イヌは、いつ、いかにして人間の友になったのか、すなわちイヌの家畜化はいつ、いかにしてか、をめぐっては、これまで様々な議論が交わされてきた。 ◎オオカミから初期のイヌに進化するまで時間の計算は合った 人間は、友として飼うために、古代のオオカミの群れにいた温和しい個体を迎え入れたり選び出したりしたのだろうか? それとも、オオカミの群れの中に人間をあまり怖がらない個体がいて、人間が捨てる残飯に自ら近づいていったのだろうか? この論争では、時間計算は合うのかという点が大きな課題の1つになってきた。つまり、オオカミから初期のイヌへの進化が起きたと考えられているおよそ3万年~1万5000年前までの間に、人間の残飯を漁るオオカミがイヌという全く新しい種に進化できたのか、それは十分な時間だったのかということだ。 2025年2月12日付けのイギリスの学術誌『英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)』に発表された論文は、その計算が確かに合うことを示した。適切な条件が揃えば、オオカミは約8000年でイヌへと進化できた可能性がある、と数理モデルから推定されたのだ(写真=カナダの海岸で暮らす珍しいオオカミ)。