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ひとつ、ふたつ、みっつ・・・。今日にひとつ目、明日にふたつ目、そしてみっつ目は・・・。何回数えても、ここにあるパンのその数は変わらない。問題は、世界の終わりが、明後日の夜明けとともに来るという事実だ。どうせ助からないのなら、みっつ目のパンも今日か明日に食べてしまうべきなのか。それとも、奇跡とやらを信じて、明後日の日の出を見ながら食すべきなのか。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・。飽きることなく繰り返す、ひとつ、ふたつ、みっつ・・・。今日にひとつ目、明日にふたつ目、そしてみっつ目は・・・。いくら繰り返しても、その数は変わらない。
2006/06/25
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マニュピレーターの指先は、わずかの迷いも見せずに、本のページを捲って行く。前書き、目次、小タイトル、一ページ目、ニページ目、三ページ目…。細心の注意を払っているはずなのに、はらりと紙片が目の間を横切っていったことに、私はどきりとして操作の手を止めた。ページが取れたのかと思ったのだが、そうでは無かった。本から操作台に落ちたのは、明らかに本の紙質とは異なる、細長い紙切だった。ページを支える操作ピンはそのままにして、マニュピレーターを移動させ、その紙切れをそっとつまみ上げると、スクリーンに映し出すよう指示を出した。一枚の栞だった。そこには、久しく見ることがなかった、手で書いたことが一目瞭然の、たどたどしい文字がしたためられていた。私は、その手跡を知っていた。ここが人々に図書館としてオープンされていた時に、一人の司書がいたことを憶えているのは、私だけになっただろうか。もう若くはなく、秀でた才能があるわけでもないことから、ここが閉まられるのと同時に、彼女の延命措置は打ち切られることが決まっていた。彼女が務める最後の日、私はあえてそのことには触れないように、ただ淡々と、いつもと同じように傷んだ本の点検を続けていた。整理を済ませて、書棚の奥から出てきた彼女は、身体を動かした余韻からか、顔を少し赤らめていた。つられた私が、視線を向けると、はにかんだように下を向いた姿を思い出した。私が視線をそらすのと同時に、彼女が書庫を振り返り、…いつか誰かが…。と、つぶやいたのを、聞いた気がした。今、あらゆる本はすべて、コンピューター画面を通して提供されるデジタル出版となり、図書館はアナログ書籍の有る意味「遺産」を管理する倉庫と成り果てた。私は、辛うじてその倉庫番として雇われることで文字通り命を長らえ、来る日も来る日も収蔵された本の状況を点検することを繰り返している。私がこの職に就くことが出来たのは、以前ここに務めていて、アナログ書籍を扱っていた経験者であることだった。職が無くなることは即ち延命装置を終了させることであるが故に、今の境遇に文句が有ろうはずはなかった。何本ものマニュピレーターを操作し、本の傷みを点検し、必要な補修を施し、貴重な資料を保管する重要な役目と心得ていた。時折、本の重さを感じた時代を懐かしく思うこともあったが、ただそれだけのことだった。それなのに、栞を見ながら私はなぜ泣いているのだろうか。彼女の手跡で書かれていた言葉は、ただ一言。…忘れないで。栞が挟まれていた本のタイトルは、『最後の一枚の葉(The Last Leaf)オー・ヘンリー作』。
2006/06/05
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ピ!アナタの残高は、後5396291日です。本日の残高照会をありがとうございます。ピ!アナタの残高は、後5396290日です。本日の残高照会をありがとうございます。ピ!アナタの残高は、後5396289日です。本日の残高照会をありがとうございます。ピ!アナタの残高は、後5396288日です。本日の残高照会をありがとうございます。何度、照会しても、どうやっても一日は一日分しか減りはしない・・・私の罪の償いは、まだまだ済んでいないようだな。ああ、早く残高がゼロにならないものか。死後の世界でも、人権重視とやらで、拷問されることも無くなった。すっかり近代的なシステムも導入されて、いつまでここに居なければいけないのか、簡単にわかるようにもなった。そう、それがかえって、なまじの拷問よりも辛いものだとは。生まれ変わって地獄から出られる日が、ただただ待ち遠しい・・・
2006/06/02
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