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珊瑚が3月の誕生石となってるのは、日本だけと知って、私は酷くがっかりしたものだった。深い海の底でゆっくりと形作られる珊瑚。命のきらめきを閉じこめた、ある種の生々しいを感じさせる珊瑚。無節操に光り輝く石でなく、無生物の冷たい固まりでないことが気にいっていた。アナタからの電話の意味は、わかっていた。別れの挨拶だということは、気が付いていた。アナタが私と約束していたことを、すっかり忘れているのを知って、そうだと思っていた。夏に出合ったころ、アナタは、私の誕生日には、珊瑚樹で出来たオブジェをプレゼントしてくれると言っていたのに・・・アクセサリーを好まない私だから・・・だから、私は言葉の代わりに、ナイフを抱きしめて、夏に出合ったあの浜辺でアナタを待った。アナタの言葉を聞き終わる前に、私はアナタにナイフごと身体をぶつけていた。アナタはよろめく足元を波に取られ、大きな水音を立てながら崩れるように倒れていった。水しぶきが治まった水面をのぞき込むと、アナタはうつろな瞳で私を見上げ来た。そして、アナタの胸元からは、ゆらゆらと立ち上る血潮が波間を鮮やかに彩っている。それは、私だけの珊瑚樹。けして、誰にも渡さない。
2006/03/31
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アナタと触れ合う一瞬が待ち遠しい。オマエと触れ合う一瞬にすべてを掛けている。重なり合うそのわずかな時に、アタシはアナタに気持ちを込めて、想いを伝えるの。互いを確かめ合うそのわずかな時に、ワタシはオマエを思う気持ちを込めて、しっかりと抱きとめようとするのだ。それなのに、アタシの胸の鼓動が聞こえないはずはないのに、アナタは一瞬のうちに通り過ぎてゆく。抱きとめようとした腕をすり抜けて、オマエは一瞬のうちに離れさって行く。あぁ聞いて、アタシの呼びかけを。・・・ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン応えてくれ、ワタシの声に。・・・ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキンそれなのに、アタシの目に残るのは、過ぎ去ってゆく、アナタのまっすぐな後姿だけ・・・それなのに、ワタシの目の前に広がるのは、ただむなしい空間だけ・・・・・・それでも、まだいいさ、お前たちは。ちょうど正午を打ち鳴らし終えた柱時計の長針と短針の嘆きを耳にした、テレビの上のデジタル時計がつぶやいた。・・・一時間に一度は、必ず逢えるじゃないか。・・・俺なんか、誰かとめぐり合うことなんてゼッタイありえない。そして、カチリと音がして、時計は0:01を示した。
2006/03/28
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