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2018年05月06日
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テーマ: 本日の1冊(3688)


「大和路・信濃路」堀辰雄 新潮文庫

ただ、或はこういう日本の古い歌物語だの、或はこういう西洋の輓近の詩だのを前にしながら、文学というものの本来のすがたをしばしば見なおしてみたりする事は、あまりに複雑多岐になっている今日の文学の真っ只中に身を置いている自分のごときものにとっては、時として、大いに必要なことではないかと考えているからに他なりません。少なくとも、僕はそういう古代の素朴な文学を発生せしめ、しかも同時に近代の最も厳粛な文学作品の底にも一条の地下水となって流れているところの、人々に魂の平安をもたらす、何かレクイエム的な、心にしみいるようなものが、一切の良き文学の底には厳としてあるべきだと信じております。(74p「伊勢物語など」より)

昭和7年から18年にかけてのエッセイを順番に載せている。この前読んだ「かげろふの日記」の背景を成す堀辰雄の信条であり、加藤・福永・中村などの東大の学生たちとの交流が始まる前と最中の彼の心持ちが書かれている。池澤夏樹の解説でこの本の存在を知って紐解いた。

折口「死者の書」を読んで、自分にも何か古代小説が書けないかと思って大和路に向かい、やがて倉敷の大原美術館のエル・グレコの「受胎告知」を観に行く堀辰雄。思った以上に「死者の書」に影響を受けていたことにびっくりした。

大和路を歩きながらの堀の思い、古代人のレクイエムを小説化したい、をひしひしと感じる。しかしどうやら、戦争と病気がそれを現実のものにしなかったらしい。ただし、「曠野」はまだ読んでいないので、いつか読みたい。

昭和10年辺りの大和路と、現代のそれは、かなり隔たりがあるには違いない。それでも比較的むかしの面影を保っているのがこの地域だと思う。堀辰雄の歩いた道筋をいつか歩いてみる旅というのも面白いだろう、そして彼が果たせなかった小説構想を想像するのも面白いだろう、と思った。





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最終更新日  2018年05月06日 07時08分40秒
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