2003/01/20
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カテゴリ: 気まぐれのお話
「あなたが一人じゃないことを気にしているわけじゃなくて・・」緑から黄金色に変わろうとしている並木は、青空に映えてとても美しかった。その頃、Y公園には貨物線路が残っていて、まるでアーチ門をくぐって入るような雰囲気だった。お前はその公園の入口で、ふと振り向くとこういい始めた。「聞きたいのはいつまで一緒にこうしていられるのかってことなの。」学生運動の時から共に居る私の妻・元同士といった方がふさわしいのだが、彼女の話題になったのは、その時が始めてだった。お前とはいつまでもこうして旅を続けて生きたいと言った私に、お前は額にかかって来る髪をかきあげながら言い出した。腰のところで軽く握られた左手を見て、お前が言葉を選んでいるのだなとわかったよ。

お前は一緒に居るという意味をどんなつもりで使ったのだろう。本当にお前とはいつまでもいろんなこと語り合ったり何処へでも行ったりして生きるという旅を続けていたかったんだ。お前には私が言い訳を言っているように感じたんだね。「もういいわ、今日は帰るから・・」そういって、その日お前は私から去っていった。そして、次に会った時には、もうその話題は出さなかったね。

季節が深まるに連れて、お前と私の間も深っていった。でも、ふと目を覚ますと横に居るはずのお前が、小さなテーブルに座ってグラスを両手で支え、いつまでもじっとしていることに気が付くようになったんだ。そう、私は気が付いていたよ。お前が悩んでいることに、でも、答えを出すのは私ではないと思っていたから、何もいわなかった。間違えていたのだろうか・・・・





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最終更新日  2005/07/04 09:31:56 PM
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