書き稿二
Jan 31, 2014
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後輩が結婚したときに「祝婚歌」を贈った。詩人の吉野弘さんの同名作品に影響を受けて作った。 雨の歩道橋をひとつの傘をさしてふたりは歩いてくる そうだ もうふたりの共同作業は始まっている それでいい テーブルの前でも 初めて逢う新婦のはにかみは 夫になる君の横顔に同意を求めているよ 中略 そうして多くのほしの中で 何故ふたりが出会ったのかということを 思い出してほしいと願う 長い詩文なので割愛するが、この感覚は吉野弘にほかならない。未発表なので。 吉野さんの詩はまるで会話のような解り易い文体と、その根幹にある詩人の眼が心の言葉に置き換えられてあっさりと読者の心を刺す。そして大部分が最後の結文に近いところで迫ってくる。そして透明感と。代表作はかなりあると思うが、個人的には「I was born」に特に影響を受けた。散文詩という世界に自分を向かわせてくれた。「夕焼け」「生命は」もいい。言葉で景色を描くことを学ばさせてもらったと思う。きっと素直に召されたのだと。ご冥福を。「素直な疑問符」 小鳥に声をかけてみた 小鳥は不思議そうに首をかしげた。 わからないから わからないと 素直にかしげた あれは 自然な、首のひねり てらわない美しい疑問符のかたち。 時に 風の如く 耳もとで鳴る 意味不明な訪れに 私もまた 素直にかしぐ、小鳥の首でありたい。吉野弘
Jan 22, 2014
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雨南風は柔らかい女神をもたらした。青銅をぬらした、噴水をぬらした、ツバメの羽と黄金の毛をぬらした、潮をぬらし、砂をぬらし、魚をぬらした。静かに寺院と風呂場と劇場をぬらした、この静かな柔らかい女神の行列が私の舌をぬらした。太陽カルモヂインの田舎は大理石の産地で其処で私は夏を過ごしたことがあった。ヒバリもいないし、蛇もでない。ただ青い李の薮から太陽が出てまた李の薮へ沈む。少年は小川でドルフィンを捉へて笑った。西脇順三郎『ambaruvalia』1933年
Jan 3, 2014
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