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2018年07月07日
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第ニ章は「谷地湯」(2巻-3巻)。
長編の序章らしく、サル社会からゆっくりと人間社会にシフトする。谷あいの湯治場の宿の番人喜太郎が、ふと大量の金塊を手にすれば、小心者らしく金塊溜めを計画し、疑心暗鬼で殺人も犯す。しかし、それよりももっと狡猾な人間が登場する。日置藩の隣の猿投沢領一万石、佐渡守である。彼は隣の望月藩七万石(実高10万石)領主の弟であるが、弟ということだけで小藩に甘んじているのを不満としているようだ。手近に忍者を飼い、後に分かるが幕閣の水野忠清とも友好関係、或いは懐刀的な役割を持っている。「能力あるものは、手段を選ばず出世するべきだ」という価値観を持っている。80年代、90年代の日本の一つの課題ではあるだろう(原稿完成日付は1988年10月)。ここで、初めて日置領、猿投沢領、望月領の地図が登場する。それによると、日置と望月の国境に五代木の港があり、望月から流れた川は日置に通じているのである。一つわかるのは、太平洋側に国があるということだ。(2巻252p)


第三章「佐渡守」(3巻-4巻)。
ここから本格的に人間世界に舞台を移す。佐渡守の望みは書付のエピソードで明らか。望月藩を我が物にするということだ。そのために、望月の小姓組頭の団織部之助の殺害を試みる。しかし、その話は一旦切れてそれ以上は展開しない。第三章は、ずっとあの日置大一揆を治めた錦丹波とその娘鞘香と農民の娘加代を中心に話が進むのである。久しぶりの笹一角(草加竜之進)も登場して、カムイ伝ファンはドキドキしたと思うが、もはやかつての主人公(カムイ伝には正助、竜之進、カムイと3人の主人公がいた)竜之進に仇を討つ敵はいない。また、自ら藩主になって理想の政治を行うのは1度失敗している。自らの役割を見つけることの出来ぬ、単なる「黒子」としか役割を持てないのである。

岡本鉄二の画は、この頃縦横無尽に描かれている。農民の生活描写も、第1部よりも遥かに細密になっている。返す返すも、彼の早逝が悔やまれる。

この章で、草加竜之進の1部における活躍、また「傷魂(きず)踊り」の節に絡めて、正助たち農民の経過、また「舌を切られた正助に怒り、農民たちがなぶり殺しにしてしまった」という「伝説」を紹介する。それは既に非人たちの「踊り」と祭り化しており、かなりの歳月が経ったことを示している。更に言えば、「影衆」の存在も明らかにされる。竹間沢の庄屋、そして苔丸が影衆として、五百棲(いらず)ケ原に大量の米を隠匿しているということも、明らかにされるが、第二部において再び大一揆は起きないので、このエピソードは今のところ不発に終わっている。しかし、実はこの部分はかなり重要な部分なのではないか?とわたしは思っている。第二部は、既に第一部の「志」は無くなったという評価が多く見られるのだが、わたしはこの時まで、第二次日置大一揆を想定していたのではないかと思っている。なぜならば、「影衆」とは、白土三平における「柳生武芸帳」の革命集団、「風魔」の労組集団、に継ぐ、白土三平における「世直し」の「手段」だからである。これについては、また後で書く。
ここで、鞘香と加代を中心に描かれているが、この2人が第二部で再び登場することはむつかしかった。いったいどういう未来が構想されていたのか?これも残念という他は無い。





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最終更新日  2018年07月07日 11時46分53秒
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