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車筆太

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2005年12月26日
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カテゴリ: 書籍
近代スポーツの誕生

 スポーツといえば野球、サッカー、最近ではゴルフ、フィギアなどを思い浮かべる。
 そのなかでも、サッカー、ラクビー、テニスなどは英国において原型を整えられ伝播したものであるため、一般的に英国は「 近代スポーツ 」の母国といわれている。よって、本書『 近代スポーツの誕生 』では、イギリスにおけるスポーツの変遷を辿っていくことになる。

 まずは、「 スポーツ 」「 競技スポーツ 」「 近代スポーツ 」を漠然と認識するのではなく、歴史的相違点・共時的相違点からハッキリと区別して使用することから始めねばならない。

スポーツ 」の語源に遡ってみると、その意味するところは「 (何物かを)運び去る 」であり、やがて「」の部分にふあんや心配事といった「 心の重荷 」が付加されることで、「 気散じ 」(あまり使わない言葉だが、ストレス発散くらいに思えばいい)を意味するようになったという。「スポーツ」がその原初においては、「娯楽」や「遊び」をも包括する「こころ」に関する事象を示すものであり、時代の要請によって、18世紀にはジェントルマンの文化(『 スーツの神話 』でも触れられている)を反映し、19世紀に入ってから「近代化」とともに「競技スポーツ」の意味が加わったりと変化していくのである。「スポーツ」が現在の我々の共有する「スポーツ」の感覚とズレているという視点は、「近代スポーツ」の誕生を巡って、「 アニマルスポーツ 」「 ブラッディスポーツ 」「 ギャンブルスポーツ 」と見ていくうえで欠くべからざるものである。

 「 競技スポーツ 」は近代社会において生み出されたものの、その系譜は儀式的な「競技」(日本では節会のときの射礼、競馬、相撲など、古代ギリシャでは古代オリンピック)にまで遡ることが可能である。また、近代社会において生み出されたスポーツが全て「競技」を指向するものだったとはいえない。つまり、「競技スポーツ」は「近代スポーツ」の一形態であるにすぎない。

近代スポーツ 」とは何なのか?というのが本書の大枠となるので、その定義をここではひとまず「近代という時代・社会・が求めた歴史的なスポーツ形態のひとつ」としておく。

 「スポーツ」が「近代スポーツ」に変化していくなかで、ジェントルマンの理念と深く関わる アマチュアリズム の流入をみることができる。そもそも「アマチュア」とは、肉体労働をすることなく生活することができるジェントルマンその人を意味していて、それ故に、スポーツを労働としてではなく、趣味の一環として行うことができた。

 以前、ここでも書いた『 「健康」の日本史 』においても、経済的社会的尺度で評価された「価値」ある活動を行う「 労働 運動 」に取って代わられる様を、養生術と健康法との比較のなかで指摘している。

 また、 ヴェブレン 有閑階級の理論 』での有閑階級を「中流階級」として、「アマチュアリズム」との類似から、現代の健康観における「スポーツ」を、消費文化の一つとしてみることができるだろう。

                    つづく・・・





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最終更新日  2005年12月26日 22時44分15秒 コメントを書く
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