2006/02/27
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カテゴリ: シュートなお話
…アナタの彼女が、その誕生石と共にあらんことを。
…美しきその石のごとく、いつまでもあらんことを。

僕の元彼女は、魔女と言われていた。
そのことに怖れをなしたわけではないのだが、僕は彼女に別れを告げた。
彼女が、あまりにも綺麗で賢くて金持ちだったから(もしかすると魔女だったから)、僕は少しだけ息が詰まるような気がしていたんだ。
正直にそう話すと(だって魔女は心の中がわかるから)、彼女は哀しそうな顔をしながらも、わかってくれた。
それから僕、はもしかすると新しい彼女ができるかもしれない(だから別れて欲しかったわけではないが)、その時には悪く思わないで欲しいと言った。
ほら、彼女は魔女だから、正直に言っておかないとね。

…私からの祝福を受けて欲しい。

おまじないの言葉と一緒にまき散らされた抹香の香りが、甘くとろけるようだったことを憶えている。

そして、僕には新しい彼女が出来た。
元の彼女ほど、綺麗でもなく賢くもなく金持ちでもなく、なんの取り柄もない娘だったが、むしろ僕にとっては、新鮮で楽しい時間だった。
その娘は2月生まれだったから、僕は彼女に紫水晶がはめ込まれた指輪を贈ると、僕といつまでも一緒に居て欲しいと言った。
彼女は嬉しさで、頬を深紅に染めながら恥ずかしそうに、頷いたんだ。

彼女と始めて過ごした夜、隣で眠る彼女の静かな寝息を聞きながら、僕はこれからの日々を思いながら、うつらうつらしていて夢を観た。

…アナタの彼女が、その誕生石と共にあらんことを。
…美しきその石のごとく、いつまでもあらんことを。

夢の中で聞こえて来た声に、どきりとして目が覚めると、夜はすっかり明けて、鳥たちのさえずりが聞こえて来ていた。
僕は、部屋の窓を大きく開くと、新鮮な空気を吸い込み、気持ちを落ち着けた。
そして、振り返った時、寝台に横わたる彼女の姿が、朝日を浴びてみるみるうちにかすれて行くのを見て、僕は愕然とした。


…紫水晶は紫外線に退色するんだったっけ…





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最終更新日  2006/02/27 10:07:35 PM
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