再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

「韓国トロットを巡… New! Mドングリさん

週刊 読書案内 大… New! シマクマ君さん

あしたは都知事選 New! abi.abiさん

源氏物語〔3帖空蝉 … New! Photo USMさん

台湾旅行。十分。 はんらさん

カレンダー

2012年10月01日
XML
__.JPG



「美作の風」今井絵美子 ハルキ文庫
(内容紹介)
津山藩士の生瀬圭吾は、家路をおとしてまでも一緒になった妻・美音と母親の三人で、つつましくも平穏な暮らしを送っていた。しかしそんなある日、城代家老から、年貢収納の貫徹を補佐するように言われる。不作に加えて年貢加増で百姓の不満が高まる懸念があったのだ。山中一揆の渦に巻き込まれた圭吾は、さまざまな苦難に立ち向かいながら、人間の誇りと愛する者を守るために闘うが・・・・・・。市井に生きる人々の祈りと夢を描き切る、感涙の傑作時代小悦。

この人の小説を読むのは初めて。今時代小説で流行っている料理帖モノの先駆けらしいが、私が手にとったのはその理由ではない。この小説の題材が津山山中一揆(騒動)を扱っているからである。この一揆の事はほとんど知らなかった。しかし、岡山の地方を舞台に小説が書かれること自体が珍しく、題材が一揆なのはさらに珍しい。興味を覚えたのである。結果、よく歴史的事実に取材しながら、なおかつ視点を一人の津山藩士にする事できちんととしたエンタメ作品に仕上げていた。それは同時にこの作品の弱点にもなっていたのではあるが。

他の人はいざ知らず、私は二年間津山市内の借家に住んでいた事がある。よって、圭吾の住む田町の街並みも、一の宮、川辺、二ノ宮、院庄などの地名も、地図をまざまざと思い浮かべる事ができる。山中一揆がどの様に広がっていったのか、初めて知る事が出来た。

享保年間、年貢加増に加えて、津山藩主死亡により領地減知による山中地域の公領への変更で二重に年貢を取られまいとする農民の必死の抵抗が、やがて一揆に広まっていく。藩内の勢力争いが一段落ついた途端に強権発動をする家老。異例の一般農民含めて51人もの犠牲者を出したこの一揆の遠因は、二回の騒動で改易を体験してきた津山藩松平家の体質にある事を描く。また、農民の苦しみよりも藩の存続を第一とする中間管理職たちの「狡さ」も描く。

惜しむらくは、一揆首謀者の徳右衛門の人物造形の描写があまりにも説明不足で、何故あそこまで急激に一揆が広まったか、全然説明出来ていないということだ。それを描くと、あまりにも重くなりすぎるので、已めたのであろうか。
2012年9月23日読了





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2012年10月01日 09時37分44秒
コメント(2) | コメントを書く
[読書フィクション(12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…
KUMA0504 @ Re[1]:書評「どっちがどっち まぎらわしい生きものたち」(02/26) はんらさんへ 今気がつきました。ごめんな…

バックナンバー

・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月
・2024年03月
・2024年02月
・2024年01月
・2023年12月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: