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2025.11.09
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カテゴリ: 生物学
 イヌは、いつ、いかにして人間の友になったのか、すなわちイヌの家畜化はいつ、いかにしてか、をめぐっては、これまで様々な議論が交わされてきた。

◎オオカミから初期のイヌに進化するまで時間の計算は合った

 人間は、友として飼うために、古代のオオカミの群れにいた温和しい個体を迎え入れたり選び出したりしたのだろうか? それとも、オオカミの群れの中に人間をあまり怖がらない個体がいて、人間が捨てる残飯に自ら近づいていったのだろうか?
 この論争では、時間計算は合うのかという点が大きな課題の1つになってきた。つまり、オオカミから初期のイヌへの進化が起きたと考えられているおよそ3万年~1万5000年前までの間に、人間の残飯を漁るオオカミがイヌという全く新しい種に進化できたのか、それは十分な時間だったのかということだ。
 2025年2月12日付けのイギリスの学術誌『英国王立協会紀要B( Proceedings of the Royal Society B )』に発表された論文は、その計算が確かに合うことを示した。適切な条件が揃えば、オオカミは約8000年でイヌへと進化できた可能性がある、と数理モデルから推定されたのだ( 写真 =カナダの海岸で暮らす珍しいオオカミ)。



◎人間がイヌの人為選択を行っていた確かな証拠

 過去1万5000年間については、人類のあらゆる文化圏でイヌの人為的な選択が行われていたことを示す確かな証拠がある、と論文著者の1人のアメリカ、ジェームズ・マディソン大学の理論生態学者のアレックス・キャパルディ博士は語る。つまりこの間の人類は、自然な進化に任せることなく、イヌの性質を選択していた。
 だがそれ以前の3万年前から1万5000年前までの間に何が起こっていたのかは誰も知らない。
 もしかすると古代人たちは、人に慣れやすい性質を持つオオカミに狩猟を手伝わせるために、オオカミの交配を行っていたのか。そこまでしていなくても、古代人たちは、私たちと同じようにかわいい幼体オオカミを拾って家に連れて帰ったのか。そして野生のオオカミとは別に、そこから人に慣れたオオカミの群れが出来て、その中で交配が行われて急激に人為的な選択が起こったのだろうか。

◎古代、ヒトとオオカミは獲物を奪い合うライバル

 しかし、古代の狩人にとって、オオカミは仲間ではなく獲物を奪い合うライバルであった。したがって、ヒトとイヌが一緒に狩りをしたとは考えにくい。こう考えるのは、マサチューセッツ大学チャン医学大学院の進化生物学者のキャサリン・ロード博士だ。

 それなら、古代のオオカミが自ら人間に頼る生活を選んだとしたらどうだろう?
 例えば古代人が捨てた残飯に引かれ、人間から残飯をもらうようになったオオカミは、他の個体よりも人に慣れ、攻撃性と引き換えに労せず食事を手に入れられる身分を手に入れた。人間と接点をもったオオカミは、群れの他の個体から孤立し、同じように人に慣れた個体と勝手に交配して、やがて人間に尾を振るようになったのかもしれない。

◎「原始家畜化説」、「自己選択説」、「残飯漁り説」などと呼ばれる

 この説は「原始家畜化説」、「自己選択説」、「残飯漁り説」などと呼ばれている。前出のキャパルディ博士がこの説に興味を持つようになったきっかけは、あるテレビ番組で、イヌの方から人間に近づいたという説を初めて知って驚き、イヌの家畜化の様々な側面を見てみたいと思うようになったからという。
 そして博士は、論争が続いている点に気づいた。残飯漁り説に対する主な批判の1つに、人間の残飯を漁るオオカミたちの間で自然選択が起きただけなら、イヌに進化するにはもっと長い時間がかかったはずだ、というものがあった。

◎人に慣れたオオカミの数理交配モデル


 キャパルディ博士とエルジンガ博士らは、数理モデルを用いて、人間の残飯を漁っていた古代のオオカミの群れの中から、イヌという独立した種が新たに誕生するまでにどのくらいの時間がかかるかシミュレーションを行った。
 研究チームは、人に慣れたオオカミが、同じく人に慣れたオオカミと交配するモデルと交配しないモデルを、1万5000年分にわたって実行した。また、人間が出す残飯の量が一定の場合(人口が少ないまま安定している状態)と、増加する場合(人口の増加に伴って残飯も増加する状態)で、どのように種が分わかれるかも検証した。

◎たった8000年でオオカミからイヌが分岐

 研究チームがモデルを繰り返し実行したところ、古代のオオカミは37%の割合で初期のイヌに進化した。
 また人に慣れたオオカミが、同じように人に慣れたオオカミと交配することを好む場合、74%が初期のイヌに進化した。その場合、たった8000年でオオカミからイヌが分岐し、この変化はしばしばモデルを実行する時間が終わるまで持続した。さらにこの変化は、残飯の量が一定でも増えても生じた。
 一方、人に慣れたオオカミが野生に近いオオカミと交配した場合には、種分化は決して起こらなかった。

◎残飯漁りのオオカミが自らイヌになったとするシミュレーション

 プリンストン大学の進化生物学者であるブリジット・フォンホルト博士は、人に慣れたオオカミが同じく人に慣れたオオカミと交配するのは、互いに近くにいたからだろうと言う。フォンホルト博士は、人間を怖がらないオオカミが、人間のそばで暮らし、これにより恩恵を受けているなら、この現象は自然選択の一部だ、と指摘する。
 博士はまた、わずかな遺伝子の変化で動物が「極端に社交的な」行動をとるようになる可能性があると指摘する。そうしたイヌをモデルに加えることで、初期のイヌたちについてさらに明確なイメージが得られるかもしれないと提案する。
 上記のシミュレーションは、人間の残飯を漁るオオカミが自らイヌへと変化したことの決定的な証拠にはならないが、「残飯漁り説」を裏付ける証拠の1つになる。

◎上部旧石器人は初期のイヌを追い払っていたか

 しかし、これには異論もある。「上部旧石器人は、蓄えていた食料や残飯を守るために、大型肉食動物が居住地に侵入しないようにしていたことが、考古学的証拠から推定されている」と、ベルギー王立自然史研究所の古生物学者ミーチェ・ヘルモンプレ博士は語る。
 つまり、人に慣れたオオカミが群れを形成するのに十分な時間があったとしても、初期の人類は彼らを追い払っていた可能性があるというのだ。
 またキャパルディ博士は、今回の結果は、残飯を漁ることが家畜化の唯一の方法だったことを意味するものではないとも言う。

◎家畜化は双方向的なプロセス

 イヌの家畜化にはおそらく人間が何らかの役割を果たしていたと思われるが、イヌもまた重要な役割を果たしていたのだ。
 今回の研究結果は、家畜化は人間が他の生物に一方的に押し付けたものではないことを物語っているのかもしれない。家畜化は双方向的なプロセスであり、両方の種が互いに近づいていくとき、最高の友情が新たに始まるのだ。
写真 =先史時代のヒトとイヌとの関わりを描いた絵、 からアンテロープを狩るイヌの群れ。リビアのタドラルト・アカクス遺跡に残る1万2000年前の岩絵;ジャッカルの頭を持つアヌビス神。3000年前の古代エジプト「死者の書」に描かれている;ライオンを狩る「モロッサー」と呼ばれる恐ろしげなイヌ。紀元前7世紀の新アッシリア王国宮殿に描かれたレリーフ;紀元前360年頃のギリシャの墓標に描かれた飼い主に忠実なイヌのレリーフ;ポンペイの埋没した家の玄関のモザイク画。「猛犬に注意」と書かれている)











☆参考

 野生の荒々しいキツネから、比較的温和しい個体だけを選抜して飼育・繁殖させ、さらにそこから温和しい個体を選択して……という累代飼育を60年も行い、ついに人に慣れた「イヌ」的なキツネを誕生させた研究が、別にあるので、参考までに挙げておく。
・17年7月23日付日記:「60年もの研究者人生を投じ、野生キツネを選抜育種して『犬』を誕生させた再現実験」 https:/ /plaza. rakuten .co.jp/ libpubl i2/diar y/20170 7230000 /

昨年の今日の日記 https:/ /plaza. rakuten .co.jp/ libpubl i2/diar y/20241 1090000 /





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Last updated  2025.11.09 08:39:27


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