再出発日記

再出発日記

PR

×

フリーページ

お気に入りブログ

妄想: パラドクスと… New! Hiro Maryamさん

ノーベル文学賞 New! 七詩さん

源氏物語〔38帖 鈴虫… New! USM1さん

北海道旅行 1日目 午… New! はんらさん

追悼メビウスさん(復… New! Mドングリさん

カレンダー

2013年11月10日
XML
テーマ: 本日の1冊(3795)

「無私の日本人」磯田道史 文藝春秋
著者は現在43歳である。あとがきによると、特に一章目の「穀田屋十三郎」を書いたのは、自分に子どもが生まれたのが契機になったという。
「(今度また大震災が起きれば)国の借金は国内では消化しきれなくなるだろう。高い利子で多国から資金を借りてこなければならなくなるだろう。そうなれば、大陸よりも貧しい日本が、室町時代以来、五百年ぶりにふたたび現れる。(略)いま東アジアを席巻しているものは、自他を峻別し、他人と競争する社会経済のあり方である。(略)この国にはそれとはもっと違った深い哲学がある。
しかも、無名のふつうの江戸人に、その哲学が宿っていた。それがこの国に数々の奇跡を起こした。(略)地球上のどこよりも、落とした財布がきちんと戻ってくるこの国。ほんの小さなことのように思えるが、こういうことはGDPの競争よりも、なによりも大切なことではないかと思う。古文書のままでは、きっと私の子どもにはわからないから、わたしは史伝を書くことにした。」(329p)


この著者の視点には大いに共感する。子どもにむけたプレゼントだからなのか、どちらかというと史伝というよりも史料を駆使した司馬遼太郎風の小説という感じでとても読みやすい。一方ては史料批判がどこまでできているのかは、不安を感じた。

私は、特に一章目の「穀田屋十三郎」に書かれた人々の知恵と勇気と倫理観の強さには、大きく撃たれるものがあった。ここに登場する人々は、自分のためではなく、郷里のために時の権力者から「武士にお金を貸し、利子で税を免除してもらう」という仕組みを作った「弱くて小さな者たち」である。その「小さな者たち」に私は希望を見出す。

江戸時代、とくにその後期は、庶民の輝いた時代である。江戸期の庶民は、
ー親切、やさしさ
ということでは、この地球上のあらゆる文明が経験したことがないほどの美しさをみせた。倫理道徳において、一般人が、これほどまでに、端然としていた時代もめずらしい。(77p)


著者はここでは「体面」を大切にすること、と言っている。これをしないと「一分が立たない」ということを寺男が話し、金集めに奔走する。言い換えれば「恥の文化」とでもいうのか。キリスト教や儒教文化のない日本に独特に発達した社会規範である。

もちろんそのことを持って、日本文化が他国よりも優れているとかの証左にはならない。監視社会になりやすさ、大勢順応主義などはどこかで気をつけなければ、日清日露から日中戦争に向かった日本の再来を呼び起こすだろう。そうではなくて、「自ら積極的に英雄視されることを避ける」日本人の倫理観の高さにどこか「可能性」を、私も見つけたいとは思うのである。
2013年10月13日読了





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2013年11月10日 08時27分20秒
コメント(6) | コメントを書く
[読書(ノンフィクション12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

聖書預言@ Re:のろいではなくて呪いの話(11/01) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
背番号のないエースG @ 関東大震災 「福田村事件」に、上記の内容について記…
ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?

バックナンバー

・2026年09月
・2026年08月
・2026年07月
・2026年06月
・2026年05月
・2026年04月
・2026年03月
・2026年02月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: