真理を求めて

真理を求めて

2004.01.31
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「タイタンズを忘れない」を見た。最近は、一気に映画を見ることが出来ないので、細切れに連続ドラマのようにしてみたのだが、それでもかなり印象的に感じた。最近考えていたことに重なるような思いを感じたからだろうか。

この映画は実話をもとにしているそうだ。フィクションなら、かなりのスーパーマンを設定して、かなり立派な人間を主人公にすることが出来る。しかし、この映画の登場人物には「普通」を感じる。確かに実際にいそうな感じというリアリティーを感じるのだ。もちろん、あとから振り返れば非常に立派な行動に見えるのだが、最初から立派な人間が間違いなく選んだ行動ではなく、成長していく中で選んだ行動が、またもう一つの成長をもたらしていると感じさせてくれるところがあるのだ。

タイタンズというのは高校のフットボールのチームの名前だ。時代背景は、1970年頃で公民権運動が盛んな中でまだ人種的偏見が根強く残っているという時代だ。そして舞台となる地もヴァージニア州の田舎町で、保守的な気分が強い土地で、そこで育つ子供たちは疑問も抱かず人種的偏見の中で育つというような雰囲気を持っている。つまり、理由は分からないけれど、肌の色の違う人間は別の人間なんだという気分を持って育つ土地だ。

その土地で、今までは別々に教育を受けていた白人と黒人の高校生たちが、統合されてともに学ぶ高校が出来るという中で物語が進む。上のような雰囲気の町だから、当然人種的偏見の中でいがみ合う姿が描かれるが、ある意味ではそれが当然の行動だろうと理解できる。それが現実なのだと言うことであって、その現実に非難を浴びせる気にはなれない。だからこそ、この現実から彼らがどのように成長していくかという姿に感動し印象が残るのだろう。

映画ではフットボールを通じて高校生たちの気持ちに変化が起きてくることを描いている。そして、その高校生たちの姿を見て、保守的な大人たちも変わってくるわけだ。フットボールというスポーツの持つさわやかさが、高校生たちの心を解きほぐし、仲間としての連帯感を育てていくということに僕はリアリティーを感じた。フットボールというスポーツは、協力して相手を攻めないと、決して勝負に勝つことが出来ないと言う面もある。人種的偏見よりも、勝つために連帯することの方がどれだけ素晴らしいかということが伝わってくるような気がした。

タイタンズを変えるのに大きな影響を持っているのは、デンゼル・ワシントン演じる黒人のコーチだが、このコーチが単なるスーパーマンとして描かれていないのがいいと思った。彼は確かに強い信念の持ち主だが、失敗することもあり、葛藤することもあるんだという風に描かれていた。むしろ立派さという点では、控えめな白人コーチの方が立派なように僕には思えた。彼が見事に、黒人コーチの足りない面を補っていたなと感じた。

キャプテンである白人の高校生のゲリーを襲った事故という悲劇も、ゲリーは実に素晴らしい姿勢でそれを乗り越えている。フィクションだったら、あまりにも立派すぎてご都合主義だと言いたいところだが、実話だと言うところに、彼が成長してきた跡を見てきた観客は、それをリアリティーあるものとして受け取るのではないだろうか。

ゲリーは、純粋で情熱的な若者で、それだからこそ最初は強い人種的偏見の中にいたにもかかわらず、チームメイトを「兄弟」と呼ぶほどその連帯感を受け入れる若者でもあったのだなと思う。その彼だからこそ、フットボールが出来なくなるという下半身麻痺という事故も乗り越えて、車いすのスポーツでも一流になってしまうと言う生き方ができるのだろうと思う。

その他、自分はダメだと思っていた太めの愛嬌のある青年が、チームメイトやコーチの助けで、できないと思っていた大学進学の夢を実現できたり、自由な雰囲気の中で育った転校生が、保守的な町で巻き起こす騒動などのエピソードも、成長の中で人間は変わっていくのだなあと言うことがリアリティを持って感じられる。



そういえば、昨日は「ほっぺにチュッチュ2004」(ひよこの会<ダウン症乳幼児の会>20周年記念誌)というものを、掲示板によく訪れてくれるまきさんから送っていただいた。

我が子がダウン症だと知ったとき、その親は、どうして自分にこんな運命が降りかかるのか、その理不尽さを感じることだろう。しかし、この本ではその扉に、全く逆の発想で呼びかけをしている。

ダウン症の子供たちは、その子を本当によく理解してあげなければ、成長の段階でものすごい苦労をしていくことになる。親は普通の親よりも大変だ。その大変さを受け入れてくれる親を「神様」は探しているんだと呼びかけている。そして、あなたはその「選ばれた」親なんだという風に語っている。

これは素晴らしい発想だなと思った。僕は無神論者だけれど、こういう神様なら大歓迎だ。そして、普通のエリート主義は嫌らしいけれど、こういう意味で「選ばれた」人間は素晴らしいと思う。その選ばれたことで、きっと成長し続けていくことが出来るだろうという感じがするのだ。運命を呪うのではなく、その運命が、気づかないで過ごしてしまうような真実を見させてくれるという、素晴らしい成長をくれるのだと思えれば、どんなにすごいことだろう。

どんなに立派な人でも、生まれつきの素質で立派だと言うことはない。成長することによって、振り返ってみれば立派なんだなあと言うことになるんだろう。その成長のきっかけをつかむというのは、まさに運命なんだなあと思う。

タイタンズは、それまで分離して幸せに生きていた白人と黒人が統合されるという、それまでの気分から言えば不幸を味わったが、その運命によって、それまでの幸せよりも大きな幸せをつかむことが出来た。それは、運命を成長へのきっかけとしてつかんだからだ。ダウン症の子供の親になった人も、タイタンズが歩んだ道と同じ道を歩んでいるような気もする。

まきさんからのメッセージでは、この本は回し読みをしてもらってけっこうだという風に書いてあった。そこで、僕は自分が読み終わったら、次の人に回していきたいと思っている。その際、自分が感じたことを書き込んで回していこうと思っている。ある意味では本を汚しながら次の人に渡すのだが、この本は、思いを伝えながら回したい気がしてならないのだ。自分が感じたことを次の人に知ってもらいたい。そして、その人が感じたことを、またそこに記して欲しい。そして回り回ってまた僕のところに帰ってきて欲しい。僕も他の人の思いを知りたいと思う。そして、いろいろな人の思いの詰まった本として、またまきさんのもとへ返したいとも思っている。

とりあえず次の相手としては、僕もまきさんも知っている、小林とむぼさんの元へ届けたいと思っています。その次に、思いを共有してくださる方がいれば、ぜひご連絡をお願いします。今10数ページほど読み進めました。





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最終更新日  2004.01.31 10:29:33
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