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2018年05月09日
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テーマ: 本日の1冊(3688)


「揺らぐ街」熊谷達也 光文社

仙河海シリーズ第6作目。3.11に向けて描かれた群像劇は、ここで一旦止まって、このあと明治時代(「浜の甚兵衛」)へ時間軸を移すことになるので、どうなのだろうか、ちょっとまとめ的な意味も持たせたのだろうか。

私の予測はそうではない。これがまとめならば、少しさみしい。今回は、思い切り作者の周りの世界を描いたようだ。今回は、シリーズで唯一最初から最後まで3.11後の時間軸になっている。しかし、視点は東京から見た仙河海になっている。シリーズ最後の本で、また現代に戻る予感がある。主な登場人物は3人。東京出身東京在住の編集者、但し川島聡太の元カノ山下亜依子(38)、神奈川出身東京在住作家の桜城葵(37)、仙河海出身仙台在住の元作家の武山洋嗣(28)。年齢は3.11現在。主人公は亜依子だが、語り部的な位置。モデルがいるのかどうかはわからない。しかし、真の主人公といえるあと2人にはモデルがいる。

桜城葵と武山洋嗣は、どちらも作者の分身である。葵はN賞(直木賞であることは明らか)作家でコンスタントに物語を紡いできたが、3.11のあと、新作が作れなくなり、仙河海にボランティアに通っていて、新たな境地を見つける。武山は、押し切られる形で作家カムバックをしたが、出来上がったのは仙河海市をモデルにした仙賀崎シリーズだった。熊谷達也本人は、葵よりも気仙沼に関係しているし、武山のように生まれた土地ということもない。だから2人の葛藤は、ふたつとも作者の葛藤だったということになるだろう。

亜依子の編集者としての仕事描写は、身近な人物なだけに作者も困ったのではないか?作品の中では、亜依子をモデルにした葵の小説つくりは頓挫してしまったが、本当はこの作品、実在モデルがいるのではないか?

仙河海シリーズも6冊目である。だとすれば、ここで書かれている、震災文学は売れないという悩みはホンモノなのかもしれない。それは気負ってこのシリーズを始めた作者自身の戸惑いも見せているのかもしれない。でもね、こういう「ワインズバーグ・オハイオ」形式の群像劇は売れなくても残ってゆくと、私は思う。

新たに分かった人間関係をメモ。
・武山の家は唐島にあった。代々牡蠣漁師。
・川島の父親は遠洋マグロ船漁労長だった。
・菊田守一(遠洋マグロ船漁労長)の息子は「文藝界」編集長、菊田守。守の祖父はカツオの一本釣り。

2018年5月読了





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最終更新日  2018年05月09日 19時43分02秒
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