2003/12/09
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カテゴリ: シャートなお話
サンタは、煙突のない今風の家に入りあぐねていた。
彼は子供部屋と思しき橙色のカーテンが掛かっている部屋の窓にそっと近づくと、子供を起こさないように、用心しながら壁を抜ける呪文を唱えた。中空で待っているトナカイは、背中に雪が降り積もるのをじっと我慢している。

部屋の中は、暖かい温風が満ちていた。サンタは額に浮かんだ汗をぬぐいながら、子供のベッドに近づいた。すると、寝ているはずの子供は、ぱちりと目を開けて、サンタを見て笑ったのだ。
・・・ほら、プレゼントだよ!
サンタは驚いたが、そこはぐっとこらえて、何食わぬ声を出し、プレゼントを子供に渡した。

・・・ありがとう!
子供は、ベッドの上に半身を起こすと、プレゼントを受け取ると、猛然と包み紙をむしりとり、中からミトンの手袋を取り出し、歓声を上げた。
子供の無邪気な喜びようを、サンタは部屋を立ち去ることも忘れて、ただ息を呑んで見つめていた。

・・・サンタさんには誰がプレゼントをあげるの?

子供が、ベッドから飛び降りて、カーテンを押しのけ、もらった手袋で窓の曇りをぬぐうと、ちょうどトナカイが動き出したところだった。
サンタは、見ている子供に向かって軽く手を上げると、そりは音もなく滑りだした。

・・・今まで、わたしはひっそりとプレゼントを置いてくるばかりで、どんなに皆が喜んでいることかと、想像しているだけだった。
今夜、初めて、その喜ぶ姿をこの目で見ることができたのだ。
子供よ、わたしにプレゼントをありがとう。
最高のプレゼントありがとう。

サンタは、果てしない夜空を滑りながら、次の出会いを夢見ていた。





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最終更新日  2004/12/20 08:31:02 AM
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