北 の 狼

北 の 狼

Mar 1, 2005
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
オペラ座1



2004年、アメリカ、ガストン・ルルー原作、アンドリュー・ロイド・ウェバー製作、ジョエル・シュマッカー監督、ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム。

『オペラ座の怪人』の原作者はガストン・ルルー(パリ、1868~1927年)で、1910年の出版です。
ルルーといえば、『オペラ座の怪人』とならんで有名なのが『黄色い部屋の謎』(1907年)という推理小説です。『黄色い部屋の謎』は、密室ものの推理小説としていまだに最高傑作との誉れが高い作品です。私も大学生の頃推理小説にかぶれていましたから当然のごとく読んだのですが、確かにこのトリックは素晴らしいの一言で、これを超える密室ものは今後絶対に出現しえない、といっても過言ではない内容です。

当時は、『モルグ街の殺人』のエドガー・アラン・ポオ、ホームズ・シリーズのコナン・ドイル、エミール・ガポリオによる『ルルージュ殺人事件』(世界最初の長編探偵小説)、アルセーヌ・ルパン・シリーズのモーリス・ルブランなど、古典的推理小説が全盛を迎えていたのでした。それらにならって、ルルーも『黄色い部屋の謎』を執筆したのでしょう(「イリュストラシオン」という週間新聞に連載)。
ちなみに、推理小説の”型”はこの時期に既に完成されています。後に登場するトリックの殆どが『モルグ街の殺人』(世界最初の推理小説)で使われていますし、典型的な探偵(シャーロック・ホームズ)も悪役(アルセーヌ・ルパン)も、そして完全なる密室トリック(『黄色い部屋の謎』)も既に登場しているわけです。

原作小説『オペラ座の怪人』は、そういう人物(推理小説家たるガストン・ルルー)がそういう時代(推理小説全盛時代)に執筆した作品ですから、ホラーとはいえ推理・探偵小説としての趣が濃い内容です。
ただ、ルルーの作品は、『黄色い部屋の謎』こそ今でも絶賛されていますが、他の作品はそう評価されてきたわけではありません。現在、彼の作品は『黄色い部屋の謎』、『オペラ座の怪人』の他に『黒衣婦人の香り』が読めます。『黒衣夫人の香り』は、『黄色い部屋の謎』の続編と称すべき推理小説ですが、出来は秀逸とはいえません。
小説『オペラ座の怪人』自体は、B級の推理小説(探偵・ホラー)で、トリックやストーリーは目を見張るほどではありません。ルルーは、ミステリ以外に、ファンタジー、歴史、政治、SF、ユーモア、スリラーとあらゆるジャンルの小説に挑戦しており、多才な人物だったようですが、それを反映してか『オペラ座の怪人』の内容は雑多な印象です(つまり、まとまりがあるとは言い難い内容です)。

『オペラ座の怪人』は1930年に、『新青年』という推理小説誌(1920年創刊、江戸川乱歩、横溝正史、高木彬光らを輩出)に参加していた田中早苗によって日本で翻訳・紹介されましたが、完訳は87年に創元推理文庫から、89年にハヤカワ・ミステリ文庫から、00年に角川文庫から出ています。私としては、角川の長島良三訳が現代的な日本語でお勧めですね。




そして、1986年、『エピータ』、『キャッツ』、『ジーザス・クリスト・スーパースター』などのミュージカル作品で有名なアンドリュー=ロイド・ウェバーが、本格的なラブ・ストーリーとして、美しいロック調の音楽と豪華な舞台美術を用いてミュージカル化しました。この作品も大ヒットし、日本の「四季」等、世界18ケ国で上演され、現在までの観客総動員数は約8000万人にのぼり、『キャッツ』を抜いてギネスブックの記録を塗りかえる見込みですし、オリジナルアルバム(マイケル・クロフォード、サラ・ブライトマン)は現在までに4000万枚を売り上げており、キャストアルバムとしては史上最高のセールスを記録しています。
小説『オペラ座の怪人』のラストでは、怪人の遺体が発見されて、その指にはクリスティーヌの指輪がはめられていたのですが、この情景に触発されてウェバーは、この作品は本来的にラブストーリーではないかと思い至り、ミュージカル製作のきっかけになったとのことです。

88年にウェーバーは最初の映画化を計画しています。監督は、映画『ロスト・ボーイ』で印象的な音楽の使い方を披露したジョエル・シュマッカーを予定していました。
しかしながら、ミュージカル『オペラ座の怪人』の初演でクリスティーヌ役を演じ映画の出演も予定されていた、ウェバーの妻にして彼のミューズ(芸術の女神)こと歌手・女優のサラ・ブライトンとの離婚により、ウェバーは映画化を一旦は断念します。
その後、ウェバーは何度もシュマッカーに映画化の協力を求めましたが、シュマッカーのほうは『バットマン・フォーエバー』、『評決のとき』、『フォーリング・ダウン』、『フォーン・ブース』などの作品を手がけるのに忙しかったのでした。
それが、02年12月、ようやく両者の思惑とタイミングが一致し(映画『シカゴ』の成功が大きかった)、本映画のプロジェクトが再開されたのでした。

ウェーバーもそうですが、シュマッカーにしても、12日間で撮影した『フォーン・ブース』のような軽快な作品の直後に、本作品のような重厚、華美なものを見事に仕上げてしまうのですから、才能や技術、そして意欲は並々ならぬものがありますね。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Mar 2, 2005 12:44:19 AM
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

chocoolique の世界… chocooliqueさん
かくの如き語りき トーベのミーさん
★★★★ しましま LI… jabannaさん
がちゃのダンジョン … gacha-danjhonさん
ロミ~♪の部屋 romy♪さん
映画観覚 眺 望さん
復刻★限定★希少品 … おもちゃアドバイザーの ひかり♪ですさん
スカイミュー μ ミューさん
MY HIDEOU… GATECRASHERさん

Comments

星野あい @ 私も、怖いの大好きです。 怖がりなのに、サスペリアとか、死霊のは…
北の狼@Wolf @ Re[1]:『マイケル・コリンズ』(01/15) <<トーベのミーさん>> >狼さんは…
北の狼@Wolf @ Re[1]:『ムトゥ 踊るマハラジャ (Muthu)』(06/05) <<メープルおばさん>> はじめまし…
北の狼@Wolf @ Re:まだあきが来ていません(06/05) <<ももにゃきさん>> >から、見な…
トーベのミー @ Re:『マイケル・コリンズ』(01/15) 血がいっぱい、流れたということを重視し…
メープルおばさん @ Re:『ムトゥ 踊るマハラジャ (Muthu)』(06/05) 初めまして。 これ渋谷まで見に行ったん…
ももにゃき @ まだあきが来ていません から、見なくていいかも?? 見るように…
北の狼@Wolf @ Re:ホロコースト(05/29) <<μ ミューさん>> >ホロコーストは…
北の狼@Wolf @ Re[1]:『生きてこそ ALIVE』(05/22) <<μ ミューさん>> >わたしもきっと…
北の狼@Wolf @ Re:深層(05/27) <<μ ミューさん>> >わたしにも、 …

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: