2005/03/06
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カテゴリ: ショートなお話
あの角を曲がれば、もうすぐそこはあなたの家。
角から3番目の、生垣のある小さな家があなたの家。

わたしは、家の前に立つたびに、あなたが奥様やお子さんたちと話しているのを見るのが楽しみだった。
あなたは、いつもにこやかに話していた。何を言っているのかまではよく聞こえなかったが、皆が嬉しそうに耳を傾け、時々笑い声をたて、本当に楽しそうに見えた。あなたたちのにぎやかな幸せな様子がわたしの心を和ませた。
聞こえないのはわかっているだが、あなたに向かって「ご機嫌いかが?」とつぶやくのがわたしの楽しみだった。

それがいつころからだろうか、通りかかる私と目をあわせるたびに、あなたが顔をゆがめ、それでも口元に浮かべた笑いを絶やすことなく、必死の面持ちになったのは・・・
何かに苛まれているのだろうか、心のうちにつらい思いを人知れず抱いているのだろうか、あなたを苦しめているのは一体何なんだろうか。

わたしはその苦しみを思うごとに、気になって気になって、しかたがなくなった。
もしかして、わたしにそれを伝えようとしているのか、そんな風に口をゆがめ、大きく手を振り回しながら、すがりつくような視線で、わたしを見ているあなた。

わたしに出来ることがわかるまで、わたしはあなたの家を訪ねることはやめはしない。


なんとかならないもんでしょうか、恐ろしくて恐ろしくて、仕方が無いんです。
どういうつもりなのか、女が家を覗き込んでいるんです。
しかも微笑みながら、何も言わずわたしのことをじっと見ているんです。
でも、何よりも恐ろしいのは、女がおふくろによく似ていることなんです。
おふくろは去年死んだはずなんです。

俺が殺したはずなのに・・・・





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最終更新日  2005/04/24 07:32:14 PM
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