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磁気探傷(たんしょう)試験
強磁性体を磁化した場合、表層部に磁束を妨げる欠陥があると外部空間に漏れ磁束を生じます。この漏洩磁束により吸着された磁粉模様から、表層部の欠陥を検出する方法が磁気探傷試験です。
62式機関銃の磁気探傷試験は、尾筒(排莢口、送弾板の取付ネジ穴の周辺他)、揺底、遊底について行います。
磁気探傷試験は、専用の暗室で行います。試験する部品のゴミや油汚れ落として、コイルに入れて磁化します。次に、蛍光磁粉の入っている磁粉探傷剤を刷毛等で調べる部分に塗布して、ブラックライトを当てて亀裂を探します。亀裂が規定寸法以上の場合は廃棄処分となります。
62式機関銃は、薬室閉鎖と開放を遊底の上下動により行う「落とし込み方式」です。この方法は64式小銃にも取り入れられていますが、近代の小銃、機関銃ではほとんど採用されていない方式です。揺底は、遊底を乗せて尾筒内を前後する部品で、合金製で削り出し加工のためとても高価でした。そのため安易に廃棄できませんでした。

照門目盛板等の目盛入れ
照門には、射距離用の遊標と左右照尺の2つの目盛板があります。また、銃身固定環の目盛り、尾筒の銃番号等の刻印があります。これらは古い塗料分を取り除き、パーカーライジング処理後に粘性の高い白色の塗料を塗り込みます。この作業は、ほぼ全ての小火器で行います。


「尾筒栓(びとうせん)ガタ」について
62式機関銃はとかく評判の悪い機関銃で、部品が破損しやすい、連射が止まらなくなる、装弾不良が起きやすい等の欠陥が多かったためです。致命的な欠陥は、命中精度の悪さです。

Wikipediaでは「細身の銃身こそが62式の欠陥」としていますが、銃身は64式小銃に比べてはるかに重く太かったので細身が問題とは思えません。低い命中精度の最大の原因は「尾筒栓ガタ」です。私が在隊中、62式機関銃の緊急大量整備を行ったことがあります。正確な数は覚えていませんが、100丁以上を製造元の住友重工業に送り返して修理しています。このような大量整備は前例がなかったようで、使用部隊が命中精度の悪さに堪え切れなくなって大量整備を要求したようです。
62式機関銃の銃身受けと尾筒を接続する尾筒栓は、ブロック状の銃身受けと薄板鋼板をUの字に成形した尾筒本体を左右2個の尾筒栓で固定しています。この尾筒栓は、射撃等の振動や運搬時の衝撃でガタが生じやすい部品でした。そのため、射撃時に銃身が安定せず命中精度を悪くします。銃身受けと尾筒の取り付け部分はM1919機関銃と似た構造ですが、堅牢さは62式機関銃がはるかに劣ります。
武器補給処での修理方法として、治具に尾筒を取り付けて尾筒栓をハンマーで叩いて固定し直します。しかし、所詮は付け焼き刃の修理でしかないので、尾筒栓を新しいものに取り替える緊急整備が行われることとなりました。部隊から後送された62式機関銃を、製造元の住友重工に送り尾筒栓の交換を行ってもらい、その他の整備は十条支処で行いました。

