我輩は靴である。名前はまだないが、人は我輩のことを単に「26.5」とか「8と1/2」などと呼び捨てにする。新年早々ご主人様の目にとまり、我輩はご主人様のしもべとなった。世間にデビューする日も間近のはずだった。

ところが、明けても暮れても雪が消えず、我輩の出番はまだ来ない。それどころか、ご主人様は我輩を再度箱に仕舞いこんだまま、かれこれ10日以上もほったらかしにしている。
酒の匂いがしないご主人様と久々の対面を果たした今日、ご主人様の様子がおかしい。足の指に何かを塗っているのだ。「ちょっと痒い」などと独り言を言っている。ご主人様は足の指に「虫」でも飼われているのだろうか?そんな足なら御免こうむる。
えっ?「虫ではない」のですか?それなら早く我輩と出かけてくださいな。はぁ?「でも痒い」のですか?だったら皮膚科のお医者さんにでも診てもらったらどうです?気が小さいご主人様だ。何か心配ごとがあったら何でも打ち明けてくださいな。まったく虫臭い。じゃなくて水臭い。