真理を求めて

真理を求めて

2003.12.25
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田中宇さんの新著「辺境」を買った。田中さんによれば、辺境とは「異なった文明圏が接する場所」である。ここでは、異なっているが故にお互いが理解できず、世界を激動させる原因を作ってもいる。そして、その激動は、その地域だけのものではなく、つながりあってある構造を浮きだたせるという。だから、辺境を理解することは世界を理解することに通じるというわけだ。

ここで取り上げている辺境は、チベット・アフガニスタン・コンゴとマダガスカル・チェチェン・ビルマ・ガザの6章だ。いずれも日本人にはちょっとなじみのないところばかりだ。しかし、ここが理解できれば世界が理解できると言うことは僕も感じる。

田中さんはジャーナリストの目で見たことを伝えてくれる。たとえばチベットでの中国の人権侵害を伝えるときに、これがけしからんと言って情緒に訴えるようなことをしない。それを冷たいと感じる人もいるかもしれないが、けしからんと言うように感情が動いてしまうと、そこに心が集中してしまい、大局的に見ると言うことが出来なくなってしまう。あくまでもジャーナリスティックに見るために、客観性を保つための冷たさなのだ。

中国に人権侵害があることはけしからんことには違いないけれど、けしからんと憤慨するだけではそれはなくならない。それが生まれてくる原因を分析し、その原因を納得した人が、それに働きかけることが出来なければなくすことは出来ない。もっとも影響力のある人々に訴えかけるには、ジャーナリスティックなやり方でなければならないと僕は思う。

田中さんは、中国の人権侵害に対して、それを黙認するアメリカとインドのことを報告する。未だにアメリカが正義を実現すると勘違いしている人が多いと思うが、アメリカのイノセントな大衆は単純に正義を信じている人もいるかもしれないが、権力者たちは、正義を利用しているだけで、それを実現しようとは思っていない。だから、中国が明らかに人権侵害をしていると分かっていても、利益にならないと思えばそこで正義を主張することはないし、むしろ主張しない方が論理的な行動とも言える。つまり目的に合致した行動だ。

この背景には、中国を敵視してきた政策から、その巨大な市場を利用して互いに繁栄する方向をとった方がいいという計算が働いているわけだ。アメリカは、かつては反対だった。中国の人権侵害を非難してチベットを支援していた。これは、敵視していたときは、それがアメリカの利益だったからチベットは支援されていたわけだ。

正義を守りたいという倫理観を持っている人間から見ると、アメリカのこの行動は許せないものだと思う。しかし、世界を動かしている現実はこんなものだという受け止め方も必要だ。そうでないと客観的に事実として世界を解釈するということが出来なくなる。

アメリカは今や唯一の軍事大国になった。この軍事大国の利益という目で、この世界の辺境を眺めていくと、今激動を深めている世界の姿がだんだんとつながりあったものとして見えてくる。アフガニスタンで戦争をしたのも、どのような利益と絡んでいるのかという観点から見てみると納得できる部分が多い。

イスラエルとパレスチナの問題を、このような観点で眺めてみると、権力者の側は平和的な解決を望んでいないようにも見えてくる。むしろ平和的に解決されては、自らの存在条件がなくなってしまうので、平和が実現されそうになるとそれをぶちこわすようなことをするというのが事実のようにも見えてくる。



絶望的な状況に一筋の光を見るとしたら、田中さんのように優秀なジャーナリストが、現実を鋭く分析して、大局的な見方が出来る人々が増えることだろう。我々がもっと賢くなる以外に権力の暴走を押しとどめることは出来そうにない。イスラエルでは、もっとも優秀な人材からイスラエルを離れつつあるそうだ。このことで国力そのものが衰えるという結果が出てくれば、権力の側も自らの誤りに気づいてくるかもしれない。

さて、昨日のニュースで目についたのは次のものだった。

「<強制執行妨害事件>安田弁護士に無罪判決 東京地裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031224-00001030-mai-soci

これは、権力の側が危機感を抱いたときにいかにむちゃくちゃなやり方で弾圧してくるかというのを、非常によく分かる形で示してくれたなという感想を持った。

「判決は二つの起訴事実のうち1件について「別会社はダミー会社ではなく、被告のアドバイスは実体がある会社再建策だった」と判断した。もう1件については「従業員らがテナント料を横領するために行ったもので、強制執行妨害罪には当たらない」と指摘した。そのうえで「従業員は横領を何ら追及されず、一種の司法取引のような形で、捜査機関に迎合する供述をした」と述べた。」

と記事は語っている。安田弁護士を弾圧するために、「検察官による強引な誘導があった。アンフェアな捜査だった」と裁判官も認めるものだった。イラクでは相変わらず移動中の米兵がねらわれている。

「爆弾で米兵3人死亡=イラク
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031224-00000551-jij-int

これを防ぐのは、テロリストと考えられる人間をすべて抹殺しない限りなくならないのだろうか。米軍は大規模な掃討作戦を行っているらしいが、それでもテロリストを殲滅することが出来ない。米兵は、移動の時にはいつ殺されるか分からないという状況にいるのだろうか。そのような恐怖の中にいる人間が、少しでも自分が危ないと感じたら、無差別に反撃するであろうことは容易に想像がつく。そして、そのことがまた新たなテロリストを生んでいくことになる。泥沼しか予想できないが、どこかでやめることは出来ないのだろうか。

「<フセイン氏拘束>「全アラブ人が悲しんでいる」有力部族長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031225-00000091-mai-int

というニュースでは、アメリカがアラブの心を少しも理解していないのではないかと言うことを感じた。フセインのみじめな姿を見せれば、自分たちの強さを喝采するだろうと思ったのだろうか。「全アラブ人」の「全」という言葉に少々の疑問は感じる。「イラク人はみなサダムに抑圧されてきた。彼は独裁者だ。米軍に拘束され悲しい姿をさらしたことで彼に同情する感情がイラク人に生まれているが、彼のやったことを冷静に思い出す必要がある」と語ったものもいたようだが、そういう人間でさえも、「彼に同情する感情がイラク人に生まれているが」とも語っている。これが「全」ということの意味だろう。

「テロ情報で仏機運航中止 パリ-ロス6便
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031225-00000018-kyodo-int

この記事を見ると、テロは経済を圧迫するという感じがする。運行中止による損害がかなりあるだろうし、警備にもこれから金がかかっていくだろう。そうすれば、利用者が減ってさらに損害が重なるのではないか。

そして、テロを防ぐために戦争をすれば、戦争は何も生み出さず、ただ消費するだけだから、これもいずれ金が失われるだけのことになり結果として経済を圧迫する。テロを防ぐために力で制圧するというのは、戦争でもうける一部だけは潤うだろうが、社会全体ではますます疲弊が進み、やがては戦争でもうけている連中にも金が回らなくなるだろう。そうなるまで人々は気づかないんだろうか。






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最終更新日  2003.12.25 09:12:18
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