メーカー送りになった「尾筒栓ガタ」の銃は、修理後に試験射撃を行います。そのため、私は補給処勤務の隊員にもかかわらず62式機関銃を飽きるほど射撃しました。
十条駐屯地には「赤羽地区」と呼ばれる分屯地があり、車輛工場や試験射撃場等がありました。敷地が広く、米軍に返還するM3ハーフトラックやM42ダスター自走高射機関砲が保管されていました。64式小銃、62式機関銃、9mm拳銃の試験射撃は、この赤羽地区で行っていました。試験射撃場には、3t半トラックに銃と弾薬、人員を搭載して移動しますが、街中を20丁もの機関銃を運搬しているなど誰も想像していなかったでしょう。支処から5~6分ほどで赤羽地区に到着します。
「尾筒栓ガタ」の緊急整備に伴う試験射撃は、1日に20丁程度行いました。試験射撃の長は技官の小火器班の班長ですが、射撃を行うのは自衛官でした。小火器班には当時2曹1名、3曹1名、陸士長の私がいましたが、3曹は実弾射撃が嫌いでやりたがらず、2曹は射撃の要領が悪いので班長の機嫌を損じていました。よって、62式機関銃の扱いに慣れていた私が射手を務めました。一般部隊では弾薬手が付きますが、1丁当たりの弾数が少ないので射手1人で十分でした。
62式機関銃の試験射撃は、64式小銃のように試験架台には固定せず、普通科部隊同様に二脚を使用して伏せ撃ちで射撃を行いました。ベルトリンクで単射5発用と連射10発用の組みを作って射撃を行います。この程度の弾数であれば手作業で組みを作れますが、試験する丁数が多かったので「抜弾(ばつだん)器」又は「装弾器」という器具を使用しました。抜弾器は、金属製のリンクで弾薬を連結したり外したりするときに使用します。弾薬とリンクを抜弾器に並べて、レバーを押すとピンで弾薬リンクに押し込みます。なお、部隊で機関銃用弾薬が支給される場合、弾薬箱を開ければ200発のベルトリンクの状態で入っています。

62式機関銃の試験射撃は、連射が円滑に出来ればいいので、64式小銃のように照星等の調整は行いません。したがって当初は標的を設置しませんでした。しかし、射手としては標的がないと撃ちにくいので、私は金属製の缶に水を入れたものを持っていき射撃しました。しかし、1発で缶は吹き飛ばされてしまい標的の役を果たせませんでした。後で缶を回収して観察すると、弾痕は弾の大きさ程度でしたが抜けた側の穴は拳ほどの大きさに広がっていました。小銃とはいえ7.62mm弾の威力に驚きました。
武器科隊員、特に補給処の隊員にとって機関銃射撃は滅多にない機会でした。試験射撃の丁数が多いので、支援がてらに火器工場の陸曹に射撃させることになりました。参加者は64式小銃の射撃には慣れていますが機関銃は初心者ばかりで、弾の装填、槓桿の引き方、装弾不良時の対処に四苦八苦していました。普通科部隊では、機関銃は普通分解しか行わないので武器補給処で行うような整備をしたことがないため、私が予備自衛官のとき62式機関銃の送弾機構等を分解すると驚愕していました。
62式機関銃の問題について
「尾筒栓ガタ」修理のため約100丁の機関銃を補給処整備することは、普通科連隊等の使用部隊からよほど強い要望があったためと推測されます。少ない予算から整備費をよくひねり出せたと思います。
62式機関銃の「尾筒栓ガタ」等の欠陥について、長年整備しないまま運用され続けたことについて、私はどうにも解せません。62式機関銃の不具合について、防衛省や陸上自衛隊の上層部がどのように考えていたのか疑問に思います。部隊運用の実情や現場の意見は取り上げられず、予算を戦車や誘導武器等の目立つ正面装備品に費やして、小火器等の重要度が低いと判断された装備には回らなかったのでしょう。
私見ですが、装備品の配備はバランスが重要だと思います。現代戦は様々な装備が多層構造で配置されており、相互連携が重要と思います。戦闘時に様々な火器が相互補完して、はじめて効率的に火力が発揮されると思います。しかし、火力の連携が崩れれば、そこを敵に突かれるでしょう。汎用機関銃は、分隊から中隊規模の戦闘における主力火器です。これが使い物にならないということは、地上戦で敗北するということです。防衛省、陸上自衛隊は、62式機関銃の失敗を精査して今後の防衛装備品の開発や運用に反映してもらいたいと切に願います。
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