コーチ賢ちゃんの「コーチング談義」

コーチ賢ちゃんの「コーチング談義」

2008年06月29日
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 以前、「セルフトークマネージメントのすすめ」という本について書きましたが、その中に賢ちゃんが素晴しく感動したお話がありました。

※ 「セルフトークマネージメントのすすめ」については、2008年6月4日(水)の記事【セルフトークが生れるメカニズム(1)】を参照願います。

 今回はこれをそのまま紹介させて頂きます。

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 反応を対応に変えることで得られるのは、セルフコントロールだけではありません。相手とのコミュニケーションにおいても、一段上のレベルに到達することができます。

 2004年、私はカナダのケベックで開催された国際コーチ連盟の年次総会に参加し、ボストンフィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者ペンジャミン・ザンダーによる講演を聞きました。

 ザンダーはイギリス生まれのユダヤ人で、65歳と紹介されていましたが、その溢れんばかりのエネルギーには、度肝を抜かれました。

 2000人を超えるオーディエンスで埋め尽くされた会場を、所狭しと歩き回りながら、自分の想いをとてつもない情熱で語りかけていきます。ほぼ3時間全く休みなく。



 そのザンダーが講演の中で、リーダーにとって、反応ではなく対応がいかに大事かという話をしてくれました。

 彼は、毎回自分が指揮するコンサートに音楽学校の生徒50人を招待することにしていたそうです。あるとき、ヨーロッパから著名なピアニストを呼んでのコンサートがありました。

 前評判も高く、あっという間にチケットは売り切れました。ところが観客席のほうを見ると、ある一部に空席があります。事務局員を呼んで、ザンダーは聞きました。

 「今日は満席のはずだよね。どうして空席があるんだ?」

 事務局員は言いにくそうに答えました。

 「どうも、うちの生徒たちが何人か来ていないようなんです」

 ザンダーは心配になりました。

 「どうした、事故でもあったのか?」

 「それが、どうも今日はショッピングモールに遊びに行ってしまったらしいんです」

 それを聞いたザンダーは怒り狂いました。

 このコンサートを前からとても楽しみにしていて、それでもチケットが手に入らなくて地団駄を踏んでいる人が何人もいる。それなのに、そもそも利権、特権を持っている自分の生徒たちがコンサートをさぼつた。しかも天秤にかけたのはショッピングモール。怒りが全身を覆いました。



 コンサートは見事に成功し、ザンダーは拍手の渦に包まれました。興奮冷めやらぬ観客に視線を投じたそのとき、生徒たちが本来座っているはずだった席が目に入りました。

 喜びはあっという間に怒りへと変貌しました。コンサートが素晴らしかったからこそ、余計に生徒たちが許せない。怒り心頭に発したまま、彼は車を運転して家に帰りました。

 家には心理学者でもある奥さんのロズがいました。彼の様子を見たロズは、

 「あら、あなたでも怒るのね」

少し茶化すように言いました。



 ザンダーはその日のことを一気に説明しました。ロズはじつとザンダーを見つめ、そして言いました。

 「あなたの気持ちはわかるわよ。でもね、リーダーというのはそうやっていつも試されているのよ」

 「何のことだよ」

 「リーダーは常に3つの選択肢の狭間で揺れているわ。1つ目は、相手を説き伏せてしまうこと。まあ、ほとんどのリーダーは自分の優位を保つためにこればかりやっているわね。偉そうだから」

 「じゃあ2つ目は?」

「2つ目は相手を説き伏せることができないと、相手の言っていることややっていることに妥協しようとする。大抵のリーダーは1つ目か2つ目しかやらない。でもね、3つ目の選択肢があるのよ」

 「・・・3つ目?」

 「そう3つ目。この3つ目の選択肢を常に選択し続けているごく少数のリーダーがいるわ。彼らは間違いなく大きな成功を手にしている」

 「だから、それは何?」

 「それは、オープン・ザ・ポッシビリティ(相手の可能性を拓く)という選択肢よ。どんなときでも、誰に対してでもこの選択肢を選ぶことのできる人、それが真のリーダーといわれる人ね。さあ、あなたは今回どれをやるのかしら?」

 そこまで妻に言われては悔しいですよね。彼は3つ目の選択肢を採ろうと考えました。相手の可能性を拓くにはどうすればいいのか。1晩考えたそうです。

 次の日。彼はコンサートをさぼった生徒たち全員を自分の部屋に呼び、1人ひとりの顔を真剣に見ながら、こう言ったそうです。

 「君たちは昨日コンサートに来なかった。さぼった。最初僕はものすごく頭にきた。許せないと思った。

 ただ、昨日家に帰ってから、今回のことはなぜ起こつたのかということについて改めて考えてみた。1つの結論に至った。

 今回君たちがコンサートに来なかったのは、最終的には君たちの責任ではない。リーダーとしての自分に責任があると思う。

 なぜならば、今回のコンサートが君たちの音楽のキャリアにとってどのような意味や意義を持つかということについて、事前に僕が伝え切れなかったのは明白だからだ。

 次からは、いいからコンサートに来いではなく、どうして来てほしいのか、どう君たち1人ひとりの将来に役立つのか、しつかりと伝えていこうと思う。今回はある意味で君たちの大事な機会を奪ってしまった。大変申し訳なかった。許してほしい」

 それ以降、生徒たちがコンサートをさぼることは1回たりともなかった。そうザンダーは言っていました。

 ロズがザンダーに語った3つの選択肢は、リーダーだけに当てはまるものではありません。人間の他人に対する行動は、すべてこの選択肢に分類することできます。

 「反応」によって引き起こされる行動は基本的に2種類しかなく、「自分のために戦う」あるいは「逃げる」そのどちらかです。感情にとらわれ、コントロールを失った状態では、このどちらかしかありません。

 しかし、「対応」には第3の選択肢があります。それは「自分のため」ではなく、「相手のために何ができるか」という選択肢です。

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 コーチの語源は「馬車」であり、「クライアントが望む“欲しい未来”まで送り届ける」のが、コーチの重要な仕事です。

 「クライアントのために何ができるか」を考え、クライアントの夢の実現・自己実現を「祈り続ける」コーチになりたいと願っている賢ちゃんにとって、このエピソードはとても快い、しかも強い衝撃を与えてくれました。

 奥さんの問いかけもさることながら、自分の期待と信頼を裏切った生徒達に対して、充分な心配りができなかったために起こった出来事と自己に反省し、謙虚に詫びることのできた指揮者サンダーの人間力には、ただただ深く感服し、「参った」と思いました。

 「“第3の選択”が常にできるコーチになる!」、そう心に決めた賢ちゃんにとって記念すべき瞬間でした。







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最終更新日  2008年07月01日 00時22分56秒 コメントを書く
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