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車筆太

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2005年12月28日
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カテゴリ: 書籍
「考える」ための小論文

 分かりやすく明確に「考え」を文章にのせること、そこに「批評」が加わることで、より分かりやすく明確な文章を得、また、それにより思考を次の段階に進めることが、モノを書くための理想であると学生時代に学んだ。
 しかし、実際には理想は得難く、「なぜ?」を重ねた末の「カベ」あたりではどうしても表現が曖昧になり、抽象的な印象を与えてしまう。
 それは、無知によるものであるし、論理不足によるものでもある。
 結局、これを乗り越えるには、 粘り強い思考 によるしかない。無知に対して粘り強い思考をもってしてもその溝を埋められるものではないと思うかもしれないが、具体例に即して考えを掘り進めていけば、ある程度まではそれを乗り越えられる糸口を掴めるはずである。それでも乗り越えられないようなら「分からない」と態度表明することで、そこから新しい思考を紡ぎはじめればいい。
 もちろん、豊富な知識は、繰り返し既成の思考の道筋を歩む労力を省くものであり(デキ合いの思考を疑うことも粘り強い思考には必要である。)、より深くより広く思考を扱うために有用である。

 論文の構造として本書は、三段論法(「大前提、小前提、結論の3つの判断から成る推理の形式」『 新明解国語辞典 』)ならぬ、三要素、「 問い 検討 」「 答え=主張 」を挙げている。技術論に陥らない実用性という意味では明快であり、思考の構造を簡素に表している。
 技術面に関しても、本書の題名『 「考える」ための小論文 』が示している通り、大学受験のための小論文に重点を置いているので、後半にある例題・回答例を用いた所は実用性に富む。巻末の問題別に書かれた回答のためのヒントも、学生にとっては即効性があるだろうし、社会人にとってもトレーニング教本として用いることが可能である。

 次に「考える」ための方法として、「 喚起力 」と「 解明力 」とを目標にすえる。
 できるだけ根本から考え、「 論理の強さ=考えの筋道そのものの強靭さ 」を得ようとするならば、自然と「 独自性 」が生まれるとする。これには「こういうもの」という定義がなく、自ら手探りで獲得していかなければならない。
解明力 」とは初めに書いたような 思考の粘り強さ であり、「 喚起力 」とはなによりも 分かりやすさ である。
 さらに、「 一般的な問題を、いったん自分の体験に引き戻して 本質 」を取り出す「 本質観取 」というフッサールの「哲学の方法」を用いている。また、より広いアプローチとして、「 問題状況 」(具体的な事情)を設定してそこに「 着地 」させる方法をも合わせて用いることを勧めている。

 以上のことを完全にこなすのは容易ではない。
 結局、「読んで、考えて、書く」を繰り返して身に付けて行くしかないのだろう。






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最終更新日  2005年12月28日 22時05分18秒 コメントを書く
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