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いらっしゃいませ。お待ちしていました。こえめです![]()
リカム対バイロン。続きをどうぞ。
はじめての方。他を読みたい方。 目次あります この上にもあるかもです。
【カーラ23】リカムVSバイロン
バイロンに詰め寄られ、リカムは言葉につまった。
王女姫の立場を尊重し、バイロンに協力すべきか。
それとも、カーラの思うがままを支持すべきか。
カーラの幸せを願うリカムの心が今、
ふたつに引き裂かれようとしていた。
目の前のバイロンの顔が、凄みを増す。
「……さあ言えッ、この私に協力するとッ!」
背中に回されたバイロンの腕に力がこもった。
「……くッ」
痛みと微熱の底で、リカムは思い返していた。
玉座の瓦礫の中、危険を省みず駆け寄ってきたカーラを。
そしてその胸に抱かれながら、
彼女のエメラルドの瞳が涙で濡れるのを見上げたことを。
遠い穏やかな日の朝、
カーラの側近として命を受けたときの誇らしさを。
水晶のゆりかごの中で光輝いていた赤ん坊が
微笑みながら、自分に向かって柔な手を
伸ばしてきたときの驚きと嬉しさ。
あまりに無垢なその手をそっと握ったとき感じた、
心まで溶けそうな陶酔感までが
ありありと思い出された。
リカムの中で何かが弾けた。
(例え何が起ころうと、姫様の御心のままに尽くすのみ!)
「私は、姫様にお使えする身。公爵殿のいうことは聞けません」
その言葉をきくや否やバイロンは、
支えていた腕を乱暴に放して立ち上がった。
その顔は怒りに青ざめ、美しさがさらに際立って見えた。
「この私がこうまでして頼んでおるのに、
聞けぬと言うかッ!」
リカムは苦しげな声で答えた。
「例えこの身が果てようと、
姫様以外のお方に、従うつもりはございません」
傷の痛みに霞んだリカムの視界の片隅で、
紫色の神秘の瞳が光ったように見えた。
ごうと音を立てて、光のうずが空中に巻き起こった。
その光は徐々に強さを増しながら成長し、
バイロンと同じくらいの縦長の光の柱となり、
やがて静かな眩しい揺らめきへと変化した。
バイロンがゆっくりとその中に腕を差し入れた。
肘まで入ったあと、再び引き戻されたその手には、
大きな剣が握られていた。
「ならば望みどおり、ここで死ぬがよい!」
力なく横たわるリカムに向って、
バイロンが剣を振りかざした。
(つづく)
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